説明

第二級アミンの対応するニトロキシドへの酸化方法

本発明は、a)反応容器に第二級アミンと1バッチでアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウムの重炭酸塩およびアルカリ土類金属もしくはアンモニウムの炭酸塩またはこれらの混合物よりなる群から選択される塩基とを加える工程であって、第二級アミンは場合により有機溶剤と共に加え、塩基は、固体の形態で水と共にまたは水性のスラリーとして加える工程、b)反応混合物に過酸を、第二級アミン1mol当り1.0〜2.5molの量で、攪拌しながら投与する工程、c)有機相を単離する工程を含む、第二級ニトロキシドラジカルを、その対応する第二級アミンから有機過酸を用いて酸化することにより製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ニトロキシド、特に2,2,6,6−テトラアルキルピペリジンのニトロキシドは、種々の工業用途に極めて重要なクラスの化合物である。これらは、たとえば、精製および蒸留の間ビニル芳香族モノマーの早期重合を防ぐ防止剤として用いられる。これらは有機材料、たとえば熱硬化性または熱可塑性ポリマー用の有効な安定剤としても公知である。ニトロキシドのさらなる用途は、酸化触媒、制御されたラジカル重合プロセスでの重合調節剤、およびスピンラベル剤である。
【0002】
これらを製造するには多数の方法がある。いくつかが、たとえばL. B. Volodarsky, V. A. Reznikov, V. I. 0vcharenko: "Synthetic Chemistry of Stable Nitroxides", CRC Press, Boca Raton, 1994に記載されている。適切な第二級アミンの酸化が、最も応用のきく方法の一つである。
【0003】
様々な酸化剤を用いることができる。工業的観点から、過酸化水素(場合により種々の触媒と共に)、t−ブチルヒドロペルオキシドまたは過酸、特に過酢酸が有用な酸化剤である。
【0004】
過酸は、アミンの迅速でしばしば定量的な酸化を引き起こす。これらは、過酸化水素で酸化することが難しいまたは不可能なアミン、たとえば立体障害の大きなアミンの酸化に特に適切である。
【0005】
過酸を用いる酸化を成功するための一つの重要なパラメータは、反応混合物のpHである。したがって、pHが低すぎると、アミンは完全にプロトン化されるため、酸化は緩慢になりすぎる。他方においては、強塩基、たとえば水酸化ナトリウムの添加により、pHが上昇しすぎると、過酸はO2の発生の下に分解する可能性がある。これは酸化の失敗をまねき、酸素と存在する可能性がある揮発性有機化合物とが爆発性混合物を形成するおそれがあるので、深刻な安全性の危険をさらにもたらす。
【0006】
WO 00/40550には、反応混合物に、たとえばアルカリ金属の炭酸塩または重炭酸塩の水溶液を、過酸と共に同時に加えることにより、この問題を解決することが示唆されている。水と適切な有機溶剤中に予め溶解したアミンとの攪拌したエマルションに、過酸と塩基とを同時に水溶液として加える。過酸と塩基との投与速度は、pHを4〜12の範囲に保つような方法で調節する。
【0007】
これは実行可能な方法であるが、このような作業の方法は深刻な欠点をもたらす。
a)装置は、2個の投与ユニットを備える必要がある。
b)pHの測定が必要である。しかし、特に大規模生産では、不均質な混合物中での信頼できるpHの測定がかなり難しい。
c)アルカリ金属の重炭酸塩は、水への溶解度がかなり低い。その結果、大量の溶液が必要である。したがって、容積収率が低く、これは作業の経済的側面に悪影響を及ぼす。
【0008】
これらの欠点は、従来技術プロセスを大規模な工業酸化プロセスに対して魅力の小さいものにしている。
【0009】
本発明は、これらの欠点を回避し、したがって、特に大規模生産を想定する場合、実質的により効率的な方法を可能にする。
【0010】
本発明は、工程
a)反応容器に第二級アミンと1バッチでアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウムの重炭酸塩およびアルカリ土類金属もしくはアンモニウムの炭酸塩またはこれらの混合物よりなる群から選択される塩基とを加える工程であって、第二級アミンは場合により有機溶剤と共に加え、塩基は、固体の形態で水と共にまたは水性のスラリーとして加える工程、
b)反応混合物に過酸を、第二級アミン1mol当り1.0〜2.5molの量で、攪拌しながら投与する工程、
c)有機相を単離する工程
を含む、第二級ニトロキシドラジカルを、その対応する第二級アミンから有機過酸を用いて酸化することにより製造する方法に関する。
【0011】
本発明による塩基の1バッチでの添加は、小さく分割しての投与とは異なり、全量を一つの単一バッチで加えることを意味する。
【0012】
工程a)で用いる有機溶剤は、水と混和しないものが好ましい。
【0013】
例は、芳香族溶剤、飽和炭化水素溶剤またはケトンである。
【0014】
過酸は、任意の有機過酸、たとえば過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸またはトリフルオロ過酢酸とすることができる。過酢酸が好ましい。過酸は単一でまたは適切な溶剤中で用いることができる。水中または酢酸中の過酢酸の溶液が好ましい。
【0015】
工程a)で加える水の量は、有機酸と重炭酸塩または炭酸塩との間の中和反応で形成された有機酸塩を溶解するのに十分な量であるのが好ましい。
【0016】
全体的な酸化反応を次の式で表す。
【0017】
【化3】

【0018】
本発明の緩衝塩基は、たとえばアルカリ金属およびアルカリ土類金属(1+2族元素)の重炭酸塩または重炭酸アンモニウムまたはアルカリ土類金属(2族元素)の炭酸塩または炭酸アンモニウムである。混合塩、たとえばドロマイトCaCO3×MgCO3を使用することもできる。
【0019】
重炭酸塩または炭酸塩を、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムで、部分的に置き換えてもよい。
【0020】
たとえば一般式:nMCO3 × mM(OH)2(n、mは、1〜10の整数である)のアルカリ土類金属の塩基性炭酸塩も有用である。
【0021】
緩衝工程は、たとえば
【0022】
【化4】

【0023】
[Mがアルカリ金属カチオン(Li+、Na+、K+、…)またはNH4+である場合、n=1
Mがアルカリ土類金属カチオン(Ca++、Mg++、…)である場合、n=2]にしたがう、形成した酸RCOOHの部分的または完全な中和からなる。
【0024】
あるいは、アルカリ土類金属炭酸塩、たとえばCaCO3を用いる場合。
【0025】
【化5】

【0026】
WO 00/40550に開示された方法では、所定量の重炭酸塩に対する最小量の水を、所定温度での水へのその溶解度により特定する。一方、本発明の方法では、水は全くまたはほとんど必要ない。本発明の方法では、中和された酸の均質な水性層の形成を確実にするために、最小量の水を加えるのが好都合である。その量は、たとえば有機過酸から得られた対応する塩、たとえば過酢酸を用いる場合は酢酸塩の溶解度により与えられる。
【0027】
たとえば、重炭酸ナトリウム塩(NaHCO3)を塩基として用いる場合、NaHCO3対水の重量比は通常1.5:1〜0.75:1である。
【0028】
アルカリ土類金属の炭酸塩、たとえばCaCO3、MgCO3またはドロマイト(CaCO3×MgCO3)は、水への溶解度が低いので有用な濃厚溶液を調製することができない。したがってWO 00/40550に開示された方法では、これらの炭酸塩は、極度に低い容積収率をまねく。
【0029】
上述した弱塩基の重要なさらなる利点は、これらの水性のスラリーは、過酸の迅速な分解を誘引しないことである。したがって本方法では、不均質な反応系中での難しいpHの測定は必要ない。しかし従来技術の方法では、必須である。
【0030】
このことを説明するために、技術的に最も重要な重炭酸塩および酢酸塩の溶解度データを、表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表2は、表1からのデータを用いて計算した、WO 00/40550にしたがって投与する重炭酸塩1mol溶液の調製に必要な最小量の水を示す。
【0033】
酢酸1molと、本発明により固体として反応器に添加した重炭酸塩1molまたは炭酸塩0.5molとの中和の間に形成した酢酸塩を、完全に溶解するのに必要な最小量の水を、比較のために計算する。中和の間に形成した水は、考慮に入れない。
【0034】
【表2】

【0035】
表2は、本発明による方法では、非生産的な水性相により占められる反応器容積の量が実質的に減少することを明確に示す。
【0036】
たとえば塩基は、ナトリウムもしくはカリウムの重炭酸塩、カルシウムもしくはマグネシウムの炭酸塩またはドロマイトである。
【0037】
ナトリウムまたはカリウムの重炭酸塩が、特に好ましい。
【0038】
たとえば、塩基を、存在する全ての酸1当量当り0.1〜1.5当量塩基、たとえば0.5〜1.3の量で加える。
【0039】
適切な反応温度は、−20℃〜80℃、好ましくは0℃〜40℃である。
【0040】
過酸の投与は、10分〜5時間で行うのが好都合である。
【0041】
合計反応時間は、たとえば30分〜10時間である。反応は、たとえば大気圧で行う。
【0042】
形成されたニトロキシドラジカルは、たとえば式(I)
【0043】
【化6】

【0044】
(RpおよびRqは、独立に、非置換または1個以上の電子求引基もしくはフェニルで置換された第三級結合C4〜C28アルキル基またはC3〜C17第二級結合アルキル基であるか、
あるいは
pおよびRqは共に、4個以上のC1〜C4アルキル基で置換され別の窒素または酸素原子で中断されていてもよい、5、6または7員複素環を形成する)である。
【0045】
したがって、第二級アミン前駆物質は、式(I’)
【0046】
【化7】

【0047】
である。アミン前駆物質は、多くが工業製品である。
【0048】
ニトロキシルラジカルおよびその第二級アミン前駆物質は、US-A-4 581 429またはEP-A-621 878から主に公知である。WO 98/13392、WO 99/03894およびWO 00/07981に記載されている開鎖化合物、WO 99/67298およびGB 2335190に記載されているピペリジン誘導体、またはGB 2342649およびWO 96/24620に記載されている複素環化合物が、特に有用である。
【0049】
さらなる適切なニトロキシルエーテルおよびニトロキシルラジカルが、WO 02/4805およびWO 02/100831に記載されている。
【0050】
本方法により製造することができるニトロキシルラジカルの例を、以下に示す。たとえばニトロキシルラジカルは、式(X)の構造要素を含有する。
【0051】
【化8】

【0052】
(式中、G1、G2、G3、G4は、独立に、C1〜C6アルキルであるか、G1とG2もしくはG3とG4、またはG1とG2とG3とG4とは共にC5〜C12シクロアルキル基を形成し、
*は、原子価を意味し、そして
5、G6は、独立に、HまたはC1〜C6アルキルである)
【0053】
したがって、アミン前駆物質は、式(X’)
【0054】
【化9】

【0055】
である。
【0056】
たとえばニトロキシドラジカルは、式A’、B’またはO’
【0057】
【化10】

【0058】
(式中、mは1であり、
Rは、水素、中断されないか1個以上の酸素原子で中断されたC1〜C18アルキル、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジル、炭素原子数2〜18の脂肪族カルボン酸、炭素原子数7〜15の脂環式カルボン酸、炭素原子数3〜5の不飽和カルボン酸または炭素原子数7〜15の芳香族カルボン酸の一価の基であり、
pは1であり、
101は、C1〜C12アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C7〜C8アラルキル、C2〜C18アルカノイル、C3〜C5アルケノイルまたはベンゾイルであり、
102は、C1〜C18アルキル、C5〜C7シクロアルキル、非置換またはシアノ、カルボニルもしくはカルバミド基で置換されたC2〜C8アルケニルであるか、グリシジル、式−CH2CH(OH)−Zの基または式−CO−Zもしくは−CONH−Zの基(式中、Zは、水素、メチルまたはフェニルである)であり、
5およびG6は、独立に、水素またはC1〜C4アルキルであり、そして
1およびG3は、メチルであり、かつG2およびG4は、エチルまたはプロピルであるか、またはG1およびG2は、メチルであり、かつG3およびG4は、エチルまたはプロピルである)である。
【0059】
より好ましくは、式A’、B’およびO’において、
Rは、水素、C1〜C18アルキル、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジル、脂肪族カルボン酸の一価の基であり、
101は、C1〜C12アルキル、C7〜C8アラルキル、C2〜C18アルカノイル、C3〜C5アルケノイルまたはベンゾイルであり、
102は、C1〜C18アルキル、グリシジル、式−CH2CH(OH)−Zの基または式−CO−Zの基(式中、Zは、水素、メチルまたはフェニルである)である。
【0060】
上記化合物、その前駆物質およびその製造は、たとえばGB 2335190およびGB 2 361 235に記載されている。いくつかは、市販されている。
【0061】
ニトロキシルラジカルの別の群は、式(Ic’)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)または(Ih’)である。
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、R201、R202、R203およびR204は、互いに独立に、C1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C3〜C18アルキニル、OH、ハロゲンまたは基−O−C(O)−R205で置換されたC1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C3〜C18アルキニル、1個以上のO原子および/もしくはNR205基で中断されたC2〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキルまたはC6〜C10アリールであるか、R201とR202および/またはR203とR204は結合炭素原子と共にC3〜C12シクロアルキル基を形成し、
205、R206およびR207は、独立に、水素、C1〜C18アルキルまたはC6〜C10アリールであり、
208は、水素、OH、C1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C3〜C18アルキニル、1個以上のOH、ハロゲンまたは基−O−C(O)−R205で置換されたC1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C3〜C18アルキニル、1個以上のO原子および/またはNR205基で中断されたC2〜C18アルキル、C3〜C12シクロアルキルまたはC6〜C10アリール、C7〜C9フェニルアルキル、C5〜C10ヘテロアリール、−C(O)−C1〜C18アルキル、−O−C1〜C18アルキルまたは−COOC1〜C18アルキルであり、そして
209、R210、R211およびR212は、独立に、水素、フェニルまたはC1〜C18アルキルである)
【0064】
より好ましくは、式(Ic’)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)および(Ih’)において、R201、R202、R203およびR204の2個以上が、エチル、プロピルまたはブチルであり、残りがメチルであるか;またはR201とR202またはR203とR204は、結合炭素原子と共にC5〜C6シクロアルキル基を形成し、残りの置換基の1個は、エチル、プロピルまたはブチルである。
【0065】
上記化合物、その前駆物質およびその製造は、GB 2342649に記載されている。
【0066】
他の適切な化合物は、式Vの4−イミノピペリジン誘導体である。
【0067】
【化12】

【0068】
(式中、G11、G12、G13およびG14は、独立に、C1〜C4アルキルであるか、G11とG12は共にかつG13とG14は共に、またはG11とG12は共にもしくはG13とG14は共にペンタメチレンであり、
15およびG16は、互いに独立に、水素またはC1〜C4アルキルであり、
kは、1、2、3または4であり、
Yは、O、NR302であり、およびR301は、アルキルまたはアリールを表し、Yはさらに直接結合であり、
302は、H、C1〜C18アルキルまたはフェニルであり、
kが1の場合、
301は、H、非置換またはOH、C1〜C8アルコキシ、カルボキシ、C1〜C8アルコキシカルボニル1個以上で置換されていてもよい直鎖状または分岐状C1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニルまたはC3〜C18アルキニル;
5〜C12シクロアルキルまたはC5〜C12シクロアルケニル;
非置換またはC1〜C8アルキル、ハロゲン、OH、C1〜C8アルコキシ、カルボキシ、C1〜C8アルコキシカルボニル1個以上で置換されていてもよいフェニル、C7〜C9フェニルアルキルまたはナフチル;
−C(O)−C1〜C36アルキル、または炭素原子数3〜5の不飽和カルボン酸もしくは炭素原子数7〜15の芳香族カルボン酸のアシル部分;
−SO3-+、−PO(O-+2、−P(O)(OR22、−SO2−R2、−CO−NH−R2、−CONH2、COOR2またはSi(Me)3(式中、Q+は、H+、アンモニウムまたはアルカリ金属カチオンである)であり;
kが2の場合、
301は、非置換またはOH、C1〜C8アルコキシ、カルボキシ、C1〜C8アルコキシカルボニル1個以上で置換されていてもよいC1〜C18アルキレン、C3〜C18アルケニレンもしくはC3〜C18アルキニレン;または
キシリレンであるか、
301は、炭素原子数2〜36の脂肪族ジカルボン酸のビスアシル基、または炭素原子数8〜14の脂環式もしくは芳香族ジカルボン酸であり;
kが3の場合、
301は、脂肪族、脂環式または芳香族トリカルボン酸の三価の基であり;
そして
kが4の場合、R301は、脂肪族、脂環式または芳香族テトラカルボン酸の四価の基である)
【0069】
これらの化合物は、WO 02/100831に記載されている。
【0070】
16は、水素であり、G15は、水素またはC1〜C4アルキル、特にメチルであり、G11およびG13は、メチルであり、かつG12およびG14は、エチルまたはプロピルであるか、またはG11およびG12は、メチルであり、かつG13およびG14は、エチルまたはプロピルであるのが好ましい。
【0071】
種々の置換基におけるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。1〜18個の炭素原子を含有するアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシルおよびオクタデシルである。
【0072】
炭素原子数3〜18のアルケニルは、たとえばプロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、n−2,4−ペンタジエニル、3−メチル−2−ブテニル、n−2−オクテニル、n−2−ドデセニル、イソドデセニル、オレイル、n−2−オクタデセニルまたはn−4−オクタデセニルのような直鎖状または分岐状基である。
【0073】
炭素原子数3〜12、特に好ましくは3〜6のアルケニルが好ましい。
【0074】
炭素原子数3〜18のアルキニルは、たとえばプロピニル
【0075】
【化13】

【0076】
、2−ブチニル、3−ブチニル、n−2−オクチニルまたはn−2−オクタデシニルのような直鎖状または分岐状基である。炭素原子数3〜12、特に好ましくは3〜6のアルキニルが好ましい。
【0077】
ヒドロキシ置換アルキルの例は、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルまたはヒドロキシヘキシルである。
【0078】
ハロゲン置換アルキルの例は、ジクロロプロピル、モノブロモブチルまたはトリクロロヘキシルである。
【0079】
1個以上のO原子で中断されたC2〜C18アルキルは、たとえば−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−CH2−CH2−O−CH3−または−CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3−である。ポリエチレングリコールから誘導するのが好ましい。一般的な記述は−((CH2a−O)b−H/CH3(式中、aは1〜6の数であり、bは2〜10の数である)である。
【0080】
1個以上のNR5基で中断されたC2〜C18アルキルは通常、−((CH2a−NR5b−H/CH3(式中、a、bおよびR5は、前記定義の通り)と記述することができる。
【0081】
3〜C12シクロアルキルは通常、シクロプロピル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルまたはトリメチルシクロヘキシルである。
【0082】
6〜C10アリールは、たとえばフェニルまたはナフチルであるが、C1〜C4アルキル置換されたフェニル、C1〜C4アルコキシ置換されたフェニル、ヒドロキシ、ハロゲンまたはニトロ置換されたフェニルも含む。アルキル置換されたフェニルの例は、エチルベンゼン、トルエン、キシレンおよびその異性体、メシチレンまたはイソプロピルベンゼンである。ハロゲン置換されたフェニルは、たとえばジクロロベンゼンまたはブロモトルエンである。
【0083】
アルコキシ置換基は通常、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシおよびこれらの対応する異性体である。
【0084】
7〜C9フェニルアルキルは、ベンジル、フェニルエチルまたはフェニルプロピルである。
【0085】
5〜C10ヘテロアリールは、たとえばピロール、ピラゾール、イミダゾール、2,4−ジメチルピロール、1−メチルピロール、チオフェン、フラン、フルフラール、インドール、クマロン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピリジン、α−ピコリン、ピリダジン、ピラジンまたはピリミジンである。
【0086】
Rがカルボン酸の一価の基である場合、たとえば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、カプロイル、ステアロイル、ラウロイル、アクリロイル、メタクリロイル、ベンゾイル、シンナモイルまたはβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル基である。
【0087】
1〜C18アルカノイルは、たとえば、ホルミル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ドデカノイルであるが、好ましくはアセチルであり、C3〜C5アルケノイルは、特にアクリロイルである。
【0088】
具体例は、
【0089】
【化14】

【0090】
である。
【0091】
次の化合物が最も好ましい。
【0092】
【化15】

【0093】
上述した化合物またはこれらのアミン前駆物質は、一部市販されているか、公知の方法により製造する。高度にアルキル置換されたピペリジンおよびその製造は、たとえばGB 2 335 190およびGB 2 361 235に記載されている。
【0094】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0095】
実施例1
CH3COOOH/CaCO3を用いる2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オンの酸化
スターラー、温度計および滴下漏斗を備えた四つ口フラスコに、粉末炭酸カルシウム(20g、0.2mol)、水(75ml)、トルエン(30ml)および2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オン(19.73g、0.1mol、Ger. Offen. DE 2623422に記載されているように製造した)を入れた。次に過酢酸(30.4g、0.16mol、40%酢酸溶液)を、攪拌した混合物に、温度を20〜30℃に保ちながら、50分かけて滴下した。次に混合物をさらに150分攪拌した。赤色有機層を分離し、飽和のNaHCO3および水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発させて2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オン−N−オキシル19.26gを赤色液体として得た。材料はDE 19909767に記載されているように製造したサンプルと同じである。
【0096】
実施例2
CH3COOOH/MgCO3を用いる2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オンの酸化
炭酸マグネシウム(12.65g、0.15mol)を、実施例1に記載したのと同じ方法で使用し、水35mlだけを用いて、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オン−N−オキシル21.1gを赤色液体として得た。材料はDE 19909767に記載されているように製造したサンプルと同じである。
【0097】
実施例3
CH3COOOH/4MgCO3×Mg(OH)2×5H2Oを用いる2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オンの酸化
式:4MgCO3×Mg(OH)2×5H2Oの混合炭酸水酸化マグネシウム(Fluka)(14.56g、0.03mol)を、実施例2に記載したのと同じ方法で使用して、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オン−N−オキシル20.25gを赤色液体として得た。材料はDE 19909767に記載されているように製造した真正のサンプルと同じである。
【0098】
実施例4
CH3COOOH/NH4HCO3を用いる2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オンの酸化
重炭酸アンモニウム(23.72g、0.3mol)を、実施例1に記載したのと同じ方法で使用し、水20mlだけを用いて、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オン−N−オキシル20.52gを赤色液体として得た。材料はDE 19909767に記載されているように製造した真正のサンプルと同じである。
【0099】
実施例5
CH3COOOH/KHCO3を用いる2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オンの酸化
重炭酸カリウム(30.03g、0.3mol)を、実施例1に記載したのと同じ方法で使用し、水11mlだけおよびトルエンの代わりに酢酸エチル30mlを用いて、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−4−オン−N−オキシル20.77gを赤色液体として得た。材料はDE 19909767に記載されているように製造した真正のサンプルと同じである。
【0100】
実施例6
CH3COOOH/NaHCO3を用いる2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジンの酸化
スターラー、温度計および滴下漏斗を備えた四つ口フラスコに、重炭酸ナトリウム(25.20g、0.3mol)、水(25ml)、酢酸エチル(25ml)および2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン(9.17g、0.05mol、WO 00 46202に記載されているように製造した)を入れた。次に、過酢酸(19.01g、0.1mol、40%酢酸溶液)を、攪拌した混合物に、温度を20〜30℃に保ちながら、50分かけて滴下した。次に、混合物をさらに10時間攪拌した。赤色有機層を分離し、飽和のNaHCO3および水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、蒸発させて2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−ピペリジン−N−オキシル9.63gを赤色液体として得た。材料はDE 2621841に記載されているように製造した真正のサンプルと同じである。
【0101】
実施例7
CH3COOOH/NaHCO3を用いる2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オンの酸化
スターラー、温度計および滴下漏斗を備えた四つ口フラスコに、重炭酸ナトリウム(101.8g、1.2mol)、水(100ml)、酢酸エチル(100ml)および2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(31.05g、0.2mol、Aldrich)を入れた。次に、過酢酸(19.01g、0. mol、40%酢酸溶液)を、攪拌した混合物に、温度を20〜30℃に保ちながら、50分かけて滴下した。次に、混合物をさらに30分攪拌した。反応素材を分液漏斗に移し、水(500ml)を加え、赤色有機層を分離した。水性の層を酢酸エチル(2×200ml)で抽出した。抽出物と有機層を組み合わせ、Na2SO4で乾燥し、蒸発させた。油状残留物をヘキサン50mlから結晶させ、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-4−オン−N−オキシル29.6gを赤色固体として得た。材料はAldrichから得た真正のサンプルと同じである。
【0102】
実施例8
CH3COOOH/NaHCO3を用いるオクタデカン酸3,8,10−トリエチル−7,8,10−トリメチル−1,5−ジオキサ−9−アザ−スピロ−[5.5]ウンデカ−3−イルメチルエステルの酸化
トルエン48g中の3,8,10−トリエチル−7,8,10−トリメチル−1,5−ジオキサ−9−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−3−イル)−メタノール(US 4,105,626に記載されているように製造した)31.35g(0.1mol)の攪拌した溶液に、塩化ステアロイル30.3g(0.1mol)を、温度を91〜96℃に保ちながらゆっくり加えた。添加後、混合物を室温で12時間攪拌した。スターラーを止め、水15ml中の水酸化ナトリウム(4.2g、0.105mol)の溶液を反応混合物に一度に加え、次にこれを5分間勢いよく攪拌した。次に、固体のNaHCO325.2g(0.3mol)を反応混合物に加えた。その後、酢酸中40%の過酢酸30.45g(0.16mol)を65分内に滴下した。内部温度を24〜33℃に保った。次に、赤色エマルションを24℃でさらに3.5時間攪拌した。赤色有機層を分液漏斗に移し、脱イオン水25mlで2回洗浄し、MgSO4で乾燥し、ロータリーエバポレータで蒸発させて、目的のニトロキシド59.35g(99.7%)を赤色油状物として得た。
【0103】
元素分析:C3668NO5(594.95)、C:72.62/72.63%(理論:72.68%)、H:11.35/11.46%(理論:11.52%)、N:2.25/2.22%(理論:2.35%).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)反応容器に第二級アミンと1バッチでアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウムの重炭酸塩およびアルカリ土類金属もしくはアンモニウムの炭酸塩またはこれらの混合物よりなる群から選択される塩基とを加える工程であって、第二級アミンは場合により有機溶剤と共に加え、塩基は、固体の形態で水と共にまたは水性のスラリーとして加える工程、
b)反応混合物に過酸を、第二級アミン1mol当り1.0〜2.5molの量で、攪拌しながら投与する工程、
c)有機相を単離する工程
を含む、第二級ニトロキシドラジカルを、その対応する第二級アミンから有機過酸を用いて酸化することにより製造する方法。
【請求項2】
工程a)で場合により用いる有機溶剤が、水と混和しない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
過酸が、過酢酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程a)で加える水の量が、有機酸と重炭酸塩または炭酸塩との間の中和反応で形成された有機酸塩を溶解するのに十分な量である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
塩基がナトリウムもしくはカリウムの重炭酸塩、カルシウムもしくはマグネシウムの炭酸塩またはドロマイトである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
塩基を、存在する全ての酸1当量当り0.1〜1.5当量塩基の量で加える、請求項1記載の方法。
【請求項7】
反応温度が0℃〜40℃である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
過酸の投与を10分〜5時間で行う、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ニトロキシドラジカルが、式(I)
【化1】


(式中、RpおよびRqは、独立に、非置換または1個以上の電子求引基でもしくはフェニルで置換された第三級結合C4〜C28アルキル基またはC3〜C17第二級結合アルキル基であるか、あるいは
pおよびRqは共に、4個以上のC1〜C4アルキル基で置換され別の窒素または窒素原子で中断されていてもよい5、6または7員複素環を形成する)である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ニトロキシドラジカルが、式(X)
【化2】


(式中、G1、G2、G3、G4は、独立に、C1〜C6アルキルであるか、G1とG2もしくはG3とG4、またはG1とG2とG3とG4とは共にC5〜C12シクロアルキル基を形成し、
*は原子価を意味し、そして
5、G6は、独立に、HまたはC1〜C6アルキルである)の構造要素を含有する、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2006−521329(P2006−521329A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505470(P2006−505470)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050315
【国際公開番号】WO2004/085397
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】