説明

端子

【課題】表面取付型の端子を接着剤により対象物表面に取り付ける構成において、接着剤の使用量を削減できるようにする。
【解決手段】端子10は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。接着剤支持部18は、基部12の下方に延長される片持ち梁状の係留部28を備える。係留部28の周囲には、基部12と係留部28との間に広がる非点対称な開口30が形成される。係留部28は、基部12に連結される第1端28aと、基部12の切欠き32の下方に配置される自由端としての第2端28bとを有する。基部12を対象物に接着するための接着剤は、固化前に開口30を流通できる。開口30を通って固化した接着剤に、係留部28の少なくとも一部が係合して、接着剤を係留できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に関し、特に、対象物の表面に取り付けられる端子に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の表面に取り付けられて同表面に形成した導体に接続される表面取付型(或いは表面実装型)の端子において、端子を接着剤により対象物表面に取り付けて、端子の電気接点と対象物表面の導体とを主として接着剤の接着作用の下で相互に接続する構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、表面に導体が形成された基板に端子を取り付けるための端子取り付け構造を開示する。特許文献1には、「端子3は、2つの固定部31と、2つの固定部の一方から他方に向けて略平行に延在する複数の弾性部32と、基板1に対して凸となるように弾性部32に設けられ、導体2に電気的に接続された基板接触部33とを備える。固定部31は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ4等の接合手段によって基板1に固着される。また端子3の基板接触部33は、弾性部32の弾性変位による反発力で導電体2に接触している状態で、接着剤5によって基板1に接着されている。」、「端子303は、固定部331と、固定部331から異なる方向(図示例では互いに反対方向)に延びる複数の弾性部332と、基板302に対して凸となるように弾性部332に設けられ、導体302に電気的に接続された基板接触部333とを備える。固定部331は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ304等の接合手段によって基板301に固着される。また固定部331は、端子303の基板接触部333が弾性部332の弾性変位による反発力で導電体302に接触している状態で、接着剤305によって基板301に接着されている。」と記載されている。
【0004】
また特許文献2は、表面に銀プリントが施されたガラスに対して端子が接着されてなる端子付きガラスを開示する。特許文献2には、「端子14は、2枚の厚さの異なる板により構成され、下面が接着層16に接着される基部17(例えば厚さ0.4mm)と、この基部17から立上げられ雌型端子部18から車内のテレビ等に接続される端子部19(例えば厚さ0.8mm)とからなる。」、「基部17は、両端に銀プリント12に向かって曲げられる弧状の曲げ部21、21を有する。また、接着層16は、端子14の長手方向に沿って図面左から第1の両面テープ22、接着剤23、第2の両面テープ24が配置されることにより構成される。26、26は、端子14の曲げ部21、21が銀プリント12の上面に接触される接点である。即ち、端子14は複数の接点26、26で銀プリント12の上面に接触されている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−105036号公報(段落0016、0030)
【特許文献2】国際公開第2010/100961号(段落0043、0045)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面取付型の端子の電気接点と対象物表面の導体とを主として接着剤の接着作用の下で相互に接続する構成では、電気接点と導体との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できるとともに、接着剤の使用量を削減できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、切欠きを有する基部と、基部から延長され、基部の下方に配置される電気接点を有するコンタクト部と、基部の下方に延長され、切欠きの下方に配置される自由端を有する片持ち梁状の係留部とを具備し、係留部の周囲に開口が形成され、基部を対象物に接着するための接着剤が固化前に開口を流通できるとともに、開口を通って固化した接着剤に係留部の少なくとも一部が係合して接着剤を係留できるようになっている、端子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る端子は、基部の下方に延長される片持ち梁状の係留部と、係留部の周囲に形成される開口とを備えているから、接着剤を基部の上方に膨出させることなく係留部に接触させて固化させることができるとともに、固化前の接着剤が開口を通り抜ける方向を制御して接着剤を所望の形状に固化させることができる。したがって、本発明の一態様に係る端子によれば、コンタクト部の電気接点と対象物表面の導体との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できるとともに、液状の接着剤の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態による端子を示す図で、(a)上方から見た斜視図、(b)下方から見た斜視図である。
【図2】図1の端子を対象物の表面に取り付ける手順の一例を、図1の線II−IIに沿った断面図で示す図で、(a)仮止め、(b)接着の各工程を示す。
【図3】図1の端子の変形例を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による端子を示す図で、(a)上方から見た斜視図、(b)下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態による端子を示す図で、(a)斜視図、(b)線V−Vに沿った断面図である。
【図6】本発明の実施形態による端子が有する係留部の変形例を示す概略平面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態による端子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の第1の実施形態による端子10を示す図、図2は、端子10を対象物の表面に取り付ける手順の一例を示す図である。
【0011】
端子10は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。基部12は、互いに反対側の第1面(図で下面)12aと第2面(図で上面)12bとを有する略矩形平板状要素である。基部12は、後述するように、主として接着剤により対象物の表面に固定されて、対象物表面に形成した導体に対し、コンタクト部16の電気接点14を適宜位置に位置決めする基礎部分として機能する。基部12は全体として、その素材、形状、寸法等に依存して決まる適度な弾性を有することができる。
【0012】
図示の端子10では、一対のコンタクト部16が、基部12の長手方向両端にそれぞれ設けられる。各コンタクト部16は、基部12から延長される複数(図では3個)の腕部分20を含む。各腕部分20は、基端20aで基部12に連結されるとともに末端20bが自由端となる片持ち梁状要素である。腕部分20は、基端20aの近傍で曲折して基部12の第1面12aから突出する方向(図で下方)へ延びるとともに中間で反転して反対方向(図で上方)へ延びる略U字形状を有し、この反転領域の外側膨出面が、電気接点14として機能する。したがって各コンタクト部16は、基部12の第1面12aから突出した位置(すなわち基部12の下方)に配置される複数(図では3個)の電気接点14を有することになる。各腕部分20は、その素材、形状、寸法等に依存して決まる適度な弾性を有することができる。
【0013】
図示構成では、基部12とコンタクト部16とは、互いに同一の電気良導性材料から一体に作製される。例えば基部12とコンタクト部16とを、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により所定形状に打ち抜きかつ折曲して、一体に形成できる。なお、基部12とコンタクト部16とを互いに別体の部材から作製して後工程で互いに接合する構成とすることもできる。
【0014】
端子10はさらに、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備えることができる。電線接続部22は、基部12の中央領域12cにおいて第2面12bから突出する方向(図で上方)へ延長される平板状要素である。電線接続部22の先端領域には、外部の電線(図示せず)を取り外し自在に接続できる端末部分24が形成される。例えば、対象物表面に取り付けた端子10の電線接続部22に外部の電線を接続することにより、端子10を介して、外部の電線から対象物表面の導体に所望の電流を供給することができる。
【0015】
図示構成では、電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16とは別体の電気良導性材料から作製され、端末部分24の反対側の端部領域26で基部12の中央領域12cにかしめ等の接合手段により接合される。或いは、電線接続部22を、基部12及びコンタクト部16と同じ電気良導性材料から一体に作製することもできる。なお、電線接続部22は、基部12及びコンタクト部16の前述した機能を妨げないことを前提に、図示の形状、寸法に限定されない多様な形状、寸法を有することができる。
【0016】
図示の端子10では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、基部12の第1面12aから突出した位置(すなわち基部12の下方)に延長される片持ち梁状の係留部28を備える。係留部28は、基部12に連結される第1端28aと、基部12の第1面12a側(すなわち基部12の下方)に配置される自由端としての第2端28bとを有する。
【0017】
係留部28の周囲には、基部12と係留部28との間に広がる非点対称な開口30が形成される。開口30は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤が、粘度によらず自由に流通できる形状及び寸法を有する。係留部28は、開口30を通って固化した接着剤に少なくとも一部が係合して、同接着剤を定位に係留できるように機能する。ここで、開口30が「非点対称」であるとは、基部12を第2面12b側(すなわち基部12の上方)から見たときに視認できる開口30の輪郭が非点対称形状(図示の端子10では略コ(又はU)字状)であることを意味する。このような非点対称な開口30は、基部12に厚み方向へ貫通する切欠き32を設けるとともに、切欠き32と、切欠き32に隣接して基部12に第1端28aで連結される片持ち梁状の係留部28とを、基部12の上方から見て互いに実質的に重畳する位置に形成することで、基部12と係留部28との間に画定される。この構成において、係留部28の第2端(自由端)28bは、基部12の第1面12a側で切欠き32の下方に配置されることになる。また、開口30は、第2端(自由端)28bを含む係留部28の外周縁28cの全体と、切欠き32の内周縁32aとの間に形成される(図1(b))。
【0018】
図示の端子10では、係留部28は、第1端28aを有して基部12に略直交する方向へ延長される第1部分34と、第2端28bを有して基部12に略平行する方向へ延長される第2部分36とを、一体に備えている。第2部分36は、略矩形の板状部分であり、第2部分(板状部分)36の三方に非点対称な略コ(又はU)字状の開口30が形成されている。なお、係留部28及び開口30は、開口30が非点対称であること、及び基部12を対象物に接着するための接着剤が固化前に開口30を自由に流通できるとともに固化後に係留部28によって確実に係留されることを前提に、図示の形状、寸法に限定されない多様な形状、寸法を有することができる。
【0019】
係留部28の第1部分34は、接着剤支持部18に供給された固化前の接着剤の流動を制限する流動制限部として機能する。第1部分34は、当該接着剤支持部18に隣接するコンタクト部16に向かう接着剤の流動を実質的に防止できるように制限する。また、基部12の中央領域12cに接合される電線接続部22の端部領域26の、開口30に隣接する側の縁部分26aは、係留部28の第1部分34に対向して配置されて、接着剤支持部18に供給された固化前の接着剤の流動を制限するもう1つの流動制限部として機能する。縁部分26aは、基部12の中央領域12cに向かう接着剤の流動を実質的に防止できるように制限する。
【0020】
図示のように、係留部28はそれ自体に、固化前の接着剤が流通可能な貫通穴38を、任意選択的に有することができる。貫通穴38は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤が、粘度によらず自由に流通できる形状及び寸法を有する。図では、係留部28の第2部分(板状部分)36に、互いに同一の形状(円形)及び寸法を有する一対の貫通穴38が形成されている。
【0021】
図示構成では、係留部28は、基部12と同一の電気良導性材料から基部12と一体に作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に係留部28を打ち抜きかつ折曲して形成できる。このプレス工程によれば、基部12の上方から見て、基部12を貫通する略コ(又はU)字状の切欠き32の内側に、片持ち梁状の係留部28が配置されることになる。なお、係留部28を基部12とは別体の部材から作製して後工程で基部12に接合する構成とすることもできる。
【0022】
図2を参照して、端子10を対象物40の表面40aに取り付ける手順の一例を説明する。対象物40の表面40aには、端子10を接続する導体42が適宜位置に形成されている。
【0023】
まず準備ステップとして、端子10の基部12の第1面12a側の、コンタクト部16及び接着剤支持部18を除く所望箇所(図では、電線接続部22の端部領域26の表面)に、両面接着テープ44を貼付する(図2(a))。或いは、対象物40の表面40aの、端子10の当該所望箇所を固定するに適した位置に、両面接着テープ44を貼付する。両面接着テープ44としては、例えば、住友スリーエム株式会社より入手可能なVHB(商標)アクリルフォーム構造用接合テープY4920のような、中間の柔軟な基材層とその両側の粘着剤層との3層構造を有するものを使用できる。この種の両面接着テープ44は、柔軟な基材層の応力分散作用により、両面接着テープ44の面方向に加わるせん断力に抗し、かつ環境温度の変動による端子10の寸法変化を吸収して、端子10の基部12を対象物40の表面40aに強固に固定することができる。
【0024】
次に、端子10を、各コンタクト部16の複数(3個)の電気接点14が、対象物40の表面40aに形成した対応の導体42に対向する位置及び姿勢に配置して、両面接着テープ44により基部12を対象物表面40aに固定する(図2(a))。このとき、基部12に適当な押圧力Pを加えることにより、基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませて、個々の電気接点14を一様な接触圧力P′で導体42に接触させる。この押圧力Pは、両面接着テープ44の粘着剤層に所要の接着力を発揮させるに十分な大きさである。そして、接触圧力P′を確保できるように、基部12及びコンタクト部16(腕部分20)の形状や寸法、両面接着テープ44の厚み等が予め選択される。また、接着剤支持部18が有する係留部28の形状や寸法は、基部12及びコンタクト部16のこのような弾性変形を阻害しないように予め選択される。なお、両面接着テープ44は、端子10を対象物40に恒久的に固定するためのものではなく、後述する接着剤が固化するまでの間の仮止め機能を発揮できれば良い。
【0025】
次に、対象物40を端子10の重力方向下側に配置して、両面接着テープ44により対象物40の表面40aに仮止めされた端子10に対し、一対の接着剤支持部18の各々に、液状の接着剤46を供給する(図2(a))。液状の接着剤46は、各接着剤支持部18の係留部28の周囲の開口30を(図示構成では貫通穴38(図1)も)通り抜け、その粘度や対象物表面40aに対する濡れ性等の特性に依存して、基部12の第1面12aと対象物表面40aとの間を流動しようとする。このとき、各接着剤支持部18の係留部28の開口30が非点対称な輪郭を有しているから、液状の接着剤46が開口30を通り抜ける方向が実質的に制限され、それに伴い、基部12の第1面12aと対象物表面40aとの間での接着剤46の流動方向が実質的に制限される。したがって、開口30の非点対称形状を適宜選択することにより、固化前の接着剤46の流動方向を制御して、接着剤46を所望の形状に固化させることができる。
【0026】
図示の端子10では、液状の接着剤46が各接着剤支持部18の開口30を通り抜けるときに、各接着剤支持部18の係留部28の第1部分34と電線接続部22の端部領域26の縁部分26aとが、互いに協働して、基部12の第1面12aと対象物表面40aとの間の空間における接着剤46の流動を制限する。その結果、液状の接着剤46は、対象物表面40aに接した状態で第1部分34と縁部分26aとの間の領域に実質的に保持され、摩擦力や表面張力の下で当該領域に貯留される。なお、図示構成では、電線接続部22の端部領域26の縁部分26aに隣接する両面接着テープ44の側縁も、液状の接着剤46に対する流動制限機能を発揮している。
【0027】
また、図示の端子10では、係留部28の第2部分36が略矩形の板状部分であって、第2部分(板状部分)36の三方に、比較的広い空間に渡る略コ(又はU)字状の開口30が形成されているから、接着剤46の粘度が比較的高い場合であっても、開口30を通る接着剤46の流動自体を妨げることなく、接着剤46の流動方向を制御することができる。係留部28に任意選択的に設けられる貫通穴38は、接着剤46の粘度が比較的高い場合に、開口30を通る接着剤46を補足するべく、それ自体に接着剤46を通過させることができる。接着剤46の粘度が比較的低く、接着剤46が容易かつ迅速に開口30を通過できる場合は、貫通穴38の個数や寸法を削減したり、貫通穴38を省略したりすることができる。
【0028】
接着剤支持部18に所定量の接着剤46が供給されると、接着剤46は、摩擦力や表面張力により係留部28に一様に接触しながら、係留部28の上に乗り上げて開口30を少なくとも部分的に埋めた形態を呈するに至る(図2(b))。このとき、片持ち梁状の係留部28が基部12の下方に延長されているから、接着剤46を、基部12の第2面12bに溢出するまで供給する必要は無い。
【0029】
開口30を少なくとも部分的に埋めた形態で接着剤46が固化すると、係留部28がその少なくとも一部で、固化後の接着剤48に係合する(図2(b))。図示の端子10では、係留部28は、基部12に略平行する方向へ延長される第2部分36を有しており、第2部分36の略全体が、固化後の接着剤48に埋め込まれて固定される。固化後の接着剤48は、係留部28に接触することで、接着剤支持部18に対し十分に大きな接触面積を確保して、係留部28により定位に係留される。固化後の接着剤48が接着剤支持部18上で定位に係留されることにより、接着剤48と対象物表面40aとの接着力(及び両面接着テープ44による補助的な接着力)に依存して、端子10が対象物表面40aに取り付けられるとともに、端子10の基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませた状態が維持され、以て、個々の電気接点14と対応の導体42との間の接触圧力P′が維持される。その結果、端子10の各電気接点14と対応の導体42との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物40の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。
【0030】
端子10によれば、接着剤支持部18に、基部12の下方に延長される片持ち梁状の係留部28を設けて、係留部28の周囲に非点対称な開口30が形成されるようにしたから、上記したように、コンタクト部16の電気接点14と対象物表面40aの導体42との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できるとともに、液状の接着剤46の使用量を削減することができる。特に、図示の端子10では、係留部28の第2部分36が、固化後の接着剤48に埋め込まれて固定されるので、端子10が対象物表面40aにさらに強固に取り付けられ、電気接点14と導体42との適正な接続状態が一層安定して維持される。固化後の接着剤48は、基部12の第2面12bから膨出しない形状を有することができるから、端子10の適用において基部12の第2面12b側の空間を有効利用したい場合に有利である。
【0031】
液状の接着剤46は、硬化又は固化することで対象物40の表面40aに端子10を強固に固定した状態に保持する接着力を発揮できるものであって、化学的に架橋反応が起こり、緻密な3次元網目を形成する樹脂からなることができる。このような樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、光硬化型アクリル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド、シアノアクリレート、尿素樹脂等の、室温硬化型又は熱硬化型樹脂が挙げられる。接着剤46として、エポキシ系樹脂のような室温硬化型樹脂を使用した場合は、熱を加えずに常温で作業できるので、端子10や対象物40が熱による影響を受けない利点が有る。また、紫外線硬化樹脂や熱可塑性樹脂等の、他の樹脂を接着剤46に用いることもできる。なお本願では、狭義の硬化及び固化を「固化」と総称する。
【0032】
上記した端子取付手順では、両面接着テープ44を用いて基部12を対象物表面40aに固定することにより、端子10を対象物40に仮止めしている。この構成によれば、両面接着テープ44により基部12を対象物表面40aに固定すると同時に、個々の電気接点14と対応の導体42との間の接触圧力P′を確保でき、かつ接触圧力P′をある程度の時間に渡って維持できるので、例えば、接着剤46として室温硬化型樹脂のような固化までに時間を要する樹脂を使用した場合にも、接着剤46の固化を待機することなく所要の次工程に移行できる。なお、両面接着テープ44の代わりに、適当な接着剤や治具を用いて端子10を対象物40に仮止めすることもできる。
【0033】
基部12の第1面12aと対象物40の表面40aとの間に介在する両面接着テープ44等の仮止め部材として、電気絶縁性の部材を使用することができる。この構成によれば、対象物40の表面40aに導体42から電気的に独立した他の導体(図示せず)が存在する場合にも、当該他の導体の上に、電気絶縁性の仮止め部材を介して端子10の基部12を配置できるから、例えば、多数の導体が高密度に配置された対象物40の表面40aに、端子10をその取付位置の選択に煩うことなく取り付けることができる。電気絶縁性の両面接着テープ44としては、汎用の安価なものを利用できる。端子10と導体42以外の導体との絶縁を考慮する必要がない場合には、導電性の仮止め部材を使用することができる。この構成によれば、例えば、導電性の仮止め部材を介して、端子10を導体42の他の部分に接続することができるから、端子10と導体42との間の導通経路を増加させて接続信頼性を向上させることができる。
【0034】
上記した端子取付手順では、端子10の基部12に対象物表面40aに向かう押圧力Pを加えることにより、コンタクト部16の複数の電気接点14を一様な接触圧力P′で導体42に接触させている。この構成によれば、腕部分20の外側膨出面からなる電気接点14の形状と相乗して、電気接点14と導体42との間に比較的高い接触圧力P′を生じさせることができる。したがって、導体42に対して電気接点14が接圧下で摺動することによるにいわゆるワイピング作用を要すること無く、電気接点14や導体42の表面に形成される酸化膜を突き破って電気的接続を安定に確立することができる。
【0035】
図示の端子10は、基部12の長手方向両端に一対のコンタクト部16を有するとともに、各コンタクト部16に複数(図では3個)の電気接点14を備えている。この構成によれば、対象物40の表面40aが曲面を含む場合にも、電気接点14を有する個々の腕部分20が互いに独立して弾性変位できるので、各電気接点14を所要の接触圧力P′の下で対応の導体42に安定して接触させることができる。また、各コンタクト部16が櫛刃状の複数(図では3個)の腕部分20を含む図示構成では、個々の腕部分20を流れる電流を削減して発熱を抑制できるとともに、電気接点14の放熱効果を向上させることができる。なお、コンタクト部16の構成は、複数の腕部分20を含む図示構成に限定されず、略U字状に曲折した単一の腕部分を有する構成や、単一の腕部分に放熱用の多数の孔を形成した構成等を採用できる。
【0036】
図示の端子10は、基部12に設けた接着剤支持部18に液状の接着剤46を供給して、固化した接着剤48により基部12を対象物40に固定する構成を有している。この構成では、コンタクト部16を対象物表面40aの導体42に直接に接合する必要が無いので、例えば、環境温度の変動により端子10の寸法が変化したときに、コンタクト部16の電気接点14が導体42の表面に沿って適正な接触状態を維持しながら摺動できる。したがって、端子10にそのような寸法変化が生じたときにも、端子10や対象物40に不都合な応力が加わることを防止でき、端子10と導体42との導通接続を安定して維持できる。
【0037】
図3は、上記した端子10の一変形例を示す。図示変形例による端子10′は、前述した電線接続部22に代えて、基部12の中央領域12cにおいて第2面12bに略平行な方向へ延長される平板状の電線接続部50を備えている。端子10′は、電線接続部50の構成以外は、前述した端子10と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0038】
電線接続部50の先端領域には、外部の電線(図示せず)を取り外し自在に接続できる端末部分52が形成される。電線接続部50は、基部12及びコンタクト部16とは別体の電気良導性材料から作製され、端末部分52の反対側の端部領域54で基部12の中央領域12cにかしめ等の接合手段により接合される。或いは、電線接続部50を、基部12及びコンタクト部16と同じ電気良導性材料から一体に作製することもできる。
【0039】
端子10′の各接着剤支持部18には、貫通穴38を有さない点を除いて、前述した端子10の係留部28及び開口30に相当する係留部28及び開口30が設けられている。係留部28及び開口30の作用及びそれによって奏される効果は、端子10と同様である。
【0040】
図4は、本発明の第2の実施形態による端子60を示す。端子60は、接着剤支持部18の係留部62の構成以外は、第1実施形態による端子10と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
端子60は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。端子60はさらに、コンタクト部16とは別に基部12から延長される電線接続部22を備える。電線接続部22は、端末部分24の反対側の端部領域26で基部12の中央領域12cにかしめ等の接合手段により接合される。
【0042】
図示の端子60では、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられる。各接着剤支持部18は、基部12の第1面12aから突出した位置(すなわち基部12の下方)に延長される片持ち梁状の係留部62を備える。係留部62は、電線接続部22の端部領域26に連結される第1端62aと、基部12の第1面12a側(すなわち基部12の下方)に配置される自由端としての第2端62bとを有する。
【0043】
係留部62の周囲には、基部12と係留部62との間に広がる非点対称な開口64が形成される。開口64は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤46(図2)が、粘度によらず自由に流通できる形状及び寸法を有する。係留部62は、開口64を通って固化した接着剤48(図2)に少なくとも一部が係合して、同接着剤48を定位に係留できるように機能する。ここで、開口64が「非点対称」であるとは、基部12を第2面12b側(すなわち基部12の上方)から見たときに視認できる開口64の輪郭が非点対称形状(図示の端子60では略コ(又はU)字状)であることを意味する。このような非点対称な開口64は、基部12に厚み方向へ貫通する切欠き66を設けるとともに、切欠き66と、切欠き66に隣接して電線接続部22の端部領域26の縁部分26aに第1端62aで連結される片持ち梁状の係留部62とを、基部12の上方から見て互いに実質的に重畳する位置に形成することで、基部12と係留部62との間に画定される。この構成において、係留部62の第2端(自由端)62bは、基部12の第1面12a側で切欠き66の下方に配置されることになる。また、開口64は、第2端(自由端)62bを含む係留部62の外周縁62cの全体と、切欠き66の内周縁66aとの間に形成される(図4(b))。
【0044】
図示の端子60では、係留部62は、第1端62a及び第2端62bを有して基部12に略平行する方向へ延長される略矩形の板状部分68を備え、板状部分68の三方に非点対称な略コ(又はU)字状の開口64が形成されている。なお、係留部62及び開口64は、開口64が非点対称であること、及び基部12を対象物に接着するための接着剤が固化前に開口64を自由に流通できるとともに固化後に係留部62によって確実に係留されることを前提に、図示の形状、寸法に限定されない多様な形状、寸法を有することができる。
【0045】
基部12の中央領域12cに接合される電線接続部22の端部領域26の、開口64に隣接する側の縁部分26aは、接着剤支持部18に供給された固化前の接着剤46(図2)の流動を制限する流動制限部として機能する。縁部分26aは、基部12の中央領域12cに向かう接着剤46の流動を実質的に防止できるように制限する。
【0046】
図示のように、係留部62はそれ自体に、固化前の接着剤46が流通可能な貫通穴70を、任意選択的に有することができる。貫通穴70は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤46が、粘度によらず自由に流通できる形状及び寸法を有する。図では、係留部62の板状部分68に、互いに同一の形状(矩形)及び寸法を有する一対の貫通穴70が形成されている。
【0047】
図示構成では、係留部62は、電線接続部22と同一の電気良導性材料から電線接続部22と一体に作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により電線接続部22を所定形状に打ち抜く際に、同時に係留部62を打ち抜きかつ折曲して形成できる。なお、係留部62を電線接続部22とは別体の部材から作製して後工程で電線接続部22に接合する構成とすることもできる。
【0048】
端子60を対象物40の表面40a(図2)に取り付ける手順は、前述した端子10の取付手順と同様である。各接着剤支持部18に供給された液状の接着剤46(図2)は、各接着剤支持部18の係留部62の周囲の開口64を(図示構成では貫通穴70も)通り抜け、その粘度や対象物表面40aに対する濡れ性等の特性に依存して、基部12の第1面12aと対象物表面40aとの間を流動しようとする。このとき、各接着剤支持部18の係留部62の開口64が非点対称な輪郭を有しているから、液状の接着剤46が開口64を通り抜ける方向が実質的に制限され、それに伴い、基部12の第1面12aと対象物表面40aとの間での接着剤46の流動方向が実質的に制限される。したがって、開口64の非点対称形状を適宜選択することにより、固化前の接着剤46の流動方向を制御して、接着剤46を所望の形状に固化させることができる。
【0049】
図示の端子10では、係留部62が略矩形の板状部分68を有し、板状部分68の三方に、比較的広い空間に渡る略コ(又はU)字状の開口64が形成されているから、接着剤46の粘度が比較的高い場合であっても、開口64を通る接着剤46の流動自体を妨げることなく、接着剤46の流動方向を制御することができる。係留部62に任意選択的に設けられる貫通穴70は、接着剤46の粘度が比較的高い場合に、開口64を通る接着剤46を補足するべく、それ自体に接着剤46を通過させることができる。接着剤46の粘度が比較的低く、接着剤46が容易かつ迅速に開口64を通過できる場合は、貫通穴70の個数や寸法を削減したり、貫通穴70を省略したりすることができる。
【0050】
接着剤支持部18に所定量の接着剤46が供給されると、接着剤46は、摩擦力や表面張力により係留部62に一様に接触しながら、係留部62の上に乗り上げて開口64を少なくとも部分的に埋めた形態を呈するに至る。このとき、片持ち梁状の係留部62が基部12の下方に延長されているから、接着剤46を、基部12の第2面12bに溢出するまで供給する必要は無い。
【0051】
開口64を少なくとも部分的に埋めた形態で接着剤46が固化すると、係留部62がその少なくとも一部で、固化後の接着剤48(図2)に係合する。図示の端子60では、係留部62は、基部12に略平行する方向へ延長される板状部分68を有しており、板状部分68の略全体が、固化後の接着剤48に埋め込まれて固定される。固化後の接着剤48は、係留部62に接触することで、接着剤支持部18に対し十分に大きな接触面積を確保して、係留部62により定位に係留される。固化後の接着剤48が接着剤支持部18上で定位に係留されることにより、接着剤48と対象物表面40aとの接着力(及び両面接着テープ44による補助的な接着力)に依存して、端子60が対象物表面40aに取り付けられるとともに、端子60の基部12及びコンタクト部16の少なくとも一方を弾性的に撓ませた状態が維持され、以て、個々の電気接点14と対応の導体42(図2)との間の接触圧力P′(図2)が維持される。その結果、端子60の各電気接点14と対応の導体42との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物40の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。
【0052】
端子60によれば、接着剤支持部18に、基部12の下方に延長される片持ち梁状の係留部62を設けて、係留部62の周囲に非点対称な開口64が形成されるようにしたから、上記したように、コンタクト部16の電気接点14と対象物表面40aの導体42との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できるとともに、液状の接着剤46の使用量を削減することができる。特に、図示の端子60では、係留部62の板状部分68が、固化後の接着剤48に埋め込まれて固定されるので、端子60が対象物表面40aにさらに強固に取り付けられ、電気接点14と導体42との適正な接続状態が一層安定して維持される。固化後の接着剤48は、基部12の第2面12bから膨出しない形状を有することができるから、端子60の適用において基部12の第2面12b側の空間を有効利用したい場合に有利である。
【0053】
上記した各種実施形態による端子10、60においては、一対のコンタクト部16が、基部12の長手方向両端にそれぞれ設けられるとともに、一対の接着剤支持部18が、基部12の中央領域12cと長手方向両端のコンタクト部16との間にそれぞれ設けられている。この構成は、端子10、60の電気接点14と対象物表面40aの導体42との間の適正な接続状態を、バランス良く安定して維持できるものである。特に、端子10、60を取り付ける対象物表面40aの取付領域が凹状に湾曲している場合に、前述したように基部12の中央領域12cを対象物表面40aに固定することで、接触圧力P′を容易に確保できる。
【0054】
これに対し、図5は、1つのコンタクト部16及び1つの接着剤支持部18を有する本発明の第3の実施形態による端子80を示す。端子80は、コンタクト部16及び接着剤支持部18を単一化した構成以外は、第1実施形態による端子10(図1)と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
端子80は、基部12と、基部12から延長され、電気接点14を有するコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる接着剤支持部18とを備える。図示の端子80では、単一のコンタクト部16が、基部12の長手方向一端に設けられるとともに、単一の接着剤支持部18が、基部12の長手方向他端領域12cとコンタクト部16との間に設けられる(図5(a))。接着剤支持部18は、基部12の第1面12aから突出した位置(すなわち基部12の下方)に延長される片持ち梁状の係留部28を備える。係留部28の周囲には、基部12と係留部28との間に広がる非点対称な開口30が形成される。開口30は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤46(図2)が、粘度によらず自由に流通できる形状及び寸法を有する。係留部28は、開口30を通って固化した接着剤48(図2)に少なくとも一部が係合して、同接着剤48を定位に係留できるように機能する。
【0056】
図5に示す端子80は、単一の接着剤支持部18に、基部12の下方に延長される片持ち梁状の係留部28を設けて、係留部28の周囲に非点対称な開口30が形成されるようにしたから、コンタクト部16の電気接点14と対象物表面40aの導体42(図2)との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できるとともに、液状の接着剤46の使用量を削減することができる。
【0057】
上記した各種実施形態による端子10、60、80では、係留部28、62は、基部12を第2面12b側(すなわち基部12の上方)から見たときに、基部12に形成される切欠き32、66の輪郭に対応する輪郭を有している(図6(a))。或いは係留部28、62は、基部12を第2面12b側(すなわち基部12の上方)から見たときに、基部12に形成される切欠き32、66の輪郭に対応しない輪郭を有することもできる。例えば、略矩形輪郭を有する切欠き32、66に対し、矩形の先端を丸めた輪郭(図6(b))、略三角形輪郭(図6(c))、三角形の先端を丸めた輪郭(図6(d))等を有する係留部28、62を組み合わせることで、接着剤支持部18を構成することもできる。図示のいずれの構成でも、基部12と係留部28、62との間に、非点対称な開口30、64が形成される。
【0058】
上記した各種実施形態による端子10、60、80は、例えば、自動車のリアウインドウに曇り止め用に付設される電熱線の端子として使用できる。リアウインドウの電熱線は一般に、ガラス板に導電性ペーストを所定パターンで印刷することにより形成され、この電熱線の末端に、電源ケーブルを接続するための端子が設置される。端子10、60、80を使用することで、半田を用いることなく、接着剤によって端子10、60、80を電熱線に長時間に渡り安定して接続することができる。
【0059】
上記した各種実施形態による端子10、60、80は、例えば、プリント配線板等の基板に表面実装して使用することもできる。また、アルミニウムや導電性セラミックスのような、半田による接合が困難な導体に対しても、端子10、60、80を容易かつ確実に接続することができる。
【0060】
図7は、本発明の第4の実施形態による端子90を示す。端子90は、係留部28に与えられた固化前の接着剤の流動を制限する流出防止部として機能する壁92を、係留部28とは別に備えている。端子90は、壁92を備えた点以外は、第1実施形態による端子10(図1)と実質的に同じ構成を有する。よって、対応する構成要素には共通する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
端子90は、基部12と、基部12から延長され、それぞれに電気接点14を有する一対のコンタクト部16と、コンタクト部16とは別に基部12に設けられ、基部12を対象物に接着するための接着剤を支持できる一対の接着剤支持部18とを備える。各接着剤支持部18は、基部12の第1面12a(図2)から突出した位置(すなわち基部12の下方)に延長される片持ち梁状の係留部28を備える。係留部28の周囲には、基部12と係留部28との間に広がる非点対称な開口30が形成される。開口30は、接着剤支持部18に供給された固化前の液状の接着剤46(図2)が、粘度によらず自由に流通できる形状及び寸法を有する。係留部28は、開口30を通って固化した接着剤48(図2)に少なくとも一部が係合して、同接着剤48を定位に係留できるように機能する。
【0062】
端子90はさらに、係留部28とは別に基部12の下方に延長され、開口30に近接する位置で基部12の縁12dに沿って立設される壁92を備えている。図示構成では、一対の係留部28の各々の周囲に形成される開口30に近接する位置で、基部12の長手方向へ延びる両側縁12dから第1面12a(図2)側に一対の壁92が立設される。各壁92は、基部12の側縁12dに連結される基端部分92aと、基端部分92aから基部側縁12dに沿って開口30に近接する領域に延長される側壁部分92bとを、一体に有している。壁92は、基部12の第1面12a及び係留部28の第1部分34の双方に略直交する方向へ延長される。
【0063】
図示構成では、壁92は、基部12と同一の電気良導性材料から基部12と一体に作製される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料から、プレス工程により基部12を所定形状に打ち抜く際に、同時に壁92を打ち抜きかつ折曲して形成できる。なお、壁92を基部12とは別体の部材から作製して後工程で基部12に接合する構成とすることもできる。また、壁92の基端部分92aと側壁部分92bとを、互いに別体の部材から作製して後工程で一体的に接合する構成とすることもできる。
【0064】
各開口30に近接して設けられた一対の壁92は、係留部28の第1部分34と協働して、係留部28に与えられた固化前の接着剤46(図2)の流動を制限し、固化前の接着剤46が接着剤支持部18から外部に流出することを防止できるように機能する。したがって端子90では、係留部28による前述した接着剤係留機能と壁92による接着剤流動制限機能とが相乗して、必要最低限の供給量の接着剤46により、所要の係留力を発揮し得る形状及び寸法で固化した接着剤48(図2)を形成できる。その結果、端子90の各電気接点14と対応の導体42(図2)との適正な接続状態を、環境温度の変動や対象物40(図2)の振動等に影響されること無く、長時間に渡り安定して維持することができる。
【符号の説明】
【0065】
10、60、80、90 端子
12 基部
14 電気接点
16 コンタクト部
18 接着剤支持部
20 腕部分
22、50 電線接続部
28、62 係留部
30、64 開口
32、66 切欠き
34 第1部分
36 第2部分
38、70 貫通穴
46 接着剤(固化前)
48 接着剤(固化後)
68 板状部分
92 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠きを有する基部と、
前記基部から延長され、前記基部の下方に配置される電気接点を有するコンタクト部と、
前記基部の下方に延長され、前記切欠きの下方に配置される自由端を有する片持ち梁状の係留部とを具備し、
前記係留部の周囲に開口が形成され、
前記基部を対象物に接着するための接着剤が固化前に前記開口を流通できるとともに、前記開口を通って固化した該接着剤に前記係留部の少なくとも一部が係合して該接着剤を係留できるようになっている、
端子。
【請求項2】
前記開口が非点対称である、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記係留部は、前記基部に連結される第1端と、前記自由端としての第2端とを有する、請求項1又は2に記載の端子。
【請求項4】
前記係留部は、前記基部に平行に延長される部分を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
前記係留部は、略矩形の板状部分を具備し、該板状部分の三方に前記開口が形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の端子。
【請求項6】
前記係留部は、固化前の接着剤が流通可能な貫通穴を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の端子。
【請求項7】
前記係留部とは別に前記基部の下方に延長され、前記開口に近接する位置で前記基部の縁に沿って立設される壁をさらに具備する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248425(P2012−248425A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119568(P2011−119568)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)