説明

筐体空間の空気清浄装置

【課題】使用者がクリーンルームに全身を入れ、横臥する事は勿論自由な動きが出来、空気動圧を感じる等不快感の無い、化学物質過敏症患者などアレルギー性疾病患者が家庭で使用できるクリーンルームを提供する。
【解決手段】筐体壁面の少なくとも一部が空気透過性シート2から成る壁面で構成され、かつ少なくとも人1人が入ることができる密閉空間を有する筐体と、筐体に空気清浄機6から、清浄空気入り口を介し清浄空気を入れ、該筐体空間を清浄空気で陽圧に保ち、空気清浄機の送風圧力で空気透過性シートから筐体空間内の空気を加圧排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化学物質過敏症等の患者が家庭において用いた場合に有効な筐体空間の空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住空間は冷暖房効果を高める為断熱化、気密化が進み、それにより建材から発生する様々なガスによりシックハウス症候群を引き起こし、また殺虫剤、防虫剤、芳香剤などにより化学物質過敏症を引き起こした。さらに大気汚染が進み光化学スモッグ等により喘息の発作が起きる等劣悪な環境になっている。このような状況の中、小型軽量高性能クリーンルームは、避難、治療、のため必要となっている。
【0003】
従来のクリーンルームは金属製パネルやガラス、木材など空気及び粉塵を遮断する材質で作られており、筐体の一部に排気ダクトに接続された排気口を設けるか、一部から加圧排気する構造であった(特許文献1参照)。
【0004】
又他の従来装置ではビニール等で1面以上開放してドーム型に覆い、そこに清浄空気を送り開放部から加圧排気するものであった(特許文献2参照)。
【特許文献1】 特開2000−116728
【特許文献2】 特開平7−241340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献の装置ではクリーンルーム内何箇所かの排気口から、給気風速に比べれば数倍早い風速で排気され、クリーンルーム内に風速のむらが出易く、よって清浄度にもむらが生じ、さらに重量が重く持ち運びが容易ではなく、家庭で使用する事は出来なかった。
【0006】
又他の上記特許文献の装置では基本的には、人体の一部を一部開放された清浄空気域に置き効果を期待しているが、清浄域内に在る人体の一部の自由度は極めて低く、さらにフード体の開放面積が多く清浄域内の正圧維持に要する風量は、使用者の快適性を損なう物であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって本発明は上記従来技術の課題を解決する為に成されたものであって、筐体壁面の少なくとも一部が空気透過性シートから成る壁面で構成され、かつ少なくとも人1人が入ることができる密閉空間を有する筐体と、該筐体に空気清浄機から、該筺体に形成された清浄空気入り口を介し清浄空気を入れ、該筐体空間を清浄空気で陽圧に保ち、上記空気清浄機の送風圧力で上記空気透過性シートから該筐体空間内の空気を加圧排することでなるものである。
【0008】
また、第2の課題解決手段は清浄空気入り口が設けられている筐体の壁面であってかつ空気入り口に対向する部分に空気動圧回避手段を設けられて成る構成としたものである。
【0009】
第3の課題解決手段である空気動圧回避手段は、閉塞された空気溜まり空間を設けられて成る構成としたものである。
【0010】
第4の課題解決手段である空気動圧回避手段は、閉塞された空気溜まり空間の一部が開放された空間を設けられて成る構成としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は次のような効果が得られる。
1 排気可能域として空気透過性シートを筐体の構成材として使うことにより、排気可能な筐体の面積が広くなり、筐体壁面からの排気が低速かつ排気可能な全方向に行われ、筐体内の風速、清浄度にむらが少なくなり、病気の予防、治療、喘息、シックハウス症候群、光化学スモッグ、花粉症、化学物質過敏症患者の避難等使用者が不快を感ずることの無いクリーンルームを提供できる。
2 少なくても人一人が横臥することは勿論、就寝出来る床面を有し、使用者に不必要な行動制限をする必要が無く、使用者の自由度が大きいクリーンルームを提供できる。
3 空気透過性シートを筐体の構成材として使うことにより、従来使用されていた空気遮蔽性材質と比べると、使用面積単位重量の軽量化のみならず、折りたたんでの収納、移動ができるなど家庭で使用可能なクリーンルームを提供できる。
4 空気清浄機に送風機及び粉塵除去フィルターとガス除去フィルターを装備することにより、有機リンや総揮発性有機化合物(TVOC)等のガス状汚染物質及び花粉、煙草の煙等の粒子状汚染物質、さらに細菌、ウィルス等の生物汚染物質を除去した清浄空気を筐体に供給でき高品質のクリーンルームを提供できる。
5 空気透過性シートを筐体の構成材として使い、清浄空気入り口が設けられている筐体の壁面であってかつ空気入り口に対向する部分に空気動圧回避装置を装備することにより、使用者が空気の動圧を感じることが無くなり快適に過ごせるだけで無く、筐体内の清浄度にむらが無くなり、清浄空気が有効に作用するクリーンルームを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0013】
図1は筐体空間の空気清浄装置斜視図である。図2はその断面図である。1は筐体で13は筐体空間を指す。本発明での筐体とは、壁面すなわち床面、側面、天井面の全ての面の全面又は一部が空気透過性シートで構成され、かつ少なくとも人1人が入ることができ、空気清浄機6とダクト7を介し接続された空間を形成するものを指す。筐体1の形状は直方体、球体、三角錐など用途に応じあらゆる形状に製作できる。2は筐体を構成する空気透過性シートである。空気透過性シートとは、微細な隙間を満遍なくシート面に有し一定圧力の空気が間断なく流通するシートを言い、織物布、不織布、微細多孔シートなどを指す。筐体1の全て又は一部の面がこの空気透過性シート2で構成されており、材質は化学合成性、天然性、金属性、無機性等あらゆる材質のシートを目的に応じ使用し、目的によりそれぞれを組み合わせても使用することができる。筐体を構成する空気透過性シートは筐体の全面を構成するのが望ましいが、空気がほぼ均等に外部に排気される様全面でなくとも、部分的に設けることもできる。床面は否透過性シートで構成しそれ以外の部分を空気透過性シートで構成する筐体とすることもできる。3は筐体を維持するフレームで、単一体でも複数の接続型でも使用できる。4はフレームを通すスリーブで筐体に接続されていて、フレームの全てを蔽う構造でも、フレームの一部を蔽う構造でも良い。5はフレームの両端部を筐体1に固定する収納袋で筐体1に接続されている。6は空気清浄機で外気吸い込み口、送風機、粉塵除去フィルター、ガス除去フィルター、空気吹き出し口を具備したものである。送風機とは少なくとも建築基準法に定められた1人当たり外気取り入れ量を超える風量の送風を使用人員数により維持し、かつ筐体1の陽圧圧力を1パスカル(Pa)から20パスカル(Pa)の間の、いずれかの値を維持できる風量と静圧を持つものを言う。フィルターの種類は目的に応じ適宜、粉塵除去フィルターやガス除去フィルターなど種々の物が使用できる。7は空気清浄機から吐出された空気を筐体1へ送る、筐体1に接続されたダクトである。空気清浄機は筐体1に直接取り付ける構造とすることもできる。筐体1は空気清浄機6から清浄空気を取り入れることでクリーンルームとなる。8は人の出入り口で機密性の高い開閉可能材を使用できる。ファスナーやマジックテープなどが使われる。上記の構成により空気清浄機6から筐体空間13に清浄空気Dがダクト7を通し送られ、筐体1の壁面が送風圧力と筐体である空気透過性シート2の空気抵抗で陽圧となり、筐体空間13内に浮遊している粉塵及び有害ガスを含んだ古い空気は、送風圧力により空気透過性シート2から排気可能な全ての方向Aに加圧排気され、クリーンルーム内は順次新しい清浄空気に入れ替わり、短時間で目的の清浄度を確保できる。
【0014】
図3は第2の実施例を説明する断面図である。ダクト7を通して筐体空間13に入る清浄空気Dが、清浄空気入り口が設けられている筐体の壁面であってかつ空気入り口に対向する部分に、閉塞された空気溜まり空間10を、筐体面2を構成する空気透過性シートより空気透過性の良い動圧防止シート9と筐体面2とで形成し、ほぼ均等に方向Bに清浄空気が吐出される動圧防止装置で、筐体空間13内に居る人間は直接ダクト7からの空気動圧による不快を感じる事無く過ごすことが出来る。
【0015】
図4は第3の実施例を説明する断面図である。ダクト7を通して筐体空間13に入る清浄空気Dが、清浄空気入り口が設けられている筐体の壁面であってかつ空気入り口に対向する部分に動圧回避シート11で、閉塞された空気溜まり空間の一部を開放された空気受け空間12を筐体面2とで形成し、方向Cに清浄空気が筐体内壁に沿って吐出される動圧回避装置で、筐体空間13内に居る人間は直接ダクト7からの空気動圧による不快を感じること無く過ごすことが出来る。上記空気動回避手段は実施例に限定される物では無く筐体内で適宜種々の空気動回避手段を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
化学物質過敏症患者用避難用クリーンルームはもちろん、シックハウス症候群などアレルギー性疾患患者用、感染症予防のみならず、実験などで超清浄空間を作りたい時は従来に比べ安価に高性能のクリーンルームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 本発明の実施形態を示す斜視図
【図2】 図1の断面図
【図3】 第2の実施例を示す断面図
【図4】 第3の実施例を示す断面図
【符号の説明】
【0018】
1筺体空間の空気清浄装置 2空気透過性シート、 3フレーム、 4スリーブ、 5収納袋、 6空気清浄機、 7ダクト、 8出入り口、 9動圧防止シート、 10空気溜まり空間、 11動圧回避シート、 12空気受け空間、 13筐体空間
Aクリーンルームから排気される空気の流れ、 B動圧防止装置の空気の流れ、 C動圧回避装置の空気の流れ、 Dダクト中の空気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体壁面の少なくとも一部が空気透過性シートから成る壁面で構成され、かつ少なくとも人1人が入ることができる密閉空間を有する筐体と、該筐体に空気清浄機から、該筺体に形成された清浄空気入り口を介し清浄空気を入れ、該筐体空間を清浄空気で陽圧に保ち、上記空気清浄機の送風圧力で上記空気透過性シートから該筐体空間内の空気を加圧排気することを特徴とする筐体空間の空気清浄装置。
【請求項2】
清浄空気入り口が設けられている筐体の壁面であって、かつ空気入り口に対向する部分に空気動圧回避手段を設けられて成る請求項1記載の筐体空間の空気清浄装置。
【請求項3】
前記空気動圧回避手段は、閉塞された空気溜まり空間から成る請求項2記載の筐体空間の空気清浄装置。
【請求項4】
前記空気動圧回避手段は、閉塞された空気溜まり空間の一部が開放された空間から成る請求項2記載の筐体空間の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226180(P2009−226180A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108313(P2008−108313)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(508117949)日本特殊工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】