説明

窓用開閉調節器

【課題】障子の開放角度を制限し保持する機能を簡単な構造で実現することができ、安全で使い勝手のよい窓用開閉調節器を提供する。
【解決手段】両端が開口した筒状のケース18の中空部にスライド自在に挿通され、一端がケース18の前側開口端18aから突出し、ケース18内に収容されている部分にアーム位置決め孔20aが形成されたアーム20を備える。障子枠に固定される本体22aを有し、アーム20のケース18から突出する端部にボールジョイント構造で取り付けられた障子ブラケット22を備える。スライドするアーム20のアーム位置決め孔20に嵌合することによって、スライド動作を停止させるストッパピン32を有するアーム位置決め機構26を備える。ケース18を回転自在に、且つ所定の傾斜角度以下の範囲で揺動自在に支持し、窓枠に取り付ける枠ブラケット24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窓枠と窓枠に軸着されて開閉する障子とを連結し、障子の開放角度を制限し保持する窓用開閉調節器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、二本以上のロッドをくの字型に結合して屈伸可能なリンクを構成し、リンクの一端が、閉じられた障子の開閉端に近接する窓枠の部分に所定方向に回転可能なヒンジを介して連結され、リンクの他の一端が、障子の開閉端(揺動端)に所定方向に回転可能なヒンジに連結され、さらに、窓枠側のロッドを二体に分割して長手方向の軸線を中心に回動自在に連結された窓開閉用リンクの捩れ吸収装置がある。この窓開閉用リンクの捩れ吸収装置は、窓を開閉するとき、各ロッドの動きが、枢軸やヒンジ等によって合計6つの回転軸で制御されるものである。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、長尺の外筒と、外筒の後端部から伸縮自在に挿通された長尺の内挿部材とを備え、外筒には凹状の係合部及びブレーキ部等が一体に設けられ、内挿部材には、板バネ及び突片等が一体に設けられ、内挿部材が所定長さまでスライドすると、突片が板バネの付勢によって前記係合部に係合する動作等によって当該スライド動作が静かに停止する扉等開閉器がある。この扉等開閉器の場合、外筒が、閉じられた扉等の開閉端及び軸着端以外の端部に近接する窓枠の部分に所定方向に回転可能に軸着され、内挿部材の外筒から突出した部分が、扉等の開閉端に所定方向に回転可能に軸着され、扉等を開閉するとき、外筒と内挿部材の動きが上記2つの回転軸で制御されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−108663号公報
【特許文献2】特開2008−261216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の窓開閉用リンクの捩れ吸収装置は、窓を開閉するとき、リンクが折り畳まれたり開いたりする構造が広い範囲に露出するので、デザイン的に煩雑な印象を与えたり、開閉の操作中に誤って指などを挟んでしまうおそれがあるという問題があった。また、窓を開閉するとき、各ロッドの動きを制御するために6つもの回転軸を設けなくてはならず、構造が非常に複雑であった。さらに、窓の開放角度が制限されるので、小さな子供が操作を誤って窓から転落する等のおそれがなくて安全な半面、屋内からは窓の外側の面を清掃することができないという不便な面があった。
【0006】
一方、特許文献2の扉等開閉器は、外筒と内挿部材の動きを、少ない回転軸で制御するため、構造が比較的単純である。しかし、例えば、扉等が窓枠の縦枠部分に軸着された縦軸回転窓の場合、この扉等開閉器は、窓枠の下枠部分と扉等の下框部分との間に取り付けられるので、開閉の操作中に誤って指などを挟みやすい配置になる。さらに、特許文献1と同様に、屋内からは窓の外側の面を清掃することができないという不便な面があった。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、障子の開放角度を制限し保持する機能を簡単な構造で実現することができ、安全で使い勝手のよい窓用開閉調節器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、窓枠に障子枠が軸着されて開閉する障子の開放角度を制限し保持する窓用開閉調整器であって、
両端が開口した筒状体であって、後側開口端付近の側面に軸孔が形成されたケースと、前記ケースの中空部にスライド自在に挿通された棒状部材であって、一端が前記ケースの前側開口端から突出し、前記ケースの前記中空部に収容されている所定箇所にアーム位置決め孔等のアーム位置決め部が形成されたアームとを備え、
さらに、障子枠に固定される本体を有し、前記本体が、前記ケースから突出した前記アームの端部に、ボールジョイント構造で首振り自在、且つ、回転自在に取り付けられた障子ブラケットと、前記ケースの中空部に設けられ、前記アームがスライドして前記ケースから所定の長さ突出すると、前記アーム位置決め部に係合することによって当該スライド動作を停止させるストッパ部材を有するアーム位置決め機構とを備え、
さらに、前記窓枠に取り付けられる固定部と、前記ケース側面の前記軸孔に挿入されて前記ケースを支持する軸部を有し、前記ケースを、前記窓枠の室内側面と平行に回転自在に、且つ、当該窓枠の側面に対して所定の傾斜角度以下の範囲で揺動自在に支持するケース支持部とを有する枠ブラケットとを備え
前記枠ブラケットの前記固定部は、前記障子の開閉端が近接する前記窓枠の辺に取り付けられ、前記障子が閉じられると、前記アームが前記ケース内に収められる方向にスライドして前記前側開口端からの突出長さが短くなり、前記障子が開けられると、前記アームが前記ケースから突出する方向にスライドし、所定の突出長さになると、アーム位置決め部と前記ストッパ部材が係合することによって、障子の位置が所定の開放角度で保持される窓用開閉調整器である。
【0009】
また、前記ストッパ部材は、頭部の形状が前記アーム位置決め部であるアーム位置決め孔の中に挿入可能なストッパピンであり、前記アーム位置決め機構は、前記ストッパピンを前記アームの側面に向けて付勢する付勢手段を備え、前記アームの突出長さが短いときは、当該付勢によって前記ストッパピンの前記頭部が前記アームに当接し、前記アーム位置決め孔が前記ストッパピンの前記頭部の位置に達すると、当該付勢によって当該頭部が前記アーム位置決め孔に挿入される構成にすることができる。
【0010】
また、前記ストッパピンの前記頭部は、前記ケースの後側開口部から前側開口部の方向に向けて低くなる傾斜面を有し、前記アーム位置決め機構は、前記アーム位置決め孔に挿入された前記ストッパピンの頭部を前記付勢手段の付勢と反対向きに押し戻すストッパ解除ボタンを備え、前記ストッパピンが前記アーム位置決め孔に挿入された状態で前記ストッパ解除ボタンを押圧すると、前記ストッパピンの前記傾斜面の一部が前記アーム位置決め孔の外に押し出され、さらに、前記アームが前記ケース内に収容される向きの力が加わると、前記ストッパピンは、前記傾斜面に前記アーム位置決め孔の内周縁部が当接する力によって外に押し出され、前記アームがスライド可能な状態になり、反対に、前記アームが前記ケースから突出する向きの力が加わると、前記ストッパピンの前記頭部の外周側面が前記アーム位置決め孔の内周縁部に係止され、前記アームの保持状態が維持される構成にすることができる。
【0011】
また、アーム位置決め機構は、前記ケースの前記前側開口部に取り付けられ、ストッパ解除部材を内部に誘導する差込口が形成されたガイドと、前記ストッパピンと一体に移動するストッパ基板とを備え、前記ストッパピンは、前記ストッパ基板の上面に突出するように設けられ、前記アームが前記ケース内に収容された状態で前記ストッパ解除部材が前記差込口から差し込まれると、前記ストッパ基板の上面が前記ストッパ解除部材によって係止され、前記ストッパピンの前記頭部が前記アーム位置決め孔に嵌合しない位置に保持される構成にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の窓用開閉調節器は、ケース及びアームの動きを制御するための回転軸等のジョイント数が少なく、構造が簡単でメンテナンス性にも優れている。また、ケース内をスライドするアームを停止させ、所定の位置に保持するアーム位置決め機構の構造も単純で、各部材の摩耗や劣化が生じ難い。さらに、ストッパ解除部材を用いることによって、アーム位置決め機構の動作を容易にキャンセルすることができ、窓のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第一の実施形態の窓用開閉調節器が窓に取り付けられ、その窓が閉じられた状態を示す正面図(a)と、開かれた状態を示す正面図(b)である。
【図2】図1(a)のA部を拡大した正面図である。
【図3】図1(a)のA部を拡大した左側面図である。
【図4】第一の実施形態の窓用開閉調節器のケース及び内部のアーム位置決め機構を示す平面図(a)と、正面図(b)である。
【図5】第一の実施形態の窓用開閉調節器のアーム及び障子ブラケットを示す平面図(a)、正面図(b)、及び、右側面図(c)である。
【図6】図5のアームに対して障子ブラケットが可動する様子を示す断面図(a),(b)である。
【図7】第一の実施形態の窓用開閉調節器のアームがケース内に深く収容されているときのアーム位置決め機構の状態を示す正面から見た断面図(a)と、右側面から見た断面図(b)である。
【図8】図4のアーム位置決め機構のガイドを示す右側面図(a)、正面図(b)、B−B断面図(c)、及び、C−C断面図(d)である。
【図9】図4のアーム位置決め機構のストッパ基板及びストッパピンを示す平面図(a)、正面図(b)、及び、左側面図(c)である。
【図10】図4のアーム位置決め機構のストッパ解除ボタンを示す平面図(a)、正面図(b)、及び、右側面図(c)である。
【図11】第一の実施形態の窓用開閉調節器により窓が閉じられた状態の横断面図である。
【図12】第一の実施形態の窓用開閉調節器により窓が開かれた状態の横断面図である。
【図13】第一の実施形態の窓用開閉調節器のアーム位置決め孔にストッパピンが嵌合しているときのアーム位置決め機構の長手方向の断面図(a)と、横断面図(b)である。
【図14】図13の状態で、さらにストッパ解除ボタンを押圧したときのアーム位置決め機構の状態の長手方向断面図(a)と、横断面図(b)である。
【図15】第一の実施形態の窓用開閉調節器のストッパ解除部材を示す平面図(a)と、正面図(b)である。
【図16】第一の実施形態の窓用開閉調節器のアームがケース内に深く収容されているとき、ストッパ解除部材が差し込まれたアーム位置決め機構の長手方向断面図(a)と、横断面図(b)である。
【図17】図15の状態からアームがスライドし、アーム位置決め孔がストッパピンの頭部上方に移動したときのアーム位置決め機構の長手方向断面図(a)と、横断面図(b)である。
【図18】図15の状態からアームがスライドし、ケースの外に抜け出たときのアーム位置決め機構の状態の長手方向断面図(a)と、横断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の第一の実施形態の窓用開閉調整器10について、図面に基づいて説明する。窓用開閉調整器10は、図1に示すように、障子枠12aを構成する一方の縦框の中にガラス12bが嵌め込まれた矩形の障子12が窓枠14の縦枠部分に軸着されて成る外開き窓16に取り付けられ、障子12の開放角度を制限して保持する装置である。以下、窓用開閉調整器10の構成について説明する。
【0015】
窓用開閉調整器10は、図2、図3に示すように、ケース18、アーム20、障子ブラケット22、枠ブラケット24を備えている。ケース18は、図4に示すように、前側開口端18a及び後側開口端18bを有する断面矩形の筒状体であって、後側開口端18bはキャップ25で塞がれ、その付近の側面に軸孔18cが形成されている。また、中空部の前側開口端18a付近に、後述するアーム20のスライド動作を制御するアーム位置決め機構26が設けられている。アーム位置決め機構26については、後で述べる。
【0016】
ケース18の中空部には、アーム20がスライド自在に挿通され、図2、図3に示すように、ケース18の前側開口端18aから突出する側の一端に、障子ブラケット22が取り付けられている。アーム20は、図5に示すように、棒状の板材であり、ケース18の中空部に収容される側の端部に、厚み方向に貫通するアーム位置決め孔20aが形成されている。一方、障子ブラケット22は、障子枠12aの面部分に当接状態でネジ固定される本体22aを有し、本体22aの背面側にドーム状のボール受け部22bが延設されている。そして、ボール受け部22bが、アーム20のケース18から突出する側の端部に立設されたボール部20bに嵌合している。従って、障子ブラケット22は、図6に示すように、自在継ぎ手であるいわゆるボールジョイント構造によって、アーム20に対して首振り自在、且つ、回転自在に可動する。
【0017】
ケース18は、図2、図3に示すように、枠ブラケット24を介して窓枠14に取り付けられている。枠ブラケット24は、L字状に屈曲した2つの平面を有する板材で成り、一方の平面が窓枠14に当接状態で固定される固定部24aである。他方の平面は、ケース18の軸孔18cに挿入されてケース18を支持する軸24bが中央部分に立設され、ケース18を、窓枠14の内向きの側面と平行に回転自在に、且つ、当該窓枠の側面に対して所定の傾斜角度以下の範囲で揺動自在に支持するケース支持部24cである。ここでは、揺動自在な傾斜角度は、0〜10度に設定されている。
【0018】
次に、アーム位置決め機構26の構成を、図7〜図10を用いて説明する。アーム位置決め機構26は、図7に示すように、ガイド28、ストッパ基板30、ストッパピン32、スプリング34、ストッパ解除ボタン36で構成されている。なお、図7は、アーム位置決め機構26が動作しておらず、アーム20がスライド自在なときの様子を示している。
【0019】
ガイド28は、図8に示すように、ケース18の前側開口端18aを塞ぐ前壁38と後壁40が所定の間隔を開けて設けられ、下端部同士が底板42で繋がっている。前壁38と後壁40のやや上寄りの部分に、アーム20が挿通され、アーム20を摺動自在に支持するアーム孔44が形成され、さらに、前壁38のアーム孔44のやや下寄りの部分に、後述するストッパ解除部材46が差し込まれる差込口48が左右一対に形成されている。また、底板42の上面には、スプリング34の下端部を保持するスプリング保持溝42aが設けられている。
【0020】
ストッパ基板30は、ガイド28の前壁38と後壁40に挟まれた空間に僅かにゆとりをもって収まる外形の矩形の板材で、図9に示すように、左右端部から起立する一対の側壁30aを有している。この一対の側壁30aの間隔は、アーム20の幅よりも広い。また、ストッパ基板30の上面30bの中央に、ストッパピン32が、側壁30aが起立する方向に突出するように一体に設けられている。ストッパピン32は、アーム20がスライドしてケース18から所定の長さ突出すると、頭部32aがアーム位置決め孔18c内に嵌合して当該スライド動作を停止させるストッパ部材として機能する。また、ストッパピン32の頭部32aには、一方向に傾斜する傾斜面32bが設けられている。
【0021】
スプリング34は、側方から見て等脚台形状のコイルばねで、下端部がガイド28のスプリング保持溝42に収まる大きな径を有し、上端部がストッパピン32の下端部と嵌合する小さな径を有している。スプリング34は、組み立て状態で、ストッパピン32をアーム20に向けて付勢する付勢手段の働きをする。
【0022】
ストッパ解除ボタン36は、図10に示すように、ストッパ基板と同様の矩形の基板36aと、その中央部分に中空に突出した押圧部36bと、基板36aの左右端部から押圧部36bと反対向きに起立する一対の脚部36cを有している。
【0023】
ガイド28、ストッパ基板30、ストッパピン32、スプリング34及びストッパ解除ボタン36は、図7のように組み立てられ、アーム位置決め機構26を構成する。まず、ガイド28の底板42のスプリング保持溝42aにスプリング34の下端部が収められ、その上端部にストッパ基板30及びストッパピン32が取り付けられる。このとき、ストッパピン32の傾斜面32bの低い側が前側開口端18aに向くように配置される。ストッパピン32は、圧縮されたスプリング34によって上向きに付勢され、頭部32aがアーム20の下面に係止されている。
【0024】
ストッパ解除ボタン36は、アーム20の上面側を基板36aと一対の脚部36cで跨ぐように配置され、基板36aの下面をストッパ基板30の一対の側壁30aで支持している。また、ストッパ解除ボタン36の押圧部36bは、先端部分がケース18の側面に開口されたボタン孔50内に収まり、上面が外部に露出している。
【0025】
次に、外開き窓16の障子12が開閉されるときの窓用開閉調整器10の動作について、図11〜図14を用いて説明する。障子12が閉じられているとき、図11に示すように、窓用開閉調整器10は、ケース18とアーム20が床面に対してほぼ垂直の向き(図11の奥行き方向)に配置される。アーム20は、図2と図3のようにケース18に深く収容され、アーム位置決め機構26は、図7で説明したように、アーム20のスライド動作を妨げない状態になっている。また、窓枠14に固定された枠ブラケット24の固定部24aと障子12は、平行に位置している。
【0026】
障子12を屋外に向けて開いていくと、図12に示すように、ケース18は、枠ブラケット24のケース支持部24cの軸24bを中心に回動し、前側開口端18aが屋外に向いて突出する。それと同時に、アーム20がケース18内をスライドし、障子12の開閉端の移動に追従して、ケース18からアーム20が突出する長さが長くなる。また、窓枠14に固定された枠ブラケット24の固定部24aと障子12との位置関係が、当初の平行な状態から、斜めの状態に変化する。この平行な状態から斜めの状態に移行する動作は、アーム20に障子ブラケット22が取り付けられているボールジョイント構造と、枠ブラケット24のケース支持部24cがケース18を揺動自在に保持する保持構造によって、捩れが生じることなく円滑に行われる。
【0027】
障子12が所定の開放角度にまで開くと、アーム位置決め孔20aがアーム位置決め機構26の部分に近づく。アーム位置決め孔20aがストッパピン32の位置に達すると、図13に示すように、ストッパピン32がスプリング34によって付勢され、頭部32aがアーム位置決め孔20aに深く挿入される。また、ストッパピン32と一体にストッパ基板30もアーム20の方向に移動し、ストッパ基板32の一対の側壁30aに支持されているストッパ解除ボタン36の押圧部36bが、ケース18のボタン孔50から突出する。
【0028】
この動作により、アーム20は、ケース18の前側開口端18aから突出する方向のスライド動作、及び、ケース18内に収容される方向のスライド動作の両方が制限され、この位置に固定される。従って、障子12の最大開放角度がアーム位置決め機構26によって制限され、且つ、障子12をその最大開放角度で保持することができる。
【0029】
障子12を閉じるときは、ストッパ解除ボタン36の押圧部36bを指で押し込むことによって、アーム位置決め機構26の動作を解除する。ストッパ解除ボタン36が押圧されスプリング34の付勢と反対の方向に押し戻されると、ストッパ基板30及びストッパピン32も同じ向きに移動し、図14に示すように、ストッパピン32の傾斜面32bの一部がアーム位置決め孔20aの外に押し出される。従って、図14の状態で、アーム20がケース18内に収容される向きの力が加わると、ストッパピン32は、傾斜面32bにアーム位置決め孔20aの内周縁部が当接する力によって外に押し出され、アーム20がスライド可能な状態になり、障子12を閉じることができる。反対に、図14の状態で、障子12をさらに開こうとする向き、すなわち、アーム20がケース18から突出する向きに力が加わっても、ストッパピン32の頭部32aの外周側面がアーム位置決め孔20aの内周縁部に係止され、アーム20がスライドすることができず、アーム20の保持状態が維持される。従って、アーム位置決め機構26の動作を解除したときでも、障子12が誤って最大開放角度以上に開くおそれがないので、小さな子供が操作を誤ったとしても安全である。
【0030】
次に、障子12のメンテナンス等において、窓用開閉調節器10のアーム位置決め機構26によって規制される障子12の最大開放角度の制限を、ストッパ解除部材46を用いて解除する動作ついて、図15〜図18を用いて説明する。
【0031】
ストッパ解除部材46は、図15に示すように、使用者の持ち手部分になる握り部52と、握り部52からほぼ平行に延設された細長の棒状部分であって、アーム位置決め機構26のガイド28に形成された2つの差込口48に差し込み可能に形成された一対の差込片54とで構成されている。
【0032】
ストッパ解除部材46は、図16に示すように、アーム20がケース18内に深く収容されてスライド自在な状態で使用する。差込片54をガイド28の差込口48から差し込むと、差込片54は、ストッパ基板30とアーム20の間の空間に達し、ストッパ基板30がアーム20の方向に移動しないように上面30bを係止する。従って、図16の状態から障子12が開かれ、アーム位置決め孔20aがストッパピン32の位置に達しても、図17に示すように、ストッパピン32の頭部32aはアーム位置決め孔20aに嵌合することができず、アーム20のスライド動作を制限しない。さらに障子12を開くと、図18に示すように、アーム20はケース18内から抜け出て、障子12を制限なく広く開くことができる。また、この状態から障子12を閉じるときは、図16〜図18の操作を反対に辿ればよい。
【0033】
この実施形態の窓用開閉調節器10は、ケース18及びアーム20の動きを制御するための回転軸等の連結部材が少なく、構造が簡単でメンテナンス性にも優れている。また、ケース18内をスライドするアーム20を停止させ所定の位置に保持するアーム位置決め機構26の構造も単純で、各構成部材の摩耗や劣化が生じ難い。また、ストッパ解除部材46を用いることによって、アーム位置決め機構26の動作を容易にキャンセルすることができ、ストッパ解除部材26を用いて窓を広く開ければ、屋内から外開き窓16の外側の面を清掃することも可能になり、非常に便利である。
【0034】
なお、この発明の窓開閉用調節器は上記実施形態に限定されるものではなく、障子が窓枠の縦枠部分に軸着された外開き窓のほか、上枠部分に軸着された突き出し窓などに取り付けることも可能である。
【0035】
また、障子ブラケットがアームの端部に取り付けられる構造は、ボールジョイント構造であればよく、上記実施形態と反対に、障子ブラケットのボール部を設け、アームの端部にボール受け部を設けた構造でもよい。また、清掃等のために障子を広く開く必要がないときは、ストッパ解除部材を用いてアーム位置決め機構の動作を解除する構成を省略してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 窓用開閉調整器
12 障子
12a 障子枠
14 窓枠
16 外開き窓
18 ケース
18a 前側開口端
18b 後側開口端
18c 軸孔
20 アーム
20a アーム位置決め孔
20b ボール部
22 障子ブラケット
22a 本体
22b ボール受け部
24 枠ブラケット
24a 固定部
24b 軸
24c ケース支持部
26 アーム位置決め機構
28 ガイド
30 ストッパ基板
30a 側壁
30b 上面
32 ストッパピン
32a 頭部
32b 傾斜面
34 スプリング
36 ストッパ解除ボタン
46 ストッパ解除部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠に障子枠が軸着されて開閉する障子の開放角度を制限し保持する窓用開閉調整器において、
両端が開口した筒状体であって、後側開口端付近の側面に軸孔が形成されたケースと、
前記ケースの中空部にスライド自在に挿通された棒状部材であって、一端が前記ケースの前側開口端から突出し、前記ケースの前記中空部に収容されている所定箇所にアーム位置決め部が形成されたアームと、
障子枠に固定される本体を有し、前記本体が、前記ケースから突出した前記アームの端部に、ボールジョイント構造で首振り自在、且つ回転自在に取り付けられた障子ブラケットと、
前記ケースの中空部に設けられ、前記アームがスライドして前記ケースから所定の長さ突出すると、前記アーム位置決め部に係合することによって当該スライド動作を停止させるストッパ部材を有するアーム位置決め機構と、
前記窓枠に取り付けられる固定部と、前記ケース側面の前記軸孔に挿入されて前記ケースを支持する軸部を有し、前記ケースを、前記窓枠の室内側面と平行に回転自在に、且つ当該窓枠の側面に対して所定の傾斜角度以下の範囲で揺動自在に支持するケース支持部とを有する枠ブラケットとを備え
前記枠ブラケットの前記固定部は、前記障子の開閉端が近接する前記窓枠の辺に取り付けられ、
前記障子が閉じられると、前記アームが前記ケース内に収められる方向にスライドして前記前側開口端からの突出長さが短くなり、
前記障子が開かれると、前記アームが前記ケースから突出する方向にスライドし、所定の突出長さになると、アーム位置決め部と前記ストッパ部材が係合することによって、障子の位置が所定の開放角度で保持されることを特徴とする窓用開閉調整器。
【請求項2】
前記ストッパ部材は、頭部の形状が前記アーム位置決め部であるアーム位置決め孔の中に挿入可能なストッパピンであり、
前記アーム位置決め機構は、前記ストッパピンを前記アームの側面に向けて付勢する付勢手段を備え、前記アームの突出長さが短いときは、当該付勢によって前記ストッパピンの前記頭部が前記アームに当接し、前記アーム位置決め孔が前記ストッパピンの前記頭部の位置に達すると、当該付勢によって当該頭部が前記アーム位置決め孔に挿入される請求項1記載の窓用開閉調整器。
【請求項3】
前記ストッパピンの前記頭部は、前記ケースの後側開口部から前側開口部の方向に向けて低くなる傾斜面を有し、
前記アーム位置決め機構は、前記アーム位置決め孔に挿入された前記ストッパピンの頭部を前記付勢手段の付勢と反対向きに押し戻すストッパ解除ボタンを備え、
前記ストッパピンが前記アーム位置決め孔に挿入された状態で前記ストッパ解除ボタンを押圧すると、前記ストッパピンの前記傾斜面の一部が前記アーム位置決め孔の外に押し出され、さらに、前記アームが前記ケース内に収容される向きの力が加わると、前記ストッパピンは、前記傾斜面に前記アーム位置決め孔の内周縁部が当接する力によって外に押し出され、前記アームがスライド可能な状態になり、反対に、前記アームが前記ケースから突出する向きの力が加わると、前記ストッパピンの前記頭部の外周側面が前記アーム位置決め孔の内周縁部に係止され、前記アームの保持状態が維持される請求項2記載の窓用開閉調整器。
【請求項4】
アーム位置決め機構は、前記ケースの前記前側開口部に取り付けられ、ストッパ解除部材を内部に誘導する差込口が形成されたガイドと、前記ストッパピンと一体に移動するストッパ基板とを備え、
前記ストッパピンは、前記ストッパ基板の上面に突出するように設けられ、
前記アームが前記ケース内に収容された状態で前記ストッパ解除部材が前記差込口から差し込まれると、前記ストッパ基板の上面が前記ストッパ解除部材によって係止され、前記ストッパピンの前記頭部が前記アーム位置決め孔に嵌合しない位置に保持される請求項2又は3記載の窓用開閉調整器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−127299(P2011−127299A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285022(P2009−285022)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(591006117)株式会社ナガエ (16)