説明

筒状構造体、成形型、および筒状構造体を製造する方法

【課題】筒状構造体、および筒状構造体の製造に使用される成形型を提供する。
【解決手段】延伸軸を有する筒状構造体を成形するための成形型であって、当該成形型は、少なくとも3つ以上のセグメント板を前記延伸軸の方向に積層した第1の部分を有し、各セグメント板は、貫通孔を有し、該貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、少なくとも3つの角部を有する多角形状を有し、各セグメント板を前記延伸軸の方向に積層することにより、前記貫通孔が連通され、前記第1の部分に第1の収容部が形成され、各セグメント板は、該セグメント板の貫通孔の少なくとも一つの角部が、前記延伸軸の方向において、隣接するセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されることを特徴とする成形型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体および構造体を成形する成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に用いられる筒状セラミック製品の製造方法の1つとして、以下の工程を経てセラミック製品を製造する方法がある。
(A)石膏型のような成形型に、セラミック製品の原料となる粉末を含むスラリー(「泥しょう」とも言う)が注入される。通常の場合、成形型は、多数のポアを有する多孔質体で構成されており、いわゆる「吸水性」を有する。従って、スラリー中の液体成分は、成形型に吸い込まれ、スラリーは、成形型の壁面で固着するようになる。これにより、成形型内で筒状の成形体を成形することができる(例えば、特許文献1)。
(B)次に、得られた成形体が成形型から脱型される。さらにこの成形体は、次工程のため、セッターと呼ばれる耐熱部材の上に置載され、または収容される。
(C)次に、成形体は、セッターとともに加熱装置内に配置され、所定の温度で焼成される。これにより、所望の形状のセラミック製品が製造される。
【0003】
あるいは、(B)の工程、すなわち成形型から成形体を取り出すという脱型工程を排除することも提案されている(特許文献2)。この場合、耐熱性を有する成形型を使用し、この成形型に成形体を収容した状態のまま、両者が一体焼成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−170821号公報
【特許文献2】特開2004−269336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、前述のようないわゆる「成形+焼成法」で得られる筒状構造体は、円筒管、四角形管など、単純な形状のものに限られ、従来の「成形+焼成法」では、複雑形状の筒状構造体を製造することは難しい。
【0006】
一方、例えば、高温プラントのようなプロセス設備には、廃熱を利用する際などに、熱交換部材等が使用される。また、プロセスの高効率化のため、このような熱交換部材の熱交換性能をより一層高めることが望まれている。このため、近年は、特に、外表面に大きな表面積を有する熱交換部材用の構造体が必要となってきている。
【0007】
しかしながら、従来の「成形+焼成法」では、このような筒状構造体の表面積向上に対するニーズを満たすことは難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、外表面に、通常の「成形+焼成法」では得られないような、大きな表面積を有する筒状構造体を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような筒状構造体の製造に使用される成形型、およびそのような筒状構造体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、延伸軸を有する筒状構造体を成形するための成形型であって、
当該成形型は、少なくとも3つ以上のセグメント板を前記延伸軸の方向に積層した第1の部分を有し、
各セグメント板は、貫通孔を有し、該貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、少なくとも3つの角部を有する多角形状を有し、
各セグメント板を前記延伸軸の方向に積層することにより、前記貫通孔が連通され、前記第1の部分に第1の収容部が形成され、
各セグメント板は、該セグメント板の貫通孔の少なくとも一つの角部が、前記延伸軸の方向において、隣接するセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されることを特徴とする成形型が提供される。
【0010】
ここで、本発明による成形型において、各セグメント板は、該セグメント板の貫通孔の全ての角部が、前記延伸軸の方向において、隣接するセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されても良い。
【0011】
また、本発明による成形型において、各セグメント板の貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状を有しても良い。
【0012】
また、本発明による成形型では、前記第1の部分において、各セグメント板の貫通孔は、隣接するセグメント板の貫通孔に対して、前記延伸軸の周りにある角度(α)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されても良い。
【0013】
この角度(α)は、1゜〜25゜の範囲であっても良い。
【0014】
また、本発明による成形型では、前記第1の部分において、各セグメント板は、隣接するセグメント板に対して、前記延伸軸の周りに回転した状態で配置されても良い。
【0015】
また、本発明による成形型において、各セグメント板の前記延伸軸に対して垂直な面の形状および寸法は、実質的に等しくても良い。
【0016】
また、本発明による成形型において、各セグメント板の前記貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、四角形、五角形、六角形、八角形、または十二角形の形状を有しても良い。
【0017】
また、本発明による成形型において、前記第1の収容部は、前記延伸軸の方向から見たとき、5mm〜500mmの円と内接または外接する寸法を有しても良い。
【0018】
また、本発明による成形型では、前記第1の部分において、最上部のセグメント板を第1番目のセグメントとし、該第1番目のセグメントの直下のセグメント板を第2番目のセグメントとし、以下同様に、第3番目のセグメント、第4番目のセグメント...第i番目のセグメント...を規定し、最下部のセグメント板を第n番目のセグメントとしたとき、
第1番目のセグメントの貫通孔の一つの角部を第1選択角部として選定し、第2番目のセグメントの貫通孔の角部のうち、前記第1選択角部に最も近接する角部を第2選択角部として選定し、以下同様にして、第1番目のセグメントの貫通孔から第n番目のセグメントの貫通孔まで、n個の選択角部を選択し、各選択角部を順次結んだとき、前記延伸軸を中心とした螺旋状の軌跡が得られても良い。
【0019】
また、本発明による成形型は、さらに、少なくとも3つ以上の第2のセグメント板を前記延伸軸方向に積層した第2の部分を有し、
前記第2のセグメント板の各々は、第2の貫通孔を有し、該第2の貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、少なくとも3つの角部を有する多角形状を有し、
前記第2のセグメント板の各々を前記延伸軸方向に積層することにより、前記第2の貫通孔が連通されて、前記第2の部分に、前記第1の収容部と連通する第2の収容部が形成され、
前記第2の部分において、前記第2のセグメント板の各々は、該第2のセグメント板の貫通孔の少なくとも一つの角部が、前記延伸軸の方向において、隣接する第2のセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置され、
前記第1の収容部と前記第2の収容部は、形状および/または寸法が異なっていても良い。
【0020】
ここで、前記第2のセグメント板は、該第2のセグメント板の貫通孔の全ての角部が、前記延伸軸の方向において、隣接する第2のセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されても良い。
【0021】
また、各第2のセグメント板の貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状を有しても良い。
【0022】
この場合、特に、前記第2の部分において、各第2のセグメント板の貫通孔は、隣接する第2のセグメント板の貫通孔に対して、前記延伸軸の周りにある角度(β)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されても良い。
【0023】
また、本発明による成形型は、さらに、略円柱状の第3の収容部を有する第3の部分を有し、前記第3の収容部は、前記第1の収容部と連通されていても良い。
【0024】
また、本発明では、延伸軸を有するセラミックまたは金属製の筒状構造体であって、
当該筒状構造体は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向の断面が多角形状の外表面を有するセグメント段が少なくとも3段以上積層された第1の部分を有し、
該第1の部分において、各セグメント段は、隣接するセグメント段に対して少なくとも一つの角部の位置がずれるように配置されていることを特徴とする筒状構造体が提供される。
【0025】
ここで、本発明による筒状構造体において、各セグメント段は、隣接するセグメント段に対して、全ての角部の位置がずれるように配置されても良い。
【0026】
また、本発明による筒状構造体において、各セグメント段は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状の外表面を有しても良い。
【0027】
また、本発明による筒状構造体において、前記第1の部分において、各セグメント段は、隣接するセグメント段に対して、前記延伸軸の周りにある角度(α)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されても良い。
【0028】
この角度(α)は、1゜〜25゜の範囲であっても良い。
【0029】
また、本発明による筒状構造体は、少なくとも100段以上のセグメント段を前記延伸軸の方向に積層した構成を有しても良い。
【0030】
また、本発明による筒状構造体において、各セグメント段は、貫通孔を有し、該貫通孔の形状および寸法は、実質的に等しくても良い。
【0031】
また、本発明による筒状構造体において、各セグメント段の外表面の前記延伸軸の方向に垂直な断面は、四角形、五角形、六角形、八角形、または十二角形の形状を有しても良い。
【0032】
また、本発明による筒状構造体において、各セグメント段の外表面は、前記延伸軸の方向から見たとき、直径が5mm〜500mmの円と内接または外接しても良い。
【0033】
また、本発明による筒状構造体において、各セグメント段は、実質的に同一の厚さを有しても良い。
【0034】
また、本発明による筒状構造体では、前記第1の部分において、最上部のセグメント段を第1番目のセグメントとし、該第1番目のセグメントの直下のセグメント段を第2番目のセグメントとし、以下同様に、第3番目のセグメント、第4番目のセグメント...第i番目のセグメント...を規定し、最下部のセグメント段を第n番目のセグメントとしたとき、
第1番目のセグメントの一つの角部を第1選択角部として選定し、第2番目のセグメントの角部のうち、前記第1選択角部に最も近接する角部を第2選択角部として選定し、以下同様にして、第1番目のセグメントから第n番目のセグメントまで、n個の選択角部を選択し、各選択角部を順次結んだとき、前記延伸軸を中心とした螺旋状の軌跡が得られても良い。
【0035】
また、本発明による筒状構造体は、前記第1の部分の内表面に、前記第1の部分の外表面の形状に対応する凹凸面を有しても良い。
【0036】
また、本発明による筒状構造体は、さらに、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向の断面が多角形状の外表面を有する第2のセグメント段が、前記延伸軸の方向に少なくとも3段以上積層された第2の部分を有し、
該第2の部分において、第2のセグメント段の各々は、隣接する第2のセグメント段に対して少なくとも一つの角部の位置がずれるように配置され、
前記第1の部分と第2の部分は、形状または寸法が異なっていても良い。
【0037】
この場合、各第2のセグメント段は、隣接する第2のセグメント段に対して、全ての角部の位置がずれるように配置されても良い。
【0038】
また、各第2のセグメント段は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状の外表面を有しても良い。
【0039】
また、前記第2の部分において、各第2のセグメント段は、隣接する第2のセグメント段に対して、前記延伸軸の周りにある角度(β)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されても良い。
【0040】
また、本発明による筒状構造体は、さらに、前記第1の部分と一体化された第3の部分を有し、
該第3の部分は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向の断面が円または楕円形状の外表面を有しても良い。
【0041】
さらに、本発明では、セラミックまたは金属製の筒状構造体を製造する方法であって、
(a)収容部を有する成形型を組み立てるステップと、
(b)前記成形型の収容部で、成形体を形成するステップと、
を有し、
前記成形型は、前述のような特徴を有する成形型であることを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0042】
本発明では、外表面に、通常の「成形+焼成法」では得られないような、大きな表面積を有する筒状構造体を提供することが可能となる。また、本発明では、そのような筒状構造体の製造に使用される成形型、およびそのような筒状構造体を製造する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による筒状構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】本発明による筒状構造体の上部を模式的に示した拡大図である。
【図3】本発明による筒状構造体の簡略化された上面図である。
【図4】本発明による成形型の一例を模式的に示した構成図である。
【図5】本発明による成形型を構成するセグメント板の一例を模式的に示した図である。
【図6】セグメント板を組み合わせて本発明による成形型を構成する様子を模式的に示した図である。
【図7】図6に示した成形型を模式的に示した上面図である。
【図8】本発明による筒状構造体を製造するためのフローの一例を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0045】
(本発明による筒状構造体)
図1には、本発明による筒状構造体の一例を模式的に示す。また、図2には、本発明による筒状構造体の上部の拡大図を示す。さらに、図3には、筒状構造体の簡略化された上面図を示す。
【0046】
本発明による筒状構造体100は、セラミックまたは金属で構成される。
【0047】
図1に示すように、本発明による筒状構造体100は、内部に貫通流路105を有する筒状構造を有し、貫通流路105は、延伸軸101に沿って、筒状構造体100の長手方向に延伸する。筒状構造体100は、貫通流路105を構成する内表面110と、外表面140とを有する。図1の例では、延伸軸101に対して垂直な方向(X方向)における内表面110の断面は、略円状の形状を有し、延伸軸101に対して垂直な方向における外表面140の断面は、略正六角形状の形状を有する。筒状構造体100は、外表面140に、この正六角形の頂点に相当する多数の突起状の角部125を有する。
【0048】
図2に詳細を示すように、筒状構造体100は、複数のセグメント段130(130−1〜130−n)が延伸軸101の方向(Z方向)に沿って、筒状構造体100の上面103から下面109まで積層されたような構造となっている。図1の例では、筒状構造体100は、セグメント段130が約100段積層されて構成される。
【0049】
図3に一部を示すように、各セグメント段130は、XY平面で切断した場合、略正六角形の断面を有し、図1〜3の例では、この正六角形の寸法は、各セグメント段130においておおよそ等しくなっている。
【0050】
ここで、図3に詳しく示すように、筒状構造体100を構成する一つのセグメント段130−iは、直上のセグメント段130−i−1に対して、延伸軸101の時計方向に角度αだけ回転し、ずらした状態で配置されている。例えば、図1〜3の例では、セグメント段130−iは、セグメント段130−i−1に対して、時計方向に角度α=4.5゜だけ回転して積層されている。なお、この角度αは、1゜〜59゜の範囲であっても良く、1゜〜25゜、特に1゜〜10゜の範囲であることが好ましい。
【0051】
従って、筒状構造体100を延伸軸101の方向から見た場合、正六角形状のセグメント段130−iの各頂点125は、隣接するセグメント段130−i−1および130−i+1の各頂点125と重なり合うことはない。
【0052】
例えば、図1の構成の場合、筒状構造体100の外表面140において、上面103のセグメント段130−1の一つの角部125を第1選択角部125−1として選定し、次のセグメント段130−2の角部125のうち、セグメント段130−1の第1選択角部125−1に最も近接する角部を、第2選択角部125−2として選定し、以下同様にして、下面109のセグメント段130−nまで、合計n個の選択角部(125−1〜125−n)を選択し、各選択角部を順次結ぶと、延伸軸101を中心とした螺旋状の軌跡150が得られるようになる。ここで、螺旋状の軌跡150は、六角形の各頂点に対して描かれるため、螺旋状の軌跡は、150−1〜150−6の合計6本描かれることになる。
【0053】
なお、図1〜3の例では、角度α=4.5゜であるため、筒状構造体100を延伸軸101の方向から見た場合、セグメント段130が合計40段積層されると、前述の螺旋状の軌跡の一つ(例えば軌跡150−1)は、上面103から下面109まで、延伸軸101の周囲180゜の範囲にわたって回転することになる。また、セグメント段130が80段積層されると、螺旋状の軌跡の一つ(例えば軌跡150−1)は、上面103から下面109まで、延伸軸101の周囲を丁度360゜にわたって回転する。すなわち、80段積層毎に、上面103と下面109の六角形の各頂点のZ方向の位置が一致する。
【0054】
一般に、従来のようないわゆる「成形+焼成法」で得られる筒状構造体は、円筒管、四角形管など、単純な形状のものに限られ、従来の「成形+焼成法」では、複雑形状の筒状構造体を製造することは難しいという問題がある。
【0055】
一方、例えば、高温プラントのようなプロセス設備には、廃熱を利用する際などに、熱交換部材等が使用される。また、プロセスの高効率化のため、このような熱交換部材の熱交換性能をより一層高めることが望まれている。このため、近年は、大きな表面積を有する熱交換部材用の構造体が必要となってきている。しかしながら、従来の「成形+焼成法」では、このような筒状構造体の表面積向上に対するニーズを満たすことは難しい。
【0056】
これに対して、本発明による筒状構造体100は、多角形状の複数のセグメント板が積層されたような構造を有し、延伸軸101の方向から見たとき、隣接するセグメントにおいて、多角形の角部125同士は、重なり合っていない。
【0057】
従って、本発明の筒状構造体100では、有意に大きな表面積を有する外表面140が得られる。従って、本発明による筒状構造体100を熱交換器に適用した場合、良好な熱交換特性を得ることが可能となる。すなわち、本発明による筒状構造体100では、多角形の角部125で構成される多数の突起部分がいわゆるフィンのような役割を果たし、外表面140に接触する流体と、内表面110に流通する流体との間で、極めて効率的な熱交換が行われるようになる。
【0058】
なお、筒状構造体100の内表面110の表面状態は、特に限られず、内表面110は、略平坦な表面を有しても、外表面140の形状(特にセグメント段130同士の界面)に対応した凹凸または波状の模様を有しても良い。外表面140がこのような模様を有する場合、本発明による筒状構造体100を熱交換器に適用した際、内表面110の大きな表面積のため、筒状構造体100の外表面と接触する流体と、貫通流路105に流通する流体との間で、さらに良好な熱交換性が得られる。
【0059】
ここで、本発明において、筒状構造体100の全長は、特に限られない。筒状構造体100の全長は、セグメント段130の段数と、各セグメント段130の厚さによって定められる。
【0060】
セグメント段130の段数は、特に限られない。セグメント段130の段数の下限は、例えば、3(例えば10)であっても良い。また、セグメント段130の段数の上限は、例えば、10000(例えば、5000)である。従って、セグメント段130の段数は、例えば、3〜10000(例えば50〜1000段)の範囲であっても良い。例えば、図1の例では、セグメント段130が、100段積層されて、筒状構造体100が構成されている。
【0061】
また、各セグメント段130の厚さ(Z方向の長さ)は、特に限られない。例えば、各セグメント段130は、1mm〜10mmの範囲であっても良い。なお、各セグメント段130の厚さは、一定であっても、異なっていても良い。
【0062】
なお、図1の例では、筒状構造体100の外表面140は、延伸軸101に対して垂直な方向から見た場合、略正六角形状の断面を有する。しかしながら、本発明は、このような態様に限られるものではない。筒状構造体100の外表面140は、例えば、三角形、四角形、五角形、八角形、十角形、または十二角形等の多角形状の断面を有しても良い。また、これらの多角形は、正多角形ではなくても良い。
【0063】
さらに言えば、各セグメント段130の多角形は、X−Y平面(図3参照)において、必ずしも同一の形状、および寸法を有する必要はない。例えば、図1の例では、各セグメント段130−1〜130−nは、全て同一寸法の略正六角形の外形状を有するが、各セグメント段130において、略正六角形の寸法は、変えても良い。
【0064】
また、例えば、セグメント段130−1は、正六角形状とし、セグメント段130−2は、正方形状にするなど、セグメント段130毎に、多角形の形状を変えても良い。
【0065】
また、例えば、上面103から第1の領域までは、第1の断面形状を有するセグメント段130を配置を徐々にずらして積層させ、第1の領域から第2の領域までは、第2の断面形状を有するセグメント段130を配置を徐々にずらして積層させ、第2の領域から第3の領域までは、第3の断面形状を有するセグメント段130を配置を徐々にずらして積層させるなど、領域毎に多角形の形状を変えても良い。この場合、第1〜第3の領域における第1〜第3の断面形状のうちの最大2つは、円または楕円であっても良い。
【0066】
すなわち、本発明において重要なことは、筒状構造体が、断面が多角形状のセグメント段を少なくとも3段以上(例えば10段)積層した部分を少なくとも一つ有し、該部分において、延伸軸の方向から見たとき、各セグメント段の角部が、隣接するセグメント段の最近接の角部と重なり合っていない箇所が少なくとも一つ存在することであり、これが満たされる限り、筒状構造体は、いかなる構造であっても良い。
【0067】
なお、延伸軸101に対して垂直な面の貫通流路105の寸法および形状は、特に限られないが、これは、例えば、実質的に直径が5mm〜500mmの円であっても良い。
【0068】
また、筒状構造体100の材質は、特に限られないが、筒状構造体100は、耐熱性を有する材質、例えば、窒化珪素(SiN)、炭化珪素(SiC)、および窒化ホウ素(BN)のうちの少なくとも一つで構成されても良い。
【0069】
(本発明による成形型)
次に、前述のような筒状構造体を製作する際に使用される成形型について説明する。
【0070】
図4には、本発明による成形型の一例を模式的に示す。また、図5には、本発明による成形型を構成する際に使用されるセグメント板の一例を示す。さらに、図6および図7には、セグメント板を組み合わせて、本発明による成形型を組み立てる際の途中の段階を示す。図7は、図6に示した成形型の簡略化された上面図である。
【0071】
図4に示すように、本発明による成形型200は、略正方形状のセグメント板230(230−1〜230−n)を積層方向(Z方向)に多数積層することにより構成される。成形型200は、上面203および下面209を有する。また、成形型200は、成形体用のスラリー等を注入するための収容部260を有し、この収容部260は、上面203から下面209まで延在している。
【0072】
図5に示すように、一つのセグメント板230は、2つの部材230A、230Bを組み合わせることにより構成される。ただし、図5とは異なり、セグメント板230は、単一の部材で構成されても良い。
【0073】
図5において、セグメント板230は、貫通孔220を有し、該貫通孔220は、頂点225を有する多角形の形状を有する。図5の例では、貫通孔220は、6つの頂点225を有する略正六角形の形状を有する。
【0074】
図6に示すように、成形型200を構成する際、セグメント板230(230−1〜230−i)は、Z方向に沿って積層される。なお、図6では、明確化のため、成形型200を構成するセグメント板230の一部が切除されている。
【0075】
ここで、図7に詳しく示すように、成形型200を構成する一つのセグメント板230−iは、直上のセグメント段230−i−1に対して、積層軸(Z軸)の時計方向に角度αだけ回転し、ずらした状態で配置されている。例えば、図6、7の例では、セグメント板230−iは、セグメント板230−i−1に対して、角度α=4.5゜だけ回転して積層されている。なお、この角度αは、1゜〜59゜の範囲であっても良く、1゜〜25゜、特に1゜〜10゜の範囲であることが好ましい。
【0076】
従って、成形型200を積層軸の方向から見た場合、正六角形状のセグメント板230−iの各頂点225は、隣接するセグメント板230−i−1および230−i+1の各頂点225と重なり合ってはいない。
【0077】
例えば、図4の構成の場合、成形型200の収容部260を構成する内壁部270において、上面203のセグメント板230−1の貫通孔220の一つの頂点225を第1選択角部225−1として選定し、次のセグメント板230−2の貫通孔220の頂点225のうち、セグメント板230−1の第1選択頂点225−1に最も近接する頂点を、第2選択頂点225−2として選定し、以下同様にして、下面209のセグメント板230−nまで、合計n個の選択頂点(225−1〜225−n)を選択し、各選択頂点を順次結ぶと、積層軸を中心とした螺旋状の軌跡250が得られるようになる。ここで、螺旋状の軌跡250は、貫通孔220の六角形の各頂点225に対して描かれるため、螺旋状の軌跡250は、250−1〜250−6の合計6本描かれることになる。(図6には、このうちの2本のみが示されている)。
【0078】
なお、図4〜7の例では、前述の角度α=4.5゜であるため、成形型200をZ軸の方向から見た場合、セグメント板230が合計40段積層されると、前述の螺旋状の軌跡の一つ(例えば軌跡250−1)は、上面203から下面209まで、Z軸の周囲180゜の範囲にわたって回転することになる。また、セグメント板230が80段積層されると、螺旋状の軌跡の一つ(例えば軌跡250−1)は、上面203から下面209まで、Z軸の周囲を丁度360゜にわたって回転する。すなわち、80段積層毎に、上面203と下面209の六角形の各頂点のZ方向の位置が一致する。
【0079】
このような成形型200を使用して、被成形体の成形を行うことにより、前述の図1に示したような、大きな表面積を有する筒状構造体を得ることができる。なお、筒状構造体がセラミックの場合、得られた筒状構造体は、さらに焼成処理しても良い。
【0080】
なお、図4〜図7の例では、各セグメント板230の貫通孔220同士の位置ずれ(積層方向から見たときの配置のずれ)は、各セグメント板230−iを、直上のセグメント板230−i−1に対して、角度α=4.5゜だけ時計方向に回転して積層することにより、なされている。
【0081】
しかしながら、本発明による成形型200において、各セグメント板230の貫通孔220同士の位置ずれは、予め各セグメント板230に、異なる(少しずつずれた)配置の貫通孔を構成しておくことにより、生じさせても良い。この場合、各セグメント板230は、位置をずらす(回転させる)必要はなく、各セグメント板230を同じ配置で積層しただけで、直上の貫通孔に対して位置がずれた状態を容易に発生させることができる。
【0082】
また、成形型200を構成するセグメント板230の外表面240の形状は、特に限られず、外表面240は、図5に示すような正方形状であっても、その他の形状であっても良い。
【0083】
また、成形型200の全長は、特に限られない。成形型200の全長は、セグメント板230の段数と、各セグメント板230の厚さによって定められる。
【0084】
セグメント板230の段数は、特に限られない。セグメント板230の段数の下限は、例えば、3(例えば10)であっても良い。また、セグメント板230の段数の上限は、例えば、10000(例えば5000)である。従って、セグメント板230の段数は、例えば、3〜10000(例えば50〜1000段)の範囲であっても良い。例えば、図4の例では、セグメント板230が、100段積層されて、成形型200が構成されている。
【0085】
また、各セグメント板230の厚さ(Z方向の長さ)は、特に限られない。例えば、各セグメント板230は、1mm〜10mmの範囲であっても良い。なお、各セグメント板230の厚さは、一定であっても、異なっていても良い。
【0086】
なお、図5の例では、セグメント板230の貫通孔220は、Z軸の方向から見た場合、略正六角形状の形状を有する。しかしながら、本発明は、このような態様に限られるものではない。セグメント板230の貫通孔220は、例えば、三角形、四角形、五角形、八角形、十角形、または十二角形等の多角形状の断面を有しても良い。また、これらの多角形は、正多角形ではなくても良い。
【0087】
さらに言えば、各セグメント板230の貫通孔220の多角形は、必ずしも同一の形状、および寸法を有する必要はない。例えば、図4、図6の例では、各セグメント板230−1〜230−nは、全て同一寸法の略正六角形の貫通孔220を有するが、各貫通孔220において、略正六角形の寸法は、変えても良い。
【0088】
また、例えば、セグメント板230−1の貫通孔220は、正六角形状とし、セグメント板230−2の貫通孔220は、正方形状にするなど、セグメント板230毎に、多角形の形状を変えても良い。
【0089】
また、例えば、上面203から第1の領域までは、第1の形状の貫通孔を有するセグメント板230を配置を徐々にずらして積層させ、第1の領域から第2の領域までは、第2の形状の貫通孔を有するセグメント板230を配置を徐々にずらして積層させ、第2の領域から第3の領域までは、第3の形状の貫通孔を有するセグメント板230を配置を徐々にずらして積層させるなど、領域毎に多角形の形状を変えても良い。この場合、第1〜第3の領域における第1〜第3の形状の貫通孔のうちの最大2つは、円または楕円であっても良い。
【0090】
すなわち、本発明において重要なことは、成形型が、多角形状の貫通孔を有するセグメント板を少なくとも3段以上積層した部分を少なくとも一つ有し、該部分において、積層方向から見たとき、各セグメント板の貫通孔の頂点が、隣接するセグメント板の貫通孔の最近接の頂点と重なり合っていない箇所が少なくとも一つ存在することであり、これが満たされる限り、成形型は、いかなる構造であっても良い。
【0091】
なお、セグメント板230の貫通孔220の多角形の寸法は、特に限られないが、多角形は、例えば、実質的に直径が5mm〜500mmの円と内接または外接する寸法であっても良い。
【0092】
また、セグメント板230の材質は、特に限られないが、セグメント板230は、耐熱性を有する材質、例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、窒化珪素(SiN)、炭化珪素(SiC)、および窒化ホウ素(BN)のうちの少なくとも一つで構成されても良い。また、セグメント板230は、多孔質であることが好ましい。
【0093】
(本発明による筒状構造体の製造方法)
次に、本発明による筒状構造体の製造方法の一例について説明する。なお、以降の説明では、前述のような特徴を有する多孔質セラミック製の成形型を使用して、セラミック製の筒状構造体を製造する方法について述べる。ただし、本発明がそのような態様に限られないことは、当業者には明らかである。
【0094】
図8に示すように、本発明による筒状構造体の製造方法は、収容部を有する成形型を組み立てるステップ(S110)と、前記成形型の収容部で、成形体を形成するステップ(S120)と、を有する。また、本発明による製造方法は、さらに任意で、前記成形体を焼成するステップ(S130)を有しても良い。
【0095】
以下、各ステップについて詳しく説明する。
【0096】
(ステップS110)
まず最初に、前述のような特徴を有する多孔質セラミック製の成形型が製作される。
【0097】
成形型は、多角形状の貫通孔を有する複数のセグメント板を積層方向に沿って積層することにより構成される。セグメント板は、成形される成形体の寸法と形状に基づいて、形状、寸法、枚数等が定められる。各セグメント板は、前述のように複数の部材を組み合わせて構成されても良く、あるいは一体物であっても良い。
【0098】
なお、前述のような収容部、すなわち隣接するセグメント板において、多角形状の貫通孔の頂点が重なり合っていない状態を構成する方法として、以下の2つの方法を採用することができる:
(i)各セグメント板を同一配置で積層した際に、隣接するセグメント間で、貫通孔の配置が所定の角度だけ回転されるように、予め各セグメント板の貫通孔の位置を規定しておく。このような設計は、CADまたは他のコンピュータソフトウェア等を使用することにより、容易に行うことができる。
(ii)各セグメント板に設置されている貫通孔の寸法および形状を実質的に同一にしておき、セグメント板を隣接するセグメント板に対して、所定の角度だけ回転させ、貫通孔の配置をずらしながら、セグメント板を順次積層する(図4の構成)。これにより、隣接するセグメント同士の間で、貫通孔の多角形の頂点が重なり合っていない状態が得られる。
【0099】
このうち、取扱の容易性の観点からは、(i)の方法を採用することが好ましい。この場合、各セグメント板を同一配置で積層するだけで、容易に複雑な収容部を構成することができるからである。また、コストの観点からは、(ii)の方法を採用することが好ましい。この場合、各セグメント板の寸法および形状を、実質的に同一にすることができるからである。
【0100】
なお、各セグメント板を積層する際、または積層が完了した後に、各セグメント板が相互にずれないように、固定手段を用いて、この積層体(すなわち成形型)を固定しても良い。
【0101】
また、後に成形体を焼成する必要がある場合、成形型は、耐熱性を有することが好ましい。このため、各セグメント板は、例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、窒化珪素(Si)、および窒化ホウ素(BN)、および炭化珪素(SiC)の少なくとも一つを含む材料で構成されても良い。
【0102】
成形型は、多孔質体であることが好ましい。成形型が多孔質体である場合、以降のステップにおいて、成形型の収容部にスラリーを注入した際、スラリー中の水分が収容部を構成する内壁部から排出されるようになるため、スラリーを比較的容易に乾燥、固化させることができる。また、薄肉の構造体を、比較的容易に製造することが可能になる。
【0103】
(ステップS120)
次に、成形型の収容部に、構造体用のスラリーが注入される。このスラリーは、収容部を構成する内壁部に接触した状態で、乾燥、固化されるため、成形型の収容部に対応した外表面を有する筒状成形体が得られる。換言すれば、成形型の収容部、すなわち、セグメント板の貫通孔を適正に設計することにより、薄肉、大型、および/または複雑形状の筒状成形体を、容易に形成することが可能になる。
【0104】
スラリーは、基本的に、水のような分散媒体と、最終的に得られる構造体に含まれるセラミック粒子とを含む。さらに、スラリーは、有機バインダ等を含んでも良い。
【0105】
(ステップS130)
次に、必要に応じて、得られた筒状成形体が焼成処理される。
【0106】
焼成処理は、筒状成形体を成形型に収容したまま実施しても良く、あるいは筒状成形体を成形型から取り出してから実施しても良い。
【0107】
以上の工程により、例えば、図1に示すような外表面を有するセラミック製の筒状構造体が得られる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の実施例について、詳しく説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)
以下の方法により、図4に示す構造の成形型を製作した。
【0110】
まず、多数の正方形状セグメント板を準備した。各セグメント板は、図5に示すような2つの部材(石膏)を組み合わせることにより、中央部に正六角形状の貫通孔が形成される構造を有する。セグメント板の寸法形状は、全て同じとした。すなわち、各セグメント板は、一辺の長さが150mmで、厚さが3mmであり、貫通孔の正六角形の一辺の長さは、50mmとした。
【0111】
次に、各セグメント板を、直前のセグメントに対して積層軸の周りに時計回りに4.5゜ずつ回転させて、100枚のセグメント板を積層した。これにより、各セグメント板の貫通孔が連通され、収容部が形成された。積層方向に対して垂直な面において、収容部を構成する内壁部に外接する円の直径は、約87mmであった。
【0112】
成形型の高さは、約300mmであった。
【0113】
(実施例2)
次に、実施例1で組み立てた成形型を用いて、セラミック製の筒状構造体を製作した。
【0114】
まず、筒状構造体用のスラリーを、以下の手順で調製した。
【0115】
平均粒径が1μmの窒化珪素粒子、平均粒径が1μmのアルミナ粒子、および平均粒径が1μmのイットリア粒子を、90:3:5(重量比)となるように混合した。次に、この混合物に対して、80wt%の水を添加し、ボールミルにより半日以上混合した。
【0116】
混合後、得られたスラリーを減圧処理し、脱泡した。
【0117】
次に、このスラリーを、前述の成形型の収容部に注入した。注入後、約5分間静置した。これにより、スラリーは、収容部の内壁部に接触した状態で、約5mmの厚さで固化した。この状態で24時間乾燥した。
【0118】
次に、成形体を成形型から取り出し、焼成処理を行った。焼成処理は、9気圧の窒素雰囲気下、1800℃で8時間実施した。
【0119】
これにより、図1に示すような外表面を有する筒状構造体が得られた。得られた筒状構造体の外径(最大寸法)は、約90mmであり、内径は、約68mmであり、肉厚は、約4mmであった。得られた筒状構造体において、各六角形状セグメント段の一辺の長さは、42mmであった。また、筒状構造体の内表面には、外表面の形状に対応した、波状の模様が認められた。
【0120】
(実施例3)
実施例1で組み立てた成形型を用いて、セラミック製の筒状構造体を製作した。
【0121】
まず、筒状構造体用のスラリーを、以下の手順で調製した。
【0122】
ケイ素粒子(#600)、平均粒径が1μmのスピネル粒子、および平均粒径が1μmのジルコニア粒子を、84:8:8(重量比)となるように混合した。次に、この混合物に対して、80wt%の水を添加し、ボールミルにより半日以上混合した。
【0123】
混合後、得られたスラリーを減圧処理し、脱泡した。
【0124】
次に、このスラリーを、前述の成形型の収容部に注入した。注入後、約5分間静置した。これにより、スラリーは、収容部の内壁部に接触した状態で、約5mmの厚さで固化した。この状態で24時間乾燥した。
【0125】
次に、成形体を成形型から取り出し、焼成処理を行った。焼成処理は、2段階で実施した。第1段階の焼成処理は、9気圧の窒素雰囲気下、1500℃で2時間実施した。これにより、成形対中のケイ素は、窒化ケイ素に変化した。第2段階の焼成処理は、9気圧の窒素雰囲気下、1750℃で8時間実施した。これにより、窒化ケイ素が緻密化された。
【0126】
(実施例4)
外表面が略正六角形状の断面を有する第1の部分と、外表面が略円形の断面を有する第2の部分と、外表面が略正六角形状の断面を有する第3の部分と、外表面が略円形の断面を有する第4の部分とが順次接続された、セラミック製の筒状構造体を製作した。
【0127】
成形型は、実施例1と同様の方法により組み立てた。ただし、この実施例4では、実施例1で使用した第1の成形型の上部に、貫通孔が直径約80mmφの円形状を有する第2のセグメント板(縦150mm×横150mm×厚さ75mm)を順次置載して、第2の部分を構成した。さらに、その上には、第1の成形型と同様の第3の成形型を設置した。また、その上には、第2のセグメント板と同様の構造を有する第4のセグメント板を多数設置し、第4の部分を構成した。各部材は、貫通孔の中心軸を積層方向に合わせて積層し、これにより、各部分の収容部は、中心軸に沿って揃うように構成された。
【0128】
第1の成形型および第3の成形型の長さは、いずれも約75mmとした。成形型全体の全長は、約300mmであった。
【0129】
次に、この成形型を使用して、実施例2と同様の方法により成形体を形成し、その後、焼成処理を行った。
【0130】
これにより、外表面が略正六角形状の断面を有する第1の部分と、外表面が略円形の断面を有する第2の部分と、外表面が略正六角形状の断面を有する第3の部分と、外表面が略円形の断面を有する第4の部分と、を順次有するセラミック製の筒状構造体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、例えば、薄肉かつ複雑形状の筒状セラミック製品または筒状金属製品等の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
100 本発明による筒状構造体
101 延伸軸
103 上面
105 貫通流路
109 下面
110 内表面
125 角部
130(130−1〜130−n) セグメント段
140 外表面
150(150−1〜150−6) 螺旋状の軌跡
200 本発明による成形型
203 上面
209 下面
220 貫通孔
225 頂点
230(230−1〜230−n) セグメント板
230A、230B 部材
240 外表面
250(250−1〜250−6) 螺旋状の軌跡
260 収容部
270 内壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸軸を有する筒状構造体を成形するための成形型であって、
当該成形型は、少なくとも3つ以上のセグメント板を前記延伸軸の方向に積層した第1の部分を有し、
各セグメント板は、貫通孔を有し、該貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、少なくとも3つの角部を有する多角形状を有し、
各セグメント板を前記延伸軸の方向に積層することにより、前記貫通孔が連通され、前記第1の部分に第1の収容部が形成され、
各セグメント板は、該セグメント板の貫通孔の少なくとも一つの角部が、前記延伸軸の方向において、隣接するセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されることを特徴とする成形型。
【請求項2】
各セグメント板は、該セグメント板の貫通孔の全ての角部が、前記延伸軸の方向において、隣接するセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されることを特徴とする請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
各セグメント板の貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の成形型。
【請求項4】
前記第1の部分において、各セグメント板の貫通孔は、隣接するセグメント板の貫通孔に対して、前記延伸軸の周りにある角度(α)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されることを特徴とする請求項3に記載の成形型。
【請求項5】
前記角度(α)は、1゜〜25゜の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の成形型。
【請求項6】
前記第1の部分において、各セグメント板は、隣接するセグメント板に対して、前記延伸軸の周りに回転した状態で配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項7】
各セグメント板の前記延伸軸に対して垂直な面の形状および寸法は、実質的に等しいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項8】
各セグメント板の前記貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、四角形、五角形、六角形、八角形、または十二角形の形状を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項9】
前記第1の収容部は、前記延伸軸の方向から見たとき、5mm〜500mmの円と内接または外接する寸法を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項10】
前記第1の部分において、最上部のセグメント板を第1番目のセグメントとし、該第1番目のセグメントの直下のセグメント板を第2番目のセグメントとし、以下同様に、第3番目のセグメント、第4番目のセグメント...第i番目のセグメント...を規定し、最下部のセグメント板を第n番目のセグメントとしたとき、
第1番目のセグメントの貫通孔の一つの角部を第1選択角部として選定し、第2番目のセグメントの貫通孔の角部のうち、前記第1選択角部に最も近接する角部を第2選択角部として選定し、以下同様にして、第1番目のセグメントの貫通孔から第n番目のセグメントの貫通孔まで、n個の選択角部を選択し、各選択角部を順次結んだとき、前記延伸軸を中心とした螺旋状の軌跡が得られることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項11】
当該成形型は、さらに、少なくとも3つ以上の第2のセグメント板を前記延伸軸方向に積層した第2の部分を有し、
前記第2のセグメント板の各々は、第2の貫通孔を有し、該第2の貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、少なくとも3つの角部を有する多角形状を有し、
前記第2のセグメント板の各々を前記延伸軸方向に積層することにより、前記第2の貫通孔が連通されて、前記第2の部分に、前記第1の収容部と連通する第2の収容部が形成され、
前記第2の部分において、前記第2のセグメント板の各々は、該第2のセグメント板の貫通孔の少なくとも一つの角部が、前記延伸軸の方向において、隣接する第2のセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置され、
前記第1の収容部と前記第2の収容部は、形状および/または寸法が異なることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項12】
前記第2のセグメント板は、該第2のセグメント板の貫通孔の全ての角部が、前記延伸軸の方向において、隣接する第2のセグメント板の貫通孔の角部と重ならないようにして配置されることを特徴とする請求項11に記載の成形型。
【請求項13】
各第2のセグメント板の貫通孔は、前記延伸軸の方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状を有することを特徴とする請求項11または12に記載の成形型。
【請求項14】
前記第2の部分において、各第2のセグメント板の貫通孔は、隣接する第2のセグメント板の貫通孔に対して、前記延伸軸の周りにある角度(β)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されることを特徴とする請求項13に記載の成形型。
【請求項15】
さらに、略円柱状の第3の収容部を有する第3の部分を有し、前記第3の収容部は、前記第1の収容部と連通されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項16】
延伸軸を有するセラミックまたは金属製の筒状構造体であって、
当該筒状構造体は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向の断面が多角形状の外表面を有するセグメント段が少なくとも3段以上積層された第1の部分を有し、
該第1の部分において、各セグメント段は、隣接するセグメント段に対して少なくとも一つの角部の位置がずれるように配置されていることを特徴とする筒状構造体。
【請求項17】
各セグメント段は、隣接するセグメント段に対して、全ての角部の位置がずれるように配置されていることを特徴とする請求項16に記載の筒状構造体。
【請求項18】
各セグメント段は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状の外表面を有することを特徴とする請求項16または17に記載の筒状構造体。
【請求項19】
前記第1の部分において、各セグメント段は、隣接するセグメント段に対して、前記延伸軸の周りにある角度(α)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されることを特徴とする請求項18に記載の筒状構造体。
【請求項20】
前記角度(α)は、1゜〜25゜の範囲であることを特徴とする請求項19に記載の筒状構造体。
【請求項21】
当該筒状構造体は、少なくとも100段以上のセグメント段を前記延伸軸の方向に積層した構成を有することを特徴とする請求項16乃至20のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項22】
各セグメント段は、貫通孔を有し、該貫通孔の形状および寸法は、実質的に等しいことを特徴とする請求項16乃至21のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項23】
各セグメント段の外表面の前記延伸軸の方向に垂直な断面は、四角形、五角形、六角形、八角形、または十二角形の形状を有することを特徴とする請求項16乃至22のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項24】
各セグメント段の外表面は、前記延伸軸の方向から見たとき、直径が5mm〜500mmの円と内接または外接することを特徴とする請求項16乃至23のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項25】
各セグメント段は、実質的に同一の厚さを有することを特徴とする請求項16乃至24のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項26】
前記第1の部分において、最上部のセグメント段を第1番目のセグメントとし、該第1番目のセグメントの直下のセグメント段を第2番目のセグメントとし、以下同様に、第3番目のセグメント、第4番目のセグメント...第i番目のセグメント...を規定し、最下部のセグメント段を第n番目のセグメントとしたとき、
第1番目のセグメントの一つの角部を第1選択角部として選定し、第2番目のセグメントの角部のうち、前記第1選択角部に最も近接する角部を第2選択角部として選定し、以下同様にして、第1番目のセグメントから第n番目のセグメントまで、n個の選択角部を選択し、各選択角部を順次結んだとき、前記延伸軸を中心とした螺旋状の軌跡が得られることを特徴とする請求項16乃至25のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項27】
当該筒状構造体は、前記第1の部分の内表面に、前記第1の部分の外表面の形状に対応する凹凸面を有することを特徴とする請求項16乃至26のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項28】
当該筒状構造体は、さらに、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向の断面が多角形状の外表面を有する第2のセグメント段が、前記延伸軸の方向に少なくとも3段以上積層された第2の部分を有し、
該第2の部分において、第2のセグメント段の各々は、隣接する第2のセグメント段に対して少なくとも一つの角部の位置がずれるように配置され、
前記第1の部分と第2の部分は、形状または寸法が異なることを特徴とする請求項16乃至27のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項29】
各第2のセグメント段は、隣接する第2のセグメント段に対して、全ての角部の位置がずれるように配置されていることを特徴とする請求項28に記載の筒状構造体。
【請求項30】
各第2のセグメント段は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向から見たとき、寸法および形状が実質的に同一の多角形状の外表面を有することを特徴とする請求項28または29に記載の筒状構造体。
【請求項31】
前記第2の部分において、各第2のセグメント段は、隣接する第2のセグメント段に対して、前記延伸軸の周りにある角度(β)だけ回転することにより、位置がずれるように配置されることを特徴とする請求項30に記載の筒状構造体。
【請求項32】
さらに、前記第1の部分と一体化された第3の部分を有し、
該第3の部分は、前記延伸軸の方向に対して垂直な方向の断面が円または楕円形状の外表面を有することを特徴とする請求項16乃至31のいずれか一つに記載の筒状構造体。
【請求項33】
セラミックまたは金属製の筒状構造体を製造する方法であって、
(a)収容部を有する成形型を組み立てるステップと、
(b)前記成形型の収容部で、成形体を形成するステップと、
を有し、
前記成形型は、請求項1乃至15のいずれか一つに記載の成形型であることを特徴とする方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−167861(P2011−167861A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31296(P2010−31296)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー技術開発プログラム/革新的部材産業創出プログラム/革新的省エネセラミックス製造技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】