説明

筆記具用キャップ

【課題】 ポケットなど筆記具を差し込んだときにしっかりと保持することができ、また、クリップ表面に軸線方向の金型のパーティング跡ができずに外観上好ましいクリップ一体型の合成樹脂製キャップを提供する。
【解決手段】 蓋体1にクリップ2が一体に成形された合成樹脂製の筆記具用キャップにおいて、蓋体外周面の先端側から尾端側にかけて軸線方向の2本の縦リブ11をクリップ裏面の先端部の押圧片22の両側に位置するように形成する。また、押圧片をクリップの裏面の基端部から先端部にかけてリブ状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具本体に嵌着される有底筒状の蓋体にクリップが一体に成形された合成樹脂製の筆記具用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンなどのキャップは、ボールペンの軸筒に嵌着される有底筒状の蓋体にクリップを合成樹脂で一体に成形した簡単な構造のものが多い。かかるキャップは比較的安価に、かつ簡単に製造できるので、低価格で大量生産される普及型の筆記具用のキャップに適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クリップ付のキャップは、クリップ裏面の先端部に突部である押圧片を形成し、キャップを装着した筆記具を洋服のポケットなどに差し込んだときに、ポケットの布地をこの押圧片とキャップの外周面とで挟圧して筆記具を保持するが、蓋体とクリップを合成樹脂で一体に成形するとき、金型の薄い部分がクリップの押圧片とキャップの外周面の間に存在するので、成形後のクリップには、押圧片とキャップの外周面の間に隙間ができる。また、クリップ自体はキャップの外周面に向けて弾発されていないので、例えばポケットに差し込んだときに保持力が不十分である不具合がある。ことに布地が薄いワイシャツのポケットなどに差し込んだときに保持力が弱くて振動などが加わると筆記具がポケットから脱落することがある。
【0004】
次に、クリップは意匠上も重要な部品であり、観る人の目につき易いので、クリップの表面に文字や図形などを印刷することがある。また、文字や図形などを印刷しないときでも表面を平滑にして見た目に美しく仕上げる必要がある。ところが、合成樹脂で成形するとき、2つ割の金型のパーティングラインをキャップの軸線方向にすると金型構造が簡単になるが、クリップを一体に成形するときは、金型の軸線方向のパーティングラインがクリップの表面に位置するので、クリップ表面に軸線方向の小さな突条部である金型のパーティング跡ができてしまい、見苦しくなる不具合がある。また、パーティング跡ができたクリップの表面に文字や図形などの印刷を施しても文字や図形などが歪んで非常に見苦しくなる。
【0005】
そこで本発明は、ポケットなど筆記具を差し込んだときにしっかりと保持することができ、また、クリップ表面に軸線方向の金型のパーティング跡ができずに外観上好ましいクリップ一体型の合成樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、筆記具本体に嵌着される有底筒状の蓋体にクリップが一体に成形された合成樹脂製の筆記具用キャップにおいて、蓋体外周面の先端側から尾端側にかけて軸線方向の2本の長い縦リブをクリップ裏面の先端部の押圧片の両側の位置に形成する。また、押圧片をクリップの裏面の基端部から先端部にかけてリブ状に形成する。
【発明の効果】
【0007】
蓋体外周面の先端側から尾端側にかけて軸線方向の2本の縦リブがクリップ裏面の先端部の押圧片の両側に位置するように形成されているので、筆記具をポケットなどに差し込んだとき、ポケットの布地は2本の縦リブとその間の押圧片により屈曲された状態で押圧片と蓋体の外周面によって挟まれるので、布地が薄いワイシャツのポケットなどに差し込んだ場合も筆記具をしっかりと保持できる。
【0008】
そして、蓋体外周面の先端側から尾端側にかけて軸線方向の2本の縦リブを狭い間隔で平行に形成するので、2つ割の金型のパーティングラインをキャップの軸線方向にする金型構造は採用できず、固定金型からキャップを軸線方向に抜くようにして離型しなければならない。したがって、パーティングラインはクリップ表面に存在しないのでクリップ表面に軸線方向の小さな突条部であるパーティングライン跡ができず、平滑で美しい表面となる。
【0009】
また、キャップを金型から軸線方向に抜くような金型構造を採用するので、蓋体外周面の先端側から尾端側にかけて軸線方向の2本の縦リブが形成されているにもかかわらず、クリップ裏面の押圧片をクリップの裏面の基端部から先端部にかけてリブ状に形成することが可能になり、その結果、筆記具をポケットに差し込んだときに、ポケットの布地が2本の縦リブとその間の押圧片によって屈曲された状態で押圧片と蓋体の外周面の間で挟まれる部分が長くなり、筆記具をよりしっかりと保持することかできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1および図2において、合成樹脂で成形された蓋体1はボールペンなどの筆記具の軸筒に嵌着される有底筒状体であり、クリップ2がその基端側の連結部21を介して蓋体1と一体に成形されている。クリップ2裏面の先端部には、断面円弧状の突部である押圧片22が形成されている。押圧部22は、図3に示すように、基端側の連結部21から先端部にかけてリブ状に形成してもよい。また、蓋体1外周面にはその尾端部から先端部にかけて2本の長い縦リブ11が形成されている。2本の縦リブ11は、図4に示すように、クリップ2の押圧部22の両側に位置するように形成されている。つまり、2本の長い縦リブ22は、狭い間隔で平行に形成されている。この長い2本の縦リブ11は斬新なイメージを与えるのでデザイン的にも好ましい。
【0011】
かかるキャップを成形する金型構造を図5に基づいて説明すると、金型は、蓋体1の外周面と2本の縦リブ11およびクリップ2の裏面などを形成するための固定金型31、蓋体1の尾端部などを形成するための可動金型32、クリップ2の表面などを形成するための可動金型33、蓋体1の内面を形成するためのコアピン34、および成形されたキャップを固定金型31から離型するための突き出しスリーブ35からなる。そして、これらの金型で郭定されるキャビティに溶融した合成樹脂を注入し、凝固後に、可動金型32、可動金型33およびコアピン34をそれぞれ矢印の方向に型開きし、突き出しスリーブ35を前進させるとキャップは固定金型31から離型される。
なお、押圧片22が図2に示す断面円弧状の突部である場合は、離型する際にアンダーカットになるが、可動金型33が移動しているので、離型する際にクリップ2の先端部は外側に弾性変形し、容易に離型することができる。
【0012】
このように、本発明のキャップは、筆記具をポケットなどに差し込んだとき、図4に示すように、ポケットの布地Cは2本の縦リブ11とその間の押圧片22により屈曲された状態で押圧片22と蓋体1の外周面によって挟まれるので筆記具をしっかりと保持できる。また、クリップ2の表面に軸線方向の小さな突条部であるパーティングライン跡ができず、平滑な表面となるので、見た目に美しく、また文字や図形などの印刷も良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例の正面図である。
【図2】本発明実施例の側面図である。
【図3】他の実施例の側面図である。
【図4】図2および図3のA−A線における断面図である。
【図5】金型構造の説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 蓋体
11 縦リブ
2 クリップ
21 連結部
22 押圧片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具本体に嵌着される有底筒状の蓋体にクリップが一体に成形された合成樹脂製の筆記具用キャップにおいて、
前記蓋体外周面の先端側から尾端側にかけて軸線方向の2本の長い縦リブがクリップ裏面の先端部の押圧片の両側に位置するように形成されたことを特徴とする筆記具用キャップ。
【請求項2】
前記押圧片がクリップの裏面の基端部から先端部にかけてリブ状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の筆記具用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−69496(P2007−69496A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260043(P2005−260043)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】