説明

【課題】最小限の追加的な労力で焼成品質の点、特にサイクル時間の点に関して著しく改善される歯科用燃焼窯ならびに歯科用セラミックから形成された歯科補綴部材を焼成する方法を提供する。
【解決手段】熱処理される歯科補綴部材、特に複数の単位体からなる歯科補綴部材が挿入される加熱室(12)を備えた窯からなる特に歯科用窯である。前記の窯は熱伝導、対流、および/または赤外線放射を通じて前記歯科補綴部材(30)を加熱する加熱要素(16)をさらに含んでなり、熱伝導性が高い材料、特に炭化珪素から形成されたサセプタ内あるいは上に前記歯科補綴部材(30)が収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の特に歯科用の燃焼窯ならびに請求項14前段に記載の歯科補綴部材を焼成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の歯科用窯は通常抵抗加熱を有し、燃焼室周囲に均等に配置された加熱コイルを通じて燃焼室が高温に加熱される。
【0003】
加熱要素から放出された熱線が、まず熱放射と熱伝導を介し、さらには対流によって燃焼室内に配置された歯科補綴部材に伝導される。
【0004】
この種の高品質燃焼窯を使用して極めて均一かつ予め設定された温度管理に正確に従って熱処理が実施されることが完成した歯科補綴部材の品質に対して決定的に重要である。結果として、例えばZrOの焼成の場合に複数の単位体からなる歯科補綴部材を製造するために、例えば3単位体からなるクラウンに対して3時間、または6単位体からなるクラウンに対して8時間の焼成サイクル時間が必要とされる。
【0005】
長期的な焼成時間の短縮、すなわち複数の単位体からなる歯科補綴部材の焼成時間の短縮は、永続的な歪と発生した微細構造レベルの不均一性による品質の低下のリスクを伴い、その結果例えば強度等の材料特性の低下が生じる。このことは特に、燃焼室の幾何学的な設計によって予め決定されるとともに特に急速な加熱によって増大する温度の不均一性に起因する。
【0006】
サイクル時間を大幅に短縮することが歯科技工所の作業工程における処理能力に関して決定的に重要であり、そのために種々の試みが実施されている。特殊な温度プロフィールの支援と歯科用燃焼窯の動作領域の最適な設計ならびに燃焼室内における歯科補綴部材の正確な設置規定によって複数の単位体からなる歯科補綴部材の処理サイクル時間が8時間から3時間まで短縮されるが、10000ユーロ単位の高いコストが歯科技工所にとって必要になるような特殊な窯を使用しなければならない。
【0007】
さらに、歯科補綴部材の加熱および冷却特性曲線を改善するために多数の提案が成されているが、殆どの場合はいわゆる焼成補助材を使用しての単一の単位体からなる歯科補綴部材のものである。独国特許出願第102008015483号明細書には焼成補助材として球体床を使用することが開示されており、それによって特に温度検出を改善することができる。
【0008】
特定の環境下においては焼成補助材が燃焼室内の温度の均衡化において一定の改善を可能にし、そのことが特に複数の単位体からなるブリッジに関する場合に歯科補綴部材の品質に対して有効となる。しかしながら、複数の単位体からなるブリッジは著しい熱容量を有していて、すなわち加熱および冷却に時間がかかり、それが基本的に当業者のサイクル時間を短縮しようとする努力に対して障害となる。
【0009】
特にプロセス時間を短縮する試みに際して、使用される焼成補助材のタイプに依るが、特にその焼成補助材が断熱性を有する場合には温度勾配が大きくなり得る。
【0010】
少なくとも小型の例えば単一の単位体からなる歯科補綴部材に対して短いサイクル時間を達成するために、多様なサイズの燃焼窯を形成することも提案されており、従って歯科技工所が極めて小型の燃焼室を備えた燃焼窯と大型の燃焼窯を有するその他の燃焼窯を装備する。
【0011】
その解決方式によれば、小型で単一の単位体あるいは2個の単位体からなる歯科補綴部材に対して著しく短縮されたサイクル時間と良好な品質を可能にする。しかしながらこの解決方式は極めて高コストであり、そのため実用上はあまり広範に普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願第102008015483号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の目的は、最小限の追加的な労力で焼成品質の点、特にサイクル時間の点に関して著しく改善される請求項1前段に記載の燃焼窯ならびに請求項14前段に記載の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題は請求項1ないし請求項14に記載の発明によって解決される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0015】
意外なことに、本発明に係るサセプタを付加することによって燃焼サイクルの時間周期の大幅な短縮が達成され、例えば6個の単位体からなる歯科補綴部材に対して5時間から90分に短縮される。このことはサセプタが熱伝導性の高い材料、中でも炭化ケイ素から形成され燃焼室内に追加的に収容されるものであるため非常に驚くべきである。その効果は、サセプタとして理解される熱伝導性の高い容器体の内部温度が均衡化され前記容器が熱を極めて良好に受容するとともにそれを歯科補綴部材に伝導するためにサイクル時間が短縮されることである。
【0016】
意外なことに、歯科補綴部材に比べて高い超熱伝導性容器の表面の熱吸収性のため歯科補綴部材内に極めて良好かつより迅速に熱が拡散される。容器に対して歯科補綴部材を接触させるかあるいは少なくとも極めて接近させることによって、熱伝導が高度に保証されるとともに容器内において極めて均一な温度拡散が達成され、その拡散度合いは市販の歯科用燃焼窯の燃焼室内の温度拡散に比べて相当に大きなレベルになる。
【0017】
本発明によれば、熱処理される歯科補綴部材が極めて低い固有熱伝導率を備えることによっても短いサイクル時間を達成できることが極めて好適であり、例えば僅か2W/mKの伝導率を有するZrOとされる。
【0018】
全体としては、容器内の高速な熱伝導によって複数の個所で殆ど同時かつ極めて均等に熱が供給されるため、熱処理されるセラミックの場合によっては低い固有熱伝導率にそれ程大きく依存することはない。加えて、実際の焼成プロセスが開始するより高い温度において熱放射が優勢現象として生じる。高い放射性を有するSiC等をサセプタ容器の材料に使用する場合、より高い熱源の熱吸収がより良好になるばかりでなく、冷たい個所すなわち本発明においては歯科補綴部材あるいはサセプタ内部の冷たい面への熱放射も改善され、それによって高い固有熱伝導性のために温度が極めて急速に均一化される。
【0019】
本発明によれば、サセプタ容器が約2mmの壁厚を有するとともに、100W/mK超の熱伝導率を有する材料から形成されることが極めて好適である。薄い壁厚にもかかわらず熱を良好に容器内に拡散させることができ、また薄い壁厚のため加熱される追加的な質量が小さくされる。適宜な材料および壁厚選択によって所要の温度均一化における追加的な熱容量を必要に応じて広範囲に調節し得ることが理解される。従って例えば、少なくとも二次元の方式で良好な熱拡散を達成するために容器の底壁を側壁に比べて厚くし、例えば2.5mm対1.5mmとすることができる。
【0020】
この調節は、容器のために適した材料をセラミックに対応した方式で形成する必要があるため、構造上の考慮からも必要となる。
【0021】
歯科補綴部材は通常容器内に寝かせて載置され、実質的に容器中にわたって、例えば80mmの長さで延在する。その限りにおいて容器も燃焼室内で大きなスペースを占め、その際容器を中央に収容し従って燃焼室の全ての壁から、特に加熱要素から均等な離間関係が存在することが好適である。
【0022】
燃焼窯は最初に歯科補綴部材を容器内に挿入する方式で操作することが好適である。歯科補綴部材は容器の底床と良好に接触するように慎重に載置される。容器の遮蔽部材が閉じられその容器が正確に中央になるような方式で歯科用燃焼窯内あるいはその燃焼室内に挿入される。そのため、容器の正確な配置および固定を保証するための適宜な案内路あるいは溝部を歯科用窯が備えることが可能である。燃焼窯のフードあるいは扉を閉じた後、最大速度で熱処理を実行するために最適な材料の焼成速度に合わせて部分毎に例えば400℃/分までの可能な最高の加熱速度が選択される。
【0023】
任意の方式によって周知の予加熱窯を使用して例えば700℃の温度で歯科補綴部材の予加熱を実施し得ることが理解される。この場合、歯科補綴部材を容器と共に予加熱窯から燃焼室に移送することが好適であり、その際その移送中に容器内における歯科補綴部材の位置が不要に変化することが無いように慎重に確認される。
【0024】
本発明によれば、容器が平型の円筒形状を有しその高さが直径の約1/5であることが極めて好適である。その方式によって、特に容器の遮蔽部材から歯科補綴部材に向かって極めて良好な熱伝導が生じる。
【0025】
加えて、本発明によれば容器の材料が極めて低い熱抵抗、あるいは言い換えると極めて良好な熱伝導性を有することが極めて好適である。少なくとも100W/mKの熱伝導率が好適であり、200W/mKの熱伝導率であればさらに好適である。この種の容器は例えば炭化珪素等の特殊なセラミックから形成することができるが、その際139W/mKの相当に高い熱伝導率を有するモリブデンから容器を形成することもできる。酸化性の気中の場合、モリブデンが被覆を有することも可能である。適用温度が最大1500℃に制限される場合は180W/mKの熱伝導率を有する窒化アルミニウムの使用も可能である。
【0026】
本発明によれば、食品産業用と類似の容器をサセプタとして使用することも極めて好適であり、そのようにして比較的容易に入手することが可能になる。
【0027】
本発明の別の極めて好適な利点は、典型的な燃焼窯が特に本発明に係る容器を装備し得ることであり、従って本発明によれば既に市販されている歯科用窯に前記の容器を装着することができ従って追加的な設備コストは不要である。寿命及び機能を喪失することなく高い加熱速度のための歯科用窯のみを設計する必要がある。
【0028】
本発明によれば、本発明に係る容器が焼成される材料を準備および搬送するためにも特に適していることも極めて好適である。この目的のために焼成される歯科補綴部材を容器と最適に接触するように容器内に設置して慎重に調節することのみが必要である。この容器をその後予加熱窯内に収容してその窯内で例えば1時間の間隔にわたって約700℃の温度まで予加熱する。予加熱の間別の容器中の別の歯科補綴部材の焼成サイクルを歯科用窯内で実行することができ、その焼成サイクルが完了した後特段の苦労を伴わずに両容器を交換するか、完成した歯科補綴部材を収容した容器を燃焼窯から取り出してその取り出した容器の代わりに前記の予加熱された歯科補綴部材を収容した容器を挿入することができる。
【0029】
前記の挿入は中央になるような方式で実施されるが、燃焼室の底床に適宜な標記を付すかあるいは容器の中央への挿入を単純化するようなストッパを設けることも可能である。
【0030】
勿論、容器が冷温にある際に人間の手によって安全に取り扱いおよび安全に搬送するための構造的な要素、ならびにトングあるいはジャッキ等によって安全に取り扱うための構造的な要素を容器に装備あるいは内蔵することができる。
【0031】
容器内にはさらに、歯科補綴部材を特定の発注毎に識別するために有用な別の座標方式の標記を設けることができる。
【0032】
好適な構成形態において、歯のサイズの半分よりも小さいことが好適である凹部あるいは孔を容器が備える。その方式によって温度均一化の効果は維持しながら容器の熱容量をさらに低減することができる。
【0033】
本発明に係る燃焼窯の別の好適な構成形態によれば、幾つかの容器を積重ねるかあるいは少なくとも上下に配置して同時に燃焼する。例えば、炭化珪素製の2個の容器を3体の炭化珪素製の支持部材によって容易に相互に支承し、任意の適宜な形式で歯科補綴部材を収容することができる。それによって本発明に係る温度均一化効果は影響を受けないが、窯のフードを閉じる際に容器の積重ね体が振盪されるかあるいは崩壊することがないよう保証すべきであることが理解される。
【0034】
この点に関して本発明に係る燃焼室の壁への均等な離間が特に有効であり:それによって特に窯のフードが上方に持ち上げられるのではなく上方に旋回する方式の場合にフードと容器の衝突が防止される。
【0035】
本発明によれば、容器は高い熱伝導性の材料からなり閉鎖式の容器として形成することが極めて好適である。この方式によって、歯科用窯からの不純物が歯科補綴部材に影響与えることがないようにされる。ZrO製の歯科補綴部材の場合、処理時間あるいは方式の関係で保護層が省略されるMoSi加熱要素を備えた焼成窯からの不純物であり得る。本発明を適用しなければ、前記の保護層の欠如が歯科補綴部材の一時的な黄色−緑変色をもたらす可能性がある。
【0036】
サセプタ容器自体はその固有の高い熱伝導性のため任意のデザインを許容しながら温度衝撃付加に対して極めて耐久性であるとともに極めて破損に対して強固である。加えてSiCは極めて硬質でありその結果容器が極めて強固かつ長寿命となる。従って容器は極めて容易に洗浄可能となる。例えば、二珪酸リチウムセラミックおよびそれ用の添加剤の加工等の歯科加工プロセスからの不純物が残留する可能性が有り、それを例えばサンドブラスティング手段によって逐次容易に除去することができる。
【0037】
従って、本発明に係る容器を勿論極めて長い期間にわたって使用することができる。洗浄の容易性から同じ容器を例えばZrOの焼成と二珪酸リチウムセラミックの熱処理等の複数の異なったプロセスに使用することが可能になる。
【0038】
本発明の別の極めて好適な特徴によれば、容器が燃焼室の底床スペースを占めるとともに遮蔽部材によって閉鎖される。それに代えて、フードによって閉鎖することもできる。いずれも場合も高い熱伝導性を有する容器の加熱ならびにその容器内に配置されている歯科補綴部材の間接的な加熱は、熱放射、熱伝導、および対流の組み合わせによって実施される。加熱要素に沿って上昇する空気のため、または窯内に設置された吸気口および排気口のため燃焼室内に対流渦気流が発生し、それが燃焼室内の温度不均衡を増大させる可能性がある。
【0039】
その結果、補綴の結果の変動および不良につながる危険性がある。
【0040】
サセプタ容器の作用によってその種の対流渦気流から歯科補綴部材を隔離することにより、前記の変動および不良を確実に防止することができ、均等な温度レベルに保持される容器を通じて歯科補綴部材の間接的な過熱が実施される。容器内の温度レベルは均一であるため容器の内部では対流が発生せず、容器の高い熱伝導性を考慮しても外部で発生した対流によって温度の均一化が影響を受けることはない。
【0041】
好適な構成形態によれば、歯科補綴部材が支持構造体によって支持される。その種の支持構造体は、例えば10本からなるブリッジの大臼歯の間を横断して延在する支持棒によって実現してさらに切端方向にも追加的な支持構造体として作用するようにするか、または同様に支持リブによって互いに横方向に支持されている複数の単位体からなる歯科補綴部材を収容することができる円盤形状の支持構造体によって実現することもできる。
【0042】
この実施形態においては円盤形状の支持構造体が容器内に滞留することが可能であり、また熱処理の後でのみ支持リブを切断することによって歯科補綴部材を取り出すことができる。このことによって熱処理中に歯科補綴部材を最適な方式で収納するとともに歪みの無い焼成を実施することが可能になる。
【0043】
容器は対流熱を吸収して放射熱に変換するため、サセプタとして考えることが妥当である。
【0044】
特に100W/mK超、より好適には約200W/mKの熱伝導率を有する熱伝導性の高い材料から形成されたサセプタ容器内あるいはサセプタ容器上に歯科補綴部材を収容することが極めて好適である。
【0045】
サセプタ容器が1ないし5mm、特に1.5ないし2.5mm、好適には約2mmの壁厚を有することが極めて好適である。
【0046】
サセプタが少なくとも1650℃まで、特に1900℃までの耐熱性を備えた焼成セラミック材料から形成され、特に炭化珪素から形成されて120ワット/mKの熱伝導率を有することが極めて好適である。
【0047】
歯科補綴部材が複数の単位体から形成され、4個、6個あるいは14個までの単位体を含んでなり、14個の単位体の場合完全な歯列を形成することが極めて好適である。
【0048】
歯科補綴部材の支持構造体が特に支持リブを使用して歯科補綴部材の2つの領域を少なくとも支持し、その際特に少なくとも2個の歯科補綴部材が支持円盤内に収容されるとともに支持リブを介してそれと結合されることが極めて好適である。
【0049】
サセプタの放射係数が0.8超、特に約0.9であることが極めて好適である。
【0050】
歯科補綴部材が載置される底床壁と歯科補綴部材を包囲する側壁を有する容器としてサセプタが形成されるか、および/またはサセプタがポットあるいはカップの形式で歯科補綴部材を包囲し、特に遮蔽部材を備えることが極めて好適である。
【0051】
サセプタが歯科補綴部材を支持するとともに、歯科補綴部材を特に平らに寝かせて均等に配分されるような方式でサセプタ上に配置し、および/または歯科補綴部材をサセプタ上の複数点上で支承することが極めて好適である。
【0052】
燃焼窯が少なくともそのいずれかの部位において80K/分超、特に約400K/分の加熱勾配を有し、歯科補綴部材の加熱および燃焼あるいは焼成と冷却の両方がサセプタ内あるいはサセプタ上で実施されることが極めて好適である。
【0053】
燃焼室の中央に、特に燃焼室の壁部および/または加熱要素から均等な離間距離で配置された閉鎖式の容器としてサセプタが形成され、その際サセプタが燃焼室の底床あるいは基底の特に半分超を占めるとともに、サセプタと加熱要素の間に常に1cm超の間隙あるいは距離が存在することが極めて好適である。
【0054】
サセプタを形成する容器が歯科補綴部材の最大高より僅かに大きな高さを有するとともに、焼成される最大の歯科補綴部材が実質的に完全かつ任意の方向性をもってサセプタの内部に延在することが極めて好適である。
【0055】
容器を閉鎖式の容器として形成して燃焼室をサセプタ内部とサセプタ外部とに分割し、1個あるいは複数の焼成される歯科補綴部材が完全にサセプタの内部に収容されることが極めて好適である。
【0056】
容器を閉鎖式のサセプタ容器として従来の歯科用燃焼窯内に挿入するように設計し、炭化珪素等の高い熱伝導率を有する材料から形成するとともに5mm未満、特に約2mmの壁厚を有するようにすることが極めて好適である。
【0057】
歯科補綴部材が80mmあるいはそれ以上の長さを有するとともに燃焼室内において特に炭化珪素から形成されたサセプタ内に挿入し、歯科用窯内における歯科補綴部材の熱処理を少なくとも100分の時間で実施することが極めて好適である。
【0058】
1個あるいは複数の歯科補綴部材を50℃未満の室温中あるいは予加熱窯の温度中でサセプタ内に挿入し、熱処理サイクルの間サセプタを閉鎖して保持することが極めて好適である。
【0059】
その他の詳細、特徴ならびに種々の利点は添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る歯科用燃焼窯を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図中に示された歯科用燃焼窯10は円筒形状に形成された燃焼室12を有し、燃焼室の壁部14上に加熱体16を備えている。加熱体は図示されているように周回式の発熱コイル18とするかまたは垂直に配置された発熱棒とすることができる。周知の方式によって燃焼窯10は窯基底20と燃焼窯フード22とから構成され、その際フード22は焼成される材料を露出させるために上方に旋回し得るようにされる。
【0062】
本発明によれば歯科補綴部材あるいは複数歯科補綴部材の配列が燃焼室12内に収容される。本発明における独自の方式によって、直接的ではなく例えば炭化珪素等のサセプタ材料から形成され高い熱伝導率を有する容器24を介して間接的に挿入が実施される。容器材料の熱伝導率は約100ないし180W/mK、例えば約140W/mKとすることが好適である。
【0063】
実施例において、容器24は平型の円筒として形成されてカップ形状の容器収容部26と容器遮蔽部材28を備えてなる。容器遮蔽部材28は周知機の方式によって嵌め合わせ要素30を介して容器収容部26上に装着され、従って容器24は全体として閉鎖式の容器として形成される。
【0064】
容器24は歯科補綴部材30を収容し、この実施例おいては7個の単位体からなるクラウンが概略的に示されている。歯科補綴部材は容器24を満たすものではないが容器を横断して延在し、従ってその横断長は容器24の内径と比べて大幅に小さくはならない。
【0065】
勿論、幾つかのより小さな歯科補綴部材30を相互に隣接して配置するかまたは複数のより小さな容器24を使用することもでき、必要であれば複数の容器を相互に隣接させてあるいは相互に積重ねて使用することも可能である。
【0066】
図示された実施例においては容器24が直接窯底床20上に載置されているが、変更例においては容器が脚部を備えるかあるいは小さなブロック上に載置することができ、その結果容器の底床32が窯20の基底から離間するようにされる。その変更例によれば加熱体16から容器24への熱伝導が改善される。
【0067】
図示されているように加熱体16の発熱によって環状の対流渦気流40が発生し、それが特に容器の遮蔽部材に接触するが部分的には側壁42にも接触する。その接触と加熱体16の直接的な熱放射によって、とりわけ本発明の主旨に従って大きな加熱温度勾配が使用される場合に、容器24が急速に加熱される。しかしながら、そのことは温度極大点の誘導にはつながらず、何故なら外部から誘発される温度極大点が容器24内の歯科補綴部材30を間接的に加熱することによって削減され容器24内にはもはや温度極大点が存在しないためである。
【0068】
本発明によれば、容器の壁が5mmより厚くならないことが好適である。例えば、容器の底床32が2.5mmの壁厚、容器の側壁42は1.5mmの壁厚、ならびに遮蔽部材は2mmの壁厚を有することができる。その種の容器は充分に安全な方式で取り扱うことができるとともに小さな熱容量を有し、それによって生じる欠点が高い加熱および冷却温度勾配と組み合わされた温度均一化によって充分以上に補償されるようにされる。
【0069】
本発明に係る燃焼窯10は6個の単位体からなるクラウンに対して90分のサイクル時間を要し、一方同じ窯で容器を使用しない場合は5時間のサイクル時間を要する。
【符号の説明】
【0070】
10 歯科用燃焼窯
12 燃焼室
14 壁部
16 加熱体
18 加熱コイル
20 窯基底
22 フード
24 容器
26 容器収容部
28 容器遮蔽部材
29 嵌め合わせ要素
30 歯科補綴部材
32 底床
40 対流渦気流
42 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理される歯科補綴部材、特に複数の単位体からなる歯科補綴部材が挿入される加熱室を備えた窯からなり、前記窯が熱伝導および/または対流および/または赤外線放射を通じて前記歯科補綴部材を加熱する加熱要素をさらに含んでなる、特に歯科用窯である窯であり、100W/mK超、好適には約200W/mKの熱伝導率を特に有する熱伝導性が高い材料から形成されたサセプタ容器(24)内あるいは上に前記歯科補綴部材(30)が収容されることを特徴とする窯。
【請求項2】
サセプタ容器(24)が1ないし5mm、特に1.5ないし2.5mm、好適には約2mmの壁厚を有することを特徴とする請求項1記載の窯。
【請求項3】
サセプタ(24)が少なくとも1650℃まで、特に1900℃までの耐熱性を備えた焼成セラミック材料から形成され、特に炭化珪素から形成されて120ワット/mKの熱伝導率を有することを特徴とする請求項1または2記載の窯。
【請求項4】
歯科補綴部材(30)が複数の単位体から形成され、4個ないし14個までの単位体を含んでなり、14個の単位体の場合完全な歯列を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の窯。
【請求項5】
歯科補綴部材の支持構造体が特に支持リブの支援によって歯科補綴部材の2つの領域を少なくとも支持し、その際特に少なくとも2個の歯科補綴部材が支持円盤内に収容されるとともに支持リブを介してそれと結合されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の窯。
【請求項6】
サセプタの放射係数が0.8超、特に約0.9であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の窯。
【請求項7】
歯科補綴部材(30)が載置される底床壁(32)と歯科補綴部材(30)を包囲する側壁(14)を有する容器としてサセプタ(24)が形成されるか、および/またはサセプタがポットあるいはカップの形式で歯科補綴部材を包囲し、特に遮蔽部材(28)を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の窯。
【請求項8】
サセプタが歯科補綴部材(30)を支持するとともに、歯科補綴部材(30)を特に平らに寝かせて均等に配分されるような方式でサセプタ上に配置し、および/または歯科補綴部材(30)をサセプタ上の複数点上で支承することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項9】
燃焼窯(10)が少なくともそのいずれかの部位において80K/分超、特に約400K/分の加熱勾配を有し、歯科補綴部材(30)の加熱および燃焼あるいは焼成と冷却の両方がサセプタ内あるいはサセプタ上で実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項10】
燃焼室(12)の中央に、特に燃焼室(12)の壁部および/または加熱要素から均等な離間距離で配置された閉鎖式の容器(24)としてサセプタが形成され、その際サセプタが燃焼室(12)の底床あるいは基底(32)の特に半分超を占めるとともに、サセプタと加熱要素(18)の間に常に1cm超の間隙あるいは距離が存在することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の燃焼窯。
【請求項11】
サセプタを形成する容器(24)が歯科補綴部材(30)の最大高より僅かに大きな高さを有するとともに、焼成される最大の歯科補綴部材(30)が実質的に完全かつ任意の方向性をもってサセプタの内部に延在することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の窯。
【請求項12】
容器(24)を閉鎖式の容器(24)として形成して燃焼室(12)をサセプタ内部とサセプタ外部とに分割し、1個あるいは複数の焼成される歯科補綴部材が完全にサセプタの内部に収容されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の窯。
【請求項13】
平坦な容器基底あるいは底床と周回式の側壁ならびに容器遮蔽部材あるいはフードを備えてそれによって容器を閉鎖することができる歯科補綴部材用の容器であり、前記容器(24)を閉鎖式のサセプタ容器(24)として従来の歯科用燃焼窯(10)内に挿入するように設計し、炭化珪素等の高い熱伝導率を有する材料から形成するとともに5mm未満、特に約2mmの壁厚を有するようにすることを特徴とする容器。
【請求項14】
特に二酸化ジルコニウム(ZrO)等の歯科用セラミックから形成された歯科補綴部材を焼成する方法であって前記方法が加熱要素を含んだ燃焼窯を使用し前記歯科補綴部材が焼成のために前記歯科用窯の燃焼室内に挿入される方法であり、燃焼室内において歯科補綴部材が80mmあるいはそれ以上の長さを有して特に炭化珪素からなるサセプタ内に挿入され、歯科用窯内における歯科補綴部材の熱処理を少なくとも100分の時間で実施することを特徴とする方法。
【請求項15】
1個あるいは複数の歯科補綴部材を50℃未満の室温中あるいは予加熱窯の温度中でサセプタ内に挿入し、熱処理サイクルの間サセプタを閉鎖して保持することを特徴とする請求項14記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−105983(P2012−105983A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250190(P2011−250190)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)