答案分類支援システム
【課題】記述式問題テストで、答案を所定の解答類型に分類する答案分類支援システムを提供する。
【解決手段】答案を画像データとして識別符号を関連付け記憶した答案データ記憶部と、二択の質問文の複数の質問文群を記憶したチェックボックスシート記憶部と、質問文群と、識別符号と、答案の画像データを端末装置に送出する送出部と、識別符号とともに質問文群に対するチェックパターンのデータを端末装置から受信し識別符号とチェックパターンを関連付けてチェックパターン記憶部に記憶させる受信部と、を含み、チェックパターンは質問文群の質問文に対応する肯定、否定、保留のいずれかの回答の集合で、記憶されたチェックパターンのうち保留を含むチェックパターンに対応する識別符号を検索する検索部と、送出部に対して、検索部で検索された識別符号と関連付けられた画像データを質問文群とともに端末装置に再送出するよう仕向ける再送出部と、を更に含む。
【解決手段】答案を画像データとして識別符号を関連付け記憶した答案データ記憶部と、二択の質問文の複数の質問文群を記憶したチェックボックスシート記憶部と、質問文群と、識別符号と、答案の画像データを端末装置に送出する送出部と、識別符号とともに質問文群に対するチェックパターンのデータを端末装置から受信し識別符号とチェックパターンを関連付けてチェックパターン記憶部に記憶させる受信部と、を含み、チェックパターンは質問文群の質問文に対応する肯定、否定、保留のいずれかの回答の集合で、記憶されたチェックパターンのうち保留を含むチェックパターンに対応する識別符号を検索する検索部と、送出部に対して、検索部で検索された識別符号と関連付けられた画像データを質問文群とともに端末装置に再送出するよう仕向ける再送出部と、を更に含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を所定の解答類型に分類するための答案分類支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テストの受験者は問題を提示されるとこの問題に対する解答を検討しこれをまとめて答案に表現する。例えば、各種学校の入学テストなどのように、受験者の入学を許可するかどうかの判断材料の提供を目的とするテストでは、答案を採点しこれらを序列化できることが求められる。
【0003】
ところで、テストの採点方法において、限られた採点時間の中では、問題に対する正答を答案に表現できているかだけを採点の対象とすることも多い。その一方で、受験者を多面的に評価・判断するためにも、1つの問題に対して複数の中間結果、すなわち正答かどうかだけでなく、その途中の結果についても採点の対象とすることも行われる。かかる場合、最終的な結果までの複数の中間結果をあらかじめ予測し、結果毎に段階的に点数を与えて採点を行う。
【0004】
受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストでは、問題の作成の仕方次第ではあるものの、一般的に、最終的な結果までの複数の中間結果をあらかじめ予測しておくことは困難である。特に、自由な答案の記述を求め得るとの記述式問題テストの特徴を活かせば活かすほど、その予測は困難となる。そこで、各中間結果についての概念的なガイドラインを作成して、判断の裁量を採点者に与え、その主観で採点をさせてしまうことも行われる。すると、同じ答案であっても少なからず採点者毎に採点結果に差が出てしまう。特に、受験者の数が多く答案の数が多いにも関わらず、採点結果を一定時間内に出さねばならないような場合にあっては、多数の採点者を採用せざるを得ず、採点者毎の三者三様の主観が重畳されて、正確な採点を困難にしてしまうといった問題が生じていた。
【0005】
これに対して特許文献1は、採点結果を収集するシステムにおいて、1の採点者の採点結果を他の採点者の採点根拠を参照しながら再評価し、これを修正して複数の採点者間の主観差を排することの出来る答案採点支援システムを開示している。複数の採点者間で採点結果が一致せず、採点結果の客観性に疑問がある場合には、他の採点者の採点根拠を参照しながら採点結果を再検討し、一度登録した採点結果を修正できるのである。すなわち、各中間結果についての概念的なガイドラインを共有できるのである。これにより、自らが行った主観による採点結果について、様々な視点から再評価できると述べている。
【0006】
一方、国や地方自治体の教育指針を定めるための調査テストでは、過去の教育の結果と今後の教育の課題とを分析するための判断材料の提供が求められる。このような調査テストであっても、記述式問題テストが採用される。問題に対する所定の結果に至るまでの受験者の思考過程を細かく分析できるよう、問題が綿密に作成された上で、調査対象としての母集団により作成された答案が集められる。これらは解答類型毎に分類され、解答類型毎に分類された答案の数などが統計処理されて、前記した判断材料となるのである。
【0007】
このような調査テストでは、問題に対する正答を答案に表現できているか否かだけを分類の対象とするものではないため、解答類型が非常に多くなりがちである。また、受験者の数が非常に多く、答案の数も多くなる。例えば、受験者の数が数十万人、数百万人といったことさえもある。これに対して、特許文献2や3に開示されたような、肯定若しくは否定のみで答え得る答案に関連する複数の質問文からなるチェックボックスを用いた答案分類支援システムが提案されている。このチェックボックスに与えられた肯定か否定かのチェックの組合せであるチェックパターンに基づいて、多数の答案を多数の解答類型に素早く、しかも分類作業を行う者(以下において、これを分類者と称する。)の数を増やしても客観的に分類でき得るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−277086号公報
【特許文献2】特開2009−229606号公報
【特許文献3】特開2010−078637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したような調査テストにおける特許文献2又は3の答案分類支援システムに特許文献1のシステムを適用しようとすれば、複数の分類者間でチェックパターンが異なったときに他の分類者の根拠を参照しながらチェックパターン結果を再検討し、一度登録したチェックパターンを修正して、より客観的に分類でき得る。しかしながら、1つの答案を複数の分類者で必ず複数回だけ分類しなければ客観性を高めることは出来ず、多くの答案を処理することはできない。
【0010】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を所定の解答類型に分類するためのより効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を複数の解答類型に分類するための答案分類支援システムであって、前記答案のそれぞれを画像データとしてこれを識別するための識別符号を関連付けて記憶した答案データ記憶部と、肯定又は否定の二択の質問文の複数からなる質問文群を記憶したチェックボックスシート記憶部と、前記質問文群とともに、前記識別符号及びこれに関連付けされた前記答案の前記画像データを順次、端末装置に向けて送出する送出部と、前記識別符号とともに前記質問文群に対するチェックパターンのデータを前記端末装置から受信し前記識別符号及び前記チェックパターンを関連付けてチェックパターン記憶部に記憶させる受信部と、を含み、前記チェックパターンは前記質問文群の前記質問文のそれぞれに対応する肯定、否定又は保留のいずれかからなる回答の集合であり、前記チェックパターン記憶部に記憶された前記チェックパターンのうち保留を含む前記チェックパターンに対応する前記識別符号を検索する検索部と、前記送出部に対して、前記検索部で検索された前記識別符号及びこれに関連付けられた前記画像データを順次、前記質問文群とともに前記端末装置に向けて再送出するよう仕向けさせる再送出部と、を更に含むことを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、受験者の想起した解答が表現された答案を複数の解答類型に分類する調査テストの如きであっても、1つの答案を複数の分類者で必ず複数回だけ分類する必要なく、分類の客観性を高めることができるのである。すなわち、より効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを与えるのである。
【0013】
上記した発明において、前記再送出部の起動に先立って、前記質問文群の前記質問文毎の修正を外部入力させて前記チェックボックスシート記憶部に修正質問文群を記憶させる追加入力部と、を更に含み、前記再送出部は、前記チェックボックスシート記憶部の前記修正質問文群を前記送出部に対して再送出するよう仕向けさせることを特徴としてもよい。
【0014】
かかる発明によれば、質問文で求める内容を実質的に変更することなく表現などを変更した修正質問文にて質問文群を再構成できるので、再送出部による仕向けにより送出部から再送出されて受信されるチェックパターンは、既に、チェックパターン記憶部に記憶されたチェックパターンと相関を得ることが出来て、保留を含むチェックパターンの数を効率的に減らすことが出来得る。すなわち、より効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを与えるのである。
【0015】
上記した発明において、前記質問文群の前記質問文の個数をnとし、前記解答類型をm個(m>2)とすると、2n>mを満たすことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、得られうるチェックパターンの数は2n個であって、あらかじめ予測された解答類型に該当しないチェックパターンを含む。つまり、かかるチェックパターンを有する答案があるとき、この答案についての解答類型を分析することで、あらかじめ予測し得なかった解答類型までも分類し得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図2】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図3】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図4】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図5】本発明による答案分類支援システムを使用した場合の分類者の判断技術について説明する図である。
【図6】本発明による答案分類支援システムのブロック図である。
【図7】答案分類支援システムで使用される問題文の図である。
【図8】答案分類支援システムで使用される第1のチェックボックスシートの図である。
【図9】答案分類支援システムで使用される第2のチェックボックスシートの図である。
【図10】答案データを示す図である。
【図11】答案データを示す図である。
【図12】各答案データについてのチェックパターンの図である。
【図13】各答案データについてのチェックパターンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明による答案を分類するための答案分類支援システムの原理について説明する。
【0018】
答案分類処理システムによる答案の分類に先だって、管理者は記述式問題テストの問題文を複数の受験者に与え、同問題文に対する答案をそれぞれの受験者に作成させる。各受験者は、同問題文に対する解答を想起し、これを各受験者の技量の範囲において解答欄に記述して答案を作成する。つまり、本明細書における解答とは、各受験者の想起した問題文に対する思想そのものであり、答案とは、かかる思想に基づいて書面上に記述された情報をいう。
【0019】
答案の分類は、複数のチェックボックスシートを用いた分類方法により行われる。チェックボックスシートとは、肯定若しくは否定のみで答え得る答案に関連する複数の質問文からなる質問文群と、各質問文に対する肯定及び否定の旨の回答を記載するチェック欄(チェックボックス)とを含む情報群をいう。
【0020】
管理者は、受験者に作成させた答案をサーバコンピュータに画像データとして記憶させ、これを複数の分類者に割り振るべく、各分類者の操作するクライアントコンピュータに送出する。各分類者は、サーバコンピュータより自らの操作するクライアントコンピュータに送出されて自分に割り振られた答案の各々について、サーバコンピュータより送信されたチェックボックスシートの内容に基づいて、クライアントコンピュータ上に表示された質問文全てに対して、肯定か否定かを各チェック欄にチェックを付すことにより回答する。かかる各チェック欄へのチェックの結果として得られる、質問文全てに対する肯定か否定かのチェックの組合せ、すなわち回答の集合をチェックパターンという。サーバコンピュータは、このチェックパターンに基づいて答案を分類する。例えば、ある模範答案とチェックパターンが同一である答案は、当該模範答案の類型に分類され得る。かかる分類結果は、過去の教育の結果と今後の教育の課題とを分析するための判断材料とされ得る。
【0021】
図1に示すように、本発明において、第1のチェックボックスシート10(CBS1)は、2つのチェック項目CB1及びCB2を含み、それぞれ肯定(Y)若しくは否定(N)のみで答え得る答案に関連する質問文CQ1及びCQ2と、各質問文に対し肯定(Y)、否定(N)若しくは保留(P)を入力するチェック欄(Y、N、P)とからなる。また、図2に示すように、第2のチェックボックスシート11(CBS2)は、n個のチェック項目CB1〜CBnを含み、肯定(Y)若しくは否定(N)のみで答え得る答案に関連する質問文CQ1〜CQnと、各質問文に対するチェック欄(Y、N、P)とからなる。質問文CQ1〜CQnは、肯定又は否定を選択する判断が容易な内容であることが好ましい。即ち、質問文は、特定の内容が答案に記述されているかを実質的に判断するのではなく、答案の記載を形式的に判断できるものが好ましい。これにより、各分類者の主観差を排した分類結果を得やすくなる。
【0022】
ここで、複数の分類者のうちの1人(以下、分類者甲と称する)が、順次、自分に割り振られる答案TA1〜TAi(iは受験者総数より小である)について質問文群に回答し、これを分類する場合について説明する。
【0023】
図1を参照すると、まず、ステップ1において、分類者甲は,サーバコンピュータから自分のクライアントコンピュータに割り振られた各答案TA1〜TAiについて、第1のチェックボックスシート10の質問文CQ1及びCQ2について回答する。即ち、各チェック項目CB1、CB2について、「Y(肯定)」、「N(否定)」、「P(保留)」の3つの選択肢のうちのどれか1つの答えを選択し、チェック欄にチェック、すなわち回答するのである。ステップ1では、ステップ2で再度、回答処理する答案の数を減じて、効率的に分類を行うことを主目的としている。従って、ステップ1で分類できる類型は、ステップ2で分類できる類型よりも少なく、チェック項目数も少ない。ここでは、例えば、質問文CQ1及びCQ2の内容は、ともに単独のチェック項目によってそれぞれ類型1及び類型2に答案を択一的に分類できるように作成される。クライアントコンピュータから受信した回答結果に基づき、サーバコンピュータは、質問文CQ1に対して「Y」と回答された答案を類型1へ、質問文CQ2に対して「Y」と回答された答案を類型2へそれぞれ分類する。上記したように、質問文CQ1とCQ2は択一関係にあるので質問文CQ1及びCQ2の両方に対して「Y」が選択されることはない。
【0024】
上記したように、質問文CQ1及びCQ2は肯定又は否定を選択する判断を容易とするような内容であることが好ましい。しかし、答案に記載されている内容によっては、質問文CQ1又はCQ2に対する答えの判断に分類者甲が迷いを生じることがある。かかる場合にチェック欄が「Y」及び「N」しかない場合、分類者甲は「Y」又は「N」のどちらかを迷いながらも選択せざるを得ない。即ち、分類者甲の独自の判断によって「Y」又は「N」を選択するため、仮に甲と異なる分類者乙により同一の答案について回答した場合に、質問文CQ1及びCQ2に対する判断が異なることになる。つまり、チェック欄が「Y」及び「N」しかない場合、分類者甲の独自の判断に依存したチェックパターンを使用することになるために画一的な分類処理が行えない。本システムにおいては、このような判断に迷いを生じる場合に分類者甲に「P」を選択させ、回答結果に「P」を含む答案を類型に分類せずに持ち越す。よって、「Y」と「N」との組合せからなるチェックパターンにより答案を分類処理するに際し、同処理が分類者甲の独自の判断に依存することを防止し、画一的な分類処理を図れる。
【0025】
ここで、図5(a)に示すように、答案TA1乃至TA3、TA6及びTA7のそれぞれについて、質問文CQ1に対して分類者甲が回答する場合を考える。答案TA1は「Y」と容易に判断し得る範囲である線分Y−Ys上に位置するので分類者甲は答えの判断に迷わない。点Ysは、分類者甲が「Y」と判断できる限界を意味する。また、答案TA2は「N」と容易に判断できる範囲である線分N−Ns上に位置するので判断に迷わずに「N」と回答される。点Nsは、分類者甲が「N」と判断できる限界を意味する。これに対して、答案TA3、TA6及びTA7については、線分M1−M2上には位置するものの、線分Y−Ys上に位置するか、或いは線分N−Ns上に位置するかは必ずしも明らかではなく、判断に迷う。例えば記載が不明瞭で分類者甲がその記載から読み取った内容に自信が持てない場合がある。このような場合に、分類者甲の独自の判断によって例えば答案TA3について「N」などと回答されてしまうことを防ぐため、「P」なる選択肢を予め用意し、分類者甲に同答案について「P」を選択させる機会を与えるのである。その結果、質問文CQ1に対して、分類者甲は、答案TA1について「Y」、答案TA2について「N」、答案TA3、TA6及びTA7について「P」と回答するのである。
【0026】
再び図1を参照すると、各答案TA1〜TAiは、(CB1、CB2)に対応するチェックパターンが(Y、N)ならば類型1に分類され、(N、Y)ならば類型2に分類される。チェックパターンがそれ以外{(P、Y)、(P、N)、(Y、P)、(N、P)、(P、P)、(N、N)}の場合、対応する答案は類型に分類されない。なお、類型1と類型2は択一関係となるように質問文CQ1及びCQ2が作成されているため、チェックパターン(Y、Y)はあり得ない。
【0027】
ステップ1において、答案TA1は類型1に、答案TA2は類型2にそれぞれ分類され、ステップ2では処理されない。答案TA3、TA6及びTA7は(P、P)のチェックパターンであるため、ステップ2で再度、処理される。チェックパターンが(N、N)となった答案TA4などもステップ2で再度、処理される。
【0028】
次に、図2に示すように、ステップ2では、分類者甲は、ステップ1で持ち越された答案、すなわち、答案TA3、TA6及びTA7や、答案TA4について、第2のチェックボックスシート11に従って処理し、クライアントコンピュータに入力して回答する。第2のチェックボックスシート11はn個のチェック項目CB1〜CBn(2<n)を有し、チェック項目CB1及びCB2のそれぞれに対応する質問文CQ1及びCQ2は、第1のチェックボックスシート10のそれと共通である。数少ない質問文によって効率よく答案の分類を図るステップ1と異なり、ステップ2において使用されるチェック項目CB3〜CBnにおける各質問文CQ3〜CQnは、ステップ1において使用する質問文CQ1及びCQ2に比べて、多数のチェック項目の組合せによって初めて答案を分類し得る類型に分類するために必要な質問文群である。これらの質問文群は、受験者の作成した答案が、問題文から予想される複数の答案の類型のうち最も近い類型に分類され得るように管理者によって作成される。例えば、ある質問文群は、これによって正答の記載された答案について回答をした場合の回答結果(チェックパターン)が正答を示す模範答案の回答結果と同一となるように作成される。また、ある質問文群は、これによってある典型的な誤答を記載された答案について回答をした場合の回答結果が、その典型的な誤答の答案例の回答結果と同一となるように作成される。なお、ステップ1において回答結果が「Y」又は「N」であるチェック項目については、ステップ2における再度の回答は不要としてもよい。
【0029】
ステップ1において「P」を選択されたチェック項目について、クライアントコンピュータは分類者甲にステップ2において再度の回答を要求する。再度の回答を行うに当たって、分類者甲は図5(a)に示すように、一旦「P」を選択されて持ち越しとなった答案TA3、TA6、TA7について、質問文CQ1に対して「Y」又は「N」と回答できないか見直すことになる。見直すにあたり、分類者甲に新たな情報が与えられなければ「P」を選択した判断は変わらない。最初に「P」と回答した後に新たな情報として分類者甲に与えられるのは、ステップ1において「P」と回答した後に回答を行った答案群のみである。分類者甲は、多数の答案同士の相対的な比較をしながら回答を進めることにより答えを選択する判断技術の向上を図ることになる。かかる判断技術の向上に基づき、図5(b)に示すように、分類者甲は、質問文CQ1に対する回答が、線分Y−Ys上に位置するか、線分N−Ns上に位置するかを判断することができるようになる。そして、分類者甲は、ステップ1において判断に迷った答案TA3、TA6、TA7のそれぞれについて、質問文CQ1に対する答えがそれぞれ線分Y−Ys上、線分Ys−Ns上、線分N−Ns上に位置することを認識できる。
【0030】
例えば、当初意味を読み取れなかった答案の記載について、多数の答案と相対的に比較した結果、ようやく意味が明らかになる場合などが想定され得る。つまり、ステップ1に比べて「P」を選択する幅が減少したのである。特に、例えば小学校の低学年の児童のように答案の記述力が低かったり、分類者と離れた感覚を持ち合わせていたりする受験者の答案を対象とする場合、答案に記載された内容の判断をしづらい場合が多い。このような場合に、従来であれば、例えば予想答案との比較などによって、問題文の作成者側の視点から受験者が答案に記述しようとしたものを読み取ろうとしていた。そのため、受験者と分類者との認識の差異により誤解を含む場合があった。ところが、本システムにおいては多数の答案を相対的に比較することにより受験者が答案に記述しようとした解答を読み取ろうとする。多数の受験者によって記載された答案を比較対象とするため、その多数の受験者達と、これに属する1人の受験者との感覚との差異は小さく、その1人の受験者の答案に記述しようとした解答の意図を拾い上げることが容易になるのである。このようにして、ステップ1において「P」とされたチェック項目についても、ステップ2で新たに「Y」及び「N」と判断され得る。ステップ2において質問文に対して肯定か否定かの判断に迷いを生じる答案TA6について、分類者甲は答えに「P」を選択し回答する。
【0031】
図5において、この迷いを生じる範囲を領域Uと定義する。領域Uは、分類者甲の判断「Y」及び「N」との間に存在する。本システムでは、ある質問文に対して迷いを生じる答案について「P」を選択することで回答結果を保留する一方で、「Y」あるいは「N」を選択して回答結果が確定した答案については、分類者同士で判断基準を擦り合わせることなく主観の差を縮めることができる。各分類者は、判断基準を多数の受験者によって記載された答案によって修正できるからである。つまり、仮に分類者甲と分類者乙とが同一の答案について回答し、さらに両者の間で「Y」と「P」との異なる判断がなされるような場合であっても、「P」と判断した後者については再度答えを選択し、「Y」と判断されるので最終的に同一の回答結果となる。よって、仮に分類者乙によって同一の答案について回答されたとしても「Y」と「N」とが入れ替わる可能性は低いのである。また、同一の質問文に対して多数の答案についての答えを選択した経験により、この領域Uの幅は減少する。そのような領域Uの幅の減少は、判断技術の向上(習熟度の向上)を意味する。つまり、分類者甲は、答案の記載から、問題文に対して受験者達がどのように解答しようとしているかを理解し、解答の意図を読み取ることが容易になる。なお、「Y」か「P」かの選択、又は「N」か「P」かの選択は、分類者甲の独自の判断によるが、これは上記した「P」を選択する領域Uの幅についての個人差の存在、すなわち答えを選択する習熟度についての個人差の存在を意味する。このようにして「Y」と「N」のみからなる回答結果については、分類者甲の独自の判断に依存しないようにできるのである。そのため、「Y」と「N」との組合せのみからなるチェックパターンに基づく分類処理は分類者甲の独自の判断に依存せず、分類処理に一定の客観性をもたせ得るのである。
【0032】
更に、ステップ2において、サーバコンピュータは、図3に示すように答案TA3〜TAiのそれぞれに対応するチェックパターンにより、答案TA3〜TAiを分類処理する。回答結果のうちいずれかに「P」のある答案は持ち越しとされる。残った答案(回答結果に「P」のない答案)のうち、チェック項目CB1の回答結果を「Y」とする答案は類型1に分類される。さらに、残った答案のうち、チェック項目CB2の回答結果を「Y」とする答案は類型2に分類される。CB1及びCB2がともに「N」で、CB3〜CBnのチェックパターンが所定のパターンに合致した答案はそれぞれ類型3〜類型m−1に分類される。所定のパターンのいずれにも該当しない答案は類型m(m≦2n)に分類され。例えば、ある答案は「正答」という類型に分類される。また、ある答案は、同答案の序盤に記載されている一部の情報が「正答」という類型に分類される答案に記載されている情報と同一であるものの論理展開を誤っているため、「論理展開の誤り」という類型に分類される。
【0033】
ステップ3において、図4に示すように、分類者甲はステップ2で持ち越しとされた(回答結果に「P」のあった)答案TA4、TA6及びその他の答案群について、再び第2のチェックボックスシート11を使用して「P」を付したチェック項目のみについて答えを選択し、これをクライアントコンピュータに入力して回答する。本ステップでは、「P」を付した項目のみについての回答を得ることが目的であるため、ステップ2と同一の第2のチェックボックスシート11を使用すれば足りるのである。ここで、ステップ2と同様に、一度「P」を選択されたチェック項目であっても、同項目についての分類者甲の判断技術(習熟度)が向上することによって、迷わず「Y」又は「N」と判断され、回答される場合がある。このように回答された答案は、サーバコンピュータにおいてステップ2と同様に分類される。
【0034】
以上のように答案の分類処理をすると、ステップ1においてはチェック項目の数が少なくて済む。また、ステップ3において、ステップ2で「P」を選択されたチェック項目についてのみ回答をすれば足りるので、回答処理の重複が少ない。また、「Y」と「N」のみの組合せからなるチェックパターンに基づく分類処理は分類者甲の独自の判断に依存しないので分類処理に、一定の客観性をもたせ得る。よって、答案の数が多い場合において複数の分類者によって回答を分担することで効率的な回答処理を行いつつ、分類処理にある一定の客観性を担保することができるのである。
【0035】
ここでは、分類者甲が同一の答案について保留した後に再度回答をする場合について説明したが、上記したように判断技術は多数の答案同士の相対的な比較により向上する。よって、あるステップで分類者甲及び乙が別々の答案について回答し、分類者甲により保留にされた答案について、次のステップで分類者乙が回答する場合についても全く同様に、分類処理に一定の客観性をもたせ得る。
【0036】
また、ステップ3において持ち越された答案については、特定の分類者丙・丁によって再度回答して所定の類型に分類し得る。例えば、複数の分類者甲・乙の担当した答案群のうち、ステップ3において持ち越された答案群のみを収集し、類型の意味とこれに分類される答案についての理解の深い1人若しくは同一の判断基準を共有する少人数の分類者丙・丁によって同答案に対する回答が行われる。この場合、図5(c)に示すように、分類者丙・丁の判断には「P」を選択する範囲がなく(領域Uの幅不存在)、線分Y−Ys上にある答案TA6を「Y」と判断できる。これにより、分類者毎に異なる回答結果となることを可及的に防止して一定の客観性を担保しつつ、しかも効率的に全ての答案を分類し得る。
【実施例】
【0037】
本発明による答案を分類するための答案分類支援システムの実施例について、図6乃至図13を用いて説明する。
【0038】
[システム構成]
図6に示すように、答案分類支援システム1は、インターネット回線やLAN(Local Area Network)等の通信回線20によって接続された複数のクライアントコンピュータ21及び問題作成者等の管理者によって使用されるサーバコンピュータ22を含む。サーバコンピュータ22は、記述式問題テストの問題文を記憶する問題文記憶領域24、チェックボックスシート記憶領域25、答案データ記憶領域26、類型記憶領域27、送出対象識別符号記憶領域28、回答結果記憶領域29などを有する記憶装置23を備える。また、サーバコンピュータ22は、モニタ22a及びキーボード22bを有するとともに、図示しないスキャナなどの入力装置を有する。また、クライアントコンピュータ21には、モニタ21a及びキーボード等の入力装置21bを備える。
【0039】
[問題文の作成]
図7に示すように、管理者は、「三平方の定理」に関する問題文qを作成する。問題文qは、三平方の定理の公式を使用すること及び一元二次方程式を解くことについての特定の受験者群の理解傾向を調査することを目的として作成される。問題文qの内容は、「直角三角形の直角を挟む2辺の長さがそれぞれ1cmと2cmである場合、斜辺の長さをxcmとしたときのxを方程式を立てて求めなさい。」であり、一元二次方程式を使って答えを導く過程の記述を促す問題文とされている。管理者は、かかる問題文qをサーバコンピュータ22のキーボード22b若しくは図示しないスキャナなどの入力装置から入力し、記憶装置23の問題文記憶領域24に記憶させる。
【0040】
[チェックボックスシートの作成]
図8に示すように、第1のチェックボックスシート50は、「Y」若しくは「N」のみで答えることのできる質問文CQ1及びCQ2とこれに対するチェック欄51(Y、N、P)とを表示した情報群である。質問文CQ1及びCQ2は、管理者によって作成される。質問文CQ1及びCQ2は、各分類者の独自の判断に依存しない回答結果を得られるように、肯定又は否定の判断を容易とし、一定レベルの分類者であればどの分類者によっても同一の答案に対しては同じ判断となり得るような内容とすることが好ましい。質問文CQ1及びCQ2の内容は、単独のチェック項目によって答案を分類できる類型に対応するよう作成される。本実施例では、「白紙答案」及び「答案として記載すべき内容と無関係な記載のみの答案」の2つの類型に分類するために「白紙答案か?」(CQ1)及び「答案として記載すべき内容と無関係な記載のみか?」(CQ2)の2つの質問文を設けている。第1のチェックボックスシート50は、各分類者によって回答に使用されるものである。チェック欄51の対応する位置にチェックを付すことで質問文CQ1及びCQ2に対する回答を「Y」、「N」、「P」の中から各分類者が選択できる。管理者によって作成された第1のチェックボックスシート50の内容は、記憶装置23のチェックボックスシート記憶領域25に記憶される。なお、質問文CQ1及びCQ2は互いに択一関係となるように作成されているため、第1のチェックボックスシート50に従って得たチェックパターンが(Y、Y)となることはない。
【0041】
図9に示すように、第2のチェックボックスシート60は、「Y」若しくは「N」のみで答えることのできる質問文CQ1乃至CQ7と、これに対するチェック欄61(Y、N、P)とを表示した情報群である。第2のチェックボックスシート60は、各分類者によって回答に使用されるものである。チェック欄61の対応する位置にチェックを付すことで質問文CQ1乃至CQ7に対する答えを「Y」、「N」、「P」の中から各分類者が選択できる。質問文CQ1乃至CQ7は、各分類者の独自の判断に依存しない回答結果を得られるように「Y」又は「N」の判断を容易とし、一定レベルの分類者であればどの分類者によっても同一の答案に対しては同じ選択結果となり得るような内容が好ましい。質問文CQ1及びCQ2の内容は、第1のチェックボックスシート50と同一である。質問文CQ1乃至CQ7は、問題文qから予想される複数の答案の類型のうち、受験者の答案がどの類型に最も近いかを、そのチェック(「Y」及び「N」)の組合せ、すなわちチェックパターンによって分類し得るように作成される。なお、予想される複数の答案には誤答も含まれる。
本実施例において、質問文CQ1乃至CQ7は、
CQ1:白紙答案か?
CQ2:答案として記載すべき内容と無関係な記載のみか?
CQ3:「x=」か「=x」の記載があるか?
CQ4:「22」か「4」の記載があるか?
CQ5:「√5」の記載があるか?
CQ6:「3」の記載があるか?
CQ7:式の記載があるか?
のように作成される。例えば図11(a)に示す答案T4について第2のチェックボックスシート60に表示された質問文群に分類者甲が回答したとする。このとき、それぞれの質問文CQ1乃至CQ7に対する回答を順に表示したチェックパターンは(N、N、Y、Y、Y、N、Y)となる。このチェックパターンは正答を示し、答案T4は「正答」という類型に分類できるのである(図13参照)。他の類型においても同様に、回答結果から得られるチェックパターンが各々の類型を示すチェックパターンに合致した場合に分類される。管理者は、作成された第2のチェックボックスシート60の内容を、記憶装置23のチェックボックスシート記憶領域25に記憶させる。
【0042】
[類型のチェックパターンの記憶]
管理者は、問題文qから、予想答案を作成する。管理者は、かかる予想答案に対して第2のチェックボックスシート60の質問文群をあてはめてチェックパターンを求め、同予想答案に対応する類型を示す符号を付して類型記憶領域27に記憶させる。
【0043】
[答案データの記憶]
管理者はN人(複数)の受験者に問題文qを与え、これに対する答案T1〜TNを得る。答案T1〜TNの記載された答案用紙群はサーバコンピュータ22の図示しないスキャナ等の入力装置などによって答案データ(画像データ)として読込まれる。読込まれた答案データは識別符号(1〜N)を付されて答案データA1乃至ANとして答案データ記憶領域26に記憶される。また、答案データA1乃至ANのうち、クライアントコンピュータ21へ送出すべき答案データに対応する識別符号は送出対象識別符号として送出対象識別符号記憶領域28に記憶される。この答案データA1乃至ANを答案データ記憶領域25に記憶させる段階において、答案データA1乃至ANに対応するすべての識別符号1〜Nが送出対象識別符号とされて送出対象識別符号記憶領域28に記憶される。
【0044】
[答案についての回答及び分類]
次に、答案分類支援システム1の使用方法を説明する。
【0045】
[回答処理ステップ1]
サーバコンピュータ22は、まず、各分類者の使用する各クライアントコンピュータ21より受信した回答要求信号に基づいて、それぞれのクライアントコンピュータ21に第1のチェックボックスシート50、答案データ及びこれに付された識別符号を順次送出する。ここで、送出される答案データは、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号を付されて、答案データ記憶領域26に記憶されている。送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号は、上記したように識別符号1〜Nである。よって、答案データA1〜AN全てが送出の対象となる。
【0046】
サーバコンピュータ22は、各クライアントコンピュータ21に答案データを送出する毎に、これに対応する識別符号を送出対象識別符号記憶領域28から消去させる。これによって、このステップ1において同一の答案について重複して回答を行わせることを避ける。
【0047】
一方、分類者甲の操作するクライアントコンピュータ21において、分類者甲は、回答要求信号をクライアントコンピュータ21からサーバコンピュータ22に向けて送信する。上記したように、回答要求信号に基づいてサーバコンピュータ22より順次送出される第1のチェックボックスシート50、答案データ及び識別符号がクライアントコンピュータ21で受信される。クライアントコンピュータ21は、受信された答案データに基づいて答案画像をモニタ21aに表示させるとともに、第1のチェックボックスシート50(CBS1)をモニタ21aに表示させる。分類者甲は、モニタ21aに表示された答案画像を対象に、第1のチェックボックスシート50上の質問文CQ1及びCQ2のそれぞれに対して、その回答として「Y」、「N」及び「P」の3つの選択肢から1つを選択する。そして、入力装置21bを使用してチェック欄51の対応する位置にチェックを付すことで選択した答えを表示させる。つまり、質問文CQ1及びCQ2に対する答えを入力して回答する。分類者甲による回答の完了した後、クライアントコンピュータ21は質問文CQ1及びCQ2に対する「Y」、「N」及び「P」のいずれかからなる回答の集合であるチェックパターン、すなわち回答結果に識別符号を付して、サーバコンピュータ22に返送する。他の分類者においても同様の回答が行われる。そして、サーバコンピュータ22においてこのような回答処理は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号がなくなるまで、つまり、全ての答案データを送出するまで続けられる。つまり、クライアントコンピュータ21においても同様の処理が複数回繰り返される。
【0048】
サーバコンピュータ22は、各分類者の操作するクライアントコンピュータ21から受信した回答結果を識別符号とともに、記憶装置23の回答結果記憶領域29に記憶させる。送出した全ての答案データに対する回答結果を記憶した後、サーバコンピュータ22は回答結果記憶領域29に記憶された回答結果のうち、チェックパターンが(N、N)のものとチェックパターンに「P」を含むものとを検索し、検索された回答結果に対応する識別番号を送出対象識別符号記憶領域28に記憶させる。これが、ステップ1において保留され、次のステップ2において回答処理を行う対象となる。ここで保留されない回答結果を得た答案データはそのまま後述する分類処理を行うことができる。
【0049】
[回答処理ステップ2]
サーバコンピュータ22は、ステップ1と同様に、各クライアントコンピュータ21より受信した回答要求信号に基づいて、それぞれのクライアントコンピュータ21に第2のチェックボックスシート60、答案データ、これに付された識別符号及びステップ1での回答結果(チェックパターン)を順次再送出する。ここで、再送出される答案データ及び回答結果は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号の付された答案データ及び回答結果である。送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号は、ステップ1においてチェックパターン(N、N)又はチェックパターンに「P」を含む回答結果に対応した識別符号である。
【0050】
サーバコンピュータ22は、各クライアントコンピュータ21に答案データを送出する毎に、これに対応する識別符号を送出対象識別符号記憶領域28から消去させる。これによって、このステップ2においても同一の答案について重複して回答を行わせることを避ける。
【0051】
ステップ1と同様に、回答要求信号に基づいてサーバコンピュータ22より第2のチェックボックスシート60、答案データ、識別符号及び回答結果が送出され、クライアントコンピュータ21で受信される。クライアントコンピュータ21は、受信された答案データに基づいて答案画像をモニタ21aに表示させるとともに、第2のチェックボックスシート60(CBS2)をモニタ21aに表示させる。分類者甲は、モニタ21aに表示された答案画像を対象に、第2のチェックボックスシート60上の質問文CQ1乃至CQ7のそれぞれに対して、その回答として「Y」、「N」及び「P」の3つの選択肢から1つを選択する。そして、入力装置21bを使用してチェック欄61の対応する位置にチェックを付すことで選択した答えを表示させる。つまり、質問文CQ1乃至CQ7に対する答えを入力して回答する。ただし、ステップ1で「Y」又は「N」の回答を入力されていた質問文については回答できないよう処理される。この場合、ステップ1の回答結果がそのまま引継がれる。分類者甲による回答の完了した後、クライアントコンピュータ21は質問文CQ1乃至CQ7に対する「Y」、「N」及び「P」のいずれかからなる回答の集合であるチェックパターン、すなわち回答結果に識別符号を付して、サーバコンピュータ22に返送する。他の分類者においても同様の回答が行われる。そして、サーバコンピュータ22においてこのような回答処理は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号がなくなるまで、つまり、ステップ1で保留となった答案データの全てを再送出するまで続けられる。
【0052】
サーバコンピュータ22は、各分類者の操作するクライアントコンピュータ21から受信した回答結果を識別符号とともに、記憶装置23の回答結果記憶領域29に上書きして記憶させる。送出した全ての答案データに対する回答結果を記憶した後、サーバコンピュータ22は回答結果記憶領域29に記憶された回答結果のうち、チェックパターンに「P」を含むものを検索し、検索された回答結果に対応する識別番号を送出対象識別符号記憶領域28に記憶させる。これが、ステップ2において保留され、次のステップ3において回答処理を行う対象となる。つまり、ここで保留されない回答結果を得た答案データはそのまま後述する分類処理を行うことができる。
【0053】
[回答処理ステップ3]
サーバコンピュータ22は、ステップ2と同様に、各クライアントコンピュータ21より受信した回答要求信号に基づいて、それぞれのクライアントコンピュータ21に第2のチェックボックスシート60、答案データ、これに付された識別符号及びステップ2での回答結果(チェックパターン)を順次再送出する。ここで、再送出される答案データ及び回答結果は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号の付された答案データ及び回答結果である。送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号は、ステップ2においてチェックパターンに「P」を含む回答結果に対応した識別符号である。
【0054】
サーバコンピュータ22は、各クライアントコンピュータ21に答案データを送出する毎に、これに対応する識別符号を送出対象識別符号記憶領域28から消去させる。これによって、このステップ3においても同一の答案について重複して回答を行わせることを避ける。
【0055】
ステップ2と同様に、回答要求信号に基づいてサーバコンピュータ22より第2のチェックボックスシート60、答案データ、識別符号及び回答結果がクライアントコンピュータ21で受信される。クライアントコンピュータ21は、受信された答案データに基づいて答案画像をモニタ21aに表示させるとともに、第2のチェックボックスシート60(CBS2)をモニタ21aに表示させる。分類者甲は、モニタ21aに表示された答案画像を対象に、第2のチェックボックスシート60上の質問文CQ1乃至CQ7のそれぞれに対して、その回答として「Y」、「N」及び「P」の3つの選択肢から1つを選択する。そして、入力装置21bを使用してチェック欄61の対応する位置にチェックを付すことで選択した結果を表示させる。つまり、質問文CQ1乃至CQ7に対する答えを入力して回答する。ただし、ステップ2で「Y」又は「N」の回答を入力されていた質問文については回答できないよう処理される。この場合、ステップ2の回答結果がそのまま引継がれる。分類者甲による回答の完了した後、クライアントコンピュータ21は質問文CQ1乃至CQ7に対する「Y」、「N」及び「P」のいずれかからなる回答の集合であるチェックパターン、すなわち回答結果に識別符号を付して、サーバコンピュータ22に返送する。他の分類者においても同様の回答が行われる。そして、サーバコンピュータ22においてこのような回答処理は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号がなくなるまで、つまり、ステップ2で保留となった答案データの全てを送出するまで続けられる。
【0056】
サーバコンピュータ22は、各分類者の操作するクライアントコンピュータ21から受信した回答結果を識別符号とともに、記憶装置23の回答結果記憶領域29に上書きして記憶させる。送出した全ての答案データに対する回答結果を記憶した後、サーバコンピュータ22は回答結果記憶領域29に記憶された回答結果のうち、チェックパターンに「P」を含むものを検索し、検索された回答結果に対応する識別番号を送出対象識別符号記憶領域28に記憶させる。
【0057】
[分類処理]
サーバコンピュータ22は、記憶装置23の回答結果記憶領域29に記憶された回答結果を基に答案データA1〜ANを分類処理する。ここで、送出対象識別符号記憶領域28に記録されている識別符号に対応する回答結果には「P」が含まれており分類の対象としないため、同分類処理からは除外する。分類処理において、サーバコンピュータ22は、類型記憶領域27に記憶された類型毎のチェックパターンと各答案のチェックパターンとを比較して、チェックパターンが同一の答案に各類型を示す符号を付して、答案記憶領域29に記憶させる。なお、かかる分類処理は、上記した各ステップの回答処理毎に分けて行ってもよい。
【0058】
次に、回答処理のステップ1乃至3における分類者甲の回答について説明する。
【0059】
例えば、図10及び11に示すように、答案T1乃至T7及びその他図示しない答案(計j枚)が1人の分類者甲に順次与えられる。分類者甲はまず、上記した回答処理のステップ1において、計j枚の答案について第1のチェックボックスシート50により順に回答する。なお、本実施例において、各分類者は問題文の内容を知らされていない。これは、問題文を知ることによる予断を排除するため、即ち質問文に独自の解釈を加えてしまう可能性を排除するためである。
【0060】
回答処理のステップ1において、分類者甲は、まず、答案T1について回答する。答案T1には「V」と読み取れる記載があり、「白紙答案か?」という質問文CQ1に対して、チェック欄51の「N」にチェックをする。次に質問文CQ2の「答案として記載すべき内容と無関係な記載のみか?」に対しては、「V」と読み取れる記載は答案として記載すべき内容との関係が不明なため「P」にチェックをし、答案T1についての回答を終了する(図12参照)。「P」を選択することにより、分類者甲の独自の判断で「Y」又は「N」を選択してしまうことを防止する。答案T1の回答結果は(N、P)となり、答案T1は、特定の類型に分類されることなく持ち越される。
【0061】
次に分類者甲は答案T2について回答する。答案T2には一切の記載がなく、分類者甲は答案T2を白紙答案であると容易に判断できるので(Y、N)と回答する。答案T2は類型1に分類されることが決定するため、答案T2の以降の回答処理は不要となる。
【0062】
次に、分類者甲は答案T3について回答する。答案T3には「わかりません」という記載があり、この記載は明らかに問題文と無関係な記載である。よって、分類者甲は(N、Y)と回答する。その結果、答案T3の以降の回答処理は答案T2と同様に不要となる。さらに、分類者甲は答案T4乃至T7について回答する。これらについては、いずれも答案として記載すべき内容に関係する記載を含むが、分類者甲には問題文が与えられていない。よって、答案T4については答案として記載すべき内容との関係が不明であり(N、P)と回答する。以降、例えば答案T6まで同様に(N、P)と回答し、答案T7についての回答をしようとしたところで、答案T4乃至T7にはいずれも数式が記載されており、cmの単位を付けた数字で答案の結論としての答えを記載していることに気付く。これにより、答案T4乃至T7は答案として記載すべき内容に関係のある記載を含むことを理解し、答案T7以降の答案について、同様の特徴をもつ記載に対しては(N、N)と回答する。これらの回答結果を図12に示す。類型1又は類型2に分類されることが決定した答案T2及びT3のような答案以外の答案群については、回答処理のステップ2に持ち越す。
【0063】
回答処理のステップ2において、分類者甲又は他の分類者は答案T1、答案T4乃至T7及びその他の図示しない答案群について第2のチェックボックスシート60(CBS2)により回答する。少なくとも答案T1、答案T4乃至T6については、回答処理のステップ1において「P」の選択された答案である。一度、自分に与えられた全ての答案について回答した結果、分類者甲及び他の分類者は、「V」の記載のように他の答案にない記載のことを認識する。そして、「V」に見える記載は、この記載をした受験者の解答を記述しようという意図とは別の意図によってなされたものであることを推認する。例えば、解答が全く分からないので、この問題には解答しないという意図が有ったと推定する。このように、一度回答した答案を相対的に比較することで、分類者甲又は他の分類者は、答案T1の「V」に見える記載を問題文に無関係な記載であると容易に推認できる。よって、分類者甲又は他の分類者は答案T1について(N、Y、N、N、N、N、N)と回答する。答案T4乃至T6については、回答処理のステップ1の答案T7についての回答時においてすでに、質問文CQ2に対する答えは明確(「N」)である。よって答案T4乃至T7について、分類者甲又は他の分類者は、図13に示すように、
答案T4:(N、N、Y、Y、Y、N、Y)
答案T5:(N、N、Y、Y、N、N、Y)
答案T6:(N、N、N、Y、N、N、Y)
答案T7:(N、N、Y、N、N、Y、Y)
と回答した。これらのチェックパターンにより、答案T4は正答の類型に、答案T5は正しい方程式を記載したが計算間違いをしている類型に、答案T6は三平方の定理の方程式の理解が不十分である類型に、答案7は三平方の定理の方程式を誤って記憶している若しくは誤って記述している類型にそれぞれ分類できるのである。これにより答案T1〜T7の以降の回答処理は不要となる。その他図示しない答案のうち、回答結果に「P」を含む答案群については回答処理のステップ3に持ち越す。
【0064】
回答処理のステップ3において、分類者甲は回答処理のステップ2において持ち越された答案について、回答処理のステップ2と同様に第2のチェックボックスシート60(CBS2)により回答する。この場合、上記したのと同様に自分に与えられた全ての答案について回答した結果、これらを相対的に比較することで、分類者甲又は他の分類者が一度「P」(保留)を付した答案についても容易に「Y」(肯定)又は「N」(否定)の判断をし得る。
【0065】
以上のように回答処理を行うことで、他の分類者によって同一の答案について回答されたとしても、「Y」と「N」とが入れ替わる可能性は低くなる。なんとなれば、分類者甲の判断「Y」及び「N」との間に存在する領域Uの存在により、ある質問文に対して迷いを生じる答案について「P」を選択することで回答結果を保留する一方で、「Y」あるいは「N」を選択して回答結果が確定した答案については、分類者同士の主観の差を縮める事ができるからである。よって「Y」及び「N」のみの組合せからなるチェックパターンに基づく分類処理は分類者甲の独自の判断に依存しないのである。そして、同分類処理にある一定の客観性を持たせ得る。よって、答案の数が多い場合において、複数の分類者によって回答処理を分担することで効率的な回答処理を行いつつ、分類処理にある一定の客観性を担保することができるのである。
【0066】
また、回答処理のステップ3においても回答結果に「P」のある答案については、特定の分類者丙・丁によって再度回答することでそれぞれの類型に分類し得る。この場合、チェックパターンに「P」を含む回答結果に対応する識別番号が送出対象識別符号記憶領域28に記憶されているので、この識別符号に対応する答案データのみを抽出する。そして、これらの答案データは、類型の意味とこれに分類される答案についての理解の深い1人若しくは回答や分類についての同一の判断基準を共有する少人数の分類者丙・丁によって回答結果が「P」となっていた質問文についてのみ再び回答される。これにより、画一的な判断基準により回答結果が得られるため客観性を担保しつつ、しかも効率的に全ての答案を分類し得るのである。
【0067】
本システムにおいては、特定の教育課題に対する受験者群の理解傾向を調査するにあたり、かかる教育課題に関する記述式問題テストの問題文に対する各受験者の答案を分類する方法を採用している。受験者群の理解傾向を調査するには、各受験者の答案ではなく、各受験者の想起した解答を分類できることが理想である。しかし、分類者には各受験者の解答を直接分類することはできず、答案を作成する各受験者の技量の差異を含んだ答案を分類し得るのみである。特に、小学校の低学年の受験者群においては、答案の記述力が低いために解答として想起した思想が答案に反映されづらくなることも多い。こういった場合に、本システムによって分類することにより、多数の答案を相対的に比較することになる。そして、多数の答案の相対的な比較により、答案を作成した受験者群の目線から答案を分類し、これによって表現力の不足している答案に対してもその意図を相当程度拾い上げることができる。また、分類のための回答に際して「P」(保留)を選択することを認めることで、分類者は、判断技術(習熟度)を向上させてから、判断に迷うチェック項目に関して再度回答することができる。その結果、答案を記述した受験者群の意思を拾い上げ易くなる。つまり、答案のみならず、解答をも可及的に分類し得るのである。
【0068】
本実施例において、質問文の個数は7個であるが、択一関係となる質問文を含まないと仮定した場合にチェックパターンは27個まで作成し得る。つまり、あらかじめ予測された解答類型に該当しないチェックパターンを有する答案も十分に存在し得る。このとき、この答案についての解答類型を分析することで、あらかじめ予測し得なかった解答類型までも分類の対象とし得る。
【0069】
さらに、本システムにおいて、ステップ2又はステップ3で答案データを再送出するに先立って、各質問文について修正をして、これをサーバコンピュータ22に入力し、チェックボックスシート記憶領域25に修正した質問文群を記憶させるようにしてもよい。この場合において、質問文の修正は、質問文で求める内容を実質的に変更することなく、表現などを変更して行われる。修正された質問文は求める内容が実質的に変更されていないため、回答処理により再送出されて受信されるチェックパターンは、既に、チェックパターン記憶部に記憶されたチェックパターンと相関を得ることが出来て、保留を含むチェックパターンの数を効率的に減らすことが出来得る。例えば、「P」の多かった質問文について、上記した回答や分類についての同一の判断基準を共有する少人数の分類者丙・丁によって、他の分類者がより判断に迷わないように質問文を修正する。このようにすることで、より効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを与えることができる。
【0070】
ここまで本発明による代表的実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 答案分類支援システム
10、50 第1のチェックボックスシート
11、60 第2のチェックボックスシート
21 クライアントコンピュータ
22 サーバコンピュータ
CQ1〜CQ7 質問文
【技術分野】
【0001】
本発明は、受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を所定の解答類型に分類するための答案分類支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テストの受験者は問題を提示されるとこの問題に対する解答を検討しこれをまとめて答案に表現する。例えば、各種学校の入学テストなどのように、受験者の入学を許可するかどうかの判断材料の提供を目的とするテストでは、答案を採点しこれらを序列化できることが求められる。
【0003】
ところで、テストの採点方法において、限られた採点時間の中では、問題に対する正答を答案に表現できているかだけを採点の対象とすることも多い。その一方で、受験者を多面的に評価・判断するためにも、1つの問題に対して複数の中間結果、すなわち正答かどうかだけでなく、その途中の結果についても採点の対象とすることも行われる。かかる場合、最終的な結果までの複数の中間結果をあらかじめ予測し、結果毎に段階的に点数を与えて採点を行う。
【0004】
受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストでは、問題の作成の仕方次第ではあるものの、一般的に、最終的な結果までの複数の中間結果をあらかじめ予測しておくことは困難である。特に、自由な答案の記述を求め得るとの記述式問題テストの特徴を活かせば活かすほど、その予測は困難となる。そこで、各中間結果についての概念的なガイドラインを作成して、判断の裁量を採点者に与え、その主観で採点をさせてしまうことも行われる。すると、同じ答案であっても少なからず採点者毎に採点結果に差が出てしまう。特に、受験者の数が多く答案の数が多いにも関わらず、採点結果を一定時間内に出さねばならないような場合にあっては、多数の採点者を採用せざるを得ず、採点者毎の三者三様の主観が重畳されて、正確な採点を困難にしてしまうといった問題が生じていた。
【0005】
これに対して特許文献1は、採点結果を収集するシステムにおいて、1の採点者の採点結果を他の採点者の採点根拠を参照しながら再評価し、これを修正して複数の採点者間の主観差を排することの出来る答案採点支援システムを開示している。複数の採点者間で採点結果が一致せず、採点結果の客観性に疑問がある場合には、他の採点者の採点根拠を参照しながら採点結果を再検討し、一度登録した採点結果を修正できるのである。すなわち、各中間結果についての概念的なガイドラインを共有できるのである。これにより、自らが行った主観による採点結果について、様々な視点から再評価できると述べている。
【0006】
一方、国や地方自治体の教育指針を定めるための調査テストでは、過去の教育の結果と今後の教育の課題とを分析するための判断材料の提供が求められる。このような調査テストであっても、記述式問題テストが採用される。問題に対する所定の結果に至るまでの受験者の思考過程を細かく分析できるよう、問題が綿密に作成された上で、調査対象としての母集団により作成された答案が集められる。これらは解答類型毎に分類され、解答類型毎に分類された答案の数などが統計処理されて、前記した判断材料となるのである。
【0007】
このような調査テストでは、問題に対する正答を答案に表現できているか否かだけを分類の対象とするものではないため、解答類型が非常に多くなりがちである。また、受験者の数が非常に多く、答案の数も多くなる。例えば、受験者の数が数十万人、数百万人といったことさえもある。これに対して、特許文献2や3に開示されたような、肯定若しくは否定のみで答え得る答案に関連する複数の質問文からなるチェックボックスを用いた答案分類支援システムが提案されている。このチェックボックスに与えられた肯定か否定かのチェックの組合せであるチェックパターンに基づいて、多数の答案を多数の解答類型に素早く、しかも分類作業を行う者(以下において、これを分類者と称する。)の数を増やしても客観的に分類でき得るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−277086号公報
【特許文献2】特開2009−229606号公報
【特許文献3】特開2010−078637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したような調査テストにおける特許文献2又は3の答案分類支援システムに特許文献1のシステムを適用しようとすれば、複数の分類者間でチェックパターンが異なったときに他の分類者の根拠を参照しながらチェックパターン結果を再検討し、一度登録したチェックパターンを修正して、より客観的に分類でき得る。しかしながら、1つの答案を複数の分類者で必ず複数回だけ分類しなければ客観性を高めることは出来ず、多くの答案を処理することはできない。
【0010】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を所定の解答類型に分類するためのより効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を複数の解答類型に分類するための答案分類支援システムであって、前記答案のそれぞれを画像データとしてこれを識別するための識別符号を関連付けて記憶した答案データ記憶部と、肯定又は否定の二択の質問文の複数からなる質問文群を記憶したチェックボックスシート記憶部と、前記質問文群とともに、前記識別符号及びこれに関連付けされた前記答案の前記画像データを順次、端末装置に向けて送出する送出部と、前記識別符号とともに前記質問文群に対するチェックパターンのデータを前記端末装置から受信し前記識別符号及び前記チェックパターンを関連付けてチェックパターン記憶部に記憶させる受信部と、を含み、前記チェックパターンは前記質問文群の前記質問文のそれぞれに対応する肯定、否定又は保留のいずれかからなる回答の集合であり、前記チェックパターン記憶部に記憶された前記チェックパターンのうち保留を含む前記チェックパターンに対応する前記識別符号を検索する検索部と、前記送出部に対して、前記検索部で検索された前記識別符号及びこれに関連付けられた前記画像データを順次、前記質問文群とともに前記端末装置に向けて再送出するよう仕向けさせる再送出部と、を更に含むことを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、受験者の想起した解答が表現された答案を複数の解答類型に分類する調査テストの如きであっても、1つの答案を複数の分類者で必ず複数回だけ分類する必要なく、分類の客観性を高めることができるのである。すなわち、より効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを与えるのである。
【0013】
上記した発明において、前記再送出部の起動に先立って、前記質問文群の前記質問文毎の修正を外部入力させて前記チェックボックスシート記憶部に修正質問文群を記憶させる追加入力部と、を更に含み、前記再送出部は、前記チェックボックスシート記憶部の前記修正質問文群を前記送出部に対して再送出するよう仕向けさせることを特徴としてもよい。
【0014】
かかる発明によれば、質問文で求める内容を実質的に変更することなく表現などを変更した修正質問文にて質問文群を再構成できるので、再送出部による仕向けにより送出部から再送出されて受信されるチェックパターンは、既に、チェックパターン記憶部に記憶されたチェックパターンと相関を得ることが出来て、保留を含むチェックパターンの数を効率的に減らすことが出来得る。すなわち、より効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを与えるのである。
【0015】
上記した発明において、前記質問文群の前記質問文の個数をnとし、前記解答類型をm個(m>2)とすると、2n>mを満たすことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、得られうるチェックパターンの数は2n個であって、あらかじめ予測された解答類型に該当しないチェックパターンを含む。つまり、かかるチェックパターンを有する答案があるとき、この答案についての解答類型を分析することで、あらかじめ予測し得なかった解答類型までも分類し得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図2】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図3】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図4】本発明による答案分類支援システムの処理手順を示す図である。
【図5】本発明による答案分類支援システムを使用した場合の分類者の判断技術について説明する図である。
【図6】本発明による答案分類支援システムのブロック図である。
【図7】答案分類支援システムで使用される問題文の図である。
【図8】答案分類支援システムで使用される第1のチェックボックスシートの図である。
【図9】答案分類支援システムで使用される第2のチェックボックスシートの図である。
【図10】答案データを示す図である。
【図11】答案データを示す図である。
【図12】各答案データについてのチェックパターンの図である。
【図13】各答案データについてのチェックパターンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明による答案を分類するための答案分類支援システムの原理について説明する。
【0018】
答案分類処理システムによる答案の分類に先だって、管理者は記述式問題テストの問題文を複数の受験者に与え、同問題文に対する答案をそれぞれの受験者に作成させる。各受験者は、同問題文に対する解答を想起し、これを各受験者の技量の範囲において解答欄に記述して答案を作成する。つまり、本明細書における解答とは、各受験者の想起した問題文に対する思想そのものであり、答案とは、かかる思想に基づいて書面上に記述された情報をいう。
【0019】
答案の分類は、複数のチェックボックスシートを用いた分類方法により行われる。チェックボックスシートとは、肯定若しくは否定のみで答え得る答案に関連する複数の質問文からなる質問文群と、各質問文に対する肯定及び否定の旨の回答を記載するチェック欄(チェックボックス)とを含む情報群をいう。
【0020】
管理者は、受験者に作成させた答案をサーバコンピュータに画像データとして記憶させ、これを複数の分類者に割り振るべく、各分類者の操作するクライアントコンピュータに送出する。各分類者は、サーバコンピュータより自らの操作するクライアントコンピュータに送出されて自分に割り振られた答案の各々について、サーバコンピュータより送信されたチェックボックスシートの内容に基づいて、クライアントコンピュータ上に表示された質問文全てに対して、肯定か否定かを各チェック欄にチェックを付すことにより回答する。かかる各チェック欄へのチェックの結果として得られる、質問文全てに対する肯定か否定かのチェックの組合せ、すなわち回答の集合をチェックパターンという。サーバコンピュータは、このチェックパターンに基づいて答案を分類する。例えば、ある模範答案とチェックパターンが同一である答案は、当該模範答案の類型に分類され得る。かかる分類結果は、過去の教育の結果と今後の教育の課題とを分析するための判断材料とされ得る。
【0021】
図1に示すように、本発明において、第1のチェックボックスシート10(CBS1)は、2つのチェック項目CB1及びCB2を含み、それぞれ肯定(Y)若しくは否定(N)のみで答え得る答案に関連する質問文CQ1及びCQ2と、各質問文に対し肯定(Y)、否定(N)若しくは保留(P)を入力するチェック欄(Y、N、P)とからなる。また、図2に示すように、第2のチェックボックスシート11(CBS2)は、n個のチェック項目CB1〜CBnを含み、肯定(Y)若しくは否定(N)のみで答え得る答案に関連する質問文CQ1〜CQnと、各質問文に対するチェック欄(Y、N、P)とからなる。質問文CQ1〜CQnは、肯定又は否定を選択する判断が容易な内容であることが好ましい。即ち、質問文は、特定の内容が答案に記述されているかを実質的に判断するのではなく、答案の記載を形式的に判断できるものが好ましい。これにより、各分類者の主観差を排した分類結果を得やすくなる。
【0022】
ここで、複数の分類者のうちの1人(以下、分類者甲と称する)が、順次、自分に割り振られる答案TA1〜TAi(iは受験者総数より小である)について質問文群に回答し、これを分類する場合について説明する。
【0023】
図1を参照すると、まず、ステップ1において、分類者甲は,サーバコンピュータから自分のクライアントコンピュータに割り振られた各答案TA1〜TAiについて、第1のチェックボックスシート10の質問文CQ1及びCQ2について回答する。即ち、各チェック項目CB1、CB2について、「Y(肯定)」、「N(否定)」、「P(保留)」の3つの選択肢のうちのどれか1つの答えを選択し、チェック欄にチェック、すなわち回答するのである。ステップ1では、ステップ2で再度、回答処理する答案の数を減じて、効率的に分類を行うことを主目的としている。従って、ステップ1で分類できる類型は、ステップ2で分類できる類型よりも少なく、チェック項目数も少ない。ここでは、例えば、質問文CQ1及びCQ2の内容は、ともに単独のチェック項目によってそれぞれ類型1及び類型2に答案を択一的に分類できるように作成される。クライアントコンピュータから受信した回答結果に基づき、サーバコンピュータは、質問文CQ1に対して「Y」と回答された答案を類型1へ、質問文CQ2に対して「Y」と回答された答案を類型2へそれぞれ分類する。上記したように、質問文CQ1とCQ2は択一関係にあるので質問文CQ1及びCQ2の両方に対して「Y」が選択されることはない。
【0024】
上記したように、質問文CQ1及びCQ2は肯定又は否定を選択する判断を容易とするような内容であることが好ましい。しかし、答案に記載されている内容によっては、質問文CQ1又はCQ2に対する答えの判断に分類者甲が迷いを生じることがある。かかる場合にチェック欄が「Y」及び「N」しかない場合、分類者甲は「Y」又は「N」のどちらかを迷いながらも選択せざるを得ない。即ち、分類者甲の独自の判断によって「Y」又は「N」を選択するため、仮に甲と異なる分類者乙により同一の答案について回答した場合に、質問文CQ1及びCQ2に対する判断が異なることになる。つまり、チェック欄が「Y」及び「N」しかない場合、分類者甲の独自の判断に依存したチェックパターンを使用することになるために画一的な分類処理が行えない。本システムにおいては、このような判断に迷いを生じる場合に分類者甲に「P」を選択させ、回答結果に「P」を含む答案を類型に分類せずに持ち越す。よって、「Y」と「N」との組合せからなるチェックパターンにより答案を分類処理するに際し、同処理が分類者甲の独自の判断に依存することを防止し、画一的な分類処理を図れる。
【0025】
ここで、図5(a)に示すように、答案TA1乃至TA3、TA6及びTA7のそれぞれについて、質問文CQ1に対して分類者甲が回答する場合を考える。答案TA1は「Y」と容易に判断し得る範囲である線分Y−Ys上に位置するので分類者甲は答えの判断に迷わない。点Ysは、分類者甲が「Y」と判断できる限界を意味する。また、答案TA2は「N」と容易に判断できる範囲である線分N−Ns上に位置するので判断に迷わずに「N」と回答される。点Nsは、分類者甲が「N」と判断できる限界を意味する。これに対して、答案TA3、TA6及びTA7については、線分M1−M2上には位置するものの、線分Y−Ys上に位置するか、或いは線分N−Ns上に位置するかは必ずしも明らかではなく、判断に迷う。例えば記載が不明瞭で分類者甲がその記載から読み取った内容に自信が持てない場合がある。このような場合に、分類者甲の独自の判断によって例えば答案TA3について「N」などと回答されてしまうことを防ぐため、「P」なる選択肢を予め用意し、分類者甲に同答案について「P」を選択させる機会を与えるのである。その結果、質問文CQ1に対して、分類者甲は、答案TA1について「Y」、答案TA2について「N」、答案TA3、TA6及びTA7について「P」と回答するのである。
【0026】
再び図1を参照すると、各答案TA1〜TAiは、(CB1、CB2)に対応するチェックパターンが(Y、N)ならば類型1に分類され、(N、Y)ならば類型2に分類される。チェックパターンがそれ以外{(P、Y)、(P、N)、(Y、P)、(N、P)、(P、P)、(N、N)}の場合、対応する答案は類型に分類されない。なお、類型1と類型2は択一関係となるように質問文CQ1及びCQ2が作成されているため、チェックパターン(Y、Y)はあり得ない。
【0027】
ステップ1において、答案TA1は類型1に、答案TA2は類型2にそれぞれ分類され、ステップ2では処理されない。答案TA3、TA6及びTA7は(P、P)のチェックパターンであるため、ステップ2で再度、処理される。チェックパターンが(N、N)となった答案TA4などもステップ2で再度、処理される。
【0028】
次に、図2に示すように、ステップ2では、分類者甲は、ステップ1で持ち越された答案、すなわち、答案TA3、TA6及びTA7や、答案TA4について、第2のチェックボックスシート11に従って処理し、クライアントコンピュータに入力して回答する。第2のチェックボックスシート11はn個のチェック項目CB1〜CBn(2<n)を有し、チェック項目CB1及びCB2のそれぞれに対応する質問文CQ1及びCQ2は、第1のチェックボックスシート10のそれと共通である。数少ない質問文によって効率よく答案の分類を図るステップ1と異なり、ステップ2において使用されるチェック項目CB3〜CBnにおける各質問文CQ3〜CQnは、ステップ1において使用する質問文CQ1及びCQ2に比べて、多数のチェック項目の組合せによって初めて答案を分類し得る類型に分類するために必要な質問文群である。これらの質問文群は、受験者の作成した答案が、問題文から予想される複数の答案の類型のうち最も近い類型に分類され得るように管理者によって作成される。例えば、ある質問文群は、これによって正答の記載された答案について回答をした場合の回答結果(チェックパターン)が正答を示す模範答案の回答結果と同一となるように作成される。また、ある質問文群は、これによってある典型的な誤答を記載された答案について回答をした場合の回答結果が、その典型的な誤答の答案例の回答結果と同一となるように作成される。なお、ステップ1において回答結果が「Y」又は「N」であるチェック項目については、ステップ2における再度の回答は不要としてもよい。
【0029】
ステップ1において「P」を選択されたチェック項目について、クライアントコンピュータは分類者甲にステップ2において再度の回答を要求する。再度の回答を行うに当たって、分類者甲は図5(a)に示すように、一旦「P」を選択されて持ち越しとなった答案TA3、TA6、TA7について、質問文CQ1に対して「Y」又は「N」と回答できないか見直すことになる。見直すにあたり、分類者甲に新たな情報が与えられなければ「P」を選択した判断は変わらない。最初に「P」と回答した後に新たな情報として分類者甲に与えられるのは、ステップ1において「P」と回答した後に回答を行った答案群のみである。分類者甲は、多数の答案同士の相対的な比較をしながら回答を進めることにより答えを選択する判断技術の向上を図ることになる。かかる判断技術の向上に基づき、図5(b)に示すように、分類者甲は、質問文CQ1に対する回答が、線分Y−Ys上に位置するか、線分N−Ns上に位置するかを判断することができるようになる。そして、分類者甲は、ステップ1において判断に迷った答案TA3、TA6、TA7のそれぞれについて、質問文CQ1に対する答えがそれぞれ線分Y−Ys上、線分Ys−Ns上、線分N−Ns上に位置することを認識できる。
【0030】
例えば、当初意味を読み取れなかった答案の記載について、多数の答案と相対的に比較した結果、ようやく意味が明らかになる場合などが想定され得る。つまり、ステップ1に比べて「P」を選択する幅が減少したのである。特に、例えば小学校の低学年の児童のように答案の記述力が低かったり、分類者と離れた感覚を持ち合わせていたりする受験者の答案を対象とする場合、答案に記載された内容の判断をしづらい場合が多い。このような場合に、従来であれば、例えば予想答案との比較などによって、問題文の作成者側の視点から受験者が答案に記述しようとしたものを読み取ろうとしていた。そのため、受験者と分類者との認識の差異により誤解を含む場合があった。ところが、本システムにおいては多数の答案を相対的に比較することにより受験者が答案に記述しようとした解答を読み取ろうとする。多数の受験者によって記載された答案を比較対象とするため、その多数の受験者達と、これに属する1人の受験者との感覚との差異は小さく、その1人の受験者の答案に記述しようとした解答の意図を拾い上げることが容易になるのである。このようにして、ステップ1において「P」とされたチェック項目についても、ステップ2で新たに「Y」及び「N」と判断され得る。ステップ2において質問文に対して肯定か否定かの判断に迷いを生じる答案TA6について、分類者甲は答えに「P」を選択し回答する。
【0031】
図5において、この迷いを生じる範囲を領域Uと定義する。領域Uは、分類者甲の判断「Y」及び「N」との間に存在する。本システムでは、ある質問文に対して迷いを生じる答案について「P」を選択することで回答結果を保留する一方で、「Y」あるいは「N」を選択して回答結果が確定した答案については、分類者同士で判断基準を擦り合わせることなく主観の差を縮めることができる。各分類者は、判断基準を多数の受験者によって記載された答案によって修正できるからである。つまり、仮に分類者甲と分類者乙とが同一の答案について回答し、さらに両者の間で「Y」と「P」との異なる判断がなされるような場合であっても、「P」と判断した後者については再度答えを選択し、「Y」と判断されるので最終的に同一の回答結果となる。よって、仮に分類者乙によって同一の答案について回答されたとしても「Y」と「N」とが入れ替わる可能性は低いのである。また、同一の質問文に対して多数の答案についての答えを選択した経験により、この領域Uの幅は減少する。そのような領域Uの幅の減少は、判断技術の向上(習熟度の向上)を意味する。つまり、分類者甲は、答案の記載から、問題文に対して受験者達がどのように解答しようとしているかを理解し、解答の意図を読み取ることが容易になる。なお、「Y」か「P」かの選択、又は「N」か「P」かの選択は、分類者甲の独自の判断によるが、これは上記した「P」を選択する領域Uの幅についての個人差の存在、すなわち答えを選択する習熟度についての個人差の存在を意味する。このようにして「Y」と「N」のみからなる回答結果については、分類者甲の独自の判断に依存しないようにできるのである。そのため、「Y」と「N」との組合せのみからなるチェックパターンに基づく分類処理は分類者甲の独自の判断に依存せず、分類処理に一定の客観性をもたせ得るのである。
【0032】
更に、ステップ2において、サーバコンピュータは、図3に示すように答案TA3〜TAiのそれぞれに対応するチェックパターンにより、答案TA3〜TAiを分類処理する。回答結果のうちいずれかに「P」のある答案は持ち越しとされる。残った答案(回答結果に「P」のない答案)のうち、チェック項目CB1の回答結果を「Y」とする答案は類型1に分類される。さらに、残った答案のうち、チェック項目CB2の回答結果を「Y」とする答案は類型2に分類される。CB1及びCB2がともに「N」で、CB3〜CBnのチェックパターンが所定のパターンに合致した答案はそれぞれ類型3〜類型m−1に分類される。所定のパターンのいずれにも該当しない答案は類型m(m≦2n)に分類され。例えば、ある答案は「正答」という類型に分類される。また、ある答案は、同答案の序盤に記載されている一部の情報が「正答」という類型に分類される答案に記載されている情報と同一であるものの論理展開を誤っているため、「論理展開の誤り」という類型に分類される。
【0033】
ステップ3において、図4に示すように、分類者甲はステップ2で持ち越しとされた(回答結果に「P」のあった)答案TA4、TA6及びその他の答案群について、再び第2のチェックボックスシート11を使用して「P」を付したチェック項目のみについて答えを選択し、これをクライアントコンピュータに入力して回答する。本ステップでは、「P」を付した項目のみについての回答を得ることが目的であるため、ステップ2と同一の第2のチェックボックスシート11を使用すれば足りるのである。ここで、ステップ2と同様に、一度「P」を選択されたチェック項目であっても、同項目についての分類者甲の判断技術(習熟度)が向上することによって、迷わず「Y」又は「N」と判断され、回答される場合がある。このように回答された答案は、サーバコンピュータにおいてステップ2と同様に分類される。
【0034】
以上のように答案の分類処理をすると、ステップ1においてはチェック項目の数が少なくて済む。また、ステップ3において、ステップ2で「P」を選択されたチェック項目についてのみ回答をすれば足りるので、回答処理の重複が少ない。また、「Y」と「N」のみの組合せからなるチェックパターンに基づく分類処理は分類者甲の独自の判断に依存しないので分類処理に、一定の客観性をもたせ得る。よって、答案の数が多い場合において複数の分類者によって回答を分担することで効率的な回答処理を行いつつ、分類処理にある一定の客観性を担保することができるのである。
【0035】
ここでは、分類者甲が同一の答案について保留した後に再度回答をする場合について説明したが、上記したように判断技術は多数の答案同士の相対的な比較により向上する。よって、あるステップで分類者甲及び乙が別々の答案について回答し、分類者甲により保留にされた答案について、次のステップで分類者乙が回答する場合についても全く同様に、分類処理に一定の客観性をもたせ得る。
【0036】
また、ステップ3において持ち越された答案については、特定の分類者丙・丁によって再度回答して所定の類型に分類し得る。例えば、複数の分類者甲・乙の担当した答案群のうち、ステップ3において持ち越された答案群のみを収集し、類型の意味とこれに分類される答案についての理解の深い1人若しくは同一の判断基準を共有する少人数の分類者丙・丁によって同答案に対する回答が行われる。この場合、図5(c)に示すように、分類者丙・丁の判断には「P」を選択する範囲がなく(領域Uの幅不存在)、線分Y−Ys上にある答案TA6を「Y」と判断できる。これにより、分類者毎に異なる回答結果となることを可及的に防止して一定の客観性を担保しつつ、しかも効率的に全ての答案を分類し得る。
【実施例】
【0037】
本発明による答案を分類するための答案分類支援システムの実施例について、図6乃至図13を用いて説明する。
【0038】
[システム構成]
図6に示すように、答案分類支援システム1は、インターネット回線やLAN(Local Area Network)等の通信回線20によって接続された複数のクライアントコンピュータ21及び問題作成者等の管理者によって使用されるサーバコンピュータ22を含む。サーバコンピュータ22は、記述式問題テストの問題文を記憶する問題文記憶領域24、チェックボックスシート記憶領域25、答案データ記憶領域26、類型記憶領域27、送出対象識別符号記憶領域28、回答結果記憶領域29などを有する記憶装置23を備える。また、サーバコンピュータ22は、モニタ22a及びキーボード22bを有するとともに、図示しないスキャナなどの入力装置を有する。また、クライアントコンピュータ21には、モニタ21a及びキーボード等の入力装置21bを備える。
【0039】
[問題文の作成]
図7に示すように、管理者は、「三平方の定理」に関する問題文qを作成する。問題文qは、三平方の定理の公式を使用すること及び一元二次方程式を解くことについての特定の受験者群の理解傾向を調査することを目的として作成される。問題文qの内容は、「直角三角形の直角を挟む2辺の長さがそれぞれ1cmと2cmである場合、斜辺の長さをxcmとしたときのxを方程式を立てて求めなさい。」であり、一元二次方程式を使って答えを導く過程の記述を促す問題文とされている。管理者は、かかる問題文qをサーバコンピュータ22のキーボード22b若しくは図示しないスキャナなどの入力装置から入力し、記憶装置23の問題文記憶領域24に記憶させる。
【0040】
[チェックボックスシートの作成]
図8に示すように、第1のチェックボックスシート50は、「Y」若しくは「N」のみで答えることのできる質問文CQ1及びCQ2とこれに対するチェック欄51(Y、N、P)とを表示した情報群である。質問文CQ1及びCQ2は、管理者によって作成される。質問文CQ1及びCQ2は、各分類者の独自の判断に依存しない回答結果を得られるように、肯定又は否定の判断を容易とし、一定レベルの分類者であればどの分類者によっても同一の答案に対しては同じ判断となり得るような内容とすることが好ましい。質問文CQ1及びCQ2の内容は、単独のチェック項目によって答案を分類できる類型に対応するよう作成される。本実施例では、「白紙答案」及び「答案として記載すべき内容と無関係な記載のみの答案」の2つの類型に分類するために「白紙答案か?」(CQ1)及び「答案として記載すべき内容と無関係な記載のみか?」(CQ2)の2つの質問文を設けている。第1のチェックボックスシート50は、各分類者によって回答に使用されるものである。チェック欄51の対応する位置にチェックを付すことで質問文CQ1及びCQ2に対する回答を「Y」、「N」、「P」の中から各分類者が選択できる。管理者によって作成された第1のチェックボックスシート50の内容は、記憶装置23のチェックボックスシート記憶領域25に記憶される。なお、質問文CQ1及びCQ2は互いに択一関係となるように作成されているため、第1のチェックボックスシート50に従って得たチェックパターンが(Y、Y)となることはない。
【0041】
図9に示すように、第2のチェックボックスシート60は、「Y」若しくは「N」のみで答えることのできる質問文CQ1乃至CQ7と、これに対するチェック欄61(Y、N、P)とを表示した情報群である。第2のチェックボックスシート60は、各分類者によって回答に使用されるものである。チェック欄61の対応する位置にチェックを付すことで質問文CQ1乃至CQ7に対する答えを「Y」、「N」、「P」の中から各分類者が選択できる。質問文CQ1乃至CQ7は、各分類者の独自の判断に依存しない回答結果を得られるように「Y」又は「N」の判断を容易とし、一定レベルの分類者であればどの分類者によっても同一の答案に対しては同じ選択結果となり得るような内容が好ましい。質問文CQ1及びCQ2の内容は、第1のチェックボックスシート50と同一である。質問文CQ1乃至CQ7は、問題文qから予想される複数の答案の類型のうち、受験者の答案がどの類型に最も近いかを、そのチェック(「Y」及び「N」)の組合せ、すなわちチェックパターンによって分類し得るように作成される。なお、予想される複数の答案には誤答も含まれる。
本実施例において、質問文CQ1乃至CQ7は、
CQ1:白紙答案か?
CQ2:答案として記載すべき内容と無関係な記載のみか?
CQ3:「x=」か「=x」の記載があるか?
CQ4:「22」か「4」の記載があるか?
CQ5:「√5」の記載があるか?
CQ6:「3」の記載があるか?
CQ7:式の記載があるか?
のように作成される。例えば図11(a)に示す答案T4について第2のチェックボックスシート60に表示された質問文群に分類者甲が回答したとする。このとき、それぞれの質問文CQ1乃至CQ7に対する回答を順に表示したチェックパターンは(N、N、Y、Y、Y、N、Y)となる。このチェックパターンは正答を示し、答案T4は「正答」という類型に分類できるのである(図13参照)。他の類型においても同様に、回答結果から得られるチェックパターンが各々の類型を示すチェックパターンに合致した場合に分類される。管理者は、作成された第2のチェックボックスシート60の内容を、記憶装置23のチェックボックスシート記憶領域25に記憶させる。
【0042】
[類型のチェックパターンの記憶]
管理者は、問題文qから、予想答案を作成する。管理者は、かかる予想答案に対して第2のチェックボックスシート60の質問文群をあてはめてチェックパターンを求め、同予想答案に対応する類型を示す符号を付して類型記憶領域27に記憶させる。
【0043】
[答案データの記憶]
管理者はN人(複数)の受験者に問題文qを与え、これに対する答案T1〜TNを得る。答案T1〜TNの記載された答案用紙群はサーバコンピュータ22の図示しないスキャナ等の入力装置などによって答案データ(画像データ)として読込まれる。読込まれた答案データは識別符号(1〜N)を付されて答案データA1乃至ANとして答案データ記憶領域26に記憶される。また、答案データA1乃至ANのうち、クライアントコンピュータ21へ送出すべき答案データに対応する識別符号は送出対象識別符号として送出対象識別符号記憶領域28に記憶される。この答案データA1乃至ANを答案データ記憶領域25に記憶させる段階において、答案データA1乃至ANに対応するすべての識別符号1〜Nが送出対象識別符号とされて送出対象識別符号記憶領域28に記憶される。
【0044】
[答案についての回答及び分類]
次に、答案分類支援システム1の使用方法を説明する。
【0045】
[回答処理ステップ1]
サーバコンピュータ22は、まず、各分類者の使用する各クライアントコンピュータ21より受信した回答要求信号に基づいて、それぞれのクライアントコンピュータ21に第1のチェックボックスシート50、答案データ及びこれに付された識別符号を順次送出する。ここで、送出される答案データは、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号を付されて、答案データ記憶領域26に記憶されている。送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号は、上記したように識別符号1〜Nである。よって、答案データA1〜AN全てが送出の対象となる。
【0046】
サーバコンピュータ22は、各クライアントコンピュータ21に答案データを送出する毎に、これに対応する識別符号を送出対象識別符号記憶領域28から消去させる。これによって、このステップ1において同一の答案について重複して回答を行わせることを避ける。
【0047】
一方、分類者甲の操作するクライアントコンピュータ21において、分類者甲は、回答要求信号をクライアントコンピュータ21からサーバコンピュータ22に向けて送信する。上記したように、回答要求信号に基づいてサーバコンピュータ22より順次送出される第1のチェックボックスシート50、答案データ及び識別符号がクライアントコンピュータ21で受信される。クライアントコンピュータ21は、受信された答案データに基づいて答案画像をモニタ21aに表示させるとともに、第1のチェックボックスシート50(CBS1)をモニタ21aに表示させる。分類者甲は、モニタ21aに表示された答案画像を対象に、第1のチェックボックスシート50上の質問文CQ1及びCQ2のそれぞれに対して、その回答として「Y」、「N」及び「P」の3つの選択肢から1つを選択する。そして、入力装置21bを使用してチェック欄51の対応する位置にチェックを付すことで選択した答えを表示させる。つまり、質問文CQ1及びCQ2に対する答えを入力して回答する。分類者甲による回答の完了した後、クライアントコンピュータ21は質問文CQ1及びCQ2に対する「Y」、「N」及び「P」のいずれかからなる回答の集合であるチェックパターン、すなわち回答結果に識別符号を付して、サーバコンピュータ22に返送する。他の分類者においても同様の回答が行われる。そして、サーバコンピュータ22においてこのような回答処理は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号がなくなるまで、つまり、全ての答案データを送出するまで続けられる。つまり、クライアントコンピュータ21においても同様の処理が複数回繰り返される。
【0048】
サーバコンピュータ22は、各分類者の操作するクライアントコンピュータ21から受信した回答結果を識別符号とともに、記憶装置23の回答結果記憶領域29に記憶させる。送出した全ての答案データに対する回答結果を記憶した後、サーバコンピュータ22は回答結果記憶領域29に記憶された回答結果のうち、チェックパターンが(N、N)のものとチェックパターンに「P」を含むものとを検索し、検索された回答結果に対応する識別番号を送出対象識別符号記憶領域28に記憶させる。これが、ステップ1において保留され、次のステップ2において回答処理を行う対象となる。ここで保留されない回答結果を得た答案データはそのまま後述する分類処理を行うことができる。
【0049】
[回答処理ステップ2]
サーバコンピュータ22は、ステップ1と同様に、各クライアントコンピュータ21より受信した回答要求信号に基づいて、それぞれのクライアントコンピュータ21に第2のチェックボックスシート60、答案データ、これに付された識別符号及びステップ1での回答結果(チェックパターン)を順次再送出する。ここで、再送出される答案データ及び回答結果は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号の付された答案データ及び回答結果である。送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号は、ステップ1においてチェックパターン(N、N)又はチェックパターンに「P」を含む回答結果に対応した識別符号である。
【0050】
サーバコンピュータ22は、各クライアントコンピュータ21に答案データを送出する毎に、これに対応する識別符号を送出対象識別符号記憶領域28から消去させる。これによって、このステップ2においても同一の答案について重複して回答を行わせることを避ける。
【0051】
ステップ1と同様に、回答要求信号に基づいてサーバコンピュータ22より第2のチェックボックスシート60、答案データ、識別符号及び回答結果が送出され、クライアントコンピュータ21で受信される。クライアントコンピュータ21は、受信された答案データに基づいて答案画像をモニタ21aに表示させるとともに、第2のチェックボックスシート60(CBS2)をモニタ21aに表示させる。分類者甲は、モニタ21aに表示された答案画像を対象に、第2のチェックボックスシート60上の質問文CQ1乃至CQ7のそれぞれに対して、その回答として「Y」、「N」及び「P」の3つの選択肢から1つを選択する。そして、入力装置21bを使用してチェック欄61の対応する位置にチェックを付すことで選択した答えを表示させる。つまり、質問文CQ1乃至CQ7に対する答えを入力して回答する。ただし、ステップ1で「Y」又は「N」の回答を入力されていた質問文については回答できないよう処理される。この場合、ステップ1の回答結果がそのまま引継がれる。分類者甲による回答の完了した後、クライアントコンピュータ21は質問文CQ1乃至CQ7に対する「Y」、「N」及び「P」のいずれかからなる回答の集合であるチェックパターン、すなわち回答結果に識別符号を付して、サーバコンピュータ22に返送する。他の分類者においても同様の回答が行われる。そして、サーバコンピュータ22においてこのような回答処理は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号がなくなるまで、つまり、ステップ1で保留となった答案データの全てを再送出するまで続けられる。
【0052】
サーバコンピュータ22は、各分類者の操作するクライアントコンピュータ21から受信した回答結果を識別符号とともに、記憶装置23の回答結果記憶領域29に上書きして記憶させる。送出した全ての答案データに対する回答結果を記憶した後、サーバコンピュータ22は回答結果記憶領域29に記憶された回答結果のうち、チェックパターンに「P」を含むものを検索し、検索された回答結果に対応する識別番号を送出対象識別符号記憶領域28に記憶させる。これが、ステップ2において保留され、次のステップ3において回答処理を行う対象となる。つまり、ここで保留されない回答結果を得た答案データはそのまま後述する分類処理を行うことができる。
【0053】
[回答処理ステップ3]
サーバコンピュータ22は、ステップ2と同様に、各クライアントコンピュータ21より受信した回答要求信号に基づいて、それぞれのクライアントコンピュータ21に第2のチェックボックスシート60、答案データ、これに付された識別符号及びステップ2での回答結果(チェックパターン)を順次再送出する。ここで、再送出される答案データ及び回答結果は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号の付された答案データ及び回答結果である。送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号は、ステップ2においてチェックパターンに「P」を含む回答結果に対応した識別符号である。
【0054】
サーバコンピュータ22は、各クライアントコンピュータ21に答案データを送出する毎に、これに対応する識別符号を送出対象識別符号記憶領域28から消去させる。これによって、このステップ3においても同一の答案について重複して回答を行わせることを避ける。
【0055】
ステップ2と同様に、回答要求信号に基づいてサーバコンピュータ22より第2のチェックボックスシート60、答案データ、識別符号及び回答結果がクライアントコンピュータ21で受信される。クライアントコンピュータ21は、受信された答案データに基づいて答案画像をモニタ21aに表示させるとともに、第2のチェックボックスシート60(CBS2)をモニタ21aに表示させる。分類者甲は、モニタ21aに表示された答案画像を対象に、第2のチェックボックスシート60上の質問文CQ1乃至CQ7のそれぞれに対して、その回答として「Y」、「N」及び「P」の3つの選択肢から1つを選択する。そして、入力装置21bを使用してチェック欄61の対応する位置にチェックを付すことで選択した結果を表示させる。つまり、質問文CQ1乃至CQ7に対する答えを入力して回答する。ただし、ステップ2で「Y」又は「N」の回答を入力されていた質問文については回答できないよう処理される。この場合、ステップ2の回答結果がそのまま引継がれる。分類者甲による回答の完了した後、クライアントコンピュータ21は質問文CQ1乃至CQ7に対する「Y」、「N」及び「P」のいずれかからなる回答の集合であるチェックパターン、すなわち回答結果に識別符号を付して、サーバコンピュータ22に返送する。他の分類者においても同様の回答が行われる。そして、サーバコンピュータ22においてこのような回答処理は、送出対象識別符号記憶領域28に記憶されている識別符号がなくなるまで、つまり、ステップ2で保留となった答案データの全てを送出するまで続けられる。
【0056】
サーバコンピュータ22は、各分類者の操作するクライアントコンピュータ21から受信した回答結果を識別符号とともに、記憶装置23の回答結果記憶領域29に上書きして記憶させる。送出した全ての答案データに対する回答結果を記憶した後、サーバコンピュータ22は回答結果記憶領域29に記憶された回答結果のうち、チェックパターンに「P」を含むものを検索し、検索された回答結果に対応する識別番号を送出対象識別符号記憶領域28に記憶させる。
【0057】
[分類処理]
サーバコンピュータ22は、記憶装置23の回答結果記憶領域29に記憶された回答結果を基に答案データA1〜ANを分類処理する。ここで、送出対象識別符号記憶領域28に記録されている識別符号に対応する回答結果には「P」が含まれており分類の対象としないため、同分類処理からは除外する。分類処理において、サーバコンピュータ22は、類型記憶領域27に記憶された類型毎のチェックパターンと各答案のチェックパターンとを比較して、チェックパターンが同一の答案に各類型を示す符号を付して、答案記憶領域29に記憶させる。なお、かかる分類処理は、上記した各ステップの回答処理毎に分けて行ってもよい。
【0058】
次に、回答処理のステップ1乃至3における分類者甲の回答について説明する。
【0059】
例えば、図10及び11に示すように、答案T1乃至T7及びその他図示しない答案(計j枚)が1人の分類者甲に順次与えられる。分類者甲はまず、上記した回答処理のステップ1において、計j枚の答案について第1のチェックボックスシート50により順に回答する。なお、本実施例において、各分類者は問題文の内容を知らされていない。これは、問題文を知ることによる予断を排除するため、即ち質問文に独自の解釈を加えてしまう可能性を排除するためである。
【0060】
回答処理のステップ1において、分類者甲は、まず、答案T1について回答する。答案T1には「V」と読み取れる記載があり、「白紙答案か?」という質問文CQ1に対して、チェック欄51の「N」にチェックをする。次に質問文CQ2の「答案として記載すべき内容と無関係な記載のみか?」に対しては、「V」と読み取れる記載は答案として記載すべき内容との関係が不明なため「P」にチェックをし、答案T1についての回答を終了する(図12参照)。「P」を選択することにより、分類者甲の独自の判断で「Y」又は「N」を選択してしまうことを防止する。答案T1の回答結果は(N、P)となり、答案T1は、特定の類型に分類されることなく持ち越される。
【0061】
次に分類者甲は答案T2について回答する。答案T2には一切の記載がなく、分類者甲は答案T2を白紙答案であると容易に判断できるので(Y、N)と回答する。答案T2は類型1に分類されることが決定するため、答案T2の以降の回答処理は不要となる。
【0062】
次に、分類者甲は答案T3について回答する。答案T3には「わかりません」という記載があり、この記載は明らかに問題文と無関係な記載である。よって、分類者甲は(N、Y)と回答する。その結果、答案T3の以降の回答処理は答案T2と同様に不要となる。さらに、分類者甲は答案T4乃至T7について回答する。これらについては、いずれも答案として記載すべき内容に関係する記載を含むが、分類者甲には問題文が与えられていない。よって、答案T4については答案として記載すべき内容との関係が不明であり(N、P)と回答する。以降、例えば答案T6まで同様に(N、P)と回答し、答案T7についての回答をしようとしたところで、答案T4乃至T7にはいずれも数式が記載されており、cmの単位を付けた数字で答案の結論としての答えを記載していることに気付く。これにより、答案T4乃至T7は答案として記載すべき内容に関係のある記載を含むことを理解し、答案T7以降の答案について、同様の特徴をもつ記載に対しては(N、N)と回答する。これらの回答結果を図12に示す。類型1又は類型2に分類されることが決定した答案T2及びT3のような答案以外の答案群については、回答処理のステップ2に持ち越す。
【0063】
回答処理のステップ2において、分類者甲又は他の分類者は答案T1、答案T4乃至T7及びその他の図示しない答案群について第2のチェックボックスシート60(CBS2)により回答する。少なくとも答案T1、答案T4乃至T6については、回答処理のステップ1において「P」の選択された答案である。一度、自分に与えられた全ての答案について回答した結果、分類者甲及び他の分類者は、「V」の記載のように他の答案にない記載のことを認識する。そして、「V」に見える記載は、この記載をした受験者の解答を記述しようという意図とは別の意図によってなされたものであることを推認する。例えば、解答が全く分からないので、この問題には解答しないという意図が有ったと推定する。このように、一度回答した答案を相対的に比較することで、分類者甲又は他の分類者は、答案T1の「V」に見える記載を問題文に無関係な記載であると容易に推認できる。よって、分類者甲又は他の分類者は答案T1について(N、Y、N、N、N、N、N)と回答する。答案T4乃至T6については、回答処理のステップ1の答案T7についての回答時においてすでに、質問文CQ2に対する答えは明確(「N」)である。よって答案T4乃至T7について、分類者甲又は他の分類者は、図13に示すように、
答案T4:(N、N、Y、Y、Y、N、Y)
答案T5:(N、N、Y、Y、N、N、Y)
答案T6:(N、N、N、Y、N、N、Y)
答案T7:(N、N、Y、N、N、Y、Y)
と回答した。これらのチェックパターンにより、答案T4は正答の類型に、答案T5は正しい方程式を記載したが計算間違いをしている類型に、答案T6は三平方の定理の方程式の理解が不十分である類型に、答案7は三平方の定理の方程式を誤って記憶している若しくは誤って記述している類型にそれぞれ分類できるのである。これにより答案T1〜T7の以降の回答処理は不要となる。その他図示しない答案のうち、回答結果に「P」を含む答案群については回答処理のステップ3に持ち越す。
【0064】
回答処理のステップ3において、分類者甲は回答処理のステップ2において持ち越された答案について、回答処理のステップ2と同様に第2のチェックボックスシート60(CBS2)により回答する。この場合、上記したのと同様に自分に与えられた全ての答案について回答した結果、これらを相対的に比較することで、分類者甲又は他の分類者が一度「P」(保留)を付した答案についても容易に「Y」(肯定)又は「N」(否定)の判断をし得る。
【0065】
以上のように回答処理を行うことで、他の分類者によって同一の答案について回答されたとしても、「Y」と「N」とが入れ替わる可能性は低くなる。なんとなれば、分類者甲の判断「Y」及び「N」との間に存在する領域Uの存在により、ある質問文に対して迷いを生じる答案について「P」を選択することで回答結果を保留する一方で、「Y」あるいは「N」を選択して回答結果が確定した答案については、分類者同士の主観の差を縮める事ができるからである。よって「Y」及び「N」のみの組合せからなるチェックパターンに基づく分類処理は分類者甲の独自の判断に依存しないのである。そして、同分類処理にある一定の客観性を持たせ得る。よって、答案の数が多い場合において、複数の分類者によって回答処理を分担することで効率的な回答処理を行いつつ、分類処理にある一定の客観性を担保することができるのである。
【0066】
また、回答処理のステップ3においても回答結果に「P」のある答案については、特定の分類者丙・丁によって再度回答することでそれぞれの類型に分類し得る。この場合、チェックパターンに「P」を含む回答結果に対応する識別番号が送出対象識別符号記憶領域28に記憶されているので、この識別符号に対応する答案データのみを抽出する。そして、これらの答案データは、類型の意味とこれに分類される答案についての理解の深い1人若しくは回答や分類についての同一の判断基準を共有する少人数の分類者丙・丁によって回答結果が「P」となっていた質問文についてのみ再び回答される。これにより、画一的な判断基準により回答結果が得られるため客観性を担保しつつ、しかも効率的に全ての答案を分類し得るのである。
【0067】
本システムにおいては、特定の教育課題に対する受験者群の理解傾向を調査するにあたり、かかる教育課題に関する記述式問題テストの問題文に対する各受験者の答案を分類する方法を採用している。受験者群の理解傾向を調査するには、各受験者の答案ではなく、各受験者の想起した解答を分類できることが理想である。しかし、分類者には各受験者の解答を直接分類することはできず、答案を作成する各受験者の技量の差異を含んだ答案を分類し得るのみである。特に、小学校の低学年の受験者群においては、答案の記述力が低いために解答として想起した思想が答案に反映されづらくなることも多い。こういった場合に、本システムによって分類することにより、多数の答案を相対的に比較することになる。そして、多数の答案の相対的な比較により、答案を作成した受験者群の目線から答案を分類し、これによって表現力の不足している答案に対してもその意図を相当程度拾い上げることができる。また、分類のための回答に際して「P」(保留)を選択することを認めることで、分類者は、判断技術(習熟度)を向上させてから、判断に迷うチェック項目に関して再度回答することができる。その結果、答案を記述した受験者群の意思を拾い上げ易くなる。つまり、答案のみならず、解答をも可及的に分類し得るのである。
【0068】
本実施例において、質問文の個数は7個であるが、択一関係となる質問文を含まないと仮定した場合にチェックパターンは27個まで作成し得る。つまり、あらかじめ予測された解答類型に該当しないチェックパターンを有する答案も十分に存在し得る。このとき、この答案についての解答類型を分析することで、あらかじめ予測し得なかった解答類型までも分類の対象とし得る。
【0069】
さらに、本システムにおいて、ステップ2又はステップ3で答案データを再送出するに先立って、各質問文について修正をして、これをサーバコンピュータ22に入力し、チェックボックスシート記憶領域25に修正した質問文群を記憶させるようにしてもよい。この場合において、質問文の修正は、質問文で求める内容を実質的に変更することなく、表現などを変更して行われる。修正された質問文は求める内容が実質的に変更されていないため、回答処理により再送出されて受信されるチェックパターンは、既に、チェックパターン記憶部に記憶されたチェックパターンと相関を得ることが出来て、保留を含むチェックパターンの数を効率的に減らすことが出来得る。例えば、「P」の多かった質問文について、上記した回答や分類についての同一の判断基準を共有する少人数の分類者丙・丁によって、他の分類者がより判断に迷わないように質問文を修正する。このようにすることで、より効率的でありながら客観性のより高い答案分類支援システムを与えることができる。
【0070】
ここまで本発明による代表的実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 答案分類支援システム
10、50 第1のチェックボックスシート
11、60 第2のチェックボックスシート
21 クライアントコンピュータ
22 サーバコンピュータ
CQ1〜CQ7 質問文
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を複数の解答類型に分類するための答案分類支援システムであって、
前記答案のそれぞれを画像データとしてこれを識別するための識別符号を関連付けて記憶した答案データ記憶部と、
肯定又は否定の二択の質問文の複数からなる質問文群を記憶したチェックボックスシート記憶部と、
前記質問文群とともに、前記識別符号及びこれに関連付けされた前記答案の前記画像データを順次、端末装置に向けて送出する送出部と、
前記識別符号とともに前記質問文群に対するチェックパターンのデータを前記端末装置から受信し前記識別符号及び前記チェックパターンを関連付けてチェックパターン記憶部に記憶させる受信部と、を含み、
前記チェックパターンは前記質問文群の前記質問文のそれぞれに対応する肯定、否定又は保留のいずれかからなる回答の集合であり、
前記チェックパターン記憶部に記憶された前記チェックパターンのうち保留を含む前記チェックパターンに対応する前記識別符号を検索する検索部と、
前記送出部に対して、前記検索部で検索された前記識別符号及びこれに関連付けられた前記画像データを順次、前記質問文群とともに前記端末装置に向けて再送出するよう仕向けさせる再送出部と、を更に含むことを特徴とする答案分類支援システム。
【請求項2】
前記再送出部の起動に先立って、前記質問文群の前記質問文毎の修正を外部入力させて前記チェックボックスシート記憶部に修正質問文群を記憶させる追加入力部と、を更に含み、前記再送出部は、前記チェックボックスシート記憶部の前記修正質問文群を前記送出部に対して再送出するよう仕向けさせることを特徴とする請求項1記載の答案分類支援システム。
【請求項3】
前記質問文群の前記質問文の個数をnとし、前記解答類型をm個(m>2)とすると、2n>mを満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の答案分類支援システム。
【請求項1】
受験者に問題を提示した上で一定量の自由な答案の記述を求める記述式問題テストにおいて、受験者の想起した解答が表現された答案を複数の解答類型に分類するための答案分類支援システムであって、
前記答案のそれぞれを画像データとしてこれを識別するための識別符号を関連付けて記憶した答案データ記憶部と、
肯定又は否定の二択の質問文の複数からなる質問文群を記憶したチェックボックスシート記憶部と、
前記質問文群とともに、前記識別符号及びこれに関連付けされた前記答案の前記画像データを順次、端末装置に向けて送出する送出部と、
前記識別符号とともに前記質問文群に対するチェックパターンのデータを前記端末装置から受信し前記識別符号及び前記チェックパターンを関連付けてチェックパターン記憶部に記憶させる受信部と、を含み、
前記チェックパターンは前記質問文群の前記質問文のそれぞれに対応する肯定、否定又は保留のいずれかからなる回答の集合であり、
前記チェックパターン記憶部に記憶された前記チェックパターンのうち保留を含む前記チェックパターンに対応する前記識別符号を検索する検索部と、
前記送出部に対して、前記検索部で検索された前記識別符号及びこれに関連付けられた前記画像データを順次、前記質問文群とともに前記端末装置に向けて再送出するよう仕向けさせる再送出部と、を更に含むことを特徴とする答案分類支援システム。
【請求項2】
前記再送出部の起動に先立って、前記質問文群の前記質問文毎の修正を外部入力させて前記チェックボックスシート記憶部に修正質問文群を記憶させる追加入力部と、を更に含み、前記再送出部は、前記チェックボックスシート記憶部の前記修正質問文群を前記送出部に対して再送出するよう仕向けさせることを特徴とする請求項1記載の答案分類支援システム。
【請求項3】
前記質問文群の前記質問文の個数をnとし、前記解答類型をm個(m>2)とすると、2n>mを満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の答案分類支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−22185(P2012−22185A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160688(P2010−160688)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502194735)株式会社教育測定研究所 (10)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502194735)株式会社教育測定研究所 (10)
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