説明

立坑掘削機における掘削ズリ排出装置

【課題】立坑を掘削するトンネル掘削機において、カッタ板によって掘削されたズリを該カッタ板の背面上の中央部に円滑且つ確実に集積させて上方への排出処理を能率よく行えるようにする。する。
【解決手段】切羽を掘削する多数のカッタビット3とズリ取込み開口部2を備えた逆截頭円錐形状に形成されているカッタ板1において、このカッタ板1の外周端部の上方に高圧水噴射ノズル7を配設し、カッタ板1の回転によってこの高圧水噴射ノズル7の下方を通過するカッタ板背面上の掘削ズリを、該噴射ノズル7から噴出する高圧水によって順次、カッタ板1の回転中心部に向かって押し進め、その中心部上の集積部5に集積させたのち、この集積部5に吸込口8bを臨ませている排出管8に吸入、排除させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は地下深層部に石油貯蔵所や放射性廃棄物の貯留所等の地下構造物を築造する際に、所定の深さまで垂直な立坑を掘削するのに適した立坑掘削機における掘削ズリ排出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、立坑を所定深さまで掘削する手段として、小径の立坑の場合には先端に掘削ビットを装着しているバケットを使用して行い、大径の立坑の場合には発破によって掘り下げていくことが一般に行われているが、いずれの掘削手段においても、所定径の立坑を正確に且つ能率よく掘削することが困難である。このため、近年、岩盤トンネル掘削機(TBM)を用いてこのトンネル掘削機のカッタ板を直下方向に向けた状態にして立坑を掘削することが実施されている。
【0003】
このトンネル掘削機は、ケーシングに外方に向けて装着されているグリッパを坑壁に圧着させることにより掘削機本体を保持すると共にカッタ板を掘削地盤に押し付けながら、該カッタ板によって下方の地盤を掘削し、掘削したズリを吸引管を通じて上方に排出するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−63798号公報(第2〜3頁、第1図)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記トンネル掘削機によれば、カッタ板によって掘削されたズリは一個所に集合することなくカッタ板の全面に拡散した状態となるので、下端開口部がカッタ板の上面中心部に臨ませている上記吸引管によって全ての掘削ズリを効率よく吸引排除することが極めて困難である。
【0006】
このため、例えば、特開平9−112182号公報に記載されているように、カッタ板の前面(下面)に、該カッタ板によって掘削されたズリを外周方向に案内する掻き寄せ板を突設すると共に外周端部にこの掻き寄せ板によって掻き寄せられた掘削ズリをカッタ板上に取り込む取り込み口を設け、この取り込み口に取り込まれた掘削ズリをカッタ板の背面外周部に設けているスライド板によってカッタ板の背面中央部にまで案内し、該中央部に開口下端を臨ませているスクリューコンベアによってズリを上方に排出するように構成した斜坑掘削機が知られている。
【0007】
この斜坑掘削機によれば、掘削ズリを一旦、カッタ板の外周端部にまで掻き寄せたのち、外周端部に設けている取り込み口からスライド板上に送り込み、該スライド板の傾斜角度によって、掘削ズリをカッタ板の背面中央部にスライドさせるように構成しているため、カッタ板の半径方向に長いズリ取り込み開口部を設けているスポークタイプのカッタ板には採用することができないばかりでなく、上下面が略平坦な円板形状のカッタ板を設けている立坑掘削機に対してはカッタ板の背面が全面的に水平状に形成されているために、例え、該カッタ板の外周端部にズリ取り込み口が設けられていても、その取り込み口からカッタ板の背面中央に向かってスライド板を斜め下方に傾斜させた状態で配設することは実質的に不可能である。
【0008】
また、立坑掘削機のカッタ板として、外周端から中央部に向かって斜め下方に傾斜した逆截頭円錐形状に形成されているカッタ板を採用している場合には、このカッタ板の傾斜した背面に上記スライド板を外周端側から中央部に向かって斜め下方に傾斜させた状態で配設することができるが、該スライド板の傾斜角度がカッタ板の外周端から中央部に向かう傾斜角度よりも緩い角度でしか配設することがきないために、カッタ板の外周端部に設けているズリ取り込み口から上記スライド板の傾斜上端部上に取り入れた掘削ズリをその傾斜面によってはカッタ板の中央部に向かってスライドさせることが困難であり、立坑掘削機における掘削ズリ排出手段としては適さないという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ズリ取込み開口部を通じてカッタ板の背面上に取り込まれた掘削ズリを該カッタ板の背面中央部に円滑且つ確実に集積させて能率よくズリの排出処理を可能にした立坑掘削機における掘削ズリ排出装置を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の立坑掘削機における掘削ズリの排出装置は請求項1に記載したように、複数のズリ取込み開口部を周方向に一定間隔毎に設けていると共に切羽面に面した前面に多数のカッタビットを突設しているカッタ板を回転させながら地盤を直下方向に掘削していく立坑掘削機において、カッタ板の背面側に該カッタ板の背面に沿って外周側から中央部に向かって高圧水を噴射して掘削ズリをカッタ板の背面中央部に集積させる噴射ノズルを配設していると共に、上記掘削ズリの集積部であるカッタ板の背面中央部上にズリ排出管の下端を臨ませてなる構造としている。
【0011】
このように構成した立坑掘削機における掘削ズリの排出装置において、請求項2に係る発明は、上記カッタ板を、中央部から外周端に向かって斜め上方に傾斜した逆截頭円錐形状に形成し、その背面における中央凹部を掘削ズリの集積部に形成している一方、噴射ノズルをカッタ板の外周端部の上方における不動部にその噴射口をカッタ板の上記掘削ズリ集積部に向けた状態にして装着していることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に係る発明は、上記噴射ノズルを少なくともカッタ板の外周端部の上方とカッタ板の半径方向の中間部上方との内外2個所に配設していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、カッタ板における上記集積凹部の開口下端を臨ませている上記ズリ排出管は、掘削ズリを吸い上げる吸引排出管から構成していることを特徴とする。
【0014】
【作用】
立坑掘削機のカッタ板におけるカッタビットを突設している前面を下向きに向けた状態にしてこのカッタ板を回転させながら立坑掘削機を垂直下方に推進させることにより、岩盤地山等の地盤を切り下げ掘削していく。カッタビットによって掘削されたズリは、ズリ取込み開口部を通じてカッタ板の背面上に取り込まれると、この掘削ズリはカッタ板の背面側において、該カッタ板の外周側から中央部に向かって噴射する噴射ノズルからの高圧水により、強制的にカッタ板の背面中央部に集積され、この集積部に開口下端を臨ませているズリ排出管を通じて円滑に上方に排出される。
【0015】
この際、カッタ板が平板円盤形状であっても、逆截頭円錐形状であっても、カッタ板の背面上に取り込まれる全ての掘削ズリを上記噴射ノズルからの高圧水によって迅速に且つ確実にカッタ板の背面中央部の集積部に集積させることができる。
【0016】
さらに、噴射ノズルをカッタ板の背面外周端部に装着するのではなく、カッタ板の外周端部の上方における不動部にその噴射口をカッタ板の上記掘削ズリ集積凹部に向けた状態にして装着しておくことによって、カッタ板背面上に取り込まれている掘削ズリがカッタ板の回転に従って該噴射ノズルの下方を通過する際に、この噴射ノズルからの高圧水によって順次、カッタ板の背面中央部の集積部に向かって押し進められる。従って、カッタ板の背面に、このカッタ板の回転中心回りに該カッタ板と一体的に回転する複数本の噴射ノズルを周方向に小間隔毎に配設しておく必要はなく、1本ないしは2、3本の噴射ノズルをカッタ板の外周部上方に固定的に装着しておくといった簡単な構成によってカッタ板の背面上の全ての掘削ズリを集積部に集積させることができる。
【0017】
また、上記噴射ノズルをカッタ板の外周端部の上方とカッタ板の半径方向の中間部上方との2個所に配設しておくことにより、カッタ板が大径であっても該カッタ板の背面に取り込まれた掘削ズリを、まず、外側の噴射ノズルから噴射する高圧水によってカッタ板の中央部に向かって該カッタ板の半径方向の中間部にまで押し進めたのち、内側の噴射ノズルから噴射する高圧水によって該中間部から掘削ズリを引き続いて連続的に且つ円滑に中央部の上記集積部に向かって押し進めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は立坑掘削機の簡略縦断面図であって、この立坑掘削機の本体である筒状胴体11は垂直状に配設されてその下端開口部にカッタ板1を回転自在に支持している。このカッタ板1は図2、図3に示すように、その回転中心部から外周端に向かって複数本のスポーク1a、1a、1a・・を周方向に一定の角度間隔毎に放射状に設けて隣接するスポーク1a、1a間に切羽面Aに面している前面(下面)から機内に連通するズリ取込み開口部2を形成している。なお、上記全てのスポーク1aの外周端面はカッタ板1の外周縁部を形成しているリング部材1bに、周方向に一定間隔毎に一体に固着している。
【0019】
上記全てのスポーク1aには、長さ方向に一定間隔毎にローラビットからなるカッタビット3を装着していると共にリング部材1bにもスポーク1aの外端取付部分にローラビットからなるカッタビット3を装着している。これらのカッタビット3は、その外周部の一部をスポーク1aやリング部材1bの下面、即ち、切羽面Aに面しているカッタ板1の下面(前面)から下方に突出させた状態にして岩盤を切削するように構成している。なお、カッタビット3が上述したようにローラビットからなる場合には、その回転方向をカッタ板1の回転方向と一致するようにスポーク1aやリング部材1bに回転自在に軸支させているが、ローラビット以外の掘削ビットをカッタ板1の下面から下方に突出させておいてもよい。
【0020】
さらに、上記各ズリ取込み開口部2におけるカッタ板1の回転方向に面した側端縁、即ち、各スポーク1aにおけるカッタ板1の回転方向に面した側端縁に、カッタ板1によって掘削されるズリをカッタ板1の回転に従って該カッタ板1の外周端側から内周端側に向かって掻き寄せながら上記ズリ取込み開口部2を通じてカッタ板1の背面側、即ち、機内に面した上面側に掻き上げるスクレーパ4を取付けている。
【0021】
このように、カッタ板1の回転に従ってスクレーパ4により掘削ズリをカッタ板1の外周端側から内周端側に向かって掻き寄せながら機内、即ち、カッタ板1の背面上に掻き上げるように構成するには、上記各スポーク1aにおけるカッタ板1の回転方向に面した側端縁を、カッタ板1の上記回転中心部に連設している内周端からリング部材1bに連設している外周端に向かってカッタ板1の回転方向に傾斜させ、この傾斜側端縁に沿って長方形板状に形成されているスクレーパ4の幅方向の上半部を固着し、且つ、切羽面A側に向かって突設している下端縁部から上端縁部に向かってズリを機内に掻き入れる方向、即ち、カッタ板1の回転方向に対して逆方向に傾斜させた構造としている。なお、カッタ板1の下面から下方に突出したこのスクレーパ4の突出幅は上記ローラビット3のスポーク1aからの突出寸法に略等しいか、僅かに短い寸法に形成している。
【0022】
このスクレーパ4は、一定厚みを有する矩形状の短片を複数枚、スポーク1aの側端縁に順次、並列状態に接続させながらボルト等の適宜な固着具によって固着することにより細幅の長方形板状に形成されてあり、スポーク1aから切羽面Aに向かって突設している下端側の長辺縁部(先端縁部)をズリ掻取り刃に形成していると共にこのズリ掻取り刃からスポーク1aの側端縁に固着している上端縁に向かって上述したようにカッタ板1の反回転方向に傾斜させて、カッタ板1の回転に従ってこのスクレーパ4により掘削ズリを機内に向かって掻き上げるように構成しているものである。
【0023】
上記各スポーク1aは、カッタ板1の回転中心部から外周端に向かって水平状に突設させることによりカッタ板1を円形平板形状に形成しておいてもよく、また、カッタ板1の回転中心部から外周端に向かって緩やかな円弧状に湾曲させて下向きドーム形状のカッタ板1に形成しておいてもよいが、図1に示すカッタ板1においては、各スポーク1aをカッタ板1の回転中心部である中央部から外周端に向かって上方に向かって緩やかに傾斜させて、カッタ板1をその回転中心部である平坦な中央部から外周端に向かって斜め上方に傾斜した逆截頭円錐形状に形成し、その背面(上面)における中央部を掘削ズリの集積部5に形成していると共に、該集積部5の平坦な前面(下面)にセンタービットとして複数個のローラビットからなるカッタビット3aを装着している。
【0024】
また、カッタ板1を構成している上記各スポーク1aの背面には、図3に示すように、上記スクレーパ4を装着している一側端縁に対して反対側の他側端縁に沿って一定高さのズリガイド6を突設してあり、このズリガイド6の外端部をスクレーパ4を装着させている上記一側端縁の外端部に向かって円弧状に湾曲させてスポーク1aの外周端上を幅方向に横断し、その外端をスクレーパ4の外周端面に当接させている。従って、スクレーパ4によりカッタ板1内に掻き上げられたズリをこのズリガイド6によってズリ取込み開口部2から再び切羽面A側に落下するのを阻止しながらスポーク1aの背面上(上面上)を上記集積部5に向かって寄せ集めることができるように形成している。
【0025】
さらに、カッタ板1の背面における外周端部の上方に図1、図3に示すように噴射口をカッタ板1の外周端側から集積部5に向けて開口させている噴射ノズル7を配設してあり、この噴射ノズル7から高圧水を該カッタ板1の背面上に沿って外周端側から上記集積部5に向かって噴射させてカッタ板1の背面上の掘削ズリをカッタ板1の集積部5に押し進めるように構成している。このような噴射ノズル7は、カッタ板1が小径の場合には該カッタ板1の背面における外周端部の上方にのみ配設しておいてもよいが、カッタ板1が大径の場合には、この噴射ノズルを外側噴射ノズル7とし、カッタ板1の半径方向の中間部上方にも内側噴射ノズル7aとしてその噴射口を集積部5に向けた開口させた状態にして配設している。
【0026】
これらの噴射ノズル7、7aは、カッタ板1の上方において、カッタ板1と一体的に回転することのない不動部に配設されている。具体的には、カッタ板1の中央部の上方から半径方向に突設している後述する固定フレーム24の外端部と中間部とにそれぞれ固定的に装着されてあり、さらに、カッタ板1の回転方向に対して外側の噴射ノズル7からの高圧水がカッタ板1の背面に取り込まれた掘削ズリに先に作用するように、内側噴射ノズル7aを外側噴射ノズル7から一つのズリ取込み開口部2を介して斜め前方位置に配設している。
【0027】
カッタ板1を下端開口部に回転自在に配設している立坑掘削機の上記筒状胴体11は、図1R>1に示すように互いに屈折自在に連結した下側胴体11a と上側胴体11bとからなり、下側胴体11a に隔壁12を設けてこの隔壁12の下面に下方に向けて突設している固定円筒壁体13の下端部内周面に上記カッタ板1の外周端から内周に向かって突設している複数本のアーム部材1cの内端に固着した環部材1dを回転自在に支持させ、この環部材1dの内周面に形成しているラック14に、隔壁12の上面に設置している駆動モータ15の回転軸に固着したピニオン16を噛合させて、駆動モータ15によりカッタ板1を回転させるように構成している。
【0028】
さらに、下側胴体11a の下端部と上側胴体11b には掘削地盤に圧着して立坑掘削機を支持する複数個のフロントグリッパ18とリアグリッパ19を配設してあり、これらのグリッパ18、19はそれぞれ油圧ジャッキによって内外径方向に伸縮して掘削地盤に対して圧着、離脱するように構成していると共に、上側胴体11b の内周面には、周方向に一定間隔毎に複数本の推進ジャッキ20を装着し、これらの推進ジャッキ20のロッドを上側胴体11b の上端から上方に向かって伸縮自在にして掘削された立坑Tの内周面に施工される覆工セグメントSの下端面に当接させ、該セグメントSに推進反力を支持させるように構成している。
【0029】
また、上側胴体11b の長さ方向の中間部に中間隔壁21を張設してあり、この中間隔壁21と下側胴体11a の上記隔壁12とを複数本の調節ジャッキ22によって連結してこれらの調節ジャッキ22の作動により下側胴体11a を上側胴体11b に対してその掘り下げ方向の向きを調整できるようにしている。図中、23は上側胴体11bの上端開口部側に配設したエレクタである。
【0030】
上記上下胴体11a 、11b とからなる筒状胴体11の中心部には垂直な小径筒体17が配設されていて、その下端部を上記隔壁12の中心部に貫通状態で支持されてあり、この小径筒体17内に一本のズリ排出管8と第1、第2高圧水供給管9A、9Bと、給水管10と空気導入管25(図4に示す)とが配設されている。
【0031】
そして、ズリ排出管8と給水管10との下端開口部を上記カッタ板1の背面中央部上の集積部5上に臨ませていると共に、第2高圧水供給管9Bの下端部をU字状に屈曲させてその先端(上端)開口部をズリ排出管8の下端部に連結、連通させ、この第2高圧水供給管9Bからズリ排出管8の下端部内に上方に向かう高圧水を噴出させてその噴出によるエゼクタ作用によりズリ排出管8の下端部内に吸引力を発生させ、上記集積部5上に集積している掘削ズリを吸入して立坑掘削機の上方の適所に設置している貯留タンク(図示せず)に排出するズリ排出手段を構成している。
【0032】
詳しくは、このズリ排出手段は図4に示すように、ズリ排出管8の下端部を傾斜管部8aを介して垂直な吸込口8bに形成し、この傾斜管部8aの上端部に上記第2高圧水供給管9Bの上端部を垂直上方に向けた状態に連通させてその上端部内に装着している高圧水噴射ノズル9bを傾斜管部8aの上端から垂直なズリ排出管8の下端部内に臨ませていると共に空気導入管25の下端部を高圧水噴射ノズル9bの開口端側に連結、連通させてあり、さらに、この第2高圧水供給管9Bの管路中に高圧ポンプ26を配設してなるものである。
【0033】
また、ズリ排出管8の傾斜管部8aに圧力センサ27を装着し、この圧力センサ27を上記高圧ポンプ26に電気的制御回路を通じて接続して該圧力センサ27によって検出される吸込口8bの圧力が所定の圧力となるように高圧ポンプ26の回転速度を調整するように構成している。なお、上記高圧水噴射ノズル9bの開口端には開閉蓋28が設けられてあり、高圧水の噴射時にはその噴射力によって該蓋28を開放させると共に高圧ポンプ26の停止時には高圧水噴射ノズル9bの開口端を該蓋28により自動的に閉止して高圧水噴射ノズル9bが土粒等によって詰まるのを防止している。
【0034】
さらにまた、図5に示すように、ズリ排出管8の傾斜管部8aに圧力センサ27’を装着すると共に吸込口8b部分に起振器(バイブレータ)29を装着してこれらの圧力センサ27’ と起振器29とを電気的制御回路を通じて接続しておき、ズリ排出管8の吸込口8b内がズリによって詰まった時に変動するズリ排出管8の傾斜管部8a内の圧力を圧力センサ27’ によっ検出して起振器29を作動させ、吸込口8bを振動させて詰まったズリを弛緩させて再び、ズリ排出管8の吸入力により掘削ズリの吸入を可能にするように構成しておいてもよい。
【0035】
一方、上記第1高圧水供給管9Aの下端部は図1に示すようにカッタ板1の回転中心線上に配設されたロータリージョイント30を介してカッタ板1と一体に回転するように構成していると共に、その下端部を数本の噴射ノズル9a1 、9a2 、9a3 に分岐させて、これらの噴射ノズル9a1 、9a2 、9a3 を図2に示すように、カッタ板1の中央部の上記集積部5を貫通させてこの集積部5の前面(下面)から下方に突出させ、且つそれぞれの噴射口を集積部5の前面に沿って前後方向或いは左右方向に向けて、集積部5から突出している上記ローラビット3aに対向させてあり、これらの噴射ノズル9a1 〜9a3 から噴射する高圧水によって、ローラビット3aにより掘削されたズリを集積部5の前面に沿ってスクレーパ4の内端部にまで送り込むように構成している。
【0036】
さらに、ズリ排出管8の下端部には固定フレーム24がカッタ板1の回転中心部の上方から外周端に向かって水平状に突設してあり、この固定フレーム24の突出端部である外端部に上記外側噴射ノズル7を、長さ方向の中間部に上記内側噴射ノズル7aを支杆24a を介して取り付けられている。そして、これらの内外噴射ノズル7、7aは上記筒状胴体11の中心部の上記垂直な小径筒体17内に配設している高圧水圧送管71、71の下端に連結、連通して、上記第1、第2高圧水供給管9A、9Bと同様に、小径筒体17内を通じてトンネル掘削機の上方の適所に設置している給水槽(図示せず)に接続している。
【0037】
なお、ズリ排出管8の下端部から上記固定フレーム24を2〜3本、放射状に突設してこれらの固定フレーム24に上記内外噴射ノズル7、7aをそれぞれ取り付けて、カッタ板1の上方に内外噴射ノズル7、7aを一組として2、3組を周方向に所定間隔を存して配設しておいてもよい。
【0038】
以上のように構成した立坑掘削機によって立坑Tを垂直状に掘り下げていくには、フロントグリッパ18とリアグリッパ19との少なくとも一方を立坑Tの掘削壁面に摺動可能に押し付けて立坑掘削機が下動可能に支持した状態にして、駆動モータ15によりカッタ板1を回転させると共に既に施工している覆工セグメントSに推進ジャッキ20の推進反力を支持させてこれらの推進ジャッキ20のロッドを伸長させる。なお、立坑掘削機はその自重によって常にカッタ板1を切羽面Aに押し付ける方向に作用しており、この立坑掘削機の自重が全て切羽面Aに作用しないように上記フロントグリッパ18とリアグリッパ19によって立坑Tに支持させながら推進ジャッキ20を伸長させるものであるから、この推進ジャッキ20の推進力は小さくて済む。
【0039】
この推進ジャッキ20の伸長によって立坑掘削機を垂直下方に推進させると、カッタ板1は切羽面Aに押し付けた状態で回転しながらその回転中心部から放射状に突設している複数本のスポーク1aに装着したカッタビット3により切羽の岩盤を切り下げ掘削していく。このカッタビット3によって掘削されたズリは、カッタ板1を構成している各スポーク1aの側端縁から突設したスクレーパ4によってズリ取込み開口部2を通じてカッタ板1の背面側、即ち、上面側に掻き上げられる。
【0040】
また、カッタ板1の回転中心部である平坦な前面(下面)中央部に突設しているカッタビット3aによって掘削されたズリは、カッタ板1の回転にもかかわらず、このままでは切羽面Aとカッタ板1の平坦な下面中央部との間に介在、残留してカッタビット3aによる切羽面Aの掘削を阻害すると共に該カッタビット3aがこのズリを二次破砕することになって短期間で破損や欠損が生じる虞れがあるが、上述したようにこのカッタ板1の中央部から第1圧力水供給管9Aの噴射ノズル9a1 〜9a3 が下面にまで貫通、突出していて、これらの噴射ノズル9a1 〜9a3 を上記カッタビット3aに対向させてカッタ板1の中央部下面に沿って前後左右方向に向けているので、カッタビット3aにより掘削されたズリは、これらの噴射ノズル9a1 〜9a3 から噴射する高圧水によってスクレーパ4の内端部側に向かって外方に押し進められ、上記カッタビット3によって掘削されたズリと共にズリ取込み開口部2からカッタ板1の上面に送り込まれる。
【0041】
さらに、カッタ板1の上面に送り込まれた掘削ズリは、各スポーク1aにおける上記スクレーパ4を装着した側端縁と反対側の他側端縁に沿って突設しているズリガイド6により、ズリをズリ取込み開口部2から再び切羽面A側に落下するのを阻止しながら、カッタ板1の外周端部と半径方向の中間部との上方の不動部に配設している内外噴射ノズル7、7aからの噴出高圧水によってズリガイド6に沿ってカッタ板1の回転中心部である中央部上の集積部5に押し進め、該集積部5上に集積させる。
【0042】
この際、内外噴射ノズル7、7aは、カッタ板1の上方において、カッタ板1と一体的に回転しない不動部に配設されてあり、且つ、内側噴射ノズル7aを外側噴射ノズル7に対して一つのズリ取込み開口部2を介してカッタ板1の回転方向の斜め前方位置に配設しているので、図3において、カッタ板1が矢印方向に回転すると、内側噴射ノズル7aの下方を通過したカッタ板1の上面部分が外側噴射ノズル7に達するまでにズリ取込み開口部2を通じて該上面にズリが取り込まれ、外側噴射ノズル7の下方を通過する時に、該外側噴射ノズル7から噴射する高圧水の噴射圧によってその上面に堆積しているズリが集積部5側に向かって押し動かされたのち、内側噴射ノズル7aの下方に達して該内側噴射ノズル7aから噴射する高圧水の噴射圧により、さらに集中的に勢いよくカッタ板1の中心部に向かって押し進められ、集積部5上に円滑且つ確実に集積するものである。
【0043】
集積部5内には給水管10からの給水によって所定高さまで水が滞留されていて掘削ズリを混在させてあり、下端吸込口8bを水中に没入させている排出管8に掘削ズリが水と共に吸入されて上方に排出される。即ち、第2高圧水供給管9B中に配設している高圧ポンプ22の作動によって高圧水が噴射ノズル9bからズリ排出管8の下端部内に上方に向かって噴射し、この噴射によってズリ排出管8の下端部内に負圧が発生して集積部5上に集積している掘削ズリが水と共にズリ排出管8の下端吸込口8bから吸い上げられる。
【0044】
この際、噴射ノズル9bから噴射する高圧水に空気導入管21からの空気が導入、混合されるので、噴射ノズル9bからズリ排出管8内に噴射する高圧水の流速が高速化され、ズリ排出管8の吸込口8bに大きな吸引力が発生して掘削ズリを水と共に円滑且つ確実に吸込口8b内に吸い込んでこのズリ排出管8内を通じて上方に搬出される。
【0045】
一方、この立坑掘削機を推進させながらカッタ板1により所定深さの立坑部分が掘削される毎に、上側胴体11b 側に配設しているエレクタ23によって掘削壁面にセグメントSをリング状に組み立て、再び、このセグメントSの下端面に推進ジャッキ20の推進反力を支持させながら上述したように立坑掘削機により立坑Tを切り下げ掘削し、掘削ズリを上述したようにスクレーパ4でズリ取込み開口部2内を通じてカッタ板1上に送り込み、内外噴射ノズル7、7aからの高圧水の噴射によって掘削ズリを集積部5上に集積させて、排出管8の吸入力で上方に搬出し、この作業をくり返し行って所定深さまで垂直な立坑Tを掘削するものである。なお、掘削ズリの排出は上述したような吸引力によることなく、管内に回転スクリューを配設しているスクリューコンベアや多数のバケットを巡回可能に配設しているバケットコンベア等、適宜な排出管を採用してもよい。
【0046】
また、本発明の立坑掘削機は上記した形態に限らず、例えば、以下のように構成してもよい。
1)調節ジャッキ22を推進ジャッキとし、リアグリッパ19を掘削壁面に押付け、これを反力に下側胴体11a を推進するように構成してもよい。この場合は、推進ジャッキ20は覆工セグメントSの支持用ジャッキとして作用し、上側胴体11b の下方移動と共に伸長するように構成される。
2)覆工はセグメントのようなプレキャスト部材に限らず、吹付コンクリート、現場打ちコンクリートでもよい。
3)カッタビットにはディスクタイプ、ツースタイプのいずれも含む。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明の立坑掘削機における掘削ズリ排出装置によれば、請求項1に記載したように、複数のズリ取込み開口部を周方向に一定間隔毎に設けていると共に切羽面に面した前面に多数のカッタビットを突設しているカッタ板を回転させながら地盤を直下方向に掘削していく立坑掘削機において、上記カッタ板の背面側に該カッタ板の背面に沿って外周側から中央部に向かって高圧水を噴射する噴射ノズルを配設していると共に、上記掘削ズリの集積部であるカッタ板の背面中央部上にズリ排出管の下端を臨ませているので、カッタ板が円板形状であっても逆截頭円錐形状であっても、ズリ取込み開口部を通じてカッタ板の背面上に取り込まれる全ての掘削ズリをカッタ板の外周側から中央部に向かって噴射する噴射ノズルからの高圧水によって、迅速に且つ確実にカッタ板の背面中央部上に集積させることができ、該集積部上の下端を臨ませている排出管を通じて効率良く排出することができる。
【0048】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記カッタ板は中央部から外周端に向かって斜め上方に傾斜した逆截頭円錐形状に形成されていて、その背面における中央凹部を掘削ズリの集積部に形成してあり、噴射ノズルはカッタ板の外周端部の上方における不動部にその噴射口をカッタ板の上記掘削ズリ集積部に向けた状態にして装着されているので、カッタ板の背面(上面)は中央の集積部に向かって斜め下方に傾斜しているから、外周端部に配設している噴射ノズルからの高圧水によりカッタ板上の全ての掘削ズリを円滑に且つ能率よく集積部に集積させることができ、その上、カッタ板を回転させてその背面上に堆積している掘削ズリを不動部に配設された噴射ノズルの下方を通過させることによって該噴射ノズルからの高圧水により、順次、中央の集積部に押し進めるものであるから、1本ないしは2、3本の噴射ノズルをカッタ板の外周部上方に固定的に装着しておくといった簡単な構成によってカッタ板の背面上の全ての掘削ズリを集積部に集積させることができる。
【0049】
また、請求項3に係る発明によれば、上記噴射ノズルをカッタ板の外周端部の上方とカッタ板の半径方向の中間部上方との内外2個所に配設しているので、カッタ板が大径であっても該カッタ板の背面に取り込まれた掘削ズリを、まず、外側の噴射ノズルから噴射する高圧水によってカッタ板の中央部に向かって該カッタ板の半径方向の中間部にまで押し進めたのち、内側の噴射ノズルから噴射する高圧水によって該中間部から掘削ズリを引き続いて連続的に且つ円滑に中央部の上記集積部に向かって押し進めることができ、掘削ズリを能率よく集積部に集積させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】立坑掘削機の縦断面図、
【図2】立坑掘削機の下方から見たカッタ板の平面図、
【図3】立坑掘削機の上方から見たカッタ板の背面図、
【図4】ズリ排出手段の要部の一部を断面した側面図、
【図5】ズリ吸込口部分に起振器を装着した場合のズリ排出手段の一部を断面した側面図。
【符号の説明】
1 カッタ板
2 ズリ取込み開口部
3 カッタビット
5 集積部
7、7a 噴射ノズル
8 ズリ排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のズリ取込み開口部を周方向に一定間隔毎に設けていると共に切羽面に面した前面に多数のカッタビットを突設しているカッタ板を回転させながら地盤を直下方向に掘削していく立坑掘削機において、上記カッタ板の背面側に該カッタ板の背面に沿って外周側から中央部に向かって高圧水を噴射して掘削ズリをカッタ板の背面中央部に集積させる噴射ノズルを配設していると共に、上記掘削ズリの集積部であるカッタ板の背面中央部上にズリ排出管の下端を臨ませていることを特徴とする立坑掘削機における掘削ズリ排出装置。
【請求項2】
カッタ板は中央部から外周端に向かって斜め上方に傾斜した逆截頭円錐形状に形成されていて、その背面における中央凹部を掘削ズリの集積部に形成してあり、噴射ノズルはカッタ板の外周端部の上方における不動部にその噴射口をカッタ板の上記掘削ズリ集積部に向けた状態にして装着されていることを特徴とする請求項1に記載の立坑掘削機における掘削ズリ排出装置。
【請求項3】
噴射ノズルは少なくともカッタ板の外周端部の上方とカッタ板の半径方向の中間部上方との内外2個所に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立坑掘削機における掘削ズリ排出装置。
【請求項4】
掘削ズリの排出管は、掘削ズリを吸い上げる吸引排出管であることを特徴とする請求項1に記載の立坑掘削機における掘削ズリ排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2005−42353(P2005−42353A)
【公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−201630(P2003−201630)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)