説明

筋力トレーニング装置

【課題】
座席に座って筋力トレーニングをおこなう装置では、力を入れて運動をおこなうと、背もたれに腰背部を強く押しつけ、背もたれに脊柱が当たって不快感や痛みを生じることがある。
また、重錘を用いる筋力訓練装置では、数種類の重さのものを複数枚、組み合わせて、所望の重さにして使用する。重錘には1枚1枚に、見易い位置にその重さが表示されているが、毎回、全重錘の重さを加算して確認することは非常に面倒である。
【解決手段】
第1の課題を解決するために、筋力トレーニング装置の背当て部の脊柱が当たる部分をくり抜くか、凹状にするか、又は柔軟な部材にし、脊柱への刺激を少なくするようにした。
第2の課題を解決するために、筋力トレーニング装置の重錘に色の濃淡を付けるか又は色分けして、使用している重錘の重さを一目で認識できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋力トレーニング装置に関するもので、特に、 トレーニング中に、トレーニング装置の腰部又は背部を支持する腰背支持部マットに脊柱が当たって不快感や痛みが生じることを防止することと、現在の負荷量を一目で判断できるようにして安全で効果的なトレーニングを可能にすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
筋力トレーニング装置は、関節の抵抗運動をおこない、その関節運動に関与する筋肉のトレーニングなどをおこなうものである。
全ての関節がトレーニング対象となりうるが、膝関節、股関節、肩関節、肘関節などのトレーニングがよくおこなわれている。抵抗には、重錘やモータ、物理的な摩擦力などが用いられる。
【0003】
例えば、 肩関節周囲筋の筋力トレーニングでは、図6のような装置を用い、被訓練者はトレーニング装置の座席に座り、肩関節運動用のアームを用いて、肩関節周囲の抵抗運動をおこなう(例えば特許文献1など)。
【0004】
膝関節周囲筋の筋力トレーニングでは、図7のような装置を用い、被訓練者はトレーニング装置の座席に座り、 膝関節運動用のアームを用いて、これに負荷をかけて膝の屈伸運動をおこなう(例えば特許文献2など)。
【0005】
下肢全体の筋力をつけ、立ちあがり動作の改善などを目的とする場合、図8のような装置を用い、足の屈伸運動をおこなう(例えば特許文献3など)。
【0006】
重錘を用いた筋力トレーニング装置は、図9のように、負荷量を調節するために、各種の重さの重錘を、複数枚ずつ用意しており、適切な負荷になるように重錘の量を選択して用いる(例えば特許文献4など)。
以下に、図で説明をおこなう。
【特許文献1】特開平9−294827
【特許文献2】特開平6−90936
【特許文献3】第2898728号
【特許文献4】特公平6−9620
【0007】
図6は、特許文献1に開示されている、負荷に重錘を用いた肩関節周囲の筋力トレーニング装置の例である。装置は、重錘(図6の37)の荷重が負荷されて回動可能な一対のクランクアーム(図6の36)をフレーム(図6の30)に軸支し、該クランクアームに設けられたアームパッド(図6の63)をシート(図6の75)に着座した被訓練者が両腕でそれぞれ顔面側の前方へ互いに回動させて肩関節運動をおこなうようにしており、肩関節運動に関連する筋肉のトレーニングを行うことができるようにしたものである。負荷抵抗の量は、重錘(図6の37)の重さを選択して設定できる。
【0008】
筋力トレーニングは、被訓練者の筋力等の状態に応じて負荷量と繰り返し回数を設定しておこなうが、筋力を増強させたい場合は、予め最大筋力を測定しておき、例えばその60%程度の負荷量にし、所定の回数だけ回動運動をおこない、筋力トレーニングをおこなう。
【0009】
図7は、特許文献2に開示されている、負荷をモータで発生させる膝関節周囲筋のトレーニング装置の例である。
装置は、モータ(図7の8)の荷重が負荷されている回動可能なアーム(図7の6)にパッド(図7の29)を設け、アーム(図7の6)の回転軸を膝関節の回転中心と位置合わせをおこない、膝関節の抵抗運動をおこなうようにしたものである。
被訓練者は、図7のように座席に座り、パッド(図7の29)を下腿に当て、負荷発生部(図7の8)で必要な負荷を発生させ、所定の回数だけ膝の屈伸運動をおこない、膝関節周囲筋の筋力トレーニングをおこなう。
【0010】
図8は、特許文献3に記載されている、レッグプレストレーニングとも言われるもので、下肢の屈伸運動をおこない、立ちあがり動作等のトレーニングをおこなうものである。
【0011】
以上のように、トレーニングは座位でおこなうことが多い。装置の座部は、座席と腰背部支持部とから構成される。
腰背部支持部には、腰部から上背部までの全体を支えるもの(以下、背支持部とする)と、腰部だけを支持するもの(以下、腰支持部とする)とがある。
図5は座部の概略図である。図5(A)は上背部までの背部全体を支持する背支持部52を有するもので、図5(B)は腰部だけを支持する腰支持部522を有するものである。
【0012】
図6の装置は、腰支持部(図6の32)を有するものの例である。頭部や上背部を支持する支持部(図6の34)も有するが、トレーニング時には実質的に、支持部(図6の34)は、休憩中に頭部をもたれ掛けるため等に用いる。
【0013】
図9の装置は、背支持部52を有するものの例である。腰部から頭部まで全体を支持する背支持部を有するものもある。
図9は、特許文献4に開示されている、重錘装置の例である。筋力トレーニング装置では、被訓練者に適した負荷量にして、筋力トレーニングをおこなうため、多数の重錘(図の重錘プレート33)の中から必要数を選択して細かい荷重の設定ができるようにしている。重錘は、例えば、上から、1kgの重錘を1枚、2kgの重錘を2枚、5kgの重錘を20枚、重ねて置いている。ピン(図9の41)を通孔(図9の40)に挿入すると、選択した通孔よりも上に重ねた重錘だけが選択される。そのときの負荷は、選択された重錘の重さの和になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
座席に座り、筋力トレーニングをおこなうと、 繰り返し、強く腰や背を腰背支持部に押しつけたり擦ったりするので、脊柱に不快感や痛みを生じる。
図6のように腰当部(図6の32)を使用している場合は、腰部の脊柱は腰当部に当たり、不快感や痛みが生じることがある。
図7の膝関節周囲筋トレーニング装置や、その他の座位や仰臥位で、背をマットに押し付けるトレーニング装置ではみな同様である。
【0015】
特に、図8のように、座位で背を背支持部に当てて足を屈伸運動する、いわゆるレッグプレスと言われる運動をおこなうと、脊柱が腰背支持部に強く押しつけられ、背部の広い範囲で、不快感や痛みが発生しやすい。
本発明の第一の課題は、トレーニング時に腰部や背部がマットに当たり、脊柱を圧迫したり擦ったりして生じる不快感や痛みを少なくすることである。
【0016】
重錘を用いる筋力トレーニング装置では、被訓練者の筋力に応じて重錘の重さを調節して用いる。通常は、図10のように、各重錘には重さが記載されているので、これを数えて、必要な量を選択し、ピンをセットして用いる。図10の例では、上から5番目のピン孔にピンを差込んでおり、全負荷量は、選択された重錘プレート5枚分、15kgとなる。
この例からもわかるとおり、負荷量は重錘プレートの各重さを加算しなくてはならない。これはトレーニングをおこなう人ごとにおこなわなければならないので、大変、面倒である。また、トレーニング中の負荷を簡単に確認することはできない。
本発明の第二番目の課題は、負荷の量を数えなくても、一目で分かるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一の課題を解決するために、請求項1記載の発明では、 筋力トレーニング装置の腰背支持部の、脊柱が当たる部分をくり抜くか、凹状にするか、又は柔軟な部材にするかして、脊柱への刺激を少なくするようにした。
【0018】
第二の課題を解決するために、請求項2記載の発明では、筋力トレーニング装置の負荷用重錘に色の濃淡をつけるか又は色分けをして、使用している重錘の重さを直感的に視覚で認識できるようにした。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明により、 筋力トレーニング装置の腰背支持部の、脊柱が当たる部分をくり抜くか、凹状にするか、又は柔軟な部材にするかしたので、背や腰をマットに強く押しつけたり、擦りつけたりしても、脊柱への刺激は少なくなり、不快感や痛みを生じることはなくなった。
【0020】
請求項2記載の発明により、筋力トレーニング装置の負荷用重錘に色の濃淡をつけるか又は色分けをしたため、現在使用している重錘の重さを一目で認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
請求項1記載の発明は、トレーニング中に、背や腰を腰背支持部に強く押しつけたり擦りつけたりしても、脊柱への刺激は少なく、不快感や痛みを生じることがない筋力トレーニング装置を提供するものである。
これを実現するために、 筋力トレーニング装置の腰背支持部の脊柱が当たる部分をくり抜くか、凹状にするか、又は柔軟な部材にした。
【0022】
請求項2記載の発明は、トレーニング中に使用している重錘の重さを一目で認識できるようにするものである。これを実現するために、負荷用重錘に色の濃淡をつけるか又は色分けをした。
【実施例1】
【0023】
請求項1記載の発明の実施例を図1に示す。図1の2は腰部から頭部まで支持することのできる背支持部、3は座席、1は背支持部2に設けたくりぬき部である。
被訓練者が座り、上半身を背支持部2にもたれかけると、安定してトレーニングをおこなうことができる。このとき、背支持部2にくりぬき部1を設けているので、背を背支持部2に押しつけても、脊柱は圧迫されない。このため、この座席に座って激しい運動をおこなっても、脊柱周辺に不快感や痛みを感じることは無い。くりぬき部の形状は問わない。
【実施例2】
【0024】
請求項1記載の発明の別の実施例を図2に示す。
図2の(A)は、背支持部(腰部から頭部まで支持することのできる腰背支持部)の脊柱が当接する部分を凹状にし、脊柱が圧迫されないようにしたものである。図の2は背支持部、3は座席、11は背支持部2に設けた凹部である。作用効果は、図1の実施例と同様である。凹部の形状は問わない。
【0025】
図2(B)は、背支持部(腰部から頭部まで支持することのできる腰背支持部)の脊柱が当接する部分をくりぬくか又は凹状にし、この部分に柔軟な部材を置き、脊柱にかかる圧力を分散し、不快感や痛みの発生を無くすようにしたものである。図の12は背支持部2をくりぬくか又は凹状にした部分に置いた柔軟な部材である。作用効果は、図1及び図2(A)の実施例と同様である。柔軟な部材の材質等は問わない。圧力が分散されてある程度不快感や痛みを防止できればよい。
【0026】
図2(C)から(E)は腰支持部に本請求項記載の発明を適応したものである。図2(C)は腰支持部21をくりぬいて、図2(D)は腰支持部21を凹状にして、図2(E)は腰支持部21をくりぬくりぬくか又は凹状にしてそこに柔軟な部材を置いて、腰を押し付けても脊柱を圧迫しないようにした。
作用効果は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0027】
請求項2記載の発明の実施例を図3に示す。本請求項記載の発明は、トレーニング中に使用している重錘の重さを一目で認識できるようにするものであり、これを実現するために、負荷用重錘に色の濃淡をつけるか又は色分けをした。
図3は本請求項記載の発明の実施例である。図には、重錘を3枚毎に色分け(斜線、破線、網目状)した例を示している。このようにして、上3枚の重錘を選択すると例えば5kg、上から6枚を選択すると例えば10kgというようにすることができるので、重錘の重さの選択と、使用中の重水の重さを、一目で判断することができる。
【0028】
通常、トレーニングでは30kgや40kgのように、よく用いる負荷量がある。このように、よく用いる負荷量ごとに色分けするのも、一方法である。
このため、重錘を数えて、各重錘の重さを加算して、全負荷量を求めるという、面倒な作業は必要が無くなった。
【実施例4】
【0029】
請求項2記載の発明の別の実施例を図4に示す。図は、重錘全に濃淡をつけている。使用中の負荷の正確な数値はわかりにくいが、おおよその見当はつくので、簡単に使用したい場合には効果的である。
【0030】
図3と図4を組み合わせて、重錘を数枚ずつ色分けし、同じ色に濃淡をつけると、さらに重量設定がしやすく、使用中の負荷量もより正確に、一目で判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】請求項1記載の発明の実施例である。
【図2】請求項1記載の発明の別の実施例である。
【図3】請求項2記載の発明の実施例である。
【図4】請求項2記載の発明の別の実施例である。
【図5】従来の筋力トレーニング装置の座席部の例である。
【図6】特許文献1に記載されている肩関節周囲筋のトレーニング装置の例である。
【図7】特許文献2に記載されている膝関節周囲筋のトレーニング装置の例である。
【図8】特許文献3に記載されているレッグプレス装置の例である。
【図9】特許文献4に記載されている重錘式トレーニング装置の例である。
【図10】従来の重錘の例である。
【符号の説明】
【0032】
1:腰背支持部に設けたくりぬき部
11:腰背支持部の凹部
12:腰背支持部に設けたくりぬき部又は凹部に置いた柔軟部材
2、21:腰背支持部
3、53:座面
31:重錘
52:背支持部
522:腰支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋力トレーニング装置の背部又は腰部を支持する腰背支持部の、脊柱が当たる部分をくり抜くか、凹状にするか、又は柔軟な部材にして、トレーニング中の脊柱への刺激を少なくした、筋力トレーニング装置。
【請求項2】
筋力トレーニング装置の負荷用重錘を、色の濃淡をつけるか又は色分けをして、使用している重錘の重さを一目で確認できるようにした筋力トレーング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−44292(P2007−44292A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232264(P2005−232264)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000114190)ミナト医科学株式会社 (31)