説明

筆記具

【課題】ノックの動きに連動させて、キャラクタを変形させたり、姿勢変化させたりして、意外性や面白みに富んだサイドノック式の筆記具を提供する。
【解決手段】ボディ10の基端部に取り付けられた弾性変形可能なキャラクタ13と、キャラクタ13を軸芯方向に貫通するとともにキャラクタ13の上方に突出された上端部に押圧部14aを有し、下端部がボディ10に挿入された押圧部材14と、ノック11と押圧部材14との間に設けられ、ノック11の押し下げ動作により押圧部材14を押し下げて押圧部14aによりキャラクタ13を押し潰し、ノック11の復帰動作により押圧部材を復帰させる連動機構と、を備える。連動機構は、押圧部材14の下端に設けた係止部14dとジョイントの上端に設けた係合部とによって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック(操作レバー)のノック動作に対応して、芯の出し入りを行うサイドノック式の筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドノック式の筆記具において、ノック(操作レバー)を押し下げて芯を出す押し下げ動作に連動して、キャラクタを模した形象物が回転するように構成した筆記具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものは、筆記具本体の内部に長尺の回転軸が配置されていて、この回転軸における筆記具本体の基端部から突出する部分にキャラクタが取り付けられている。操作レバーには、内周面に螺旋溝が形成されたスライド部材が係合されていて、この螺旋溝には、回転軸から突出された凸部が螺合している。操作レバーを押し下げると、芯が出るとともに、スライド部材が押し下げられ、その螺旋溝に凸部が螺合されている回転軸が回転する。この回転軸の回転に伴って、キャラクタが回転するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−19367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によると、操作レバーの押し下げ動作に連動して、キャラクタが回転するものの、キャラクタ自体の形状が変化したり、姿勢が変化したりするものではないので、意外性や面白みに欠けるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ノック(操作レバー)の動きに連動して、キャラクタを変形させたり、姿勢変化させたりすることで、意外性や面白みを発揮させることができるサイドノック式の筆記具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、軸芯に沿って先端部から基端部に延びる筒状の筆記具本体の側面に突設された操作レバーの、人手による先端部側への押し下げ動作および付勢部材による基端部側への復帰動作によって、前記筆記具本体の先端部から芯を突出させ、前記操作レバーの次の押し下げ動作および復帰動作によって前記筆記具本体の前記先端部から前記芯を引っ込めるサイドノック式の筆記具に関する。
【0008】
この発明に係るノック式の筆記具は、前記筆記具本体の前記基端部に取り付けられた弾性変形可能なキャラクタと、前記キャラクタを軸芯方向に貫通するとともに前記キャラクタの上方に突出された上端部に押圧部を有し、下端部が前記筆記具本体に挿入された押圧部材と、前記操作レバーと前記押圧部材との間に設けられ、前記操作レバーの前記押し下げ動作により前記押圧部材を押し下げて前記押圧部により前記キャラクタを押し潰し、前記操作レバーの前記復帰動作により前記押圧部材を復帰させる連動機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るノック式の筆記具において、前記連動機構は、前記押圧部材の下端部に設けられた係止部と、前記操作レバー側に設けられて前記操作レバーの前記押し下げ動作により前記押圧部材の前記係止部に係合して前記押圧部材を押し下げる係合部とによって構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のサイドノック式の筆記具において、前記筆記本体の基端部に、前記キャラクタが載せられるとともに前記押圧部材が軸芯方向に貫通する台座を有する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に係るサイドノック式の筆記具において、前記押圧部材の前記押圧部が前記キャラクタの一部を兼ねる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に係るサイドノック式の筆記具において、前記キャラクタは、前記押圧部の押圧によって軸芯方向に潰される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に係るサイドノック式の筆記具において、前記キャラクタは、前記押圧部の押圧によって一方の端部を基準として他方の端部が揺動する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のサイドノック式の筆記具において、前記キャラクタが軟質の合成樹脂で形成され、前記押圧部材が硬質の合成樹脂で形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、操作レバーを押し下げると、連動機構を介して、押圧部材が押し下げられ、これに伴い、押圧部材の押圧部が弾性変形可能なキャラクタを押し潰す。つまり、操作レバーに動きに連動して、キャラクタが変形したり、姿勢え変化したりするので、意外性や面白みを増すことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、連結機構が、押圧部材の下部に設けられた係止部と、これに係合する操作レバー側の係合部とによって構成されているので、操作レバーの動きがそのまま押圧部材に伝達される。すなわち、操作レバーのストロークがそのまま押圧部材のストロークとなるので、ストロークを大きくとってキャラクタを大きく変形または姿勢変化させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、筆記具本体の基端部に台座を設けることにより、キャラクタが載せられる面積を大きく確保して、キャラクタを安定して支持するとともに、キャラクタの変形や姿勢変化を確実に行うことができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、押圧部材がキャラクタの一部を兼ねるので、デザインの一貫性を保つとともに、面白みを増すことができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、押圧部の押し下げによってキャラクタは、軸芯方向に潰されて変形する。
【0020】
請求項6の発明によれば、押圧部の押し下げによってキャラクタは、一方の端部を基準として他方の端部が揺動して変形する。
【0021】
請求項7の発明によれば、キャラクタが軟質の合成樹脂によって、また、押圧部材が硬質の合成樹脂によって形成されているので、キャラクタは、弾性変形が容易であり、押圧部材は、押圧部によってキャラクタを変形させたり姿勢変化させたりするのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】筆記具1を正面側右斜め上方から見た斜視図であり、(a)はノック11がホームポジションP1にあってキャラクタ13が変形していない状態を示し、(b)はノック11が押下位置P2に押し下げられてキャラクタ13が変形された状態を示し、(c)は分解斜視図を示している。
【図2】(a)はノック11がホームポジションP1にあって、芯16が引っ込んでいる状態の筆記具1の正面図であり、(b)は(a)中のB−B線矢視図である。
【図3】(a)はノック11が押下位置P2に押し下げられて、芯16が出された状態の筆記具1の正面図であり、(b)は(a)中のB−B線矢視図である。
【図4】(a)はノック11がホームポジションP1にあって、芯16が出された状態の筆記具1の正面図であり、(b)は(a)中のB−B線矢視図である。
【図5】筆記具2を正面側右斜め上方から見た斜視図であり、(a)はノック11がホームポジションP1にあってキャラクタ23が変形していない状態を示し、(b)はノック11が押下位置P2に押し下げられてキャラクタ23が変形された状態を示し、(c)は分解斜視図を示している。
【図6】筆記具3を正面側右斜め上方から見た斜視図であり、(a)はノック11がホームポジションP1にあってキャラクタ33が変形していない状態を示し、(b)はノック11が押下位置P2に押し下げられてキャラクタ33が変形された状態を示し、(c)は分解斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
【0024】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態1に係るサイドノック式の筆記具(以下単に「筆記具」という。)1について説明する。なお、以下の説明では、ノック(操作レバー)11がある側を筆記具1の正面とする。
【0025】
図1〜図4のうち、図1は、筆記具1を正面側右斜め上方から見た斜視図であり、(a)はノック11がホームポジションP1にあってキャラクタ13が変形していない状態を示し、(b)はノック11が押下位置P2に押し下げられてキャラクタ13が変形された状態を示し、(c)は分解斜視図を示している。また、図2(a)はノック11がホームポジションP1にあって、芯16が引っ込んでいる状態を示す筆記具1の正面図であり、(b)は(a)中のB−B線矢視図である。また、図3(a)はノック11が押下位置P2に押し下げられて、芯16が出された状態を示す筆記具1の正面図であり、(b)は(a)中のB−B線矢視図である。また、図4(a)はノック11がホームポジションP1にあって、芯16が出された状態を示す筆記具1の正面図であり、(b)は(a)中のB−B線矢視図である。ここで、図2は、筆記具1の不使用状態、図3は、芯16を出す際の過渡状態、図4は、筆記具1の使用状態をそれぞれ図示している。なお、図2〜図4では、台座12及びキャラクタ13を取り外した状態を示している。
【0026】
図1に示すように、筆記具1は、ボディ(筆記具本体)10と、ノック(操作レバー)11と、台座12と、キャラクタ13と、押圧部材14とを備えている。なお、キャラクタ13とは、人、人形、動植物、玩具、乗り物等を模した形象物をいい、任意の物が形象物となり得る。
【0027】
ここで、本実施形態に係る筆記具1の芯出し機構、すなわち、芯16を出し入れするための機構は、周知の構成及び方法を採用しているので、図2〜図4を参照して簡単に説明する。
【0028】
ボディ10は、図2(b)に示すように、軸芯Sに沿って先端部(下端部)から基端部(上端部)に延びる筒状に形成されている。なお、ボディ10は、内周面10aは円筒状であることが好ましいが、外周面10bについては、円筒状以外に、正六角形、正八角形等であってもよい。ボディ10の上端側の側面には、ノック11の上下方向(軸芯方向)の移動、すなわち下方への押し下げ動作及び上方への復帰動作をガイドするガイド溝10cが上下方向に向けて形成されている。また、ボディ10の内周面10aにおける、ノック11の下端に対応する高さ近傍には、上下方向に向いたスルーリブ(不図示)とストップリブ(不図示)とが周方向に交互に形成されている。ボディ10の下端には、テーパ状のキャップ15が取り付けられている。キャップ15には、上下方向に透孔15aが穿設されていて、この透孔15aからは、芯(リフィール)16の先端16aが出し入れされる。芯16は、芯押し上げばね17によって上方に付勢されている。
【0029】
芯16の上端には回転カム18が回転可能に被せられており、この回転カム18には、さらに、回転不能で上下方向に移動可能なスライドカム19が被せられている。スライドカム19と回転カム18とは、相互に傾斜面(不図示)で接触していて、スライドカム19が下降すると、この傾斜面によって回転カム18には軸芯Sを基準として回転力が作用するが、回転カム18の被ガイド部(不図示)が上述のスルーリブによって上下方向の移動がガイドされている間は、回転カム18は回転しない。そして、スライドカム19がさらに下降すると、回転カム18は、その被ガイド部がスルーリブから外れて回転しながら、ストップリブに移動するようになっている。これにより、後述のように、芯16の先端16aがキャップ15から突出される。
【0030】
スライドカム19は、ノック11と一体のジョイント(連動機構)20によって押し下げられる。ジョイント20は、下端部が上述のストップリブの上端に係合されたノック押し上げばね21によって上方に付勢されている。
【0031】
図2に示すホームポジションP1に配置されたノック11が、使用者の指(人手)によって押し下げられると、ノック11と一体のジョイント20がノック押し上げばね21の付勢力に抗して下降し、スライドカム19を押し下げる。押し下げられたスライドカム19は、芯押し上げばね17の付勢力に抗して、回転カム18を、これに潜在的な回転力を付与しながら押し下げる。そして、回転カム18は、スルーリブから外れると、回転しながらストップリブに移動する。
【0032】
図3は、ノック11が押下位置(P2)に押し下げられて、回転カム18がストップリブに移動して、芯16の先端16aがキャップ15の透孔15aから突出された状態を示している。
【0033】
図3に示す状態から、使用者がノック11から指を離すと、回転カム18は、芯押し上げばね17によって押し上げられ、若干上方に戻りながら回転して、ストップリブに収まる。これにより、芯16は、その先端16aをキャップ15の透孔15aから突出させた状態で保持される。一方、ノック11は、ノック押し上げばね21によって上方に付勢されてホームポジションP1に戻る。この状態が図4に示す状態であり、筆記可能な状態である。
【0034】
筆記が終了して、次にもう一度、ノック11を押し下げると、回転カム18は、ジョイント20を介してスライドカム19によって押し下げられ、ストップリブから外されて回転し、次のスルーリブに移動する。これにより、芯16が引っ込められるとともに、ノック11がホームポジションP1に復帰する。
【0035】
次に、本実施形態の特徴部分について詳述する。
【0036】
図2(b)に示すように、ジョイント20は、下半部に大径円筒状の大径部20aを有し、上半部に小径円筒状の小径部20bを有していて、両者の間には壁部20cが形成されている。ノック11は、その裏面側(ボディ10側)の上部の一部が、大径部20aに係合されている。また、小径部20bの上端には、内側に突出する係合部20dが略全周にわたって設けてある。さらに、小径部20bには、上下方向のスリット(不図示)が形成されていて、小径部20bがボディ10の上端の開口部10dから上方に突出されている状態(例えば、組立時)においては、係合部20dを開いて、これに、後述する押圧部材14の係止部14dを挿入することができるようになっている。ジョイント20は、ノック11と一体に構成されていて、ノック11のホームポジションP1から押下位置P2への押し下げ動作及び押下位置PからホームポジションP2への復帰動作に伴って、ボディ10の上端近傍を下降したり上昇したりするようになっている。
【0037】
ボディ10の上端には開口部10dが設けられており、図1(c)に示すように、この開口部10dには、台座12が嵌合されている。台座12は、開口部10dに嵌合される嵌合部12aと、この嵌合部12aよりも大径で面積が大きい略円板状の支持部12bとを有している。嵌合部12aは円筒状に形成されていて、その外周面がボディ10の上部における内周面10aに嵌合されるとともに、その内周面と上述のジョイント20の小径部20bの外周面との間に適宜な間隙を設けて、嵌合部12aの内側を、ジョイント20の小径部20bが移動できるようになっている。支持部12bは、その上面に載せられたキャラクタ13を確実に支持する。支持部12bの略中央には、上下方向に貫通されて押圧部材14が通る透孔12cが形成されている。また、支持部12bの前側には、ノック11の操作がしやすいように、切欠部12dが設けてある。台座12は、例えば、硬質の合成樹脂によって全体が一体に構成されている。
【0038】
キャラクタ13は、図示例では、軟質の合成樹脂で形成された弾性変形可能な親ガエルであり、胴体13aには、頭部13bに目玉13cが突出されており、また前脚13d、後脚13eが設けてあり、胴体13aには、略中央に、上下方向に貫通された透孔13fが穿設されている。親ガエルは、全体が一体に形成されていて、後脚13eが台座12の支持部12bにおける一方の端部(切欠部12dとは反対側の端部)に固定(接着)されている。これに対し、前脚13dは後脚13eよりも長く形成されていて、頭部13b近傍から下方に延びて、先端部が支持部12bにおける他方の端部、つまり切欠部12d近傍に固定されており、中間部がフリーとなっている。すなわち、親ガエルは、後述するように、胴体13aが押圧部材14の押圧部14aによって略中央を下方に押圧された際に、後脚13e側を基準として頭部13b側がお辞儀をするように下方に揺動して、前脚13dを屈曲させるようになっている。
【0039】
押圧部材14は、その全体が、例えば、硬質の合成樹脂によって略棒状に形成されている。押圧部材14は、キャラクタ13の上方に突出される上部に、キャラクタ13の透孔13fよりも大きい押圧部14aを有している。図示例では、押圧部14aには、キャラクタ13の一部を構成する、子ガエルの形状が与えられている。この子ガエルは、親ガエルの背中におぶさるようにして接着されていて、親ガエルが変形する際に親ガエルの背中から離れないようになっている。押圧部材14における押圧部14aの下には、キャラクタ13の透孔13f及び台座12の透孔12cを貫通する貫通部14b、さらにその下に貫通部14bよりも小径な小径部14c、さらにその下には小径部14cよりも大径の係止部14dが形成されている。
【0040】
図2(b)に示すように、押圧部材14は、小径部14cが、ジョイント20の係合部20dの内側を上下に移動でき、かつ係止部14dが係合部20dに引っかかるように形成されている。さらに、図示例では、ジョイント20側の係合部20dと押圧部材14側の係止部14dとの間に、空振り区間Dが形成されている。この空振り区間Dの長さを調整することにより、ノック11のホームポジションP1から押下位置P2までのストローク量に対して、押圧部材14のストローク量を調整することができる。すなわち、この空振り区間Dが0になるように構成すれば、押圧部材14のストローク量をノック11のストローク量と同じにすることができ、また、この空振り区間Dを大きくとることにより、押圧部材14のストローク量を小さくすることができる。ここで、押圧部材14のストローク量は、キャラクタ13の大きさや、所望の変形や姿勢変化に応じて適宜に設定すればよい。なお、空振り区間Dを0でない数値に設定した場合には、ノック11は、その押し下げ動作時に、この空振り区間Dに相当するストローク量だけ押し下げられた後、はじめて押圧部材14の押し下げを開始して、押圧部14aによるキャラクタ13の変形を開始することが可能となる。つまり、押圧部14aがキャラクタ13を変形させるまでに空振り区間Dをノック11が移動する時間に相当する時間遅れが発生するので、使用者に意外性を感じさせることができる。使用者は、ノック11の押し下げ動作の開始とともに、キャラクタ13の変形が開始されると思っているところ、キャラクタ13の変形までに時間遅れが発生するので、使用者にとっては、キャラクタ13が予期しなかった動作をするものと認識する。
【0041】
以上構成の筆記具1は、以下のように動作する。なお、芯16の出し入れの動作については適宜、説明を省略する。
【0042】
筆記具1を筆記に供するに際し、使用者は、掌と親指以外の4本の指でボディ10を握り、親指をノック11の上端に引っ掛けて、ノック11を押し下げる。これにより、ノック11は、図2に示すホームポジションP1から下降を始め、ノック11と一体のジョイント20も下降を始める。この際、芯16は、ジョイント20によって、スライドカム19及び回転カム18が押し下げられるので、ノック11の押し下げ動作開始とともに、押し下げ動作が開始される。一方、押圧部材14は、空振り区間Dが無くなるまで、下降を開始しない。押圧部材14は、ノック11及びジョイント20が下降を開始し、ジョイント20が空振り区間Dを下降し終えると、係止部14dにジョイント20の係合部20dが係合される。押圧部材14は、この係合によりはじめて下降を開始する。係合後は、押圧部材14は、ノック11の押し下げ動作に対応して下降し、押圧部(子ガエル)14aがキャラクタ(親ガエル)13を徐々に押し潰していく。これにより、親ガエルは、後脚13e側が台座12の支持部12bの一方の端部に固定されているので、頭部13b側がお辞儀をするように下方に揺動し(垂れ)、これに伴って前脚13dを屈曲させる。この状態を示すのが、図1(b)である。
【0043】
このように、使用者がノック11を図1(a)に示すホームポジションP1から図1(b)に示す押下位置P2に押し下げることにより、キャラクタ(親ガエル)13は、頭部13bを上げて前脚13dを伸ばした姿勢から、頭部13bを下げてお辞儀をしながら前脚13dを曲げる動作をとる。このようなキャラクタ13の動作は、キャラクタが無機的に(機械的に)回転する従来のものとは異なり、キャラクタ13自体が変形し、姿勢を変化させることで実現されるため、有機的であり、意外性や面白みに富んだものとなる。さらに、上述のように空振り区間Dが設けてあるので、ノック11の動作とキャラクタ13との動作とが、必ずしも一致しないため、さらに意外性を高めることができる。
【0044】
ノック11が押下位置P2に配置されて、芯16が出された後に、使用者がノック11から指を離すと、ノック11が上昇してホームポジションP1に復帰するとともに、キャラクタ13も変形や姿勢変化が解除されて元の姿勢に戻る。この際、空振り区間Dに基づき、さらにキャラクタ13自身の弾性力が相俟って、ノック11の押し下げ動作時とは逆に、キャラクタ13の復帰動作が先行し、その後、時間遅れを伴って、ノック11の復帰動作が完了する。
【0045】
このように、ノック11の動作とキャラクタ13の変形及び復帰動作とが1対1に対応しないことは、使用者にとって一層、興趣を深める結果となる。なお、上述のように、空振り区間Dを0にしたり、あるいはノック11と押圧部材14とを直接係合させたりすれば、ノック11の動作と押圧部材14の押圧部14aとの動作を1対1に対応させることができ、したがって、ノック11の押し下げ動作の開始に伴って、キャラクタ13の変形、姿勢変化が開始される。
【0046】
上述の実施形態において、押圧部材14と、台座12とについて、押圧部材14の貫通部14bに対して、台座12の透孔12cの内径を大きくとって、両者間に適宜な間隙を設けるとよい。押圧部材14が下降することにより親ガエルは、後脚13e側を基準として頭部13b側がお辞儀をするように揺動するので、押圧部材14は、まっすぐに下降するのではなく、下端側の係止部14d近傍を基準として、上端側の押圧部14a側が前後方向に揺動する動作も加わる。このため、上述のように適宜な間隙を設けることで、この押圧部材14の動作を円滑にするとともに、親ガエルの揺動動作に、より一層リアリティを持たせることができる。
【0047】
また、上述の筆記具1においては、押圧部材14の押圧部14aを、キャラクタ(親ガエル)13の背中におんぶする子ガエルとして、キャラクタの一部を構成するようにすることで、キャラクタ全体としてのデザインの一貫性を保つとともに、面白みを増加させることができる。
【0048】
図5を参照して、筆記具1の変形例である筆記具2について説明する。図5は、筆記具2を正面側右斜め上方から見た斜視図であり、(a)はノック11がホームポジションP1にあってキャラクタ23が変形していない状態を示し、(b)はノック11が押下位置P2に押し下げられてキャラクタ23が変形された状態を示し、(c)は分解斜視図を示している。なお、同図に示す筆記具2は、台座22、キャラクタ23、押圧部材24以外の構成は、図1〜図4に示す筆記具1と同様であるので、同様の構成については同様の符号を付して適宜説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、キャラクタ23は、人形の顔を模した略球形の形象物で構成されている。顔23aには、目23bや口23cが描かれている。台座22は、顔23の底部に対応した大きさの支持部22bと、ボディ10の開口部10dに嵌合する円筒状の嵌合部22aと、支持部22bのほぼ中央を上下に貫通する透孔22cを有している。また、押圧部24は、上端部に、鍔付きの帽子を模した押圧部24aを有している。なお、押圧部24a以外の、貫通部24b、小径部24c、係止部24dは、図1に示す貫通部14b、小径部14c、係止部14dと同様である。
【0050】
図5に示す筆記具2は、ノック11の押し下げ動作に対応して、押圧部材24の押圧部(帽子)24aが下降して、キャラクタ(顔)23を押し潰す。このとき、顔23aが上下に押し潰されるのに伴い、目23b及び口23cも上下に潰れて左右方向に広がり、きわめて興趣のある顔23aを創り出す。
【0051】
一方、ノック11の復帰動作に伴って、キャラクタ23も元の顔23aに復帰する。本例では、キャラクタ23の変形に伴って、顔23aの表情が面白く変化する。なお、本例においても、上述と同様、空振り区間Dを設けて時間遅れを発生させるようにしてもよい。なお、本例においては、例えば、キャラクタ23の顔23aを縦長に形成し、空振り区間Dを0にして、顔23aの変形量を多くするようにしてもよい。
【0052】
図6を参照して、筆記具1の変形例である筆記具3について説明する。図6は、筆記具3を正面側右斜め上方から見た斜視図であり、(a)はノック11がホームポジションP1にあってキャラクタ33が変形していない状態を示し、(b)はノック11が押下位置P2に押し下げられてキャラクタ33が変形された状態を示し、(c)は分解斜視図を示している。なお、同図に示す筆記具3は、台座32、キャラクタ33、押圧部材34以外の構成は、図1〜図4に示す筆記具1と同様であるので、同様の符号を付して適宜説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、キャラクタ33は、脚を省略した人形を模した形象物で構成されている。胴体33aは柱状に形成されていて、胴体33aからは2本の腕33bが延びており、腕33bの先端は、台座32の支持部32bに固定されている。また、押圧部34は、上端部に、顔を模した球形の押圧部34aを有している。なお、押圧部34a以外の、貫通部34b、小径部34c、係止部34dは、図1に示す貫通部14b、小径部14c、係止部14dと同様である。
【0054】
図6に示す筆記具3は、ノック11の押し下げ動作に対応して、押圧部材34の押圧部(顔)34aが下降して、キャラクタ33の胴体33aを押し潰す。このとき、胴体34aは、上下に押し潰されるのに伴い、前後左右方向に広がって、太ったようになる。
【0055】
一方、ノック11の復帰動作に伴って、キャラクタ33も元のスリムな胴体33aに復帰する。本例では、キャラクタ33の変形に伴って、胴体33aが痩せたり太ったりと、面白く変化する。なお、本例においても、上述と同様、空振り区間Dを設けて時間遅れを発生させるようにしてもよい。なお、本例においては、例えば、キャラクタ33の胴体33aをさらに縦長に形成し、空振り区間Dを0にして、胴体33aの痩せたときと太ったときとの胴回りの差を大きくするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,2,3 筆記具
10 ボディ(筆記具本体)
11 ノック(操作レバー)
12,22,32 台座
13,23,33 キャラクタ
14,24,34 押圧部材
14a,24a,34a 押圧部
14d,24d,34d 係止部(連動機構)
20 ジョイント(連動機構)
20d 係合部(連動機構)
16 芯(レフィール)
21 ノック押し上げばね(付勢部材)
S 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯に沿って先端部から基端部に延びる筒状の筆記具本体の側面に突設された操作レバーの、人手による先端部側への押し下げ動作および付勢部材による基端部側への復帰動作によって、前記筆記具本体の先端部から芯を突出させ、前記操作レバーの次の押し下げ動作および復帰動作によって前記筆記具本体の前記先端部から前記芯を引っ込めるサイドノック式の筆記具において、
前記筆記具本体の前記基端部に取り付けられた弾性変形可能なキャラクタと、
前記キャラクタを軸芯方向に貫通するとともに前記キャラクタの上方に突出された上端部に押圧部を有し、下端部が前記筆記具本体に挿入された押圧部材と、
前記操作レバーと前記押圧部材との間に設けられ、前記操作レバーの前記押し下げ動作により前記押圧部材を押し下げて前記押圧部により前記キャラクタを押し潰し、前記操作レバーの前記復帰動作により前記押圧部材を復帰させる連動機構と、を備える、
ことを特徴とするサイドノック式の筆記具。
【請求項2】
前記連動機構は、前記押圧部材の下端部に設けられた係止部と、前記操作レバー側に設けられて前記操作レバーの前記押し下げ動作により前記押圧部材の前記係止部に係合して前記押圧部材を押し下げる係合部とによって構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のサイドノック式の筆記具。
【請求項3】
前記筆記本体の基端部に、前記キャラクタが載せられるとともに前記押圧部材が軸芯方向に貫通する台座を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドノック式の筆記具。
【請求項4】
前記押圧部材の前記押圧部が前記キャラクタの一部を兼ねる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のサイドノック式の筆記具。
【請求項5】
前記キャラクタは、前記押圧部の押圧によって軸芯方向に潰される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサイドノック式の筆記具。
【請求項6】
前記キャラクタは、前記押圧部の押圧によって一方の端部を基準として他方の端部が揺動する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサイドノック式の筆記具。
【請求項7】
前記キャラクタが軟質の合成樹脂で形成され、前記押圧部材が硬質の合成樹脂で形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のサイドノック式の筆記具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate