説明

競技用剣

【目的】スポーツ競技又は娯楽としての剣術の試合、練習に使用されるものであって、安全性が十分に確保されなお適度な衝撃を競技相手に与えたり、或は相手側から適度な衝撃を受けることができる競技用剣を提供すること。
【構成】中空管状の心部材1と、該心部材1の先端を塞ぐキャップ材4と、軟質且つ弾性を有する緩衝材2と、薄生地シート状の被覆材3とからなること。前記心部材1に前記緩衝材2が巻付けられて包囲されると共に、該緩衝材2に前記被覆材3が巻き付けられて包囲被覆された刀身部Aと、前記心部材1の長手方向の端部が前記被覆材3のみにて包囲被覆されたグリップBとを有してなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ競技又は娯楽としての剣術の試合、練習に使用されるものであって、安全性が十分に確保されなお適度な衝撃を競技相手に与えたり、或は相手側から適度な衝撃を受けることができる競技用剣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ競技又は娯楽としての剣術が行われている。このような剣術の試合及び練習に使用される剣は、安全性が重要であり、競技者の身体を保護しながら、剣術を体験するものである。そして、安全性を備えた競技用剣は、種々のものが開発され、特に特許文献1に開示されたものでは、その安全性に優れた構成を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2724918号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したスポーツ又は娯楽としての剣術では、近年において競技人口も増加し、協議技術の向上も極めて著しいものとなっている。また、それにつれて、特許文献1に開示されているように競技用剣も安全性において極めて向上しているし、その競技用剣と共に防具も向上している。特に、特許文献1にて開示されたものでは、図5(A)に示すように、剣aの先端a’が、空気の充填された袋体状となっており、競技者bに対する安全性は十分に確保されてはいるものの、図5(B)に示すように、相手側への打ち込みや、相手側から受ける打ち込みによって、その剣aの先端a’部分が柔軟に変形してしまい、打撃による感覚を与え難いし受け難いものである。
【0005】
このようなことから、競技者同士の試合において、剣aで相手競技者に打ち込んでも、その衝撃が相手に全く伝わらないし、また同様に相手側からの打ち込みに対して身体に打撃をうけても全く感触がないと言う事態が生じる。そのため、特に試合において、相手側に対する攻撃での打ち込みや打撃での手応えや、相手側からの攻撃での打ち込みや打撃による感触が競技者相互に感じられず、試合の緊張感に不満が生じると共に、試合の勝敗についても競技者bにとって納得し難い状態となっている。
【0006】
このようなことから、競技者に対する安全性が十分に確保された上で、なお且つ試合にて、相手側に対する攻撃や、相手側から受ける攻撃における競技用剣の打ち込み時の衝撃が体感されることが要望されている。そこで、本発明の目的(技術的課題)は、安全性が十分に確保されなお適度な衝撃を競技相手に与えたり、或は相手側から適度な衝撃を受けて、競技の勝敗を十分に体感することができる競技用剣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、中空管状の心部材と、該心部材の先端を塞ぐキャップ材と、軟質且つ弾性を有する緩衝材と、薄生地シート状の被覆材とからなり、前記心部材に前記緩衝材が巻付けられて包囲されると共に、該緩衝材に前記被覆材が巻き付けられて包囲被覆された刀身部と、前記心部材の長手方向の端部が前記被覆材のみにて包囲被覆されたグリップとを有してなる競技用剣としたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、請求項1において、前記刀身部先端側に位置するキャップ材は半球形状としてなる競技用剣としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記キャップ材は軟質且つ弾性を有する材質としてなる競技用剣としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記キャップ材は前記被覆材にて被覆されてなる競技用剣としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、中空管状の心部材が柔軟且つ弾性を有する緩衝材によって包囲されると共に該緩衝材が被覆材にて包囲被覆され、これによって刀身部が構成されたものである。よって、刀身部は、その全長に亘って、心部材が存在しており、該心部材に衝撃材が包囲される状態となっている。つまり、緩衝部材は長手方向に沿って刀身部の先端箇所まで包囲したものであり、刀身部においては、心部材が存在しない緩衝部材のみで内部が空隙となる部位は存在しない。
【0010】
そのために、刀身部には先端まで心部材が行き届いており、試合又は練習において、相手側に打ち込んだとき、又は相手側から打ち込まれたときの衝撃は適度且つ十分な痛みを伴わない刺激となって体感できるものである。さらに、前記心部材は、長手方向の一端側をグリップ領域とし、該グリップ領域は、被覆材のみにて包囲被覆されてグリップが形成されているので、通常の刀剣類と同様の構成となり、実際の剣術試合と同等の雰囲気を味わいながら且つ安全に競技を行うことができる。
【0011】
請求項2の発明では、刀身部先端側に位置するキャップ材は半球形状としたことにより、特に試合,練習時において、相手側に対する突き技で、又は相手側から受ける突き技に対して、安全性を確保することができる。請求項3の発明では、キャップ材は軟質且つ弾性を有する材質としたので、安全性をより一層確保できる。請求項4の発明では、前記キャップ材は前記被覆材にて被覆されたことにより、キャップ材が心部材から外れ難いものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は、本発明における競技用剣の縦断側面図、(B)は競技用剣を構成する被覆材を除いた縦断側面図、(C)は心部材とキャップ材の縦断側面図、(D)は競技用剣の斜視図である。
【図2】(A)は刀身部の要部拡大縦断側面図、(B)は(A)のY−Y矢視断面図、(C)は(B)において心部材,緩衝材及び被覆材を分離した断面図である。
【図3】(A)は本発明における競技用剣の第2実施形態の側面図、(B)は第2実施形態の短尺としたタイプの側面図、(C)は第2実施形態の縦断側面図、(D)は(C)の(ア)部拡大図である。
【図4】(A)本発明における競技用剣を使用した状態の略示図、(B)は(A)の(イ)部拡大図である。
【図5】(A)は従来技術を示す略示図、(B)は従来技術を使用した略示図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。競技用剣は、図1(A),(D)に示すように、刀身部Aとグリップ部Bとから構成される。刀身部Aは、心部材1,緩衝材2,被覆材3等から構成され、グリップ部Bは心部材1及び被覆材3とから構成される。前記心部材1の先端には、キャップ材4が装着される。心部材1は、図1(A)に示すように、競技用剣の刀身部Aの心となる部材であり、中空管状に形成され、合成樹脂製である。本発明は、スポーツ,娯楽としての剣術の試合及び練習に使用するものであり、極めて安全な模擬武具である。
【0014】
心部材1は、可撓性が良好であり、且つ復元性に優れたものが好適である。具体的には塩化ビニル,グラスファイバ等の管状体(パイプ)が使用される。緩衝材2は、軟質且つ弾性を有する材質のものが使用されている。具体的には、マット状の板材として形成されたものであり、縮み代を有する厚さのスポンジ状,発泡樹脂等の合成樹脂材である。被覆材3は、合成樹脂製の薄いシート材であり、柔軟性且つ伸縮性のある素材が好適である。
【0015】
心部材1には、刀身部構成領域1aと、グリップ部構成領域1bが決められ〔図1(C)参照〕、刀身部構成領域1aでは、後述するように刀身部Aが形成され、グリップ部構成領域1bではグリップ部Bが形成される。前記心部材1の刀身部構成領域1aは、前記緩衝材2が巻き付けられて、心部材1の外周が緩衝材2によって包囲される。心部材1の外周と、緩衝材2と、前記被覆材3とからなり、心部材1に緩衝材2が巻き付けられる。緩衝材2は、心部材1に対してグリップ部を構成する範囲を除く部分を包囲する。緩衝材2と心部材1とは密着され、且つ接着剤によって接着される〔図1(B)参照〕。
【0016】
心部材1に巻きつけられて、該心部材1の外周を包囲した緩衝材2の周囲には、被覆材3が巻き付けられ〔図2(C)参照〕、緩衝材2の外周が被覆材3にて包囲される〔図1(A),図2(A),(B)参照〕。緩衝材2は、接着剤を介して緩衝材2の周囲に巻き付けられるものである。これによって、刀身部Aは、その中心に心部材1が配置され、該心部材1の外周に緩衝材2が配置され、該緩衝材2の外周に被覆材3が配置される構成となる〔図2(A),(B)参照〕。
【0017】
前記被覆材3は、前記心部材1のグリップ部構成領域1bにも巻き付けられることもある〔図1(A)参照〕。すなわち、グリップ部構成領域1bでは心部材1のみの構成としてもよいが、被覆材3が巻き付けられることで、手にする感触を良好なものにできる。心部材1には、キャップ材4が装着される。キャップ材4は、先端キャップ材41と、後端キャップ材42とが存在する〔図1(C)参照〕。先端キャップ材41及び後端キャップ材42は、共に中空管状の心部材1の軸端開口に嵌め込まれる構造のものであり、先端キャップ材41にはキャップ頭部41aに挿入部41bが形成されたものである。また、後端キャップ材42にもキャップ頭部42a及び挿入部42bが形成されたものである。
【0018】
先端キャップ材41及び後端キャップ材42は、それぞれの挿入部41b,42bを心部材1の開口部に圧入して固着する〔図1(B)参照〕。先端キャップ材41のキャップ頭部41aは、略半球形状に形成されることが好適である。特に、先端キャップ材41のキャップ頭部41aを半球形状とすることで、競技において、突き技を使用した場合に、相手側への攻撃及び相手側から受ける攻撃で競技者6の安全を図ることができる〔図4(A)参照〕。また、後端キャップ材42のキャップ頭部42aは、円板形状であり、その直径は心部材1の直径と等しくすることが好ましい。
【0019】
前記キャップ頭部42aを円板状とすることで、グリップ部Bの長手方向端部の形状を整然としたものにできる。また、競技用剣の先端キャップ材41のキャップ頭部41aを略半球状とし、後端キャップ材42のキャップ頭部42aを円板形状とすることで、競技用剣のずれが先端で、いずれが後端となるのかを目視にて簡単に見分けることができる。これは、特に競技用剣にグリップ部Bが存在せず、全体が刀身部Aとした場合等に役に立つ。
【0020】
前記先端キャップ材41のキャップ頭部41a及び前記後端キャップ材42のキャップ頭部42aとは、共に被覆材3にて被覆されることもある。グリップ部Bにおいて、心部材1の外周に巻き付けられた被覆材3の外周にテープ材5が巻き付けられることもある。該テープ材5は、グリップ部Bの滑り防止の役目をなすものであり、使用されるテープ材5としては、ビニルテープ又は布テープのいずれでも構わない。
【0021】
次に、本発明の競技用剣の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、図3に示すように、グリップ部Bが存在しない、刀身部Aのみから形成されたものである。また、第2実施形態における競技用剣の長手方向の長さは、約50cm乃至約150cm程度である。この第2実施形態の構成は、前述したように刀身部Aのみから構成されるものであり、長手方向の両端は同一形状で、共にキャップ材4が装着され、キャップ材4にも被覆材3にて被覆される〔図3(C),(D)参照〕。特に、競技用剣を槍,棒,薙刀等の模擬武具とした場合には、先端及び後端の区別がないので、長手方向の両端とも先端キャップ材41が装着されればよい〔図3(C)参照〕。
【0022】
さらに、この第2実施形態の競技用剣では、剣術の模擬刀剣,模擬木刀,模擬竹刀として使用されるだけではなく槍,棒,薙刀等の擬似的武具として使用され、槍術,棒術,薙刀術等の模擬競技を行うこともできる。競技用剣の長手方向の長さは、剣術であれば、刀剣や竹刀と略同等長さに形成される〔図3(A)参照〕。また、槍術,棒術又は薙刀術として使用する場合には、実際の槍,棒,長刀等の長さと同等長さ形成される。また、第2実施形態では、競技用剣を短刀等の武具として使用することも可能であり、この場合には実際の短刀の長さと同等の長さに形成される〔図3(B)参照〕。
【0023】
本発明の競技用剣を使用して、スポーツ,娯楽としての剣術の試合及び練習を行う場合に、相手側に攻撃をしかけて、切り込んだり又は打ち込んだりするときや、或は相手側から攻撃を受けたときに、刀身部Aによる打撃箇所は、図4に示すように、緩衝材2により衝撃を吸収しつつ凹むが、同時に刀身部Aには全体に亘って中空管状の心部材1が備わっているので、競技者6には打撃を受けた場合に適度な刺激を有する感触が与えられる〔図4(A),(B)参照〕。つまり、痛みを伴わず打撃を与えた感触及び受けた感触が競技者6にそれぞれに伝わり、竹刀,木刀等を使用する場合と略同様の雰囲気を味わうことができる。
【符号の説明】
【0024】
A…刀身部、B…グリップ部、1…心部材、2…緩衝材、3…被覆材、
4…キャップ材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空管状の心部材と、該心部材の先端を塞ぐキャップ材と、軟質且つ弾性を有する緩衝材と、薄生地シート状の被覆材とからなり、前記心部材に前記緩衝材が巻付けられて包囲されると共に、該緩衝材に前記被覆材が巻き付けられて包囲被覆された刀身部と、前記心部材の長手方向の端部が前記被覆材のみにて包囲被覆されたグリップとを有してなることを特徴とする競技用剣。
【請求項2】
請求項1において、前記刀身部先端側に位置するキャップ材は半球形状としてなることを特徴とする競技用剣。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記キャップ材は軟質且つ弾性を有する材質としてなることを特徴とする競技用剣。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記キャップ材は前記被覆材にて被覆されてなることを特徴とする競技用剣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75743(P2012−75743A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224958(P2010−224958)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(505442679)