説明

競合免疫アッセイによるFK778の濃度の決定

免疫アッセイ、好ましくは競合的免疫アッセイによる、生体試料中のFK778の濃度の測定のための方法及びキット。ある態様において、本方法及びキットは、(a)標識に連結された(例えばアクリジニウム標識)FK778に対する抗体と、(b)標識に連結されていないFK778に対する抗体と、(c)第一のハプテン例えばフルオレセインハプテンに対する抗体を含有する固相と、(d)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテン、例えばフルオレセインハプテン及びFK778ハプテンを含むバイハプテンと、の使用を含む。別の態様において、本方法及びキットは、(a)FK778に対する抗体と、(b)FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテン、例えば、フルオレセインハプテン及びFK778又はFK778の類似体のハプテンを含むバイハプテンと、(c)前処理試薬と、の使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料中のFK778又はFK778の類似体の検出及び測定、及び、とりわけ、競合免疫アッセイによる生体試料中のFK778又はFK778の類似体の検出及び測定に関する。
【背景技術】
【0002】
FK778(HMR 1715、X92 0715又はMNA715として以前は知られていた。)は、A77 1726、レフルノミドの活性代謝産物、に構造的に類似している。A77 1726のように、FK778はマロノニトリラマイドであり、これらの化合物は、自己免疫疾患及び同種又は異種移植実験モデルにおいて有効な免疫抑制剤である。レフルノミド(AravaTM)が関節リウマチでの臨床用途に対して発売されている一方、ヒトにおいてA77 1726の血漿半減期が長いために(15−18日)、この薬物は臨床移植での使用が好ましくないものとなっている。FK778はヒトでの血漿半減期がより短く、したがって、臨床移植において有用であろうことが期待される。FK778及びA77 1726の構造を下記で示す。
【0003】
【化1】


【0004】
FK778は次の論文で詳細に記載されている(これらの全てを参照により本明細書中に組み込む。):Biloloら、「SYNERGISTIC EFFECTS OF MALONONITRILAMIDES(FK778、FK779) WITH TACROLIMUS(FK506) IN PREVENTION OF ACUTE HEART AND KIDNEY ALLOGRAFT REJECTION AND REVERSAL OF ONGOING HEART ALLOGRAFT REJECTION IN THE RAT」、Transplantation、第75巻、1881−1887、第11号、2003年6月15日。
【0005】
Birsanら、「In vivo pharmacokinetic and pharmacodynamic evaluation of malononitrilamide FK778 in non−human primates」、Transpl.Int.(2003)16:354−360。
【0006】
Birsanら、「Effects of the malononitrilamide FK778 on immune functions in vitro in whole blood from non−human primates and healthy human volunteers」、Transplant Immunology 11(2003)163−167。
【0007】
Fawcettら、「FK778:A Powerful Immunosuppressive、But Will It Really Be Good for You?」、Transplantation、第78巻、第1号、2004年7月15日。
【0008】
Eversら、「Inhibition of human cytomegalovirus signaling and replication by the immunosuppressant FK778」、Antiviral Research xxx(2004)xxx−xxx。
【0009】
Firstら、「NEW DRUGS TO IMPROVE TRANSPLANT OUTCOMES」、Transplantation、第77巻、S88−S92、第9巻、2004年5月15日、Supplement。
【0010】
Jinら、「A novel leflunomide derivative、FK778、for immunosuppression after kidney transplantation in dogs」、Surgery、第132巻、第1号、72−79、2002年7月。
【0011】
Savikkoら、「Leflunomide Analogue FK778 Is Vasculoprotective independent of its Immunosuppressive effect:Potential Application for Restenosis and Chronic Rejection」、Transplantation 2003;76:455、Transplantation、第76巻、471−473、第3号、2003年8月15日。
【0012】
Savikkoら、「LEFLUNOMIDE ANALOGUE FK778 IS VASCULOPROTECTIVE INDEPENDENT OF ITS IMMUNOSUPPRESSIVE:POTENTIAL APPLICATION FOR RETENOSIS AND CHRONIC REJECTION」、Transplantation、第76巻、455−458、第3号、2003年8月15日。
【0013】
Slausonら、「Flow cytometric analysis of the molecular mechanisms of immunosuppressive action of the active metabolite of leflunomide and its malononitrilamide analogues in novel whole blood assay」、Immunology letters 67(1999)179−183。
【0014】
Vanrenterghemら、「The Effects of FK778 in Combination With Tacrolimus and Steroids:A Phase II Multicenter Study in Renal Transplant Patients」、Transplantation、第78巻、第1号、2004年7月15日。
【0015】
薬物投与量の調整に役立つものとして、生体試料中のFK778の検出及び測定は、治療薬剤を監視するために重要である。血漿中の薬物濃度は免疫抑制の程度に相関する。
【0016】
FK778は、LC/タンデム質量分析により調べることができる。LC/タンデム質量分析のための方法は次の文献に記載されている(これを参照により本明細書中に組み込む。):Therapeutic Drug Monitoring of Immunosuppressant Drugs by High−performance Liquid Chromatography−Mass Spectrometry.Taylor、Paul J.Therapeutic Drug Monitoring 26(2):215−219、2004年4月。
【0017】
生体試料中のFK778又はFK778の類似体の存在及び量の決定は、競合診断アッセイにより調べることができる。小分子、競合診断アッセイは通常、利用可能な抗体部位について検体と競合することができる標識された成分を必要とする。標識された成分は一般にトレーサーと呼ばれる。標識された成分の例には、放射活性トレーサー、蛍光トレーサー、化学発光トレーサー及び酵素トレーサーが含まれる。一般に、標識された成分は、標識に連結された、検体又は検体の類似体からなる。
【0018】
FK778に対する抗体及び標識された成分を含む特定の試薬がFK778に対する高感度アッセイで有用である可能性は、用量反応曲線を知ることにより評価することができる。FK778アッセイのための用量反応曲線は、FK778検体の濃度の関数としての、FK778検体非存在下での反応に対するFK778検体存在下での反応の比のプロットである。あるFK778アッセイのための用量反応曲線は、FK778に対する抗体及びトレーサーを含む各試薬に対して特有であり、検体に対する抗体の部位に対する、トレーサーと検体との間の競合により変化する。
【0019】
自動化学発光分析装置での一般的なFK778競合免疫アッセイに伴う問題は、FK778及びアクリジニウム標識を含むトレーサーが非常に強力なシグナルを有することである。その結果、分析装置により測定するためにはトレーサーを非常に低い濃度に希釈しなければならない。FK778検体は生体試料中で非常に高い濃度で存在する。したがって、トレーサーと効率的に競合させるためには1000倍希釈より薄くこの試料を希釈しなければならない。この試料希釈度は一般に自動分析装置では不可能である。このような希釈が行えない結果、FK778濃度がトレーサーの濃度を超えるアッセイでは、信頼度の高いアッセイのためのダイナミックレンジにおいて用量反応曲線の勾配が非常に急になる。トレーサーと検体との間の効率的な競合が可能となるが、FK778及びアクリジニウム標識を含むトレーサーほど強力ではない標識成分を含有する競合アッセイを開発することが望ましい。臨床的に有用であるが測定が困難である、10μg/mL以上250μg/mL以下の濃度のFK778レベルの検出を可能にする競合免疫アッセイ方式を提供することが望ましいであろう。
【0020】
臨床用途のためのFK778薬剤を開発した会社(以前は藤沢薬品工業、現在はアステラス製薬)もまた、ELISA法を用いてFK778に対する一連のモノクローナル抗体を開発し、評価した。免疫アッセイで使用するために、これらの抗体がFK778に対して十分な親和性を有することが必要であった。さらに、FK778検体に対して適切な親和性を示す抗体を開発した場合でさえも、これらの抗体の多くは、代謝産物などの構造的に似ているFK778類似体との高い交差反応性という望ましくない性質を示した。藤沢薬品工業によって、代謝産物に対する交差反応性の程度ついてこれらの抗体がさらにスクリーニングされ、交差反応性が低い抗体が選択された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
発明の要旨
本発明は、免疫アッセイ、好ましくは競合免疫アッセイにより生体試料中のFK778濃度の測定のための、方法及びキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
ある態様において、本方法及びキットは、(a)標識に結合された(例えばアクリジニウム標識)FK778に対する抗体と、(b)標識に結合されていないFK778に対する抗体と、(c)第一のハプテン例えばフルオレセインハプテンに対する抗体を含有する固相と、(d)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテン、例えばフルオレセインハプテン及びFK778ハプテンを含むバイハプテンと、の使用を含む。このバイハプテン(d)は、(a)標識に結合されたFK778に対する抗体と(b)第一のハプテンに対する抗体を含有する固相との間の架橋を与える。バイハプテン(d)の濃度は、検体、FK778と効率的に競合させ、FK778試料を前もって過度に希釈することなく良好な用量反応曲線を与えるための濃度範囲内に最適化することができる。市販の化学発光リーダーの検出能力を超えないよう、非標識抗体を添加することにより複合体(a)の濃度を下方調整することができる。非標識抗体(b)に対する標識抗体(a)の比は通常約1:135から約1:225の範囲であり、好ましくは約1:175である。
【0023】
この態様において、本発明は、架橋(即ちバイハプテン)方式において、第一のハプテンに対する抗体及びFK778又はその類似体に対する抗体の両方に対して適切な親和性を有するバイハプテンを同定することを含む。本発明の方法及びキットによる検出に適している化合物には、FK778、M3として知られる僅かに交差反応性があるFK778代謝産物及びA77 1726として知られるレフルノミドの活性代謝産物が含まれる。
【0024】
この方法は、
(a)混合物{前記混合物は、(1)FK778を含有する疑いのある試験試料と、(2)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相と、(3)FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテンと並びに(4)試薬混合物[前記試薬混合物は、標識に連結されたFK778に対する抗体と及び標識に連結されていないFK778に対する抗体とを含んで、検出可能な複合体(前記検出可能な複合体は、(i)前記標識に連結されたFK778に対する前記抗体と、(ii)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと並びに及び(iii)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相とを含む。)を形成する。]とを含む。}を温置する段階、
(b)固相を混合物から分離する段階;
(c)固相に結合されている標識量を測定する段階;及び
(d)測定された標識量から試験試料中のFK778の量を決定する段階
を含む。
【0025】
上述のアッセイを行うための試薬を含有するキットは、(a)標識に結合されたFK778に対する抗体及び標識に結合されていないFK778に対する抗体の混合物と、(c)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと、(b)第一のハプテンに特異的な抗体に連結された固相と、を含む。
【0026】
別の態様において、本方法及びキットは、(a)FK778に対する抗体と、(b)FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテン、例えばフルオレセインハプテン及びFK778又はFK778の類似体のハプテンつるを含むバイハプテンと並びに(c)前処理試薬と、の使用を含む。
【0027】
この態様の方法は、
(a)混合物[前記混合物は、(1)FK778を含有する疑いのある試験試料と、(2)必要ならば試料に対する希釈剤と、(3)前処理試薬と、(4)FK778に対する又はFK778の類似体に対する抗体と、(5)第一のハプテン及びFK778(又はFK778の類似体)とを含むバイハプテントレーサーを含み、混合物(前記混合物は、(i)非結合トレーサーと、(ii)前記抗体に結合されたトレーサーと、(iii)前期抗体に結合されたFK778と及び(iv)非結合FK778とを含む。)を形成する。]を温置する段階;
(b)蛍光偏光により、存在する前記抗体に結合したトレーサー及び非結合トレーサーの比を測定する段階;
(c)測定された蛍光偏光シグナルから試験試料中のFK778又はFK778類似体の量を決定する段階
を含む。
【0028】
本キットは、(a)FK778に対する抗体と、(b)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテントレーサーと、(c)前処理試薬と、を含む。
【0029】
本発明での使用に適切なFK778のハプテン含有誘導体の代表例は、次の構造式を有し得る。
【0030】
【化2】







【0031】
構造12、14、45及び46は、アクリジニウム標識を有するFK778の類似体を含有するトレーサーであり、従来の競合免疫アッセイ方式においてこれらは過剰に高いシグナルを生成するので、FK778アッセイに対して好ましくない。構造10b、10c、21a、21b、21c、25a、25b、32a、32b及び32cは、フルオレセイン分子がFK778分子の芳香環の4位に連結されている、FK778のフルオレセイン誘導体の例である。これらのバイハプテントレーサーは、FK778に対する抗体及びフルオレセインに対する抗体の両方に強く結合し、FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテンとして使用することができる。構造44a、44b及び44cは、FK778分子の芳香環の3位にフルオレセイン分子が連結され4位にCF基を保持している、FK778のフルオレセイン誘導体の例である。FK778に対する抗体がこのような誘導体に対して結合親和性を有する限り、FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテンとしてこれらの構造を使用することができる。
【0032】
FK778類似体の量の測定が所望される場合は、FK778部分がFK778部分の類似体で置換され得ることにも注目されたい。
【0033】
本発明の第一の利益は、ある一定のアッセイ方式の性能が、従来のアッセイ方式で使用される場合に、即ちFK778又はFK778類似体に対する抗体が固相に連結され、アクリジニウム含有トレーサーがシグナル源として使用される場合に得られ得るものよりも改善し得ることである。
【0034】
このアッセイ方式により、自動分析装置での使用が可能となる。さらに、標識により生じるシグナルを市販の分析装置の範囲に制限することができる。
【0035】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の競合アッセイのある実施形態を示す概略図である。この実施形態において、化学発光標識を使用する。図1において、「ホット抗体」は標識を有する抗体であり、「コールド抗体」は非標識抗体である。
図2は、蛍光偏光免疫アッセイにおいて、FK778をFK778のフルオレセイン誘導体及びFK778に対する抗体と混合することにより作成した用量反応曲線を示すグラフである。
図3は、微小粒子を被覆するためのプロセスを示すフローチャートである。
図4は、本発明の連結物を調製するためのプロセスを示すフローチャートである。この連結物は化学発光標識を利用する。
図5は、FK778を含有する溶液をARCHITECT(R)装置上で保管した場合の、終夜測定したFK778含有溶液の安定性を示すグラフである。
【0036】
詳細な説明
本明細書中で使用する場合、「標識」という用語は、抗体と検体との間で検出可能な反応を起こさせるために抗体又は検体に連結された部分を意味する。標識は、視覚的又は機械的方法により検出可能なシグナルを生成することができる。本発明での使用に適切な様々な標識には、色原体、蛍光化合物、化学発光化合物などのシグナル生成基質が含まれる。本発明に適切な標識の代表例には、光を生じさせる部分、例えばアクリジニウム化合物、及び蛍光を生じさせる部分、例えばフルオレセイン、が含まれる。「トレーサー」という用語は、例えば、フルオレセイン部分に結合されたFK778などの、標識に結合された検体を意味し、この、標識に結合された検体は、検体に特異的な抗体の部位に対して、検体(例えばFK778)と効率的に競合できる。
【0037】
「類似体」という用語は、検体と構造類似性を有する分子を意味する。「誘導体」という用語は、化学的又は生化学的に修飾されており、結果として、例えばFK778トレーサー又は代謝産物などの化学部分が付加された又はこれで置換された検体を意味する。
【0038】
「試料」、「試験試料」などの表現は、本明細書中で使用する場合、検体を含有する疑いのある物質を指す。試験試料は、その源から得られたように直接又は試料の性質を修飾するための前処理後に使用することができる。試験試料は、例えば血液、唾液、眼内液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水(ascites fluid)、滑液、腹水(peritoneal fluid)、羊水などの生理液といった何れかの生物学的源由来であり得る。血液から血漿を調製する、粘度の高い液を希釈するなど、使用前に試験試料を前処理することができる。
【0039】
前処理の方法には、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加などが含まれ得る。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「抗FK778」という用語はFK778に対する抗体を意味する。本明細書中で使用する場合、「CPSP」は9−{N−トシル−N−(3−カルボキシプロピル)]−10−(3−スルホプロピル)アクリジニウムカルボキサミドを意味し;「DMF」という用語は、ジメチルホルムアミドを意味する。本明細書中で使用する場合、「アクリジニウム取り込み率」という表現は、標識抗体分子あたりのアクリジニウム分子の比率を意味する。本明細書中で使用する場合、「オーバーコート緩衝液」という表現は、微小粒子を抗体などの特異的タンパク質で被覆した後に微小粒子を処理するために使用する、緩衝液及び非特異的タンパク質、例えばウシ血清アルブミンを含有する溶液を意味する。
【0041】
当業者にとって周知の手段により、抗体被覆微小粒子を調製することができる。連結物(conjugate)は、好ましくは、標識の活性型、例えば活性エステルを抗体に連結する(conjugate)ことにより調製する。簡略にするために、化学発光アッセイ及び蛍光偏光免疫アッセイを含む競合免疫アッセイ技術のみを詳述する。
【0042】
化学発光標識を利用する本発明の態様において、本発明の方法は、
(a)混合物{前記混合物は、(1)FK778を含有する疑いのある試験試料と、(2)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相と、(3)FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテンと並びに(4)試薬混合物[前記試薬混合物は、標識に連結されたFK778に対する抗体と及び標識に連結されていないFK778に対する抗体とを含んで、検出可能な複合体(前記検出可能な複合体は、(i)前記標識に連結されたFK778に対する前記抗体と、(ii)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと並びに(iii)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相とを含む。)を形成する。]とを含む。}を温置する段階、
(b)固相を混合物から分離する段階;
(c)固相に結合されている標識量を測定する段階;及び
(d)測定された標識量から試験試料中のFK778の量を決定する段階
を含む。
【0043】
上述のアッセイを行うための試薬を含有するキットは、(a)標識に連結されたFK778に対する抗体及び標識に連結されていないFK778に対する抗体の混合物と、(b)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと、(c)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相と、を含む。
【0044】
図1は、上述のアッセイのある実施形態の概略を示す。図1によると、前もって希釈した試料(試料の1:20希釈液の10μL量)をライン希釈剤(50μL)及び、適切な標識に連結されたFK778に対する抗体及びFK778に対する非標識抗体を含む試薬混合液(90μL、標識に連結されていない抗体に対する標識に連結された抗体の比は1:150)と混合する。得られた混合物をおよそ6秒間、予温置する。得られた混合液(150μL)をバイハプテン試薬(50μL)及び固相(50μL)と混合する。得られた混合物をおよそ25分間温置し、洗浄し、(i)フルオレセインに対する抗体を含有する固相と、(ii)FK778及びフルオレセインを含むバイハプテンと、(iii)標識に結合されたFK778に対する抗体と、を含むシグナル生成複合体を形成させる。
【0045】
FK778に特異的な結合メンバーには、抗FK778特異的結合タンパク質、例えば、モノクローナル抗体及びFK778に特異的に結合する他の特異的な合成又は組み換えタンパク質など、が含まれる。例えば、FK778に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生させることができることは当業者にとって周知である。FK778又は通常は共有結合により担体タンパク質(例えばアルブミン)に結合されたFK778の誘導体を含む免疫原を動物に注射し、FK778に特異的に結合する抗体を動物の免疫系が産生する。マウス又はラットを用いて検体に対するモノクローナル抗体を調製するための一般的方法は当業者にとって周知である。検体に特異的な合成及び組み換えタンパク質を調製するための最新の方法が報告されており、同じ方法をFK778に特異的な合成及び組み換えタンパク質の調製に容易に適用することができる。藤沢薬品工業は、本発明において有用なFK778に対するモノクローナル抗体を開発した。この抗体は、クローン20A1と呼ばれる。FK778アッセイの開発で使用される抗体は、20A1 sc241と呼ばれるサブクローンである。
【0046】
好ましくは、固相に結合されたハプテンに特異的な結合メンバーを有する固相を使用することによりシグナルを測定する。固相の例は微小粒子である。固相に結合された標識連結物の量又は溶液中に残存する標識連結物の量を調べることができるように、固相及び試験試料を分離する。化学発光により、固相に結合された標識連結物の量又は溶液中に残存する標識連結物の量を調べることができるが、この場合、化学発光部分を連結物中の標識として使用する。適切なトリガー試薬により化学発光部分が発光化合物に変換され得る。形成される化学発光化合物の量は、反応混合物中に存在するFK778検体の量の指標である。したがって、試験試料中に存在するFK778の量を調べるために、化学発光の測定を使用することができる。FK778の濃度の関数として化学発光活性を示すプロットによって、固相又は溶液中の標識連結物の量を試験試料中のFK778の濃度と相関させ得る(一般に標準曲線と呼ばれる。)。
【0047】
表XVIで述べるもの(後述)などの6個のキャリブレーターを用いてアッセイを行うことにより、標準曲線を作成することができる。標準曲線が有効であることを確認するために対照を測定する。FK778レベルが未知である試料をアッセイする場合、測定したアッセイシグナルを標準曲線と比較し、測定したシグナルに対応するFK778レベルが試料のFK778レベルとなる。
【0048】
本発明による固相は、微小粒子に化学的又は物理的に結合された第一のハプテンに特異的な結合メンバーとの微小粒子の混合物であり得る。ポリマー性物質から本発明で使用することができる微小粒子を作製することができ、より好ましくは、スチレン単位を有するポリマー又はアクリレート単位を有するポリマー由来の微小粒子が含まれる。これらの粒子を試験試料から分離するための方法は、多孔性マトリクス(ガラス繊維など)上での微小粒子の捕捉を含む。
【0049】
使用できる好ましい固相には、微小粒子に化学的又は物理的に結合された第一のハプテンに特異的な結合メンバーを有する磁化可能な微小粒子の混合物が含まれる。本発明で有用な磁化可能な微小粒子は、好ましくは、酸化鉄又は酸化クロムコア及びポリマー性コーティングを有する。このようなコーティングは、好ましくは、スチレン単位を有するホモポリマー及びコポリマー、カルボキシル化スチレン単位を有するホモポリマー及びコポリマー又はアクリレートもしくはメタクリレート単位を有するホモポリマー及びコポリマーから作製される。微小粒子は、好ましくは実質的に球状であり、好ましくは約1μmから約10μm、好ましくは約4μmから約5μmの範囲の半径を有する。
【0050】
バイハプテンは、固相に固定されたハプテンに対する抗体とそのハプテンの相互作用により固相に固定された抗体に結合される。バイハプテンは、続く反応及び洗浄段階中にはずれる特異的な結合メンバーが実質的にないような方法で固相に結合されるべきである。選択した特異的カップリング法にかかわらず、バイハプテンは、第一のハプテンに対する抗体に結合し、固相に結合された後は標識に連結された抗体に結合できなければならない。
【0051】
当業者にとって公知のその他の固相には、反応トレイのウェルの壁、チューブ、ポリマー性ビーズ、ニトロセルロース片、膜などが含まれる。合成により修飾される、自然の、合成の、及び天然に生じる材料を固相の材料として使用することができる。このような材料には、多糖類、例えばセルロース性材料(例えば、紙及び、酢酸セルロース及びニトロセルロースなどのセルロース性誘導体);シリカ;無機材料、例えば不活性アルミナ、珪藻土、MgSO又は多孔ポリマー性マトリクス中に均一に分散されたその他の無機粉砕物質(このマトリクスは、塩化ビニルのホモポリマー及びコポリマー、例えばポリ塩化ビニル、塩化ビニルプロピレンコポリマー及び塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーなどの1以上のポリマー、天然(例えば綿)及び合成(例えばナイロン)の両方を含み得る。);シリカゲル、アガロース、デキストラン及びゼラチンなどの多孔性ゲル;ポリアクリルアミドなどのポリマー性フィルムなどが含まれる。何れの場合も、固相は、所望の物理的形状を維持するのに十分な強度を有するべきであり、検出可能なシグナルの生成に干渉すべきでない。支持体によって強度を与えることができる。
【0052】
ある実施形態において、ARCHITECT(R)自動分析装置(Abbott Laboratories、Abbott Park、Ill)を用いることによりシグナルを検出することができる。この分析装置は、光を測定するための光電子増倍管を含む光学アセンブリを含有する。この機器は、米国特許第5,795,784号及び同5,856,194号(これら両方を参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。別の実施形態において、IMx(R)自動分析装置(Abbott Laboratories、Abbott Park、Ill)を用いることによりシグナルを検出することができる。この分析装置は、光源としてキセノン球を使用する蛍光偏光分光光度計を含む光学アセンブリを含有する。この機器は、米国特許第5,294,404号(参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。
【0053】
蛍光標識を利用する本発明の態様において、本方法及びキットは、(a)FK778に対する抗体と、(b)FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテン、例えばフルオレセインハプテン及びFK778ハプテンを含むトレーサーと、(c)前処理試薬と、の使用を含む。バイハプテンは、抗体に結合されていないトレーサーと抗体に結合されたトレーサーとを区別することができる蛍光偏光シグナルを与える。
【0054】
この態様の方法は、
(a)混合物[前記混合物は、(1)FK778を含有する疑いのある試験試料と、(2)FK778に対する又はFK778の類似体に対する抗体と、(3)前処理試薬と、(4)必要ならば試料に対する希釈剤と、(5)第一のハプテン及びFK778(又はFK778の類似体)とを含むバイハプテントレーサーを含み、混合物(前記混合物は、(i)非結合トレーサーと、(ii)前記抗体に結合されたトレーサーと、(iii)前期抗体に結合されたFK778と及び(iv)非結合FK778とを含む。)を形成する。]を温置する段階;
(b)蛍光偏光により、存在する前記抗体に結合したトレーサー及び非結合トレーサーの比を測定する段階;
(c)測定された蛍光偏光シグナルから試験試料中のFK778又はFK778類似体の量を決定する段階
を含む。
【0055】
本キットは、(a)FK778に対する抗体と、(b)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと、(c)前処理試薬と、を含む。
【0056】
FK778濃度に対するアッセイシグナルに関連する標準曲線は一般にFK778の既知の濃度を含有するキャリブレーター溶液から作成される。好ましくは、検量線を得るために6個のキャリブレーターを使用するが、所望の結果の精密度及び精度に応じてこれより多い又は少ないキャリブレーターを使用することができる。好ましくは、キャリブレーターはFK778の漸増量を含有する。これらの試験で使用されるFK778キャリブレーターは、pH7.4のTris緩衝液中で4%ウシ血清アルブミン及び抗菌剤を含有する。対照は通常、検量線又はアッセイ試薬の正当性を確認するために、アッセイと組み合わせて使用される。対照の調合はキャリブレーターの調合とは異なり得、ある対照のFK778濃度は、キャリブレーターの何れとも同一ではない可能性がある。例えば、20、75及び150μg/mLのFK778濃度を有する対照は、表XVIのキャリブレーターに対して適切な対照であろう。当業者は、その他のキャリブレーター及び対照調合を案出することができよう。
【0057】
この手順を通じて無菌状態を維持するために、系に抗菌剤を少量添加することが望ましいものであり得、これには、溶媒、抗生物質及び毒物が含まれ得る。
【0058】
次の反応スキームは、4−O−アルキルカルボキシフェニルFK778ハプテンの合成及びこれらのハプテンからのフルオレセイン及び化学発光トレーサーの調製を示す。反応スキーム中の記号を下記で挙げる:
DMF:ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
Boc:tert−ブトキシカルボニル
NaH:水素化ナトリウム
TFA:トリフルオロ酢酸
LiOH:水酸化リチウム
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
EDAC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド
MeOH:メタノール
EtN:トリメチルアミン
CO:炭酸カリウム
CHCl:ジクロロメタン
NaNO:亜硝酸ナトリウム
KI:ヨウ化カリウム
CFI:ヨウ化トリフルオロメチル
Cu:銅粉末
Pt/C:炭素担持白金
【0059】
スキーム1:FK778の4−O−ペンチルカルボキシフェニルハプテンの合成(7)
【0060】
【化3】

【0061】
スキーム2:4−O−ペンチルカルボキシフェニルハプテン(7)からのFK778−含有蛍光トレーサー(10a−10c)の合成
【0062】
【化4】

【0063】
スキーム3:化合物8からのFK778−含有化学発光トレーサー(12及び14)の合成
【0064】
【化5】

【0065】
スキーム4:FK778の4−O−プロピルカルボキシフェニルハプテンの合成(19)
【0066】
【化6】

【0067】
スキーム5:4−O−プロピルカルボキシフェニルハプテン(19)からのFK778−含有蛍光トレーサー(21a−21c)の合成
【0068】
【化7】

【0069】
スキーム6:化合物20からのFK778−含有蛍光トレーサー(25a及び25b)の合成
【0070】
【化8】

【0071】
次の反応スキームは、3−プロピルカルボキシフェニルFK778ハプテンの合成及びそのハプテンからのフルオレセイントレーサーの調製を示す。
【0072】
スキーム7:FK778の4−プロピルカルボキシフェニルハプテン(30)の合成
【0073】
【化9】

【0074】
スキーム8:4−プロピルカルボキシフェニルハプテン(30)からのFK778−含有蛍光トレーサー(32a−32c)の合成
【0075】
【化10】

【0076】
スキーム9:FK778の3−O−ペンチルカルボキシフェニルハプテン(42)の合成
【0077】
【化11】

【0078】
スキーム10:3−O−ペンチルカルボキシフェニルハプテン(42)からのFK778−含有蛍光トレーサー(44a−44c)の合成
【0079】
【化12】

【0080】
スキーム11:化合物43からのFK778化学発光トレーサー(45及び46)の合成
【0081】
【化13】

【0082】
次の実施例は、本発明を例証するものであり、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。パーセンテージは全て、別段の指示がない限り、グラム(g)重量/100ミリリットル(mL)、体積(w/v)である。
【実施例1】
【0083】
次の手順に従い、Abbott Laboratories、Abbott Park、ILから市販されているARCHITECT(R)機器によりFK778アッセイを行った。米国特許第5,795,784号及び同5,856,194号(この両方を参照により本明細書中に組み込む。)も参照のこと。20部のライン希釈剤(Line Diluent)に対して1部の試料の割合で血清試料(10μL)をライン希釈剤で希釈した。希釈試料の一部(10μL)を連結試薬(Conjugate Reagent)90μL及びライン希釈剤50μLと混合した。6秒後、磁性微小粒子試薬(Magnetic Microparticle Reagent)50μL及びバイハプテントレーサー試薬(50μL)を前述の混合液に添加した。得られた混合液(250μL)を25分間温置した。微小粒子をライン希釈剤1mLで3回洗浄した。磁性粒子を洗浄と同時に磁石に引き付けた。洗浄した微小粒子をプレトリガー試薬(Pretrigger Reagent)(100μL 酸性過酸化水素)で処理した。最後に、トリガー試薬(Trigger Reagent)(アルカリ性界面活性剤溶液(300μL))を添加することにより化学発光反応を誘発した。光電子増倍管によって、生じた光の測定を行った。
【0084】
洗浄緩衝液、プレトリガー試薬、トリガー試薬及びARCHITECT(R)機器を含むアッセイに必要な材料はAbbott Laboratories、Abbott Park、ILから市販されている。表1は、本発明のアッセイに適切な成分の代表例の組成を示す。
【0085】
【表1】

【0086】
消泡剤は、操作中の試薬の泡立ちを防ぎ、機器に置かれた試薬の安定性を向上させ得る。表2は、本発明での使用に適切な連結試薬に対する組成を示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表IIIは、本発明での使用に適切な磁性微小粒子試薬に対する組成を示す。
【0089】
【表3】

【0090】
表IVは、本発明での使用に適切なバイハプテントレーサー試薬に対する組成を示す。
【0091】
【表4】

【実施例2】
【0092】
次の実施例は、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)方式の本発明のアッセイのある実施形態を示す。
【0093】
バイハプテントレーサー(フルオレセイン誘導体に連結されたFK778)をIMx(R)FPIAライン希釈剤(100mMリン酸緩衝液、pH7.5、0.01%ウシガンマグロブリン、0.1%アジ化ナトリウム)中で2000nMの濃度に希釈し、トレーサー試薬を調製した。FK778に対するモノクローナル抗体をIMx(R)FPIAライン希釈剤中で100μg/mLの濃度に希釈し、抗体試薬を調製した。2%ドデシル硫酸リチウム(LDS)を100mM Tris緩衝液、pH7.5中で0.05%LDSの最終濃度に希釈することによって、第三の試薬、ドデシル硫酸リチウム(LDS)前処理試薬を調製した。LDS前処理試薬を使用して、試料中で血清アルブミンに結合したFK778又はバイハプテントレーサーを全て解離させた。合成マトリクス中でキャリブレーター及び対照を調製し、濃度を0から250μg/mL FK778の範囲にした。
【0094】
試料(20μL)及びIMx(R)FPIAライン希釈剤(780μL)を吸引し、試料カップの前希釈ウェルに添加することによってIMx(R)機器において試料に対する前希釈段階を行い、次いで30秒間温置した。LDS(75μL)、IMx(R)FPIAライン希釈剤(905μL)及び試料(20μL)(即ちキャリブレーター、対照又は検体)を吸引し、IMx(R)キュベットに添加した。得られた溶液を5分間温置し、次いでブランクを読み取った。バイハプテントレーサー(75μL、2000nM)、FK778に対するモノクローナル抗体(75μL)、試料(20μL)及びIMx(R)FPIAライン希釈剤(830μL)を吸引し、元のキュベットに添加した。得られた溶液を5分間温置し、その後、2回目の読み取りを行った。表Vは、検量線に対する値を示す。図2は、蛍光偏光免疫アッセイでの使用に適切なFK778に対する用量反応の例である。
【0095】
【表5】

【実施例3】
【0096】
この実施例の目的は、抗体被覆微小粒子の調製を示すことである。抗体で被覆された微小粒子を次のように調製した:
微小粒子をまとめて洗浄した。ピペットを用いてMES緩衝液(32mL)を遠沈管(50mL)に移した。微小粒子(8mL、5%固体)を遠沈管中のMES緩衝液に添加した。外側から磁力をかけることによって微小粒子を緩衝液から分離し、液体を除去した。MES緩衝液(40mL)中で微小粒子を再懸濁した。微小粒子を磁性化し、液体を除去した。微小粒子をMES緩衝液中で再懸濁した(32mL、1.25%固体)。
【0097】
微小粒子に添加する前に抗体を低pHで処理する。抗−FITC抗体(5.55mg/mL、1.441mL)をリン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4(2.559mL)で2mg/mL溶液に希釈した。抗−FITC抗体(4.0mL)にPBS(4.0mL、pH1.7)を添加し、得られた溶液(1mg/mL)を5分間温置し、次いで洗浄した微小粒子(32.0mL)に添加した。室温で回転させながら、抗体とともに10分間、微小粒子を温置した。微小粒子を磁性化し、液体を除去した。微小粒子をMES緩衝液(40.0mL)中で再懸濁した。
【0098】
EDAC(33.1mg)をMES緩衝液(1.655mL)中で溶解し、20mg/mLの濃度の溶液を得た。抗体被覆微小粒子(40mL)にEDAC溶液(400μL)を添加した。混合物を室温にて回転させながら30分間温置した。磁性化によって微小粒子を分離し、液体を除去した。ウシ血清アルブミン/Tween(R)20/Tris緩衝液(40mL)の混合液で微小粒子を洗浄した。ウシ血清アルブミン/Tween(R)20/Tris緩衝液(40mL)の混合液中で微小粒子を再懸濁し、微小粒子が沈殿しないように、回転させながら室温にて10分間温置した。微小粒子を磁力により分離し、液体を除去した。微小粒子を微小粒子希釈剤(40mL)中で再懸濁した。微小粒子希釈剤は、表Iで示される磁性微小粒子試薬の成分(微小粒子は含まない。)を含む。微小粒子を磁性化し、液体を除去した。微小粒子希釈剤(40mL)中で微小粒子を再懸濁し、冷蔵下で保存した(1%固体)。
【0099】
使用前に、微小粒子希釈剤を用いて1%から0.1%固体に微小粒子を希釈した。図3は、微小粒子を被覆するためのプロセスを示すフローチャートである。
【実施例4】
【0100】
この実施例は、アクリジニウム標識に連結された抗体を含む連結物の調製について述べる。図4は、本発明のアッセイでの使用に適切な連結物を調製するための手順を示す。
【0101】
必要に応じて7.2mg/mLより高い濃度にFK778に対する抗体を濃縮する。CPSP活性エステル(4mg/mL)をDMF中で調製した。連結緩衝液を調製した。FK778に対する抗体(20mg)、連結緩衝液(200μL)、CPSP活性エステル(24μg;4mg/mLエステル 6μL)及びPBSを含有する反応混合液(3mL)を調製した。この混合液を室温で20分間反応させた。反応後、得られた産物を透析装置(Slide−a−lyzer)に移し、ここで、250mL透析緩衝液に対して少なくとも24時間、4℃で透析した。透析済み反応混合液を0.2ミクロンフィルターに通してろ過した。1cmキュベットでの吸収を370nmで測定した。280nmでも1cmキュベットでの吸収を測定した。アクリジニウム取り込み率を計算した(目標は0.25)。サイズ排除HPLCを用い、凝集及び遊離CPSPを測定した。連結物希釈剤中300μg/mLの濃度に連結物を希釈した(1000X)。
【0102】
ARCHITECT(R)機器は、相対的光単位(RLU)でアッセイシグナルを測定する。FK778アッセイにおいて、キャリブレーターFのFK778濃度は250μg/mLである。キャリブレーターAは検体不含である。
【0103】
FK778の低濃度及び高濃度の両方を高い精度及び精密度で測定できるように、用量反応曲線の形を最適化した。FK778の極低濃度(<10μg/mL)は臨床的意義はないが、約50から約150μg/mLの範囲の濃度は治療的に有効である。FK778検体の濃度を変化させたところ、FK778−フルオレセインバイハプテントレーサー及び連結物は最適な曲線形態を与えた。
【実施例5】
【0104】
この実施例の目的は、ARCHITECT(R)機器に対して設計されたFK778のためのアッセイに対する、機器に置かれた試薬の安定性を示すことである。
【0105】
消泡剤(Antifoam10%活性、カタログ番号AF9020、GE Silicones、Waterford、NY 12188)が最適でない場合、30日間の機器上での試薬保管中、アッセイシグナルが時間依存的に少々上昇すること(FK778濃度の低下)が観察され得る。以前の実験から、微小粒子試薬中の消泡剤濃度を高めることによってドリフトを小さくすることができることが示された。下記のように、さらにドリフトを小さくするために、高濃度の消泡剤を有する試薬を試験した。輸送時のストレスを摸倣するように設計した室温での振盪試験(60分間)に前もって供した試薬を用いて、機器上での安定性試験を行った。第31−33日からの平均対照値−第1−5日に対する平均対照値としてドリフトを計算した。表VIは、消泡剤濃度の関数として%ドリフトを示す。
【0106】
【表6】

【0107】
機器2において400ppmの消泡剤濃度でさらなる30日間の機器上での安定性試験を行い、この結果から、ドリフトが極めて小さくなることが示された。全体的精度(ドリフトを含む。)は、10%の上限%CVを十分に下回った。表VIIは、ARCHITECT(R)に置き保管した試薬を用いて行った30日間精密試験の精度及びドリフトの結果を示す。
【0108】
【表7】

【0109】
図5は、機器への搭載日数の関数として、FK778の濃度を示す。
【実施例6】
【0110】
この実施例は、精密試験の結果を示す。両方のアッセイ対照(合成マトリクス)に対して、及び薬物を添加した血清において、精度を評価するために、38日間(20個の試験ポイント)にわたり、3台のARCHITECT(R)機器において、FK778試薬の3種類のロットを試験した。下記でまとめた結果から、両対照及び20−200μg/mLの範囲の血清の総%CVが5%以下となることが示される。
【0111】
第0日及び第15日に検定を行った。試薬の3種類のロットを機器ごとに使用した。38日間にわたり、そのうち20日間、各日2回の測定を行った。デュプリケート対照及び血清パネルを測定ごとに使用した。N=720。表VIII及びIXにおいて下記でまとめた結果から、両対照及び20−200μg/mLの範囲の血清の総%CVが5%以下となることが示される。
【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【実施例7】
【0114】
この実施例の目的は、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(本明細書中で以後、LC/MS/MS)により決定されたFK778濃度に対するアッセイ結果とARCHITECT(R)機器により決定したFK778濃度に対するアッセイ結果との相関を示すことである。外部LC/MS/MS法により既に試験した凍結肝臓移植検体のプールをARCHITECT(R)機器で再試験し、内測法により得られたLC/MS/MSの結果と比較し、外測法に合致するように最適化した。LC/MS/MS法では、独立に調製したキャリブレーターを使用した。
【0115】
【表10】

【0116】
この結果から、独立に調製したキャリブレーターを用いる場合でも、参照方法と優れた相関を得ることができることが示される。
【実施例8】
【0117】
この実施例は、ARCHITECT(R)機器でのFK778に対するアッセイにおいてリウマチ因子(RF)による干渉がないことを示す。ARCHITECT(R)機器を利用したアッセイでの干渉について、RF(IgGのFc部分に対する抗体)レベルが上昇している臨床検体を試験した。薬物有り又は無しで検体を試験した。表XIで示す結果から、薬物無しで試料を試験した場合、干渉がないことが示される。これらの試料により、薬物回収において10%を超えるある程度の変動があったが、平均回収は102%であり、RFレベルに相関する強い偏向はなかった。
【0118】
【表11】

【実施例9】
【0119】
この実施例は、ヒト抗−マウス抗体(HAMA)干渉の影響を示す。アッセイにおいて試料として1mg/mLの濃度の精製ヒト抗−マウス抗体(HAMA)を試験し、0.26μg/mLと読み取ったが、これは、およそ1.5μg/mLの検出限界を十分に下回っていた。この結果から、試薬中に存在するマウスIgGがHAMAの影響を阻止したことが確認された。
【実施例10】
【0120】
この実施例は、処方薬による干渉を示す。NCCLS文書EP−7Pで推奨されるレベルで45種類の処方薬のうち44種類に対して干渉について試験した。試料中のFK778の存在下及びFK778の非存在下で干渉を試験した。5μg/mLを超えるもの(FK778なし)又は10%を超えるもの(FK778あり)として干渉を定義した。フルオレセイン及びA77,1726(レフルノミドの活性代謝産物)のみで干渉が観察された。両方の干渉が予想されたが、これは、フルオレセインの場合、FK778−フルオレセインバイハプテントレーサーとのフルオレセインの競合のためであり、A77,1726の場合、FK778に対するその構造類似性のためである。表XIIは、干渉試験の結果を示す。
【0121】
【表12】


【0122】
眼において血流を測定するためにフルオレセインがインビボ診断手順で使用され、移植を受けている患者において存在しないと予想される。それにもかかわらず、400μg/mL未満の濃度での干渉の程度を推定するためにさらに徹底してフルオレセインを試験した。表XIIIで示す得られたデータから、干渉が30から50μg/mLの範囲で10%以下に低下することが示される。
【0123】
【表13】

【0124】
FK778の存在下及び非存在下でのこの分子の交差反応性を評価するために、A77,1726を用いてさらなる試験も行った。表XIVの結果から、競合する大量のFK778存在下では、%交差反応性が上は47%から下は13%まで変動したことが示される。
【0125】
【表14】

【実施例11】
【0126】
この実施例の目的は、FK778代謝産物M1及びM3を干渉について試験することである。表XVで示されるように、FK778非存在下での干渉物質としてFK778代謝産物を試験した。FK778に対する抗体の特異性から予想されるように、交差反応性はM1に対しては測定不可能であり、M3に対しては僅かおよそ1%である。M1及びM3の構造を下記で示す。
【0127】
【化14】

【0128】
【表15】

【実施例12】
【0129】
この実施例は、FK778アッセイのための試薬における熱ストレス及び凍結融解の影響を示す。凍結下、4℃、22℃、30℃及び45℃で試薬を5日間保存し、許容可能な検量線を維持する能力について試験した。データを表XVIで示す。45℃でのみRLUシグナルの顕著な変化が見られた(RLUがCalAからCalCで低下し、RLUがCalE及びCalFで上昇した。)。それにもかかわらず、45℃でストレスを与えた試薬は許容可能な曲線の形を維持した。測定データはRLUである。
【0130】
【表16】

【実施例13】
【0131】
この実施例は、微生物接種に対する、FK778のためのアッセイで使用される試薬の安定性を示す。FK778を含有する組成物に、組成物中での抗菌剤の有効性を調べるために及びアッセイ性能における微生物の影響を試験するために使用される標準的な微生物パネルを添加した。
【0132】
抗菌的な有効性を試験するために、試料を室温で保存し、14及び28日で微生物数について試験した。添加した組成物もまた、2から8℃の範囲の温度で37日間温置し、次いでアッセイした(21回の繰り返しでのキャリブレーター及び対照)。表XVII、XVIII、XIX、XXは、これらの微生物が抗菌剤により殺菌され、何ら性能の低下を引き起こさないことを示唆する。表XVII及びXVIIIのデータは、微生物数を示す。表XIX、XX及びXXIのデータは、RLUでのシグナルを示す。
【0133】
【表17】

【0134】
【表18】

【0135】
【表19】

【0136】
【表20】

【実施例14】
【0137】
この実施例の目的は、複数のロットの安定性を示すことである。最終調合物である試薬の3種類の独立したロットを低温で保存し、これらの長期間の安定性を調べた。さらに、キャップライナーとの長期接触の影響を調べるために逆さにして1つのロットを試験した。試験の最初の月には、1つのロットでの輸送ストレス試験も含まれた。結果を表XXIで示す。長期保存の主作用がRLUシグナルが徐々に低下することであることが予想されるが、この測定を表XXIで報告する。B/A比により曲線の形の安定性を評価し、これも報告する。輸送ストレスデータから、曲線のCalA−D領域でRLU低下が加速するが、許容可能なB/Aが維持されることが示される。測定データはRLUである。
【0138】
【表21】

【0139】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の様々な修飾及び変更が当業者に対して明らかとなろうし、本発明が本明細書中で示される例証となる実施形態に過度に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、本発明の競合アッセイのある実施形態を示す概略図である。
【図2】図2は、蛍光偏光免疫アッセイにおいて、FK778をFK778のフルオレセイン誘導体及びFK778に対する抗体と混合することにより作成した用量反応曲線を示すグラフである。
【図3】図3は、微小粒子を被覆するためのプロセスを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の連結物を調製するためのプロセスを示すフローチャートである。この連結物は化学発光標識を利用する。
【図5】図5は、FK778を含有する溶液をARCHITECT(R)装置上で保管した場合の、終夜測定したFK778含有溶液の安定性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)混合物{前記混合物は、FK778を含有する疑いのある試験試料と、第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相と、FK778又はFK778の類似体及び第一のハプテンを含むバイハプテンと並びに試薬混合物[前記試薬混合物は、標識に連結されたFK778に対する抗体と及び標識に連結されていないFK778に対する抗体とを含んで、検出可能な複合体(前記検出可能な複合体は、(i)前記標識に連結されたFK778に対する前記抗体と、(ii)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと並びに(iii)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相とを含む。)を形成する。]とを含む。}を温置する段階、
(b)固相を混合物から分離する段階;
(c)固相に結合されている標識量を測定する段階;及び
(d)測定された標識量から試験試料中のFK778の量を決定する段階
を含む、試験試料中のFK778又はFK778の代謝産物又はレフルノミドの代謝産物の量を決定する方法。
【請求項2】
前記標識が化学発光標識である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標識がアクリジニウム標識である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)標識に連結されたFK778に対する抗体と及び標識に連結されていないFK778に対する抗体との混合物と、(b)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテンと及び(c)第一のハプテンに特異的な抗体に結合された固相とを含む、上述のアッセイを行うための試薬を含有するキット。
【請求項5】
前記標識が化学発光標識を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記標識がアクリジニウム標識を含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
(a)混合物[前記混合物は、(1)FK778を含有する疑いのある試験試料と、(2)必要ならば試料に対する希釈剤と、(3)前処理試薬と、(4)FK778に対する又はFK778の類似体に対する抗体と、(5)第一のハプテン及びFK778(又はFK778の類似体)とを含むバイハプテントレーサーを含み、混合物(前記混合物は、(i)非結合トレーサーと、(ii)前記抗体に結合されたトレーサーと、(iii)前期抗体に結合されたFK778と及び(iv)非結合FK778とを含む。)を形成する。]を温置する段階;
(b)蛍光偏光により、存在する前記抗体に結合したトレーサー及び非結合トレーサーの比を測定する段階;
(c)測定された蛍光偏光シグナルから試験試料中のFK778又はFK778類似体の量を決定する段階
を含む、試験試料中のFK778又はレフルノミドの代謝産物の量を決定するための方法。
【請求項8】
前記バイハプテンが、FK778及びフルオレセイン誘導体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)FK778に対する抗体と、(b)第一のハプテン及びFK778又はFK778の類似体を含むバイハプテントレーサーと及び(c)前処理試薬とを含むキット。
【請求項10】
前記バイハプテンがFK778及びフルオレセイン誘導体を含む、請求項9に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−522581(P2009−522581A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549589(P2008−549589)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/000389
【国際公開番号】WO2007/081868
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】