説明

競合管理装置及び競合管理方法

【課題】デバイスを利用する実行環境が切り替わるタイミングを、状況に応じて異ならせるようにする。
【解決手段】判断部221は、複数の実行環境(211、212、213)による他のデバイス(表示デバイス300以外のデバイス)の利用状況を判断する。管理部222は、表示デバイス300に画面を表示する実行環境が第1の実行環境から第2の実行環境に切り替わる場合に、判断部221により判断された他のデバイスの利用状況に応じて、第2の実行環境に他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを異ならせる。例えば、管理部222は、第2の実行環境が利用しようとする他のデバイスを他の実行環境が利用中である場合には、第2の実行環境に対して、画面の切り替えと同期したタイミングではなく、当該他の実行環境が当該デバイスの利用を終了したタイミングで当該デバイスを利用可能な状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の実行環境が同一のデバイス(ハードウェアデバイス)を利用する場合のアクセス制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の実行環境が同一のデバイスを利用しようとすると、競合した状態になる場合がある。ここにおいて、競合した状態とは、複数の実行環境(又は当該実行環境により実行されるアプリケーション)が同一のデバイスを利用することを同時に要求している状態のことである。特許文献1には、あらかじめ作成したデータベースによってアプリケーション間の競合を管理する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/059786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイスが競合した状態になり、利用不可能になることを避けるためには、そのデバイスを利用できる実行環境が択一的になるように切り替えるのが一つの方法である。かかる切り替えは、実行環境の動作が画面表示を伴う場合、画面表示の切り替えと同時に行うとユーザに自然な印象を与えることができるといえる。しかし、実行環境等の切り替えを画面の切り替えと同時に行うと、ユーザの使い勝手を損なう場合もある。
そこで、本発明は、デバイスを利用する実行環境が切り替わるタイミングを、状況に応じて異ならせるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る競合管理装置は、複数の実行環境が利用する表示デバイス及び他のデバイスを備える情報処理装置において、前記複数の実行環境による前記他のデバイスの利用状況を判断する判断部と、前記表示デバイスに画面を表示する実行環境が第1の実行環境から第2の実行環境に切り替わる場合に、前記判断部により判断された前記他のデバイスの利用状況に応じて、前記第2の実行環境に前記他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを異ならせる管理部とを備える構成を有する。
【0006】
好ましい態様において、前記管理部は、前記他のデバイスの各々について、競合が生じ得る前記実行環境の組み合わせを設定情報として記憶し、当該設定情報を用いて前記タイミングを決定する。
他の好ましい態様において、前記競合管理装置は、前記複数の実行環境のそれぞれが前記他のデバイスの利用の可否を確認するための確認部を備え、前記確認部は、前記複数の実行環境に、当該実行環境の利用の可否を確認可能にし、かつ、当該実行環境以外の他の実行環境の利用の可否を確認できないように制限する。
他の好ましい態様において、前記管理部は、前記複数の実行環境が実行するアプリケーション毎の前記組み合わせを前記設定情報として記憶する。
他の好ましい態様において、前記表示デバイスは、各々が所定の実行環境又はアプリケーションに対応する複数の画面を階層的に表示し、前記管理部は、前記画面が表示されている階層に応じた優先度を用いて前記タイミングを決定する。
他の好ましい態様において、前記管理部は、前記表示デバイスによる表示の切り替えがユーザの操作によるか否かによって前記タイミングを異ならせる。
他の好ましい態様において、前記競合管理装置は、あらかじめ決められた前記優先度をユーザの操作に応じて変更する設定部を備える。
他の好ましい態様において、前記設定部は、あらかじめ決められた実行環境において前記変更を可能にし、当該実行環境以外の他の実行環境において前記変更ができないように制限する。
他の好ましい態様において、前記競合管理装置は、前記設定部による変更の可否を前記ユーザに選択させる選択部を備え、前記設定部は、前記選択部により前記変更が許可された場合に、前記あらかじめ決められた優先度よりも当該変更を優先する。
【0007】
本発明の他の態様に係る競合管理方法は、複数の実行環境が利用する表示デバイス及び他のデバイスを備える情報処理装置において、前記複数の実行環境による前記他のデバイスの利用状況を判断する第1のステップと、前記表示デバイスに画面を表示する実行環境が第1の実行環境から第2の実行環境に切り替わる場合に、前記第1のステップにおいて判断された前記他のデバイスの利用状況に応じて、前記第2の実行環境に前記他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを異ならせる第2のステップとを有する。
【0008】
本発明の他の態様に係るプログラムは、複数の実行環境が利用する表示デバイス及び他のデバイスを備える情報処理装置のコンピュータに、前記複数の実行環境による前記他のデバイスの利用状況を判断する第1のステップと、前記表示デバイスに画面を表示する実行環境が第1の実行環境から第2の実行環境に切り替わる場合に、前記第1のステップにおいて判断された前記他のデバイスの利用状況に応じて、前記第2の実行環境に前記他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを異ならせる第2のステップとを実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デバイスを利用する実行環境が切り替わるタイミングを、状況に応じて異ならせるようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図
【図2】制御部の機能的構成を示す機能ブロック図
【図3】監視ファイルの一例を示す図
【図4】競合管理ファイルの一例を示す図
【図5】実行環境制御部が実行する処理を示すフローチャート
【図6】実行環境制御部が実行する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態において、情報処理装置100は、音声通話及びデータ通信が可能な無線通信端末であり、例えば、携帯電話機やスマートフォンであるとする。情報処理装置100は、図1に示すように、制御部200と、表示デバイス300、通信デバイス400、ストレージデバイス500、入力デバイス600、カメラデバイス700、オーディオデバイス800、ワンセグデバイス900などを含む複数のハードウェアデバイスとを備える。
【0012】
ここにおいて、ハードウェアデバイスとは、情報処理装置10に特定の機能を実現させるためのハードウェア資源をいう。ハードウェアデバイスは、情報処理装置10の本体にもともと備え付けられている構成であってもよいし、いわゆる外付けの周辺機器(ペリフェラル)のように、ケーブル等を介して有線又は無線で接続される構成であってもよい。
なお、以下においては、ハードウェアデバイスのことを単に「デバイス」ともいう。また、情報処理装置100に備わるハードウェアデバイスのうち、表示デバイス300を除くものを総称して「他のデバイス」ともいう。
【0013】
表示デバイス300は、画像を表示するためのデバイスである。表示デバイス300は、例えば、液晶パネルやその駆動回路、光源などを含んで構成される。なお、表示デバイス300は、液晶に限らず、有機EL(electroluminescence)素子等の他の表示素子によって画像を表示するものであってもよい。表示デバイス300は、実行環境(又はアプリケーション)に応じた画面(ウィンドウ)を表示する。また、表示デバイス300は、かかる画面のほかにも、いわゆる壁紙、アイコン、電池の残量表示などを画像(静止画又は動画)として表示することが可能である。
【0014】
本実施形態の表示デバイス300は、マルチウィンドウ方式によってウィンドウを表示することが可能であるものとする。ここにおいて、マルチウィンドウ方式とは、ウィンドウを階層的に表示するウィンドウの表示方式をいう。マルチウィンドウ方式において、複数のウィンドウが重なる場合、これらのウィンドウには「前面」又は「背面」という階層の関係が生じる。ここにおいて、前面のウィンドウとは、表示デバイス300を視認するユーザに最も近い側に存在しているように知覚されるウィンドウをいい、画面全体が表示されるものである。一方、背面のウィンドウとは、前面のウィンドウ以外のウィンドウをいい、重なった場合に画面の少なくとも一部が前面のウィンドウと重なって視認されなくなるものである。背面のウィンドウは、これが複数ある場合には、前面により近いか否かによって階層が異なり得る。
なお、表示デバイス300は、複数のウィンドウを重ねずに表示したり、ウィンドウを1つだけ表示したりすることも可能である。複数のウィンドウが重ならずに表示される場合、これらのウィンドウは、同じ階層であるとみなされてもよい。
【0015】
通信デバイス400は、移動体通信網に接続し、通信(音声通話及びデータ通信)を行うためのデバイスである。通信デバイス400は、アンテナや、無線通信を制御するための無線通信回路などを備える。
ストレージデバイス500は、データを記憶し、これを読み出すためのデバイスである。ストレージデバイス500は、例えば、ハードディスクドライブである。また、ストレージデバイス500は、いわゆるメモリカードのような着脱可能な記憶手段にデータを読み書きするものであってもよい。
入力デバイス600は、ユーザが操作し、情報や指示を入力するためのデバイスである。入力デバイス600は、ボタン(キー)やスイッチを備え、ユーザの操作を表す操作信号を制御部200に供給する。入力デバイス600は、表示デバイス300に重ねて設けられたタッチスクリーン(タッチパネル)を含んでもよい。
【0016】
カメラデバイス700は、静止画又は動画を撮影するためのデバイスである。カメラデバイス700は、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を用いたイメージセンサや、イメージセンサから得られる電気信号を静止画や動画のデータに変換する画像処理回路などを備える。
オーディオデバイス800は、音声を入力及び出力するためのデバイスである。オーディオデバイス800は、マイクロホン及びスピーカと、これらに接続される音声処理回路などを備える。
ワンセグデバイス900は、地上デジタルテレビジョン放送を視聴するためのデバイスである。ワンセグデバイス900は、デジタル放送を受信するためのチューナなどを備える。なお、ここでいう「ワンセグ」は、地上デジタルテレビジョン放送の一規格である。よって、ワンセグデバイス900は、他の規格のデジタル放送を視聴するためのデバイスに置き換えられてもよい。ここでいう他の規格には、例えば、DVB−H(Digital Video Broadcasting - Handheld)などがある。
【0017】
制御部200は、情報処理装置100の全体的な動作を制御する手段である。本実施形態において、本発明に係る競合管理装置に相当する機能は、制御部200によって実現される。制御部200は、より詳細には、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置や、主記憶装置に相当するメモリなどを備え、所定のプログラムを実行することによって上述した各デバイスにアクセスし、これらの動作を制御する。
【0018】
また、制御部200は、複数の異なる実行環境を実現する。ここにおいて、実行環境とは、アプリケーションを実行するために必要な所定のまとまりを有するプログラム群をいう。実行環境は、例えば、OS(Operating System)単位で区別されるものであるが、OSであるとは限らない。また、実行環境は、仮想化によって、ホストOSに対するゲストOS(すなわち、仮想的な実行環境)として実現されてもよい。
【0019】
図2は、制御部200の機能的構成を示す機能ブロック図である。制御部200は、複数のプログラムを実行することによって、図2に示す実行環境211、212、213と、実行環境制御部220とを実現し、これらが協働することによって表示デバイス120や他のデバイスを利用するように構成されている。なお、制御部200が実現可能な実行環境の数は、ここでは便宜上「3」であるとするが、これより多くても少なくてもよい。また、実行環境211、212、213は、同時に複数実行されてもよいものである。
【0020】
実行環境211、212、213は、利用可能なデバイスに対応するデバイスドライバをそれぞれ有し、デバイスドライバを介して各デバイスにアクセスする。なお、実行環境211、212、213は、すべてのデバイスについてデバイスドライバを有している必要はなく、当該実行環境が利用しないデバイスがあれば、そのデバイスに対応するデバイスドライバを有している必要はない。実行環境211、212、213は、各デバイスに直接アクセスするのではなく、実行環境制御部220を介して各デバイスにアクセスする。
【0021】
実行環境制御部220は、本発明に係る競合管理装置に相当する機能を実現するものであり、実行環境211、212、213によるデバイスの利用を制御する。実行環境制御部220は、より詳細には、判断部221、管理部222、確認部223、設定部224及び選択部225を有する。
【0022】
判断部221は、実行環境211、212、213による他のデバイスの利用状況を判断する。判断部221は、監視ファイルをデータとして記憶し、この監視ファイルを用いて、実行環境211、212、213による他のデバイスの利用状況を判断する。
【0023】
図3は、監視ファイルの一例を示す図である。監視ファイルは、他のデバイスの各々がその時にどの実行環境によって利用されているかを示すデータであり、図3に示すように、デバイス名とその利用状況とを対応付けて記述したファイルである。ある実行環境があるデバイスを利用している場合、監視ファイルには、それぞれのデバイスと実行環境の名称が対応付けて記述される。一方、あるデバイスがどの実行環境によっても利用されていない場合、監視ファイルには、当該デバイスに対応する実行環境の名称が記述されず、利用中でないことを示す所定の値(図中では「−」)が記述される。なお、図3(及び図4)においては、説明の便宜上、デバイスや実行環境の名称が実施形態中の符号で表現されている。
【0024】
判断部221は、あるデバイスを利用する実行環境が切り替わると、監視ファイルを書き換え、更新する。すなわち、判断部221は、この監視ファイルを参照することによって、どのデバイスがどの実行環境によって利用されているか(又は利用されていないか)を、随時、容易に判断することが可能である。
【0025】
管理部222は、実行環境211、212、213による他のデバイスの利用の態様を管理する。具体的には、管理部222は、判断部221により判断された利用状況に基づき、他のデバイスを利用する実行環境を切り替えるタイミングを管理する。管理部222は、競合管理ファイルをデータとして記憶し、この競合管理ファイルを用いて実行環境の切り替えのタイミングを決定する。
【0026】
図4は、競合管理ファイルの一例を示す図である。競合管理ファイルは、デバイスの利用に競合が生じた場合にどの実行環境(又はアプリケーション)を優先するかを記述したファイルである。競合管理ファイルは、競合が生じ得る実行環境(又はアプリケーション)の組み合わせを記述したファイルであるともいえる。競合管理ファイルは、情報処理装置100においてあらかじめ設定されているものであり、本発明に係る設定情報の一例に相当するものである。
【0027】
競合管理ファイルは、図4に示すように、デバイス名と実行環境名及びアプリケーション名(同図においては「アプリ名」と略記している。)との組み合わせと、かかる組み合わせのそれぞれに対して割り当てられた優先度とを記述したファイルである。図4の例において、優先度は、各々のアプリケーションに対応するウィンドウが前面に表示されている場合と背面に表示されている場合とで異なる値を割り当てることができる(ただし、同一の値であってもよい。)。優先度を前面の場合と背面の場合とで異ならせる場合には、前面の場合の方が大きな値である方が望ましい。この例において、優先度は、その値が大きいほど優先的に利用されることを表している。
【0028】
図4の競合管理ファイルは、ストレージデバイス500が、実行環境211が実行するアプリケーション「A」と、実行環境212が実行するアプリケーション「B」と、実行環境213が実行するアプリケーション「C」によって利用されることを表しており、これらのアプリケーションによって競合が生じる可能性があることを表している。換言すれば、この例においては、ストレージデバイス500は、アプリケーション「A」、「B」、「C」以外の他のアプリケーションによっては利用されず、かかる他のアプリケーションによっては競合が生じる可能性もないといえる。管理部222は、このような競合管理ファイルを参照することによって、競合を生じる関係にある実行環境又はアプリケーションの組み合わせを容易に認識することが可能になる。
【0029】
確認部223は、実行環境211、212、213のそれぞれが利用可能なデバイスを確認するための機能を有し、各実行環境による各デバイスの利用の可否が記述されたデータを保持している。実行環境211、212、213は、それぞれにおいて利用可能なデバイスを認識しようとするとき、確認部223に問い合わせる。確認部223は、この問い合わせに応じ、各デバイスの利用の可否を通知する。
【0030】
なお、確認部223は、望ましくは、実行環境211、212、213に対して、各デバイスの利用の可否に関する情報を、自らの情報についてのみ確認可能にし、他の実行環境の情報については確認できないように制限する。このようにすれば、どの実行環境がどのデバイスを利用可能であるかを他の実行環境に対して隠蔽することが可能である。
【0031】
設定部224は、上述した優先度をユーザの操作に応じた値に変更する機能を有する。つまり、設定部224は、あらかじめ決められた優先度に代えて、ユーザが所望する値の新たな優先度を設定することを可能にするものである。選択部225は、設定部224による設定(すなわち優先度の変更)の可否をユーザに選択させる機能を有する。設定部224は、選択部225により変更が許可された場合に当該変更を可能にし、あらかじめ決められた優先度よりもユーザが設定した優先度が優先されるようにする。設定部224及び選択部225は、表示デバイス300や入力デバイス600を用いて、かかる設定や変更を実現するためのユーザインタフェースを提供する。
【0032】
なお、設定部224による設定や選択部225による選択は、特定のデバイス又は実行環境に限定して実行されるようになっていてもよい。また、かかる設定や選択は、実行環境制御部220が設定した所定のタイミングで実行されてもよいし、ユーザが所望するタイミングで実行されてもよい。
【0033】
情報処理装置100の構成は、以上のとおりである。この構成のもと、情報処理装置100は、複数の実行環境によってデバイスを利用し、ユーザの操作などに応じた機能を実現する。情報処理装置100は、例えば、他の携帯電話機のユーザと通話するためのアプリケーションを実行することにより、オーディオデバイス800によって生成された音声データを通信デバイス400を介して送信したり、ワンセグによって放送されているテレビ番組を録画するためのアプリケーションを実行することにより、ワンセグデバイス900によって番組データを受信し、これをストレージデバイス500に記録したりすることが可能である。また、情報処理装置100は、このように一つのアプリケーションを実行することで複数の他のデバイスを利用することがある一方で、一つのアプリケーションを実行することで一つの他のデバイスしか利用しないこともある。
【0034】
また、情報処理装置100は、表示デバイス300に画面を表示する実行環境が切り替わる場合において、その切り替え後の実行環境が他のデバイスも利用するとき、当該切り替え後の実行環境に当該他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを以下のように制御する。なお、ここにおいて、画面の切り替えには、切り替え前の画面が非表示になって切り替え後の画面が表示される場合と、画面の階層が切り替えの前後で変化する場合とがある。後者の場合とは、例えば、複数の画面が表示されているときに、それまで背面に表示されていた画面が前面に表示され、それまで前面に表示されていた画面の一部を隠してしまうような場合である。
【0035】
図5は、実行環境制御部220が他のデバイスのアクセス制御に際して実行する処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す処理において、実行環境制御部220は、まず、画面の切り替えを検知する(ステップS101)。ここでは、画面の切り替えによって他のデバイスを利用する実行環境が変化するとし、その切り替え前の画面に対応する実行環境を「第1の実行環境」といい、切り替え後の画面に対応する実行環境を「第2の実行環境」というものとする。
【0036】
次に、実行環境制御部220は、第2の実行環境が利用する他のデバイスを特定する(ステップS102)。実行環境制御部220は、上述した競合管理ファイルを用いることでこの特定を行うことが可能である。実行環境制御部220は、競合管理ファイルに第2の実行環境と対応付けて記述された他のデバイスがあれば、当該デバイスを第2の実行環境が利用するものであると特定することができる。
【0037】
続いて、実行環境制御部220は、第2の実行環境が利用する他のデバイスの利用状況を判断する(ステップS103)。実行環境制御部220は、上述した監視ファイルを用いて利用状況を判断することができる。ここで、実行環境制御部220は、第2の実行環境が利用しようとしている他のデバイスが他の実行環境によって利用中であるか否かを判断する(ステップS104)。このとき、第2の実行環境が利用しようとしている他のデバイスが他の実行環境によって利用されていない場合には、当該デバイスについて競合が生じる可能性はないといえる。よって、かかる場合、実行環境制御部220は、画面を切り替えるタイミングに同期して、当該デバイスの状態を第2の実行環境が利用可能な状態に切り替える(ステップS106)。
【0038】
一方、実行環境制御部220は、第2の実行環境が利用しようとしている他のデバイスが他の実行環境によって利用されている場合には、当該デバイスについて競合が生じる可能性がある。よって、かかる場合、実行環境制御部220は、競合管理ファイルに記述された優先度を参照することによって当該デバイスの状態を画面の切り替えと同期的に切り替えるか否かを判断する(ステップS105)。ステップS105の判断は、当該デバイスを利用中の実行環境の当該デバイスに関する優先度と、第2の実行環境の当該デバイスに関する優先度とを比較し、第2の実行環境の優先度の方が高いか否かによって行われる。実行環境制御部220は、第2の実行環境の優先度の方が高い場合には、当該デバイスの状態を画面の切り替えと同期的に切り替え(ステップS106)、そうでない場合には、当該デバイスの状態を画面を切り替えるタイミングでは切り替えずに、当該タイミングよりも遅らせて切り替える。具体的には、実行環境制御部220は、他のデバイスを利用している実行環境が当該デバイスの利用を終えてから、当該デバイスの状態を切り替える。
【0039】
図6は、実行環境制御部220が実行する処理の他の例を示すフローチャートである。図6に示す処理において、実行環境制御部220は、画面の切り替えを検知した後に、他のデバイスの状態を画面の切り替えと同期的に切り替えるか否かを判断する(ステップS201、S202)。ステップS201の処理は、図5に示すステップS101の処理と同様のものである。また、ステップS202の処理は、図5に示すステップS102〜S105の処理を適宜組み合わせて用いることが可能である。すなわち、以下のステップS203の処理は、図5に示す処理と一緒に(具体的には、ステップS105とステップS106の間に)実行されてもよい。
【0040】
続いて、ステップS203において、実行環境制御部220は、画面を切り替える要求がユーザの操作によるか否かを判断する。ここにおいて、ユーザの操作による画面の切り替えとは、ユーザがボタン入力によって実行環境の起動を指示した場合のように、ユーザの操作が直接的な契機となっている画面の切り替えのことである。一方、ユーザの操作によらない画面の切り替えとは、実行環境制御部220において内部的に発生したシステムイベントが契機となる場合などがこれに該当する。あるいは、他の携帯電話機から通話の着信があり、当該着信に応じた画面(電話番号等を表示する画面)を表示する場合などもこれに該当する。実行環境制御部220は、画面を切り替える要求がユーザの操作によるものである場合には、他のデバイスの状態を画面の切り替えと同期的に切り替え(ステップS204)、そうでない場合には、当該デバイスの状態を画面を切り替えるタイミングでは切り替えずに、当該タイミングよりも遅らせて切り替える。なお、ステップS204の処理は、図5に示すステップS106の処理と同様のものである。
【0041】
実行環境制御部220は、このような処理を第2の実行環境が利用する他のデバイスのそれぞれについて実行する。その結果、第2の実行環境による他のデバイスの利用は、画面の切り替えに同期して可能になる場合と、画面の切り替えには同期せずに、利用中の他の実行環境による利用が終了してから可能になる場合とが生じる。後者の場合、他のデバイスを利用する実行環境の切り替えは、画面の切り替えと異なるタイミングで行われる。よって、かかる切り替え前の実行環境は、第2の実行環境によって当該他のデバイスの利用を妨げられることなく継続することができる。
【0042】
以上の処理によれば、例えば、テレビ番組の録画中に他の携帯電話機から通話の着信があったとしても、ワンセグデバイス900やストレージデバイス500が通話時に利用されないのであれば、当該着信によってテレビ番組の録画処理が強制的に遮断されないようにすることが可能である。一方、他のデバイスに競合が生じる場合であって、切り替え後の実行環境(第2の実行環境)の優先度が切り替え前の実行環境の優先度よりも低いような場合には、切り替え前の実行環境による他のデバイスの利用が終了してから、当該デバイスを切り替え後の実行環境が利用可能になる。
【0043】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の実施の一態様である。本発明は、上述した実施形態に対して以下の変形を適用した態様で実施することも可能である。なお、以下に示す変形例は、必要に応じて、各々を適当に組み合わせて実施されてもよいものである。
【0044】
(変形例1)
本発明に係る他のデバイスは、上述した実施形態に記載したものの一部であってもよい。また、本発明に係る他のデバイスは、モータによって振動を発生させるバイブレータデバイス、LED(Light Emitting Diode)等の光源の明滅を制御する照明デバイス、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠した端子やケーブルを介してパーソナルコンピュータ等の外部機器と通信するためのUSBデバイスなどであってもよい。
【0045】
(変形例2)
本発明における優先度は、「優先する(デバイスを利用する)」、「優先しない(デバイスを利用しない)」という二値的なものであってもよい。また、優先度は、複数の実行環境又はアプリケーションによってデバイスを共用することが可能である場合には、当該デバイスを優先する程度を表すことができる。この場合、実行環境制御部220は、優先度に応じてメモリ等のリソースの割当量を変えたりすることが可能である。つまり、本発明は、他のデバイスを一つの実行環境又はアプリケーションのみが排他的に利用する場合と、他のデバイスを複数の実行環境又はアプリケーションが共用する場合の双方に適用可能なものである。また、本発明に係る情報処理装置は、排他的に利用される他のデバイスと共用が可能な他のデバイスとが混在した構成であってもよい。
【0046】
(変形例3)
本発明に係る情報処理装置は、携帯電話機やスマートフォンに限らず、例えば、音楽プレーヤ、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ、サーバ装置などであってもよい。本発明に係る情報処理装置は、表示デバイスと、1又は複数の他のデバイスとを備え、複数の実行環境を実行可能なものであれば、いかなるものであってもよい。
【0047】
また、本発明は、競合管理装置に対応する方法やプログラムの発明としても提供され得るものである。また、本発明に係るプログラムは。これを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されたり、インターネット等のネットワークを介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
100…情報処理装置、200…制御部、211、212、213…実行環境、220…実行環境制御部、221…判断部、222…管理部、223…確認部、224…設定部、225…選択部、300…表示デバイス、400…通信デバイス、500…ストレージデバイス、600…入力デバイス、700…カメラデバイス、800…オーディオデバイス、900…ワンセグデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の実行環境が利用する表示デバイス及び他のデバイスを備える情報処理装置において、前記複数の実行環境による前記他のデバイスの利用状況を判断する判断部と、
前記表示デバイスに画面を表示する実行環境が第1の実行環境から第2の実行環境に切り替わる場合に、前記判断部により判断された前記他のデバイスの利用状況に応じて、前記第2の実行環境に前記他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを異ならせる管理部と
を備えることを特徴とする競合管理装置。
【請求項2】
前記管理部は、前記他のデバイスの各々について、競合が生じ得る前記実行環境の組み合わせを設定情報として記憶し、当該設定情報を用いて前記タイミングを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の競合管理装置。
【請求項3】
前記複数の実行環境のそれぞれが前記他のデバイスの利用の可否を確認するための確認部を備え、
前記確認部は、前記複数の実行環境に、当該実行環境の利用の可否を確認可能にし、かつ、当該実行環境以外の他の実行環境の利用の可否を確認できないように制限する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競合管理装置。
【請求項4】
前記管理部は、前記複数の実行環境が実行するアプリケーション毎の前記組み合わせを前記設定情報として記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の競合管理装置。
【請求項5】
前記表示デバイスは、各々が所定の実行環境又はアプリケーションに対応する複数の画面を階層的に表示し、
前記管理部は、前記画面が表示されている階層に応じた優先度を用いて前記タイミングを決定する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の競合管理装置。
【請求項6】
前記管理部は、前記表示デバイスによる表示の切り替えがユーザの操作によるか否かによって前記タイミングを異ならせる
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の競合管理装置。
【請求項7】
あらかじめ決められた前記優先度をユーザの操作に応じて変更する設定部を備えることを特徴とする請求項5に記載の競合管理装置。
【請求項8】
前記設定部は、あらかじめ決められた実行環境において前記変更を可能にし、当該実行環境以外の他の実行環境において前記変更ができないように制限する
ことを特徴とする請求項7に記載の競合管理装置。
【請求項9】
前記設定部による変更の可否を前記ユーザに選択させる選択部を備え、
前記設定部は、前記選択部により前記変更が許可された場合に、前記あらかじめ決められた優先度よりも当該変更を優先する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の競合管理装置。
【請求項10】
複数の実行環境が利用する表示デバイス及び他のデバイスを備える情報処理装置において、前記複数の実行環境による前記他のデバイスの利用状況を判断する第1のステップと、
前記表示デバイスに画面を表示する実行環境が第1の実行環境から第2の実行環境に切り替わる場合に、前記第1のステップにおいて判断された前記他のデバイスの利用状況に応じて、前記第2の実行環境に前記他のデバイスを利用可能にさせるタイミングを異ならせる第2のステップと
を有することを特徴とする競合管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242893(P2011−242893A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112539(P2010−112539)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)