説明

第5輪の直線上の位置の制御方法とシステム

本発明は、車両が走行中、トラクター部(1)とセミトレーラ(2)からなる車両結合体の第5輪(4)の直線上の位置を制御する方法およびシステムに関し、第5輪の直線上の位置は、車両速度に基づいて自動的に制御される。車両速度の増速に応答して指令される、運転室(3)とセミトレーラの間の距離を減少させるための第5輪の前方への移動は、トラクター部がギアチェンジ操作を行っていない期間よりもトラクター部がギアチェンジ操作を行なっている期間により速い第5輪の移動速度で行われる。車両速度の減速に応答して、運転室とセミトレーラの間の距離を拡大させるため第5輪の後方への移動が行なわれる必要があるとき、トラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかけることを指令することにより、第5輪の後方への移動を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行中、トラクター部の第5輪の直線上の位置を制御する請求項1の前提部に記載の方法と請求項4の前提部に記載のシステムに関する。本発明は、また、本発明による方法を実行するためのコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品と電子制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
セミトレーラを牽引するトラクター部は、通常「第5輪」として従来から知られている連結手段を備えている。第5輪はトラクター部の後部のトラクター部の車台に設置されている。第5輪は、セミトレーラの先端部でセミトレーラの車台から下方に突設された所謂キングピン形の連結装置を収容するための後方に伸びる溝を有する。キングピンは第5輪の溝の中に強固に固定手段によって固定されている。
【0003】
国際特許出願WO2007/068762A1号、米国特許出願第US2008/0036173A1号、およびドイツ特許出願第DE10 2007 031 318 A1号に記載の技術は、第5輪の直線上の位置の自動制御であり、第5輪は、車両速度の増速に応答して前方に動いてトラクター部の運転室とセミトレーラとの間の距離を縮め、車両速度の減少に応答して後方に動いて運転室とセミトレーラとの間の距離を増加させるよう移動可能である。車両結合体が高速で走行中、車両結合体の空気抵抗を減少させるために、第5輪の前方への移動が行われる。運転室とセミトレーラの間の隙間は空気抵抗に影響する空気の乱流を引き起こす。隙間が大きいほど空気の乱流は強くなり、乱流の強化にともなって空気抵抗が大きくなる。従って、隙間の減少により空気抵抗が減少し、従って、トラクター部の燃料消費を低下させる。然し、運転室とセミトレーラとの間の距離の減少は、車両結合体の旋回能力に関しては不利であり、その理由は、この距離が小さいと、小さな半径の旋回は不可能となるからである。もし運転室とセミトレーラの間の距離が小さすぎると、車両が小さな半径の旋回をしようとすると、セミトレーラの先端が運転室の後端部に当たり、運転室もセミトレーラも共に大きな損傷を受ける結果を招きかねない。車両結合体が高速走行の場合、車両結合体が半径の小さすぎる旋回ができないことは別の理由もあろうし、そうであれば、運転室とセミトレーラとの間の距離は小さくともよい。低速走行の場合、車両結合体は小さな半径の旋回を行う必要があることもある。この場合、運転室とセミトレーラの間の距離は、そのような小半径の旋回を実行できるようにより大きいことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願WO2007/068762A1号
【特許文献2】米国特許出願第US2008/0036173A1号
【特許文献3】ドイツ特許出願第DE10 2007 031 318 A1号
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、車両が走行中、車両速度の上昇に応答して、トラクター部の第5輪を前方へ移動させてトラクター部の運転室とセミトレーラの間の距離を縮小し、車両速度の減速に応答して、第5輪を後方へ移動させて運転室とセミトレーラの間の距離を増加させる新規で有益な方法を提案することである。
【0006】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に定義された特徴を有する方法、および請求項4に定義された特徴を持つシステムによって達成される。
【0007】
本発明によれば、
−車両速度の増速に応答して指示される、運転室とセミトレーラとの間の距離を縮めるための第5輪の前方への移動を、トラクター部がギアチェンジ操作を行っていない期間よりトラクター部がギアチェンジ操作を行っている期間に、より早い第5輪の移動速度で行なう、および/または、
−車両の速度が低下することに応答して、運転室とセミトレーラの間の距離を増加させるべく第5輪を後方移動させる必要がある時、トラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかけることを指示することにより、第5輪の後方への移動を促進する。
【0008】
トラクター部が加速されると、セミトレーラからの第5輪への力は後方に向く。このような状態では、第5輪を運転室へ向かう望ましい前方方向に動かすためには、比較的強い力を必要とする。トラクター部がギアを変えると、トラクター部の加速は減少するので、セミトレーラによって結合手段を経由して第5輪へかかる後方への力もまた減少する。従って、第5輪の動きを制御するスイッチング装置は、トラクター部がギアチェンジ作業を行わない時間より、トラクター部がギアチェンジを行う時間の方が、スイッチング装置が第5輪に作用させる力を増加させる必要もなく、望ましい前方への移動をより早い速度で達成する。トラクター部がギアチェンジ操作を実行中の期間に、第5輪の移動速度を増加させると、望ましい直線上の位置をより迅速に達成可能であり、ゆえに、空気の乱流を下げると共に、燃料消費を減少させる直線上の位置を達成することができる。
【0009】
トラクター部が減速すると、セミトレーラから第5輪への力は前方に向かうので、この状況では、第5輪を運転室から離して、望ましい後方へ動かすには、比較的大きな力が必要となる。車両の減速に応答してトラクター部を基準としてセミトレーラに幾分制動をかけると、セミトレーラが第5輪に与える前進力を減少させ、セミトレーラから第5輪への力が後方にさえ転換することもある。第5輪を望ましい後方へ動かすことは、従って、トラクター部を基準としてセミトレーラに制動をかけることによって促進される。従って、望ましい直線上の位置は、より迅速に、スイッチング装置からはより小さい力を与えて達成できる。この結果、交通の安全が強化され、同時に、スイッチング装置の寸法要件が緩和される。
【0010】
本発明による方法とシステムの他の優れた特徴は、従属請求項および以下の記述に示されている。
【0011】
本発明は、請求項9に定義される特徴を有するコンピュータプログラム製品および請求項11に定義された特徴を有する電子制御ユニットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、添付する図面を参照して実施の形態に基づいて以下により詳細に記載される。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図1】図1は、トラクター部とトラクター部に結合されたセミトレーラからなる車両結合体の側面図である。
【図2A】図1に示す車両結合体の平面模式図で、トラクター部の第5輪が第1の直線上の位置にある場合を示す。
【図2B】図1に示す車両結合体の平面模式図で、トラクター部の第5輪が第1の直線上の位置にある場合を示す。
【図3A】図1に示す車両結合体の平面模式図で、トラクター部の第5輪が第2の直線上の位置にある場合を示す。
【図3B】図1に示す車両結合体の平面模式図で、トラクター部の第5輪が第2の直線上の位置にある場合を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係るシステムのスケルトン図である。
【図5】本発明に係る方法を実行するための電子制御ユニットのスケルトン図である。
【図6】本発明の一実施形態による方法を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、トラクター部1とトラクター部に結合されたセミトレーラ2からなる車両結合体を模式的に示す。トラクター部1は、運転室3と所謂第5輪4と呼ばれる形態の結合手段とを備えている。第5輪4は、運転室3の背後のトラクター部1の後部に設置されている。第5輪4は、セミトレーラ2の先端部でセミトレーラの車台から下方に突設された、キングピンとして知られる結合手段6を収容するための後方に延びる溝5を持つ(図2〜3参照)。結合手段6は、固定手段によって、第5輪の溝5の中に強固に固定されている。固定手段は、通常の構成からなり、図面に図示されていない。こうして、セミトレーラ2は、セミトレーラの結合手段6とトラクター部の第5輪4との間の係合によってトラクター部1に結合されている。
【0014】
第5輪4は運転室3に対してトラクター部の長手方向に移動可能であり、スイッチング装置21(図4参照)によって運転室3に対して種々の直線上の位置に置くことができる。スイッチング装置21は、車両が走行中に第5輪の直線上の位置を自動制御することが可能に形成された本発明によるシステム20の一部である。第5輪4はトラクター部の長手方向の前後に所定の距離移動することが可能なので、第5輪4と運転室3の間の距離、従って、運転室3とセミトレーラ2の間の距離dを制御することができる。
【0015】
図2Aおよび図2Bは、第5輪4が最も後退した位置にある、即ち、運転室3とセミトレーラ2の間が最大間隔dmaxである車両結合体を模式的に図示している。図2Bに示すように、トラクター部1は、この場合、セミトレーラ2に対して完全に旋回する能力を持ち、運転室3がセミトレーラにぶつかることなく小さな半径で旋回することができる。
【0016】
図3Aおよび図3Bは、第5輪4が最も前方の位置にある、すなわち、運転室3とセミトレーラ2の間が最小間隔dminである車両結合体を模式的に示す。図3Bに示すように、トラクター部1は、この場合、セミトレーラ2に対して旋回する能力には限界があり、トラクター部がセミトレーラに対して小さな角度で曲がろうとしても、運転室3はセミトレーラの先端部に衝突してしまう。
【0017】
図4に示す例において、第5輪4は、2本のスライドレール10に沿って摺動可能なスライド台9上に設置されている。これらスライドレール10は、トラクター部車台に強固に連結されており、トラクター部の長手方向に伸びている。従って、スライドレール10に沿ってスライド台9を前後に動かすことにより、第5輪4がトラクター部の長手方向に前後に動く。スライド台9は、前後のいずれの方向であろうと、前述のスイッチング装置21によって、スライドレール10に沿って望ましい方向に動かすことができる。図示した例において、スイッチング装置21は、複動油圧シリンダ22と、油圧シリンダへおよび油圧シリンダからの油の流れを制御するためのバルブ装置23とからなる。図示した油圧シリンダ22は、トラクター部の車台に強固に連結されたシリンダ要素22aと、このシリンダ要素に収容されシリンダ要素に対して可動であり、スライド台9に固定されたピストンロッド22bをもつピストンとからなる。図4は、破線で、固定装置29を模式的に示している。第5輪の設置位置を変える必要がない場合、、固定装置29はスライド台9の固定を始動させて、第5輪4をスライドレール10に対するの所望位置に強固に固定することができ、これによってスイッチング装置21に対する負荷を軽減し、第5輪が意図せずに移動することがないようにする。第5輪4をいずれかの方向に動かし、その設置位置を変える必要のある場合、固定装置29は、スイッチング装置21の作用に応答して固定動作を中止し、スライド台9がスライドレール10に対して自由に移動可能とする。
【0018】
上述の例の代替案として、第5輪のスイッチング装置21は、他の既知の様式で形成できよう。スイッチング装置は、例えば、米国特許出願第2008/0036173A1号に記載のように、駆動モータによって動かされるネジ付きロッドとナットを用いて、第5輪を動かすよう適合されていてもよい。あるいは、ドイツ特許出願第DE10 2007 031318A1号に記載のようにバネ負荷空気式ベローズを用いるか、あるいは、1個またはそれ以上の空気シリンダを用いる方法がある。
【0019】
制御システム20は、スイッチング装置21および固定装置29を制御するための電子制御装置24を含む。この制御装置24は、図4に示すように、トラクター部に1個の電子制御ユニットの形態とするか、あるいは、2個またはそれ以上の相互に作用する複数の電子制御ユニットの形態としてもよい。図4に示した例では、制御装置24は、第5輪4の直線位置を制御するために、バルブ装置23に制御信号を送り、油圧シリンダ22からまたは油圧シリンダ22への油の流れを制御するよう適合されている。制御装置24はまた、固定装置29の作動または作動中止の制御を行うため、制御信号を固定装置29に送るよう適合されている。
【0020】
制御装置24は、車両速度に基づいて第5輪4の直線上の位置の設定値

を決め、その設定値

に基づいてスイッチング装置21を制御することによって、スライドレール10に沿って、第5輪がその設定値に相当する直線上の位置に動かされるよう適合されている。制御装置24は、車両の速度に基づいて、所定の範囲内で、前記設定値

を無段階または段階的に変化させることができるよう適合されている。
【0021】
トラクター部1の現行の走行速度に関する情報は、車両速度検出用のセンサ25から直接制御装置24に送信されるか、あるいは、そうしたセンサに接続された電子制御ユニットから制御装置24に送信される。車両速度は、例えば、車輪速度センサからの測定値に基づいて推定されるか、または、トラクター部の駆動軸のある要素、例えば、トラクター部のギアボックスの出力軸の回転速度の測定値に基づいて推定されてもよい。
【0022】
制御装置24はさらに、第5輪4の現行の直線位置を表す実測値

を受信するかあるいは決めるよう適合されている。第5輪4の現行の直線位置についての情報は、第5輪の直線位置を検出するよう適合されているセンサ26から制御装置24に供給されてもよい。設定値

と実測値

とを比較することによって、制御装置24は、実測値

を設定値

と一致させるために、第5輪4が運転室3に向かう前方への移動か運転室から離れる後方への移動のいずれがスイッチング装置21によって行われる必要があるかを決める。
【0023】
車両速度の増速に応答して設定値

に基づいて、トラクター部1がギアチェンジ操作をしていない時より、トラクター部のギアチェンジ時に第5輪がより早い速度で、運転室3とセミトレーラ2の間の距離を縮める第5輪4の前方への移動がスイッチング装置21によって達成されるように、制御装置24はスイッチング装置21を制御するよう適合されている。例えば、第5輪の予め設定された第1移動速度v1は、ギアチェンジ操作が行われていない時に適用し、第1の移動速度v1より大きい予め定められた第2移動速度v2は、ギアチェンジ操作が行われているときに適用することができる。この第5輪の移動速度の制御を可能とするために、制御装置24はトラクター部の電子制御ユニット27、例えば、トラクター部のギアボックス制御ユニットから、トラクター部のギアチェンジ操作の始動時、または、終了時を示す情報を受信するよう適合されている。従って、制御装置24によって指令されて、第5輪4の運転室3へ向かう前方への移動の実施中、スイッチング装置が第5輪を動かす速度は、第5輪の移動が行われている最中にギアチェンジが行われる場合、前記第1速度v1と前記第2速度v2との間で変えられる。
【0024】
車両速度の減速に応答して、制御装置24が運転室3とセミトレーラの間の距離を増加するために第5輪4の後方への移動を指令する場合、制御装置は、電子ブレーキ制御装置28にトラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかける要求を出力し、これによって第5輪の後方への移動が容易になるように、トラクター部1を基準としてセミトレーラ2にブレーキをかけることを同時に指示するよう適合されている。制御装置24によって指令されたトラクター部1に対するセミトレーラ2のブレーキは、勿論、あまり強くかけてはならず、このブレーキによって運転者が運転に支障のない程度にとどめるべきである。
【0025】
図6は、車両が走行中、トラクター部上に配置された上述の種類の第5輪4の直線位置を制御するための本発明に係る方法の一実施形態を示すフローチャートである。ステップS1において、トラクター部が走行中、第5輪の直線位置の設定値

と実測値

が連続的に決定される。ステップS2において、現行の設定値

と実測値

が比較される。もし、設定値

と実測値

の差がある制限値を超える場合、ステップS3で、実測値

を設定値

と一致させるために第5輪4を前方か後方かいずれへ移動させるべきか決定する。ステップS3において、トラクター部1が加速中の場合のように、第5輪4がトラクター部の運転室3に向かって前方へ移動する必要があると判定すれば、ステップS4において、トラクター部がギアチェンジ操作を行っているか否か判定する。ステップS4において、ギアチェンジ操作が行われていないと判明した場合、ステップS5が、第5輪のスイッチング装置21に第5輪を第1の移動速度v1で前方へ移動させることを指令する。ステップS4でギアチェンジ操作が行われていることが判明した場合、ステップS6において、第5輪のスイッチング装置21に、第5輪の前方への移動を、第1移動速度v1よりも大きい第2移動速度v2で行うことを指令する。第5輪の前方への移動中、行われているギアチェンジ操作が終了しつつあるか、あるいは、新たなギアチェンジ操作が始まっているかを連続的に監視する。ここで、前記移動速度v1、v2の間の移動速度の変化は、ギアチェンジ操作が始動中か終了中かによって定められる。ステップS3において、トラクター部1が減速中である場合のように、第5輪4がトラクター部の運転室3から離れる方向に後退する必要がある場合、ステップS7はトラクター部1を基準としてセミトレーラ2にブレーキがかかるように指令し、第5輪のスイッチング装置21に対して第5輪を後方へ移動するよう指令する。
【0026】
本発明による方法を実行するためのコンピュータプログラムコードは、コンピュータの内部メモリ、例えば、トラクター部の電子制御ユニットの内部メモリに読み込むことが可能なコンピュータプログラムの一部であるという利点がある。そうしたコンピュータプログラムは、電子制御ユニットによって読み取ることができ、かつ該コンピュータプログラムが記憶されているデータ記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品として提供できることが利点である。前記データ記憶媒体は、例えば、CDROMディスクやDVDディスクなどといった形式の光学的データ記憶媒体、ハードディスク、ディスケット、カセットテープなどといった形式の磁気的記憶媒体、またはフラッシュメモリ、もしくはROM、PROM、EPROM、あるいはEEPROM型メモリである。
【0027】
本発明の一実施形態によるコンピュータプログラムは、トラクター部の長手方向のトラクター部の運転室に対する直線上の種々の位置にスイッチング装置により設定可能な第5輪を備えたトラクター部において、運転室とトラクター部に第5輪を通じて結合されたセミトレーラとの間の距離を制御し、トラクター部の電子制御ユニットに以下を行わせるように構成されたコンピュータプログラムコードからなる。すなわち、
−現行の車両速度を表す値を受信あるいは決定する、
−車両速度に基づいて第5輪の直線位置に対する設定値

を定め、設定値

に基づいて、スイッチング装置を制御する、および、
−車両速度の増速に答えて運転室とセミトレーラの間の距離を短縮すべく、トラクター部においてギアチェンジ操作が行われていない時期よりもギアチェンジ操作が行われている時期により早い第5輪の移動速度でスイッチング装置により第5輪の前方への移動を行うようにスイッチング装置を制御する、および/または、
−スイッチング装置が、車両速度の減速に応答して、運転室とセミトレーラとの間の距離を拡大するために第5輪の後方への移動を行う必要がある時、トラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかけることを指令することにより、第5輪の後方への移動を促進する
ことを行わせる。
【0028】
図5は、例えば、コンピュータソフトウエアを実行する中央演算部(CPU)といった実行手段31を含む電子制御ユニット30を極めて模式的に示している。実行手段31は、データバス33を経由して、例えば、RAM型のメモリ32と通信する。ユニット30はまた、例えば、フラッシュメモリの形態、あるいは、ROM、PROM、EPROM、あるいはEEPROM型のメモリの形態のデータ記憶媒体34を含む。実行手段31は、データバス33を経由してデータ記憶手段34と通信する。本発明による、例えば、図5に示す実施の形態による方法を実行するコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムは、データ記憶媒体34上に記憶されている。
【0029】
本発明は、無論、上記の実施の形態に限定されるものではない。なぜなら、本発明の変形の可能性が大きいことは、これにより添付の請求の範囲に定義されている本発明の基本理念から逸脱する必要なしに、当技術分野の専門家にとって自明となるであろうからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−運転室(3)と、トラクター部(1)の長手方向で運転室(3)に対して移動可能であり、スイッチング装置(21)によって運転室(3)に対して直線上の種々の位置に設定可能な第5輪(4)と、を有するトラクター部(1)と、
−結合手段(6)を有するセミトレーラ(2)であって、セミトレーラの結合手段(6)とトラクター部の第5輪(4)との間の係合によってトラクター部(1)に結合されたセミトレーラ(2)と
を含む車両結合体(1、2)が走行中、車両結合体の第5輪(4)の直線上の位置を制御するための方法であり、第5輪(4)の直線上の位置を車両速度に基づいて自動的に制御する方法であって、
−車両速度の増速に応答して、運転室(3)とセミトレーラ(2)の間の距離を減少させるために、トラクター部(1)がギアチェンジ操作を行なっていない期間より、トラクター部(1)がギアチェンジ操作を行なっている期間により早い第5輪の移動速度で、第5輪(4)を前方に移動させ、かつ/または
−車両速度の減速に応答して、運転室(3)とセミトレーラ(2)の間の距離を拡大するために第5輪(4)を後方へ移動させる必要がある場合、トラクター部(1)を基準としてセミトレーラ(2)にブレーキをかけることを指令し、これにより第5輪(4)の後方への移動を促進することを特徴とする方法。
【請求項2】
第5輪(4)の直線上の位置は、車両速度に基づいて、2つの両極位置の間で無段階に制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第5輪(4)の直線上の位置は、車両速度に基づいて、2つの両極位置の間で段階的に制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
車両が走行中、トラクター部の第5輪の直線上の位置を制御するためのシステムであって、前記システム(20)は、
−それによってトラクター部の長手方向におけるトラクター部の運転室に対する直線上の種々の位置に第5輪を設定でき、これにより運転室と第5輪を通じてトラクター部に結合されたセミトレーラとの間の距離を制御するスイッチング装置(21)と、
スイッチング装置(21)を制御するための電子制御装置(24)であって、車両速度に基づいて第5輪の直線上の位置に対する設定値

を決め、かつ、その設定値

に基づいてスイッチング装置(21)を制御するよう適合されている電子制御装置(24)とを備え、
−制御装置(24)が、前記設定値

に基づいて、車両速度の増加に応答して、運転室とセミトレーラの間の距離を減少させるために、トラクター部がギアチェンジ操作を行なっていない期間よりトラクター部がギアチェンジ操作を行なっている期間により早い第5輪の移動速度で、スイッチング装置(21)により第5輪を前方に移動させるように、スイッチング装置(21)を制御するよう適合され、および/または
−車両速度の減少に応答して、運転室とセミトレーラの間の距離を拡大するために第5輪を後方へ移動させることを指令する場合、制御装置(24)が、トラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかけることを同時に指令することにより、第5輪の後方への移動を促進するよう適合されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
前記制御装置(24)は、車両速度に基づいて前記設定値

を既定の範囲内で無段階に変化させることができるよう適合されていることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置(24)は、車両速度に基づいて前記設定値

を既定の範囲内で段階的に変化させることができるよう適合されていることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御装置(24)は、トラクター部のギアチェンジ操作の開始および終了の時期を示す情報をトラクター部の電子制御ユニットから受信するよう適合されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置(24)は、車両速度の減速に応答して、制御ユニットが、運転室とセミトレーラの間の距離を拡大するために第5輪の後方への移動を指令する時、トラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかける要求を電子ブレーキ制御ユニットに送信するよう適合されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
運転室と第5輪を通じてトラクター部に結合されたセミトレーラとの間の距離を制御するために、スイッチング装置によってトラクター部の長手方向のトラクター部の運転室に対する直線上の種々の位置に設定可能な第5輪を備えたトラクター部において、トラクター部の電子制御装置に、
−現行の車両速度を表す値を受信または決定し、
−車両速度に基づいて第5輪の直線上の位置の設定値

を決定し、前記設定値

に基づいてスイッチング装置を制御する、および、
−車両速度の増速に応答して、運転室とセミトレーラの間の距離を減少させるために、トラクター部がギアチェンジ操作を行なっていない期間よりトラクター部がギアチェンジ操作を行なっている期間に、スイッチング装置により第5輪をより速い第5輪の移動速度で前方に移動させるように、スイッチング装置を制御し、および/または
−スイッチング装置が、車両速度の減速に応答して、運転室とセミトレーラの間の距離を拡大するために第5輪を後方に移動させる必要がある場合、トラクター部を基準としてセミトレーラにブレーキをかけることを指令することにより、第5輪の後方への移動を促進する
ことを行わせるよう構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
コンピュータプログラム製品は、電子制御ユニットによって読み取ることができるデータ記憶媒体を含み、前記コンピュータプログラムコードはデータ記憶媒体上に記憶されることを特徴とする請求項9に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
実行手段(31)、実行手段に接続されたメモリ(32)、および実行手段に接続されたデータ記憶媒体(34)を含み、請求項9に記載のコンピュータプログラム製品のコンピュータプログラムコードが前記データ記憶媒体(34)上に記憶されている、トラクター部のための電子制御ユニット。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510398(P2012−510398A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538592(P2011−538592)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051351
【国際公開番号】WO2010/064979
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(500190915)スカニア シーブイ アクチボラグ(パブル) (64)