説明

第4級塩の連続的製造

本発明は、長い保存寿命を有し、及び水中で安定な、高品質の4級塩化されたN,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEA・MCQ)の継続的製造方法を提供する。この方法は、6%未満の水分の存在下に、原料を連続的撹拌タンク反応器に投入することを含む。この低い水分量は、2つの液相の形成を引き起こし、望まれない副反応を防止する。より密度の高い相はDMAEA・MCQを含み、及びより軽い相は原料を含む。より密度の高い相の液体は、より軽い相が少量混合している位置から取り除かれる。次に、除去された液体は、痕跡量の原料を反応させてDMAEA・MCQに変換し、及び気体流によって、いかなる原料をも揮散させる。得られる液体は高純度のDMAEA・MCQである。次いで、製造されたDMAEA・MCQの、移送及び使用を容易にするために、水が安全に加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし。
(連邦による補助金の言明)
該当せず。
【0002】
本発明は、4級化された、N,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEA・MCQ)の連続的な製造の装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
DMAEA・MCQは、カチオン性凝集剤ポリマーの製造に用いられる重要なモノマー中間体である。DMAEA・MCQは、N,N−ジアルキルアミノエチルアクリレート(DMAEA)をさまざまな条件下で反応させることにより製造できることが知られている。DMAEAを合成するためのよい方法は、特許文献1に記載されている。DMAEAからDMAEA・MCQを製造する効率的な方法は、回分式の製造方法に固有の厄介でコストのかさむ、開始及び停止の構造を避ける、継続的合成を含む。
【0004】
DMAEAからDMAEA・MCQを製造するための多くの不満足な方法が開発されている。特許文献2、特許文献3及び特許文献4は、DMAEA・MCQを製造するために、直列に接続された、継続的に撹拌されるタンク反応器(CSTR)を用いている。しかしながら、これらが好む多重反応器は厄介であり、高価である。特許文献5は、薄膜蒸発器反応器中での反応の遂行を記載している。不幸なことに、この方法は、本発明と比較して、典型的に高価な操作コストに結びつく装置を使用している。特許文献6は、回転する円板により撹拌されるカラムの設計を用いているが、不当に長い滞留時間に悩まされている。特許文献7及び特許文献8は、DMAEA・MCQを製造するために、塔型反応器を使用しているが、決して理想的なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第12/468,585号
【特許文献2】特開2003−342244号
【特許文献3】特開2004−010508号
【特許文献4】特開2004−155669号
【特許文献5】特開1995−206790号
【特許文献6】米国特許第6,683,203号
【特許文献7】中国特許出願第CN1296942号
【特許文献8】中国特許出願第CN1276367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、継続的及び効率的にDMAEA・MCQを製造するための改善された方法の、明白な需要及び有用性が存在する。本章において記載される技術は、本願において引用される、いかなる特許又は他の情報も、特にそのように指定されない限り、本発明に関しての「先行技術」であることを認めることを意図していない。加えて、本章は、研究が行われ、37C.F.R.§1.56(a)において定義される、関連する情報が存在しないと考慮されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1つの本発明の実施形態は、QAPを継続的に製造する方法を指向する。この方法は、以下の工程を含む:
TAS、水、及びアルキル化剤を含む反応物を継続的にCSTRに供給する工程;
前記CSTR内の条件を、2つの実質的に明白に異なる液相、第一相及び第二相、が形成され、第二相は第一相よりも密度の高い相であり、第二相が実質的に80%より多いQAP、及び20%未満の水を含み、第一相が反応混合物全体の約5重量%より多い量で存在し、実質的にTAS、及びアルキル化剤を含むように維持する工程;
前記CSTR中の水分量が、継続的に該CSTRに加えられる反応物の16%を超えないようにする工程;及び
前記CSTRから、実質的に第二相だけを、継続的に除去する工程。
【0008】
前記TASが以下のものより成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法:
DMAEA、いずれものN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0009】
1つ以上の追加的実施形態は、製造されるQAPがDMAEA・MCQであってよい、この方法を指向する。アルキル化剤は以下のものより成る群から選ばれ得る:塩化メチル、塩化ベンジル、塩化セチル、ジメチル硫酸、及び任意の他の普通に知られたアルキル化剤、及びそれらの任意の組み合わせ。TASは、CSTRの頂上からCSTRに加えることができる。第二相は、CSTRの底部より、CSTRから除去されることができる。除去された第二相中での残余のTASの追加的反応は、それを栓流反応器中で反応させるか、及び/又は追加的アルキル化剤を加えることにより促進される。このアルキル化剤は、第二相の液体を気体流でパージすることにより除去できる。このアルキル化剤は、アルキル化剤をストリップ塔を通過させることにより除去できる。このアルキル化剤は、アルキル化剤をストリップ塔の頂上部を通過させ、ストリップ塔の底部からは、空気、窒素、及びそれらの任意の組み合わせから成る群より選ばれる気体を通過させることにより除去できる。CSTR内の温度は40〜60°Cに維持することができる。CSTR中の滞留時間は、30〜120分であることができる。CSTR内の圧力は、30〜100psiに維持されることができる。第一相の第二相に対する比は、1:1〜1:20の範囲に維持されることができる。第二相の液体は、TAS及びQAPの混合により誘発されるせん断が、CSTR内部の他の位置よりも低くなっている、CSTRの底部の部位から除去されることができる。この方法は、製造されたQAPにBHT、銅、MEHQ、及びそれらの任意の組み合わせを加える工程を更に含むことができる。製造されたQAPは、300ppm未満のTASを自身の中に含んでよい。
【0010】
この方法は、以下の工程を更に含むことができる:
前記第二相の液体中の残存するいずれものTASの反応を促進する工程;
前記第二相の液体から前記アルキル化剤を揮散させる工程;及び
所望の物理的性質を達成するために、前記第二相の液体に水を加える工程。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の詳細な説明が、以下に、図面の具体的な参照とともに記載される。
【図1】図1は、本発明のアルキル化反応を図示している。
【図2】図2は、本発明の合成反応に用いられる装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本願の目的のための用語の定義は以下のとおりである:
「BHT」は下式の分子を意味する:
【0013】
【化1】

【0014】
「継続的プロセス」は、継続的に生成物を製造するために、試薬が絶えず反応操作に供給されることができる、制限のない時間にわたり、継続的に遂行される能力のある、進行中の化学的プロセスを意味する。継続的プロセスと回分式プロセスは、互いに排他的である。
【0015】
「CSTR」は、継続的に撹拌されるタンク反応器(continuously stirred tank reactor)を意味する。
「DMAEA」は、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートを意味する。
「DAEA・MCQ」は、4級塩化されたN,N−ジアルキルアミノエチルアクリレートを意味する。
「DMAEM」は、N,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートを意味する。
「DMAEA・MCQ」は、4級塩化されたN,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートを意味する。
「パーセント」又は「%」は、他に言明のない限り重量パーセントを意味する。
【0016】
「MEHQ」は、下式の分子を意味する:
【0017】
【化2】

【0018】
「TAS」は、3級アミン基質を意味する。
「QAP」は、第4級アミン生成物を意味する。
【0019】
万一、上記の定義又は本出願の他の箇所で言明される定義が、辞書又は参照により本願に組み込まれた引用源において通常使用される意味(明示的な、又は暗示的な)と一致しない場合は、本出願、及びとりわけ特許請求範囲の用語は、本出願の定義に従い解釈されるべきものと理解され、及び通常の定義、辞書の定義、又は参照により組み込まれた定義に従うべきではない。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、アルキル化反応は、3級アミン基質からアルキル化された第4級アミン塩の製造に用いられる。このアルキル化反応は、アルキル化剤により促進される。少なくとも1つの実施形態では、前記TASは特許文献1にリストされたものから選ばれる1つのものである。図1に示されるように、少なくとも1つの実施形態では、前記3級アミン基質は、DMAEAであり、及びそれはアルキル化剤である塩化メチルによりアルキル化され、QAP第4級アミン塩であるDMAEA・MCQを形成する。少なくとも1つの実施形態では、前記TASはDMAEMであり、それにより形成されるQAPは、第4級アミン塩DMAEM・MCQである。
【0021】
本発明の反応に固有の1つの主要な有用性は、最終生成物に不純物の存在を防ぎながら、同時に水の存在が許容されることである。アミノアクリレート基質の反応性の性質のために、加水分解、重合及び他の反応などの副反応は、生成物の品質に負の影響を与えるのに十分な量で不純物が蓄積するような速度で生じることがある。これらの副反応は、水により促進されるために、かかる副反応を防止する1つのアプローチは、無水環境で反応を遂行することであろう。しかしながら、そのような戦略は、DMAEA・MCQ及びDMAEM・MCQなどのQAPの物理的性質により、挫折させられる。特にこれらのQAPの溶解性は、所望の溶解性より低い。それらは溶液の約80%以上を構成することはできず、又は輸送中の寒冷な気候に晒されたときに、それらは溶液から析出してしまう。溶液から析出すると、QAPの保存、輸送、ポンプによる移送ははるかに困難になる。反応性生物中に過度の不純物を含まず、水の存在が可能である本発明の方法では、これらの困難を回避することができる。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、アルキル化反応剤は以下のものから成る群より選ばれる:塩化メチル、塩化ベンジル、塩化セチル、ジメチル硫酸、及び任意の他の普通に知られているアルキル化剤、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、3級アミン基質(TAS)は、以下のものを含む群から選ばれる:DMAEA、いずれものN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0024】
これから図2を参照する。ここでは、アルキル化された第4級アミン塩生成物(QAP)(1)が、継続的に生産される装置(10)が図示されている。装置(10)は、全体として3つの部分を含む:反応及び相分離部分(11)、後熱(post-heat)部分(21)、及び揮散部分(31)である。原料(TAS、アルキル化剤、及び水)は、源から加えられる。
【0025】
反応部分(11)では、TASがTAS源(6)から継続的に加えられる。アルキル化剤は反応部分(11)に、アルキル化剤源(7)から加えられ、水は水源(8)を経由して加えられる。これらの原料は必要に応じてCSTR(12)に継続的に加えられる。
【0026】
CSTR(12)では、原料が反応するにつれて、2つの液相を含む環境が形成される。軽い相(13)には、試薬である、TAS、及びアルキル化剤が圧倒的に含まれる。密度の高い相(1)には、濃縮された水溶液中のQAP生成物が圧倒的に含まれる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、この2つの液相環境は、CSTR(12)内に特定の反応条件を課すことにより達成される。CSTR(12)内の圧力は、30〜100psiに維持される。CSTR(12)内の温度は、40〜60°Cに維持される。原料は30〜120分間の滞留時間を与える。水には約10〜20重量%未満のCSTR(12)に加えられた原料(それは、QAPが最終的にその中に溶解される20%よりもはるかに少ない)が含まれる。いくつかの実施形態では、この水は10〜16重量%を占める。軽い相(13)の密度の高い相(14)に対する比は、撹拌下におけるCSTRの下層部分をサンプリングすることにより測定されたものとして、1:4(軽い相:密度の高い相)などの安定した所望の比率に維持される。
【0028】
これらの条件は、生成物QAPが、容易に形成され、わずかな不純物しか含有しないことを引き起こす。反応器に加えられる少ない量の水は、急速な反応速度で所望の反応が生じることを可能にし、2つの溶液相がCSTR内で形成され、容易に分離されることを促進する。低い水のレベルは、加水分解反応による、望まれない不純物の生成速度を減速させる。この環境は、QAP形成の急速な反応速度、及び比較的遅い不純物の形成反応速度を可能とするために、わずかな不純物を伴う比較的高純度のQAPの形成をもたらす。
【0029】
継続的反応として、原料がCSTR(12)に継続的に加えらる一方、生成物を含む流れは常にCSTR(12)から取り除かれる。本発明の新規な態様は、密度の高い相(14)のみを取り除くために、前記反応部分が反応装置であると同時に、分離装置として機能することである。この方式で、CSTR中で反応速度を最大化するために、反応物濃度を高く保つことができ、一方出て行く流れの中は生成物に富んでおり、ごく少量の反応物を含む。少なくとも1つの実施形態では、密度の高い相のみが底部に存在するように、CSTRを稼動させることができる、という事実を利用するために、生成物出口(15)は、実質的にCSTR(12)の底部に配置される。これは、反応器の底では、混合により誘発されるせん断力が少なく、そのために密度の高い相が軽い相から分離し、この部位に沈降する傾向があるためである。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、CSTR(12)から密度の高い相を分離して除去するために、随意に外部及び/又はCSTRに取り付けられた装置を用いる、他の又は追加的な機構が用いられる。これらには、限定はされないが、CSTR(12)底部の垂直立て管、バッフル、堰き(weir)、又はこの相に対して密度に誘発される分離を受ける時間を与えられる他の機構、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。少なくとも1つの実施形態では、サンプリング装置(16、17)がCSTRの頂上及び/又は底部に配置され、2つの液相の成分を解明するために用いられる。
【0031】
少なくとも1つの実施形態では、CSTRへ継続的に投入される原料は、10〜16重量%の水を含む。この臨界量の水は、CSTR中での所望の2つの液相の形成、及び分離を促進する一方で、生成物中の望まれない加水分解性副生成物を最少化する。
【0032】
密度の高い相はCSTR(12)から除去された後、後熱部(21)を通過させられる。後熱部では、残渣レベルの未反応のTASがQAPに変換される。少なくとも1つの実施形態では、後熱部(21)は栓流反応器(22)を含む。少なくとも1つの実施形態では、栓流反応器(22)は50〜70°Cの温度に維持され、密度の高い相には0.5〜1.5時間の滞留時間が与えられる。少なくとも1つの実施形態では、残存するTASの全てに対し、十分な量のアルキル化剤が存在することを確実にするために、追加的なアルキル化剤が後熱部(21)に供給される。
【0033】
処理の後、後熱部(21)の生成物は、揮散部分(31)を通過させられる。ここで、未反応のアルキル化剤が揮散され、実質的に全てのTASが反応しているために、生成物に残るもの全てがQAPとなる。揮散部分(31)は、気体源(33)と流体連結しているタンク(32)などの、1つ以上のタンクを含む。少なくとも1つの実施形態では、この流体連結は気液の動的平衡状態にある。気体源(33)は、気体が生成物を通じて流れることを可能にし、生成物からいかなる残存アルキル化剤も浄化/除去する。少なくとも1つの実施形態では、使用される気体としては、それらに限定はされないが、空気、窒素、アルゴン又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、生成物に対して向流様式で流れる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、このタンクは、フラッシュタンク又はフラッシュドラムである。少なくとも1つの実施形態では、後熱部の生成物は、タンク(32)を通過する前に、フラッシュタンク/フラッシュドラム(35)を通過する。少なくとも1つの実施形態では、気体注入口(37)は、フラッシュタンク/フラッシュドラムの底部に配置されている。底部への位置決めは、液体中に沈んで、よりよく気体パージを促進することを可能にする。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、タンク(32)はストリップ塔である。このストリップ塔は、界面部分の蒸気−液体接触の増加を引き起こす、パッキング、トレー、バッフル、堰(wiers)、又はそれらの組み合わせなどの塔の内部物を含む。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、生成物注入口(34)は、タンク(32)の頂上に配置されている。少なくとも1つの実施形態では、揮散部分(31)は生成物中のアルキル化剤の量を約100ppmに低下させる。高度に純粋なQAP(1)が製造された後、追加的な水が約20重量%以上の水を含むQAP溶液溶液を得るために加えられる(この追加的な水は、後熱部の後及び揮散部分の前又は間に加えられる)。少なくとも1つの実施形態では、揮散部分(31)中のタンク(32又は35)からも、圧抜きバルブ(36)を用いて気体を放出することができる。
【0037】
この方法は継続的に高品質のQAPを生成する一方で、QAPの最終的な純度は、装置(10)に注入されるTASの品質にも依存する。不運なことに、特定のTAS、及びとりわけDMAEAは、短い保存寿命を持ち、不良な品質のTAS(及びとりわけDMAEA)から製造されるQAP(及びとりわけDMAEA・MCQ)は、低下したQAP品質をもたらすことが観察されている。少なくとも1つの実施形態では、QAPが製造された後で、安定化させる添加物がQAPを含む溶液に加えられる。従来は、MEHQ及び銅がDMAEAの安定化剤として用いられている。不運なことに、MEHQは、QAPの重合に用いられる下流の化学物質との相溶性の問題があり、高価であり、銅と望まれない副反応を引き起こすために理想的ではない。
【0038】
少なくとも1つの実施形態では、加えられる安定化添加物はBHTである。少なくとも1つの実施形態では、BHTは銅と組み合わされる。BHTは、MEHQより安価であり、下流の重合化学物質と相溶性であり、銅とは反応しない。BHTの使用は、製造されたQAPが水を多く(20%)含む溶液中で、経時的に分解することなく滞留することを可能にする。少なくとも1つの実施形態では、BHT、MEHQ、及び銅の組み合わせがQAPを安定化するために用いられる。
【実施例】
【0039】
上述したことは、説明の目的で提示され、及び本発明の範囲を制限することが意図されていない、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0040】
プロセスを実証するため、及び比較データを得るために、パイロット・プラント・ユニットを組み立てた。このプロセス装置を用いて、一連の実験でプロセスを反復遂行した。各実験では、特定の条件の組み合わせを用い、定常状態に達するために反応を十分に長い時間行った。最終生成物のサンプリングに加え、任意の所定の時間に、反応器の下部における反応混合物の物理的状態を観察する目的で、CSTR内に取り付けた浸漬管の手段により、処理中のサンプルをCSTRの下部から取り出した。
【0041】
最終生成物を、不純物であるアクリル酸(AA)、N,N−ジアルキルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、及びN,N−ジメチルアミノエタノール(DMAE)について分析した。最終生成物中のアクリル酸不純物のレベルは、全体の過程を通じたアクリル酸エステルの加水分解のレベルの目安を得るために共通して測定した。最終生成物中に存在するTASの合計レベルを示す、合計のアミン不純物(DMAEA+DMAE)も測定された。これらのアミン不純物は、所望の4級化反応には無反応性であるDMAEA及びDMAE塩を最終的に形成する、加水分解性副反応が生起している、プロセスのCSTR又は反応部分において主として生成されている。本発明者らは、これらのアミン不純物が、最終生成物を加工又は保存中に、重合に対して不安定にするために、これらのアミン(DMAEA及びDMAE)の合計量が、最終生成物の品質の重要な指標であることを見出した。
【0042】
表1に示されるように、参照実験1及び4は、受け入れがたい、高レベルのアクリル酸及び4級塩化されないアミン不純物を与えた。対照的に、実験11は、最終生成物中に、低レベルのアクリル酸不純物を与えると同時に、きわめて低いレベルの4級塩化されていないアミン不純物を与えた。実験9及び10Bは、最終生成物中に、適度に低いレベルのアクリル酸、及び4級塩化されていないアミン不純物を与えたが、不純物のレベルは実験11により与えられたものよりも高かった。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明が多くの異なる形態で具体化され得る一方で、本明細書には図面が示され、及び本発明の特定の好適な実施形態が詳細に記載されている。本開示は、本発明の原理の例示であり、及び説明された特定の実施形態に本発明を限定する意図を持たない。本願中の全ての特許、特許出願、科学的論文、及びいかなる他の引用された資料も、引用により、ここにその全体が本願に組み込まれる。更に、本発明は本明細書において記載され、及び本明細書に組み込まれた、さまざまな実施形態の一部又は全てのいかなる可能な組み合わせも包含する。
【0045】
上述の開示は、説明的であり、包括的であることを意図していない。この記載は多くの変形及び代替物を当業者に示唆するであろう。全てのこれらの代替手段及び変化は、原文における用語「含んでいる(comprising)」が「含んでいるが〜に限定されない(including,but not limited to)」を意味している、請求項の範囲内に包含されることが意図されている。当技術分野に通暁した者には、本明細書に記載された具体的な実施形態の他の等価物を認知することが可能であり、そのような等価物も請求項によって包含されることが意図される。
【0046】
本明細書において開示される全ての範囲及びパラメータは、任意及び全ての部分的範囲、その中に部分的に集計されるもの、及び終点までの全ての数字を包含するものと理解される。例えば、「1〜10」の範囲とは、最小値である1から、最大値である10までの間の(1及び10を含む)、任意及び全ての部分的範囲、即ち、最小値である1又はより大きな値から始まり(例えば1〜6.1など)、最大値である10又はそれ未満の値で終了する(例えば、2.3〜9.4、3〜8、4〜7など)、そして最終的には、その範囲内に含まれる、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10の各数を含むものと考慮されるべきである。
【0047】
このことは、本発明の好適な、及び変更された実施形態の記述を完成する。当業者は、本明細書に記載された具体的な実施形態の等価物を認識するであろうが、そのような等価物も本明細書に添付された特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
QAPを継続的に製造する方法であって:
TAS、水、及びアルキル化剤を含む反応物を継続的にCSTRに供給する工程;
2つの実質的に明白に異なる液相が形成され、密度の高い相が実質的に80%より多いQAP及び20%未満の水を含み、軽い相が反応混合物全体の約5重量%より多い量で存在し、実質的にTAS及びアルキル化剤を含むように、前記CSTR内の条件を維持する工程;
前記CSTR中の水分量が、継続的に該CSTRに加えられる反応物の16%を超えないようにする工程;及び
前記CSTRから、実質的に第二相だけを継続的に除去する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記TASが以下のものより成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法:DMAEA、いずれものN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びそれらの任意の組み合わせ。
【請求項3】
製造される前記QAPが、DMAEA・MCQである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキル化剤が、以下のものから成る群より選ばれる、請求項1に記載の方法:塩化メチル、塩化ベンジル、塩化セチル、ジメチル硫酸、及び他の普通に知られているアルキル化剤、及びそれらの任意の組み合わせ。
【請求項5】
前記第二相が、前記CSTRの底部から取り除かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
除去された前記第二相の液体中の残余のTASの追加的反応が、追加的なアルキル化剤を添加することにより促進される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二相の液体を気体によりパージすることにより、前記アルキル化剤が取り除かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルキル化剤をストリップ塔を通過させることにより、前記アルキル化剤が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルキル化剤をストリップ塔の頂上を通過させ、ストリップ塔の底部からは、空気、窒素、及びそれらの任意の組み合わせから成る群より選ばれる気体を通過させることにより、前記アルキル化剤を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CSTR内の温度が40〜60°Cに維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記CSTR内の圧力が、30〜100psiに維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
TAS及びQAPの混合により誘発されるせん断が、前記CSTR内部の他の位置よりも低くなっている、CSTRの底部の部位から前記第二相の液体が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
製造された前記QAPに、BHT及び銅を加える工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
製造された前記QAPに、MEHQを加える工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
製造された前記QAPが300ppm未満のTASを自身の中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、以下の工程を更に含む方法:
前記第二相の液体中の残存するいずれものTASの反応を促進する工程;
前記第二相の液体から前記アルキル化剤を揮散させる工程;及び
所望の物理的性質を達成するために、前記第二相の液体に水を加える工程。
【請求項17】
QAPを継続的に製造する方法であって:
CSTR中に、TAS、水、及びアルキル化剤を含む反応物を継続的に供給する工程;
2つの実質的に明白に異なる液相が形成され、密度の高い相が実質的にQAP及び水を含み、軽い相が実質的にTAS及びアルキル化剤を含むように、前記CSTR内の条件を維持する工程;及び
前記CSTRから、実質的に前記密度の高い相の液体のみを継続的に除去する工程;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518047(P2013−518047A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550133(P2012−550133)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/021961
【国際公開番号】WO2011/091197
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】