説明

窒素酸化物濃度測定装置

【課題】流路を切り換えてNO濃度を測定する窒素酸化物濃度測定装置であって、窒素酸化物濃度の変化が激しいサンプルガスについても、NO濃度を正確に測定し得る窒素酸化物濃度測定装置を提供する。
【解決手段】NO検出器DTにより、コンバータCVを通過したサンプルガスについて得た第1のNO検出値と、コンバータCVを通過しないサンプルガスについて得た第2のNO検出値とから、NO濃度、NO濃度およびNO濃度を算出するようになっている窒素酸化物濃度測定装置1において、コンバータCVよりも上流に備えられたバッファタンクBT1,BT2にサンプルガスを一旦貯留し、その貯留が完了したバッファタンクBT1,BT2から導出したサンプルガスについて、上記第1のNO検出値および上記第2のNO検出値を得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中等における一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)および全窒素酸化物(NO)の濃度を測定する窒素酸化物濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、排ガスや大気中の窒素酸化物の濃度は、化学発光方式、赤外線吸収方式または紫外線吸収方式の窒素酸化物濃度測定装置によって測定される。このうち、化学発光方式および赤外線吸収方式の窒素酸化物濃度測定装置は、検出感度が高く、安定性も優れている等の特長を有しており、従来広く用いられている。
【0003】
化学発光方式の窒素酸化物濃度測定装置は、NOとO(オゾン)が反応してNOになるときに放射される光の強度がNO濃度と比例関係にあることを利用し、この発光強度を検出してNO濃度を測定するものである。一方、赤外線吸収方式の窒素酸化物濃度測定装置は、NOがその濃度に比例して5.3μm近辺の赤外線を選択的に吸収することを利用し、この吸収量を検出してNO濃度を測定するものである。つまり、化学発光方式および赤外線吸収方式の窒素酸化物濃度測定装置は、原理的にはNOの濃度しか測定できない。
【0004】
したがって、化学発光方式または赤外線吸収方式の窒素酸化物濃度測定装置を用いて、NO濃度とNO濃度との合算値であるNO濃度を測定する際は、サンプルガスを、NOをNOに還元するコンバータに通してNOを全てNOに変換した後、検出器に導入することにより、測定するようになっている。
【0005】
また、NO濃度を測定する際は、上記コンバータを通ったサンプルガスと、上記コンバータを通らないサンプルガスとをそれぞれ検出器に導入することで、NO濃度とNO濃度とを測定し、NO濃度からNO濃度を引き算して、NO濃度を算出するようになっている。
【0006】
ところで、上記のようにNO濃度を測定する際は、サンプルガスが上記コンバータを通る流路と通らない流路とを切り替える必要があるが、一方の流路を用いて測定している間に、他方の流路を用いて測定すべきサンプルガスの濃度が急激に変化すると、上記引算の結果、NO濃度の測定値に大きな誤差が生じる場合があった。
そこで、サンプルガスの濃度変化が大きくなるにつれて上記流路の切替周期を短くすることにより、NO濃度を正確に測定できるように構成した窒素酸化物濃度測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−98277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、流路を切り換えた後、サンプルガスの濃度が正しく測定されるまでには、サンプルガスが検出器に到達するまでにかかる時間等の所定時間(応答時間)が必要であるため、流路の切換周期を短くするにも限界があった。したがって、依然としてNO濃度を正確に測定できない場合があった。
また、流路の切替周期を短くすることによって、電磁弁等の流路切替手段が早期に劣化してしまう問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流路を切り換えてNO濃度を測定する窒素酸化物濃度測定装置であって、窒素酸化物濃度の変化が激しいサンプルガスについても、NO濃度を正確に測定し得る窒素酸化物濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、NO検出器と、NOガスをNOガスに変換するコンバータとを備え、連続的に供給されるサンプルガスの窒素酸化物濃度を測定する窒素酸化物濃度測定装置であって、前記NO検出器により、当該コンバータを通過した前記サンプルガスについて得た第1のNO検出値と、当該コンバータを通過しない前記サンプルガスについて得た第2のNO検出値とから、NO濃度、NO濃度、およびNO濃度を算出するようになっている窒素酸化物濃度測定装置において、前記コンバータよりも上流に備えられたバッファタンクに前記サンプルガスを一旦貯留し、その貯留が完了したバッファタンクから導出したサンプルガスについて、前記第1のNO検出値および前記第2のNO検出値を得るようにしたことを特徴とする窒素酸化物濃度測定装置を提供するものである。
ここで、NOとは一酸化窒素、NOとは二酸化窒素、NOとは全窒素酸化物を意味する。
【0010】
また本発明は、上記構成において、前記バッファタンクが複数備えられており、各バッファタンクにサンプルガスを順次貯留する一方、その貯留が完了したバッファタンクから順次導出したサンプルガスについて、前記第1のNO検出値および前記第2のNO検出値を得るようになっていることを特徴とする窒素酸化物濃度測定装置を提供するものである。
【0011】
また本発明は、上記構成のいずれかにおいて、前記バッファタンクに貯留されたサンプルガスは、その貯留が完了した時点から所定時間経過した後に、導出されるようになっていることを特徴とする窒素酸化物濃度測定装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成された本発明の窒素酸化物濃度測定装置は、バッファタンクに一旦貯留されて均一化されたサンプルガスについて、NO濃度およびNO濃度が測定されるようになっている。したがって、当該窒素酸化物濃度測定装置によれば、窒素酸化物濃度の変化が激しいサンプルガスであっても、NO濃度とNO濃度とを測定するための切替え流路通過時にはその濃度は均一化しているから、NO濃度からNO濃度を引き算した結果得られるNO濃度の測定値が不正確になることがない。
【0013】
なお、バッファタンクを複数設け、各バッファタンクにサンプルガスを順次貯留する一方、その貯留が完了したバッファタンクから順次導出したサンプルガスについて、窒素酸化物濃度を測定するようにした場合は、測定の連続性を向上させることができる。
【0014】
また、バッファタンクに貯留されたサンプルガスを、その貯留の完了から所定時間経過した後に導出するようにした場合、サンプルガスをさらに均一化することができ、測定の正確性を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい一実施形態につき説明する。
図1は本実施形態に係る窒素酸化物濃度測定装置を示すブロック図である。
【0016】
本実施形態に係る窒素酸化物濃度測定装置1は、化学発光方式の測定装置であって、図1に示す如く、化学発光方式のNO検出器DTに対し、バッファ部BFを介してサンプルガスを供給するためのサンプルガスラインSL(図中の実線)、オゾンガスを供給するためのオゾンガスラインOL(一点鎖線)、および校正ガスを供給するための校正ガスラインCL(点線)と、バッファ部BFからサンプルガスの一部を排出するための排気ラインEL1(破線)と、NO検出器DTからガスを排出するための排気ラインEL2(破線)と、ドレンポットDP1からガスを排出するための排気ラインEL3(破線)と、オゾンガスラインOLおよびサンプルガスラインSLからの水分を排出するための排水ラインWL(二点鎖線)と、から構成されている。
【0017】
[サンプルガスライン]
サンプルガスラインSL(実線)は、図1に示す如く、サンプルガス供給源(不図示)に接続されるサンプルガス供給口SSから延び、サンプルガス中の固形分を除去するフィルタF1と、サンプルガスを吸引するサンプリングポンプP1と、サンプルガス中の水分を除去する除湿器DHと、サンプルガス流量を所定値にするための流量計FMとを介して、バッファ部BFに接続されている。
【0018】
バッファ部BFにおけるサンプルガスラインSLは、図1に示す如く、電磁弁SV6を介してバッファタンクBT1に接続されるラインと、電磁弁SV7を介してバッファタンクBT2に接続されるラインとに分岐している。ここで、バッファタンクBT1,BT2は、サンプルガスを一旦貯留するためのタンクである。
サンプルガスラインSLはさらに、バッファタンクBT1,BT2それぞれから延び、三方電磁弁SV8に接続されて再度1つのラインとなり、バッファ部BFからNO検出器DTに向かって延びている。
【0019】
バッファ部BFから延びるサンプルガスラインSLは、図1に示す如く、サンプルガス流量を調整するためのキャピラリR1と、NOガスをNOガスに変換するコンバータCVとを介して、NO検出器DTに接続されている。ここで、コンバータCVに対しては、コンバータCVの下流に配置された三方電磁弁SV3で合流するバイパスラインBL1が設けられている。また、NO検出器DTに対しても、三方電磁弁SV3とNO検出器DTとの間に配置された三方電磁弁SV4から枝分かれして排気ラインEL2に接続されるバイパスラインBL2が設けられている。
【0020】
[校正ガスライン]
校正ガスラインCLは、図1に示す如く、スパンガス(例えば、NO/Nガス)供給源(不図示)が接続されるスパンガス供給口CSから延びるラインと、ゼロガス(例えば、Nガス)供給源(不図示)が接続されるゼロガス供給口ZSから延びるラインとが、それぞれ電磁弁SV1、SV2を通った後に合流し、さらに、逆止弁V1を介して、サンプルガスラインSLにおけるサンプリングポンプP1と除湿器DHとの間に接続されている。
【0021】
[オゾンガスライン]
オゾンガスラインOLは、図1に示す如く、オゾン発生用ガス(空気またはO)の供給源(不図示)に接続されるオゾン発生用ガス供給口OSから延び、オゾン発生用ガス中に僅かに含まれるNOや炭化水素等を除去するための活性炭槽AC1と、オゾン発生用ガス中の固形分を除去するフィルタF2と、オゾン発生用ガス中の水分を除去する除湿器DHと、酸素からオゾンを発生させるオゾン発生器OZと、オゾン発生用ガスの流量を調整するためのキャピラリR2とを介して、NO検出器DTに接続されている。
【0022】
[排水ラインWL]
排水ラインWLは、図1に示す如く、サンプルガスラインSLおよびオゾンガスラインOLの経路中に設けられた除湿器DHから延び、サンプルガスラインSLからの水分を捕集するドレンポットDP1および排水コックC1を介して排出口VT3に接続されるラインと、オゾンガスラインOLからの水分を捕集するドレンポットDP2および排水コックC2を介して排水口VT4に接続されるラインと、から構成されている。
【0023】
[排気ライン]
排気ガスラインEL1は、図1に示す如く、バッファ部BFにおけるサンプルガスラインSLの電磁弁SV6,SV7の上流側から延び、電磁弁SV5を介して排出口VT5に接続されるラインと、バッファタンクBT1,BT2それぞれから延び、排出口VT5に接続されるラインと、からなっている。
【0024】
排気ガスラインEL2は、図1に示す如く、NO検出器DTから延び、NO検出器DTから排出されたガス中のオゾンを分解するオゾン分解器ODと、オゾン分解器OD通過後のガス中に僅かに含まれるオゾンガスをさらに分解すると共に、オゾン分解器ODにおいて発生するミストを除去するための活性炭槽AC2と、NO検出器DTから排出されたガス中の固形分を除去するためのフィルタF3と、NO検出器DTからガスを吸引するためのサンプリングポンプP2とを介し、排気口VT2に接続されている。
【0025】
排気ガスラインEL3は、図1に示す如く、ドレンポットDP1から延び、キャピラリR3を介して排水口VT1に接続されている。
この排気ガスラインEL3を用いてドレンポットDP1から常に一定量のガスを排気することにより、除湿器DHを通過するサンプルガスの流量および圧力が変化した際、ドレンポットDP1内に存在するガスがサンプルガス中に逆流するのを防ぐようになっている。
なお、ドレンポットDP2には同様の排気ラインが設けられていないが、これは、除湿器DHを通過するオゾンガスは、サンプリングポンプP2によって常に一定量が吸引されているため、その流量および圧力がほとんど変化しないことと、仮に流量および圧力が変化して逆流することがあっても、ドレンポットDP2内に存在するガスは空気であるため、NO検出器DTの指示値にはほとんど影響がないこととによる。
【0026】
[動作]
次に、上記のように構成した窒素酸化物濃度測定装置1の測定時の動作について説明する。
図2および図4は測定時におけるサンプルガスラインSLの要部を示すブロック図、図3は測定時における主要な電磁弁の動作シーケンスを示す図である。
なお、図2および図4において、サンプルガスが通過するラインは太線で示されている。
また、図3におけるハッチングが施されている部分は、そのタイミングではその電磁弁が開いていることを示している。
【0027】
まず、サンプリングポンプP1が、サンプルガス供給口SSに接続されたサンプルガス供給源(不図示)からサンプルガスを連続的に吸引する。吸引されたサンプルガスは、除湿器DHにより除湿された後、バッファ部BFに導入される(図1参照)。
【0028】
一方、サンプリングポンプP2が、オゾン発生用ガス供給口OSに接続されたオゾン発生用ガス供給源(不図示)からオゾン発生用ガスを連続的に吸引する。吸引されたオゾン発生用ガスは、除湿器DHにより除湿された後、オゾン発生器OZに導入されてオゾンガスとなり、NO検出器DTに導入される(図1参照)。
【0029】
バッファ部BFに導入されたサンプルガスは、バッファタンクBT1,BT2のいずれか一方に貯留される。その間、他方のバッファタンクに貯留されていたガスがNO検出器DTに導入されて、窒素酸化物濃度が測定されるようになっている。
【0030】
他方のバッファタンクに貯留されていたガスの窒素酸化物濃度を測定するときは、サンプルガスが、
1.コンバータCVを通り、NO検出器DTを通らない「Refモード」
2.コンバータCVを通り、NO検出器DTを通る「NOモード」
3.コンバータCVを通らないで、NO検出器DTを通る「NOモード」
からなると共に所定時間毎にこの順で切り替わる3つの測定モードにより、測定される。
ここでは、バッファタンクBT2にサンプルガスが貯留され、バッファタンクBT1に貯留されていたガスが測定される場合(図3の動作シーケンスNo.2)について説明する。
【0031】
(Refモード)
まず、図2Aおよび図3の動作シーケンスNo.2を参照しつつ、Refモードについて説明する。
バッファ部BFにおいて、電磁弁SV5,SV6、および三方電磁弁SV8のバッファタンクBT2側は閉じ、電磁弁SV7は開いているため、サンプルガスは、バッファタンクBT2に導入されて貯留される。このとき、サンプルガスの一部はバッファタンクBT2を通過して排出口VT5から排気され、大気圧平衡状態で貯留されるようになっている。
【0032】
サンプルガスがバッファタンクBT2に貯留されている間、電磁弁SV8のバッファタンクBT1側は開いているため、バッファタンクBT1に貯留されていたガスが、サンプリングポンプP2によって吸引され、コンバータCV側に導出される。
【0033】
このとき、三方電磁弁SV3のコンバータCV側と、三方電磁弁SV4のバイパスラインBL2側とが開いているため、バッファタンクBT1からのガスは、コンバータCVを通過した後、NO検出器DTに導入されずに、排気ラインEL2を介して排出口VT2から排気される。
【0034】
このRefモードでは、NO検出器DTにはサンプルガスが導入されないので、その検出値はゼロ相当の値となるが、このゼロ相当の値を用いて、NO検出器DTのゼロ点を補正するようになっている。これにより、ゼロドリフトがほとんどない測定が可能となる。
【0035】
(NOモード)
次に、図2Bおよび図3の動作シーケンスNo.2を参照しつつ、NOモードについて説明する。
Refモード開始から所定時間(ここでは8秒とする)経過後、三方電磁弁SV4のバイパスラインBL2側が閉じられると共にNO検出器DT側が開かれる。その結果、バッファタンクBT1からのガスは、コンバータCVを介してNO検出器DTに導入された後、排気ラインEL2を介して排出口VT2から排気される。
【0036】
このNOモードでは、コンバータCVによってNOがNOに変換されたサンプルガスがNO検出器DTに導入されることになり、このとき得られた検出値(第1のNO検出値)を用いて、NO濃度が算出される。
【0037】
一方、このとき、バッファ部BF内の電磁弁はそのままの状態であり、バッファタンクBT2へのサンプリングガスの貯留は、引き続き行われている。
【0038】
(NOモード)
次に、図2Cおよび図3の動作シーケンスNo.2を参照しつつ、NOモードについて説明する。
NOモード開始から所定時間(8秒)経過後、三方電磁弁SV3のコンバータCV側が閉じられると共にバイパスラインBL1側が開かれる。その結果、バッファタンクBT1からのガスは、コンバータCVを通過せずにNO検出器DTに導入された後、排気ラインEL2を介して排出口VT2から排気される。
【0039】
このNOモードでは、サンプルガスがそのままNO検出器DTに導入されることになり、このとき得られた検出値(第2のNO検出値)を用いて、NO濃度が算出される。
【0040】
一方、NOモード開始から所定時間(8秒)経過後、バッファ部BF内の電磁弁SV5が開かれ、かつ電磁弁SV7が閉じられる。これにより、バッファタンクBT2へ向かっていたサンプリングガスは排出口VT5から排気され、バッファタンクBT2への貯留は終了とされる。ここで、上記RefモードおよびNOモードの期間中に導入されたサンプルガスにより、その導入前に存在していたバッファタンクBT2内のガスは排出口VT5から排気され、バッファタンクBT2内のガスの入れ替えがなされるようになっている。
また、このNOモード期間(8秒間)は、バッファタンクBT2にサンプルガスが導入されないことになるが、この間で、バッファタンクBT2に貯留されたサンプルガス中の窒素酸化物濃度が均一化するようになっている。
【0041】
以上により、動作シーケンスNo.2は終了し、次の動作シーケンスNo.3、すなわちバッファタンクBT1へのサンプルガスの貯留と、バッファタンクBT2に貯留されていたガスの測定とが実行され(図3の動作シーケンスNo.3および図4参照)、以降、動作シーケンスNo.2,No.3と同じ動作が繰り返される(図3の動作シーケンスNo.4,No.5参照)。
【0042】
このように、窒素酸化物濃度測定装置1によれば、一方のバッファタンクにサンプルガスを貯留しつつ、他方のバッファタンク貯留されていたサンプルガスを測定することで、サンプルガスの窒素酸化物濃度を略連続的に測定することができる。
【0043】
また、窒素酸化物濃度測定装置1は、バッファタンクBT1,BT2に一旦貯留されて均一化されたサンプルガスについて、NO濃度およびNO濃度が測定されるようになっている。したがって、窒素酸化物濃度測定装置1によれば、窒素酸化物濃度の変化が激しいサンプルガスであっても、コンバータCV通過時およびバイパスラインBLl通過時にはその濃度は均一化しているから、NO濃度からNO濃度を引き算した結果得られるNO濃度の測定値に大きな誤差が生じることがない。
【0044】
なお、上記窒素酸化物濃度測定装置1の動作の説明においては、校正動作の説明を省略したが、当然サンプルガスの測定前に校正を行う必要がある。この場合、サンプルガスの替わりに、校正ガスラインCLからのスパンガスおよびゼロガスをNO検出器DTに導入して基準となるNO検出値を得ることにより、校正を行うことができる。
【0045】
[実施例]
次に、一例として、本発明の窒素酸化物濃度測定装置1を用いて、NOスパンガス(NO/Nガス)9.30ppmおよびゼロガス(Nガス)の供給をランダムに3回切り替え、サンプルガス中の窒素酸化物濃度が急激に変化する状態を意図的につくって、そのときのNO濃度、NO濃度およびNO濃度を測定した。その結果を図5に示す。
なお、このとき、バッファタンクBT1,BT2の内容積を300mL、バッファタンクBT1,BT2からのサンプルガスの吸引流量を200mL/minとした。
【0046】
また、比較のために、コンバータ上流にバッファ部を有さない従来の窒素酸化物濃度測定装置を用いて、上記と同様の測定を行った。その結果を図6に示す。
【0047】
なお、上記の測定においては、NOスパンガス、すなわちNOを含まないガスを用いているため、正確な測定が行われたならば、NO濃度はゼロになるはずである。
【0048】
図6から明らかなように、従来の窒素酸化物濃度測定装置では、NOスパンガス,ゼロガスの切り替えタイミング、すなわちサンプルガス中の窒素酸化物濃度が急激に変化するタイミングに対して、NOモード,NOモードの切り替えタイミングが偶然適切であった場合(図中のE1’)は、正確にNO濃度を測定できているものの、そのタイミングが適切でなかった場合(図中のE2’およびE3’)は、5ppm程度の大きなピークが生じてしまい、正確にNO濃度が測定できていないことがわかる。実際、NOモード,NOモードの切り替えは所定時間毎に周期的に切り替えられるため、サンプルガス中の窒素酸化物濃度の変化とタイミングがあうことは稀であるから、従来の窒素酸化物濃度測定装置では、NO濃度の測定が不正確となるのは不可避であることがわかる。
【0049】
これに対し、本発明に係る窒素酸化物濃度測定装置1では、図5から明らかなように、窒素酸化物濃度が急激に変化するサンプルガスであっても、NOの濃度がほぼゼロとなっており、正確に測定できていることがわかる。なお、図示の都合上、NOスパンガス,ゼロガスの切り替えを3回としているが、さらに多数回切り替えて測定を続けても結果は同じであり、図5に示す結果は、NOスパンガス,ゼロガスの切り替えタイミングに対して、NOモード,NOモードの切り替えタイミングが3回続けて偶然適切であったわけではない。
すなわち、本発明に係る窒素酸化物濃度測定装置によれば、窒素酸化物濃度の変化が激しいサンプルガスであっても、NO濃度を正確に測定し得ることが実証された。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記実施形態においては、化学発光方式の窒素酸化物濃度測定装置にバッファ部を設けた構成としたが、赤外線吸収方式の窒素酸化物濃度測定装置にバッファ部を設けた構成としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、バッファタンクの数を2個としたが、3個以上設けてもよく、測定の連続性は低下するものの1個であってもよい。
また、上記実施形態においては、バッファタンクに貯留されたサンプルガスを、その貯留が完了した時点から8秒経過後に導出するようにしたが、この導出開始までの時間については適宜設定可能である。
【0052】
また、上記実施形態においては、Refモード、NOモードおよびNOモードからなる測定モードにより測定したが、NOモードおよびNOモードのみからなる測定モードにより測定しても当然よい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る窒素酸化物濃度測定装置を示すブロック図である。
【図2】測定時におけるサンプルガスラインの要部を示すブロック図である。
【図3】測定時における主要な電磁弁の動作シーケンスを示す図である。
【図4】測定時におけるサンプルガスラインの要部を示すブロック図である。
【図5】図1の窒素酸化物濃度測定装置を用いて測定した結果を示す図である。
【図6】従来の窒素酸化物濃度測定装置を用いて測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 窒素酸化物濃度測定装置
DT NO検出器
CV コンバータ
BT1、BT2 バッファタンク
CL 校正ガスライン
OL オゾンガスライン
SL サンプルガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NO検出器と、NOガスをNOガスに変換するコンバータとを備え、連続的に供給されるサンプルガスの窒素酸化物濃度を測定する窒素酸化物濃度測定装置であって、前記NO検出器により、当該コンバータを通過した前記サンプルガスについて得た第1のNO検出値と、当該コンバータを通過しない前記サンプルガスについて得た第2のNO検出値とから、NO濃度、NO濃度、およびNO濃度を算出するようになっている窒素酸化物濃度測定装置において、
前記コンバータよりも上流に備えられたバッファタンクに前記サンプルガスを一旦貯留し、その貯留が完了したバッファタンクから導出したサンプルガスについて、前記第1のNO検出値および前記第2のNO検出値を得るようにしたことを特徴とする窒素酸化物濃度測定装置。
【請求項2】
前記バッファタンクが複数備えられており、各バッファタンクにサンプルガスを順次貯留する一方、その貯留が完了したバッファタンクから順次導出したサンプルガスについて、前記第1のNO検出値および前記第2のNO検出値を得るようになっていることを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物濃度測定装置。
【請求項3】
前記バッファタンクに貯留されたサンプルガスは、その貯留が完了した時点から所定時間経過した後に、導出されるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の窒素酸化物濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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