説明

等速継手

【課題】大きなトルクを伝達することができると共に、コンパクトな等速継手を提供する。
【解決手段】回転中心軸線O1を中心に回転可能に設けられた入力シャフト110と、回転中心軸線O2を中心に回転可能に設けられた出力シャフト210と、軸部151および軸部151に交差する軸部152を含み、入力シャフト110の一方の端部と出力シャフト210の一方の端部とを接続するスパイダー150と、入力シャフト110の一方の端部に設けられ、軸部151の一方の端部を回転中心軸線O1の延在方向に移動可能に支持するスライダー機構272および他方の端部を支持するスライダー機構273と、出力シャフト210の一方の端部に設けられ、軸部152の一方の端部を回転中心軸線O2の延在方向に移動可能に支持する第3支持機構および軸部152の他方の端部を回転中心軸線O2の延在方向に移動可能に支持する第4支持機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、等速継手に関し、より特定的には、高速回転する第1シャフトと第2シャフトとを連結する等速継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からフックジョイントよりもトルク変動の少ない等速継手が各種提案されている。
たとえば、特開平7−174158号公報に記載された自在継手は、入力軸及び出力軸と、入力軸および出力軸のそれぞれに設けられた角度規制部とを備えている。
【0003】
さらに、この自在継手は、入力軸と出力軸のなす角を二等分する基準面Sに沿って入力軸の軸線と出力軸の軸線の交点O1を中心とする環状のインナーレースを有する不動体と、不動体のインナーレース上に回転可能に組付けられた環状の連結保持体と、連結保持体に組付けられて回転方向に90度間隔で配置され連結保持体とともに回転する球体と、入力側角度規制部に係合する係合部とを備える。そして、この自在継手は、入力軸の軸線と出力軸の軸線との交点を中心とする円弧状のアウターレースを有し、入力軸の端部に一体的に連結される入力側ヨークと、入力側ヨークに対して90度回転変位した位置に設けられ、入力側ヨークと同様に構成された出力側ヨークとを備える。
【0004】
特開平2−278017号公報にも、トルク変動の低減が図られた等速ユニバーサルジョイントが提案されている。
【0005】
この等速ユニバーサルジョイントは、第1および第2ヨーク部と、第1ヨーク部に接続された第1シャフトと、第2ヨーク部に接続された第2シャフトと、第2ヨーク部が枢着された中間リングと、中間リングおよび第1ヨーク部に枢着されたスパイダとを備えている。
【0006】
特開2002−310181号公報に記載されたユニバーサルジョイントは、第1軸部および第2軸部を有する十字型スパイダ備え、第1軸部、第2軸部には、各両端外周部であって、両方の軸心を含む基準平面Sに対して直角な両方向に位置する2箇所ずつの、計8箇所に、それぞれ欠肉部が形成されている。
【0007】
各欠肉部の位置は、十字型スパイダをヨーク部材に組み付ける際に干渉する部分と一致するため、ヨーク部材との干渉が軽減され、ヨーク部材を従来と同程度の大きさに維持しつつ、十字型スパイダの軸部を大径化して強度や伝達トルク容量の増大化が図られている。
【特許文献1】特開平7−174158号公報
【特許文献2】特開平2−278017号公報
【特許文献3】特開2002−310181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開平7−174158号公報に記載された自在継手においては、各球体は、連結保持体に支持された状態で、インナーレースおよびアウターレースのいずれにも係合して、入力軸から出力軸に動力を伝達している。このため、大きなトルクが入力軸に加えられると、各球体に加えられる荷重が大きくなり、球体が損傷するおそれがある。そして、大きなトルクを球体を介して入力軸から出力軸に伝達するには、球体と各インナレースおよびアウタレースとの接触面積を大きくするために、球体を大きくする必要があり、その結果、継手自体の大きさが大きくなる。
【0009】
特開平2−278017号公報に記載されたユニバーサルジョイントにおいては、第2ヨーク部が中間リングの外周側から枢着されており、第1ヨーク部が中間リングの内周側から枢着されている。
【0010】
そして、第2シャフトが、第1ヨーク部と中間リングとの枢着部を中心に回動するように変位すると、第1ヨーク部と中間リングとの2箇所の枢着部によって規定される仮想直線は、第1シャフトの回転軸線と、第2シャフトの回転軸線との二等分線上から外れ、このユニバーサルジョイントは、不等速性のジョイントとなる。
【0011】
特開2002−310181号公報に記載されたユニバーサルジョイントにおいても、外力が加えられ、第1軸部と第2軸部との交差角度が変動すると、回動変動が生じる。
【0012】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、第1シャフトと第2シャフトとを連結する継手において、第1シャフトと第2シャフトとの交差角度が変動したとしても、回動変動の抑制が図られ、さらに、大きなトルクを伝達することができると共に、コンパクトに構成された等速継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る等速継手は、第1回転軸線を中心に回転可能に設けられた第1シャフトと、第2回転軸線を中心に回転可能に設けられた第2シャフトと、第1軸部および該第1軸部に交差する第2軸部を含み、第1シャフトの一方の端部と第2シャフトの一方の端部とを接続する接続軸部と、第1シャフトの一方の端部に設けられ、第1軸部の一方の端部を第1回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第1支持機構および第1軸部の他方の端部を第1回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第2支持機構と、第2シャフトの一方の端部に設けられ、第2軸部の一方の端部を第2回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第3支持機構および第2軸部の他方の端部を第2回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第4支持機構とを備える。これにより、第1軸部の両端部を通る第1仮想軸線が第1回転軸線と第2回転軸線との交点を通り、第1仮想軸線が第1回転軸線との交差角度と、第2回転軸線との交差角度とが等しくなる位置に位置するように、第1軸部は変位可能に支持され、第2軸部の両端部を通る第2仮想直線が第1回転軸線と第2回転軸線との交点を通り、第2仮想軸線が第1回転軸線との交差角度と、第2回転軸線との交差角度とが等しくなる位置に位置するように、第2軸部は変位可能に支持される。
【0014】
好ましくは、上記第1支持機構は、第1軸部の一方の端部を回転可能に支持する第1軸受部と、第1シャフトの一方の端部に設けられ、第1回転軸線の延在方向に向けて延びると共に第1軸受部を移動可能に支持する第1穴部が形成された第1支持部とを含む。上記第2支持機構は、第1軸部の他方の端部を回転可能に支持する第2軸受部と、第1シャフトの一方の端部に設けられ、第1回転軸線の延在方向に向けて延びると共に第2軸受部を移動可能に支持する第2穴部が形成された第2支持部とを含む。上位第3支持機構は、第2軸部の一方の端部を回転可能に支持する第3軸受部と、第2シャフトの一方の端部に設けられ、第2回転軸線の延在方向に向けて延びると共に第3軸受部を移動可能に支持する第3穴部が形成された第3支持部とを含む。上記第4支持機構は、第2軸部の他方の端部を回転可能に支持する第4軸受部と、第2シャフトの一方の端部に設けられ、第2回転軸線の延在方向に向けて延びると共に第4軸受部を移動可能に支持する第4穴部が形成された第4支持部とを含む。
【0015】
好ましくは、上記第1軸部は、一方の端部に形成された球体状の第1球体部と、他方の端部に形成された球体状の第2球体部とを含み、上記第2軸部は、一方の端部に形成された球体状の第3球体部と、他方の端部に形成された球体状の第4球体部とを含む。好ましくは、上記第1および第2軸受部は、第1軸部を該第1軸部の軸線方向に移動可能に支持する第1および第2ローラ軸受部とされ、第3および第4軸受部は、第2軸部を該第2軸部の軸線方向に移動可能に支持する第3および第4ローラ軸受部とされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る等速継手によれば、第1シャフトと第2シャフトとの交差角度が変動したとしても、回動変動の抑制を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施の形態に係る等速継手について、図1から図5を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る等速ジョイント100の一部を断面視した平面図であり、図2は、図1中のII方向から見た平面図であり、一部を断面視した平面図である。これら、図1および図2に示すように、等速ジョイント100は、回転中心軸線O1を中心に回転可能に設けられた入力シャフト110と、回転中心軸線O2を中心に回転可能に設けられた出力シャフト210と、軸部151および軸部151に交差する軸部152を含む十字形状のスパイダー150とを備えている。
【0019】
さらに、等速ジョイント100は、入力シャフト110の一方の端部に設けられ、軸部151の一方の端部を回転中心軸線O1の延在方向に向けて移動可能に支持するスライダー機構272と、軸部151の他方の端部を回転中心軸線O1の延在方向に向けて移動可能に支持するスライダー機構273とを備えている。
【0020】
また、等速ジョイント100は、出力シャフト210の一方の端部に設けられ、軸部152の一方の端部を回転中心軸線O2の延在方向に向けて移動可能に支持するスライダー機構270と、出力シャフト210の一方の端部に設けられ、軸部152の他方の端部を回転中心軸線O2の延在方向に向けて移動可能に支持するスライダー機構271とを備えている。
【0021】
ここで、図1および図2に示す例においては、軸部151と軸部152とは互いに直交するように形成されている。
【0022】
そして、入力シャフト110と出力シャフト210とは、図1に示すように、軸部151の軸線方向から平面視すると、回転中心軸線O1と回転中心軸線O2とは互いに交差するように配置されており、また、図2に示すように、軸部152の軸線方向から平面視すると、回転中心軸線O1と回転中心軸線O2とは一致するように配置されている。
【0023】
そして、軸部152の中心軸線O4は、回転中心軸線O1と回転中心軸線O2との交点を通る。軸部152は、中心線O4と回転中心軸線O1との交差角度のうち、小さい方の交差角度θ1と、中心線O4と回転中心軸線O2との交差角度のうち、小さい方の交差角度θ2とが等しくなるように配置されている。
【0024】
軸部151は、回転中心軸線O1および回転中心軸線O2とのいずれとも直交しており、交差角度θ3,θ4は、いずれも等しくなっている。
【0025】
このように、入力シャフト110と出力シャフト210とがスパイダー150によって接続されることで、入力シャフト110からの回転トルクは、スパイダー150を介して出力シャフト210に出力される。
【0026】
そして、入力シャフト110の任意の点が一回転することで描く軌跡を通る平面を仮想平面S1とする。この仮想平面S1は、回転中心軸線O1に対して垂直な平面となる。中心線O3および中心線O4のいずれも含む平面を仮想平面S0とする。この仮想平面S0は、スパイダー150の軸部152および軸部151のいずれも通る仮想平面である。そして、回転中心軸線O2に対して垂直な平面を仮想平面S2とする。
【0027】
ここで、仮想平面S0と仮想平面S1との交差角度θ5は、仮想平面S0と仮想平面S2との交差角度θ6とが等しくなる。このように、仮想平面S0は、仮想平面S1と仮想平面S2との二等分線上に位置している。
【0028】
このため、入力シャフト110の回転をスパイダー150に伝達する回転半径r1と、スパイダー150の回転を出力シャフト210に伝達する回転半径r2とは、等しくなっている。さらに、入力シャフト110から出力シャフト210には、スパイダー150を介して動力が伝達されているため、瞬間的な速度は、1つしかない。このため、入力シャフト110の回転角速度ω1とし、出力シャフト210の回転角速度ω2とすると、r1×ω1=r2×ω2となる。そして、上記のように、r1=r2であるため、ω1=ω2となり、等速ジョイント100は、等速ジョイントであることが分かる。
【0029】
図2において、スライダー機構272は、入力シャフト110の一方の端部に形成され、軸部151の一方の端部および他方の端部を支持するヨーク部113,114と、軸部151の一方の端部に設けられ、軸部151を回転可能に支持するローラ軸受部130と、軸部151の他方の端部に設けられ、軸部151を回転可能に支持するローラ軸受部131とを備えている。
【0030】
ローラ軸受部130は、ヨーク部113に形成され、回転中心軸線O1方向に延びる支持溝部115内に、支持溝部115の延在方向に移動可能に装着されている。ローラ軸受部131は、ヨーク部114に形成され、回転中心軸線O1方向に延びる支持溝部116内に、支持溝部116の延在方向に移動可能に装着されている。
【0031】
図1において、スライダー機構270は、出力シャフト210の一方の端部に形成され、軸部152の一方の端部および他方の端部を支持するヨーク部213,214と、軸部152の一方の端部に設けられ、軸部152を回転可能に支持するローラ軸受部230と、軸部152の他方の端部に設けられ、軸部152を回転可能に支持するローラ軸受部231とを備えている。
【0032】
ローラ軸受部230は、ヨーク部213に形成され、回転中心軸線O2方向に延びる支持溝部215内に、支持溝部215の延在方向に移動可能に装着されている。ローラ軸受部231は、ヨーク部214に形成され、回転中心軸線O2方向に延びる支持溝部216内に支持溝部216の延在方向に移動可能に装着されている。
【0033】
このため、たとえば、外力が加えられることで、入力シャフト110と出力シャフト210との交差角度が変動した場合においても、ローラ軸受部130,131が支持溝部115,116内を移動したり、ローラ軸受部230,231が支持溝部215,216内を移動して、仮想平面S0が仮想平面S1と仮想平面S2との二等分線上に位置するように変位する。これにより、出力シャフト210に回動変動が生じることを抑制することができ、回動変動に伴う異音の発生の抑制を図ることができる。
【0034】
図3は、ヨーク部113およびローラ軸受部130の断面図である。この図3に示すように、軸部151の端部には、球体状の球体部160が形成されており、この球体部160は、ローラ軸受部130内に挿入されている。
【0035】
支持溝部115内に装着されたローラ軸受部130は、筒状に形成された円筒部250と、円筒部250の内周面に間隔を隔てて複数配置され、回転可能に設けられた複数のニードル部251とを備えている。ニードル部251は、内部に挿入された球体部160を回転可能に支持している。
【0036】
ヨーク部113は、上壁部323と、この上壁部323の両端部から垂下する支持側壁部320,321と、上壁部323と対向する底壁部123と、底壁部123の両端部に形成された支持側壁部120,121とを備えている。
【0037】
支持側壁部321と支持側壁部121とは、互いに対向しており、支持側壁部321と支持側壁部121との間には、回転中心軸線O1方向に延びる開口部132が形成されている。この開口部132には、軸部151が挿入されている。
【0038】
支持側壁部320と支持側壁部120とは、互いに対向しており、支持側壁部320と支持側壁部120との間には、回転中心軸線O1方向に延びる開口部133が形成されている。
【0039】
そして、支持側壁部321と支持側壁部320とが円筒部250を支持すると共に、支持側壁部120と支持側壁部121とが円筒部250を支持しており、ローラ軸受部130が支持溝部115から脱落することを抑制している。
【0040】
ここで、開口部132と開口部133とローラ軸受部130とによって、貫通孔が規定されている。そして、球体部160は、ローラ軸受部130、開口部132および開口部133によって規定される貫通孔内を移動可能に設けられている。
【0041】
なお、ローラ軸受部130およびヨーク部113に限られず、ヨーク部114,213,214およびローラ軸受部131,230,231も同様に構成されている。軸部152の両端部には、球体部162,163が形成されており、軸部152の両端部は、中心線O4方向に移動可能にローラ軸受部230,231に支持されている。また、軸部151の両端部には、球体部160,161が形成されており、軸部151の両端部は、中心線O3方向に移動可能にローラ軸受部130およびローラ軸受部131に支持されている。
【0042】
このように、スパイダー150の各端部は、球体状の球体部160,161,162,163とされているため、ローラ軸受部130,131,230,231との間で生じる摩擦を低減することができる。さらに、軸部151の両端部および軸部152の両端部は、ローラ軸受部130,131,230,231内を良好に変位することができる。
【0043】
図4は、図2に示すように、軸部152の軸線方向から平面視した際に、入力シャフト110の回転中心軸線O1と出力シャフト210の回転中心軸線O2とが交差するように、出力シャフト210が変位した状態を示す平面図である。
【0044】
この図4に示すように、出力シャフト210が傾斜すると、ローラ軸受部130およびローラ軸受部131は、上記図2に示す状態からそれぞれ変位する。
【0045】
そして、中心線O3を含む仮想平面S0が回転中心軸線O1および回転中心軸線O2の交差点を通り、回転中心軸線O1と回転中心軸線O2との二等分線上に位置するように、ローラ軸受部130およびローラ軸受部131が変位する。
【0046】
ここで、ローラ軸受部130,131が図2に示す状態から、図4に変位する過程において、軸部151の一方の端部および他方の端部は、中心線O3方向に移動可能にローラ軸受部130,131に支持されているので、各球体部160,161は、ローラ軸受部130,131に対して相対的に移動する。具体的には、球体部160は、ローラ軸受部130内を、ヨーク部114側の側面に向けて変位し、球体部161は、ローラ軸受部131内をヨーク部113側に向けて変位する。これにより、ローラ軸受部130とローラ軸受部131との間の距離が長くなる一方で、軸部151の長さは、一定に維持される。
【0047】
そして、この図4に示す状態においても、回転中心軸線O2と仮想平面S0との交差角度θ4と、回転中心軸線O2と仮想平面S0との交差角度θ3とが等しくなる。さらに、仮想平面S0と仮想平面S2との交差角度θ7と、仮想平面S0と仮想平面S1との交差角度θ8とが等しくなる。
【0048】
このため、入力シャフト110の回転をスパイダー150に伝達する回転半径r1と、スパイダー150の回転を出力シャフト210に伝達する回転半径r2とは、等しくなっている。さらに、入力シャフト110から出力シャフト210には、スパイダー150を介して動力が伝達されているため、瞬間的な速度は、1つしかない。このため、入力シャフト110の回転角速度ω1とし、出力シャフト210の回転角速度ω2とすると、r1×ω1=r2×ω2となる。そして、上記のように、r1=r2であるため、ω1=ω2となる。このため、等速ジョイント100が、等速ジョイントである状態が維持される。
【0049】
図5は図1に示すように、軸部151の軸線方向から平面視した際に、回転中心軸線O1と回転中心軸線O2との交差角度が図1に示す状態よりも小さくなるように、入力シャフト110または出力シャフト210が変位した状態を示す平面図である。
【0050】
この図5に示すように、入力シャフト110および出力シャフト210の少なくとも一方が変位して、回転中心軸線O1と回転中心軸線O2との交差角度が変動しても、ローラ軸受部230およびローラ軸受部231が、支持溝部215および支持溝部216内を変位することで、仮想平面S0と仮想平面S1との交差角度θ5と、仮想平面S0と仮想平面S2との交差角度θ6とが等しくなる。これにより、入力シャフト110が等速ジョイントである状態が維持される。
【0051】
ここで、入力シャフト110からの動力を出力シャフト210にボールを介して伝達する場合と、ローラ軸受部を介して動力を伝達する場合とを比較すると、ローラ軸受部を介して動力を伝達する方が、大きな動力を伝達することができる。さらに、スパイダー150は、2つの軸部を交差(直交)させることで構成されており、その剛性は高く変形し難くなっている。このため、大きなトルクをも入力シャフト110から出力シャフト210に伝達することができる。
【0052】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、等速ジョイントに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの一部を断面視した平面図である。
【図2】図1中のII方向から見た平面図である。
【図3】ヨーク部およびローラ軸受部の断面図である。
【図4】軸部の軸線方向から平面視した際に、入力シャフトの回転中心軸線と出力シャフトの回転中心軸線が交差するように、出力シャフトが変位した状態を示す平面図である。
【図5】軸部の軸線方向から平面視した際に、回転中心軸線と回転中心軸線との交差角度が図1に示す状態よりも小さくなるように、入力シャフトまたは出力シャフトが変位した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
100 等速ジョイント、110 入力シャフト、113,114 ヨーク部、115,116 支持溝部、130,131,230,231 ローラ軸受部、160,161,162,163 球体部、270,271,272,273 スライダー機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸線を中心に回転可能に設けられた第1シャフトと、
第2回転軸線を中心に回転可能に設けられた第2シャフトと、
第1軸部および該第1軸部に交差する第2軸部を含み、前記第1シャフトの一方の端部と前記第2シャフトの一方の端部とを接続する接続軸部と、
前記第1シャフトの一方の端部に設けられ、前記第1軸部の一方の端部を前記第1回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第1支持機構および前記第1軸部の他方の端部を前記第1回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第2支持機構と、
前記第2シャフトの一方の端部に設けられ、前記第2軸部の一方の端部を前記第2回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第3支持機構および前記第2軸部の他方の端部を前記第2回転軸線の延在方向に移動可能に支持する第4支持機構と、
を備えた等速継手。
【請求項2】
前記第1支持機構は、前記第1軸部の一方の端部を回転可能に支持する第1軸受部と、前記第1シャフトの一方の端部に設けられ、前記第1回転軸線の延在方向に向けて延びると共に前記第1軸受部を移動可能に支持する第1穴部が形成された第1支持部とを含み、
前記第2支持機構は、前記第1軸部の他方の端部を回転可能に支持する第2軸受部と、前記第1シャフトの一方の端部に設けられ、前記第1回転軸線の延在方向に向けて延びると共に前記第2軸受部を移動可能に支持する第2穴部が形成された第2支持部とを含み、
前記第3支持機構は、前記第2軸部の一方の端部を回転可能に支持する第3軸受部と、前記第2シャフトの一方の端部に設けられ、前記第2回転軸線の延在方向に向けて延びると共に前記第3軸受部を移動可能に支持する第3穴部が形成された第3支持部とを含み、
前記第4支持機構は、前記第2軸部の他方の端部を回転可能に支持する第4軸受部と、前記第2シャフトの一方の端部に設けられ、前記第2回転軸線の延在方向に向けて延びると共に前記第4軸受部を移動可能に支持する第4穴部が形成された第4支持部とを含む、請求項1に記載の等速継手。
【請求項3】
前記第1軸部は、一方の端部に形成された球体状の第1球体部と、他方の端部に形成された球体状の第2球体部とを含み、
前記第2軸部は、一方の端部に形成された球体状の第3球体部と、他方の端部に形成された球体状の第4球体部とを含む、請求項2に記載の等速継手。
【請求項4】
前記第1および前記第2軸受部は、前記第1軸部を該第1軸部の軸線方向に移動可能に支持する第1および第2ローラ軸受部とされ、前記第3および第4軸受部は、前記第2軸部を該第2軸部の軸線方向に移動可能に支持する第3および第4ローラ軸受部とされた、請求項2または請求項3に記載の等速継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−250256(P2009−250256A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94892(P2008−94892)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)