説明

等張オゾン水製造装置

【課題】一般家庭用に小型化し、長時間にわたって高いオゾン濃度を保つ等張オゾン水を簡単に製造できる等張オゾン水製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の等張オゾン水製造装置Mは、水に食塩を溶解させた0.9%食塩水からなる溶液を連続して定量移送する溶液移送部1と、携帯用の酸素ボンベ21から速度制御された酸素ガスを供給してオゾン発生器24でオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部2と、溶液移送部1から定量移送された溶液とオゾンガス発生部2で発生させたオゾンガスとをスタティックミキサ31により混合して気液混合水を生成する気液混合部3と、気液混合部3で生成した気液混合水を溶液に溶解しない廃ガスと溶液にオゾンを溶解させた等張オゾン水とに分離する気液分離部4と、気液分離部4で分離された廃ガスに含まれる残留オゾンを触媒により酸素に分解する廃ガス処理部5と、気液分離部4で分離された等張オゾン水を装置外部に排出する等張オゾン水排出部6と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.9%食塩水からなる溶液にオゾンを溶解させた等張オゾン水を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水[HO]にオゾン[O]を溶解させたオゾン水は、オゾンによる優れた洗浄力や殺菌力を有することから、医療、食品、製造などの各種分野で利用されている。例えば医療の分野において、オゾン水で手や医療器具を洗浄することにより、細菌や微生物を死滅させ、病院での院内感染を防ぐのに役立っている。また、近年では眼科での手術や治療の際にオゾン水を消毒液として使用する例も見られ、この場合、原料水に体液と等張の生理食塩水を使用すると、術部や患部への刺激が少なくなることが知られている(例えば下記の特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、医療の現場には、上記のようにオゾン水を洗浄水や消毒液として使用することができるように、オゾン水を生成する装置が設置されている。しかし、その装置のほとんどは毎分3〜5L程度の大流量のオゾン水を排水するものであり、流れるオゾン水の水量が多いので、特に眼科において患者の眼を直接洗浄する用途には適していなかった。また、このような大流量の装置を使って眼を洗浄する場合には、一旦排水したオゾン水を別の器具に移し変えて使用することになるが、オゾン水は時間の経過とともにオゾン濃度が低下してしまうため、あらかじめ高濃度のオゾン水を生成しておかなければならずコスト的に無駄があった。
【0004】
一方、本出願人は、原液に所定濃度のオゾンを溶解させたオゾン水を小流量で生成することができる装置を開発し、特許を取得している(例えば下記の特許文献2を参照)。このオゾン水生成装置は、原液を連続して定量移送する原液移送部と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、原液にオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部と、気液混合水を廃ガスとオゾン水に分離する気液分離部とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−21798号公報
【0006】
【特許文献2】特許4256453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人が開発した従来のオゾン水生成装置では、オゾンガス発生部として、酸素ガスを利用してオゾンを発生させるオゾン発生器が設けられている。
【0008】
ところが、この装置では、オゾン発生器に接続する酸素ボンベとして、500L程度の医療用の大型酸素ボンベを使用していた。このため、装置全体のサイズの大型化を招くうえに、一般の需要者がこのような医療用の酸素ボンベを購入することは困難であるという問題があった。また、従来の装置では、原液として体液と等張の生理食塩水を使用しているが、この生理食塩水も同様に、一般の需要者は薬局等で購入することができない。これらのことは、従来のオゾン水生成装置が一般家庭向けに普及することを妨げる要因になっていた。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一般家庭用に小型化し、長時間にわたって高いオゾン濃度を保つ等張オゾン水を簡単に製造できる等張オゾン水製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明による等張オゾン水製造装置は、溶液にオゾンを溶解させた等張オゾン水を製造する装置であって、水に食塩を溶解させた0.9%食塩水からなる溶液を連続して定量移送する溶液移送部と、携帯用の酸素ボンベから速度制御された酸素ガスを供給してオゾン発生器でオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、溶液移送部から定量移送された溶液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスとをスタティックミキサにより混合して気液混合水を生成する気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合水を溶液に溶解しない廃ガスと溶液にオゾンを溶解させた等張オゾン水とに分離する気液分離部と、気液分離部で分離された廃ガスに含まれる残留オゾンを触媒により酸素に分解する廃ガス処理部と、気液分離部で分離された等張オゾン水を装置外部に排出する等張オゾン水排出部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明において、気液分離部は円筒型の気液分離管からなり、気液分離管の給水口に連結管が嵌め込み固定されており、この連結管の管内に、吐出口に排液チューブを取り付けたチューブ付きのスタティックミキサが収容されている構造を採用することができる。
【0012】
また、上記の構造において、気液分離管の底部にキャップ型のブロックが嵌め込み固定されており、このブロックの内部底面に中心部の排出孔に向かって湾曲状に面取り加工された傾斜面が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の等張オゾン水製造装置によれば、等張オゾン水の原料である溶液について、市販のミネラルウォーターに食塩を溶解させた0.9%食塩水を使用することができ、オゾンガスの原料となる酸素ガスについても、簡単に入手できる携帯用の小型酸素ボンベを使用することができるので、簡単かつ低コストで等張オゾン水を製造することができる。また、製造した等張オゾン水は、採取直後のオゾン濃度が約3.0ppm以上、2時間経過後でも約2.0ppmの高いオゾン濃度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の等張オゾン水製造装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】給水キャップと給水アダプタとの関係を示す拡大断面図。
【図3】気液分離管の底部の構造を示す拡大断面図。
【図4】等張オゾン水のオゾン濃度の経時的変化を比較したグラフ図。
【図5】等張オゾン水のpHの測定値を比較したグラフ図。
【図6】1日経過後の骨芽細胞の増殖の様子を撮影した顕微鏡写真。
【図7】等張オゾン水を添加して4日経過後の骨芽細胞数を比較したグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の等張オゾン水製造装置Mは、溶液にオゾンを溶解させて等張オゾン水を製造する装置であり、体液と浸透圧が等しい濃度0.9%の等張食塩水にオゾンを溶解させて、オゾン濃度約3.0ppm以上の等張オゾン水を毎分約180〜230mLの量で製造することができる。この等張オゾン水製造装置Mは、溶液移送部1と、オゾンガス発生部2と、気液混合部3と、気液分離部4と、廃ガス処理部5と、等張オゾン水排出部6を備えて構成されている。以下、各部の構造と機能を詳細に説明する。なお、図において実線の矢印は液体の流れを表わし、点線の矢印は気体の流れを表わしている。
【0017】
〔溶液移送部〕
溶液移送部1は、等張オゾン水の原料となる溶液(0.9%食塩水)を連続的に定量移送する機能を有するもので、給水キャップ12と、給水アダプタ13と、ポンプ14により構成されている。
【0018】
溶液は、本実施形態では2Lのペットボトル容器11に入ったミネラルウォーターに18gの食塩を溶解させて濃度0.9%の食塩水としたものである。ここで、ミネラルウォーターは硬水、軟水を問わず使用することができるが、できれば軟水、理想的には中性のものが良い。食塩は中性のものを使用しなければならない。食塩の中にはアルカリ性を示すものもあるが、これを溶解させた食塩水を使用すると、混合したオゾンを分解してしまい好ましくないからである。なお、ミネラルウォーターは2Lに限らず他の容量のものでも良く、食塩水の濃度が0.9%になるように、例えば1Lに9gの食塩、500mLに4.5gの食塩をそれぞれ溶解させたものを使用することもできる。
【0019】
0.9%食塩水からなる溶液は、ペットボトル容器11のキャップを専用の給水キャップ12に付け替えて装置にセットされる。給水キャップ12は、図2に示すようにキャップ本体の開口部12aにスプリング12bによって付勢された弁12cが設けられたものである。この給水キャップ12をペットボトル容器11の口に装着し、容器を逆さまにして給水キャップ12を給水アダプタ13の凹部13aに差し込むようにする。これにより、突起13bに押された弁12cがスプリング12bのばね力に抗して持ち上がり、弁12cが開いて容器11内の溶液が給水孔13cから一定量ずつ流れ出るようになっている。
【0020】
給水孔13cから流れ出た溶液は、チューブを通ってポンプ14へと供給される。本実施形態のポンプ14は、ゴム製のチューブの弾性力を利用して液体を移送するチューブポンプである。このポンプ14を起動すると、ギヤードモータによって回転するローラ14aがチューブ14bを押し潰しながら公転する。そして、押し潰されたチューブ14bが弾性力で復元する際にチューブ14bから溶液を吸入し、ローラ14aの回転に伴ってチューブ14b内の溶液が一定量ずつ連続して送り出されるようになっている。なお、チューブ14bのサイズやギヤードモータの回転数を変更することでの移送流量を調節することができるが、本実施形態では移送流量を毎分180〜230mLに設定した溶液が気液混合部3へと連続的に定量移送される。
【0021】
〔オゾンガス発生部〕
オゾンガス発生部2は、オゾンと酸素の混合ガス(以下「オゾンガス」という)を発生させる機能を有するもので、酸素ボンベ21と、速度制御弁22と、圧力センサ23と、オゾン発生器24と、逆止弁25により構成されている。
【0022】
酸素ボンベ21は、本実施形態では携帯用の小型ボンベ(酸素容量18L)を使用しており、このボンベの吐出口には速度制御弁(スピードコントローラ)22が取り付けられている。速度制御弁22は、図のように絞り弁22aと逆止弁22bを並列に組み合わせた構造になっている。したがって、酸素ボンベ21から吐出された原料ガスは、絞り弁22aで流量が調節され、流体圧によって逆止弁22bを開き、圧縮状態のまま流速制御されてオゾン発生器24に供給される。
【0023】
オゾン発生器24は、無声放電を利用してオゾンガスを発生させるオゾナイザーであり、その吸気口が速度制御弁22を介して酸素ボンベ21に接続されている。このオゾン発生器24によると、内部にガラスやセラミック等の誘電体で被覆した電極が対向配置されており、これに交流電圧を印加し、酸素ボンベ21から供給された原料ガスに放電を与えてオゾンを発生させるようになっている。その発生原理は、電子衝突によって酸素分子[O]が酸素原子[O]に分解され、分解された酸素原子[O]と酸素分子[O]とが結合してオゾン[O]が発生するというものである。なお、本実施形態のオゾン発生器24は無声放電のものを使用したが、これに代えて、ダイヤモンド電極や紫外線ランプによるものを使用しても良い。
【0024】
酸素ボンベ21から供給される原料ガスの供給量は、速度制御弁22と圧力センサ23によって調節される。本実施形態では流量が毎分0.25mL、酸素圧が0.04MPaに設定されている。また、オゾン発生器24の排気口には、オゾンガス排気用のチューブが接続されている。このチューブの先端には逆止弁25が取り付けられており、発生したオゾンガスが逆止弁25を通じて気液混合部3に供給され、オゾンガスがオゾン発生器24に逆流しないように構成されている。
【0025】
〔気液混合部〕
気液混合部3は、溶液移送部1から移送されてきた0.9%食塩水にオゾンガス発生部2で発生させたオゾンガスを混合した混合水(以下「気液混合水」という)を生成する機能を有するもので、スタティックミキサ31により構成されている。
【0026】
スタティックミキサ31は、駆動部のない静止型混合器(ラインミキサ)であり、管内に入った流体を撹拌混合するものである。スタティックミキサ31には2個の吸入口が設けられており、一方にはポンプ14からの溶液移送用のチューブが接続され、他方にはオゾン発生器24からのオゾンガス排気用のチューブが接続されている。ミキサの吸入口は内部で流路が狭められているため、ポンプ14から移送された溶液は吸入口で流速が増加し、その加速した溶液の水流によって、オゾンガスがチューブを通じて吸入口から吸い込まれる。これにより、スタティックミキサ31の管内で0.9%食塩水とオゾンガスが合流するようになっている。
【0027】
また、スタティックミキサ31の管内には、長方形の板を180°ねじった形の右エレメント31aと、これと反対方向にねじった形の左エレメント31bが設けられ、両エレメント31a,31bが交互に連続して配置されている。このため、管内に流れ込んだ溶液とオゾンガスは各エレメント31a,31b,…のねじれ面に沿って分割、方向転換、反転を繰り返し、乱流による撹拌を起こす。これにより、溶液とオゾンガスが効率よく混ざり合い、溶液にオゾンガスが溶解した高濃度の気液混合水が生成される。こうしてスタティックミキサ31を通じて生成された気液混合水は、気液分離部4に供給される。
【0028】
〔気液分離部〕
気液分離部4は、気液混合部3で生成された気液混合水を、溶液に溶解しない酸素と残留オゾンの混合ガス(以下「廃ガス」という)と、0.9%食塩水にオゾンが溶解した混合溶液(以下「等張オゾン水」という)とに分離する機能を有するもので、気液分離管41と、連結管42と、排液チューブ43により構成されている。
【0029】
気液分離管41は、円筒型の中空容器を起立させた状態で設置したものであり、天面に給水口が開口され、この給水口に細長型の連結管42が嵌め込み固定されている。また、スタティックミキサ31の吐出口にはシリコーンゴム製の排液チューブ43が取り付けられており、このチューブ付きのスタティックミキサ31が連結管42の管内に収容された構造になっている。ここで、スタティックミキサ31の吐出口に排液チューブ43を取り付けた理由は、スタティックミキサ31の吐出口がむき出しになっているとミキサ内で乱流撹拌された気液混合水が勢いよく吐出して気液分離管41の内部で渦流が発生するので、この排液チューブ43を通すことにより渦流を抑制するためである。
【0030】
排液チューブ43から流れ出た気液混合水は、この気液分離管41の管内で廃ガスと等張オゾン水に分離される。そして、廃ガスは気液分離管41と連結管42の間の隙間を通り抜け、廃ガス処理部5へと排気される。他方、等張オゾン水は排液チューブ43から流れ落ち、等張オゾン水排出部6から装置の外部へと排出される。
【0031】
〔廃ガス処理部〕
廃ガス処理部5は、気液分離部4で分離された廃ガスに含まれる残留オゾンを酸素に分解する機能を有するもので、オゾン分解触媒器51により構成されている。
【0032】
オゾン分解触媒器51は、本実施形態では触媒を利用してオゾンを分解するもので、気液分離管41の管部上方に一体に取り付けられている。オゾン分解触媒器51の容器内には、オゾン分解能を有する触媒として、酸化マンガンや酸化ジルコニア等の酸化物をハニカム構造にした多孔質フィルタ52が収容されている。これにより、気液分離管41から排気された廃ガスがオゾン分解触媒器51に入ると、廃ガス中の残留オゾンが触媒の多孔質フィルタ52に吸着されて反応し、オゾン[O]が酸素分子[O]に分解され、オゾン特有の臭気も取り除かれる。なお、このオゾン分解器51は、触媒を利用しているので交換の必要がなく、メンテナンスフリーを実現できる。
【0033】
〔等張オゾン水排出部〕
等張オゾン水排出部6は、気液分離部4で分離された等張オゾン水を装置の外部へと排出する機能を有するもので、気液分離管41の底部に設けられた排出口61により構成されている。
【0034】
気液分離管41の底部には、図3に示すようなキャップ型のブロック62が嵌め込み固定されている。そして、ブロック62の内部底面には、中心部に向かって湾曲状(R=115°)に面取り加工した傾斜面62aが設けられており、その中心部には等張オゾン水を取り出すために内径5mm程度の排出孔62bが形成され、排出口61に連通している。また、排液チューブ43の先端はブロック62の内部底面からの高さHが約5〜20mmの位置に配置されるように、スタティックミキサ31の高さ位置と排液チューブ43の長さが設定されている。
【0035】
このような構造により、スタティックミキサ31で混合し生成された等張オゾン水は、排出口61から直接吐出されるのではなく、排液チューブ43から滴下した状態で流れ出る。そして、流れ出た等張オゾン水は一旦ブロック62に当たった後、傾斜面62aに沿って静かに流れ落ちていく。このため、等張オゾン水中に気泡が発生することがない。
【0036】
上記のようにして製造された等張オゾン水を採取する際には、排出口61の下にあらかじめ蓋を開けた魔法瓶63を設置しておけばよい。これにより、排出口61から滴下した等張オゾン水が魔法瓶63の中に次第に溜まっていき、1分後にはオゾン濃度約3.0ppm以上、容量180〜230mLの等張オゾン水が採取される。採取した後、魔法瓶63の蓋を閉めておけば、2時間経過後でも約2.0ppmの高いオゾン濃度を保持することができる。
【0037】
なお、本発明の等張オゾン水製造装置Mは、図示しない充電式のバッテリー(DC12V)を備えており、すべての部品を12Vで駆動するものを使用している。このため、本発明装置をバッテリーで駆動することも可能であり、携帯可能な装置として使用することができる。
【0038】
以上が本発明の等張オゾン水製造装置の構造であるが、以下その作用効果について、実験データに基づいて説明する。
【0039】
(1)等張オゾン水のオゾン濃度の測定
下記の3種類の溶液を用意した。
・0.9%生理食塩水
・0.9%食塩水:ミネラルウォーター(サントリー株式会社「サントリー天然水 南アルプス」)2Lに食塩(財団法人塩事業センター「食塩」)18gを投入し、白濁が無くなるまで容器を良く振って溶解させた食塩水溶液
・0.9%食卓塩水:ミネラルウォーター(同上)2Lに食卓塩(同上「食卓塩」)18gを投入し、白濁がなくなるまで容器を良く振って溶解させた食卓塩水溶液
上記の3種類の溶液を使用し、それぞれ本発明装置にて等張オゾン水を製造して、容量180mLの等張オゾン水を採取した。これら等張オゾン水のオゾン濃度を、オゾン水濃度計(平沼産業株式会社「オゾンカウンタ ZC−15A」)を用いて測定し、オゾン濃度の経時的変化を調べた。その測定結果を図4に示す。
【0040】
(2)等張オゾン水のpHの測定
上記の方法にて製造した等張オゾン水について、各等張オゾン水のpHを、イオン濃度計(東亜電波工業「イオンメーター IM−40S」)とpHメーターpH56型(MARTINI)の両方を用いて測定した。その測定結果を図5に示す。
【0041】
(3)細胞試験
骨芽細胞と繊維芽細胞を使用して毒性試験を行った。本発明装置にて製造した等張オゾン水を添加したもの(オゾン濃度0.25ppm、1.0ppm、2.0ppm)と等張オゾン水を添加していないもの(オゾン濃度0ppm)について、1日経過後の骨芽細胞の増殖の様子を観察した。その結果を図6に示す。また、等張オゾン水(オゾン濃度4.0ppm)を培養液に添加したもの(オゾン濃度0.5ppm、1.0ppm、2.0ppm)と等張オゾン水を添加していないもの(オゾン濃度0ppm)について、4日経過後の骨芽細胞の細胞数をカウントした。その結果を図7に示す。
【0042】
(4)考察
0.9%食塩水で生成した等張オゾン水のオゾン濃度測定結果では、オゾン濃度は3.18±0.12ppmであった。等張オゾン水は、生成後60分、120分、240分経過後、それぞれ2.50ppm、2.26ppm、1.98ppmといずれもオゾン濃度は減少したが、通常のオゾン水であれば1時間経過後にオゾン濃度がほぼゼロになることに比べれば、経時的変化を見ても高いオゾン濃度を保持できることが判明した。このことは、本発明装置を使用すると、0.9%食塩水からなる溶液中にオゾンがマイクロバブルの状態で溶け込んでいるため濃度が減少しにくいことを示している。
【0043】
等張オゾン水のpH測定結果では、2Lのミネラルウォーターに食塩18gを投入し、完全に溶解させた溶液のpHが6.8±0.1と弱酸性であったのに対して、等張オゾン水のpHは7.3±0.2となり、弱アルカリ性を示した。このことは、等張オゾン水が次亜塩素酸になっていないことを示している。
【0044】
細胞試験結果では、等張オゾン水を添加すると、いずれも骨芽細胞が増殖することが観察された。特に、4日経過後の骨芽細胞数を比較すると、オゾン濃度2.0ppmのものにあっては、等張オゾン水を添加していないものに比べて1.5倍以上の骨芽細胞数の増殖を確認することができた。
【0045】
臨床成績結果
オゾン水は、浸透圧が体液と異なるため、患部表面に作用するが、等張オゾン水は体液と浸透圧が等しいため、患部から体内に浸透していく。その結果、多くの症例で良好な成績を示したことが推察できる。
【符号の説明】
【0046】
M…等張オゾン水製造装置
1…溶液移送部
11…容器
12…給水キャップ
12a…開口部
12b…スプリング
12c…弁
13…給水アダプタ
13a…凹部
13b…突起
13c…給水孔
14…ポンプ
14a…ローラ
14b…チューブ
2…オゾンガス発生部
21…酸素ボンベ
22…速度制御弁
22a…絞り弁
22b…逆止弁
23…圧力センサ
24…オゾン発生器
25…逆止弁
3…気液混合部
31…スタティックミキサ
31a…右エレメント
31b…左エレメント
4…気液分離部
41…気液分離管
42…連結管
43…排液チューブ
5…廃ガス処理部
51…オゾン分解触媒器
52…多孔質フィルタ
6…等張オゾン水排出部
61…排出口
62…ブロック
62a…傾斜面
62b…排出孔
63…魔法瓶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液にオゾンを溶解させた等張オゾン水を製造する装置であって、
水に食塩を溶解させた0.9%食塩水からなる溶液を連続して定量移送する溶液移送部と、
携帯用の酸素ボンベから速度制御された酸素ガスを供給してオゾン発生器でオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、
溶液移送部から定量移送された溶液とオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスとをスタティックミキサにより混合して気液混合水を生成する気液混合部と、
気液混合部で生成した気液混合水を溶液に溶解しない廃ガスと溶液にオゾンを溶解させた等張オゾン水とに分離する気液分離部と、
気液分離部で分離された廃ガスに含まれる残留オゾンを触媒により酸素に分解する廃ガス処理部と、
気液分離部で分離された等張オゾン水を装置外部に排出する等張オゾン水排出部と、
を備えたことを特徴とする等張オゾン水製造装置。
【請求項2】
気液分離部は円筒型の気液分離管からなり、気液分離管の給水口に連結管が嵌め込み固定されており、この連結管の管内に、吐出口に排液チューブを取り付けたチューブ付きのスタティックミキサが収容されていることを特徴とする請求項1に記載の等張オゾン水製造装置。
【請求項3】
気液分離管の底部にキャップ型のブロックが嵌め込み固定されており、このブロックの内部底面に中心部の排出孔に向かって湾曲状に面取り加工された傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の等張オゾン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−27826(P2013−27826A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166025(P2011−166025)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(597117514)
【出願人】(591264496)日本▲まき▼線工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】