説明

立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造

【課題】立ちはぜ折板屋根Rの上に緑化基盤材50を容易にかつ安定した姿勢で取り付ける。
【解決手段】立ちはぜ突条4の頂部に固定した固定装置20を利用して屋根勾配方向に直交する方向に所要本数の第1の棒部材10を取り付ける。緑化基盤材50は、裏面に、立ちはぜ突条4および固定装置20が入り込む第1の凹溝52と第1の凹溝52に直交し第1の棒部材10が入り込む第2の凹溝53を有している。緑化基盤材50は、第1の凹溝10に立ちはぜ突条4および固定装置20を入り込ませ、第2の凹溝53に第1の棒部材10を入り込ませ、かつ裏面の一部を折板屋根の山形部の水平な頂面22に面接触した状態で立ちはぜ折板屋根面Rに固定される。緑化基盤材50を利用して植物Pを生育する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の温度上昇を抑制しかつ景観を向上させる等の目的で、屋根の上に植物を育成することが行われる。折板屋根の上に植物を育成することも行われており、特許文献1には、金網等で作られる底網と側網とからなるコンテナを折板屋根に取り付けられているボルトを利用して折板屋根に固定し、その中に、遮熱材、緑化基盤材、蓋網などを収容するようにした緑化構造が記載されている。また、特許文献2には、立ちはぜ折板屋根の山形部の頂部に形成される突条(立ちはぜ)にクランプを固定し、そのクランプを利用して平板状の発泡樹脂製断熱板を取り付けて折板屋根面を平坦面とし、その発泡樹脂製断熱板の上に前記クランプに立設した支柱を利用して緑化基盤材を固定し、固定した緑化基盤材の上に植物を育成するようにした緑化構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−125387号公報
【特許文献2】特開2008−45324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のよう、緑化に必要な材料である、遮熱材、緑化基盤材、蓋網などを折板屋根に固定したコンテナに収容して緑化構造体とすることは、緑化基盤材等の安定化が図られるともに、施工が容易化される利点がある。しかし、特許文献2に記載されるような立ちはぜ折板屋根の緑化構造に特許文献1に記載の緑化構造体を適用しようとすると、緑化構造体の荷重は立ちはぜ折板屋根の山形部の頂部に形成される突条(立ちはぜ)の頂部のみによって支持されることとなり、金網等で作られるコンテナに変形が生じやすくなる。そのために、金網みの編み目を細かくするあるいは径の太い針金を用いるなどによって、コンテナに大きな強度を持たせることが必要となり、コンテナに係る経費が増大する。一方、特許文献2に記載の緑化構造体では、立ちはぜ突条に固定したクランプを利用して発泡樹脂製断熱板を取り付けて折板屋根面を平坦面とし、その上に緑化基盤材を固定するようにしているので、緑化基盤材の姿勢の安定化は確保できるが、折板屋根面を平坦面とするために発泡樹脂製断熱板を配置することが必要であり、施工がやや複雑化している。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、立ちはぜ折板屋根の上に緑化基盤材を固定する固定構造において、施工が容易でありながら緑化基盤材の安定した取り付け姿勢を得ることのできる固定構造を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、立ちはぜ折板屋根の山形部の上に緑化基盤材を固定する固定構造は、立ちはぜ突条の頂部を利用して屋根勾配方向に直交する方向に1本または2本以上の第1の棒部材が取り付けられており、前記緑化基盤材は裏面に前記立ちはぜ突条が入り込む第1の凹溝と該第1の凹溝に直交し前記第1の棒部材が入り込む第2の凹溝を有しており、前記緑化基盤材は、前記第1の凹溝に前記立ちはぜ突条を入り込ませ前記第2の凹溝に前記第1の棒部材を入り込ませかつ裏面の一部を折板屋根の山形部の水平な頂面に接した状態で立ちはぜ折板屋根面に固定されていることを特徴とする。
【0007】
上記の固定構造では、緑化基盤材は、その裏面を折板屋根の山形部の水平な頂面に接した状態で立ちはぜ折板屋根面に固定されており、その取り付け姿勢は極めて安定した姿勢となる。また、緑化基盤材は、立ちはぜ突条の頂部を利用して屋根勾配方向に直交する方向に取り付けられた第1の棒部材を、その裏面に形成した第2の凹溝に入り込ませた姿勢で立ちはぜ折板屋根面に固定されており、施工時や施工後において、屋根勾配方向へ緑化基盤材が移動するのも確実に阻止できる。そのために、取り付けの安定性とともに施工の容易性も確保される。従来技術のように、立ちはぜ折板屋根面を平坦面とするために平板状の樹脂製断熱板を用いることも要しないので、このことからも施工の容易性も確保される。さらに、第1の棒部材には上方から大きな集中荷重が掛かることはないので、径の細い材料を第1の棒部材として用いることが可能であり、材料費の低減ももたらされる。
【0008】
本発明による立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造の一態様では、前記第1の棒部材には屋根勾配方向に1本または2本以上の第2の棒部材が取り付けられており、前記緑化基盤材は裏面側に第3の凹溝を有しており、緑化基盤材は該第3の凹溝に前記第2の棒部材を入り込ませた状態で立ちはぜ折板屋根面に固定されている。
【0009】
この態様では、屋根勾配方向に直交する方向での緑化基盤材の移動も前記第2の棒部材によって阻止されるので、緑化基盤材の取り付け姿勢はさらに安定したものとなる。なお、前記第2の棒部材は、立ちはぜ突条に対応する位置で前記第1の棒部材に取り付けられていてもよく、その場合には、前記第2の凹溝が前記第3の凹溝としての機能も果たすことができるので、第3の凹溝を省略することもできる。
【0010】
本発明において、前記棒部材は任意の材料であってよいが、作業の容易性と経済性に加え所要の強度を保持していることから、金属棒例えば針金であることは特に好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立ちはぜ折板屋根の上に緑化基盤材を固定する固定構造において、施工が容易でありながら緑化基盤材の安定した取り付け姿勢が得られる緑化基盤材の固定構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造の一例を示す図。
【図2】各部材を立ちはぜを利用して固定するための固定装置の一例を説明する図。
【図3】本発明で用いる緑化基盤材を裏面側から見て示す図。
【図4】本発明による固定構造を用いて折板屋根へ固定された緑化構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1および図4において、Rは立ちはぜ折板屋根であり、屋根勾配方向Xに直交するY方向での断面を示している。立ちはぜ折板屋根Rは、左右の立ち上がり部1,1と、その上端部の水平な頂面2,2と、該頂面2の先端から垂直に立ち上がる立ちはぜ部3,3とを備えた長尺状の屋根板5を、隣接する屋根板5,5の立ちはぜ部3,3同士を係合(はぜ継ぎ)しながら、梁(不図示)の上に取り付け具を用いて固定するようにして形成されている。本発明において、左右の立ち上がり部1,1の上端部の水平な頂面2,2で形成される部分を山形部の水平な頂面2と呼び、立ちはぜ部3,3同士の係合部を立ちはぜ突条4と呼ぶ。
【0014】
本発明による緑化基盤材の固定構造では、前記立ちはぜ突条4と折板屋根Rの山形部の水平な頂面2,2を利用して緑化基盤材50を折板屋根Rの上に固定する。固定に当たっては、最初に、立ちはぜ突条4の頂部を利用して屋根勾配方向Xに直交する方向Yに、針金等である1本または2本以上の第1の棒部材10を取り付ける。第1の棒部材10の立ちはぜ突条4の頂部への取り付けは適宜の方法で行えばよいが、この実施の形態では、図2に示す固定装置20を用いている。
【0015】
以下に、固定装置20をその取り付け方法と共に説明する。固定装置20は、立ちはぜ突条4を左右から挟持できる一対のクランプ片21a、21bを有し、固定に当たっては、図1に示すように、前記一対のクランプ片21a、21bで立ちはぜ突条4を挟持した姿勢とする。そして、双方の水平な天面22、22に形成した開口23、23を通して、固定用ボルト24を立設し、該固定用ボルト24をナット25により締め付ける。それにより、一対のクランプ片21a、21bは立ちはぜ突条4に堅固に固定されるとともに、そこから固定用ボルト24が垂直に立設した状態となる。
【0016】
同様にして、折板屋根Rの立ちはぜ突条4に対して適数の固定装置20を取り付ける。図に示す例では、固定装置20を、1つおきの立ちはぜ突条4のそれぞれに屋根勾配方向Xの方向に所定の距離をおいて多段に取り付けており、各段での固定装置20は屋根勾配方向Xに直交するY方向に一直線上に整列するようにされている。
【0017】
そのようにして固定した前記Y方向に整列する複数個の固定装置20を用いて、前記した第1の棒部材10を取り付ける。取り付けに当たっては、第1の棒部材10を、Y方向に整列している複数個の固定装置20にそれぞれ立設している各固定用ボルト24を利用して仮係止する。その上から、図2に示す係止具30を取り付ける。図2に示すよう、係止具30は箱型であり、4つの側壁31と天面32を有している。対向する2つの側壁には第1の係止溝33が形成されており、天面32には開口34が形成されている。なお、図2に示す係止具30は、第1の係止溝33を形成した側壁と直交する2つの側壁に第2の係止溝35が形成されているが、これは後記するように、第2の棒部材11を固定するときに用いられる。
【0018】
前記のように第1の棒部材10を仮係止した後、前記係止具30をその天面32に形成した開口34に前記固定用ボルト24を通過させながら落とし込む。それにより、仮係止された第1の棒部材10は係止具30に形成した第1の係止溝33内に入り込んだ姿勢となる。その状態でナット26を締め付けることで、第1の棒部材10は立ちはぜ突条4の頂部を利用してしっかりと固定された状態となる。
【0019】
第1の棒部材10に屋根勾配方向の1本または2本以上の第2の棒部材11を取り付けた格子状の枠材を用いることもできる。その際に、前記第2の棒部材11は、第1の棒部材10における前記Y方向のどの位置に取り付けられていてもよいが、折板屋根Rの立ちはぜ突条4に沿う位置に取り付けられる場合には、固定時に、係止具30に形成した前記第2の係止溝35内に第2の棒部材11が入り込んだ姿勢で、第1の棒部材10と同時に第2の棒部材11も、立ちはぜ突条4を利用して固定されることとなる。
【0020】
次に、緑化基盤材50を立ちはぜ折板屋根に取り付ける。緑化基盤材50は基本的に従来の屋上緑化で用いられているものであってよく、この例では型内発泡樹脂成形品であって、表面側には貯水用空所51が多数形成されている。図3に示すように、裏面には、立ちはぜ折板屋根上に配置したときに、前記立ちはぜ突条4とそこに固定した前記固定装置20(および図示の例では第2の棒部材11)が入り込むことのできる第1の凹溝52が所要本数だけ形成されている。さらに、第1の凹溝52に直交するようにして、前記した第1の棒部材10が入り込むことのできる第2の凹溝53が所要本数だけ形成されている。第1の凹溝52および第2の凹溝53の深さは、緑化基盤材50を立ちはぜ折板屋根上に配置したときに、その裏面が折板屋根の山形部の水平な頂面2、2に接した状態となり得る深さとされている。
【0021】
図示の緑化基盤材50は、必須ではないが、前記第1の凹溝52近傍の裏面部分に、適数のスリット54を排水溝として備えている。スリット54は、緑化基盤材50がその裏面を折板屋根の山形部の水平な頂面2、2に接した姿勢とされたときに、その頂面2,2を外れた位置まで達する長さとされている。また、必須ではないが、図示の例では、緑化基盤材50を立ちはぜ折板屋根上に配置したときに、立ちはぜ突条4に固定された固定装置20に立設した固定用ボルト24に対向する位置に、該ボルトが貫通することのできる貫通孔55(図1)が形成されている。
【0022】
緑化基盤材50の取り付けに当たっては、第1の凹溝52内に立ちはぜ突条4を、第2の凹溝53内に第1の棒部材10を、また貫通孔55に前記立設した固定用ボルト24を、それぞれ入り込ませた状態で、立ちはぜ折板屋根の上に配置する。そのときに、緑化基盤材50の裏面の一部は、折板屋根Rの山形部の水平な頂面2、2に接した状態となり、安定した姿勢が得られる。そして、留め付けナット27(図2)を固定用ボルト24に留め付けることで、すべての固定作業は終了する。
【0023】
植生に当たっては、緑化基盤材50の上に図示しない適宜の植裁マット等を置き、その上に図示しない飛散防止マットを取り付けた状態で、所要の散水等を行えばよい。それにより、図4に示すように、緑化基盤材50の上には植物Pが生育する。植生中、緑化基盤材50の裏面が折板屋根の山形部の水平な頂面2、2に接した領域に水が入り込むことがあるが、入り込んだ水は前記したスリット54を通って頂面2の外に排除されるので、山形部の頂面2、2に腐食が生じるのは回避できる。
【0024】
本発明による立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材50の固定構造においては、前記した第1の棒部材10と、配置する場合での第2の棒部材11とが、裏面に形成した第2の凹溝53および第3の凹溝(前記したように、図示の例では第1の凹溝52がこれを兼ねている)内に入り込んでいるので、緑化基盤材50の屋根面方向での移動は規制される。そのために、もし前記した飛散防止マット等の手段で緑化基盤材50が浮き上がり方向へ移動するのを規制できる場合には、固定用ボルトとして長さの短いものを用いて係止具30により第1の棒部材10のみを固定するようにし、留め付けナット27による緑化基盤材50の固定を省略するか、または固定箇所の数を少なくすることができる。その場合、前記貫通孔55を省略するかまたは数を少なくすることができるので、全体の構成を簡素化することができる。
【0025】
また、緑化基盤材50にかかる上からの荷重は、緑化基盤材50の裏面が折板屋根の山形部の水平な頂面2、2と面接触する広い領域で面荷重として受け止められるので、上からの荷重に対する緑化基盤材50の安定性も得られる。換言すれば、第1の棒部材10および第2の棒部材11には上からの集中荷重が作用することはないので、径の細い針金等であっても所要の強度を備えることができ、また第1の棒部材10および第2の棒部材11のピッチも広く取ることができる。それにより材料費の低減ももたらされる。
【符号の説明】
【0026】
R…立ちはぜ折板屋根、
P…植物、
2…山形部の水平な頂面、
3…立ちはぜ部、
4…立ちはぜ突条、
5…屋根板、
10…第1の棒部材、
11…第2の棒部材、
20…固定装置、
21a,21b…一対のクランプ片、
24…固定用ボルト、
30…係止具、
50…緑化基盤材、
51…貯水用空所、
52…第1の凹溝(第3の凹溝を兼ねる)、
53…第2の凹溝、
54…排水溝として機能するスリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ちはぜ折板屋根の山形部の上に緑化基盤材を固定する固定構造であって、
立ちはぜ突条の頂部を利用して屋根勾配方向に直交する方向に1本または2本以上の第1の棒部材が取り付けられており、
前記緑化基盤材は裏面に前記立ちはぜ突条が入り込む第1の凹溝と該第1の凹溝に直交し前記第1の棒部材が入り込む第2の凹溝を有しており、
前記緑化基盤材は、前記第1の凹溝に前記立ちはぜ突条を入り込ませ前記第2の凹溝に前記第1の棒部材を入り込ませかつ裏面の一部を折板屋根の山形部の水平な頂面に接した状態で立ちはぜ折板屋根面に固定されている、
ことを特徴とする立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造。
【請求項2】
前記第1の棒部材には屋根勾配方向に1本または2本以上の第2の棒部材が取り付けられており、前記緑化基盤材は裏面側に第3の凹溝を有しており、緑化基盤材は該第3の凹溝に前記第2の棒部材を入り込ませた状態で立ちはぜ折板屋根面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造。
【請求項3】
前記棒部材は金属棒であることを特徴とする請求項1または2に記載の立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72265(P2013−72265A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214354(P2011−214354)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)