説明

立体視シート構成体

【課題】凸レンズの底面から頂点までの寸法を小さくし、透明基板の厚みを小さくしているにも拘わらず、浮き上がり又は浮き沈みの深さが大きい三次元モアレ模様を例えば3m以上も離れた位置から観察することのできる、軽量の立体視シート構成体を提供すること。
【解決手段】区画線内に形成された複数の凸レンズが50〜2000μmの範囲内で選択された同一のピッチ長さをもって直線上に配列されるように透明基材の表面に複数の凸レンズが繰り返して形成されて成る凸レンズ集合体と、前記透明基板の凸レンズの焦点面に、前記凸レンズの繰り返し形成方向に沿って、前記凸レンズのピッチ長さ±a(ただし、aは1〜20である。ピッチ長さ及び前記aの単位はμm)のピッチ長さで形成されて成る三次元モアレ図形形成用のパターンと、を備えて成ることを特徴とする立体視シート構成体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立体視シート構成体に関し、さらに詳しくは、全体の厚みを薄くすることができ、しかも、三次元模様の浮き上がり、又は三次元模様の沈み込みが大きく見える立体視シート構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、レンズ集合体と模様とを含み、レンズ集合体を介して模様を見た場合に、その模様が立体的に見え、又は、見る角度を変えていくことによってその模様が変化する立体視シート構成体等が知られている。このような立体視シート構成体等として、例えば、第1の模様を有する第1のパターン部と、これと相似形状の第2の模様を用いて形成されたモアレ模様を有する第2のパターン部を設けたもの(例えば特許文献1参照。)、レンズ状突起の配列の間隔を段階的又は無段階的に変化させたレンズ部と模様とを有するもの(例えば特許文献2参照。)、同じ連続パターンを持つ凸レンズと模様とを、凸レンズの連続パターンに対して、模様の連続パターンを変位させたもの(例えば特許文献3、特許文献4参照。)、凸レンズの配列ピッチに対して模様の配列ピッチを変化させたもの(例えば特許文献5〜特許文献10参照。)等が挙げられる。
【0003】
より具体的には、例えば、特許文献6には、虚像現出装飾体を目視する方向が変更されると該変更に伴って虚像の装飾体表からの深さ位置及び高さ位置が変化する虚像現出装飾体として、同一形状・同一大きさの平凸レンズ状集光素を多数縦横に整列させて形成してなる平凸レンズ状集光素層と該平凸レンズ状集光素層の下に積層された透明基板層と該透明基板層の下に積層された画素を縦横において異なるピッチとなるように多数整列させて形成してなる画素層とからなり、前記各平凸レンズ状集光素と前記各画素とは少なくとも一組が上下において重なっており、当該重なっている画素を含む2つの直交した画素の並びのうち一方の画素の並びと等距離にある一組の他の画素の並びが該各他の画素の並びに対応する平凸レンズ状集光素の並びに対して該一方の画素の並びを中心軸として内側へ向かってずれていると共に該一方の画素の並びより外側の他の画素の並びほどずれる幅が大きくなり、かつ、他方の画素の並びと等距離にある一組の他の画素の並びが該各他の画素の並びに対応する平凸レンズ状集光素の並びに対して該他方の画素の並びを中心軸として外側へ向かってずれていると共に該他方の画素の並びより外側の他の画素の並びほどずれる幅が大きくなるように配置されており、虚像が目視する方向によって前記平凸レンズ状集光素層の上方又は下方に前記重なっている画素を中心として現出することを特徴とする虚像現出装飾体が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許3131771号明細書
【特許文献2】特開2003−39583号公報
【特許文献3】特許2761861号明細書
【特許文献4】特許3338860号明細書
【特許文献5】特開2001−55000号公報
【特許文献6】特開2002−46400号公報
【特許文献7】特開2002−120500号公報
【特許文献8】特開2003−226099号公報
【特許文献9】特許3488179号明細書
【特許文献10】特開2003−220173号公報
【0005】
しかしながら、従来のオフセット印刷による量産可能な立体視シート構成体は、0.3〜1.2mm程度の厚みを有する透明基板の表面に形成されるマイクロレンズアレイにおける凸レンズのその底面から頂点までの長さが2〜100μm程度の寸法であったので、明視距離つまり30〜50cm離れて前記立体視シート構成体を見ると三次元モアレ模様が浮き上がり又は沈み込んで観察することができた。前記立体視シート構成体による浮き上がりの高さ又は沈み込みの深さはたかだか3〜30mm程度あった。しかしながら、前記立体視シート構成体の平面面積を例えばA3サイズ、或いはB2サイズのように大型にし、しかも3m以上、例えば3〜5m離れた位置から三次元モアレ模様を観察するときには、前記厚みの基板に前記寸法の凸レンズを有するマイクロレンズアレイを設けてなる立体視シート構成体では、三次元モアレ模様の浮き上がり又は沈み込みを明瞭に観察することができないという問題がある。なお、三次元モアレ模様は三次元モアレ画像とも称され、これは周波数変調を施したドット画像を凸レンズ集合体の焦点面に形成し、モアレを発生させることによる三次元画像体として知られている。
【0006】
そこで三次元モアレ模様の浮き上がり又は沈み込みの深さを大きくするには例えばレンズの底面から頂点までの寸法を大きくすると共に透明基板の厚みを大きくすることが考えられるのであるが、そうすると、立体視シート構成体全体の厚みが3〜30mmと大きくなってしまい、そのような厚みの立体視シート構成体の平面面積を例えば1200cm以上にしてその立体視シート構成体を壁面に接着剤等により貼付するとその重みでその立体視シート構成体が壁面から脱落するという問題があった。壁面から脱落しないように前記立体視シート構成体を壁面に取り付けるには取り付け治具が必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、凸レンズの底面から頂点までの寸法を小さくし、透明基板の厚みを小さくしているにも拘わらず、浮き上がり又は浮き沈みの深さが大きい三次元モアレ模様を例えば3m以上も離れた位置から観察することのできる、軽量の立体視シート構成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段として、
請求項1は、
区画線内に形成された複数の凸レンズが50〜2000μmの範囲内で選択された同一のピッチ長さをもって直線上に配列されるように透明基材の表面に複数の凸レンズが繰り返して形成されて成る凸レンズ集合体と、
前記透明基板の凸レンズの焦点面に、前記凸レンズの繰り返し形成方向に沿って、前記凸レンズのピッチ長さ±a(ただし、aは1〜20である。ピッチ長さ及び前記aの単位はμm)のピッチ長さで形成されて成る三次元モアレ図形形成用のパターンと、
を備えて成ることを特徴とする立体視シート構成体、
であり、
請求項2は、
前記透明基材の厚みが10〜2500μmであり、凸レンズはその底面から頂点までの長さが2〜700μmである前記請求項1に記載の立体視シート構成体であり、
請求項3は、
前記凸レンズのピッチ長さが100〜500μmの範囲内から選択される前記請求項1又は2に記載の立体視シート構成体であり、
請求項4は、
前記基材はその厚みが10〜800μmであり、前記凸レンズはその底面から頂点までの長さが2〜100μmである前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体視シート構成体であり、
請求項5は、
前記基材が生分解性樹脂で形成されてなる前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体視シート構成体である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の立体視シート構成体は、その全体厚みを60〜4500μmに薄くすることができ、しかも三次元モアレ模様の浮き上がり又は沈み込みの深さが3〜30cmとすることができ、例えば1200cm以上の平面面積を有し、例えば僅かな接着力を有する接着剤により曲面にも平面にも貼付可能な形状に加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の立体視シート構成体を、図面を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1に示されるように、この発明の一例である立体視シート構成体は、透明基板10と凸レンズ集合体20と三次元モアレ模様形成用のパターンすなわち繰り返し模様30とを有する。
【0012】
(透明基板)
この立体視シート構成体における透明基板は10、凸レンズ集合体20を支持する。立体視シート構成体1は、凸レンズ集合体20を介して、この凸レンズ集合体20が形成された透明基板10の一方の表面に対して反対側の表面、すなわち焦点面に形成された繰り返し模様30を観察するものであるから、透明基板10は、透明であることを要する。ここで「透明」とは、繰り返し模様30を観察することができる程度の透明性があることを意味し、無色透明、半透明、有色透明、有色半透明の状態を含む概念である。透明基板10の材質としては、凸レンズ集合体20を支持でき、透明で柔軟な材質であればよく、例えば、合成樹脂、ガラス又は透明な塗装膜等を挙げることができる。透明基板を形成することのできる合成樹脂としては、例えばアクリル酸メチル樹脂等のアクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸メチル樹脂等のメタクリル酸エステル系樹脂、ビニル系樹脂例えばポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、若しくは生分解性樹脂、又は、これらの樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。これらの中でも好適な樹脂として生分解性樹脂が好ましく、特にポリ乳酸等の生物由来の樹脂が好ましい。生分解樹脂で透明基板を形成すると、この立体視シート構成体を例えば土中に廃棄することにより容易に分解することとなって環境に負荷をかけることがなくなる。
【0013】
透明基板10の厚さは、凸レンズ21の焦点距離と実質的に同じ長さであることが望ましく、通常の場合、凸レンズ21の焦点距離に応じて、10〜2500μmであり、10〜800μmであるのがよい。透明基板10の形状は、凸レンズ集合体20を支持し、案内表示板等に適用可能な形状であればよく、例えば、平面形状、曲面形状、任意の凹凸形状等の板状にすることができる。
【0014】
この透明基板10において、後述する凸レンズ集合体20が形成される表面は、できるだけ平滑であることが好ましい。透明基板10の、凸レンズ集合体20が形成される表面の好ましい平滑度は、JIS B 0601により規定された算術平均粗さ値(Ra値)及び最大高さ値(Ry値)により規定することができる。透明基板10の、凸レンズ集合体20が形成される表面の好ましいRa値は、0.001〜5(μm)であり、特に好ましくは0.002〜0.6(μm)であり、好ましいRy値は、0.001〜28(μm)であり、特に好ましくは0.002〜3(μm)である。なお、場合によっては、前記0.001〜0.6及び0.002〜5をRa値の好ましい範囲とすることもできるし、0.002〜28及び0.001〜3をRy値の好ましい範囲にすることもできる。透明基板10の、凸レンズ集合体20が形成される表面の平滑度が前記範囲内にあると、均一な凸レンズ21を有する凸レンズ集合体20を形成することができ、特に後述する印刷法による凸レンズ集合体20の形成を効果的に行うことができる。前記平面の平滑度が悪いと、最終的に形成される凸レンズ集合体20の機能が損なわれることがある。
【0015】
(凸レンズ集合体)
凸レンズ集合体20は、前記透明基板10の表面に、複数の凸レンズ21が形成されてなる。凸レンズ21の配列は、モアレ効果による視覚効果等の特殊視覚効果が得られる配列であればよく、凸レンズ21が形成されるパターン形成区画及びパターン形成区画同士の間隔等によって、特徴付けられる。このようなパターン形成区画の形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。パターン形成区画は、その内部に凸レンズ21が形成され、凸レンズ21の配列を規制する。パターン形成区画の大きさ(隣接するパターン形成区画の間隔)は、後述する凸レンズの配列間隔lに応じて決定され、前記配列間隔lと同じである。
【0016】
前記凸レンズ集合体20の配列としては、例えば、図2〜図4に示す配列が挙げられる。図2に示す凸レンズ集合体20の配列は、最密に配置された正六角形のパターン形成区画22内に凸レンズ21が形成されたハニカム形状の配列であり、図3に示す凸レンズ集合体20の配列は、縦横に配置された正四角形のパターン形成区画22内に凸レンズ21が形成されたスクエア形状の配列であり、図4に示す凸レンズ集合体20の配列は、45度回転して縦横に配列された正四角形のパターン形成区画22内に凸レンズ21が形成されたスクエア形状の配列である。第1態様の立体視シート構成体の一例である立体視シート構成体1においては、パターン形成区画22の配列は、図2に示されたハニカム形状の配列とされている。
【0017】
凸レンズ21は、前記パターン形成区画22内、好ましくはその略中央部に形成される。凸レンズ21の形状は、この凸レンズ21に入射する光を焦点することができる形状であればよい。凸レンズ21の大きさは、前記パターン形成区画形状の大きさ以下であればよく、前記パターン形成区画形状と同じであるのが特によい。凸レンズ21の高さ、すなわち凸レンズの底面から頂点までの高さは、凸レンズ21に入射する光を前記透明基板10の裏面に焦点させることができればよく、例えば、2〜700μm程度である。
【0018】
凸レンズ21は、前記パターン形成区画22の配列方向に向かって、互いに隣接する凸レンズ21同士の配列間隔l(小文字のアルファベットのエル)をもって、配列される。このときの凸レンズ21の配列間隔lは、等間隔である。立体視シート構成体の一例である立体視シート構成体1(図1)においては、複数の凸レンズ21が等間隔の配列間隔lをもって配列されている。このような凸レンズ21同士の配列間隔lすなわちピッチ長さは、50〜2000μmである。凸レンズ21の配列間隔lは、前記パターン形成区画22の配列方向に向かって、ある凸レンズ21の頂点位置から、それと隣接する凸レンズ21の頂点位置に対応する位置までの距離をいう。参考のため、図2〜図4に示される配列における凸レンズ21の中心間の配列間隔lを各図に示してある。
【0019】
凸レンズ集合体20の材質としては、レンズとして機能する材質であればよく、例えば、アクリル酸メチル樹脂等のアクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸メチル樹脂等のメタクリル酸エステル系樹脂若しくはビニル系樹脂、又は、これらの樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。また。凸レンズ集合体20を生分解性樹脂例えばポリ乳酸で形成することもできる。
【0020】
(繰り返し模様)
立体視シート構成体1は、前記したように、その透明基板10における前記凸レンズ集合体20を有する表面とは反対側の表面、すなわち焦点面に、繰り返し模様30を有している。立体視シート構成体1における繰り返し模様30の一例について、図5を参照して、説明する。
【0021】
図5に示される繰り返し模様35は、凸レンズ集合体20の配列と相似の配列パターン、具体的には、凸レンズ集合体20の配列間隔lと相違する配列間隔をもって、星形の模様単位31が複数配列された配列パターンであるが、この配列パターンに限定されない。すなわち、模様パターン35は、そのパターンが凸レンズ集合体20の配列と相似であればよく、例えば、模様パターン35の配列間隔が凸レンズ集合体20の配列間隔lよりも小さく又は大きく、かつ、その配列方向が、凸レンズ集合体20の配列方向と同じである場合等が挙げられる。例えば、凸レンズ集合体20が、図2〜図4に示す配列に従って形成されている場合には、模様パターンは、それぞれ、図2〜図4に示す配列における配列間隔lと相違する間隔を持つ図2〜図4に示す配列に従って形成されることになる。
【0022】
ここで、模様パターンを構成する模様単位とは、模様パターンが不連続な模様で構成されている場合には、模様パターンを構成する不連続な各模様をいい、模様パターンが例えば線分等の連続的な模様で構成されている場合には、模様パターンを所定の間隔で格子状に分割したときに、模様の一部となる分割された連続した形状をいう。模様単位となる不連続な模様の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、ハート形、星形、涙形、文字形等の任意の形状が挙げられる。
【0023】
この発明において重要なことは、凸レンズ集合体20を形成する複数の凸レンズ21のピッチ長さY(単位:μm)に対し、模様パターンの繰り返しのピッチ長さXが、Y=X±a(ただし、aは1〜20であり、その単位はμmである)の関係を満たすことである。この発明に係る立体視シート構成体を3m以上離れた距離から、好ましくは3〜5m離れた距離から観察すると、aがプラスであるときには、繰り返しの模様パターンが沈み込むように観察され、aが−であるときには、繰り返しの模様パターンが浮き上がるように観察される。前記関係式においてaが20を超えると、例えば3m以上の位置からこの立体視シート構成体を観察すると、三次元モアレ図形をなす模様が小さくなりすぎて判別不可能となり、そうすると模様が浮き上がり又は沈み込んで観察不能になってしまう。
【0024】
この立体視シート構成体により観察可能な浮き上がり又は沈み込みの深さ寸法は、次のようにして測定することができる。
【0025】
図6に示されるように、基台40の上面例えば机上面に、この発明に係る立体視シート構成体1を、その立体視シート構成体1における模様パターン形成面を下にした状態で、載置する。次いで、その立体視シート構成体1の凸レンズ集合体の上面に、透明部材41例えば透明アクリル板を載置し、さらのその透明部材41の凸レンズ集合体に向かう面とは反対側の面つまり上表面に、不透明部材42例えば紙を、前記透明部材41の一部を覆蓋するように、載置する。次いで、前記不透明部材42を載置したまま前記透明部材41を前記立体視シート構成体1から引き離すように、前記透明部材41を上方に移動させる。その透明部材41を机上面に対する上方に異動させる経過において、前記立体視シート構成体1における三次元モアレ模様の浮き上がり状態を観察する。そして机上の上方に移動させる透明部材41を一部覆蓋する不透明部材42と、浮き上がって観察される三次元モアレ模様43とが同じ平面上に、換言すると同じ高さにあると認められるときに、その透明部材41の机上からの高さをスケール44にて測定し、その高さを浮き上がり高さとする。三次元モアレ模様が沈み込んで見える立体視シート構成体1における三次元モアレ模様の沈み込み深さについても同様にして測定されることができる。
【0026】
(立体視シート構成体の製造)
立体視シート構成体1は、次のようにして製造することができる。まず、透明基板10を前記材質で、成形技術等の公知の製造方法によって、形成する。このとき、透明基板10における凸レンズ集合体20が形成される表面は、前記表面粗さを有するように、定法に従って表面処理されてもよいし、下地層が設けられてもよい。下地層は、樹脂組成物等を用いて、ディッピング、刷毛塗り、スプレー、ロールコータによる塗工、印刷及びその他の方法により、形成することができる。
【0027】
次いで、透明基板10の表面に、前記材質で、凸レンズ集合体20を形成する。凸レンズ集合体20を形成する方法として、前記凸レンズ集合体20を形成可能な公知の方法、例えば、型を使った成型法や印刷法等が挙げられる。印刷法によると、透明基板10の表面に印刷により区画線23を形成し、次いで印刷によりレンズ形成用の樹脂を塗布する。そうすると、区画線23により前記レンズ形成用の樹脂がはじかれてパターン形成区画22内で前記樹脂の表面張力により半球状乃至ドーム状に前記樹脂が盛り上がり、硬化することにより凸レンズ21が形成される。この凸レンズ集合体の前記形成方法は、国際公開公報WO9509372に記載された方法によることができる。
【0028】
前記透明基板10と凸レンズ集合体20とが、同一の材質で形成される場合には、透明基板10と凸レンズ集合20とを、例えば成形技術等によって、一体に形成してもよい。
【0029】
次いで、連続変形模様部40を含む繰り返し模様30を形成する。まず、この繰り返し模様30を、例えば、パーソナルコンピュータにて、画像編集ソフト(例えば、アドビシステムズ社製のAdobe Illustrator(登録商標)、アドビシステムズ社製のAdobe Photoshop等が挙げられる。)を用いて、凸レンズ集合体20の配列間隔lと相違する配列間隔を持つ配列パターンとなるように、複数の模様単位を配列して、作成する。このようにして形成された繰り返し模様30を、透明基板10の凸レンズ集合体20が形成された表面とは反対側の表面すなわち焦点面に形成して、立体視シート構成体1を製造することができる。
【0030】
(立体視シート構成体の用途)
この発明に係る立体視シート構成体は、透明基材の表面に形成された凸レンズ集合体における凸レンズのピッチ長さが50〜2000μmであり、透明基材の前記凸レンズ集合体の形成された面とは反対側の面に、凸レンズの繰り返し形成方向に沿って、前記凸レンズのピッチ長さ±a(ただし、aは1〜20である。ピッチ長さ及び前記aの単位はμm)のピッチ長さで形成されて成る三次元図形形成用のパターンである繰り返し模様が形成されているので、この立体視シート構成体を観察すると、前記aが−の値であると三次元モアレ図形が浮き上がって観察され、前記aがプラスの値であると三次元モアレ図形が沈み込んで観察される。
【0031】
この発明に係る立体視シート構成体は、短い視距離を隔てて見られる、例えば、包装物等に加えて、通常、長い視距離を隔てて見られる、例えば、街頭看板、ポスター、広告塔、案内表示板等にも適用することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
透明アクリルシートの裏面に図5に示す星型模様を印刷し、その透明ポリプロピレンシートの表面に国際公開公報WO9599372に記載された方法に準じて複数の凸レンズから成る凸レンズ集合体を形成することにより立体視シート構成体を製作した。前記透明ポリプロピレンシートはこの発明における透明基板であり、縦72cm及び横102cmの平面形状を有する厚み0.5mmの寸法を有する柔軟性を有する薄板であった。この透明アクリルシートの表面に形成される複数の凸レンズはいずれもほぼ同じ形状をなし、その高さは12μmであった。凸レンズ集合体は、行列状に配列された複数の凸レンズを有していた。凸レンズのピッチ長さは210μmであった。一方、この透明アクリルシートの裏面に形成された星型模様は、繰り返して形成されていた。星型模様の繰り返しピッチ長さは、211μmであった。
この立体視シート構成体を、図6に示される方法により、星型模様の浮き上がり高さを測定したところ、星型模様が3cmの浮き上がり状態として観察された。また、この立体視シート構成体を約3m離れた位置から観察すると、星形模様が浮き上がって観察された。
(比較例1)
凸レンズのピッチ長さを210μmから180μmに代え、星型模様の繰り返しピッチの長さを184μmに代えたほかは、前記実施例1と同様にして立体視シート構成体を作成した。
この立体視シート構成体を前記実施例1と同様にして星型模様の浮き上がり状態を観察したところ、浮き上がり高さは0.8cm程度であった。この立体視シート構成体を約3m離れた位置から観察すると、星形模様が浮き上がって観察できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、この発明の一例としての立体視シート構成体を示す概略断面図である。
【図2】図2は、凸レンズ集合体の配列として採用されることのできる配列の一例を示す図である。
【図3】図3は、凸レンズ集合体の配列として採用されることのできる配列の一例を示す図である。
【図4】図4は、凸レンズ集合体の配列として採用されることのできる配列の一例を示す図である。
【図5】図5は、模様パターンとして採用されることのできるパターンの一例を示す図である。
【図6】図6は、立体視像の浮き上がり又は沈み込みの大きさを測定する方法を示す原理的説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 立体視シート構成体
10 透明基板
20 凸レンズ集合体
21 凸レンズ
22 パターン形成区画
30 繰り返し模様
35 模様パターン




【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
区画線内に形成された複数の凸レンズが50〜2000μmの範囲内で選択された同一のピッチ長さをもって直線上に配列されるように透明基材の表面に複数の凸レンズが繰り返して形成されて成る凸レンズ集合体と、
前記透明基板の凸レンズの焦点面に、前記凸レンズの繰り返し形成方向に沿って、前記凸レンズのピッチ長さ±a(ただし、aは1〜20である。ピッチ長さ及び前記aの単位はμm)のピッチ長さで形成されて成る三次元モアレ図形形成用のパターンと、
を備えて成ることを特徴とする立体視シート構成体。
【請求項2】
前記透明基材の厚みが10〜2500μmであり、凸レンズはその底面から頂点までの長さが2〜700μmである前記請求項1に記載の立体視シート構成体。
【請求項3】
前記凸レンズのピッチ長さが100〜500μmの範囲内から選択される前記請求項1又は2に記載の立体視シート構成体。
【請求項4】
前記基材はその厚みが10〜800μmであり、前記凸レンズはその底面から頂点までの長さが2〜100μmである前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体視シート構成体。
【請求項5】
前記基材が生分解性樹脂で形成されてなる前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体視シート構成体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−12870(P2008−12870A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188716(P2006−188716)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000107790)グラパックジャパン株式会社 (6)