説明

立体繊維構造物

【課題】従来の石油系由来のポリマーやバイオマス由来のポリマーだけからなる編地構成の立体繊維構造物では無く、バイオマス由来ポリマーを少なくとも一部に含有し、環境に優しく、且つ石油由来ポリマーと比較してバイオマス由来ポリマーが劣る耐摩耗性などの欠点を補うことができる立体繊維構造物を提供する。
【解決手段】芯鞘形状を有する複合繊維から構成される立体繊維構造物であって、該複合繊維の芯部がバイオマス由来のポリマー、鞘部が石油系由来の汎用ポリマーで形成され、90%以上の空隙率を有することを特徴とする立体繊維構造物。また、前記複合繊維の芯部がポリ乳酸及び/又は鞘部がポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする立体繊維構造物。さらには、前記複合繊維の芯部と鞘部がほぼ同心円上に配置された同心芯鞘型複合繊維であることを特徴とする立体繊維構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマス由来ポリマーを芯成分とする複合繊維から構成される立体繊維構造物であって、各種クッション、寝具、マット類や土木建築分野に使用される排水材や緑化資材などに使用される立体繊維構造物に適用され、該用途に耐えうる優れた耐摩耗性を有する立体繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の合成繊維は、その大部分が石油などの限りある化石資源を原料としているが、近年、該化石資源はその埋蔵残量が懸念されるだけでなく、焼却廃棄時に発生する二酸化炭素についても地球温暖化を誘因するものとして大きな社会問題となっている。したがって、上記の課題をクリアする新たな資源の探索・開発が急務となっている。この中で、バイオマス由来物質は、廃棄後においても余分な二酸化炭素を産出しない資源として、注目を集めている。これは、バイオマス由来の物質から製造された資材等は、燃焼させても、その際に発生する二酸化炭素はもともと大気中にあったものであり、人類の産業活動のタイムスケールにおいて、大気中の二酸化炭素のマクロバランスとしては増加しないという考え方に基づくものである。これはカーボンニュートラルと称され、重要視される傾向にある。
【0003】
しかしながら一方で、バイオマス由来の合成繊維の多くは、耐摩耗性が従来の汎用合成繊維よりも劣っているという事実もある。これを改善する方策として、例えば原糸面では、ポリ乳酸系樹脂を芯部に、芳香族ポリエステル系樹脂を鞘部に配した複合糸の場合について開示されている(例えば、特許文献1,2および3参照)。しかしながら、ここでは具体的用途についての詳細は記載されておらず、各資材についての要求特性についても触れられていない。ところで、立体繊維構造物については、その形態や縫製方法等について様々な態様が開示されている(例えば、特許文献4〜16参照)が、これらについては、化石資源からなる一般の合成繊維のみにて形成されたものであり、環境に配慮されたものとはいえない。したがって、バイオマス由来のポリマーを使用することで環境に配慮しつつ、且つ当該バイオマス由来のポリマーの欠点である耐摩耗性を改善させた立体繊維構造物については、未だ見出されていない。

【特許文献1】特開2004−353161号公報
【特許文献2】特開2005−187950号公報
【特許文献3】特開2005−232627号公報
【特許文献4】特開平05−187011号公報
【特許文献5】特開平06−305064号公報
【特許文献6】特開平07−238459号公報
【特許文献7】特開平07−256804号公報
【特許文献8】特開平07−258952号公報
【特許文献9】特開平07−289756号公報
【特許文献10】特開平08−074158号公報
【特許文献11】特開平08−336445号公報
【特許文献12】特開平08−336920号公報
【特許文献13】特開2002−155453号公報
【特許文献14】特開2004−019059号公報
【特許文献15】特開2004−027406号公報
【特許文献16】特開2004−084090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような現状に鑑みて行われたもので、従来の石油系由来のポリマーだけからなる合成繊維では無く、バイオマス由来ポリマーを少なくとも一部に含有し、二酸化炭素発生量を低減するなど環境に優しく、且つ石油由来ポリマーと比較してバイオマス由来ポリマーが劣る耐摩耗性などの欠点を補うことができる立体繊維構造物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討した結果、鞘部が石油系由来の汎用ポリマー、芯部がバイオマス由来のポリマーから構成される複合繊維を用いてなる編地から構成される立体繊維構造物は、その構成において所定の要件を満たすことで、従来の汎用ポリマーのみからなる構造物に比べて、環境負荷を低減し、且つ耐摩耗性等に遜色のないものが得られるという事実を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
【0006】
(a)芯鞘形状を有する複合繊維を用いてなる編地から構成される立体繊維構造物であって、該複合繊維の芯部がバイオマス由来のポリマー、鞘部が石油系由来の汎用ポリマーで形成され、90%以上の空隙率を有することを特徴とする立体繊維構造物。
(b)前記複合繊維の芯部がポリ乳酸で形成されていることを特徴とする(a)記載の立体繊維構造物。
(c)前記複合繊維の鞘部がポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする(a)又は(b)記載の立体繊維構造物。
(d)前記複合繊維の芯部と鞘部がほぼ同心円上に配置された同心芯鞘型複合繊維であることを特徴とする(a)から(c)までのいずれか1項に記載の立体繊維構造物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の立体繊維構造物は、従来の石油系由来のポリマーやバイオマス由来のポリマーだけからなる編地構成の立体繊維構造物とは異なり、バイオマス由来のポリマーを好適に含有するため、焼却廃棄時に発生する二酸化炭素量を大幅に低減できる。また、本発明の立体繊維構造物では、芯部にバイオマス由来のポリマー、鞘部に石油系由来のポリマーを含有してなる芯鞘複合繊維から構成される立体編地構造を有するため、バイオマス由来のポリマーの欠点である耐摩耗性等の力学的課題が改善されたものとなる。さらに、本発明の立体繊維構造物は、90%以上の空隙率を有することから、クッション性や保湿性が良好なものとなり、土木関連の用途等にあっては土砂や樹脂等の充填性が良好なものとなる。加えて、本発明の立体繊維構造物は、同心芯鞘型複合繊維を用いることで、力学的強度等はより改善されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の立体繊維構造物としては、立体的な編地構成からなるものであり、その製造手法としては特に制限されるものではない。
【0009】
本発明の立体繊維構造物としては、90%以上の空隙率を有していることが必要であり、93〜98%であることが好ましく、94〜98%であることがより好ましい。当該空隙率が90%未満の場合、立体繊維構造物として使用される様々な用途において、クッション性、保温性、土砂や樹脂等の充填性が不良となる。すなわち、空隙率を90%以上とすることで、例えばクッション材として使用した場合、圧迫時の厚み方向での沈み度が大きくなるため、反発度が増すと共にクッション性が良好なものとなる。また、空気層を多く有することで断熱性に基づく保温性が良好となる。また、土木資材用途に使用した場合、空隙部分に土砂等が容易に充填されるため、基盤地面への敷設が効果的にできたり、埋設に際しても地中に無用な空間が生じないため地盤の安定化が効果的にできたりする機能が発現する。一方、該空隙率が90%に満たない場合、上記の機能が発現しない。また、このような機能をより効果的に発現させるため、例えば上下地組織と連結糸からなる編地構成にあっては、連結糸の繊度は200dtex以上であることが好ましい。
【0010】
なお、空隙率のコントロール方法については、種々の方法をとることができ、使用する繊度を変化させる方法、熱セットなどで巾や長さ方向に伸縮させる方法、熱プレスにより圧縮させる方法などを上げる事ができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0011】
本発明の立体繊維構造物としては、芯鞘形状を有する複合繊維から構成されていることが必要であり、かつ該複合繊維の芯部はバイオマス由来のポリマーにて形成され、鞘部が石油系由来のポリマーにて形成されていることが必要である。これにより、本発明の立体繊維構造物としては、バイオマス由来ポリマーを少なくとも一部すなわち芯部に含有した複合繊維から構成されるため環境にやさしく、また該複合繊維の鞘部が石油系由来ポリマーにて構成されているため、バイオマス由来ポリマー特有の力学的課題である耐摩耗性などの欠点を補うことができるものとなる。
【0012】
また、本発明における複合繊維としては、その芯部と鞘部とがほぼ同心円状に配置された同心芯鞘型複合繊維であることが好ましい。このような構成とする事で鞘部に均一に汎用ポリマーを配する効果を奏することができる。仮に、芯部が偏心上に存在すると鞘部の汎用ポリマー層に薄い箇所ができ、該薄い箇所において耐摩耗性が低下する傾向となるため好ましくない。このような芯鞘構造の複合繊維は、公知の方法によって製造することができる。
【0013】
本発明における石油系由来のポリマーとしては、溶融紡糸が可能であるものであればよく、特に制限されるものではない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートに代表されるポリエステル:ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11及びナイロン12に代表されるポリアミド:ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン:ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンに代表されるポリ塩化ポリマー:ポリ4フッ化エチレンならびにその共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの代表されるフッ素系繊維などが挙げられる。好ましくは低コストであるポリエステルやポリアミド形ポリマーがよい。またより好ましくは、バイオマス系ポリマーでは脂肪族ポリエステル系ポリマーが多いことから、相溶性の面からポリエステル系がよい。特に好ましくはコスト面や取扱い性からポリエチレンテレフタレートがよい。
【0014】
また粘度、熱的特性、相溶性を鑑みてポリエステル系ポリマーには、他のモノマー成分を共重合させていてもよい。例えば、酸成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸:アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどが挙げられる。また、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸:ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン等を共重合していてもよい。
【0015】
また、本発明におけるバイオマス由来のポリマーとしては、溶融紡糸が可能であるものであればよく、特に制限されるものではない。具体的にはポリ乳酸、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)やPBS(ポリブチレンサクシネート)などバイオマス由来のモノマーを化学的に重合してなるポリマー類やポリヒドロキシ酪酸等のPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)などの微生物生産系を挙げることができる。好ましくは耐熱性的に安定し、比較的量産化されてきているポリ乳酸がよい。ポリ乳酸としては、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体などが挙げられる。
【0016】
また、ポリ乳酸を使用する場合、上記のようにL−乳酸とD−乳酸が単独で用いられているもの、もしくは併用されているものであるが、中でも融点が120℃以上、融解熱が10J/g以上であることが好ましい。例えば、ポリ乳酸のホモポリマーであるL−乳酸やD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。さらに、いずれかの成分の割合を18モル%以上とすると、融点は120℃未満、融解熱は10J/g未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。このような非晶性のポリマーとなると、製造工程において特に熱延伸し難くなり、高強度の繊維が得られ難くなるという問題が生じたり、繊維が得られたとしても、耐熱性、耐摩耗性に劣ったものとなるため好ましくない。そこで、ポリ乳酸としては、ラクチドを原料として重合する時のL−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが、82/18以上のものが好ましく、中でも90/10以上、さらには95/5以上とすることが好ましい。
【0017】
また、使用されるポリ乳酸が、上記したようなポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)の場合は、融点が200〜230℃と高く、摩擦熱などの影響を受けにくいため、特に好ましい。また、使用されるポリ乳酸がポリ乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体である場合、ヒドロキシカルボン酸の具体例としてはグリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられ、中でもヒドロキシカプロン酸またはグリコール酸を用いることがコスト面からも好ましい。ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体の場合は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとしては、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。また、このようなポリ乳酸に他の成分を共重合させる場合では、ポリ乳酸を80モル%以上とすることが好ましい。ポリ乳酸が80モル%未満であると、共重合ポリ乳酸の結晶性が低くなり、融点120℃未満、融解熱10J/g未満となりやすい。
【0018】
また、ポリ乳酸の分子量としては、分子量の指標として用いられるASTM D−1238法に準じ、温度210℃、荷重2160gで測定したメルトフローレートが、1〜100(g/10分)であることが好ましく、より好ましくは5〜50(g/10分)である。メルトフローレートをこの範囲とすることにより、強度、湿熱分解性、耐摩耗性がさらに向上する。
【0019】
また、ポリ乳酸の耐久性を高める目的で、ポリ乳酸に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤を添加してもよい。さらに、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、ポリ乳酸中に熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加してもよい。
【0020】
また、本発明における石油系由来の汎用ポリマー、バイオマス由来のポリマーには必要に応じて各種充填剤、増粘剤、結晶核剤として効果を示す公知の添加剤を添加することができる。具体的にはカーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化ケイ素及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、ベヘン酸アミド等の脂肪族アミド系化合物、脂肪族尿素系化合物、ベンジリデンソルビトール系化合物、架橋高分子ポリスチレン、ロジン系金属塩や、ガラス繊維、ウィスカー、等があげられる。該物質は、そのまま添加してもよいし、ナノコンポジットとして必要な処理の後、添加することもできる。価格や良好な物性バランスを達成するためには、無機の充填剤の配合が好ましい。また、結晶核剤の配合が好ましい。
【0021】
また、本発明における複合繊維においては、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を配合することができる。
【0022】
本発明における複合繊維を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で可塑剤を併用することも可能である。可塑剤を使用することで、加熱加工時、特に押出加工時の溶融粘度を低下させ、剪断発熱等による分子量の低下を抑制することが可能であり、場合によっては結晶化速度の向上も期待でき、更にフィルムやシートを成形品として得る場合には伸び性などを付与できる。可塑剤としては、特に限定は無いが、以下のものが例示できる。すなわち、使用される可塑剤としては、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤などが好ましく、ポリエステルとの相溶性に優れる点からエーテル系可塑剤、エステル系可塑剤がより好ましい。
【0023】
エーテル系可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。また、エステル系可塑剤としては脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル類等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸として、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等を挙げることができ、脂肪族アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ドデカノール、ステアリルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール、また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多価アルコールを挙げることができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明について詳細に説明する。なお、実施例中の各物性値の測定法及び評価法は次のとおりである。
(1)ポリ乳酸の融点(℃)、融解熱(J/g):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−2型を使用し、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
(2)ポリ乳酸のL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比):超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiralOA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(3)繊維繊度(dtex):JIS L−10153正量繊度に準じて測定した。
(4)強度(繊維)(cN/dtex):JIS L−1013 引張強さ及び伸び率の標準時試験に準じて測定した。
【0025】
(5)耐摩耗性:JIS−L1021の動的荷重疲労試験機を用いて疲労試験を行い、その外観変化を観察し、評価を行った。すなわち、1kgの荷重で1万回踏みしめた後の毛羽立ちを観察し、下記のような基準にて評価を行った。
良 :毛羽立ちが少なく概ね良好。
不良:毛羽立ちが多く、実用上懸念される。
(6)クッション性:官能試験によって評価を行った。すなわち、20cm平方の試験品を臀部に敷いたときのクッション性について、10人の被験者のよる評価を以下の基準で行った。
良 :10〜7人がクッション性良好と判断。
不良:6〜0人がクッション性良好と判断。
(7)空隙率(%):空隙率は下式により算出した。尚、ポリ乳酸の比重は1.27、ポリエステルの比重は1.38、複合繊維はその割合を乗じて加算したものを用いた。(芯鞘比率が50/50であれば1.27×0.5+1.38×0.5=1.325)
空隙率(%)=100−(1m当たりの製品質量)/(厚み)/(平均比重)×100
【0026】
(実施例1)
ポリ乳酸として、融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.5/1.5のものを用い、芳香族ポリエステルとして、融点217℃のイソフタル酸15モル%共重合したPETを用い、それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、共重合PETが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるように配し、複合比(質量比)を50/50とし、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた複合繊維は、220dtex/48フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.3cN/dtex、切断伸度28.9%であった。
【0027】
また同心MF芯鞘複合紡糸に同上条件で溶融紡糸を行い、220dtex/1フィラメントのモノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントは丸断面形状のものであり、引張強力は3.8cN/dtex、切断伸度は34.1%であった。次に、得られた繊維を用いて立体メッシュ織物を作製した。剛性のあるモノフィラメントが編立可能なニッティングエレメントを改良した14ゲージの2列針床を有する経編機を用い、上面地組織をL1筬、L2筬に220dtex48フィラメント、下面地組織をL5,L6筬とも220dtex/48フィラメント、上下の地組織を連結する繋ぎ糸としてL3,L4筬に220dtex/1フィラメントのモノフィラメントをフルセットで通糸し、図1の組織図にて厚み5mmの実施例1の立体繊維構造物を作製した。
【0028】
(比較例1)
ポリ乳酸として、融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.5/1.5のものを用い減圧乾燥した後、融紡糸装置に供給して紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られたポリ乳酸繊維は、繊度220dtex/48フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度30.4%であった。また同心MF芯鞘複合紡糸に同上条件で溶融紡糸を行い、220dtex/1フィラメントのモノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントは丸断面形状のものであり、引張強力は3.7cN/dtex、切断伸度は30.1%であった。次に、得られた繊維を用いて実施例1と同様に立体繊維構造物を作製した。
【0029】
(比較例2)
芳香族ポリエステルとして、融点217℃のイソフタル酸15モル%共重合したPETを減圧乾燥した後、融紡糸装置に供給して紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られたポリエステル繊維は、繊度220dtex/48フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.7cN/dtex、切断伸度30.2%であった。また同心MF芯鞘複合紡糸に同上条件で溶融紡糸を行い、220dtex/1フィラメントのモノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントは丸断面形状のものであり、引張強力は3.9cN/dtex、切断伸度は24.1%であった。次に得られた繊維を用いて実施例1と同様にして、比較例2の立体繊維構造物を作製した。
【0030】
(比較例3)
実施例1における同心芯鞘複合糸を240dtex/48フィラメントに変更し、同心MF芯鞘複合紡糸を240dtex/1フィラメントに変更し、空隙率を88%になるように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3の立体繊維構造物を作製した。
【0031】

(図1)

【0032】
【表1】

【0033】
結果から実施例1および比較例2は外観及び耐摩耗性など全ての点で満足するものであった。しかしバイオマス由来のポリマーを使用している実施例1については環境にも優しい素材であるのに対し、比較例2では従来型の環境負荷の大きな素材であり、本発明の趣旨にそぐわないものである。また、比較例1では、ポリ乳酸のみからなる繊維のため、毛羽立ちが激しく耐摩耗性が不良であった。実施例1及び比較例2は、多少の毛羽は見られたが実用上問題ない範囲であったのに対し、比較例1は、一部に線が折れている箇所も見受けられ、実用的に耐え得るものではなかった。
また、空隙率が90%以上である実施例1、比較例1〜2では、クッション性は良好であったが、90%に満たない比較例3では、クッション性は不良であった。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘形状を有する複合繊維を用いてなる編地から構成される立体繊維構造物であって、該複合繊維の芯部がバイオマス由来のポリマー、鞘部が石油系由来の汎用ポリマーで形成され、90%以上の空隙率を有することを特徴とする立体繊維構造物。
【請求項2】
前記複合繊維の芯部がポリ乳酸で形成されていることを特徴とする請求項1記載の立体繊維構造物。
【請求項3】
前記複合繊維の鞘部がポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の立体繊維構造物。
【請求項4】
前記複合繊維の芯部と鞘部がほぼ同心円上に配置された同心芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の立体繊維構造物。





【公開番号】特開2008−240199(P2008−240199A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83392(P2007−83392)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】