説明

竹粉を含有するプリント層を有する布製品

【課題】 プリント層を有していても吸放湿性に優れ、抗菌性および紫外線遮蔽特性にも優れた布製品を提供すること。
【解決手段】 表皮部が除去された竹の幹材を破砕してなる竹粉を含有するプリント層を有する布製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は竹粉含有プリント層を有する布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、竹材の抗菌性などの機能を有効に発揮し、かつ、高い吸放湿性を有した布製品が求められている。
【0003】
竹材には抗菌性があることは一般に知られている。例えば、抗菌、消臭および防ダニを目的として、表皮および表皮に近い甘皮部分を主成分とする竹微粉末を含有する繊維用接着剤を用いてボンディング処理を行う技術が知られている(特許文献1)。竹材の表皮および表皮に近い甘皮部分、いわゆる竹稈の外層は、竹稈の肉部分、いわゆる中心柱に較べて繊管束鞘が細かく緻密で比重が大きく、有効成分率が比較的高いものの珪酸成分が多く含み、硬く超微粉末になり易く、吸放湿性も約1/2〜1/3とかなり低い。
【0004】
一方、竹材の粉末はそれ自体繊維に結合あるいは接着しないので、各種の合成樹脂類または合成ゴムラテックス類を結合材として併用して実用消費性を付与するが、これら合成樹脂類または合成ゴムラテックス類には吸放湿性能が殆んどない。
【0005】
抗菌性など機能性は高いものの、もともと比較的吸放湿性の低い表皮および表皮に近い甘皮部分を主成分とする竹材の微粉末を、吸放湿性能が殆んどない結合材で固着するこれまでの竹微粉末加工製品は、微粉末が結合材に包裹埋没され、かつ、吸放湿性が悪く、期待される有効な機能効果は事実上得られなかった。生地表面を覆われる為、吸放湿性が悪いと蒸れ易く、着用時の不快感があった。
【特許文献1】特許第3200689号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プリント層を有していても吸放湿性に優れ、抗菌性および紫外線遮蔽特性にも優れた布製品を提供することを目的とする。
本発明は、上記したこれまでの竹材の微粉末処理製品の欠けている点を補い、さらに、竹材が保有する数々の機能を有効、かつ経済的、および審美的に発揮した竹粉含有プリント層を有する布製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表皮部が除去された竹の竹稈肉部を破砕してなる竹粉を含有するプリント層を有する布製品に関する。
上記目的を達成するために、本発明にかかる機能性プリント布帛は、竹稈の肉部分、いわゆる柔細胞からなる竹稈の中心柱を破砕してなる比較的粗大な竹粉を、着色材を含む固着媒体で色模様として布帛に印捺展開したプリント層を有する布製品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の布製品は、プリント層を有する部分であっても、吸放湿性に優れ、さらには抗菌性および紫外線遮蔽特性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の布製品は、竹粉を含有するプリント層を有してなる。
【0010】
本発明においてプリント層が形成される布製品は、Tシャツ、パンツ、カジュアルウェアー、パジャマ等の衣類、バック、シーツ、布団側地、カーテン、椅子張り等のインテリア類の形態に加工された加工品だけでなく、加工前の生地の形態を有する単なる布も包含する概念で用いるものとする(以下、単に生地ということがある)。布製品を構成する素材繊維は特に制限されず、例えば、綿繊維、その他麻、竹などの天然繊維、レーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステルなどの化学繊維、およびそれらの混合繊維であってよい。
【0011】
本発明に用いる竹粉は、竹稈の肉部分、いわゆる柔細胞からなる竹稈の中心柱を破砕してなる比較的粗大な竹粉からなるものである。竹材の表皮および表皮に近い甘皮部分、いわゆる竹稈の外層の微粉末は、本発明の期待する効果を低下する因子となるのでできるだけ除去することが本発明の目的に叶い、好ましい。
【0012】
竹粉は粒状から針状に亘る様々な形状を呈する。粒状粉砕物の平均粒径は吸放湿性の観点から粒径30μm〜80μmのものを50個数%以上、特に60個数%以上含むことが好ましい。この場合長軸方向の長さが60μm〜180μmの針状砕片が2ないし3個数%混在する場合があるが、これら針状片は本発明の目的とする吸放湿性のさらなる向上に寄与するもので、とくに排除はしない。そのような粒度分布を有する竹粉の好ましい平均粒径は35〜70μm、特に40〜60μmである。
【0013】
竹粉の粒度分布および平均粒径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−700(株)堀場製作所社製によって測定可能である。粒径とは、竹粉粒子の長軸方向における最大長さ(寸法)を意味するものとする。粒度分布および平均粒径は上記装置によって測定されなければならないというわけではなく、上記装置と同様の原理に従って測定可能な装置であれば、いかなる装置によって測定されてもよい。
【0014】
竹粉の調製方法は、表皮部が除去された竹の竹稈肉部を破砕・粉砕する限り特に制限されることなく、例えば、特開2003−71315号公報に記載の方法を採用可能である。すなわち、予め自然乾燥されて所定長さに切断された竹の幹材の表面をサンドペーパによって研削して表皮部を除去する。表皮部は竹の最表面から約1mm深さの表層部分を意味するものとし、いわゆる甘皮部分も含まれる)。次いで、表皮部が除去された竹の竹稈肉部を、カッター装置によって、周方向略等間隔に複数に分割された板状竹材に加工する。その後、板状竹材を、カッターを備えた破砕装置、およびスクリーンプレートによるすりこぎ作用を利用する破砕装置によって段階的に破砕し、所定寸法の竹粉を得る。本発明において、表皮部は必ずしも完全に除去されなければならないというわけではなく、本発明の目的が達成される限り、竹粉は表皮部を微量だけ含有してもよい。
【0015】
本発明において使用される竹はいかなる種類のものであってよく、例えば、孟宗竹、真竹、淡竹、雌竹等が使用可能である。好ましくは、比較的肉厚な竹稈を有する5年生以下の竹材、例えば、3年生の孟宗竹などが本発明の効果をより発揮することができる。
【0016】
竹粉砕片および着色材を含む固着剤で、色模様として布帛にプリント層を形成するには孔版捺染法、具体的にはロータリースクリーン捺染機あるいは、フラットスクリーン捺染機で竹粉が印捺スクリーンを透過するメッシュのスクリーン型を用いて常用手段で捺染加工する。
【0017】
プリント層の形成に際して、詳しくは、まず、少なくともバインダー、糊剤、前記竹粉および溶媒を混合してプリント糊を調製する。プリント糊には、通常、さらに色材として顔料または/および染料が混合される。
【0018】
プリント糊全量に対する竹粉の含有割合は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は、乾燥後におけるプリント層全量に対する竹粉の含有割合が後述の範囲内になるような値であり、例えば、1〜300g/L、特に5〜100g/Lが好ましい。
【0019】
バインダー、糊剤、溶媒、顔料および染料はプリント生地の分野で従来より採用されているものが使用可能である。
バインダーとしては、例えば、アクリルエマルジョン系、ポリウレタン系などの合成樹脂類や天然ゴム、合成ゴムラテックス類等が使用可能である。
【0020】
糊剤としては、例えば、天然糊剤、合成糊剤、エマルジョン糊剤等が使用可能である。
【0021】
溶媒は、バインダーを溶解可能なものであれば、特に制限されず、通常は水が使用される。
【0022】
色材としては通常、有機または無機顔料が用いられるが、必要に応じて反応染料、酸性染料、直接染料などアニオン系染料、およびカチオン染料、あるいは分散染料が用いられる。
【0023】
プリント糊を調製した後は、布等の生地上に、フラットスクリーン法、ロータリースクリーン法等によりプリント層を形成する。
【0024】
生地には予め、下晒しを行っておくことが好ましい。下晒しとは、セルロース繊維に含まれる不純物や経糸糊剤の除去に加えて酸化・還元剤による漂白工程のことである。
【0025】
生地上にプリント層を形成した後は、プリント層を有する生地をベーキングして竹粉および顔料等を生地に対して固着させる。ベーキング温度は通常150〜160℃が好適である。
【0026】
ベーキングを行った後は、必要な場合プリント層を有する生地をスチーミングして染料を染着させる。スチーミング条件は温度100〜110℃が好適である。
【0027】
スチーミングを行った後は、プリント層を有する生地を水洗し、乾燥する。水洗後、乾燥に先立って、柔軟仕上げすることが好ましい。
【0028】
乾燥後におけるプリント層全量に対する竹粉の含有割合は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は、0.1〜30g/m、特に0.5〜10g/mが好ましい。
【実施例】
【0029】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
以下、本発明を具体例に基づき説明する。
表1の実施例1〜3は本発明に基づく実施処方例であり、比較例1〜3は本発明の有意性を査証する比較処方例である。
【0030】
表1の竹粉Aは3年生孟宗竹の竹稈肉部分を破砕してなる本発明にかかる竹粉である。粒度分布は30ないし80μmのものが60個数%あり、平均粒度は50μmであった。
【0031】
表1の竹粉Bは同じ3年生孟宗竹の表皮および表皮に近い部分のみを破砕してなる比較竹粉である。粒度分布は10ないし50μmのものが80個数%あり、平均粒度は10μmであった。
【0032】
表1のO/Wレデューサーは非イオン系乳化剤3%を含むターペンと水との比率が40:60の常用の水性エマルジョン台糊(印捺媒体)である。
【0033】
表1のR/Wフィクサー756K−1(大日本インキ(株)製)は竹粉および顔料を繊維生地に結合するために常用されている水性の非イオン系アクリル樹脂エマルジョンである。実用消費性能に必要かつ十分な量は顔料および竹粉量の1.5〜2.0倍濃度である。
【0034】
表1のR/WブルーFF2R(大日本インキ(株)製)は色と模様のプリント製品を得るために常用されている水性の顔料色材の一つである。
【0035】
竹粉を含む印捺色糊は上記のレジューサーに所定量の竹粉、顔料およびフィクサーをミキサーで攪拌しながら添加し、最後に僅かな水を加え粘度を調整して捺染に供した。得られた印捺色糊の見掛け粘度は4000ないし5000mPa・s(東洋精機(株)製 回転粘度計R=4 60rpm)であった。
【0036】
綿100%205本ブロード精練、漂白生地に上記の竹粉を含む印捺色糊を、常用のフラットスクリーン捺染機を用い全面印捺したのち、155℃×2分のベーキング処理を施し、水洗、乾燥して、本発明を査証するための機能性評価試験に供する竹粉を含有するプリント層を有する布製品(プリント生地)を作成した。なお、用いた印捺スクリーンは800メッシュで、オープニング247μm、開口率60%、厚さ115μm、透過容積69cc/mであった。
【0037】
なお比較例2においてはプリント層を形成することなく、生地をそのまま後述の評価に供した。
【0038】
【表1】

【0039】
(評価)
得られたプリント生地に対して以下の項目について評価を行い、結果を表2に示した。
・竹粉付着量
プリント処理前の生地重量とプリント処理、乾燥後の生地重量を測定し、生地全体の薬剤付着量を算出し、竹粉の配合割合より生地上の竹粉付着量を算出した。
【0040】
・抗菌性
試験方法:JIS L 1092(繊維製品の抗菌試験方法)に準じて行った。
試験菌種:黄色ブドウ球菌
洗濯方法:JIS L 0217 103法に基づく洗濯を所定回数行った。洗剤は抗菌性評価に影響を与えないJAFET標準洗剤(社団法人繊維評価技術協議会指定洗剤)を用いた。
判断方法:社団法人繊維評価技術協議会の定める基準では抗菌防臭加工繊維製品の場合は静菌活性値が2.2以上であれば効果ありと判定される。
【0041】
・紫外線遮蔽特性
平均紫外線遮蔽率とUPF値に基づいて評価を行った。透過率の測定データを図1に示す。
平均紫外線遮蔽率は分光光度計を用いて波長280〜400nmの範囲で各波長の光の遮蔽する割合を計測し、その波長範囲での遮蔽率の平均値を算出したものである。紫外線をどれだけ遮蔽しているかを表す値である。大きい値ほど好ましい。
UPF値はオーストラリア・ニュージーランド規格(AS/NZS4399)で定められた方法によって測定・算出された値である。波長290〜400nmの遮蔽率を5nm間隔で測定し、各波長に対する皮膚の感度と日光の相対エネルギーを勘案して算出される値である。大きい値ほど好ましい。
【0042】
・吸放湿性
4.5cm×4.5cmの試験布をあらかじめ110℃で2時間乾燥後させ重量を測定し絶乾重量(W)とした。次に高湿度条件下である温度30℃、湿度90%に調整した恒温恒湿機内に入れ、90分後に重量(WH90)を測定した。引き続き標準条件下である温度20℃、湿度65%に調整した恒温恒湿機内に入れ、90分後に重量(WS90)を測定した。次式により高湿度条件下での水分率、標準条件下での水分率を算出した。
高湿度条件下での水分率=((WH90−W)/W)×100
標準条件下での水分率=((WS90−W)/W)×100
【0043】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例および比較例における透過率の測定データを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹材の竹稈肉部を破砕してなる竹粉を含有するプリント層を有する布製品。


【図1】
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【公開番号】特開2006−327977(P2006−327977A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152713(P2005−152713)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(595149715)日吉染業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】