説明

竹炭シート及びそれを用いた掛軸

【課題】 防虫・防臭効果に優れる竹炭シートとそれを用いた掛軸を提供する。
【解決手段】 裂として和紙を用い、これを墨汁に浸漬させて均一に含浸させ、自然乾燥する。次に、竹炭粉を5g/mと布糊を3g/mを混合し、これを和紙の片面全面に付着する。次に、竹炭粉の上面に膠を厚めに塗装し、その上面にインクジェットプリンタで模様を形成する。次に、模様の上面に膠を先の膠と同量塗装し、中回し2を製作する。そして、この中回し2に絵柄が形成された金箔からなる本紙3を貼着して求める掛軸1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内で長期間に渡って使用する用途に好適な竹炭シートとそれを用いた掛軸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掛軸の裂(きれ)としては和紙や織物等が用いられているが、湿気や乾燥に弱く、長期に渡って保管する場合は裂に虫食いの被害を受けたり嫌な臭いがしたりすることがあった。また、防虫剤や防臭剤を使用すると軸先を傷めることがあった。このように、掛軸の品質を長期に渡って保持することが難しかった。
【0003】
これに対し、裂の表面に透明の塩化ビニル樹脂やアクリル樹脂をコート処理した掛軸が特許文献1で提案されている。この技術によれば、裂を湿気や乾燥から保護して書画の美しさを長期に渡って保持できるというものである。しかし、前記技術はコート処理により光沢が与えられて見掛けや風合いが変化してしまうことがあり、防虫・防臭効果については依然満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、防虫・防臭効果に優れる竹炭シートとそれを用いた掛軸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 吸水性を有するシート基材に墨汁を含浸させ、同シート基材の片面又は両面に竹炭粉を糊材で付着した、竹炭シート
2) シート基材として和紙又は織物を用い、糊材として布海苔を原料とした布糊を用いた、前記1)記載の竹炭シート
3) 掛軸の裂に前記1)又は2)記載の竹炭シートを用い、同竹炭シートの上面に膠を塗装してその上に模様を形成し、書画が形成された本紙を前記竹炭シートの上面に貼着した、掛軸
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、防虫・防臭効果に優れる竹炭粉をシート基材に付着したから、優れた防虫・防臭性能を有するシートを提供できる。このシート基材を掛軸の裂に用いると、絵柄は竹炭粉の上面に形成するから見掛けや風合いを損ねることなく防虫・防臭性能を付与でき、虫食いの被害を受けたり嫌な臭いがすることなく長期に渡って品質を保持できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のシート基材としては、和紙・絹等の織物など吸水性に優れるものが用いられる。このシート基材の全面に墨汁を含浸する。墨汁は竹炭粉の付着性を向上させるためのもので、松煙墨や油煙墨を原料としたものが用いられる。墨汁の含浸方法としては、墨汁にシート基材を直接浸漬させる方法、スプレー・刷毛・ローラー等で片面又は両面に塗布する方法などがあり、含浸後は自然乾燥させるかドライヤー等で熱風乾燥する。又、本発明のシートの表面につづれを被覆することもある。
【0008】
墨汁を含浸させたシート基材の片面又は両面には竹炭粉を糊材で付着する。竹炭粉の付着量としては3〜7g/mで実用的で、3g/m以下では防虫・防臭効果が不十分で、7g/m以上は過剰である。糊材としては、布海苔を原料とした布糊など弱い接着力を示すものが用いられ、塗布量としては1〜5g/mが実用的で、1g/m以下では不足して竹炭粉が取れ易くなり、5g/m以上では過剰となる。
【0009】
本発明の竹炭シートを掛軸の裂に用いる場合は、竹炭シートの上面に膠を塗装する。膠は絵柄を形成するための画材の付着性を向上させるためのものである。塗布量としてはなるべく濃く塗布するのが望ましいが、あまり過剰に塗布すると裂が肉厚となって巻取りが困難となる。この塗装された膠の上面に所望の絵柄を形成する。絵柄は全面又は一部にインクジェットプリンタ等を用いて形成する。形成した絵柄の上面には今一度膠を塗装する。この膠は画材の剥落防止と耐久性向上のために塗装されるものである。塗布量は先の膠と同量でよい。
【0010】
このようにして得られた裂の表面に本紙を貼着する。本紙は従来から使用されている和紙・絹・その他金箔等が用いられ、所望の絵柄や書画が形成される。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1,2に示す実施例は、本発明の竹炭シートを裂として用いた掛軸の例である。図1は実施例の掛軸の正面図、図2は実施例の掛軸の断面図である。図中、1は掛軸、2は中回し、2aは和紙、2bは竹炭粉、2cは膠、2dは模様、3は本紙、4は軸先、5は紐である。
【0012】
本実施例では、裂として和紙2aを用い、これを墨汁に浸漬させて均一に含浸させ、自然乾燥した。次に、竹炭粉2bを5g/mと布糊を3g/mを混合し、これを和紙2aの片面全面に付着した。次に、竹炭粉2bの上面に膠2cを厚めに塗装し、その上面にインクジェットプリンタで模様2dを形成した。次に、模様2dの上面に膠2cを先の膠2cと同量塗装し、中回し2を製作した。そして、この中回し2に曼陀羅の絵が形成された金箔からなる本紙3を貼着して求める掛軸1を得た。
【0013】
以上説明したように、本実施例によれば防虫・防臭効果に優れる竹炭粉2bを和紙2aに付着したから、優れた防虫・防臭性能を有する裂となった。これにより、模様2dは竹炭粉2bの上面に形成するから見掛けや風合いを損ねることなく防虫・防臭性能が付与され、虫食いの被害を受けたり嫌な臭いがすることなく長期に渡って品質を保持できるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の竹炭シートは、掛軸の裂、壁紙など長期に渡って室内に装飾又は保管する用途に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例の掛軸の正面図である。
【図2】実施例の掛軸の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 掛軸
2 中回し
2a 和紙
2b 竹炭粉
2c 膠
2d 模様
3 本紙
4 軸先
5 紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有するシート基材に墨汁を含浸させ、同シート基材の片面又は両面に竹炭粉を糊材で付着した、竹炭シート。
【請求項2】
シート基材として和紙又は織物を用い、糊材として布海苔を原料とした布糊を用いた、請求項1記載の竹炭シート。
【請求項3】
掛軸の裂に請求項1又は2記載の竹炭シートを用い、同竹炭シートの上面に膠を塗装してその上に模様を形成し、書画が形成された本紙を前記竹炭シートの上面に貼着した、掛軸。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−95606(P2009−95606A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272474(P2007−272474)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(507348654)株式会社メイワ (1)
【Fターム(参考)】