説明

筆記具の筆先構造

【課題】筆先の形状を先鋭な形に形成して、細い線を綺麗に書ける筆記具の筆先構造を提供する。
【解決手段】内部にインキ又はインキの含浸した中綿18が収納される筒状の筆記具本体12と、該筆記具本体12の先端部12aに嵌め込むノーズピース13と、該ノーズピース13の貫通孔14に設けられる筆先15とを少なくとも有する筆記具11の筆先構造であって、前記筆先15は、親水性を有する合成樹脂材で形成されると共に、中心部に長さ方向に沿った貫通孔16が形成され、該貫通孔16には、合成樹脂材で形成された糸状部材17が集束され、該糸状部材17の先端部17aが、前記筆先15の先端部15aから所定長さ突出して位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば筆ペン等の筆記具の筆先構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の筆ペンの構造としては、図6に示す構成のものが知られている。この筆ペンは、インキ収納部1を備える筆記具本体2と、この筆記具本体2の内部に設けられるコレクタ3と、このコレクタ3の中心孔に貫通する中継芯4と、筆記具本体2の先端部に嵌め込むノーズピース5と、このノーズピース5に集束する筆先6とから構成される(特許文献1参照)。
【0003】
中継芯4は、基部4aがインキ収納部1に位置し、先端部4bが筆先6の中心部に挿入した状態にある。このように、中継芯4がインキ収納部1と筆先6との間に介在することによって、インキが筆先6へスムーズに流出する。
【特許文献1】実開平5−58357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来例の筆ペンにおいては、筆先6の中心部に中継芯4を設けるので、筆先6の中心部の命毛をわざわざ抜く必要がある。命毛は筆の一番長い芯になる毛であって、この命毛により細い綺麗な線が書けるのである。従って、命毛を抜くと筆先6の形状が先鋭な形に形成できないだけでなく、細い線が綺麗に書けないという問題点を有している。
【0005】
従って、従来例における筆ペンにおいては、筆先6の形状を先鋭な形に形成して、細い線を綺麗に書けるようにすることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来例の課題を解決する具体的手段として本発明は、内部にインキ又はインキの含浸した中綿が収納される筒状の筆記具本体と、該筆記具本体の先端部に嵌め込むノーズピースと、該ノーズピースの貫通孔に設けられる筆先とを少なくとも有する筆記具の筆先構造であって、前記筆先は、親水性を有する合成樹脂材で形成されると共に、中心部に長さ方向に沿った貫通孔が形成され、該貫通孔には、合成樹脂材で形成された糸状部材が集束され、該糸状部材の先端部が、前記筆先の先端部から所定長さ突出して位置することを特徴とする筆記具の筆先構造を提供するものである。
【0007】
また、前記親水性を有する合成樹脂材は、焼結樹脂であること;
前記筆先の貫通孔は、後端部が拡径すると共に先端部方向に沿って縮径してテーパー状に形成されること;
を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る筆記具の筆先構造は、内部にインキ又はインキの含浸した中綿が収納される筒状の筆記具本体と、該筆記具本体の先端部に嵌め込むノーズピースと、該ノーズピースの貫通孔に設けられる筆先とを少なくとも有する筆記具の筆先構造であって、前記筆先は、親水性を有する合成樹脂材で形成されると共に、中心部に長さ方向に沿った貫通孔が形成され、該貫通孔には、合成樹脂材で形成された糸状部材が集束され、該糸状部材の先端部が、前記筆先の先端部から所定長さ突出して位置することによって、筆先の中心部には命毛に替わって糸状部材が設けられる。従って、筆先の中心部を先鋭な形に形成できて、細い線を綺麗に書くことができる。
また、筆先は親水性を有する合成樹脂材を金型に入れて一体成形するので、寸法精度が高く、大量生産が可能であり、製造コストが低く安価であるという種々の優れた効果を奏する。
【0009】
また、親水性を有する合成樹脂材は、焼結樹脂であることによって、この焼結樹脂は、ポリエチレン等の合成樹脂材の粉末体を押し固めて加熱成型して作られるものであり、その内部には連続気泡が形成されて、毛細管現象により液体を吸い上げる作用が良好であるという優れた効果を奏する。
【0010】
そして、筆先の貫通孔は、後端部が拡径すると共に先端部方向に沿って縮径してテーパー状に形成されることによって、貫通孔に集束される糸状部材が先端部方向に沿って先鋭な形に集束することとなり、より一層細い線を描けることとなる。
更には、糸状部材は先端部方向に沿うほど密集密度が高くなるので、毛細管現象によって先端部方向へインキが流れやすくなるという種々の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1において、符号11は筆記具を示し、この筆記具11は、筒状の筆記具本体12と、この筆記具本体12の先端部12aに嵌め込むノーズピース13と、このノーズピース13の貫通孔14に設けられる筆先15と、この筆先15の貫通孔16に集束される糸状部材17とから構成される。
【0012】
筆記具本体12は、先端部12aが開口した筒状に形成されており、その内部にはインキ収納部19が設けられている。インキ収納部19には、インキ、インキカートリッジあるいはインキの含浸した中綿18が収納される。
【0013】
筆記具本体12の先端部12a側には周方向に沿って段部20が形成されており、この段部20には、縮径部21が延設されている。
【0014】
ノーズピース13は、図1から図3に示すように、その中心部に長さ方向に沿った貫通孔14が形成されている。ノーズピース13の先端側にはテーパー部22が設けられており、テーパー部22の後部には周方向に沿って段部23が形成されている。この段部23が筆記具本体12の先端部12aに当接する。また、段部23の後部には、筒部24が延設されており、筒部24の外周面には、溝部25が形成されている。そして、筒部24の外径寸法は、縮径部21の内径寸法よりも僅かに小さめか又は略同じ寸法に形成されている。つまり、筒部24を筆記具本体12の縮径部21の内側に圧着した状態に嵌め込むことができるように構成されているのである。
【0015】
筆先15は、親水性を有する合成樹脂材、例えば焼結樹脂で形成される。この焼結樹脂は、ポリエチレン等の合成樹脂材の粉末体を押し固めて加熱成型して作られる。その内部には連続気泡が形成されており、毛細管現象により液体を吸い上げる作用が良好である。
【0016】
この筆先15は、親水性を有する合成樹脂材、例えば焼結樹脂を金型に入れて一体成形するので、寸法精度が高く、後述するテーパー状の貫通孔16を寸法精度良く作ることができる。また、大量生産が可能であり、製造コストが低く安価である。
【0017】
また、筆先15は、図4及び図5に示すように、中心部に長さ方向に沿った貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、後端部16bが拡径すると共に先端部16a方向に沿って縮径してテーパー状に形成される。従って、貫通孔16に集束される糸状部材17が先端部16a方向に沿って先鋭な形に集束することとなり、より一層細い線を描ける。更に、糸状部材17は先端部16a方向に沿うほど密集密度が高くなるので、毛細管現象によって先端部16a方向へインキが流れやすくなるのである。
【0018】
糸状部材17は、周知の合成樹脂材からなる糸材を束ねて形成したものであり、この糸状部材17が貫通孔16に集束されている。糸状部材17の先端部17aは、図1から図3に示すように、筆先15の先端部15aから所定長さ突出して位置する。また、糸状部材17の後端部17bは、筆先15の後端部15b近傍に位置する。
【0019】
以上のように構成される筆記具11の筆先構造は、従来の命毛に替わって、筆先15の中心部に糸状部材17を設けるので、筆先15の中心部を先鋭な形に形成できて、細い線を綺麗に書けることとなる。更には、筆先15の貫通孔16がテーパー状に形成されるので、糸状部材17が先端部16a方向に沿ってさらに先鋭な形に集束することとなり、より一層細い線を描ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】筆記具11の断面図である。
【図2】筆先15が集束されたノーズピース13の平面図である。
【図3】筆先15が集束されたノーズピース13の断面図である。
【図4】筆先15の平面図である。
【図5】筆先15の断面図である。
【図6】従来例に係る筆ペンの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 インキ収納部
2 筆記具本体
3 コレクタ
4 中継芯
4a 基部
4b 先端部
5 ノーズピース
6 筆先
11 筆記具
12 筆記具本体
12a先端部
13 ノーズピース
14 貫通孔
15 筆先
15a先端部
15b後端部
16 貫通孔
16a先端部
16b後端部
17 糸状部材
17a先端部
17b後端部
18 中綿
19 インキ収納部
20 段部
21 縮径部
22 テーパー部
23 段部
24 筒部
25 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインキ又はインキの含浸した中綿が収納される筒状の筆記具本体と、該筆記具本体の先端部に嵌め込むノーズピースと、該ノーズピースの貫通孔に設けられる筆先とを少なくとも有する筆記具の筆先構造であって、
前記筆先は、親水性を有する合成樹脂材で形成されると共に、中心部に長さ方向に沿った貫通孔が形成され、
該貫通孔には、合成樹脂材で形成された糸状部材が集束され、
該糸状部材の先端部が、前記筆先の先端部から所定長さ突出して位置すること
を特徴とする筆記具の筆先構造。
【請求項2】
前記親水性を有する合成樹脂材は、焼結樹脂であること
を特徴とする請求項1に記載の筆記具の筆先構造。
【請求項3】
前記筆先の貫通孔は、後端部が拡径すると共に先端部方向に沿って縮径してテーパー状に形成されること
を特徴とする請求項1に記載の筆記具の筆先構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−269251(P2009−269251A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120289(P2008−120289)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(391056701)池田物産株式会社 (22)
【Fターム(参考)】