説明

立坑掘削機の制御装置

【課題】効率よく掘削するに好適な立坑掘削機の制御装置を提供する。
【解決手段】立坑2内に吊下げられて坑壁に固定されるメインフレーム3に対して当該メインフレーム3の中心軸回りに旋回駆動される旋回フレーム4と、前記旋回フレーム4の下端に立坑2の半径方向面内で揺動可能に配置された揺動ブーム5と、前記揺動ブーム5の先端に立坑2の半径方向面内で揺動可能に配置され、先端に配置したカッタヘッド7を回転させて地山を掘削する掘削ユニット6と、を備える立坑掘削機1であって、前記カッタヘッド7の立坑2の地山に対する移動半径を検出する手段と、前記検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレーム4の旋回速度を低くして、カッタヘッド7の地山に対する移動速度の変化を一定範囲に抑制する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑掘削機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の立坑掘削機としては、カッタにて掘削するものやブレーカにより掘削するものがある(特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1においては、全断面掘削機であり、グリッパによって全断面掘削機を立坑の坑壁に支承させており、中央カッタと外周カッタに2分割したカッタを駆動モータにて駆動回転するものであり、中央カッタは外周カッタより下方へ突設させて双方のカッタ間に段差を設け、中央カッタによる先行掘削部にズリ溜部を設け、ズリ出し作業の効率を向上させるようにしている。
【0004】
特許文献2においては、大口径の立穴を掘削する際に、まず小口径のガイド穴を掘削するとともに、このガイド穴内にパイプを挿入し、次にこのパイプ内の水抜きを行った後、パイプ内に土砂排出用のバケットを吊持しておく。そして、掘削用アームを回転させて大口径の穴を掘削し、この掘削土砂をパイプ内のバケット内に落とし込み、このバケットを引き揚げることにより掘削土砂を排出するよう構成している。
【0005】
特許文献3においては、立坑内に固定的に配設される外フレームに旋回駆動手段にて旋回する内フレームを取付け、この内フレームから掘削手段としての油圧ブレーカを備え、油圧ブレーカを岩盤に切込ませながら破砕し掘削し、その掘削範囲を旋回駆動手段により立坑の全断面に展開させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−294276号公報
【特許文献2】特開平6−146762号公報
【特許文献3】特開平6−88475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に示す立坑掘削機にあっては、立坑の大部分の断面を回転駆動するカッタにより掘削するものであるため、地山が硬い場合には効率よく掘削できない不具合があり、且つ地山が硬い場合を想定してカッタの回転駆動力を増加させると当該駆動力を支持するフレーム剛性も高める必要があり、軽量化できない不具合があった。
【0008】
また、特許文献3に示す立坑掘削機にあっては、岩盤に切込ませながら破砕し掘削する油圧ブレーカを使用し、その掘削範囲を旋回駆動手段により立坑の全断面に展開させるものであるため、効率よく掘削できない不具合があった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、効率よく掘削するに好適な立坑掘削機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、立坑内に吊下げられて坑壁に固定されるメインフレームに対して当該メインフレームの中心軸回りに旋回駆動される旋回フレームと、前記旋回フレームの下端に立坑の半径方向面内で揺動可能に配置された揺動ブームと、前記揺動ブームの先端に立坑の半径方向面内で揺動可能に配置され、先端に配置したカッタヘッドを回転させて地山を掘削する掘削ユニットと、を備える立坑掘削機であって、前記カッタヘッドの立坑の地山に対する移動半径を検出する手段と、前記検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレームの旋回速度を低くして、カッタヘッドの地山に対する移動速度の変化を一定範囲に抑制する手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、立坑内に吊下げられて坑壁に固定されるメインフレームに対して当該メインフレームの中心軸回りに旋回駆動される旋回フレームと、前記旋回フレームの下端に立坑の半径方向面内で揺動可能に配置された揺動ブームと、前記揺動ブームの先端に立坑の半径方向面内で揺動可能に配置され、先端に配置したカッタヘッドを回転させて地山を掘削する掘削ユニットと、を備える立坑掘削機であって、前記カッタヘッドの立坑の地山に対する移動半径を検出する手段と、前記検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレームの旋回速度を低くして、カッタヘッドの地山に対する移動速度の変化を一定範囲に抑制する手段と、を備える。
【0012】
このため、旋回フレームにより掘削ユニットを立坑内で旋回させて、立坑内の地山を掘削ユニットのカッタヘッドにより掘削することができ、効率よく硬い地山でも掘削できる。また、揺動ブーム及び掘削ユニットの揺動角度位置に応じて立坑内でのカッタヘッドによる掘削半径の大きさに応じてカッタヘッドの旋回角度を小さくするため、カッタヘッドの移動速度の変化が一定範囲に抑制されて、効率よく地山を掘削できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を示す立坑掘削機の側面図。
【図2】同じく立坑掘削機の断面図。
【図3】同じくメインフレームの側面図。
【図4】同じくメインフレームの平面図。
【図5】立坑掘削機の旋回フレームの支持機構の断面図。
【図6】同じく旋回フレームの支持機構におけるガイドローラ部分の平面図。
【図7】同じく旋回フレームの駆動機構の平面図。
【図8】揺動ブームの揺動角度検出部の側面図。
【図9】掘削ユニットの揺動角度検出部の側面図。
【図10】揺動ブームの基準位置における掘削ユニットの動作状態を示す説明図。
【図11】揺動ブームの第1位置における掘削ユニットの動作状態を示す説明図。
【図12】揺動ブームの第2位置における掘削ユニットの動作状態を示す説明図。
【図13】揺動ブームの第3位置における掘削ユニットの動作状態を示す説明図。
【図14】カッタヘッドの旋回半径に対する旋回流量(A)、先端速度(B)、旋回圧力(C)の特性を示す説明図。
【図15】揺動ブームの伸縮シリンダによる押付け力と、カッタヘッドの先端速度[mm/sec]と、駆動モータに供給する作動油の供給圧力[MPa]と、駆動モータに供給する作動油量[L/min]との設定値を示すパターン図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明を適用する立坑掘削機1は、例えば、内径が4.5メートル、深さが500メートルとなる、比較的大径の立坑を掘削するものである。
【0016】
この立坑掘削機1は、図1に示すように、立坑2内に吊下げられて降下し、立坑2と中心軸位置を一致した状態で立坑2の坑壁にグリッパ10により固定され、掘削した土砂の排出手段が通過する排土搬出用開口部を備えるメインフレーム3と、前記メインフレーム3に対して当該メインフレーム3の中心軸回りに旋回するよう配置された旋回フレーム4と、前記旋回フレーム4の下端に設けた、立坑2の半径方向に対する法線方向の水平軸を介して当該基端が連結され、旋回フレーム4に対して立坑2の半径方向面内で揺動可能に配置された揺動ブーム5と、前記揺動ブーム5の先端に設けた、立坑2の半径方向に対する法線方向の水平軸を介して当該基端が連結され、揺動ブーム5に対して立坑2の半径方向面内で揺動可能に配置され、先端に配置したカッタヘッド7を回転させて地山を掘削する掘削ユニット6と、を備える。
【0017】
前記メインフレーム3は、図3,4に示すように、上下に配置された上側リングフレーム11及び下側リングフレーム12と、上下リングフレーム11,12を連結する円周方向等間隔に配置された複数(図示例では3個)の柱状部材13と、下側リングフレーム12に固定された旋回案内部14と、が夫々溶接等により一体に結合して構成されている。前記上側リングフレーム11の上面にはフック15が固定され、図示しない吊下げクレーンより降下された吊下げワイヤの先端を当該フック15に係合させることにより、メインフレーム3を吊下げクレーンにより吊下げるようにしている。このように、メインフレーム3は、複数(3本)の柱状部材13により上下リングフレーム11,12を連結・合体して、全体として環状の骨格構造体により構成されているため、メインフレーム3の強度を確保できると共に軽量化でき、また、吊下げウインチの吊り重量を軽減できる。
【0018】
前記上下リングフレーム11,12と柱状部材13とが連結される部位には、各リングフレーム11,12の半径方向に延び、外周側で開口する収容穴が設けられている。前記各収容穴には、油圧シリンダ等のアクチュエータ16が内蔵され、アクチュエータ16により半径方向外側へ出没可能なグリッパ10が配置されている。各グリッパ10はアクチュエータ16に対して所定角度だけ揺動可能に固定されている。
【0019】
各グリッパ10は、アクチュエータ16により半径方向内側への待避位置に位置する際には、立坑2の坑壁から離脱しており、メインフレーム3は図示しない吊下げクレーンにより立坑2内に昇降可能である。また、各グリッパ10をアクチュエータ16により半径方向外側へ進出させる作動位置に位置する際には、立坑2の坑壁に沿って揺動してアクチュエータ16の押付力により接触し、メインフレーム3を立坑2内に固定して、後述する掘削反力と自重を支持することができる。
【0020】
このように、各グリッパ10を剛性が確保された上下リングフレーム11,12と柱状部材13との連結部位に配置しているため、メインフレーム3の剛性を確保しつつ立坑2の坑壁に確実にメインフレーム3を支持させることができる。
【0021】
前記旋回案内部14は、図5に示すように、下側リングフレーム12下部に固定されてリング状に構成された環状フレーム14Aを備える。前記環状フレーム14Aの内面には、前記各柱状部材13同士の間において上下方向(立坑軸方向)に配置された回転軸に回転可能に配置された3個のガイドローラ17と、ガイドローラ17が配置された部位より立坑2の軸方向に位置をずらせて配置され、上下に対向して形成した環状のレール面18と、を備える。前記3個のガイドローラ17は、前記旋回フレーム4の基部に設けたリング部材21の外周に転動可能に係合して、旋回フレーム4の立坑2内での半径方向の位置決めを行う。
【0022】
前記3個のガイドローラ17の回転軸は、図5及び図6に示すように、環状フレーム14Aから内側に突出する調整ねじにより半径方向の位置を調整可能なブロック19に支持されており、各ガイドローラ17の調整ねじによる位置調整により、前記旋回フレーム4の基部に設けたリング部材21の中心が前記メインフレーム3(立坑2)の中心と一致させた状態において、各ガイドローラ17の各ブロック19が環状フレーム14Aに固定される。
【0023】
また、前記環状のレール面18は、前記旋回フレーム4の基部に対して半径方向に配置した軸回りに回転可能に設けた旋回ローラ22を上下方向から挟むよう配置され、旋回ローラ22を環状のレール面18上に転動移動させることにより、旋回フレーム4の立坑2内での軸方向の位置決めを行う。このように、旋回フレーム4の基部が前記3個のガイドローラ17と環状のレール面18に転動する旋回ローラ22とにより、メインフレーム3に対して回転可能に支持されることにより、高価な大型ベアリングを用いる場合に比較して、より安価に旋回フレーム4を旋回可能に支持させることができる。
【0024】
前記旋回フレーム4の基部に設けたリング部材21は、図7に示すように、周方向に所定ピッチ間隔を持って複数のピン23を軸方向に固定して配置している。各ピン23はリング部材21に固定した一対の環状プレートにより上下端が固定保持され、一対の環状プレート間に位置するピン部分が、後述する駆動モータ25により回転駆動されるピニオン26が係合する。前記ピニオン26および駆動モータ25は、前記3個のガイドローラ17に対応した角度位置において、3組が下側リングフレーム12に固定して配置されている。
【0025】
前記駆動モータ25は、油圧モータにより構成され、油圧源となる油圧ユニット30から供給される作動油圧と作動油量に基づいて、その駆動トルクと駆動速度を制御されて回転する。従って、駆動モータ25が回転されると、ピニオン26とピン23との係合によりリング部材21が回転され、メインフレーム3のガイドローラ17と旋回ローラ22とにより回転支持されている旋回フレーム4がメインフレーム3内で旋回移動する。
【0026】
前記メインフレーム3の下側リングフレーム12の上部には、図2に示すように、前記駆動モータ25に作動油を供給する油圧ユニット30と油圧ユニット30および後述する揺動ブーム5・掘削ユニット6の揺動角等を制御する制御盤31とが配置されている。前記油圧ユニット30は、図示しないが、電動機で駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプより吐出された作動油の圧力を制御する圧力制御弁および吐出油の供給流量を制御する流量制御弁と、を備え、これら制御弁は制御盤31によりその出力値が制御される。また、前記メインフレーム3には、立坑2内を換気するために、立坑2内に外気を供給する1本の小径の風管33と立坑2内の空気を排出する2本の大径の風管34とが配置されている。
【0027】
前記メインフレーム3は、前記した旋回フレーム4およびその駆動モータ25、油圧ユニット30および制御盤31、大小の風管33,34の周縁への配置により、図2に示すように、内部に上下に貫通し、旋回フレーム4の旋回動作によっても開口している空間を形成することができる。この空間は、掘削した土砂の排出手段が通過する排土搬出用開口部60を構成している。
【0028】
前記旋回フレーム4は、前記メインフレーム3の旋回案内部14の内方において、前記リング部材21および前記3個のガイドローラ17を支持する環状体に構成され、また、図1に示すように、環状体の一部をメインフレーム3の下方に突出させて構成されている。前記旋回フレーム4の前記下方に突出させたその先端には、立坑2の円周方向に配置した水平軸を介して揺動ブーム5の基端を連結し、揺動ブーム5を旋回フレーム4に対して水平軸回り(立坑2の半径方向)に揺動可能に支持している。また、旋回フレーム4と揺動ブーム5とに両端部を連結するシリンダ35を備え、シリンダ35を伸縮させることにより揺動ブーム5の揺動位置を調整することができる。
【0029】
前記揺動ブーム5の揺動位置は、図8に示すように、揺動ブーム5に設けた検出アーム36の先端位置を検出するよう旋回フレーム4側に配置した複数個(図示例では3個)の近接センサ37のオンーオフ作動により、検出され、図示しない制御盤に入力される。図示例では、近接センサ37が3個配置されており、いずれの近接センサ37もオン作動しない基準位置と、1個の近接センサ37のみがオン作動する第1位置、2個の近接センサ37がオン作動する第2位置と、全ての近接センサ37がオン作動する第3位置とが検出されるよう構成されている。前記揺動ブーム5の揺動位置の検出は、上記した近接センサ37による検出に限定されるものでなく、他の検出手段を用いてもよい。
【0030】
前記揺動ブーム5は、図示しないが、伸縮自在であり且つ軸回りの互いの相対回転が阻止されたピストンロッドとシリンダとからなる伸縮シリンダにより構成され、基端側のピストンロッドが前記立坑2の円周方向に配置した水平軸を介して旋回フレーム4側に連結される。前記伸縮シリンダは、先端に装備される掘削ユニット6のカッタヘッド7により地山を掘削する際、カッタヘッド7の地山への押付力を発生するよう機能する。前記押付力は、前記油圧ユニット30よりの作動油を圧力制御弁を介して導入することにより発生させる。前記押付力の制御は、前記圧力制御弁を制御盤31より制御することにより実行される。
【0031】
前記揺動ブーム5の先端側には、前記立坑2の円周方向に配置した水平軸を備え、後述する掘削ユニット6を揺動ブーム5に対して水平軸回り(立坑2の半径方向)に揺動可能に支持している。また、揺動ブーム5と掘削ユニット6とに両端部を連結するシリンダ38を備え、シリンダ38を伸縮させることにより掘削ユニット6の揺動位置を調整することができる。前記掘削ユニット6の揺動位置は、図9に示すように、掘削ユニット6に設けた検出アーム39の先端位置を検出するよう揺動ブーム5側に配置した複数個(図示例では3個)の近接センサ40のオンーオフ作動により、検出され、図示しない制御盤に入力される。
【0032】
図示例では、近接センサ40が3個配置されており、いずれの近接センサ40もオン作動しない基準位置と、1個の近接センサ40のみがオン作動する第1位置、2個の近接センサ40がオン作動する第2位置と、全ての近接センサ40がオン作動する第3位置とが検出されるよう構成されている。前記掘削ユニット6の揺動位置の検出は、上記した近接センサ40による検出に限定されるものでなく、他の検出手段を用いてもよい。
【0033】
前記掘削ユニット6は、先端に配置されたカッタヘッド7を、図示しない減速機を内蔵する電動機により回転させて地山を掘削するよう構成されている。カッタヘッド7の後方の軸外周には螺旋状のスクリュ41が配置され、カッタヘッド7により地山に孔明けする場合に、カッタヘッド7により掘削した土砂を孔から排出するよう作動する。前記カッタヘッド7は、図示しないが、例えば、特開2002−348900号公報に記載するように、多数のラウンド型ピックを円錐台形(断面は台形)のヘッド本体の下面の中央から外周面の下端までに螺旋状配列して突設したもので、例えば、その螺旋状配列を2列として互いに対称に設けてある。各ピックは、先端が円錐形の頭部と鍔部と円柱形の固定部とを有し、その固定部を抱持するピックボックスを用いてヘッド本体に固着されている。
【0034】
前記掘削ユニット6はこのような構造であるので、掘削用電動機の回転を減速機にて減速して回転させるので、油圧を利用して回転させる場合のようなトルク変動や急激な回転停止がない。また、カッタヘッド7を回転させることにより垂直に穴を掘るように掘削できるのは勿論のこと、前記旋回フレーム4により旋回移動させることにより立坑2の地山を円形に連続掘削できる。また、前記揺動ブーム5及び掘削ユニット6を揺動させることにより、前記円形に連続掘削させる半径位置を変更でき、掘削範囲を拡幅させて連続掘削させることができる。
【0035】
即ち、揺動ブーム5及び掘削ユニット6を基準位置とした場合には、図1のAで示すように、掘削ユニット6のカッタヘッド7は立坑2の中心に位置され、その状態で揺動ブーム5を伸長させるとB位置に進出するよう作動する。また、揺動ブーム5を立坑2の中心と並行となる第2位置とし且つ掘削ユニット6を第1位置とする場合には、図1のCで示すように、掘削ユニット6のカッタヘッド7は立坑2の坑壁に達し、旋回フレーム4によりこれらを旋回させると立坑2の坑壁に沿って溝を掘削することができる。
【0036】
図10は、立坑2の直径が4.5メートルである場合の一例であり、揺動ブーム5を基準位置として、掘削ユニット6を基準位置から第3位置まで変化させた場合における掘削ユニット6の姿勢変化を示し、図11は、同様に揺動ブーム5を第1位置として、掘削ユニット6を基準位置から第3位置まで変化させた場合における掘削ユニット6の姿勢変化を示す。また、図12は、同様に揺動ブーム5を第2位置として、掘削ユニット6を基準位置から第3位置まで変化させた場合における掘削ユニット6の姿勢変化を示し、図13は、同様に揺動ブーム5を第3位置として、掘削ユニット6を基準位置から第3位置まで変化させた場合における掘削ユニット6の姿勢変化を示す。
【0037】
従って、揺動ブーム5を第1位置とし掘削ユニット6を第3位置とする場合、揺動ブーム5を第2位置とし掘削ユニット6を第2位置以上とする場合、揺動ブーム5を第3位置とし掘削ユニット6を第1位置以上とする場合には、立坑2の坑壁寸法(例えば、直径4.5メートル)を超えて掘削することができ、坑壁を部分的に拡幅(例えば、直径7.5メートル)して形成することもできる。
【0038】
前記旋回フレーム4には、前記した装備の他に、例えば、掘削ユニット6により掘削した土砂を掻き寄せて排出バケットへ積込むシャフトローダ50が装備され、排出バケットに積込まれた土砂は、前記メインフレーム3の排土搬出用開口部60を経由して立坑2の外部へ搬出される。また、立坑2の坑壁は、図1に示すように、型枠61により形成された空間にコンクリートを流し込み硬化させて、順次コンクリート壁に形成される。
【0039】
以上に説明した立坑掘削機1により立坑2の地山を掘削する場合について、以下に説明する。
【0040】
先ず、吊下げクレーンにより立坑2内に吊下げたメインフレーム3を、下方に位置する掘削ユニット6の先端のカッタヘッド7が立坑2の地山に近接する軸方向位置において、立坑2内に位置決めする。そして、メインフレーム3のグリッパ10をアクチュエータ16により前進させて、メインフレーム3を立坑2内に固定した状態とする。
【0041】
そして、先ず、制御盤31により掘削ユニット6のカッタヘッド7が立坑2の坑壁に沿って旋回させるために、立坑2の直径(例えば、直径4.5メートル)に近似した揺動ブーム5を第3位置とし掘削ユニット6を基準位置とする。次いで、掘削ユニット6の電動機を回転させてカッタヘッド7を回転させ、同時に揺動ブーム5の伸縮シリンダに所定圧に制御した作動油を供給して伸長させることにより、カッタヘッド7を立坑2の坑壁に接近した地山に所定の押付け力により押付けて、地山の掘削を開始する。
【0042】
揺動ブーム5の伸縮シリンダの伸長により、掘削ユニット6のカッタヘッド7が地山に所定深さだけ掘進んだ状態に達した段階において、油圧ユニット30からの作動油を油圧制御弁及び流量制御弁を介して駆動モータ25へ供給して駆動モータ25を回転させ、旋回フレーム4を旋回動作させ、揺動ブーム5及び掘削ユニット6を旋回動作させる。カッタヘッド7は、立坑2の坑壁に沿って移動され、順次坑壁に沿って地山を掘削する。
【0043】
この時点の駆動モータ25への作動油の供給圧力と供給流量は、図14の(A)(C)に示すように、カッタヘッド7の旋回半径に応じて制御される。即ち、図14(A)に示すように、カッタヘッド7の旋回半径が大きいほど供給流量が低減され旋回半径が小さいほど供給流量が増加されて、図14(B)に示すように、カッタヘッド7の地山に対する速度が略一定となるよう制御される。一方、駆動モータ25に供給される作動油の供給圧力は、図14(C)に示すように、カッタヘッド7の旋回半径が小さいほど低く、旋回半径が大きくなるに連れて高くなるように制御される。
【0044】
旋回フレーム4、揺動ブーム5、及び掘削ユニット6の旋回が一周すると、地山には坑壁に沿った溝が全周に渡って形成される。次いで、揺動ブーム5若しくは掘削ユニット6の揺動角度を一段階だけ減少させつつ掘削ユニット6のカッタヘッド7により地山を内周側に掘削し、引続き、同様に、旋回フレーム4を旋回動作させ、揺動ブーム5及び掘削ユニット6を旋回動作させる。地山は前記掘削された円周溝の内周側において、順次カッタヘッド7により掘削される。以降は、前記旋回を継続させつつ、順次カッタヘッド7の位置を内周側に移動させることにより、立坑2の地山の全領域を掘削することができる。
【0045】
前記駆動モータ25への作動油の供給圧力と供給流量の制御は、図14(A),(C)に示すように、カッタヘッド7の旋回半径に対応して設定されるが、図15に示すように、旋回ブーム及び掘削ユニット6の揺動角度を検出する近接センサよりの検出信号の組合わせパターンに応じて予め設定するようにしてもよい。
【0046】
即ち、旋回ブームの検出角度0〜3と掘削ユニット6の検出角度0〜3との組合せの16通りのパターンに対して、揺動ブーム5の伸縮シリンダによる押付け力[KN]と、カッタヘッド7の先端速度[mm/sec]と、駆動モータ25に供給する作動油の供給圧力[MPa]と、駆動モータ25に供給する作動油量[L/min]とを、予め設定するようにしている。
【0047】
この場合においても、揺動ブーム5及び掘削ユニット6の揺動角度位置に応じて立坑2内でのカッタヘッド7による掘削半径の大きさに応じてカッタヘッド7の旋回角度を小さくしてカッタヘッド7の移動速度の変化が一定範囲に抑制されるようにしている。
【0048】
また、カッタヘッド7の移動半径の大きさに応じて旋回フレーム4の旋回方向への駆動力を大きく制御するようにして、前記カッタヘッド7の移動速度と移動方向への駆動力との乗算値が、その移動半径に係わらず一定範囲に抑制されるようにし、カッタヘッド7は移動方向への一様な駆動力と移動速度により移動するようにしている。なお、記載している設定数値は、地山の硬さや揺動ブーム5・掘削ユニット6のアーム長さ、旋回フレーム4の旋回半径等に応じて、種々に変更可能である。
【0049】
このように、揺動ブーム5及び掘削ユニット6の揺動角度を検出する近接センサ37,40よりの検出信号の組合わせパターンに応じて予め設定することにより、制御を簡素化でき、また、地山の硬さ等に応じて設定値を容易に変更可能となる。
【0050】
本実施形態においては、立坑2内に吊下げられて坑壁に固定されるメインフレーム3に対して当該メインフレーム3の中心軸回りに旋回駆動される旋回フレーム4と、前記旋回フレーム4の下端に立坑2の半径方向面内で揺動可能に配置された揺動ブーム5と、前記揺動ブーム5の先端に立坑2の半径方向面内で揺動可能に配置され、先端に配置したカッタヘッド7を回転させて地山を掘削する掘削ユニット6と、を備える立坑掘削機1であって、前記カッタヘッド7の立坑2の地山に対する移動半径を検出する手段と、前記検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレーム4の旋回速度を低くして、カッタヘッド7の地山に対する移動速度の変化を一定範囲に抑制する手段と、を備える。
【0051】
このため、旋回フレーム4により掘削ユニット6を立坑2内で旋回させて、立坑2内の地山を掘削ユニット6のカッタヘッド7により掘削することができ、効率よく硬い地山でも掘削できる。また、揺動ブーム5及び掘削ユニット6の揺動角度位置に応じて立坑2内でのカッタヘッド7による掘削半径の大きさに応じてカッタヘッド7の旋回角度を小さくするため、カッタヘッド7の移動速度の変化が一定範囲に抑制されて、効率よく地山を掘削できる。
【0052】
また、検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレーム4の旋回方向への駆動力を大きく制御する手段を備え、前記カッタヘッド7の移動速度と移動方向への駆動力との乗算値が、その移動半径に係わらず一定範囲に抑制されるため、カッタヘッド7は移動方向への一様な駆動力と移動速度により移動し、効率よく地山を掘削できる。
【0053】
また、カッタヘッド7の立坑2の地山に対する移動半径を検出する手段は、揺動ブーム5の旋回フレーム4に対する相対角度を検出する検出手段と掘削ユニット6の揺動ブーム5に対する相対角度を検出する検出手段との検出値に基づいて、前記カッタヘッド7の立坑2の地山に対する移動半径を演算するため、揺動ブーム5及び掘削ユニット6の揺動角度を検出するセンサを設けるのみでカッタヘッド7の正確な移動半径を検出することができる。
【0054】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0055】
1 立坑掘削機
2 立坑
3 メインフレーム
4 旋回フレーム
5 揺動ブーム
6 掘削ユニット
7 カッタヘッド
10 グリッパ
11 上側リングフレーム
12 下側リングフレーム
13 柱状部材
14 旋回案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑内に吊下げられて坑壁に固定されるメインフレームに対して当該メインフレームの中心軸回りに旋回駆動される旋回フレームと、
前記旋回フレームの下端に立坑の半径方向面内で揺動可能に配置された揺動ブームと、
前記揺動ブームの先端に立坑の半径方向面内で揺動可能に配置され、先端に配置したカッタヘッドを回転させて地山を掘削する掘削ユニットと、を備える立坑掘削機であって、
前記カッタヘッドの立坑の地山に対する移動半径を検出する手段と、
前記検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレームの旋回速度を低くして、カッタヘッドの地山に対する移動速度の変化を一定範囲に抑制する手段と、を備えることを特徴とする立坑掘削機の制御装置。
【請求項2】
前記検出された移動半径の大きさに応じて旋回フレームの旋回方向への駆動力を大きく制御する手段を備え、
前記カッタヘッドの移動速度と移動方向への駆動力との乗算値が、その移動半径に係わらず一定範囲に抑制されることを特徴とする請求項1に記載の立坑掘削機の制御装置。
【請求項3】
前記カッタヘッドの立坑の地山に対する移動半径を検出する手段は、揺動ブームの旋回フレームに対する相対角度を検出する検出手段と掘削ユニットの揺動ブームに対する相対角度を検出する検出手段との検出値に基づいて、前記カッタヘッドの立坑の地山に対する移動半径を演算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立坑掘削機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−236315(P2010−236315A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87134(P2009−87134)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)