説明

立方晶窒化ホウ素成形体

構造は、構造により占められた面積より広い表面積をもち、いくつかのピラー(2)を有し、ピラーは、ピラー中に広がる開口(6)を有し中空である。中間層は、ピラーの表面に与えられ、電極は、ピラー(2)の間の空間を満たしている。この構造は、特に製造中の潜在的な損傷を減少させる、強化された構造上の安定性を有する。この構造を、例えば、キャパシタ又は電池のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶窒化ホウ素(cBN)研磨材成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素は、一般に、3つの結晶形態、すなわち立方晶窒化ホウ素(cBN)、六方晶窒化ホウ素(hBN)及びウルツ鉱立方晶窒化ホウ素(wBN)で存在する。立方晶窒化ホウ素は、ダイヤモンドの構造と類似した構造を有する、窒化ホウ素の硬質な閃亜鉛鉱の形態である。cBN構造の中において、原子間に形成する結合は強く、主に四面体の共有結合である。cBNは、人類に知られている2番目に硬質な材料なので、有用な工業材料である。
【0003】
cBNは、機械加工工具等において幅広い商業的用途を有する。cBNは、磨砕砥石及び切削工具等の中の研磨材粒子として用いられ得る、又は工具本体に結合されて従来の電気めっき技術を用いて工具インサートを形成することができる。
【0004】
cBNは、PCBN(多結晶cBN)としても知られているcBN成形体のような結合された形態でも用いられ得る。cBN成形体は、cBN粒子の焼結体を含む。cBNの含有率が、成形体の少なくとも70体積%である場合には、相当量のcBN−cBN間接触がある。cBNの含有率がより低い、例えば、成形体の40から60体積%の領域内である場合には、直接的なcBN−cBN間接触の程度は限定される。
【0005】
cBN成形体は、一般に、本質的に本来はセラミックであるバインダーも含有する。成形体のcBNの含有率が、70体積%未満である場合には、マトリックス相、すなわち非cBN相は、通常、事実上セラミックでもある追加的又は副次的な硬質相も一般に含む。適切なセラミック硬質相の例は、4、5又は6族(新しいIUPACの方式に従って)の遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及び炭窒化物、酸化アルミニウム並びにこれらの混合物である。Ti、Al、Ni、W、Co又はこれらの組合せ等の、本来は、一般に金属又は金属間の他の添加剤を添加して、これらの相の間の結合を改善することができる。マトリックス相は、CBNを除く組成物中のすべての成分を構成するものであると定義される。
【0006】
cBN成形体は、cBN結晶の固有の高い硬度のために、良好な磨損を有する傾向がある。さらに、それらは、熱的に安定であり、高い熱伝導度、良好な耐衝撃性を有し、加工対象物とのすべり接触時に低い摩擦係数を有する。基材(焼結工程中においてPCBN層に一体的に結合されている基材)を含む又は含まないcBN成形体は、使用される特定の切削又は掘削の工具の所望のサイズ及び/又は形状にしばしば切削され、次いで、ロウ付け技術を利用して工具本体に搭載される。
【0007】
cBN成形体を、工具インサート又は工具の形成時に、工具本体に機械的に直接固定することができる。しかし、多くの用途について、成形体が、支持成形体構造を形成するように基材/支持材料に結合され、次いで、この支持成形体構造が、工具本体に機械的に固定されるのが好ましい。基材/支持材料は、一般に、コバルト、ニッケル、鉄又はこれらの混合物若しくは合金等のバインダーにより一緒に結合される超硬合金(cemented metal carbide)である。金属炭化物(metal carbide)粒子は、タングステン、チタン若しくはタンタルの炭化物粒子又はこれらの混合物を含むことができる。
【0008】
多結晶cBN成形体、及び支持成形体構造を製造するための公知の方法は、cBN粒子の未焼結体を、粉末マトリックス相と一緒に高温及び高圧(HPHT)の条件、すなわち、cBNが適切な時間の間において結晶学的又は熱力学的に安定である条件にかけることを含む。
【0009】
用いられる高温及び高圧の一般的な条件は、約1100℃以上の温度、及び約2GPa以上の圧力である。これらの条件を維持する時間は、一般に約3から120分である。
【0010】
70体積%を超えないcBN含有率をもつcBN成形体は、低CBNのPCBN材料として知られている。一般に、このような成形体のcBN含有率は、30体積%から70体積%の間である。低減された熱伝導度をもつ、低cBNのPCBN工具は、仕上作業(切削深さが0.5mm未満である)、及びノジュラー鋳鉄の機械加工に最も適している。PCBN工具の性能は、一般に、工具の形状と、切削速度、送り、及び切削の深さ等の機械加工のパラメータと、接触の特質とに依存する。連続的な切削は、長時間の間における、工具及び加工対象物の間に一定した接触を伴うが、間欠的な接触は、一般に「断続切削(interrupted cutting)」と呼ばれる。
【0011】
機械加工用途の大部分は、この2種の切削作業の組合せを含む。断続切削における熱は、工具が加工対象物と接触していないときに逃げることができるので、総体的な温度を低下させるため、連続的な切削において、切削領域の温度は、断続切削におけるよりはるかに高い。高温は、工具のすくい面(rake face)上の平滑で深い凹みの形成として一般に確認される、切削工具上のより強い「化学摩耗」につながる。したがって、連続切削における主な問題は、刃先の総体的な強度を低下させる、化学摩耗の結果としての深い凹みを形成することである。しかし、断続切削作業において、主な問題は、工具が、断続切削により作り出された周期的な衝撃条件による折れ又は欠けにより、壊滅的(catastrophically)に機能しなくなる傾向があることである。周期的な機械的、熱的な応力と、断続切削工程中の連続的な切削の部分の間における一般的な摩耗(研磨、付着及び化学の)とは、短い工具寿命につながる。したがって、連続的及び断続的な切削の両方の組合せである切削作業において、切削工具の刃先は、折れ及び欠けにより壊滅的に機能しなくなる傾向がある。
【0012】
低cBN含有率のPCBN材料を製造するための従来のPCBN材料の設計法は、Al、Ti等の金属系出発材料、及び/又はNi、TiのAlとの金属間化合物をバインダー相中に用いることであった。
【0013】
米国特許第4334928号によれば、Ni、Co、Fe及びCuから選択される少なくとも1種の金属は、マトリックス中の第3の成分として添加されて、cBN及び第2の硬質相材料と反応して、安定でより高い強度の結合を形成することができる。米国特許第4693746号によれば、マトリックス相は、TiN、Ti(C,N)、TiC、(Ti,M)C、(Ti,M)(C,N)及び(Ti,M)Nの群から選択されるTi系化合物(式中、Mは、Tiを除く周期表のIVa、Va又はVIa族の遷移金属元素を示し、zは、約0.7</=z</=約0.85の範囲内である。)を含有することができる。バインダーは、Al約20から30重量%、及びW約5から20重量%をさらに含有する。さらに、これらのさらなる金属化学種の目的は、高い強度の結合を形成する、Al、Ti及びW含有材料とcBNとの間の反応により、マトリックス相とCBNとの間の結合強度を増大させることである。
【0014】
これらの手法の主な欠点は、cBN及び第2の硬質相材料の両方に適した結合助剤材料の選択が、容易に達成されないことである。これは、主に、含まれる材料の異なる性質によるものである。
【0015】
例えば、Al及びTiがcBNと反応して、反応結合セラミック相を形成することは、当技術分野において周知であるが、これらの金属は、第2の硬質相材料、すなわち遷移金属の炭化物、窒化物及び炭窒化物と、高い強度の結合を容易には形成しない。同様に、Ni、Co、Fe型の材料の添加は、焼結中の第2の硬質相粒子間の結合を促進することができるが、それらは、cBN粒子間の高い強度の結合を提供しない。これらの元素の混合物又は合金を用いる組合せの手法を提案することができるが、これは、十分な量のそれぞれの種類の結合剤が、最も良好に結合する粒子種に曝されることを確実にするために要求される均一性の制約のために、最適には及ばない程度の解決策でもある。
【0016】
したがって、先行技術の低cBNのPCBN材料は、一般に最適には達しない程度に結合されるので、激しい断続切削を含む機械加工、及びHRc40を超える硬化鋼の連続的な切削等の、要求が厳しい用途において良好に機能しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4334928号明細書
【特許文献2】米国特許第4693746号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、立方晶窒化ホウ素成形体(PCBN)は、
立方晶窒化ホウ素粒子の多結晶体30から70体積%、及び
マトリックス相70から30体積%を含み、該マトリックス相は、
遷移金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの混合物から選択される第2の硬質相、並びに
超合金(superalloy)
を含む。
【0019】
一般に、バインダー相の少なくとも一部を形成する前記超合金は、全マトリックス成分の1から10体積%の間、より好ましくは1から5体積%の間、最も好ましくは1から3体積%の間の量で存在する。
【0020】
本発明の好ましい形態によれば、前記超合金は、
・ニッケル、鉄及びコバルトの群から選択される1種又は複数の第1の元素、少なくとも40、好ましくは50重量%、
・合金化元素、すなわちクロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンの群から選択される2種以上の第2の元素
を含有する。この群の元素は、一般に、合金の5から60重量%の間を構成する。
【0021】
前記超合金は、合金化元素の第2の群、すなわち炭素、マンガン、硫黄、ケイ素、銅、リン、ホウ素、窒素及びスズから選択される1種又は複数の第3の元素をさらに含有することができる。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明のPCBN材料は、
・超合金系金属相が、それ自体を粒界及び三重点に優先的に分布させ、それにより完全又は部分的な金属/金属間のリム構造が、cBN結晶粒の周り及び第2の硬質相結晶粒の間においてしばしば観察され、
・該金属/金属間のリムが、主に超合金系の相からなる、
という特徴的な微細構造を有する。
【0023】
マトリックスのために最も好ましい第2の硬質相材料は、チタンの窒化物、炭化物及び又は炭窒化物並びにこれらの混合物である。
【0024】
本発明のPCBN材料の前記立方晶窒化ホウ素成分は、cBN30から70体積%、より好ましくはcBN35から65体積%、最も好ましくはcBN50から60体積%を含む。CBN結晶粒についての一般的な平均結晶粒径は、サブミクロンから10ミクロンの範囲である。場合によって多モードの(multimodal)サイズ分布をもつ、より粗いcBN結晶粒径を用いることもできる。
【0025】
本発明のさらなる実施形態において、前記マトリックス相は、Co、Ti、Ni、W及びCrの選択されたアルミナイド(aluminide)をさらに含有することができる。好ましいアルミナイドはTiAlである。これを、CBN成形体反応混合物中に直接的に添加することができる、又は準化学量論的な遷移金属の炭化物、窒化物若しくは炭窒化物の反応による合成前処理工程中にその場(in situ)で形成することができる。
【0026】
本発明のPCBN成形体は、少量の酸化物相をさらに含有することができる。酸化物は、存在する場合において、好ましくはマトリックス相中のいたるところに分散される。これは、主に第2の硬質相結晶粒のための結晶粒微細化剤(grain refiner)として作用することを意図したものである。適切な酸化物の例は、希土類の酸化物、酸化イットリウム、4、5、6族の酸化物、酸化アルミニウム及びSIALONとして知られている窒化酸化ケイ素アルミニウムから選択される。酸化物相は、好ましくは微細に分割され、サブミクロンサイズの粒子として一般に存在する。
【0027】
酸化物は、存在する場合において、好ましくは、第2の硬質相含有物に対して1から2重量%の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のPCBN成形体のSEM顕微鏡写真である。
【図2】同じPCBN成形体の、より高倍率のSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、PCBN成形体に関し、より具体的には、
・cBN、
・遷移金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの混合物から選択される第2の硬質相、
・超合金結合相、
・所望により、添加された遷移金属アルミナイド、並びに
・所望により、少量の適切な酸化物、好ましくは酸化アルミニウム又は酸化イットリウム
を含むPCBN成形体に関する。
【0030】
この成形体は、cBN相が硬度、強度、靭性、高い熱伝導度、高い耐摩耗性及び含鉄材料(iron−bearing material)との接触時の低い摩擦係数をもたらす決定的な成分である、低cBN含有率のPCBN材料である。PCBN材料(cBN成形体)は、cBN30から70体積%、より好ましくは35から65体積%、最も好ましくはcBN50から60体積%を含む。
【0031】
cBN含有率が低すぎる、すなわち30体積%未満であると、セラミックマトリックスの特性が工具の特性を支配する傾向があるので、工具寿命の性能を著しく低下させることがある。cBN含有率が高すぎる、すなわち70体積%を超えると、工具寿命は、cBN相の過度の摩耗と、工具のすくい領域中に過剰に大きく深い凹みを結果的に形成することとによりさらに低下し、刃先の壊滅的な損傷が生じる。
【0032】
したがって、本発明の本質的な特徴は、マトリックス相に超合金相を添加することである。超合金は、高温及び耐食性の用途のために設計された、特定の種類の鉄、ニッケル、コバルトの合金である。これらを、低cBN含有率のPCBN材料のマトリックス中に用いることは、これまでに知られていなかった。この金属バインダー相は、cBN結晶粒及び第2の硬質相粒子の周りにおいてそれ自体を優先的に分布させる合金を含み、これらの粒子の間に高い強度の結合をもたらす。超合金相は、cBN結晶粒間、第2の硬質相粒子間、並びに第2の硬質相及びcBN粒子の間にも高い強度の結合を効果的に形成する特有の能力を有すると思われる。超合金は、焼結工程を促進し第2の硬質相粒子及びcBNの再配列をさらに促進してより良好な充填を達成する液相を、焼結中に形成するものと仮説付けられる。
【0033】
CBN及び第2の硬質相粒子は、一般に、特にそれぞれの粒子の表面に、かなり多量の酸化物を含有する。通常、cBN粒子は、粒子の表面にBを含有し、第2の硬質相材料は、遷移金属の炭酸化物、窒酸化物又は炭窒酸化物として酸化物を含有する。時として、不純物として存在する遷移金属酸化物を有することも可能である。超合金バインダー相は、第2の硬質相粒子のための結晶粒微細化剤としても挙動する、より安定な高い強度の酸化物の形成を通じて、これらの表面を反応的に洗浄することができると思われる。
【0034】
先行技術分野において知られているような、一般的な遷移金属アルミナイドがバインダー相として添加される場合において、第2の硬質相とcBNの表面上の酸化物は、金属アルミナイドと優先的に反応して安定なAlを形成する。結果として、反応焼結によるcBNの結合のために利用可能なアルミニウムの有効量は、著しく減少する。しかし、金属アルミナイドが超合金バインダー相と一緒に添加される場合において、超合金中に含有される合金化元素は、不純物酸化物相と優先的に反応して代わりの酸化物を形成するので、cBN結晶粒を結合するために十分で有効なアルミニウムを提供する。さらに、超合金バインダーは、特に、合金が焼結中に液体の形態である場合において、CBNと反応し、それと高い強度の結合を形成することができる遷移金属を含有する。
【0035】
さらに、超合金バインダー相は、第2の硬質相粒子をぬらし、それと反応して、複合体相、すなわち2種以上の遷移金属の炭化物、窒化物及び炭窒化物を形成する。
【0036】
超合金は、好ましくは、
・ニッケル、鉄及びコバルトの群から選択される1種又は複数の第1の元素、少なくとも40質量%、
・合金化元素、すなわちクロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンから選択される2種以上の第2の元素
を含有する。
【0037】
超合金は、合金化元素の第2の群、すなわち炭素、マンガン、硫黄、ケイ素、銅、リン、ホウ素、窒素及びスズから選択される1種又は複数の第3の元素をさらに含有することができる。
【0038】
本発明のcBN成形体を、微粒の形態の選択された超合金バインダーと、所望により適切な酸化物とを、微粒の立方晶窒化ホウ素粒子と第2の硬質相粒子とを含む一般的な先行技術の組成物に、所望により、焼結中にcBNと反応してセラミックマトリックスを形成するアルミニウム等の元素とともに添加することにより作製することができる。次いで、この混合物は、成形体を生成するのに適した高温及び高圧の条件に供される。使用される高温及び高圧(HPHT)の一般的な条件は、約1100℃以上の温度、及び約2GPa以上、より好ましくは4GPa以上の圧力である。これらの条件を維持する時間は、一般に約3から120分である。
【0039】
出発の未焼結の組成物中の選択された超合金は、例えば、超合金中の元素と、焼結される組成物中の他の材料との反応のため、焼結済みcBN成形体中の超合金と異なることがある。しかし、超合金は、焼結済みcBN成形体中において、その超合金の特徴を保有している。
【0040】
成形体製造中に別の供給源からの未結合の組成物を浸潤するために、追加的な金属又は合金を用いることもできる。他の供給源の金属又は合金には、典型的には、組成物が、高温及び高圧の条件を適用される前にその表面上に置かれる、超硬合金基材からの、鉄、ニッケル又はコバルト等の金属が含有される。
【0041】
本発明のcBN成形体は、金属の第2のバインダー相のため、以下の特徴を一般に示す。
【0042】
粒子の周りの金属リム(rim)
本発明における、特にその好ましい形態における、第2のバインダー相の金属の性質は、複合体中における他の粒子間に改善された結合を提供することにより、焼結済みPCBN成形体の強度を改善するものと仮説付けられている。これは、主に、本質的に超合金である、出発合金により与えられる金属結着相の特有の化学的性質によるものである。
【0043】
この第2の金属バインダーは、優先的にcBNの周りと、マトリックス中のセラミック粒子の周りとにそれ自体を分布させ、複合体にさらなる結着をもたらす。マトリックス中のこれらのバインダープール(pool)の一般的な分布は、cBN−cBN、cBN−2硬質相、又は2硬質相−2硬質相の粒界における、又は(3つの結晶粒が一致する)三重点におけるものである。少量の添加のため、この金属相は、時として非常に高倍率下でのみ観察され得る薄いリムを形成するので、高解像度の走査電子顕微鏡を用いて最も良好に観察される。この金属又は金属間の相は、一般に、出発の超合金粉末の組成物から得られるので、本質的に超合金の成分を含有し、特に、Fe、Ni及び/又はCo等の主成分を、エネルギー分散分光、X線蛍光及びX線回折を用いて容易に検出することができる。超合金添加剤の役割は、cBN及び第2の硬質相粒子と化学的に相互作用することなので、これらの金属/金属間のプールの冶金学的性質は、一般に、超合金添加剤自体の元々の組成物からやや変化していると予想される。しかし一般に、この変化は、金属/金属間の相の領域がもはや主として組成物中の超合金でないほどには極端でない。
【0044】
さらなる合金化元素の存在
バインダー相の冶金のさらに好ましい要件は、これが、クロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンの群から選択される第2の元素を少なくとも含有することである。
【0045】
これらの元素の存在は、X線蛍光又はエネルギー分散分光(EDS)等の適切な元素分析技術を用いて容易に確認することができる。
【0046】
バインダー合金は、炭素、マンガン、硫黄、ケイ素、銅、リン、ホウ素、窒素及びスズの群から選択される少なくとも1種の追加的な合金化元素をさらに含有することができる。
【0047】
所望により存在するサブミクロンの酸化物
本発明の、所望による要件は、マトリックスの主要な相の中の結晶粒微細化剤(grain refiner)として作用する適切な酸化物を添加することにより、PCBN材料の特性をさらに改善することである。
【0048】
このような酸化物の存在を、走査電子顕微鏡を用いて観察し、X線回折及び/又はEDSを用いて検出することができる。
【0049】
本発明の立方晶窒化ホウ素成形体は、典型的には、硬質な鉄材料の仕上機械加工、及びノジュラー鋳鉄の機械加工において用いられる。
【0050】
次に本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して、より詳細に説明する。
【実施例】
【0051】
(例1)
本発明の材料の改善された性能
材料A、「先行技術」のバインダーを用いた参照用の材料
<10μmの粒径を有するアルミニウム粉末を、〜5μmの平均微粒子径を有するTi(C0.50.50.8粉末に、10重量%の比率で添加した。粉末混合物を、ステンレス鋼ボールを用いて1時間、乱流混合した後に、真空下で20分間、1025℃で反応前熱処理をした。次に、熱処理済み粉末を破砕し、篩分けした後に、超硬合金(cemented carbide)の粉砕媒体を用いてヘキサン中で4時間、摩擦粉砕した。その後、〜1.2μmの平均結晶粒径を有するcBN粉末を、cBNの体積%が60になるように混合物に添加した。この混合物を、さらに1時間、摩擦粉砕した。このスラリーを、真空下で乾燥し、超硬合金基材により支持された未焼結成形体に形成した。この材料を、約5.5GPa及び約1480℃において焼結して、多結晶cBN成形体を生成した。このように形成されたcBN成形体を、以下において材料Aと呼ぶ。
【0052】
次いで、様々な材料を、マトリックス混合物の一部を以下のような超合金粉末で置き換えることにより、以下のように本発明に従って調製した。
【表1】

【0053】
材料B
超合金粉末を、反応前すなわち熱処理済みの主たるバインダー粉末に、これがマトリックス組成物全体の5重量%になるように添加した。反応前のバインダー粉末の組成及び製造は、材料Aについて記載した通りであった。この混合物を、材料Aのように4時間、摩擦粉砕(attrition mill)した。その後、cBN(平均結晶粒径〜1.2μm)を、このスラリーに添加し、この混合物を、材料Aのようにさらに1時間、摩擦粉砕した。cBN含有率を、60体積%に保った。最終的なPCBN生成物のための次の製造ステップは、材料Aの通りであった。合金粉末は、<1μmの平均結晶粒径を有し、この主な組成は以下の通りである。
【表2】

【0054】
材料C
材料Bにおいて用いた合金粉末と同じ合金粉末を、これがマトリックス組成物全体の10重量%になるようにバインダーに添加した。この材料の製造は、材料Bについてと同じであった。材料Cについて生成した微細構造のSEM顕微鏡写真を図1に示す。この画像中のcBN結晶粒は、非常に暗い領域として見える一方で、マトリックスは、その構造の残りの部分である。マトリックス領域中の非常に明るい領域がはっきりと見え、その例をAと標識した。これらは、本発明に特徴的な金属/金属間のリム構造である。図2は、同じ材料のより高倍率のSEM画像である。粒子間の粒界における、又は三重点における超合金系プールの好ましい分布がはっきりと分かる。
【0055】
材料D
以下に示す主な組成を有する超合金粉末(平均粒径〜16μmをもつ)5重量%を、マトリックス全体に添加し、材料Bについて記載したのと同じ方法でcBN成形体に製造した。
【表3】

【0056】
試験片を、材料A、B、C及びDのそれぞれから切り出し、研磨して、切削インサート(cutting insert)を形成した。切削インサートを、加工対象物材料DIN 100Cr6における断続切削試験において試験した。試験を、以下の機械加工パラメータをもつ乾式機械加工条件において行った。
切削速度(m/分) 150
切削深さ(mm) 0.2
送り(mm) 0.1
インサートの形状 SNMN 090308 T0202(照合用)
すくい角(rake angle) 75°
進み角(leading angle) 15°
【0057】
切削インサートを、工具中に欠け又は折れが生じるまで試験した。
【表4】

【0058】
表2からの結果によれば、第2の合金バインダーを含有するすべての材料、すなわち材料B、C及びDは、超合金を添加していない参照用の材料Aより良好に機能した。
【0059】
超合金含有率の効果
同じ超合金を添加しているが、マトリックス全体の含有率に対して量が異なる、すなわちそれぞれ5重量%及び10重量%である、表1における材料B及びCについての結果を比較すると、5重量%のより少ない添加で、断続旋盤加工性能を改善するのに十分であることが示される。10重量%のより高い合金含有率において、材料の性能は劣っていたが、超合金を添加していない参照の材料、材料Aの性能に比べて依然としてより良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化ホウ素粒子の多結晶体30から70体積%、並びに
マトリックス相70から30体積%を含み、該マトリックス相は、
遷移金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの混合物から選択される第2の硬質相、並びに
超合金
を含む、立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項2】
前記立方晶窒化ホウ素粒子の多結晶体が、35から65体積%の量で存在する、請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項3】
前記立方晶窒化ホウ素粒子の多結晶体が、50から60体積%の量で存在する、請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素。
【請求項4】
前記超合金が、前記マトリックス相の1から10体積%の量で存在する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項5】
前記超合金が、前記マトリックス相の1から5体積%の量で存在する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項6】
前記超合金が、前記マトリックス相の1から3体積%の量で存在する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項7】
前記超合金が、
ニッケル、鉄及びコバルトの群から選択される1種又は複数の第1の元素、少なくとも40重量%、並びに
合金化元素、すなわちクロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンの群から選択される2種以上の第2の元素
を含有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項8】
前記第1の元素が、前記超合金の少なくとも50重量%の量で存在する、請求項7に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項9】
前記第2の元素が、前記超合金の5から60重量%の量で存在する、請求項7又は請求項8に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項10】
前記超合金が、炭素、マンガン、硫黄、ケイ素、銅、リン、ホウ素、窒素及びスズの群から選択される第3の元素を含有する、請求項7から9までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項11】
超合金が、前記立方晶窒化ホウ素粒子の多結晶体の中の粒界及び三重点において分布しており、金属/金属間のリム構造が少なくともいくつかの該立方晶窒化ホウ素結晶粒の周りにおいて、及び/又は前記第2の硬質相の少なくともいくつかの粒の間において存在する、請求項7から10までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項12】
前記金属/金属間のリムが、主に超合金からなる、請求項11に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項13】
前記マトリックス相が、コバルト、チタン、ニッケル、タングステン又はクロムのアルミナイド(aluminide)を含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項14】
前記アルミナイドがTiAlである、請求項13に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項15】
前記マトリックス相が酸化物を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項16】
前記酸化物が、希土類金属の酸化物、酸化イットリウム、4、5、6族の酸化物、酸化アルミニウム及び窒化酸化ケイ素アルミニウムから選択される、請求項15に記載の立方晶窒化ホウ素。
【請求項17】
前記酸化物が、微細に分割された微粒の形態で存在する、請求項15又は請求項16に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項18】
前記酸化物の粒子が、サブミクロンの粒子である、請求項17に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。
【請求項19】
実質的に本明細書に記載又は例示された、請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素成形体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523682(P2011−523682A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513095(P2011−513095)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052420
【国際公開番号】WO2009/150601
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(507142155)エレメント シックス (プロダクション)(プロプライエタリィ) リミテッド (44)