説明

竿掛け装置

【課題】 釣り竿の保持が確実である、あるいは、釣り竿の取り付け・取り外しが容易である、釣り竿の操作性が良好である等の利点を有する竿掛け装置を提供する。
【解決手段】 竿掛け装置10の本体20上に釣り竿Xを寝かせて掛けた状態では、竿の先の部分が竿受け部40で受け止められるとともに、竿のグリップ部X2が竿保持部50に保持される。このとき、竿保持部50の左右ロックレバー60L、60R間は閉状態となって、両レバーが竿グリップ部X2の上面を押さえている。この状態から竿Xを立てて外す際には、各ロックレバー60L、60Rが竿X上面に押されて回動し、左右ロックレバー60L、60R間が開状態となる。ロックレバー60L、60Rが回動して開く過程において、横に寝ている竿Xをある角度θまで立てる間は、両レバーを開く方向のモーメントが生じず、この角度θを越えて釣り竿を立てると、両レバーを開く方向のモーメントが生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舟釣りをするときに船べり等に釣り竿を保持する竿掛け装置に関する。特には、釣り竿の保持が確実である、あるいは、釣り竿の取り付け・取り外しが容易である、釣り竿の操作性が良好である等の利点を有する竿掛け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2を例に採って、背景技術を説明する。
特許文献1(実開平6−5476号公報)の舟釣り用竿受は、図13(A)に示すように、船べり100に取り付けられるコ字状のクランプ110を備えている。このクランプ110の上部には、竿受け部111と元受け部115とがそれぞれ回動可能に取り付けられている。竿受け部111は、支持杆112とその下り止め部113を備えており、釣り竿基部の先端側を支持する。元受け部115は、係止杆116とその上り止め部(図示されず)を備え、釣り竿基部の基端側を係止する。
この舟釣り用竿受は、船が揺れたときや、大型の魚が掛かったとき、あるいは、他人の釣り竿が誤ってぶつかったとき等に、釣り竿が竿受から外れ易く、釣り竿が海中に落ち易いという問題がある。
【0003】
特許文献2(特開平8−172993号公報)の舟釣り用竿受具は、図13(B)に示すように、竿Xを支持する竿受本体121を備えている。この竿受本体121には、取付けベース123が回動可能に取り付けられている。この取付けベース123には、連結突部(図示されず)を介して竿取付片127が保持される。この竿取付片127は、竿Xに固定される。
この舟釣り用竿受具は、竿Xに竿取付片127を固定するため、竿全体の重量が増して操作性が悪くなり、釣り味が大きく損なわれるという問題もある。
【0004】
【特許文献1】実開平6−5476号公報
【特許文献2】特開平8−172993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、釣行時の釣り竿の保持が確実であり、それでいて釣り竿の取り付け・取り外しが容易な竿掛け装置が求められている。さらに、釣り竿の操作性を損ねることなく、釣り味を大切にできる竿掛け装置が求められられている。
【0006】
本発明は、このような要請に応えるためになされたものであって、釣り竿の保持が確実である、あるいは、釣り竿の取り付け・取り外しが容易である、釣り竿の操作性が良好である等の利点を有する竿掛け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の竿掛け装置は、釣り竿のグリップ部を保持する竿保持部と、同グリップ部の先の竿の部分を受ける竿受け部と、これら両部を相互にある離隔した位置にくるように支える本体と、該本体を船べり等に固定するベースと、を備える竿掛け装置であって、 前記竿保持部が、 釣り竿を上に立てた時の長手方向(上下方向)にほぼ沿う軸芯を有する一対のレバー軸と、 該レバー軸の回りに回動する一対のロックレバーであって、該一対のロックレバーの間を竿のグリップ部が通過可能な開状態と通過不能な閉状態との間で回動可能なロックレバーと、を有し、 該ロックレバーが、竿のグリップ部を保持する際には竿グリップ部の上面を押さえ、竿を立てて外す際には竿上面に押されて開くものであり、 該ロックレバーの竿グリップ部に当接する面の、釣り竿を横に寝かせて掛けた状態からある角度θまで立てる間に当たる部分(寝竿当接面)の形状が、前記ロックレバーを開く方向のモーメントを生じさせないように形成されており、該角度θを越えて竿を立てたときに当たる部分(立竿当接面)の形状が、前記ロックレバーを開く方向のモーメントを生じさせるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
この竿掛け装置を用いる際には、船べり等にベースを取り付け、本体を定位置に固定しておく。竿掛け装置に釣り竿を寝かせて掛けた状態では、竿の先の部分が竿受け部で受け止められるとともに、竿のグリップ部が竿保持部に保持される。このとき、竿保持部の一対のロックレバー間は閉状態となって、両ロックレバーが竿グリップ部の上面を押さえている。この状態から竿を立てて外す際には、各ロックレバーが竿上面に押されて回動し、一対のロックレバー間が開状態となる。ここで、ロックレバーが回動して開く過程において、横に寝ている釣り竿をある角度θまで立てる間は、ロックレバーを開く方向のモーメントが生じず、この角度θを越えて釣り竿を立てると、ロックレバーを開く方向のモーメントが生じる。このため、釣り竿がある角度θ以下で寝ている状態、例えば船のローリング(横揺れ)が伝わって竿先が飛び上がったような場合にも、釣り竿が竿掛け装置から外れない。一方、角度θを越えて釣り竿を立てるときは、モーメントによりロックレバーがスムーズに回動し、竿を竿掛け装置から外せる。したがって、例えば魚がかかったときの“あわせ”の操作等、釣り竿を急に立てて竿掛け装置から外す操作をスムーズに行える。
なお、前述の角度θは、竿を寝かせた状態からグリップ部を基点として40〜45°程度が好ましい。
【0009】
本発明の竿掛け装置においては、前記寝竿当接面が、実質的に球面であり、その球面の中心が前記レバー軸の軸芯上又はその竿先側にあるものとすることができる。なお、「竿先側」とは竿の先端方向のことであり、竿掛け装置で言えば竿受け部側のことである。
球面(寝竿当接面)の中心がレバー軸の軸芯上にある場合は、球面の中心とレバー軸の軸芯との間の距離がゼロとなるので、モーメントがゼロになる。球面の中心がレバー軸の先にある場合は、ロックレバーに付与されるモーメントが負の値(すなわちロックレバーを閉じる方向に回動させるモーメントが付与される)となる。いずれの場合も、ロックレバーを開く方向のモーメントが生じないので、竿グリップ部がロックレバーでしっかりと保持される。
【0010】
本発明の竿掛け装置においては、前記レバー軸が、前記本体に対して両持で支持されているものとすることができる。
この場合、レバー軸が本体に対して高剛性・高強度に支持されるので、レバー軸の回りで回動するロックレバーにぶれ等が生じ難くなり、ロックレバーのスムーズな回動を実現できる。また、頑丈で耐久性も高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、釣り竿の保持が確実である、あるいは、釣り竿の取り付け・取り外しが容易である、釣り竿の操作性が良好である等の利点を有する竿掛け装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態において、先・元、上・下、左・右とは、特に断らない限り、各図に矢印で示す方向を指すものとする。先側とは竿掛け装置に掛けた竿の先端側のことであり、元側とは竿掛け装置に掛けた竿のグリップ部側のことである。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る竿掛け装置の全体構成を示す側面図である。
図2は、図1の竿掛け装置の本体にベースを収納した状態を示す側面図である。
図3は、図1の竿掛け装置を先側から見た正面図である。
図4は、図1の竿掛け装置を元側から見た正面図である。
図5は、図4の断面図である。
図6は、図1の竿掛け装置を上側から見た平面図である。
図7は、図6においてロックレバーが開いた状態を示す図である。
図8は、図6の一部断面図である。
図9は、本実施の形態に係る竿掛け装置の左側ロックレバーを示す図である。(A)は側面図であり、(B)は(A)のα−α線断面図であり、(C)は正面図であり、(D)は斜視図である。
【0014】
図10は、本実施の形態に係る竿掛け装置に釣り竿をセットする際のロックレバーの作用を説明するための図である。(A)は本体付近の側面図であり、(B)は竿保持部を元側から見た簡略正面図であり、(C)はロックレバー付近の平面図である。
図11は、本実施の形態に係る竿掛け装置のロックレバーを手動で開く際の作用を説明するための図である。(A)は竿保持部を元側から見た簡略正面図であり、(B)はロックレバー付近の平面図である。
図12は、本実施の形態に係る竿掛け装置にセットした釣り竿を立てる際のロックレバーの作用を説明するための図である。(A)は本体付近の側面図であり、(B)は竿保持部を元側から見た簡略正面図であり、(C)はロックレバー付近の平面図である。
【0015】
図1〜図8に示すように、竿掛け装置10は、本体20を備えている。この本体20は、左右一対のほぼコ字板状をした本体部材(左部材21、右部材22、図3参照)を備えている。各本体部材21(ここでは左部材21について説明するが、右部材22も同様の構造を有する。()内の符号は、右部材22の対応部位を指す。)は、図1に示すように、先側立上り部21T(22T)と、元側立上り部21B(22B)と、これらを繋ぐ水平部21H(22H)とを有する。図3〜図8に示すように、左部材21と右部材22は、所定間隔離れて対向している。左右部材21、22の間の元側下端部には、ベース30が回動可能に挟まれている(図2、図5等参照)。本竿掛け装置10は、大きく分けて、これら本体20及びベース30で構成される。
【0016】
まず、本体20関係の構成について説明する。
本体20の先側には、釣り竿の先側部分を受ける竿受け部40が配置されており、本体20の元側には、釣り竿のグリップ部を保持する竿保持部50が配置されている。
【0017】
竿受け部40は、左右部材21、22の先側立上り部21T、22Tで構成される。図1〜図3に示すように、各先側立上り部21T、22Tは、下側から上側に向けて幅広となっている(図 1及び図2参照)とともに、左右方向には上側に向けて互いに離れるように湾曲しており(図3参照)、左右で二股状に構成されている。竿受け部40は、二股内側のスペース41内で、竿の先側部分を受け止めるようになっている(図12(A)参照)。
【0018】
竿保持部50は、左右部材21、22の元側立上り部21B、22Bを基本として構成される。図6〜図8に示すように、各元側立上り部21B、22Bは、各水平部21H、22Hよりも外幅が広く、左右方向に互いに離れるように湾曲している。元側立上り部21B、22Bのそれぞれには、図1に示すように、切欠き基部53aと切欠き上片部53cとの間に切欠き部53bが形成されている。左右それぞれの切欠き部53b内側には、レバー軸51L(51R)で支持されたロックレバー60L(60R)が取り付けられている。
【0019】
特に図1にわかり易く示すように、レバー軸51Lは、切欠き部53bの上下部分(切欠き上片部53cと切欠き基部53a)に両持で支持されている。このような両持支持により、レバー軸51Lが、本体20の元側立上り部21Bに対して高剛性・高強度に支持されるので、レバー軸51Lの回りで回動するロックレバー60Lにぶれ等が生じ難くなり、ロックレバー60Lのスムーズな回動を実現できる。また、頑丈で耐久性も向上できる。レバー軸51Lの軸芯Sは、ほぼ上下方向に沿っているが、上端が元側に向けて若干傾いている。なお、右部材22のレバー軸51R(図5参照)の周辺も同様の構成を有する。
【0020】
図3〜図8に示すように、ロックレバー60L、60Rは、左右対称に配置されており、両レバー60L、60R間を釣り竿Xのグリップ部X2(図10、図12参照)が通過可能な開状態(図7参照)と通過不能な閉状態(特に図6参照)との間で、レバー軸51L、51Rの回りに回動可能である。後述するように、両ロックレバー60L、60Rは、釣り竿のグリップ部を保持する際には閉状態でグリップ部の上面を押さえ、竿を立てて外す際には竿上面に押されて開状態となる。開状態においては、図7に示すように、各ロックレバー60L、60Rがレバー軸51L、51Rの回りにそれぞれ90°回動して観音開きのように開く。左右ロックレバー60L、60Rは、レバー軸51L、51Rの外側に嵌められたバネ52L、52R(図8参照)により、通常時(釣り竿が通過する以外の時)閉じる方向に付勢されている。
【0021】
図9には、左側ロックレバー60Lの構成が示されている。右側ロックレバー60Rは、左側ロックレバー60Lと左右対称な構成である。図9(B)、(D)に示すように、ロックレバー60Lの基部61には、上下方向に貫通する孔63が形成されている。この孔63内には、前述のレバー軸51が通される。図9(B)に示すように、ロックレバー60Lの下面側には、内凹部65が形成されている。図5及び図8に示すように、この内凹部65内には、前述のバネ52が収容される。内凹部65の端面65aには、バネ52の一方の引出端が当たって係止されている。なお、図8に示すように、バネ52の他方の引出端は、元側立上り部21B、22Bの突部57に当たっている。
【0022】
図9(A)に示すように、ロックレバー60Lの下面側には、開方向ストッパー67、閉方向ストッパー69が形成されている。これらストッパー67、69は、ロックレバーの回動限界位置を規定するためのものである(図7参照)。開方向ストッパー67は、ロックレバーが開いたとき、元側立上り部21B、22Bの突部57(図1、図8等参照)に当たる。閉方向ストッパー69は、ロックレバーが閉じたとき、元側立上り部21B、22Bの切欠き面59(図1、図4等参照)に当たる。
【0023】
図9(D)にわかり易く示すように、ロックレバー60Lには、寝竿当接球面71、立竿当接面73、斜突曲面75がそれぞれ形成されている。
寝竿当接球面71は、ロックレバー60Lの基部61の内側(釣り竿のグリップ部が通る通路側)下部に形成されている。この寝竿当接球面71を含むの球体の中心は、レバー軸51の軸芯S上(ロックレバー60Lの孔63の中心線上)にある(図12(B)、(C)参照)か、又は、同軸芯Sよりも先側にある。寝竿当接球面71は、後に図12を参照しつつ詳述するが、本体20上で横に寝かせた釣り竿をある角度θまで立てる間、釣り竿のグリップ部外面に当たる。寝竿当接球面71の球面形状は、釣り竿のグリップ部外面が当たっても、ロックレバーを開く方向のモーメントを生じさせないようになっている。
【0024】
立竿当接面73は、ロックレバー60Lの基部61の内側において、先側を向いた面として形成されている。立竿当接面73には、後に寝竿当接球面71の作用とともに詳述するが、ある角度θを越えて釣り竿を立てたときに、竿グリップ部上面が当たる。立竿当接面73の形状は、竿上面が当たった後、ロックレバーを開く方向のモーメントを生じさせるような形状になっている。
【0025】
斜突曲面75は、ロックレバー60Lの内側において、元側上部から先側下部に向けて滑らかに連続する曲面状に形成されている。図3及び図4に示すように、左右のロックレバー60L、60Rが閉状態となっているとき、これら両者の斜突曲面75は、元側上部から先側下部に向けて滑らかに連続する半円形突状で上側が開いたV字スペースをなす。斜突曲面75は、後に図10を参照しつつ詳述するが、釣り竿が上側から押し付けられたとき、左右のロックレバー60L、60Rに最大の回転モーメントを発生させるようになっている。
【0026】
図1、図3及び図6に示すように、竿保持部50において、左右部材21、22の元側立上り部21B、22Bの先側端面には、それぞれ竿押上部材係止部77L、77Rが取り付けられている。ここでいう竿押上部材とは、例えば輪ゴム等である。両竿押上部材係止部77L、77R間に輪ゴム等を架け渡すと、竿掛け装置10に横に寝かせて釣り竿を保持させたとき、竿グリップ部が輪ゴムによって押さえられ、釣り竿の上下の振動を減少させることができる。
【0027】
次に、ベース30の構成について説明する。
ベース30は、本体20を船べり等に固定するためのものである。図5にわかり易く示すように、ベース30基端は、本体20の元側下端部において、左右部材21、22の間に回動可能に挟まれている。ベース30と左右部材21、22は、シャフト31で繋がれている。このシャフト31は、左端にナット32が螺合しており、右端にクランプ31aが取り付けられている。クランプ31aを回してシャフト31を締め付けると、本体20に対してベース30が固定され、クランプ31aを回してシャフト31を緩めると、本体20に対してベース30が回動可能となる。竿掛け装置10を使用しないときは、図2に示すように、ベース30を回動して本体20の左右部材間に収納し、全体をコンパクトにできるので、持ち運びに便利である。
【0028】
図4〜図8に示すように、左右部材21、22とベース30との当接面には、互いに噛み合い可能な本体凹凸部24、ベース凹凸部34が形成されている。図10(A)及び図12(A)に示すように、ベース凹凸部34は、シャフト31の軸芯を中心として円形放射状に形成されており、本体凹凸部24も、これに噛み合い可能な円形放射状に形成されている。ベース30を回動させてこれら凹凸部24、34の噛み合わせ位置を変えることで、ベース30に対する本体20の角度を変えることができ、適切な竿掛け角度を設定することができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、ベース30の先端30aは鉤状に折れ曲がっている。この先端30aには、クランプボルト35が螺進可能に取り付けられている。クランプボルト35の図1における下端には、クランプ35aが取り付けられており、クランプボルト35の図1における上端には、締皿35bが形成されている。さらに、図10(A)及び図12(A)にわかり易く示すように、ベース30基端側には、凹凸辺37が形成されている。竿掛け装置10を船べり等に取り付ける際には、締皿35bと凹凸辺37との間に船べり等を挟み込んだ後、クランプ35aでクランプボルト35を回して締め付ける。
【0030】
次に、本実施の形態に係る竿掛け装置10の作用について、主に図10及び図12を参照しつつ説明する。
(1)竿をセットする際の作用
船べり等に固定した竿掛け装置10に竿Xをセットするときは、次のようにする。すなわち、竿保持部50の左右ロックレバー60L、60Rの上側から竿Xを当てると、図10(B)に示すように、竿本体部X1又はグリップ部X2(竿Xと総称する)が、左右ロックレバー60L、60R上端のV字形部分(左右斜突曲面75の上端部75a間のV字スペースをなす部分)に当たる。このV字型部分は、ロックレバー60の斜突曲面75の上端部75a(図9(D)等参照)であり、前述した通り、この上端部75aは半円形に形成されている。なお、図10においては、斜突曲面75に相当する箇所が網目で示されている。
【0031】
V字形部分に当てた竿Xを押し下げると、竿Xから斜突曲面75にかかる力F(FL、FR)が、左右ロックレバー60L、60Rを押し開く方向(上端部75aをなす半円形の中心部)に向かって作用する。このとき、押し下げ力FL、FRの作用点(竿Xと斜突曲面75の上端部75aとの接点)と、左右レバー軸51L、51Rの軸芯Sとの間には、図10(C)に示すように距離rが確保されているので、ロックレバー60L、60Rをレバー軸51L、51Rの回りに開方向に回動させるモーメントが発生する。これにより、左右ロックレバー60L、60Rは、レバー軸51L、51Rの軸芯S回りに、観音開きのように開く(図7参照)。
【0032】
前述の通り、斜突曲面75は、元側上部から先側下部に向けて滑らかに連続する曲面状に形成されているので、竿Xを徐々に押し下げていくと、その外面が斜突曲面75に沿ってスライドしていく。そのため、左右ロックレバー60L、60Rには回転モーメントが付与され続け、竿Xが両ロックレバー60L、60R間を通過し終わるまで開状態が続く。そして、竿Xが通過した後は、バネ52L、52R(図4、図5及び図8参照)の付勢力により、両ロックレバー60L、60Rは自動的に閉じる。
このように、竿Xをセットするときは、竿Xを軽く押し下げるだけでロックレバー60L、60Rはスムーズに開き、竿Xが通過した後は、ロックレバー60L、60Rが自動的に閉じて竿保持状態となる。
【0033】
(2)竿をセットした後の作用(竿の保持作用及びあわせ時のロックレバー回動作用)
竿Xをセットした後は、図12(B)にわかり易く示すように、グリップ部X2の上面が両ロックレバー60L、60Rの寝竿当接球面71に当たって押さえられる(なお、竿Xのセット後は、竿先が船べりの外側まで延び出ており、竿はおじぎするような形となるので、グリップ部X2は上に持ち上がる)。寝竿当接球面71は、図12(B)に描いた左右の仮想球CL、CRの面の一部をなす。図9を参照しつつ前述したように、これらの仮想球CL、CRの中心CR′、CL′は、それぞれ左右のレバー軸51L、51Rの軸芯S上に位置している。なお、図12においては、寝竿当接球面71に相当する箇所が網目で示されている。
【0034】
持ち上がったグリップ部X2からは、両ロックレバー60L、60Rに向けてそれぞれ力FL1、FR1がかかるが、これらの力FL1、FR1は、必ず、グリップ部X2外面と寝竿当接球面71との接点から仮想球CL、CRの中心CR′、CL′に向かう。中心CR′、CL′は、左右のレバー軸51L、51Rの軸芯S上にあるため、図12(C)に示すように、力FL1、FR1の作用点(グリップ部X2外面と寝竿当接球面71との接点)と、左右レバー軸51L、51Rの軸芯Sとの間の距離rはゼロである。したがって、ロックレバー60L、60Rをレバー軸51L、51Rの回りに回動させるモーメントは発生しない。そのため、両ロックレバー60L、60Rは閉状態を維持し続け(前述した図6等参照)、グリップ部X2が両ロックレバー60L、60Rで押さえられた竿保持状態が維持される。
【0035】
このような竿保持状態から、図12(A)に仮想的に示すように、竿本体部X1を少しずつ立てていった場合を考える。この場合、竿先X1を立てるに連れて、グリップ部X2外面と寝竿当接球面71との接点が先側へとずれて、両ロックレバー60L、60Rにかかる力が例えばFL1→FL2、FR1→FR2へと変わる。しかし、グリップ部X2外面が寝竿当接球面71に当たっている限り、力FL2、FR2は仮想球CL、CRの中心CR′、CL′へと向かっている。そのため、図12(C)に示すように、距離rはやはりゼロであり、ロックレバー60L、60Rをレバー軸51L、51Rの回りに回動させるモーメントは発生しない。なお、仮想球CL、CRの中心CR′、CL′が軸芯Sよりも先側にある場合は、ロックレバー60L、60Rに付与されるモーメントが負の値(すなわちロックレバー60L、60Rを閉じる方向に回動させるモーメントが付与される)となるので、この場合もグリップ部X2の保持状態が維持される。
【0036】
そして、竿Xが一定の角度θ(図12(A)参照)を超え、グリップ部X2外面が寝竿当接球面71から外れた瞬間から、左右ロックレバー60L、60Rを押し上げている力の向きが中心CR′、CL′(レバー軸51L、51Rの軸芯S上)から外れる。このとき、竿本体部X1上面が立竿当接面73(図9(D)等参照)に当たり、竿本体部X1から左右ロックレバー60L、60Rへ向けて、先側から元側へと力がかかって、左右ロックレバー60L、60Rには軸芯Sを中心として開く方向の回転モーメントが付与され、左右ロックレバー60L、60Rが開状態(図7参照)となる。
【0037】
角度θは、寝竿当接球面71の大きさ(図12(C)における先元方向に沿う幅)に応じて設定することができる。望ましくは、θ=約40°〜45°が適当である。本発明の竿掛け装置10は、竿Xをある角度θまで立てる間は、グリップ部X2が左右ロックレバー60L、60Rでしっかりと保持されるので、例えば船のローリング(横揺れ)が伝わって竿先が飛び上がったような場合でも、竿Xが竿掛け装置10から外れにくくなる。一方、角度θを越えて竿Xを立てると、グリップ部X2の材質(摩擦の有無)にかかわらず、図7に示すように左右ロックレバー60L、60Rがスムーズに回動して開くので、例えば魚がかかったときの“あわせ”の操作等、竿Xを急に立てて竿掛け装置10から外す操作をスムーズに行える。
【0038】
(3)手動によるロックレバーの回動作用
左右ロックレバー60L、60Rは、(1)で述べたのと同様にして、簡単な手動操作で開くこともできる。この場合は、図11に示すように、例えば竿を握った手の親指で、前述した左右ロックレバー60L、60RのV字形部分を押す。すると、(1)で述べたのと同様に、左右ロックレバー60L、60Rに回転モーメントが発生し、開状態(図7参照)となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態に係る竿掛け装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の竿掛け装置の本体にベースを収納した状態を示す側面図である。
【図3】図1の竿掛け装置を先側から見た正面図である。
【図4】図1の竿掛け装置を元側から見た正面図である。
【図5】図4の断面図である。
【図6】図1の竿掛け装置を上側から見た平面図である。
【図7】図6においてロックレバーが開いた状態を示す図である。
【図8】図6の一部断面図である。
【図9】本実施の形態に係る竿掛け装置の左側ロックレバーを示す図である。(A)は側面図であり、(B)は(A)のα−α線断面図であり、(C)は正面図であり、(D)は斜視図である。
【図10】本実施の形態に係る竿掛け装置に釣り竿をセットする際のロックレバーの作用を説明するための図である。(A)は本体付近の側面図であり、(B)は竿保持部を元側から見た簡略正面図であり、(C)はロックレバー付近の平面図である。
【図11】本実施の形態に係る竿掛け装置のロックレバーを手動で開く際の作用を説明するための図である。(A)は竿保持部を元側から見た簡略正面図であり、(B)はロックレバー付近の平面図である。
【図12】本実施の形態に係る竿掛け装置にセットした釣り竿を立てる際のロックレバーの作用を説明するための図である。(A)は本体付近の側面図であり、(B)は竿保持部を元側から見た簡略正面図であり、(C)はロックレバー付近の平面図である。
【図13】図13(A)は特許文献1(実開平6−5476号公報)の舟釣り用竿受を示す斜視図であり、図13(B)は特許文献2(特開平8−172993号公報)の舟釣り用竿受具を示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】

10 竿掛け装置
20 本体
21 左部材 22 右部材
21T、22T 先側立上り部 21B、22B 元側立上り部
21H、22H 水平部 24 本体凹凸部
30 ベース 30a (ベースの)先端
31 シャフト 31a クランプ
32 ナット 34 ベース凹凸部
35 クランプボルト 35a クランプ
35b 締皿 37 凹凸辺
40 竿受け部 41 スペース
50 竿保持部
51L、51R レバー軸 53b(53L、53R) 切欠き部
52L、52R バネ 60L、60R ロックレバー
61 基部 63 孔
65 内凹部 67 開方向ストッパー
69 閉方向ストッパー 71 寝竿当接球面
73 立竿当接面 75 斜突曲面
75a (斜突曲面の)上端部 77L、77R 竿押上部材係止部
X 竿
X1 竿本体部 X2 グリップ部
CL、CR (寝竿当接球面を含む)仮想球 CR′、CL′ 仮想球の中心
S レバー軸の軸芯




【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り竿のグリップ部を保持する竿保持部と、同グリップ部の先の竿の部分を受ける竿受け部と、これら両部を相互にある離隔した位置にくるように支える本体と、該本体を船べり等に固定するベースと、を備える竿掛け装置であって、
前記竿保持部が、
釣り竿を上に立てた時の長手方向(上下方向)にほぼ沿う軸芯を有する一対のレバー軸と、
該レバー軸の回りに回動する一対のロックレバーであって、該一対のロックレバーの間を竿のグリップ部が通過可能な開状態と通過不能な閉状態との間で回動可能なロックレバーと、を有し、
該ロックレバーが、竿のグリップ部を保持する際には竿グリップ部の上面を押さえ、竿を立てて外す際には竿上面に押されて開くものであり、
該ロックレバーの竿グリップ部に当接する面の、釣り竿を横に寝かせて掛けた状態からある角度θまで立てる間に当たる部分(寝竿当接面)の形状が、前記ロックレバーを開く方向のモーメントを生じさせないように形成されており、該角度θを越えて竿を立てたときに当たる部分(立竿当接面)の形状が、前記ロックレバーを開く方向のモーメントを生じさせるように形成されていることを特徴とする竿掛け装置。
【請求項2】
前記寝竿当接面が、実質的に球面であり、その球面の中心が前記レバー軸の軸芯上又はその竿先側にあることを特徴とする請求項1記載の竿掛け装置。
【請求項3】
前記レバー軸が、前記本体に対して両持で支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の竿掛け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−61044(P2007−61044A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253585(P2005−253585)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(597064126)
【Fターム(参考)】