説明

筆記具の軸筒

【課題】環境問題を考慮して材料の使用量の削減するとともに、安全に使用できる筆記具の軸筒を簡単な構造で提供する。
【解決手段】軸筒本体内に筆記具用レフィルを配設した筆記具の軸筒において、前記軸筒本体の外壁に円周上に連続しない貫通孔を形成するとともに、少なくとも該貫通孔の軸筒本体表面側の縁部に、面取り加工を施した指先保護部を設ける。または、少なくとも貫通孔の軸筒本体表面側の縁部に、軟質樹脂部材を装着した指先保護部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具の軸筒に関し、さらに詳しくは、軸筒本体を形成する材料の使用量を削減した筆記具の軸筒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近年資源の有効活用を考慮したリサイクルが注目されており、ゴミや廃材の分別回収も広く行われている。こうした中、筆記具においてもグリーン購入法適合商品やリサイクル材を用いたエコ認定商品等、環境問題等を考慮した製品の開発及び販売が強く望まれている。こうした環境問題等を考慮した筆記具において、特開2000−25381号「再商品化、リサイクル材料化筆記具、塗布具」に開示されているように、筆記具に使用する軸筒等の部品を、回収、再生、再利用しやすいように同一合成樹脂材料としたり、特開平11−78356号「筆記具」に開示されているように、筆記具に使用する部品に合成樹脂のリサイクル材を用いたりすることはよく知られている。
【特許文献1】「特開2000−25381号公報」
【特許文献2】「特開平11−78356号公報」
【特許文献3】「特開平09−39475号公報」
【特許文献4】「特開平11−245576号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
確かに、分別しやすいように同一材料としたり、筆記具に使用する部品にリサイクル材を用いたりすることにより、環境に配慮した筆記具を提供することは可能であるが、より環境問題を考慮するならば、使用量を削減することが好ましい。
【0004】
こうした問題を鑑みて、軸筒の肉厚を薄くすることが考えられるが、軸筒の肉厚を薄くすると、強度が低下し、繰り返しの使用、衝撃等によって、軸筒が破損する恐れがあった。また、全長を短くすることも考えられるが、使用範囲が限定される等の問題があった。
【0005】
ところで、特開平9−39475号「サイドノック式シャープペンシル」に開示されているように、ノック駒を配設するための貫通孔や特開平11−245576号「筆記具」に、空気交替を目的とした貫通孔等、筆記具の軸筒に貫通孔を設けた筆記具の軸筒が開示されている。
【0006】
前者のノック駒を配設するための貫通孔は、ノック駒にて貫通孔を閉鎖するため、貫通孔に直接、手が触れることはなく問題はないが、ノック駒等、新たな部品で貫通孔を閉鎖しているため、材料の使用量の削減には至っていない。
【0007】
また、空気交替を目的とした貫通孔は、外気からの空気流通ができる程度の小さな孔であり、削減できる材料の量は微少である。貫通孔の径を大きくすることで削減できる材料の量を増加することが可能であるが、筆記具の軸筒は、筆記具等に手や指に触れるため、単に貫通孔を拡げただけではけがをする恐れがあった。
【0008】
本発明の目的は、環境問題を考慮して材料の使用量の削減するとともに、安全に使用できる筆記具の軸筒を簡単な構造で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、軸筒本体内に筆記具用レフィルを配設した筆記具の軸筒において、前記軸筒本体の外壁に円周上に連続しない貫通孔を形成するとともに、少なくとも該貫通孔の軸筒本体表面側の縁部に、面取り加工または軟質弾性体を装着した指先保護部を設けることを特徴とする。
【0010】
また、前記貫通孔が、少なくとも軸筒本体の先端部、中央部、後端部に位置するように、連続的または非連続的に設ける。
【0011】
また、前記貫通孔の径方向の幅が、前記筆記具レフィルの径より大きいことを特徴とする。
【0012】
また、前記貫通孔の総体積Lとし、貫通孔を形成する前の軸筒本体の体積をMとしたとき、L/M×100≧5(%)を満足する。
【発明の効果】
【0013】
環境問題を考慮して材料の使用量の削減するとともに、安全に使用できる筆記具の軸筒を簡単な構造で提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の筆記具の軸筒の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1から図3に示す筆記具の軸筒1は、軸筒本体2内に、インキ収容筒5の先端にボールペンチップ6を装着し、内部に筆記具用インキ(図示せず)を収容したボールペンレフィル4を、軸筒本体2先端部の雄ねじ部に、口先部材3の雌ねじ部を着脱自在に螺合して、キャップ(図示せず)式の筆記具を得ている。また、口先部材3を取り外すことによって。ボールペンレフィル4を交換可能としてある。
【0016】
軸筒本体2の外壁には、軸心に対して対向する位置に、貫通孔7を、軸心に沿って穿設してあり、この貫通孔7の軸筒表面側の縁部に、丸み8を形成する面取り加工を施して指先保護部を設けてある。
【0017】
軸筒本体2の外壁に貫通孔7を穿設することによって、外径、内径、全長が同一の従来の軸筒本体の体積に比べ、貫通孔7の体積分、軸筒本体2を作成するのに必要な材料の量を削減することができる。また、貫通孔7の軸筒本体2表面側の縁部に、丸み8を形成してあるため、手や指などが触れてもけがをすることはない。
【0018】
また、軸筒本体2に貫通孔7を形成することによって、軸筒本体2の全体に凹凸部が形成され、軸筒本体2を指で掴み易くなるとともに、貫通孔7を利用して、装飾体等の他の部材(図示せず)を着脱自在に装着することができる。
【0019】
また、貫通孔7の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、軸筒の耐久性等を考慮して貫通孔の大きさを適宜選択すればよいが、貫通孔7を形成することで、筆記具の軸筒を形成する材料の使用量を削減するためには、貫通孔7を大きくすることが好ましく、貫通孔の径方向の幅Hを筆記具用レフィルの径Kより大きくすることで、筆記具用レフィル内のインキ残量が確認し易いので好ましい。
【0020】
貫通孔の総体積Lは、図3に示す貫通孔を形成する前の軸筒本体42の総体積Mの5%未満では、その効果が薄いため、5%以上、好ましくは、10%以上となるように貫通孔を複数個、形成することが好ましい。また、50%を超えると、軸筒の強度が低下する恐れがあるため、50%以下にすることが好ましい。
【実施例2】
【0021】
図4から図5に示す筆記具の軸筒11は、実施例1と同様に、軸筒本体12の外壁に、軸心に対して対向する位置に貫通孔17を、軸心に沿って穿設してある。また、軸筒本体2に貫通孔17の軸筒表面側の縁部を含む凹部を形成し、この凹部に軟質弾性体18を装着して指先保護部を設けてある。凹部の形状は、弾性体樹脂部材18が少なくとも貫通穴17の縁部に装着する構造であれば特に限定されない。また、貫通孔17の径方向の幅を筆記具用レフィル4の径より大きく形成してある。
【0022】
貫通孔17の軸筒表面側の縁部に軟質弾性体18を装着することによって、手や指などが触れてもけがをすることはなく、さらに、軸筒本体12と異なる色の軟質弾性体18を装着することによって、装飾効果も得ることができる。
【実施例3】
【0023】
図6から図7に示す筆記具の軸筒21は、軸筒本体22の外壁に、軸筒本体22を3分割したときの先端部S、中央部T、後端部Uに位置するように、軸心に沿って、且つ軸心に対して対向する位置に、5個づつ貫通孔27を穿設してある。また、軸筒本体22に貫通孔27の軸筒表面側の縁部を含む凹部を形成し、この凹部に軟質弾性体28を装着して指先保護部を設けてある。凹部の形状は、軟質弾性体28が少なくとも貫通穴27の縁部に装着する構造であれば特に限定されない。また、貫通孔27の径方向の幅を筆記具用レフィル4の径より大きく形成してある。
【0024】
貫通孔27を、少なくとも軸筒の先端部S、中央部T、後端部Uに設けることによって、軸筒22内のボールペンレフィル4のインキ残量を、インキの消費に伴って外部から視認しやすいので好ましい。特に軸筒本体22を不透明とした場合には、外部からボールペンレフィル4のインキ残量を確認できないので、その効果は顕著である。
【0025】
軸筒として用いる材料は、樹脂材料、金属、木材等、特に限定されるものではないが、環境問題等を考慮してリサイクル材料を用いることが好ましい。
【0026】
本実施例では、便宜上、軸筒を円筒形で形成してあるが、6角形や8角形等の正多角形状等、軸筒の外径形状は特に限定されない。また、本実施例では、キャップ式筆記具の軸筒を例示してあるが、ノック式筆記具の軸筒等、軸筒内に筆記体を配設構造であればよい。
【0027】
また、筆記具用レフィルは、インキの種類やペン先部の形状など、特に限定されるものではないが、環境問題等を考慮してボールペンレフィルを交換可能とすることが好ましい。特に、エコ認定するには、原料として樹脂材料のリサイクル材を使用した場合には、この樹脂材料の合計重量が、製品全体の重量割合で70%以上であること。ただし、消耗部品(ボールペンレフィル)は製品重量から除くことが定義付けられており、本発明の筆記具の軸筒は、貫通孔を形成しない従来の製品全体の重量より小さくなるため、製品全体の重量割合で70%以上とするには、ボールペンレフィルを交換可能とし、製品全体に対する筆記具の軸筒の割合を多くすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
環境問題を考慮した筆記具の軸筒として広く実施可能であり、エコ認定商品やグリーン購入法認定商品とすることでさらに差別化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の筆記具の軸筒を示す、縦断面図である。
【図2】図1における外観図である。
【図3】図1における貫通孔を形成する前の状態を示す図である。
【図4】実施例2の筆記具の軸筒を示す、縦断面図である。
【図5】図4における外観図である。
【図6】実施例3の筆記具の軸筒を示す、縦断面図である。
【図7】図6における外観図である。
【符号の説明】
【0030】
1、11、21 筆記具の軸筒
2、12、22 軸筒本体
3 口先部材
4 ボールペンレフィル
5 インキ収容筒
6 ボールペンチップ
7、17、27 貫通孔
8 丸み
18、28 軟質弾性体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒本体内に筆記具用レフィルを配設した筆記具の軸筒において、前記軸筒本体の外壁に円周上に連続しない貫通孔を形成するとともに、少なくとも該貫通孔の軸筒本体表面側の縁部に、面取り加工または軟質弾性体を装着した指先保護部を設けることを特徴とする筆記具の軸筒。
【請求項2】
前記貫通孔が、少なくとも軸筒本体の先端部、中央部、後端部に位置するように、連続または非連続に設けたことを特徴とする請求項1に記載の筆記具の軸筒。
【請求項3】
前記貫通孔の径方向の幅が、前記筆記具レフィルの径より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具の軸筒。
【請求項4】
前記貫通孔の総体積Lとし、貫通孔を形成する前の軸筒本体の体積をMとしたとき、L/M×100≧5(%)を満足することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の筆記具の軸筒。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−289808(P2006−289808A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114218(P2005−114218)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】