説明

窒素氷製造装置及び方法並びに冷却機器

【課題】窒素氷を効率的かつ大量に製造する。
【解決手段】水中の溶存酸素を窒素ガス置換した水を凍らせた氷である窒素氷を生産するための窒素氷製造装置であって、周囲の大気からの気体の侵入を遮断する気密性を持つ水タンク(30)と、通過する水に対して窒素ガスを注入する窒素ガス注入器(28)と、大気中から窒素ガスを抽出し、抽出した窒素ガスを前記窒素ガス注入器(28)に対して供給する窒素ガス抽出器(14)と、前記水タンク(30)内の水を窒素ガス置換した水とするために、前記水タンク(30)から水を取り出し、前記窒素ガス注入器(28)を通過させ、前記水タンク(30)に戻すように水を循環させる水循環手段(31,20,32,22)と、前記水タンク(30)から取り出された窒素ガス置換した水を凍らせて窒素氷を製造する製氷機(40)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素水(水中の溶存酸素を窒素ガス置換した水)を凍らせた氷、窒素氷を製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、陸上におけるプラントとしてのシャーベット氷製造システムが開示されている。
特許文献2には、窒素ガス封入氷製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−169322号公報
【特許文献2】特開2007−155172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の窒素ガス封入氷製造装置は、特に漁船内で窒素氷を製造し、魚の鮮度を保つのに有用な発明である。窒素氷を陸上装置において製造する場合には、製造場所と使用場所との距離および時間の隔たりがある得るという事情を踏まえて、適切な装置を構成する必要がある。
本発明が解決しようとする課題は、窒素氷を陸上において製造するのに適切な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明の窒素氷製造装置は、以下の構成を有する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付している。
本発明の第1の態様は、水中の溶存酸素を窒素ガス置換した水を凍らせた氷である窒素氷を製造するための窒素氷製造装置であって、周囲の大気からの気体の侵入を遮断する気密性を持つ水タンク(30)と、通過する水に対して窒素ガスを注入する窒素ガス注入器(28)と、大気中から窒素ガスを抽出し、抽出した窒素ガスを前記窒素ガス注入器(28)に対して供給する窒素ガス抽出器(14)と、前記水タンク(30)内の水を窒素ガス置換した水とするために、前記水タンク(30)から水を取り出し、前記窒素ガス注入器(28)を通過させ、前記水タンク(30)に戻すように水を循環させる水循環手段(31,20,32,22)と、前記水タンク(30)から取り出された窒素ガス置換した水を凍らせて窒素氷を製造する製氷機(40)と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
さらに、上記窒素氷製造装置において、前記水タンク(30)内の水を冷却する冷却装置を設けたことが、好適である。
さらに、上記窒素氷製造装置において、前記製氷機(40)に対して窒素ガスを送り込む手段を備え、前記製氷機(40)における製氷過程において、窒素ガスを送り込みつつ、製氷を行うことが、好適である。
さらに、上記窒素氷製造装置において、前記水タンク(30)が同様の機能をもつ2槽からなり、各槽と窒素ガス注入器(28)との間での水の循環が可能であり、かつ、各槽から窒素ガス置換した水を取り出して前記製氷機(40)にて窒素氷を製造可能であることが、好適である。
【0007】
さらに、上記窒素氷製造装置において、前記製氷機(40)が製造した窒素氷を砕く砕氷機(50)と、窒素氷を貯蔵する貯氷室(60)と、前記貯氷室に貯蔵された窒素氷を掻き均す掻き均し器と、前記掻き均し器によって掻き取られた窒素氷を計量する計量器(70)と、前記計量器によって計量された窒素氷を出荷する出荷装置(80)とを備えたことが好適である。
【0008】
本発明の第2の態様は、業務用又は家庭用の冷凍庫、冷蔵庫又は冷凍冷蔵庫である冷却機器であって、上記いずれかの窒素氷製造装置を、製氷装置として組み込んだことを特徴とする。
さらに、上記冷却機器において、冷凍室、貯氷室、冷蔵室、チルド室及び野菜室のうちの1又は複数の室と、前記1又は複数の室の各々を真空引きする減圧手段と、前記1又は複数の室の各々に対して窒素ガスを送り込む窒素ガス供給手段とを備え、前記1又は複数の室の各々の密閉時に前記減圧手段により減圧した後、前記窒素ガス供給手段により窒素ガスを供給することにより、前記1又は複数の室内の大気を窒素置換することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、水中の溶存酸素を窒素ガス置換した水を凍らせた氷である窒素氷を製造するべく、周囲の大気からの気体の侵入を遮断する気密性を持つ水タンク(30)と、 通過する水に対して窒素ガスを注入する窒素ガス注入器(28)と、大気中から窒素ガスを抽出し、抽出した窒素ガスを前記窒素ガス注入器(28)に対して供給する窒素ガス抽出器(14)と、前記水タンク(30)内の水を窒素ガス置換した水とするために、前記水タンク(30)から水を取り出し、前記窒素ガス注入器(28)を通過させ、前記水タンク(30)に戻すように水を循環させる水循環手段(31,20,32,22)と、前記水タンク(30)から取り出された窒素ガス置換した水を凍らせて窒素氷を製造する製氷機(40)と、を備えた窒素氷製造装置を用いて窒素氷を製造する方法であって、前記水タンク内の水を、前記水循環手段により前記窒素ガス注入器を通過させて前記水タンクに戻すように循環させることにより、溶存酸素を窒素ガス置換した水を製造する工程と、前記窒素ガス置換した水を、前記製氷機にて凍らせることにより窒素氷を製造する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この窒素氷製造装置の一態様における運転の仕方(作用)を概説すると、次のとおりである。
まず、水タンクに水(水道水、地下水、海水、人工味付水、人工海水など)をほぼ満タンに近い状態まで入れる。次に、循環ポンプを運転し、水タンク内の水を窒素ガス注入器を通して元の水タンクに戻す循環をさせる。そして、エアコンプレッサーを運転して周囲の大気を窒素ガス抽出器に送り込む。すると窒素ガス抽出器は、酸素を横の口から放出し、窒素ガスに富んだ気体を窒素ガス注入器の注入ノズルを介して、前記循環する水に溶かし込む。水タンク内の水が循環ポンプにより循環し、窒素ガス注入器を通るときに窒素ガスを溶かし込まれるので、水タンク内の水は、徐々に窒素ガスが多く溶け込んだ水となる。水の中に窒素ガスが溶け込むので、それまで水に溶けていた酸素は、追い出されて、水タンクの上部の空間にたまる。タンク上部にたまった酸素は、気体放出口から放出される。この気体放出口は、外部からの侵入を許さない構造であり、大気中の酸素がタンク内の水に溶け込むことがない。10時間程度運転し続けると、20トンの水を99パーセント窒素が溶け込んだ水にすることが可能である。
こうして、水タンク内の水は、窒素を多く含む水となる。必要に応じて水タンク内の水は冷却される。たとえば、摂氏5度程度に冷却される。水は温度が低いほど気体を多く溶け込ませることが知られている。水タンクには、温度計と溶存酸素計とが取り付けられており、これらの計器の指針を読むことにより、水タンク内の窒素水がどれほど窒素を含んだ水となったかを知ることができる。
次に、窒素を多く含有する水が、製氷機まで運ばれて窒素氷を製造する。この製氷機は、瞬時に水を凍らせるタイプのものを用いることが望ましい。たとえば、鉛直に立てた金属プレートに冷却装置とヒータとの双方を仕込んだものを用い、その金属プレートをマイナス25度まで冷却した状態で、上から窒素水を垂らす。水を垂らす速度を調整して、水が下に落ちるまでにすべて凍結するようにする。20分程度この操作を続けると適度な厚さの板状の氷ができる。そこで、窒素水を垂らすのをやめ、金属プレートを冷却するのをやめる。そして、逆にヒータを作動させると、板状の氷は金属プレートからはがれて落下する。落下の衝撃で砕けた窒素氷をさらにベルトコンベアで砕氷機まで運び、適度の大きさにさらに砕く。砕かれた窒素氷を貯氷室まで運ぶ。
貯氷室では、適度な大きさの氷が大気中において、山のように貯蔵されており、氷を貯蔵するのに適切な温度管理がなされる。山状に積まれた氷は、熊手の形のレーキにより掻き均される。レーキにより掻き取られた窒素氷は、計量器で計量されて、出荷装置により出荷される。トラックの荷台への出荷の際には、計量した窒素氷がそのままトラックの荷台まで運ばれる。袋詰めの出荷の場合には、たとえば20キログラム入りの袋に袋詰めされて出荷される。
【0011】
本発明の窒素氷製造装置の一態様は、このような構成をもち、上述のように作用するから、窒素を多く含む氷を短時間で大量に製造できる。
窒素氷は、酸素を含まないため、酸化を防止し、鮮度を保つのに有用な氷である。
前記水タンク、前記製氷機、前記貯氷室をいずれも一つの筐体に収めることで店舗用、家庭用で用いる窒素氷製造装置を構成できる。
また、氷製造の際には窒素を多く含有する氷を短時間で急激に冷却して製造するが、保存、貯蔵の際には大気中で作業がなされるため、事後的にくっつくことが知られる。しかし通常の氷(窒素を含まない水を凍らせた氷)が事後的にくっついた部分を離しづらいのと比べると、窒素氷の場合は事後的にくっついた部分が離れやすく、扱いやすい。これが窒素氷の特徴の一つである。事後的に凍る部分(外部)は氷の結晶構造が酸素を含むものとなり、内部の窒素を含む結晶構造とは異なるものとなるのが理由だと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、窒素氷製造装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、窒素氷製造装置の全体構成を示す図である。エアコンプレッサー10は、大気を圧縮して圧縮空気送りパイプ11を介して窒素ガス抽出器14に送るエアコンプレッサーである。たとえば株式会社日立産機システムのオイルフリーベビコン(登録商標)を用いることができる。供給エア圧力が0.5から0.9メガパスカルのものを用いる。
【0014】
窒素ガス抽出器14は、ポリイミド中空糸膜からなる窒素分離膜を設けた圧力容器の一端に圧縮空気を取り込み、横の口から酸素をパージ(排出)し、圧力容器の多端から窒素ガスを取出すものである。気体の種類により膜の透過速度が異なることを利用したものであり、たとえば、大阪市東淀川区の株式会社片山化学工業研究所が製造する脱気装置「リプレル」(登録商標)を用いることができる。この脱気装置は、窒素ガス抽出器14と窒素ガス送りパイプ15と窒素ガス注入器28とを一体的に構成した装置として提供されている。窒素ガス送りパイプ15は、0.8メガパスカルの窒素ガスの圧力に耐えられる構造をもつ管である。
【0015】
窒素ガス注入器28は、1時間あたり2トン(2立方メートル)の水を通過させることにより処理し、1リットルあたり1.0ミリグラムの溶存酸素量まで酸素を追い出す能力をもっている。窒素ガス送りパイプ15が窒素ガス注入器28に結合する部分には、注入ノズルが設けられており、高圧の窒素ガスが水の中に注入される。この注入ノズルは、注入する窒素ガスの粒子を細かくできるものほど、窒素置換が有効である。水タンク30、水取出し口31、窒素水投入口32、循環ポンプ20、窒素ガス注入器28、循環パイプ21、22、23は、水および気体に対して閉じた構造となっており(気密状態)、0.5メガパスカルの圧力に耐えられる強度を有する。循環ポンプ20は、0.5メガパスカルの圧力で循環パイプ21、22、23内の水を水タンク30から取出して窒素ガス注入器28を通過させ、水タンク30へと戻す。水取出し口31、窒素水投入口32、循環ポンプ20及び循環パイプ21、22、23は、水タンク20と窒素ガス注入器28との間の水循環手段を構成する。
【0016】
水タンク30は、図1においては、煩雑をさけるために1槽であるかのように描かれているが、実際には、同じものを2槽並列的に設け、水取出し口31、窒素水投入口32、気体放出口33、温度計35、溶存酸素計36を二つの槽にそれぞれ設ける。通常運転の際には、2槽を同時に用いるが、メンテナンス(掃除、部品交換など)の際には、1槽のみをとめて、他の1槽は運転し続けることが可能となる。水取出し口31、窒素水投入口32には図示を省略したバルブを設けて、二つの槽から取出した水を合流させて循環パイプ21につなぐ。また、循環パイプ22から水タンクへ投入する窒素水は、二つの槽に分けて投入する。
【0017】
10トンの水タンクを2槽(A槽とB槽)、並列的に設ける場合に、A槽の窒素水を先に行い目的の溶存酸素量(たとえば1リットルあたり1.0ミリグラム)まで下がった時点で、製氷機40へA槽の窒素水を送り、窒素氷の製造工程をはじめる。その間にB槽の窒素水製造工程を行うという利用も可能である。20トンすべてを窒素水にするには10時間かかるが、10トンであれば5時間で完了する。
【0018】
水タンク30の上部には、気体放出口33が設けられている。この気体放出口33は、水タンク30の気密性を保持すべく、必要な逆止弁が設けられており、水タンクの内部に溜まった酸素(原水に含まれていた溶存酸素であって、窒素水の内部から追い出された酸素)を外に出す役割を果たす。水タンク30内には、さらに温度計35、溶存酸素計36が設けられ、その指針が外側から見やすい位置に設けられる。水温を調整するために、水タンク30には、冷却装置を取り付けるのが望ましい。水温が低いほど溶け込む気体の量が増える。すなわち、置換する水を冷却するほど窒素置換が有効である。摂氏5度に管理されるのが望ましい。
【0019】
水タンクの2槽のうちの一つが、所望の溶存酸素量に達したのを確認して、製氷用送水パイプ34を介して窒素水を製氷機40に送る。製氷用送水パイプ34は、2槽の水タンクのそれぞれ最下部から製氷機40にいたるまでの間に設けられており、必要があれば温度を保つべく保冷措置が講じられる。製氷用送水パイプ34は、循環パイプ21,22,23ほどには、耐圧構造を持つ必要はない。製氷、砕氷、貯氷、計量、出荷の工程は、一実施例においては大気中において行われる。製氷、砕氷、貯氷については、窒素ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0020】
製氷機40は短時間で製氷が可能なものを選定する。窒素水に多く含まれる窒素ガスをそのまま氷の中に閉じ込めるためである。製氷機40としては、たとえば次のようなものを用いる。鉛直に立てた金属プレートに冷却装置とヒータとの双方を仕込んだものを用い、その金属プレートをマイナス25度まで冷却した状態で、上から窒素水を垂らす。水を垂らす速度を調整して、水が下に落ちるまでにすべて凍結するようにする。20分程度この操作を続けると適度な厚さの板上の氷ができる。そこで、窒素水を垂らすのをやめ、金属プレートを冷却するのをやめる。そして、逆にヒータを作動させると、板状の氷は金属プレートからはがれて落下する。落下の衝撃で砕けた窒素氷をさらにベルトコンベアで砕氷機50まで運び、適度の大きさにさらに砕く。砕かれた窒素氷を貯氷室60まで運ぶ。
【0021】
貯氷室60では、適度な大きさの氷が大気中において、ベルトコンベアから落ちた場所を頂点とする山を形成して貯蔵されている。適切な冷却設備が設けられて、氷を貯蔵するのに適切な温度管理がなされる。山状に積まれた氷は、電動式の熊手の形のレーキにより掻き均される。レーキにより掻き取られた窒素氷は、計量器で計量されて、出荷装置により出荷される。トラックの荷台への出荷の際には、計量した窒素氷がそのままトラックの荷台まで運ばれる。袋詰めの出荷の場合には、たとえば20キログラム入りの袋に袋詰めされて出荷される。
【実施例1】
【0022】
大気からの窒素分離の手法として、実施形態ではポリイミド中空糸膜を用いるものを用いたが、窒素ガスの抽出の他の方法として、分子篩炭を利用する手法も知られている。
【実施例2】
【0023】
水タンク満杯の窒素水を製氷機40まで送る際に、水タンクの水量が減っていく。そのときに空いたスペースに窒素ガスを送り込むことが望ましい。大気そのものを入れたのでは、大気中の酸素が溶け込むおそれがあるからである。
【実施例3】
【0024】
水タンクに入れる水を味付水とすることで、氷菓の製造をすることが可能である。その場合、実施形態の製氷機を氷菓製造装置に置き換えて用いる。
【実施例4】
【0025】
産業用角氷製造の場合には、従来から、氷の白濁を防ぎ透明な角氷を造る目的で、アイス缶の中にエアーパイプを入れて、製氷過程において、空気を注入することがなされている。本発明の窒素水を用いて角氷を造る場合には、アイス缶に窒素水を入れて凍らせる製氷過程において、空気を注入する代わりに窒素ガスを注入することにより、窒素置換をさらに継続して行い、窒素ガス封入氷を製造する。角氷製造は、48時間程度かけて行うものであり、その間の空中からの酸素の溶け込みを防止するためである。
【実施例5】
【0026】
実施形態では、大型のプラントを前提とした窒素氷製造装置を説明した。一方、業務用又は家庭用の冷凍庫、冷蔵庫又は冷凍冷蔵庫である冷却機器に組み込まれる製氷装置として本発明に係る窒素氷製造装置を適用することも可能である。これにより、業務用又は家庭用の冷却機器において、自動的に窒素氷を作ることができる。既に、業務用又は家庭用の冷却機器において、自動的に製氷する機能をもつものはある。既存の製氷機能における水タンク及び製氷機はそのまま本発明の窒素氷製造装置の水タンク及び製氷機として利用する。貯氷室もそのまま利用できる。その他の本発明独自の構成要素、すなわち、循環パイプ、循環ポンプ、窒素ガス注入器等を付加し、接続することにより実現可能である。このような、窒素氷製造装置を製氷装置として組み込んだ業務用又は家庭用の冷却機器もまた、本発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例6】
【0027】
実施例5における、窒素氷製造装置を製氷装置として組み込んだ業務用又は家庭用の冷却機器において、当該冷却機器が備える1又は複数の室の大気を窒素置換することがさらに好適である。冷却機器には、通常、冷凍室、貯氷室、冷蔵室、チルド室及び野菜室等の種々の室が設けられている。このような冷却機器において、各室を真空引きする減圧手段と、各室に対して窒素ガスを送り込む窒素ガス供給手段とを設ける。各室は、食品等の収容物を取り出す際にのみ開けられ、通常は密閉されている。そこで、各室の密閉時に減圧手段により真空引きして減圧した後、窒素ガス供給手段により窒素ガスを供給することにより、各室内の大気を窒素置換することができる。これにより、冷却機器の各室の収容物の酸化を防止し、鮮度を保持する効果が得られる。減圧手段としては真空引きポンプ等があり、また、窒素ガス供給手段としては、窒素氷製造に用いる窒素ガス抽出器を併用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
陸上、海上を問わず、製氷装置に利用可能である。水タンクに入れる水を味付水とすることで氷菓の製造装置にも利用可能である。氷の種類としては、角氷、ブロック氷、プレート氷、フレーク氷、シャーベット氷など、さまざまな氷の製造装置に利用可能である。店舗用、家庭用の製氷装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 エアコンプレッサー
11 圧縮空気送りパイプ
14 窒素ガス抽出器
15 窒素ガス送りパイプ
21,22,23 循環パイプ
20 循環ポンプ
28 窒素ガス注入器
30 水タンク
31 水取出し口
32 窒素水投入口
33 気体放出口
34 製氷用送水パイプ
35 温度計
36 溶存酸素計
40 製氷機
50 砕氷機
60 貯氷室
70 計量器
80 出荷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の溶存酸素を窒素ガス置換した水を凍らせた氷である窒素氷を製造するための窒素氷製造装置であって、
周囲の大気からの気体の侵入を遮断する気密性を持つ水タンク(30)と、
通過する水に対して窒素ガスを注入する窒素ガス注入器(28)と、
大気中から窒素ガスを抽出し、抽出した窒素ガスを前記窒素ガス注入器(28)に対して供給する窒素ガス抽出器(14)と、
前記水タンク(30)内の水を窒素ガス置換した水とするために、前記水タンク(30)から水を取り出し、前記窒素ガス注入器(28)を通過させ、前記水タンク(30)に戻すように水を循環させる水循環手段(31,20,32,22)と、
前記水タンク(30)から取り出された窒素ガス置換した水を凍らせて窒素氷を製造する製氷機(40)と、を備えたことを特徴とする窒素氷製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載した窒素氷製造装置であって、前記水タンク(30)内の水を冷却する冷却装置を設けたことを特徴とする窒素氷製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した窒素氷製造装置であって、前記製氷機(40)に対して窒素ガスを送り込む手段を備え、前記製氷機(40)における製氷過程において、窒素ガスを送り込みつつ、製氷を行うことを特徴とする窒素氷製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載した窒素氷製造装置であって、
前記水タンク(30)が同様の機能をもつ2槽からなり、各槽と窒素ガス注入器(28)との間での水の循環が可能であり、かつ、各槽から窒素ガス置換した水を取り出して前記製氷機(40)にて窒素氷を製造可能であることを特徴とする窒素氷製造装置。
【請求項5】
業務用又は家庭用の冷凍庫、冷蔵庫又は冷凍冷蔵庫である冷却機器であって、請求項1〜4のいずれかに記載した窒素氷製造装置を、製氷装置として組み込んだことを特徴とする冷却機器。
【請求項6】
請求項5に記載の冷却機器において、冷凍室、貯氷室、冷蔵室、チルド室及び野菜室のうちの1又は複数の室と、前記1又は複数の室の各々を真空引きする減圧手段と、前記1又は複数の室の各々に対して窒素ガスを送り込む窒素ガス供給手段とを備え、前記1又は複数の室の各々の密閉時に前記減圧手段により減圧した後、前記窒素ガス供給手段により窒素ガスを供給することにより、前記1又は複数の室内の大気を窒素置換することを特徴とする冷却機器。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載した窒素氷製造装置であって、
前記製氷機(40)が製造した窒素氷を砕く砕氷機(50)と、
窒素氷を貯蔵する貯氷室(60)と、
前記貯氷室に貯蔵された窒素氷を掻き均す掻き均し器と、
前記掻き均し器によって掻き取られた窒素氷を計量する計量器(70)と、
前記計量器によって計量された窒素氷を出荷する出荷装置(80)とを、さらに備えたことを特徴とする窒素氷製造装置。
【請求項8】
水中の溶存酸素を窒素ガス置換した水を凍らせた氷である窒素氷を製造するべく、
周囲の大気からの気体の侵入を遮断する気密性を持つ水タンク(30)と、
通過する水に対して窒素ガスを注入する窒素ガス注入器(28)と、
大気中から窒素ガスを抽出し、抽出した窒素ガスを前記窒素ガス注入器(28)に対して供給する窒素ガス抽出器(14)と、
前記水タンク(30)内の水を窒素ガス置換した水とするために、前記水タンク(30)から水を取り出し、前記窒素ガス注入器(28)を通過させ、前記水タンク(30)に戻すように水を循環させる水循環手段(31,20,32,22)と、
前記水タンク(30)から取り出された窒素ガス置換した水を凍らせて窒素氷を製造する製氷機(40)と、を備えた窒素氷製造装置を用いて窒素氷を製造する方法であって、
前記水タンク内の水を、前記水循環手段により前記窒素ガス注入器を通過させて前記水タンクに戻すように循環させることにより、溶存酸素を窒素ガス置換した水を製造する工程と、
前記窒素ガス置換した水を、前記製氷機にて凍らせることにより窒素氷を製造する工程と、を有することを特徴とする窒素氷製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−163312(P2012−163312A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158829(P2011−158829)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(505447629)株式会社昭和冷凍プラント (5)