説明

立体紙の製造方法及びその製法を利用した立体紙

【課題】凹凸模様のある趣向に富んだ立体紙を容易に製造できる製法を提供する。
【解決手段】溶解した製紙原料4と、表面に凹凸模様11が形成された多孔質の弾性型材10と、前記製紙原料4を受ける桁12と有し、該桁12上に前記弾性型材10を載置し、該弾性型材10上に前記溶解した製紙原料4を流し込み、該製紙原料4を乾燥させて成型物を形成させた後、該成型物から前記弾性型材10の弾性を利用して前記成型物を離型させる。離型させて得られた立体紙は凹凸模様が形成されているために、機械的強度に優れた強靭な立体紙が形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸模様が形成された立体紙の製造方法及びその製法を利用して新規な構造とした立体紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に凹凸模様が形成された立体紙の製造方法として、例えば特許第2772747号に記載されたものがある。この技術は、紙製化粧材の製法として、少なくとも一方が連続気孔付多孔質弾性体で形成されている上型と下型を準備し、上記両型を合わせて型を閉じた状態で上記上型および下型の少なくとも一方の成型空間に製紙用原質を加圧注型し、上記連続気孔付多孔質弾性体の連続気孔を介して上記原質を吸引脱水し、得られた成形品を脱型し乾燥させて紙製化粧材を得るようにしている。
【0003】
すなわち、(1)上型か下型の少なくともいずれかにゴムスポンジ製等の連続多孔質弾性体を使用すること、(2)上型と下型を合わせたて形成された空間に製紙用原質(原料)を加圧注入すること、(3)成形時には型の材質である、連続気孔を介して加圧注入した製紙用原料の吸引脱水を図ること、(4)脱型時には、逆に成形空間に加圧空気を送って脱型することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2772747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の立体紙の製造方法では、概略以下のような解決すべき課題がある。
(1)一対の上型および下型を使用し、これらの型を位置規制するためのシール枠を必要として装置構成が自ずと複雑化すること、
(2)上型と下型の合わさった成形空間に成形材料タンクから製紙用原料を加圧注型する構成であるため、成形空間から溶解した製紙原料が外部に漏洩しないようにパッキン等を用いたシール構造が必然的に必要になること、
(3)種々の板厚の立体紙(化粧材)を成形するには、成形空間の間隙を調整した何種類かの型を準備しなければならないこと、
(4)化粧材の成形時には吸引脱水し、その脱型時には成形空間に加圧空気を吐出するようにしているため、配管を含めてシステム全体が大掛かりになること、
【0006】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたもので、製造方法及び装置が大掛かりとならず、上記課題(1)〜(4)を解決し、表面に種々の凹凸模様のある立体紙を容易に製造し得る製造方法と、その製造方法を利用して機械的強度の優れた立体紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、溶解した製紙原料と、表面に凹凸模様が形成された多孔質の弾性型材と、前記製紙原料を受ける桁と有し、該桁上に前記弾性型材を載置し、該弾性型材上に前記溶解した製紙原料を流し込み、該製紙原料を乾燥させて成型物を形成させた後、該成型物から前記弾性型材の弾性を利用して前記成型物を離型させることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記弾性型材が多孔質のポリウレタン樹脂であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記桁の底部に金網を有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記弾性型材上に流し込んだ製紙原料の均一化を図るために、前記桁を水平法方向に前後左右及び/又は垂直方向に前後揺動させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記弾性型材と前記桁とが一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、溶解した製紙原料と、表面に凹凸模様が形成された多孔質の弾性型材と、前記製紙原料を受ける桁と有し、該桁上に前記弾性型材を載置し、該弾性型材上に前記溶解した製紙原料を流し込み、該製紙原料を乾燥させて成型物を形成させた後、前記弾性型材上に形成された成型物から該弾性型材を離型させることなく該弾性型材を残存させることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、表面に凹凸模様が形成された多孔質の弾性型材上に溶解した製紙原料を流し込んで硬化させて得られる、表面に凹凸模様が形成された第一の紙層と、該第一の紙層の裏面側に、前記弾性型材を離型させることなく緩衝材として残存させて成る第二のクッション層とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、概略次のような効果を奏する。
(1)特に製作コストの掛かる成形型を準備することなく、極めて簡単に、表面に凹凸模様ある立体紙を製造することができる。
(2)弾性型材を残存させることにより壁紙等の用途に適した機械的強度に優れた強靭な立体紙を製作することができる。
(3)従来の上型及び下型に相当するものを使用しないため、製紙原料を充填する間隙の調整等一切の複雑かつ精密な型調整作業が不要となり、製造コストを著しく削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の立体紙の製造方法の製造工程を示すフローチャート
【図2】上記製造工程にて使用する部材の斜視図
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の実施例を、図を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の立体紙の製造方法を示すフローチャートであり、繊維原料1と、トロロアオイ、合成粘剤等の粘剤2と、水3とを混ぜ合わせたものを製紙原料4とする。この製紙原料4を図2に示す多孔質の弾性型材10上に流し込む。この工程が原料流し込み工程5(図1参照)である。
【0017】
図2に示した上記多孔質の弾性型材10は、例えば多孔質のポリウレタン樹脂から成る。また、この多孔質の孔径は0.001mm〜5mmの大きさで、かつ、水が容易に通過する程度の大きさとなっている。さらに、前記弾性型材10の表面には連続した凹凸模様11が形成されている。この凹凸模様11は、その大きさや高さは自由に定められ、図示のように連続した山状、角型状等趣向を凝らした種々の形状にすることができる。
【0018】
図2において、12は方形枡状の桁を示し、この桁12の底面近傍には金網13が配置されている。この金網13上に多孔質の弾性型材10を配置した後、該弾性型材10の上部から図1の製紙原料4を流し込む。この工程を図2では矢印14で示している。
【0019】
次いで、桁12を前後、左右に平行に揺り動かし、また、前後、左右に回動させて流動性のある製紙原料4の流動化を促進させ、弾性型材10上の製紙原料4の均一化を図る。
なお、前記桁12の運動は、揺動若しくは回動のいずれか又はその両方を組み合わせて行うようにしたもので、それらのいずれかの運動に限定されるものではない。
【0020】
上記弾性型材10上の製紙原料4は、その水分のみが弾性型材10を通過する。すなわち、多孔質の弾性型材10は、例えば0.001mm〜5mmの径の小孔を有するポリウレタン樹脂で形成されているので、当該小孔を介して製紙原料4の水分のみが、弾性材料10の裏側に流れ出て、桁12の底部に配置した金網13を介して矢印15方向に落下する。
【0021】
その落下する時の負圧力により製紙原料4の繊維質が前記弾性型材10の凹凸模様11に積層し、所定厚さの層を形成することができる。また、従来のように上型が存在し、その内側に一定の間隙が形成されていなくても上記の負圧力により一定の厚さの繊維層を形成することができる。
なお、矢印15方向の水分の自然落下のみでも良いが、必要に応じて吸引装置により強制的に水分を吸引することにより脱水作用を促進させるようにしも良い。
【0022】
次いで、図1の乾燥工程6に移り、上記弾性型材10のまま乾燥させる。この乾燥工程6は、自然乾燥又は所定温度に加熱しても良い。所定時間経過後、離型工程7に移行する。この離型工程7では通常、上記弾性型材10から乾燥した繊維層を剥離させるが、当該弾性型材10は弾力性のあるポリウレタン樹脂等で形成されているため、変形が容易であり、簡単に繊維層を剥離することができ、趣向に富んだ凹凸模様のある立体紙を得ることができる。
【0023】
上記の立体紙は、表面に凹凸模様が形成されているために、機械的強度も強い。特に上記弾性型材10自体を最終製品まで残存させることにより更に一層機械的強度を強くし、例えば強靭な壁紙として利用することもできる。
【0024】
なお、上記の実施例では、上記弾性型材10をポリウレタン樹脂としたが、この材料に必ずしも限定されるものではなく、要は、水分を透過させるのに必要な多数の小孔を有し、かつ、成形物を型から離型させる際に、外力を加えることにより弾性変形するような材料であれば良い。
また、上記の実施例では上記弾性型材10を桁12内に収納するような構成としたが、必ずしも上記桁12及び桁の底部に金網13を有することは、必須の構成要素ではなく、例えば上記弾性型材10の周囲に外周を囲む突起縁部を設け、この突起縁部により流動性のある製紙原料4を一定時間上記弾性型材10上に留まるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 繊維原料
2 粘剤
3 水
4 製紙原料
5 原料流し込み工程
6 乾燥工程
7 離型工程
10 多孔質の弾性型材
11 凹凸模様
12 桁
13 金網
14 製紙原料流入方向
15 水分流出方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解した製紙原料と、表面に凹凸模様が形成された多孔質の弾性型材と、前記製紙原料を受ける桁と有し、該桁上に前記弾性型材を載置し、該弾性型材上に前記溶解した製紙原料を流し込み、該製紙原料を乾燥させて成型物を形成させた後、該成型物から前記弾性型材の弾性を利用して前記成型物を離型させることを特徴とする立体紙の製造方法。
【請求項2】
前記弾性型材が多孔質のポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の立体紙の製造方法。
【請求項3】
前記桁の底部に金網を有することを特徴とする請求項1に記載の立体紙の製造方法。
【請求項4】
前記弾性型材上に流し込んだ製紙原料の均一化を図るために、前記桁を水平法方向に前後左右及び/又は垂直方向に前後揺動させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の立体紙の製造方法。
【請求項5】
前記弾性型材と前記桁とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の立体紙の製造方法。
【請求項6】
溶解した製紙原料と、表面に凹凸模様が形成された多孔質の弾性型材と、前記製紙原料を受ける桁と有し、該桁上に前記弾性型材を載置し、該弾性型材上に前記溶解した製紙原料を流し込み、該製紙原料を乾燥させて成型物を形成させた後、前記弾性型材上に形成された成型物から該弾性型材を離型させることなく該弾性型材を残存させることを特徴とする立体紙の製造方法。
【請求項7】
表面に凹凸模様が形成された多孔質の弾性型材上に溶解した製紙原料を流し込んで硬化させて得られる、表面に凹凸模様が形成された第一の紙層と、該第一の紙層の裏面側に、前記弾性型材を離型させることなく緩衝材として残存させて成る第二のクッション層とを有することを特徴とする立体紙。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1667(P2011−1667A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147757(P2009−147757)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(309019110)西嶋和紙工業協同組合 (1)
【出願人】(303060756)
【Fターム(参考)】