筒状の連結生地の分離装置
【課題】筒状の連結生地から各パーツ生地に効率よく確実に分離することができるようにした分離装置を提供すること。
【解決手段】複数のパーツ生地1aが溶融糸1bを用いた連結部1cで一連に連結編成された筒状の連結生地1を各パーツ生地1aごとに分離する装置Aであって、連結生地1の連結方向に沿って平行に配置され、連結生地1を幅方向両側に展開させた状態で支持するための一対の生地支持型枠2,2と、連結生地1の展開面を挟んで両側に接近離隔可能に対向配置され、溶融糸1bの溶融時に接近して連結生地1の連結部1c周囲を囲繞して溶融室7を形成する熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4とを備え、熱風供給側ダクト3から供給した熱風により、連結生地1の連結部1cの溶融糸1bを溶融させて各パーツ生地1aに分離させるようにした。
【解決手段】複数のパーツ生地1aが溶融糸1bを用いた連結部1cで一連に連結編成された筒状の連結生地1を各パーツ生地1aごとに分離する装置Aであって、連結生地1の連結方向に沿って平行に配置され、連結生地1を幅方向両側に展開させた状態で支持するための一対の生地支持型枠2,2と、連結生地1の展開面を挟んで両側に接近離隔可能に対向配置され、溶融糸1bの溶融時に接近して連結生地1の連結部1c周囲を囲繞して溶融室7を形成する熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4とを備え、熱風供給側ダクト3から供給した熱風により、連結生地1の連結部1cの溶融糸1bを溶融させて各パーツ生地1aに分離させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパーツ生地が溶融糸を用いた連結部で一連に連結されて編成された連結生地を各パーツ生地ごとに連結部で熱風の吹き付けにより溶融糸を溶融させて分離する装置に関し、特に、筒状に編成された連結生地を筒状のままで各パーツ生地に分離する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の連結生地の分離装置として、特許文献1が公知である。
【特許文献1】特開平11−81027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の装置は、連結生地に熱風を噴出して連結部に使用されている溶融糸を溶融させることにより各パーツ生地に分離するものであり、その際、熱風の噴出部から連結生地を挟んだ反対領域に姿勢保持手段を設けて連結生地のバタツキを防止するようにしている。
しかしながら、連結生地が筒状である場合には、生地が両側にあるため、熱風の噴出部側では生地に熱風が直接当たって溶融糸の溶融が効率よく行われるものの、熱風の噴出部の反対側では、熱風が生地に直接当たらず、溶融糸の溶融が効率よく行われないという問題点があった。なお、熱風の噴出部を両側に設けることも考えられるが、姿勢保持手段も両側に設ける必要があり、これらが生地への熱風の当たりを妨げるとともに、熱風同士が衝突して乱流を生じ、筒状生地の全周に亘って均等に熱風を当てることが難しく、そのため、生地の連結部に編み込まれた溶融糸を筒状生地の全周に亘って効率よく溶融させることが困難となるという問題点がある。さらに、熱風の温度を上げたり、熱風を当てる時間を長くすると、生地の変色や劣化等が発生するという問題点もある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みて開発されたものであって、筒状の連結生地から各パーツ生地に効率よく確実に分離することができるようにした分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、筒状に編成された複数のパーツ生地が溶融糸を用いた連結部で一連に連結編成された筒状の連結生地を各パーツ生地ごとに連結部で熱風の吹き付けにより溶融糸を溶融させて分離する装置であって、
前記連結生地の連結方向に沿って平行に配置され、前記連結生地の筒内に挿入されて連結生地を幅方向両側に展開させた状態で支持するための一対の生地支持型枠と、
この生地支持型枠に支持された筒状の連結生地の展開面を挟んで両側に互いに接近離隔可能に対向配置され、前記溶融糸の溶融時に接近して前記連結生地の連結部周囲を囲繞して溶融室を形成する熱風供給側ダクト及び排気側ダクトとを備え、
前記熱風供給側ダクトから供給した熱風を前記溶融室内で前記一対の生地支持型枠によって幅方向両側に展開支持させた連結生地の展開面の一方側から他方側へ生地組織内を通過させて前記排気側ダクトから排気させ、その間に前記連結部の溶融糸を溶融させて各パーツ生地に分離させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、連結生地は、筒内に挿入された一対の生地支持型枠によって幅方向両側に展開させた状態で支持されるとともに、展開生地の表裏両側間に生地の分離空間も形成されるため、熱風供給側ダクトから供給された熱風を一方の展開面から前記分離空間を経て他方に効率よく通過させることができる。そして、生地を通過した熱風は、排気側ダクトから排気させているため、熱風の流動方向が一定方向に揃えられて整然と行われ、乱れによる悪影響が防止される。これによって、熱風温度を高くしたり、当てる時間を長くすることもなく、連結部の溶融糸を筒状生地の両側の面で効率よく加熱溶融させて各パーツ生地に確実に分離させることができ、生地の変色や熱劣化を防止することができる。
【0007】
前記熱風供給側ダクトは、連結生地の展開幅及び連結部の幅より若干広幅とされた矩形開口部を有し、この矩形開口部の中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒を備えており、また、前記排気側ダクトは、前記熱風供給側ダクトの矩形開口部と閉合する矩形開口部を有し、この矩形開口部に熱風の排気を連結生地の展開幅方向両側へ誘導する整流板を備えていることが望ましい。
この構成によれば、溶融糸の溶融時、熱風供給側ダクトと排気側ダクトとの閉合によって溶融室を周囲から閉鎖された空間として形成させることができて熱風の無駄をなくすことができ、しかも、熱風吹き出し整流筒によって熱風を展開生地の幅方向中央部に吹き付け、これを排気側ダクトの矩形開口部に設けた整流板によって連結生地の展開幅方向両側へ整然と誘導排出させることができる。従って、上記構成によれば、熱風の流動方向が生地の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて一定方向に揃えられて整然と行われることになり、溶融糸の溶融も生地の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて順次行われて各パーツ生地の分離も整然と行われる。また、熱風の吹き付け中、生地のバタツキが抑制されるとともに、筒状生地の両面の幅方向中央部から両端部までほぼ同一条件(温度、時間等)で熱風を当てることができ、生地の変色や劣化を防止しつつ筒状生地の全周に亘る溶融糸の加熱溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0008】
前記生地支持型枠には、前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所に、前記生地支持型枠よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材を外嵌装着してあることが望ましい。
この構成によれば、溶融糸の溶融時、筒状生地の連結部を一対の生地浮かし部材の中間に位置決め配置することにより、該連結部を生地支持型枠から非接触状態に浮かして支持させることができ、熱風を生地支持型枠の接触部分で妨害されることなく他の部分と同様な条件で通過させて溶融糸の加熱溶融を行わせることができる。これによって、溶融糸の溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0009】
また、前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材の間には、前記連結生地の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材を連結生地の展開幅方向両外側で前記連結生地の連結方向に沿って張設してあることがさらに望ましい。
この構成によれば、連結生地の展開幅方向両側において、熱風による溶融糸の加熱溶融による連結生地1の連結部1cの分離作用が連結生地1の展開幅方向中央部から幅方向両側へ順次伝播してくる際、分離促進部材の山形部によって、生地を山形の頂部から両側へ滑り動かせて強制的に分離させる力を発生させることができ、これによって、各パーツ生地の分離不良を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筒状の連結生地から各パーツ生地に効率よく確実に分離することができるようにした分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る分離装置の要部概略正面図、図2はその側面図、図3はその平面図である。本発明は、図4に示すように、筒状に編成された複数のパーツ生地1aが溶融糸1bを用いた連結部1cで一連に連結編成された筒状の連結生地1を各パーツ生地1aごとに連結部1cで熱風の吹き付けにより溶融糸1bを溶融させて分離する装置Aであって、この分離装置Aは、図1〜図3に示すように、一対の生地支持型枠2,2と、熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4とを主要部材としている。なお、各パーツ生地1aは、溶融糸1bよりも融点の高い糸で編成されている。
【0012】
一対の生地支持型枠2,2は、前記連結生地1の連結方向に沿って平行に配置され、前記連結生地1の筒内に挿入されて連結生地1を幅方向両側に展開させた状態で支持するためのもので、全体が金属性乃至耐熱樹脂製(少なくとも、熱風に対する耐熱性を備えた適宜の材料であればよい。)の平滑な帯板状とされている。この生地支持型枠2,2は、板厚が、例えば、3mmとされているが、これに制約されず、3mm以上としてもよい。また、生地支持型枠2,2は、始端側において、連結生地1の挿入及び送り込みが可能な状態でフローティング支持されるもので、例えば、図5,図6に示すように、一方又は双方に鍔5a、6aを有する2対のニップローラ5,6によって一対の生地支持型枠2,2が連結生地1の幅方向への移動を鍔5a、6aによって阻止された状態で水平方向に平行に支持され、そして、2対のニップローラ5,6間に一対の生地支持型枠2,2から連結生地1の幅方向内向きに突出させた突起部2a、2aを介在させることによって長手方向の移動を阻止した状態で支持させることにより、フローティング支持させている。しかし、この支持構造に制約されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0013】
熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4は、生地支持型枠2,2に支持された筒状の連結生地1の展開面を挟んで両側(図示例では、上下)に互いに接近離隔可能に対向配置され、前記溶融糸1bの溶融時に接近して前記連結生地1の連結部1c周囲を囲繞して溶融室7を形成するものである。
熱風供給側ダクト3は、図7、図8にも示すように連結生地1の展開面に向けて広がる矩形ラッパ状をなし、連結生地1の展開幅及び連結部1cの幅より若干広幅とされた矩形開口部3aを有し、この矩形開口部3aの中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒3bを備えている。本実施形態では、矩形開口部3aの長辺側寸法を600mm、短辺側寸法を80mmに設定しているが、これに制約されるものではない。整流筒3bは、円筒状であって、熱風発生手段8に連結ダクト8aを介して連結されている。熱風発生手段8の出口には、温度調節手段8bが設置されており、供給する熱風の温度を溶融糸1bの溶融温度(溶融糸1bの種類、材質、分子量、太さ、本数、編み目構造等により変化するが、ナイロン系の場合では、170℃〜210℃)になるように設定されている。
【0014】
なお、本実施形態では、熱風発生手段8は、熱風を連続的に送り出すように構成されており、連結生地1の分離作業が終了すると、次の分離作業を開始するまでの間、矩形開口部3aからの熱風の吹き出しを遮断するシャッター3cが熱風供給側ダクト3に設けられ、その間、熱風を逃がすバイパスダクト3dが熱風供給側ダクト3の一部に分岐形成されており、このバイパスダクト3dには、バイパスシャッター3eが設けられている。この構成によって、先の分離作業が終了して次の分離作業を開始するまでの間に、熱風供給側ダクト3内の温度が低下することを防止し、毎回の分離作業における熱風の温度及び吹き付け時間などの溶融糸1bの加熱溶融条件をほぼ一定に維持するようにしている。各シャッター3c、3eの開閉動作は、熱風供給側ダクト3の接近離隔動作と関連して自動制御手段(図示省略)により自動的に行われるように構成されている。
【0015】
また、前記排気側ダクト4は、図7、図8にも示すように、連結生地1の展開面に向けて広がる矩形ラッパ状をなし、熱風供給側ダクト3の矩形開口部3aと閉合する矩形開口部4aを有し、この矩形開口部4aに熱風の排気を連結生地1の展開幅方向両側へ誘導する整流板4bを備えている。整流板4bは、ステンレス板等の金属板で構成され、排気側ダクト4の閉合時、生地支持型枠2,2で支持されている連結生地1との間に所定の通気隙間(例えば、本実施形態では、15mmに設定されているが、これに制約されない。)が形成されるように排気側ダクト4の矩形開口部4a中に取り付けられ、しかも、連結生地1の展開幅方向中央部を遮蔽し、連結生地1の展開幅方向両端部だけ開口部4c、4cを残存させてこの両端の開口部4c、4cから熱風を排気させるように排気側ダクト4の矩形開口部4a内に設置されている。
【0016】
排気側ダクト4の矩形開口部4aは、本実施形態では、長辺側寸法を600mm、短辺側寸法を80mmに設定しているが、これに制約されるものではない。また、整流板4bは、生地支持型枠2,2で支持されている連結生地1の展開幅とほぼ同じ程度の長さ方向寸法とされ、本実施形態では、400mmに設定され、両端の開口部4c、4cは、それぞれ100mmに設定されている。しかし、この寸法に制約されるものではなく、適宜寸法に設定してよいものである。排気側ダクト4は、矩形開口部4aの反対側において、両端の開口部4c、4cからの熱風を集めて連結ダクト9aを介して積極的排気手段9により外部に排出するように連結構成されている。
【0017】
なお、本実施形態では、整流板4bの裏面にシーズヒータ等の予熱ヒータ4dが設置されており、また、排気側ダクト4の出口にはシャッター4eが設置してある。このシャッター4eは、排気側ダクト4が熱風供給側ダクト3に向けて接近動作するときに開放され、離隔動作するときに閉鎖するように排気側ダクト4の接近離隔動作に関連して自動制御手段(図示省略)により自動的に行われるように構成されている。予熱ヒータ4dは、連続して通電され、連結生地1の連結部1cに対する先の分離動作が終了して次の分離作業を開始するまでの間に、排気側ダクト4内の温度及び整流板4bの温度が低下することを防止し、毎回の分離作業における熱風の温度及び吹き付け時間などの溶融糸1bの加熱溶融条件をほぼ一定に維持するようにしている。この排気側ダクト4の矩形開口部4aの周囲には、熱風の漏れを防止するためのシール用スカート4fが設けられており、これによって、両ダクト3,4の閉合時に形成される溶融室7からの熱風の漏れを防止するように構成されている。
【0018】
前記生地支持型枠2,2には、前記連結生地1の連結方向に離隔した2箇所に、前記生地支持型枠2,2よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材10,10を外嵌装着してある。この生地浮かし部材10,10は、図9、図10に拡大して示すように、連結生地1の受け入れ及び送り出しを円滑にするため、連結生地1の受入側端部が生地支持型枠2,2に対して傾斜案内面10a,10aとして段差がなく円滑に連続する面として接続構成されている。この生地浮かし部材10,10の間に、図2、図3に示すように、連結生地1の連結部1cを位置させて連結生地1を生地支持型枠2,2で支持させると、連結生地1の連結部1cは、生地支持型枠2,2に対して非接触状態に浮かした状態で支持させることができる。なお、生地支持型枠2,2に対する連結生地1の浮かし量は、本実施形態では、10mmとしているが、これに制約されるものではなく、適宜設定することができる。
【0019】
また、連結生地1の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材10,10の間には、前記連結生地1の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材11,11を連結生地1の展開幅方向両外側で前記連結生地1の連結方向に沿って張設してある。この分離促進部材11,11は、図9、図10に示すように、1つ以上の山形部11aが形成されており、この山形部11aの頂点が2箇所の生地浮かし部材10,10の中間付近に来るように線材の両端が生地浮かし部材10,10の前記側面に取付支持される。このように構成してあることによって、連結生地1の連結部1cを2箇所の生地浮かし部材10,10の中間付近に送り込むことにより、連結部1cがこの山形部11aの頂点の位置に跨るように送り込まれてくることになる。山形部11aの高さは、生地浮かし部材10,10の厚さとほぼ同等としているが、これに制約されず、大きくしてあってもよい。
【0020】
本発明の実施形態は、以上の構成からなるもので、連結生地1は、一対の生地支持型枠2,2の一端から挿入されて幅方向に展開状態で支持され、生地移送用ニップハンド12,12により把持されてパーツ生地1aの1ピッチ分ずつ間欠的に搬送され、先頭のパーツ生地1aと次のパーツ生地1aの連結部1cが分離位置、即ち、生地支持型枠2,2の2箇所に設置してある生地浮かし部材10,10の中間付近に送り込まれてくる。このとき、熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4は、図7、図8に示すように、離隔状態で待機しており、連結生地1の連結部1cが上記分離位置に送り込まれてくると、生地移送用ニップハンド12,12が連結生地1の把持を開放して元の位置に復帰せしめられて次の生地移送時まで待機し、熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4が接近動作せしめられて図1、図2に示すように閉合され、溶融室7を囲繞形成する。
【0021】
この接近動作に関連して、熱風供給側ダクト3のバイパスシャッター3eが閉じられるとともに、シャッター3cは開放され、また、排気側ダクト4のシャッター4eが開放される。これによって、熱風供給側ダクト3の整流筒3bから熱風が供給され、この熱風が一対の生地支持型枠2,2によって幅方向両側に展開支持された連結生地1の連結部1cの展開面の幅方向中央部に吹き付けられ、この連結部1cの一方側から他方側へ生地組織内を通過して排気側ダクト4の整流板4bに当たり、幅方向両端の開口部4c、4cから排気側ダクト4の出口を経て排出される。その間に前記連結部1cの溶融糸1bが加熱溶融され、各パーツ生地1a、1aに分離される。例えば、整流筒3bから吹き出される熱風の温度は、170〜210℃に設定され、流速は5〜10m/sに設定される。そして、パーツ生地1aの分離が終了すると、両ダクト3,4が離隔動作され、熱風供給側ダクト3の矩形開口部3aのシャッター3cが閉じられると共に、バイパスシャッター3eが開放されて熱風がバイパスダクト3dから排出される。また、排気側ダクト4の方では、出口のシャッター4eが閉じられる。そして、分離されたパーツ生地1a及び連結生地1は、生地搬送用ニップハンド12によって1ピッチ分前進方向(図8の右方向)へ送り出される。続いて、両ダクト3,4が接近動作せしめられ、前記動作が繰り返される。
【0022】
このように本発明の分離装置Aの構成によれば、連結生地1は、筒内に挿入された一対の生地支持型枠2,2によって幅方向両側に展開させた状態で支持されるとともに、展開生地1の表裏両側間に生地1の分離空間も形成されるため、熱風供給側ダクト3から供給された熱風を一方の展開面から前記分離空間を経て他方に効率よく通過させることができる。そして、生地1を通過した熱風は、排気側ダクト4から排気させているため、熱風の流動方向が一定方向に揃えられて整然と行われ、乱れによる悪影響が防止される。これによって、熱風温度を高くしたり、当てる時間を長くすることもなく、連結部1cの溶融糸1bを筒状生地1の両側の面で効率よく加熱溶融させて各パーツ生地1aに確実に分離させることができ、生地1の変色や熱劣化を防止することができる。
【0023】
また、熱風供給側ダクト3は、連結生地1の展開幅より若干広幅とされた矩形開口部3aを有し、この矩形開口部3aの中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒3bを備えており、また、排気側ダクト4は、熱風供給側ダクト3の矩形開口部3aと閉合する矩形開口部4aを有し、この矩形開口部4aに熱風の排気を連結生地1の展開幅方向両側へ誘導する整流板4bを備えているため、溶融糸1bの溶融時、熱風供給側ダクト3と排気側ダクト4との閉合によって溶融室7を周囲から閉鎖された空間として形成させることができて熱風の無駄をなくすことができる。しかも、熱風吹き出し整流筒3bによって熱風を展開生地1の幅方向中央部に吹き付け、これを排気側ダクト4の矩形開口部4aに設けた整流板4bによって連結生地1の展開幅方向両側へ整然と誘導排出させることができる。従って、上記構成によれば、熱風の流動方向が生地の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて一定方向に揃えられて整然と行われることになり、溶融糸1bの溶融も生地1の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて順次行われて各パーツ生地1aの分離も整然と行われる。また、熱風の吹き付け中、生地1のバタツキが抑制されるとともに、筒状生地1の両面の幅方向中央部から両端部までほぼ同一条件(温度、時間等)で熱風を当てることができ、生地1の変色や劣化を防止しつつ筒状生地1の全周に亘る溶融糸1bの加熱溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0024】
さらに、生地支持型枠2,2には、連結生地1の連結方向に離隔した2箇所に、生地支持型枠2,2よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材10,10を外嵌装着してあるため、溶融糸1bの溶融時、筒状生地1の連結部1cを一対の生地浮かし部材10,10の中間付近に位置決め配置することにより、該連結部1cを生地支持型枠2,2から非接触状態に浮かして支持させることができ、熱風を生地支持型枠2,2の接触部分で妨害されることなく他の部分と同様な条件で通過させて溶融糸1bの加熱溶融を行わせることができる。これによって、溶融糸1bの溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0025】
また、連結生地1の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材10,10の間には、連結生地1の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材11,11を連結生地1の展開幅方向両外側で連結生地1の連結方向に沿って張設してあるため、連結生地1の展開幅方向両側において、熱風による溶融糸1bの加熱溶融による連結生地1の連結部1cの分離作用が連結生地1の展開幅方向中央部から幅方向両側へ順次伝播してくる際、分離促進部材11,11の山形部11a、11aによって、生地1を山形の頂部から両側へ滑り動かせて強制的に分離させる力を発生させることができ、これによって、各パーツ生地1a,1aの分離不良を確実に防止することができる。
【0026】
上記した本発明の分離装置Aは、例えば、図11に示すような平面レイアウト構成からなる生地裁断装置Bの溶断部Cに組み込まれる。この生地裁断装置Bは、筒状の連結生地1を原反供給部Dから溶断部Cで各パーツ生地1aに溶断分離し、溶断分離された各パーツ生地1aを表裏の生地目の方向を揃えたり、編み目組織のずれをなくして同一状態に揃えるための作業を行う目立て型枠部Eに送り出して、表裏の生地目や組織を揃えて移載部Fにより予備ステージGに送り出し、ここから裁断部Hへ送り出し、この裁断部Hでパーツ生地1aからシャツの袖などの左右一対のパーツを表裏重ね合わせ状態で同時に裁断する装置である。なお、目立て型枠部Eでは、目立てされた良品が予備ステージGに送り出され、不良品は、不良スタッキング部Iに選別集積される。そして、裁断部Hで裁断されたパーツは、スタッキング部Jに集積され、裁断屑は不良スタッキング部Iに集積される。生地の供給制御は、生地供給制御盤Kで行われ、裁断部Hの裁断形状や裁断条件などの設定制御は、裁断メインパソコンLで行われ、スタッキング部Jの制御は、スタッキング制御盤Mで行われる。本発明の分離装置Aは、この生地裁断装置Bに適用した場合、次工程となる目立て型枠部Eに分離後の生地を受け取らせる機構を簡単化することができる。
【0027】
本発明の実施形態は、以上の通りであるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、自由に変形して実施することができる。例えば、連結生地1を水平方向に搬送して分離処理する場合を示しているが、垂直方向や、斜め方向等に搬送して分離処理させる場合に適用することができる。また、連結生地1は、溶断部Cに間欠送りしているが、連続送りとしてもよく、その際には、両ダクト3,4を生地送り速度と同調して移動させて溶断させ、溶断後、パーツ生地1aの1ピッチ分戻して次の溶断を行わせ、これを繰り返すように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る分離装置の要部概略正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】連結生地の説明図である。
【図5】生地支持型枠のフローティング支持構造例を示す平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】図1の装置の両ダクトの離隔状態を示す正面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】生地支持型枠の要部拡大側面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】本発明の装置を適用した生地裁断装置の平面レイアウト図である。
【符号の説明】
【0029】
1 連結生地
1a パーツ生地
1b 溶融糸
1c 連結部
2 生地支持型枠
3 熱風供給側ダクト
3a 矩形開口部
3b 熱風吹き出し整流筒
4 排気側ダクト
4a 矩形開口部
4b 整流板
5,6 ニップローラ
7 溶融室
8 熱風発生手段
9 積極的排気手段
10 生地浮かし部材
11 分離促進部材
12 生地移送用ニップハンド
A 分離装置
B 生地裁断装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパーツ生地が溶融糸を用いた連結部で一連に連結されて編成された連結生地を各パーツ生地ごとに連結部で熱風の吹き付けにより溶融糸を溶融させて分離する装置に関し、特に、筒状に編成された連結生地を筒状のままで各パーツ生地に分離する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の連結生地の分離装置として、特許文献1が公知である。
【特許文献1】特開平11−81027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の装置は、連結生地に熱風を噴出して連結部に使用されている溶融糸を溶融させることにより各パーツ生地に分離するものであり、その際、熱風の噴出部から連結生地を挟んだ反対領域に姿勢保持手段を設けて連結生地のバタツキを防止するようにしている。
しかしながら、連結生地が筒状である場合には、生地が両側にあるため、熱風の噴出部側では生地に熱風が直接当たって溶融糸の溶融が効率よく行われるものの、熱風の噴出部の反対側では、熱風が生地に直接当たらず、溶融糸の溶融が効率よく行われないという問題点があった。なお、熱風の噴出部を両側に設けることも考えられるが、姿勢保持手段も両側に設ける必要があり、これらが生地への熱風の当たりを妨げるとともに、熱風同士が衝突して乱流を生じ、筒状生地の全周に亘って均等に熱風を当てることが難しく、そのため、生地の連結部に編み込まれた溶融糸を筒状生地の全周に亘って効率よく溶融させることが困難となるという問題点がある。さらに、熱風の温度を上げたり、熱風を当てる時間を長くすると、生地の変色や劣化等が発生するという問題点もある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みて開発されたものであって、筒状の連結生地から各パーツ生地に効率よく確実に分離することができるようにした分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、筒状に編成された複数のパーツ生地が溶融糸を用いた連結部で一連に連結編成された筒状の連結生地を各パーツ生地ごとに連結部で熱風の吹き付けにより溶融糸を溶融させて分離する装置であって、
前記連結生地の連結方向に沿って平行に配置され、前記連結生地の筒内に挿入されて連結生地を幅方向両側に展開させた状態で支持するための一対の生地支持型枠と、
この生地支持型枠に支持された筒状の連結生地の展開面を挟んで両側に互いに接近離隔可能に対向配置され、前記溶融糸の溶融時に接近して前記連結生地の連結部周囲を囲繞して溶融室を形成する熱風供給側ダクト及び排気側ダクトとを備え、
前記熱風供給側ダクトから供給した熱風を前記溶融室内で前記一対の生地支持型枠によって幅方向両側に展開支持させた連結生地の展開面の一方側から他方側へ生地組織内を通過させて前記排気側ダクトから排気させ、その間に前記連結部の溶融糸を溶融させて各パーツ生地に分離させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、連結生地は、筒内に挿入された一対の生地支持型枠によって幅方向両側に展開させた状態で支持されるとともに、展開生地の表裏両側間に生地の分離空間も形成されるため、熱風供給側ダクトから供給された熱風を一方の展開面から前記分離空間を経て他方に効率よく通過させることができる。そして、生地を通過した熱風は、排気側ダクトから排気させているため、熱風の流動方向が一定方向に揃えられて整然と行われ、乱れによる悪影響が防止される。これによって、熱風温度を高くしたり、当てる時間を長くすることもなく、連結部の溶融糸を筒状生地の両側の面で効率よく加熱溶融させて各パーツ生地に確実に分離させることができ、生地の変色や熱劣化を防止することができる。
【0007】
前記熱風供給側ダクトは、連結生地の展開幅及び連結部の幅より若干広幅とされた矩形開口部を有し、この矩形開口部の中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒を備えており、また、前記排気側ダクトは、前記熱風供給側ダクトの矩形開口部と閉合する矩形開口部を有し、この矩形開口部に熱風の排気を連結生地の展開幅方向両側へ誘導する整流板を備えていることが望ましい。
この構成によれば、溶融糸の溶融時、熱風供給側ダクトと排気側ダクトとの閉合によって溶融室を周囲から閉鎖された空間として形成させることができて熱風の無駄をなくすことができ、しかも、熱風吹き出し整流筒によって熱風を展開生地の幅方向中央部に吹き付け、これを排気側ダクトの矩形開口部に設けた整流板によって連結生地の展開幅方向両側へ整然と誘導排出させることができる。従って、上記構成によれば、熱風の流動方向が生地の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて一定方向に揃えられて整然と行われることになり、溶融糸の溶融も生地の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて順次行われて各パーツ生地の分離も整然と行われる。また、熱風の吹き付け中、生地のバタツキが抑制されるとともに、筒状生地の両面の幅方向中央部から両端部までほぼ同一条件(温度、時間等)で熱風を当てることができ、生地の変色や劣化を防止しつつ筒状生地の全周に亘る溶融糸の加熱溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0008】
前記生地支持型枠には、前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所に、前記生地支持型枠よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材を外嵌装着してあることが望ましい。
この構成によれば、溶融糸の溶融時、筒状生地の連結部を一対の生地浮かし部材の中間に位置決め配置することにより、該連結部を生地支持型枠から非接触状態に浮かして支持させることができ、熱風を生地支持型枠の接触部分で妨害されることなく他の部分と同様な条件で通過させて溶融糸の加熱溶融を行わせることができる。これによって、溶融糸の溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0009】
また、前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材の間には、前記連結生地の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材を連結生地の展開幅方向両外側で前記連結生地の連結方向に沿って張設してあることがさらに望ましい。
この構成によれば、連結生地の展開幅方向両側において、熱風による溶融糸の加熱溶融による連結生地1の連結部1cの分離作用が連結生地1の展開幅方向中央部から幅方向両側へ順次伝播してくる際、分離促進部材の山形部によって、生地を山形の頂部から両側へ滑り動かせて強制的に分離させる力を発生させることができ、これによって、各パーツ生地の分離不良を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筒状の連結生地から各パーツ生地に効率よく確実に分離することができるようにした分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る分離装置の要部概略正面図、図2はその側面図、図3はその平面図である。本発明は、図4に示すように、筒状に編成された複数のパーツ生地1aが溶融糸1bを用いた連結部1cで一連に連結編成された筒状の連結生地1を各パーツ生地1aごとに連結部1cで熱風の吹き付けにより溶融糸1bを溶融させて分離する装置Aであって、この分離装置Aは、図1〜図3に示すように、一対の生地支持型枠2,2と、熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4とを主要部材としている。なお、各パーツ生地1aは、溶融糸1bよりも融点の高い糸で編成されている。
【0012】
一対の生地支持型枠2,2は、前記連結生地1の連結方向に沿って平行に配置され、前記連結生地1の筒内に挿入されて連結生地1を幅方向両側に展開させた状態で支持するためのもので、全体が金属性乃至耐熱樹脂製(少なくとも、熱風に対する耐熱性を備えた適宜の材料であればよい。)の平滑な帯板状とされている。この生地支持型枠2,2は、板厚が、例えば、3mmとされているが、これに制約されず、3mm以上としてもよい。また、生地支持型枠2,2は、始端側において、連結生地1の挿入及び送り込みが可能な状態でフローティング支持されるもので、例えば、図5,図6に示すように、一方又は双方に鍔5a、6aを有する2対のニップローラ5,6によって一対の生地支持型枠2,2が連結生地1の幅方向への移動を鍔5a、6aによって阻止された状態で水平方向に平行に支持され、そして、2対のニップローラ5,6間に一対の生地支持型枠2,2から連結生地1の幅方向内向きに突出させた突起部2a、2aを介在させることによって長手方向の移動を阻止した状態で支持させることにより、フローティング支持させている。しかし、この支持構造に制約されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0013】
熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4は、生地支持型枠2,2に支持された筒状の連結生地1の展開面を挟んで両側(図示例では、上下)に互いに接近離隔可能に対向配置され、前記溶融糸1bの溶融時に接近して前記連結生地1の連結部1c周囲を囲繞して溶融室7を形成するものである。
熱風供給側ダクト3は、図7、図8にも示すように連結生地1の展開面に向けて広がる矩形ラッパ状をなし、連結生地1の展開幅及び連結部1cの幅より若干広幅とされた矩形開口部3aを有し、この矩形開口部3aの中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒3bを備えている。本実施形態では、矩形開口部3aの長辺側寸法を600mm、短辺側寸法を80mmに設定しているが、これに制約されるものではない。整流筒3bは、円筒状であって、熱風発生手段8に連結ダクト8aを介して連結されている。熱風発生手段8の出口には、温度調節手段8bが設置されており、供給する熱風の温度を溶融糸1bの溶融温度(溶融糸1bの種類、材質、分子量、太さ、本数、編み目構造等により変化するが、ナイロン系の場合では、170℃〜210℃)になるように設定されている。
【0014】
なお、本実施形態では、熱風発生手段8は、熱風を連続的に送り出すように構成されており、連結生地1の分離作業が終了すると、次の分離作業を開始するまでの間、矩形開口部3aからの熱風の吹き出しを遮断するシャッター3cが熱風供給側ダクト3に設けられ、その間、熱風を逃がすバイパスダクト3dが熱風供給側ダクト3の一部に分岐形成されており、このバイパスダクト3dには、バイパスシャッター3eが設けられている。この構成によって、先の分離作業が終了して次の分離作業を開始するまでの間に、熱風供給側ダクト3内の温度が低下することを防止し、毎回の分離作業における熱風の温度及び吹き付け時間などの溶融糸1bの加熱溶融条件をほぼ一定に維持するようにしている。各シャッター3c、3eの開閉動作は、熱風供給側ダクト3の接近離隔動作と関連して自動制御手段(図示省略)により自動的に行われるように構成されている。
【0015】
また、前記排気側ダクト4は、図7、図8にも示すように、連結生地1の展開面に向けて広がる矩形ラッパ状をなし、熱風供給側ダクト3の矩形開口部3aと閉合する矩形開口部4aを有し、この矩形開口部4aに熱風の排気を連結生地1の展開幅方向両側へ誘導する整流板4bを備えている。整流板4bは、ステンレス板等の金属板で構成され、排気側ダクト4の閉合時、生地支持型枠2,2で支持されている連結生地1との間に所定の通気隙間(例えば、本実施形態では、15mmに設定されているが、これに制約されない。)が形成されるように排気側ダクト4の矩形開口部4a中に取り付けられ、しかも、連結生地1の展開幅方向中央部を遮蔽し、連結生地1の展開幅方向両端部だけ開口部4c、4cを残存させてこの両端の開口部4c、4cから熱風を排気させるように排気側ダクト4の矩形開口部4a内に設置されている。
【0016】
排気側ダクト4の矩形開口部4aは、本実施形態では、長辺側寸法を600mm、短辺側寸法を80mmに設定しているが、これに制約されるものではない。また、整流板4bは、生地支持型枠2,2で支持されている連結生地1の展開幅とほぼ同じ程度の長さ方向寸法とされ、本実施形態では、400mmに設定され、両端の開口部4c、4cは、それぞれ100mmに設定されている。しかし、この寸法に制約されるものではなく、適宜寸法に設定してよいものである。排気側ダクト4は、矩形開口部4aの反対側において、両端の開口部4c、4cからの熱風を集めて連結ダクト9aを介して積極的排気手段9により外部に排出するように連結構成されている。
【0017】
なお、本実施形態では、整流板4bの裏面にシーズヒータ等の予熱ヒータ4dが設置されており、また、排気側ダクト4の出口にはシャッター4eが設置してある。このシャッター4eは、排気側ダクト4が熱風供給側ダクト3に向けて接近動作するときに開放され、離隔動作するときに閉鎖するように排気側ダクト4の接近離隔動作に関連して自動制御手段(図示省略)により自動的に行われるように構成されている。予熱ヒータ4dは、連続して通電され、連結生地1の連結部1cに対する先の分離動作が終了して次の分離作業を開始するまでの間に、排気側ダクト4内の温度及び整流板4bの温度が低下することを防止し、毎回の分離作業における熱風の温度及び吹き付け時間などの溶融糸1bの加熱溶融条件をほぼ一定に維持するようにしている。この排気側ダクト4の矩形開口部4aの周囲には、熱風の漏れを防止するためのシール用スカート4fが設けられており、これによって、両ダクト3,4の閉合時に形成される溶融室7からの熱風の漏れを防止するように構成されている。
【0018】
前記生地支持型枠2,2には、前記連結生地1の連結方向に離隔した2箇所に、前記生地支持型枠2,2よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材10,10を外嵌装着してある。この生地浮かし部材10,10は、図9、図10に拡大して示すように、連結生地1の受け入れ及び送り出しを円滑にするため、連結生地1の受入側端部が生地支持型枠2,2に対して傾斜案内面10a,10aとして段差がなく円滑に連続する面として接続構成されている。この生地浮かし部材10,10の間に、図2、図3に示すように、連結生地1の連結部1cを位置させて連結生地1を生地支持型枠2,2で支持させると、連結生地1の連結部1cは、生地支持型枠2,2に対して非接触状態に浮かした状態で支持させることができる。なお、生地支持型枠2,2に対する連結生地1の浮かし量は、本実施形態では、10mmとしているが、これに制約されるものではなく、適宜設定することができる。
【0019】
また、連結生地1の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材10,10の間には、前記連結生地1の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材11,11を連結生地1の展開幅方向両外側で前記連結生地1の連結方向に沿って張設してある。この分離促進部材11,11は、図9、図10に示すように、1つ以上の山形部11aが形成されており、この山形部11aの頂点が2箇所の生地浮かし部材10,10の中間付近に来るように線材の両端が生地浮かし部材10,10の前記側面に取付支持される。このように構成してあることによって、連結生地1の連結部1cを2箇所の生地浮かし部材10,10の中間付近に送り込むことにより、連結部1cがこの山形部11aの頂点の位置に跨るように送り込まれてくることになる。山形部11aの高さは、生地浮かし部材10,10の厚さとほぼ同等としているが、これに制約されず、大きくしてあってもよい。
【0020】
本発明の実施形態は、以上の構成からなるもので、連結生地1は、一対の生地支持型枠2,2の一端から挿入されて幅方向に展開状態で支持され、生地移送用ニップハンド12,12により把持されてパーツ生地1aの1ピッチ分ずつ間欠的に搬送され、先頭のパーツ生地1aと次のパーツ生地1aの連結部1cが分離位置、即ち、生地支持型枠2,2の2箇所に設置してある生地浮かし部材10,10の中間付近に送り込まれてくる。このとき、熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4は、図7、図8に示すように、離隔状態で待機しており、連結生地1の連結部1cが上記分離位置に送り込まれてくると、生地移送用ニップハンド12,12が連結生地1の把持を開放して元の位置に復帰せしめられて次の生地移送時まで待機し、熱風供給側ダクト3及び排気側ダクト4が接近動作せしめられて図1、図2に示すように閉合され、溶融室7を囲繞形成する。
【0021】
この接近動作に関連して、熱風供給側ダクト3のバイパスシャッター3eが閉じられるとともに、シャッター3cは開放され、また、排気側ダクト4のシャッター4eが開放される。これによって、熱風供給側ダクト3の整流筒3bから熱風が供給され、この熱風が一対の生地支持型枠2,2によって幅方向両側に展開支持された連結生地1の連結部1cの展開面の幅方向中央部に吹き付けられ、この連結部1cの一方側から他方側へ生地組織内を通過して排気側ダクト4の整流板4bに当たり、幅方向両端の開口部4c、4cから排気側ダクト4の出口を経て排出される。その間に前記連結部1cの溶融糸1bが加熱溶融され、各パーツ生地1a、1aに分離される。例えば、整流筒3bから吹き出される熱風の温度は、170〜210℃に設定され、流速は5〜10m/sに設定される。そして、パーツ生地1aの分離が終了すると、両ダクト3,4が離隔動作され、熱風供給側ダクト3の矩形開口部3aのシャッター3cが閉じられると共に、バイパスシャッター3eが開放されて熱風がバイパスダクト3dから排出される。また、排気側ダクト4の方では、出口のシャッター4eが閉じられる。そして、分離されたパーツ生地1a及び連結生地1は、生地搬送用ニップハンド12によって1ピッチ分前進方向(図8の右方向)へ送り出される。続いて、両ダクト3,4が接近動作せしめられ、前記動作が繰り返される。
【0022】
このように本発明の分離装置Aの構成によれば、連結生地1は、筒内に挿入された一対の生地支持型枠2,2によって幅方向両側に展開させた状態で支持されるとともに、展開生地1の表裏両側間に生地1の分離空間も形成されるため、熱風供給側ダクト3から供給された熱風を一方の展開面から前記分離空間を経て他方に効率よく通過させることができる。そして、生地1を通過した熱風は、排気側ダクト4から排気させているため、熱風の流動方向が一定方向に揃えられて整然と行われ、乱れによる悪影響が防止される。これによって、熱風温度を高くしたり、当てる時間を長くすることもなく、連結部1cの溶融糸1bを筒状生地1の両側の面で効率よく加熱溶融させて各パーツ生地1aに確実に分離させることができ、生地1の変色や熱劣化を防止することができる。
【0023】
また、熱風供給側ダクト3は、連結生地1の展開幅より若干広幅とされた矩形開口部3aを有し、この矩形開口部3aの中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒3bを備えており、また、排気側ダクト4は、熱風供給側ダクト3の矩形開口部3aと閉合する矩形開口部4aを有し、この矩形開口部4aに熱風の排気を連結生地1の展開幅方向両側へ誘導する整流板4bを備えているため、溶融糸1bの溶融時、熱風供給側ダクト3と排気側ダクト4との閉合によって溶融室7を周囲から閉鎖された空間として形成させることができて熱風の無駄をなくすことができる。しかも、熱風吹き出し整流筒3bによって熱風を展開生地1の幅方向中央部に吹き付け、これを排気側ダクト4の矩形開口部4aに設けた整流板4bによって連結生地1の展開幅方向両側へ整然と誘導排出させることができる。従って、上記構成によれば、熱風の流動方向が生地の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて一定方向に揃えられて整然と行われることになり、溶融糸1bの溶融も生地1の展開幅方向中央部から幅方向両側へ向けて順次行われて各パーツ生地1aの分離も整然と行われる。また、熱風の吹き付け中、生地1のバタツキが抑制されるとともに、筒状生地1の両面の幅方向中央部から両端部までほぼ同一条件(温度、時間等)で熱風を当てることができ、生地1の変色や劣化を防止しつつ筒状生地1の全周に亘る溶融糸1bの加熱溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0024】
さらに、生地支持型枠2,2には、連結生地1の連結方向に離隔した2箇所に、生地支持型枠2,2よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材10,10を外嵌装着してあるため、溶融糸1bの溶融時、筒状生地1の連結部1cを一対の生地浮かし部材10,10の中間付近に位置決め配置することにより、該連結部1cを生地支持型枠2,2から非接触状態に浮かして支持させることができ、熱風を生地支持型枠2,2の接触部分で妨害されることなく他の部分と同様な条件で通過させて溶融糸1bの加熱溶融を行わせることができる。これによって、溶融糸1bの溶融を効率よく確実に行わせることができる。
【0025】
また、連結生地1の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材10,10の間には、連結生地1の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材11,11を連結生地1の展開幅方向両外側で連結生地1の連結方向に沿って張設してあるため、連結生地1の展開幅方向両側において、熱風による溶融糸1bの加熱溶融による連結生地1の連結部1cの分離作用が連結生地1の展開幅方向中央部から幅方向両側へ順次伝播してくる際、分離促進部材11,11の山形部11a、11aによって、生地1を山形の頂部から両側へ滑り動かせて強制的に分離させる力を発生させることができ、これによって、各パーツ生地1a,1aの分離不良を確実に防止することができる。
【0026】
上記した本発明の分離装置Aは、例えば、図11に示すような平面レイアウト構成からなる生地裁断装置Bの溶断部Cに組み込まれる。この生地裁断装置Bは、筒状の連結生地1を原反供給部Dから溶断部Cで各パーツ生地1aに溶断分離し、溶断分離された各パーツ生地1aを表裏の生地目の方向を揃えたり、編み目組織のずれをなくして同一状態に揃えるための作業を行う目立て型枠部Eに送り出して、表裏の生地目や組織を揃えて移載部Fにより予備ステージGに送り出し、ここから裁断部Hへ送り出し、この裁断部Hでパーツ生地1aからシャツの袖などの左右一対のパーツを表裏重ね合わせ状態で同時に裁断する装置である。なお、目立て型枠部Eでは、目立てされた良品が予備ステージGに送り出され、不良品は、不良スタッキング部Iに選別集積される。そして、裁断部Hで裁断されたパーツは、スタッキング部Jに集積され、裁断屑は不良スタッキング部Iに集積される。生地の供給制御は、生地供給制御盤Kで行われ、裁断部Hの裁断形状や裁断条件などの設定制御は、裁断メインパソコンLで行われ、スタッキング部Jの制御は、スタッキング制御盤Mで行われる。本発明の分離装置Aは、この生地裁断装置Bに適用した場合、次工程となる目立て型枠部Eに分離後の生地を受け取らせる機構を簡単化することができる。
【0027】
本発明の実施形態は、以上の通りであるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、自由に変形して実施することができる。例えば、連結生地1を水平方向に搬送して分離処理する場合を示しているが、垂直方向や、斜め方向等に搬送して分離処理させる場合に適用することができる。また、連結生地1は、溶断部Cに間欠送りしているが、連続送りとしてもよく、その際には、両ダクト3,4を生地送り速度と同調して移動させて溶断させ、溶断後、パーツ生地1aの1ピッチ分戻して次の溶断を行わせ、これを繰り返すように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る分離装置の要部概略正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】連結生地の説明図である。
【図5】生地支持型枠のフローティング支持構造例を示す平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】図1の装置の両ダクトの離隔状態を示す正面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】生地支持型枠の要部拡大側面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】本発明の装置を適用した生地裁断装置の平面レイアウト図である。
【符号の説明】
【0029】
1 連結生地
1a パーツ生地
1b 溶融糸
1c 連結部
2 生地支持型枠
3 熱風供給側ダクト
3a 矩形開口部
3b 熱風吹き出し整流筒
4 排気側ダクト
4a 矩形開口部
4b 整流板
5,6 ニップローラ
7 溶融室
8 熱風発生手段
9 積極的排気手段
10 生地浮かし部材
11 分離促進部材
12 生地移送用ニップハンド
A 分離装置
B 生地裁断装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に編成された複数のパーツ生地が溶融糸を用いた連結部で一連に連結編成された筒状の連結生地を各パーツ生地ごとに連結部で熱風の吹き付けにより溶融糸を溶融させて分離する装置であって、
前記連結生地の連結方向に沿って平行に配置され、前記連結生地の筒内に挿入されて連結生地を幅方向両側に展開させた状態で支持するための一対の生地支持型枠と、
この生地支持型枠に支持された筒状の連結生地の展開面を挟んで両側に互いに接近離隔可能に対向配置され、前記溶融糸の溶融時に接近して前記連結生地の連結部周囲を囲繞して溶融室を形成する熱風供給側ダクト及び排気側ダクトとを備え、
前記熱風供給側ダクトから供給した熱風を前記溶融室内で前記一対の生地支持型枠によって幅方向両側に展開支持させた連結生地の展開面の一方側から他方側へ生地組織内を通過させて前記排気側ダクトから排気させ、その間に前記連結部の溶融糸を溶融させて各パーツ生地に分離させるようにしたことを特徴とする筒状の連結生地の分離装置。
【請求項2】
前記熱風供給側ダクトは、連結生地の展開幅及び連結部の幅より若干広幅とされた矩形開口部を有し、この矩形開口部の中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒を備えており、また、前記排気側ダクトは、前記熱風供給側ダクトの矩形開口部と閉合する矩形開口部を有し、この矩形開口部に熱風の排気を連結生地の展開幅方向両側へ誘導する整流板を備えていることを特徴とする請求項1に記載の筒状の連結生地の分離装置。
【請求項3】
前記生地支持型枠には、前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所に、前記生地支持型枠よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材を外嵌装着してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の筒状の連結生地の分離装置。
【請求項4】
前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材の間には、前記連結生地の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材を連結生地の展開幅方向両外側で前記連結生地の連結方向に沿って張設してあることを特徴とする請求項3に記載の筒状の連結生地の分離装置。
【請求項1】
筒状に編成された複数のパーツ生地が溶融糸を用いた連結部で一連に連結編成された筒状の連結生地を各パーツ生地ごとに連結部で熱風の吹き付けにより溶融糸を溶融させて分離する装置であって、
前記連結生地の連結方向に沿って平行に配置され、前記連結生地の筒内に挿入されて連結生地を幅方向両側に展開させた状態で支持するための一対の生地支持型枠と、
この生地支持型枠に支持された筒状の連結生地の展開面を挟んで両側に互いに接近離隔可能に対向配置され、前記溶融糸の溶融時に接近して前記連結生地の連結部周囲を囲繞して溶融室を形成する熱風供給側ダクト及び排気側ダクトとを備え、
前記熱風供給側ダクトから供給した熱風を前記溶融室内で前記一対の生地支持型枠によって幅方向両側に展開支持させた連結生地の展開面の一方側から他方側へ生地組織内を通過させて前記排気側ダクトから排気させ、その間に前記連結部の溶融糸を溶融させて各パーツ生地に分離させるようにしたことを特徴とする筒状の連結生地の分離装置。
【請求項2】
前記熱風供給側ダクトは、連結生地の展開幅及び連結部の幅より若干広幅とされた矩形開口部を有し、この矩形開口部の中央部に向けて熱風を吹き出すための熱風吹き出し整流筒を備えており、また、前記排気側ダクトは、前記熱風供給側ダクトの矩形開口部と閉合する矩形開口部を有し、この矩形開口部に熱風の排気を連結生地の展開幅方向両側へ誘導する整流板を備えていることを特徴とする請求項1に記載の筒状の連結生地の分離装置。
【請求項3】
前記生地支持型枠には、前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所に、前記生地支持型枠よりも1回り大きい周長を有する一対の生地浮かし部材を外嵌装着してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の筒状の連結生地の分離装置。
【請求項4】
前記連結生地の連結方向に離隔した2箇所の生地浮かし部材の間には、前記連結生地の展開幅方向に直交する方向に山形に屈曲形成された線材からなる分離促進部材を連結生地の展開幅方向両外側で前記連結生地の連結方向に沿って張設してあることを特徴とする請求項3に記載の筒状の連結生地の分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−209458(P2009−209458A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50740(P2008−50740)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
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