説明

窯口集塵装置

【課題】窯口集塵装置の小型化及び安全性を両立し、従来のバグフィルターと同等以上のヒューム除去を達成する窯口集塵装置を提供する。
【解決手段】コークス炉1の炭化室11内で乾留されたコークスを外部に押し出す押出機2に設けられ、前記炭化室11の窯口13から発生する粉塵を含んだ気体を吸入する集塵部31と、前記押出機2に設けられ、前記集塵部31から送られてくる粉塵を含んだ気体を吸入して該気体から粉塵を分離するサイクロン集塵機4であって、該吸入した気体が内周面に沿って螺旋状に流れるとともに、粉塵が前記内周面に当接し、かつ粉塵を気体から遠心分離する筒状で金属製の本体部を備えるサイクロン集塵機31と、前記押出機2に設けられ、前記サイクロン集塵機31が吐出する気体を濾過するフィルター33と、を備える窯口集塵装置3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯口集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉に装入される還元材としてのコークスは、複数銘柄の石炭をコークス炉の炭化室内部で乾留することにより製造される。乾留されたコークスは、押出機により炭化室外部に押し出され、この際、炭化室の窯口から粉塵が発生する。炭化室の窯口から発生した粉塵を集塵する窯口集塵装置として、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1は、押出機に設けられた集塵フードと、バグフィルターを有して地上に設けられた集塵機と、集塵フードおよび集塵機を接続するダクトとを備える窯口集塵装置を開示する。該窯口集塵装置は、炭化室の窯口から発生する粉塵を、押出機に設けられた集塵フードにより吸入するとともに、該粉塵を、ダクトを介して集塵機に誘引し、集塵する。特許文献2は、押出機に設けられ、炭化室の窯口から発生する粉塵を吸入する集塵フードと、集塵フードから送られてくる粉塵を吸着する電気集塵機とを備える窯口集塵装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−131604号公報
【特許文献2】特開2009−108250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の窯口集塵装置は、押出機に設けられるフードおよび地上に設けられる集塵機を接続するダクトと、地上に設けられる集塵機とのスペースが押出機の周囲に必要になり、装置が大型化する。
特許文献2に記載の窯口集塵装置は、押出機に設けられるため、押出機周囲のスペースを広く確保することができるが、窯口から粉塵と共に発生する火種(赤熱粉コークス)が高温の状態で電気集塵機に送られ、その火災の危険性があるという問題がある。また、電気集塵機では、ガス中にヒュームが十分に除去できない問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、窯口集塵装置の小型化及び安全性を両立し、従来のバグフィルターと同等以上のヒューム除去を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明に係る窯口集塵装置は、コークス炉の炭化室内で乾留されたコークスを外部に押し出す押出機に設けられ、前記炭化室の窯口から発生する粉塵を含んだ気体を吸入する集塵部と、前記押出機に設けられ、前記集塵部から送られてくる粉塵を含んだ気体を吸入して該気体から粉塵を分離するサイクロン集塵機であって、該吸入した気体が内周面に沿って螺旋状に流れるとともに、粉塵が前記内周面に当接し、かつ粉塵を気体から遠心分離する筒状で金属製の本体部を備えるサイクロン集塵機と、前記押出機に設けられ、前記サイクロン集塵機が吐出する気体を濾過するフィルターとを備えることを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、サイクロン集塵機は、気体から第1粉塵と、第1粉塵より粒径が小さい第2粉塵とを質量差により分離してもよい。このようにすれば、粒径が大きな第1粉塵を焼結原料として用いることができるとともに、粒径が小さな第2粉塵を高炉の羽口から吹き込む燃焼材として用いることができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記窯口にて発生したガスはヒュームを含み、前記フィルターは、例えば活性炭を充填したフィルターであり、前記サイクロン集塵機から送られてきた気体中の前記ヒュームを捕集してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、窯口集塵装置の小型化及び安全性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コークス炉および押出機を示す斜視図である。
【図2】窯口から発生する粉塵を集塵フードにて吸入する様子を示す平面図である。
【図3】サイクロン集塵機の断面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、コークス炉1および押出機2を示す斜視図である。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する異なる三軸である。X軸、Y軸及びZ軸の定義は、他の図面においても同様である。コークス炉1は、Y軸方向に並設された複数の炭化室11と、これら各炭化室11の炉体を保護するバックステー12とを備える。
【0013】
炭化室11は、充填された複数銘柄の石炭を乾留することによりコークスを製造する。各炭化室11におけるX軸方向の一端側には乾留されたコークスを排出するための図示しない排出用開口部が形成されており、他端側には乾留されたコークスを排出用開口部に向かって押し出すための押出用開口部13が形成されている。排出用開口部および押出用開口部13は、着脱自在の不図示の炉蓋により開閉される。
【0014】
押出機2は、炭化室11の並設方向(Y軸方向)に沿って延びるレール上を走行する不図示の台車と、台車上において炭化室11側に進退可能に設けられた押出ラム21とを備える。押出機2は、乾留後に炭化室11の前まで移動し、押出用開口部13を閉塞する炉蓋を開く。該炭化室11における排出用開口部の炉蓋は、排出用開口部側を走行するコークガイド車によって開かれる。
【0015】
これらの炉蓋が開かれた状態において、押出機2は、押出ラム21を押出用開口部13に向かって炭化室11の内部に押し込み、排出用開口部から乾留されたコークスを炭化室11の外部に押し出す。炭化室11の外部に押し出されたコークスは、コークガイド車を介して消火車に移され、この消火車において消火処理される。
【0016】
ところで、押出ラム21により炭化室11の内部に充填されたコークスを押し出す際に、押出用開口部13(以下、窯口13と記載)から、コークスの微細な粉塵と、コークス中に含まれる油分の蒸気であるヒュームとが発生する(図2参照)。そこで、押出機2には、これら粉塵およびヒュームを補足する窯口集塵装置3(以下、集塵装置3と記載)が設けられている。
【0017】
図1に戻り、集塵装置3は、集塵フード31(集塵部)、ダクト32、サイクロン集塵機4、フィルター33、およびブロワー34を備える。集塵フード31は、炭化室11に向かって進退可能に設けられ、炭化室11の窯口13から発生する粉塵およびヒュームを含んだ気体を吸入する。ダクト32は、集塵フード31およびサイクロン集塵機4を接続するダクト321と、サイクロン集塵機4およびフィルター33を接続するダクト322と、フィルター33およびブロワー34を接続する不図示のダクトと、ブロワー34の吐出側に接続するダクト323とを備える。
【0018】
図3は、サイクロン集塵機4の断面図である。サイクロン集塵機4は、筒状に形成されており、その周壁部は、金属により構成されている。サイクロン集塵機4は、集塵フード31から送られてくる粉塵を含んだ気体を吸入し、該気体から粒径の異なる2種類の粉塵を遠心分離する。サイクロン集塵機4は、気体から粉塵を遠心分離する本体部41と、本体部41により分離された粉塵が排出されるチャンバー42とを備える。
【0019】
本体部41の下端側には、該下端に向かうに従って径が漸減するテーパ筒状部411が形成されている。テーパ筒状部411の下端には、開口部412が形成されている。テーパ筒状部411は、この開口部412を介してチャンバー42に接続されている。本体部41の上部側面には、集塵フード31と連通する吸入口413が形成されている。本体部41の内部において、上部側には、ブロワー34と連通する導出口414が形成されている。
【0020】
ブロワー34からの負圧が導出口414に伝達されることにより、集塵フード31側から送られてきた粉塵を含んだ気体が、吸入口413を介して本体部41の内部に吸入される。吸入口413から吸入された気体は、本体部41の内周面に沿って本体部41の下方に向かって螺旋状に進む。この際、粉塵は、遠心力によりテーパ筒状部411の内周面415に向かって飛ばされ、この内周面415に当接しながら下方に進行する。
【0021】
ここで、本体部41は金属により構成されているため、本体部41の下方に向かって進む気体、粉塵を冷却することができる。本体部41の下方に向かって螺旋状に進む気体は、開口部412近傍で進行方向が下方から上方に反転し、粉塵は、開口部412からチャンバー42に排出される。チャンバー42に排出された粉塵は、ダストボックスに落下し集塵される。この粉塵は、粒径が所定値以上の粗大な粉塵(第1粉塵)である。開口部412近辺で該粉塵が分離された気体は、本体部41の径方向中央を通って導出口414からブロワー34側に排出される。
【0022】
図4は、図3のA−A断面図である。本体部41上部の内周面416には、周方向に間隔を隔てて複数のサブ開口部417が形成されている。サブ開口部417は、下方に延びるスリット形状に形成されている。サブ開口部417は、螺旋状に回転する気体から、粉塵を本体部41の径方向外側に排出し気体から分離する。サブ開口部417にて分離される粉塵は、粒径が所定値以下の微細な粉塵(第2粉塵)であり、捕集管418を通ってダストボックスに集塵される。ここで、第1及び第2粉塵の粒径の境界値は、サイクロン集塵機4の仕様を変えることにより適宜変更することができる。
【0023】
このように、本実施形態のサイクロン集塵機4は、粉塵の分離機能とともに、気体、高熱の粉塵等を冷却する冷却機能を有している。したがって、サイクロン集塵機4から排出される気体が十分に冷却される。このため、従来のバグフィルター単独の場合に濾布の燃焼防止で余分な空気を吸引する必要がなく、その分集塵風量が削減できてブロアーが小型化できる。また、サイクロン集塵機4及びサイクロン集塵機4の下流に位置するフィルター33を互いに近接した領域に設置できる。以上より、サイクロン集塵機4及びフィルター33をともに押出機2に搭載することができる。
【0024】
また、本実施形態では、気体に含まれる粉塵を、サイクロン集塵機4において、粒径が大きな粉塵と、粒径が小さな粉塵とに分離させることができる。そのため、粒径に応じて粉塵を様々な用途に活用することができる。例えば、粒径が大きな粉塵は焼結原料として用いることができる。粒径が小さな粉塵は高炉の羽口から吹き込む燃焼材として用いることができる。
【0025】
図1に戻り、フィルター33は、サイクロン集塵機4から送られてきた気体中のヒュームを捕集するとともに、サイクロン集塵機4にて捕集されなかった気体中の粉塵を捕集する。フィルター33には、例えば多孔質フィルター、バグフィルター(濾布)、吸水ポリマー、活性炭充填層およびセラミックボール充填層を後述のように適宜用いることができる。
【0026】
本実施形態では、サイクロン集塵機4においてコークスの油分の蒸気であるヒュームが冷却されて、液状化するため、フィルター33においてヒュームを吸着させやすくすることができる。つまり、本実施形態のサイクロン集塵機4によれば、粉塵を分離する集塵機本来の効果に加えて、温度冷却による過剰空気の吸引回避、フィルター33の発火防止及びヒュームの液状化効果を得ることができる。複数の機能をサイクロン集塵機4に集約化することにより、コストの削減及び設備の小型化を図ることができる。ブロワー34は、フィルター33を通過した気体を吸入し、ダクト323から吐出する。
【0027】
フィルターの選定にあたっては、サイクロン後のガス温度が濾布でも耐熱性が確保可能な200℃以下となる場合は、本実施形態として、フィルターとして濾布を用いるのが好ましい。これは、他のフィルターに比較して安価で設備管理も容易なためである。また、サイクロン後のガス温度が比較的高く濾布の適用が困難な場合は、セラミックボール充填層のフィルターが好ましい。ガス温度冷却のための不必要なガス吸引が回避できる。また、排ガス中のヒュームを従来以上に低減する必要がある場合は、活性炭充填層のフィルターを用いるが良い。比較的高温でも、ヒュームの十分な除去が可能となる。
【0028】
ここで、粉塵およびヒュームの捕集を地上に設けたバグ集塵機等の1つの設備で行う場合、設備規模も大きく高コストの設備となる。また、吸引する気体の温度が過剰に上昇した場合の対応手段も必要となり吸引風量が多くなる。しかしながら、本実施形態では、粉塵は主にサイクロン集塵機4により捕集するとともに、気体温度が低減され、過剰空気の吸引を回避できる。
【0029】
また、ヒュームはフィルター33において効率的に除去される。粉塵捕集設備とヒューム除去設備とを分離して適切に設計するため、設備規模を、集塵効率を維持しながら押出機2への搭載が可能な設備規模に縮小でき、設備を低コストにできる。そのうえ、本実施形態では、前述した様に、サイクロン集塵機4にて高熱の気体を冷却できるので、フィルターの火災に対する高い安全性を得ることができる。さらに、活性炭の充填層をフィルターとして用いることにより、従来以上にヒュームを除去できる。
(変形例)
上述の実施形態では、サイクロン集塵機4において粒径に応じて粉塵を分離回収したが、本発明はこれに限られるものではない。サイクロン集塵機4は、粒径に拘わらず粉塵を纏めて回収する一般的なサイクロン集塵機であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 コークス炉
2 押出機
3 窯口集塵装置
4 サイクロン集塵機
11 炭化室
13 窯口
31 集塵部(集塵フード)
33 フィルター
41 本体部
411 テーパ筒状部
412 第1開口部
414 導出口
415,416 サイクロン集塵機の内周面
417 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室内で乾留されたコークスを外部に押し出す押出機に設けられ、前記炭化室の窯口から発生する粉塵を含んだ気体を吸入する集塵部と、
前記押出機に設けられ、前記集塵部から送られてくる粉塵を含んだ気体を吸入して該気体から粉塵を分離するサイクロン集塵機であって、該吸入した気体が内周面に沿って螺旋状に流れるとともに、粉塵が前記内周面に当接し、かつ粉塵を気体から遠心分離する筒状で金属製の本体部を備えるサイクロン集塵機と、
前記押出機に設けられ、前記サイクロン集塵機が吐出する気体を濾過するフィルターと、
を備える窯口集塵装置。
【請求項2】
前記サイクロン集塵機は、前記気体から第1粉塵と、前記第1粉塵より粒径が小さい第2粉塵とを質量差により分離することを特徴とする請求項1に記載の窯口集塵装置。
【請求項3】
前記窯口にて発生したガスはヒュームを含み、
前記フィルターは、活性炭のフィルターであり、前記サイクロン集塵機から送られてきた気体中の前記ヒュームを捕集することを特徴とする請求項1又は2に記載の窯口集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95892(P2013−95892A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242220(P2011−242220)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】