説明

箔こぼれ防止転写フイルム

【課題】箔こぼれを防止することはもちろん、転写層に易接着樹脂層によるムラが発生せず、また離型層の密着力低下や剥離層表面への着色剤の転移の問題もなく、さらにはスリット時の見当合わせも容易である転写フイルムを提供するものである。
【解決手段】プラスチックフイルムの片面に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、プラスチックフイルムと剥離層間に、プラスチックフイルムと密着しかつ剥離層と剥離する離型層、及びプラスチックフイルムと剥離層の両方に密着する易接着樹脂層がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されていることを特徴とする箔こぼれ防止転写フイルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形転写法や熱転写法により、成形品に装飾を施すための加飾用の転写フイルムであって、転写加工に適切な幅となるように該転写フイルムをスリットする際に、いわゆる箔こぼれが生じない転写フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフイルム、離型層、剥離層、装飾層、及び接着層からなる加飾用の転写フイルムが知られており、該転写フイルムは、被転写物に転写層(剥離層、装飾層、及び接着層)を転写することにより、被転写物に意匠性を付与するものである。
一般的に上記転写フイルムは、被転写物に所望の意匠を付与するために、被転写物の幅に合わせて必要な幅の長尺ロール巻きで生産すると不経済であるため、一旦、広幅の長尺ロール巻きで生産した後、転写加工に適切な幅、すなわち被転写物の幅に合わせた必要な幅の長尺ロール巻きとなるようにスリットすることが通常行なわれている。
そして上記転写フイルムをスリットする際に、いわゆる箔こぼれ(カッター刃が当たる部分の転写層が剥離する現象)を防止する転写フイルムが知られている。
特許文献1には、ベースフィルム(プラスチックフイルム)の片面に、コロナ処理法やアンカーコートを施す方法などによる易接着処理が全面に施され、該易接着処理面上に離型層がスリット部分を除いて設けられ、ベースフィルムの離型層が設けられた側の面に離型層からは剥離するがベースフィルムからは剥離しない剥離層が全面に設けられ、剥離層上に柄層(装飾層)、接着剤層(接着層)が順次形成された転写箔(転写フイルム)が記載されている。
特許文献1記載の転写箔は、易接着処理面上に離型層をスリット部分を除いて形成することにより、離型層が形成されている部分(非スリット部分)と、離型層が形成されていない部分(スリット部分)とを、位置的に明確に区別することにより、スリット部分のみをカッター刃でスリットすることで、箔こぼれを防止しようとするものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−58584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1記載の転写箔には、以下に示す欠点があった。
(1)特許文献1記載の転写箔は、易接着処理がプラスチックフイルム上に全面に施されており、特に易接着処理がアンカーコートを施したもの(易接着樹脂層)とした場合には、アンカーコートに塗りムラが生じることがあり、そのためアンカーコート上の離型層はもちろん、離型層上の剥離層などの転写層にも該塗りムラの影響によるムラが発生するため、該転写箔を被転写物に転写して得られる成形品にも該ムラによる外観不良が多発するという問題があった。
(2)また、易接着処理がアンカーコートではなくコロナ処理等の表面処理を施した場合には、上記ムラの問題はないものの、易接着処理の効果が長期間持続しないことがあり、転写箔を長期間保存してスリットした際に、箔こぼれを防止できない場合があった。
(3)スリット時にカッター刃がスリット部分をはずれないようにするための見当合わせのために、スリット部分、又は非スリット部分の何れかを染料等の着色剤で着色するなどの手段を採用することが考えられるが、特許文献1記載の転写箔は、仮にアンカーコートや離型層に着色した場合には、剥離層の上に柄層を形成する際に、着色されたアンカーコートや離型層が邪魔をして柄層の色合わせ(調色)が困難となり、その結果、被転写物に所望の意匠を付与できない等の問題があった。
(4)また、離型層を染料等の着色剤で着色すると、着色剤の影響によりプラスチックフイルムと離型層間の密着力が悪くなり、離型層がプラスチックフイルムから剥離してしまう場合があった。さらに、転写箔を被転写物に転写する際に着色剤が剥離層表面に転移してしまい、剥離層の性能、例えばハードコート性等に悪影響を与える場合があった。
【0005】
本発明は、上記全ての欠点を除去したものであり、箔こぼれを防止することはもちろん、転写層に易接着樹脂層によるムラが発生せず、また離型層の密着力低下や剥離層表面への着色剤の転移の問題もなく、さらにはスリット時の見当合わせも容易である転写フイルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、プラスチックフイルムの片面に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、プラスチックフイルムと剥離層間に、プラスチックフイルムと密着しかつ剥離層と剥離する離型層、及びプラスチックフイルムと剥離層の両方に密着する易接着樹脂層がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されていることを特徴とする箔こぼれ防止転写フイルムである。
[2]本発明は、易接着樹脂層が、着色剤により着色されている上記[1]記載の箔こぼれ防止転写フイルムである。
[3]本発明は、装飾層が、着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層を含むものである上記[1]、又は[2]記載の箔こぼれ防止転写フイルムである。
[4]本発明は、着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層が部分的に形成されている上記[3]記載の箔こぼれ防止転写フイルムである。
[5]本発明は、装飾層が、部分的に形成されている上記[3]記載の箔こぼれ防止転写フイルムである。
[6]本発明は、線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されている離型層、及び易接着樹脂層の線と線の隙間が、0〜5mmである上記[1]〜[5]記載の箔こぼれ防止転写フイルムである。
【発明の効果】
【0007】
1)本発明の箔こぼれ防止転写フイルムは、プラスチックフイルムと離型層の間に易接着樹脂層が形成されていないので、易接着樹脂層の塗りムラにより離型層にムラが生じることがなく、離型層上に形成されている転写層はもちろん、該転写フイルムを被転写物に転写して得られる成形品にも該ムラによる外観不良が発生することがない。
2)また、易接着樹脂層は、コロナ処理等の表面処理ではなく、樹脂からなる薄膜であるため、易接着処理の効果(易接着樹脂層とプラスチックフイルム及び剥離層との密着力)が長期間持続し、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを長期間保存してスリットした際にも、箔こぼれを防止できる。
3)スリット時にカッター刃がスリット部(易接着樹脂層上の剥離層、装飾層、及び接着層が形成されている部分、スリット部に装飾層が形成されていない場合には、易接着樹脂層上の剥離層、及び接着層が形成されている部分)をはずれないようにするための見当合わせのために、離型層は着色せず、易接着樹脂層を着色するので、離型層上に形成される剥離層の上に装飾層を形成する際にも、装飾層の色合わせ(調色)が容易になり、その結果、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの生産性も向上するとともに、被転写物に所望の意匠を容易に付与することが可能となった。
4)易接着樹脂層を着色剤で着色し、離型層には着色しないので、着色剤の影響によりプラスチックフイルムと離型層間の密着力が悪くなって、離型層がプラスチックフイルムから剥離することがない。さらに、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを転写する際に着色剤が剥離層表面に転移して、剥離層の性能、例えばハードコート性等に悪影響を与えることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムは、前記の一般的な加飾用の転写フイルムと同様、被転写物に所望の意匠を付与するために、被転写物の幅に合わせて必要な幅の長尺ロール巻きで生産すると不経済であるため、一旦、広幅の長尺ロール巻きで生産した後、転写加工に適切な幅、すなわち被転写物の幅に合わせた必要な幅の長尺ロール巻きとなるようにスリットする際に箔こぼれを防止できるものである。
ここで本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを図1〜3に従って説明する。
図1は、広幅、長尺ロール巻きの本発明の箔こぼれ防止転写フイルムA、及び該転写フイルムの一部を巻きだした斜視図であり、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムAは、プラスチックフイルム上に、離型層、剥離層、装飾層、及び接着層が形成されている転写層形成部Tと、易接着樹脂層、剥離層、必要により装飾層(転写フイルム全面に装飾層を形成するなど、スリット部に装飾層が形成されている場合)、及び接着層が形成されているスリット部Sとが、それぞれ線状に、交互に形成されている。
このように、図1は、転写層形成部Tとスリット部Sとがそれぞれ線状に、交互に形成することで、転写層形成部Tを複数列(図1においては2列)設けた広幅、長尺ロール巻きの本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを示している。
転写層形成部Tは、上記の通り、プラスチックフイルム上に離型層、剥離層、装飾層、及び接着層が形成されている部分をいい、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを被転写物に転写することにより離型層上の転写層(剥離層、装飾層、及び接着層)を被転写物に転写して、得られる成形品に所望の意匠を付与する部分である。
また、スリット部Sは、上記の通り、プラスチックフイルム上に易接着樹脂層、剥離層、必要により装飾層、及び接着層が形成されている部分をいい、この部分をカッター刃でスリットすることにより、箔こぼれを防止する役割を果たす部分である。
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムは、スリット部Sをカッター刃でスリットすることにより、箔こぼれせずに、転写層形成部が1列ごとの長尺ロール巻きの転写フイルムを製造することができる。
【0009】
図2は、装飾層が全面に形成された本発明に係る箔こぼれ防止転写フイルムの一例を示す一部拡大断面図であり、プラスチックフイルム1の片面に、剥離層4、装飾層5、及び接着層6が順次全面に形成されており、プラスチックフイルム1と剥離層4間に、離型層2、及び易接着樹脂層3がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されていることを示している。
また、図2[a]は離型層と易接着樹脂層間の隙間がない例を示した図であり、転写層形成部Tとスリット部Sとが隣接して形成されている。
図2[b]は離型層と易接着樹脂層間に隙間xがある例を示した図であり、転写層形成部Tとスリット部Sが隙間xをはさんで形成されている。
【0010】
図3は、装飾層が部分的に形成された本発明に係る箔こぼれ防止転写フイルムの一例を示す一部拡大断面図であり、プラスチックフイルム1の片面に、剥離層4が全面に、装飾層5が転写層形成部にのみ、接着層6が全面に順次形成されており、プラスチックフイルム1と剥離層4間に、離型層2、及び易接着樹脂層3がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されているもので、離型層と易接着樹脂層間に隙間xがある例を示した図である。
また、図2[b]と同様、転写層形成部Tとスリット部Sが隙間xをはさんで形成されているものである。
【0011】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムに使用するプラスチックフイルムは、従来から転写フイルムに使用されるプラスチックフイルムであれば使用可能であり、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、アクリルフイルム、ポリイミドフイルム、ポリアミドイミドフイルム、フッ素フイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム等の各種プラスチックフイルムが使用できる。
また、意匠性の向上を目的に、プラスチックフイルムの離型層側に、ヘアライン加工、エンボス加工、マット加工等の凹凸加工を施してもよく、こうすることで、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムをプラスチック基材等の被転写物に転写して得られる成形品の転写部分表面が凹凸形状となり、できあがった成形品をより意匠性に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムは、上記プラスチックフイルム上に、プラスチックフイルムと密着しかつ剥離層と剥離する離型層、及びプラスチックフイルムと剥離層の両方に密着する易接着樹脂層がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されている。
このように、プラスチックフイルム上に、離型層と易接着樹脂層をお互いが重ならないように交互に形成することで、前記した本願発明の効果、すなわち易接着樹脂層の塗りムラから生じる転写層のムラの発生がなく、またスリットの見当合わせのために、離型層は着色せず、易接着樹脂層を着色するので、離型層上に形成される剥離層の上に装飾層を形成する際にも、装飾層の色合わせ(調色)が容易になり、さらには、プラスチックフイルムと離型層間の密着力が悪くなったり、着色剤が剥離層表面に転移して、剥離層の性能に悪影響を与えることもないなどの優れた効果を発揮することができる。
【0013】
上記離型層は樹脂からなるもので、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムをプラスチック基材等の被転写物に転写して、プラスチックフイルムを剥離する際に、プラスチックフイルムとともに被転写物から剥離されるもので、離型層上に形成されている転写層(剥離層、装飾層、及び接着層)を被転写物に転写することで、被転写物に意匠性やハードコート性等を付与するものである。
従って、離型層はプラスチックフイルムと密着しかつ後で述べる剥離層と剥離する離型性が必要である。
また、前記の通り、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムは、スリット時にカッター刃がスリット部をはずれないようにするための見当合わせのために、易接着樹脂層を着色剤で着色するので、離型層を着色することはない。
【0014】
前記の通り離型層は線状に、かつ易接着樹脂層と重ならないように交互に形成されるものであるが、離型層は離型層上に形成されている転写層を被転写物に転写して、被転写物に意匠性やハードコート性等を付与するためのものであるので、線の幅は所望の意匠に応じて適宜決定される。
【0015】
離型層に使用する樹脂は、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が使用できる。
【0016】
離型層の厚さは、離型層の樹脂の種類や上記剥離層の樹脂の種類等により適宜決定すればよいが、大よそ0.5〜1.5μmである。
【0017】
離型層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0018】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムに形成される易接着樹脂層は、転写層形成部を複数列設けた広幅、長尺ロールの本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを、転写層形成部が1列ごとの長尺ロール巻きとなるように該転写フイルムをスリットする際に、易接着樹脂層上の剥離層、必要により装飾層、接着層とともに、カッター刃によりスリットする部分(スリット部)となるものである。
易接着樹脂層は、プラスチックフイルムと易接着樹脂層上に形成される剥離層との密着力を向上することができるので、易接着樹脂層が形成されているスリット部をスリットすることにより、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムが箔こぼれを防止することができるのである。
易接着樹脂層は、樹脂からなるものであり、また前記の通り離型層と同様、線状に形成され、かつ離型層と重ならないように交互に形成されるものである。
【0019】
また、易接着樹脂層を、前記樹脂に染料や顔料等の着色剤を混入して着色した易接着樹脂層としてもよい。
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムは、上記の通り、離型層と易接着樹脂層をともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成することで、易接着樹脂層を着色することが可能となり、離型層に着色する必要がないので、離型層上に形成される剥離層の上に、装飾層を形成する際にも、色合わせ(調色)が容易になるとともに、着色剤の影響によりプラスチックフイルムと離型層間の密着力が悪くなり、離型層がプラスチックフイルムから剥離することがない。
さらに、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを転写する際にも着色剤が剥離層表面に転移して、剥離層の性能、例えばハードコート性等に悪影響を与えることもない。
【0020】
易接着樹脂層は、箔こぼれ防止のために、プラスチックフイルムと剥離層の両方に密着することが必要である。
従って、易接着樹脂層に使用する樹脂は、上記目的を達成できる樹脂であれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂が使用できる。
また上記樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れでもよいが、箔こぼれを防止する目的でプラスチックフイルム、及び剥離層との密着性を考慮すると、熱硬化性樹脂が好ましく、さらに上記樹脂にイソシアネート等の硬化剤を混合して、2液硬化型の熱硬化性樹脂としておけばより好ましい。
【0021】
易接着樹脂層の厚さは、易接着樹脂層の樹脂の種類や上記剥離層の樹脂の種類等により適宜決定すればよいが、大よそ0.05〜1μmである。
【0022】
易接着樹脂層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0023】
易接着樹脂層は、上記の通り線状に形成される。
線の幅は特に制限はないが、あまり狭すぎるとスリットする際にカッター刃の位置が少しでもずれるとスリット部ではなく転写層形成部をスリットしてしまうなどの不具合が発生し、場合によっては機械を停止したり、ずれを防止するためにスリットする速度を遅くしたりする必要が生じるなどスリットの作業性が悪くなり好ましくない。
また、あまり線の幅が広すぎると、その分、相対的に離型層の幅すなわち転写層形成部の幅が狭くなってしまうか、離型層の幅すなわち転写層形成部の幅を確保するためにプラスチックフイルムの幅を必要以上に広げる必要が生じるなど、不経済である。
以上のことから、易接着樹脂層の線幅は、5〜40mmが好ましい。
【0024】
前記の通り、易接着樹脂層は、転写層形成部を複数列設けた広幅、長尺ロール巻きの本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを、転写層形成部が1列ごとの長尺ロール巻きとなるようにスリットする部分となるものである。
線状に形成された易接着樹脂層と線状に形成された離型層とは、図2−aに示す通り、全く隙間なく形成されていてもよく、あるいは、図2−bに示す通り、ある程度の隙間xを設けて形成されていてもよい(尚、隙間x上に形成された剥離層、装飾層、及び接着層は、転写層形成部、及びスリット部の何れにも属さない)。
従って、易接着樹脂層と離型層が重なって形成されているような場合、すなわち易接着樹脂層上の一部に離型層が重なって形成されている場合や、離型層上の一部に易接着樹脂層が重なって形成されている場合は本発明には含まれない。
このように、易接着樹脂層と離型層が重なって形成されていると、重なった部分は当然段差となり、該段差はその上に形成する剥離層にも同様の段差を生じさせる。
その結果、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを長尺ロール巻きした際に、該段差部分がどんどん重なることで、該転写フイルムの該段差部分が巻き型となったり、場合によってはブロッキングを生じたりする。
さらには、後で述べる装飾層、特に装飾層として印刷層や着色層を形成した場合に、印刷層や着色層が上記段差部分にうまく形成できず、該段差部分周辺の印刷層や着色層の色が薄くなってしまうという問題が生じる。
【0025】
上記隙間は、あまり大きく設けても不要な部分が増えるだけで不経済であるとともに、巻き型になる場合があるので好ましくない。
従って、易接着樹脂層と離型層との隙間は、0〜5mmが好ましい。
【0026】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムに形成する剥離層は、少なくとも上記離型層及び易接着樹脂層上から、該転写フイルムの全面に形成され、該転写フイルムを被転写物に転写した後は、被転写物上に形成される転写層の最表面に形成されるものである。
そして、上記転写層中の装飾層等をキズなどから保護する役割を果たす。
【0027】
従って、剥離層に使用する樹脂は、装飾層などをキズ等から保護できる樹脂であれば特に問題はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂が使用できる。
しかし、剥離層はハードコート性を付与することを目的に形成されることが多く、このような場合には、熱硬化性のメラミン系樹脂、アクリル系樹脂や、紫外線硬化性のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂等のハードコート性を有する樹脂が使用できる。
【0028】
剥離層の厚さは、剥離層の樹脂の種類や剥離層を形成する目的等により適宜決定すればよいが、大よそ0.5〜10μmである。
【0029】
剥離層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0030】
また、剥離層と後で述べる装飾層の間に、両層の密着性を向上する目的で、樹脂からなるプライマー層を形成しておいても構わない。
プライマー層の樹脂の種類や厚さは、剥離層の樹脂の種類や厚さ、及び装飾層の種類(印刷層、着色層、金属薄膜層など)や厚さなどにより適宜決定すればよい。
【0031】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムに形成する装飾層は、着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層を含むものである。
従って、装飾層は、上記着色層、印刷層、金属薄膜層のうち、1層のみからなっていても、必要な2層を組み合わせたものでも、3層からなっていてもよい。
【0032】
また装飾層は、上記金属薄膜層、着色層、印刷層以外の層を含んでいてももちろんよい。
例えば、金属薄膜層、着色層、印刷層を保護するための樹脂からなる保護層、上記金属薄膜層、着色層、印刷層の何れかを2層又は3層形成した場合に、各層間の密着性を向上する目的で形成されるやはり樹脂からなるプライマー層等がある。
装飾層を構成する層の組み合わせや形成する順序は、所望の意匠に合わせて適宜決定すればよい。
【0033】
また、装飾層は、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの全面に形成されていてもよく、また部分的に形成されていてもよい。
ここで、装飾層が本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの全面に形成されている場合とは、装飾層が転写層形成部、スリット部、あるいは離型層と易接着樹脂層の間に隙間がある場合にはその上の剥離層上の何れにも形成されていることをいう。
また、装飾層が、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの部分的に形成されている場合とは、少なくとも転写層形成部の一部分には形成されていることをいい、転写層形成部以外に、スリット部、あるいは離型層と易接着樹脂層の間に隙間がある場合にはその上の剥離層上の一部分にも形成されている場合ももちろん含まれる。
例えば、装飾層が本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの全面に形成されている場合や、装飾層が該転写フイルムの部分的に形成されている場合であっても転写層形成部の全面に形成されているような場合は、該転写フイルムを被転写物に転写して得られる成形品の転写層全体に装飾層による意匠を付与することができ、転写層形成部の一部分に装飾層が形成されている場合には、成形品の転写層の一部分に意匠を付与することができる。
【0034】
また、着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層が部分的に形成されているものでもよい。
ここで、部分的に形成されている意味は、上記と同様、少なくとも転写層形成部の一部分には形成されていることをいい、転写層形成部以外に、スリット部、あるいは離型層と易接着樹脂層の間に隙間がある場合にはその上の剥離層上の一部分にも形成されている場合ももちろん含まれる。
着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層が部分的に形成されている例として、装飾層が着色層と金属薄膜層とからなる場合に、着色層が本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの全面に形成され、金属薄膜層が転写層形成部のみ(転写層形成部の全面)に形成されている例、装飾層が着色層、印刷層、金属薄膜層の3層からなる場合に、着色層が本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの全面に形成され、金属薄膜層が転写層形成部のみ(転写層形成部の全面)に、印刷層が転写層形成部の一部分に形成されている例が挙げられる。
【0035】
上記金属薄膜層は、本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び該転写フイルムを転写して得られる成形品に、金属光沢を付与するものである。
金属薄膜層は、一般的な加飾用転写フイルムに使用される金属薄膜層であれば特に制限はなく、アルミニウム薄膜層、スズ薄膜層、クロム薄膜層、ニッケル薄膜層、銀薄膜層、銅薄膜層等の従来公知の金属薄膜層が使用できる。
金属薄膜層の種類や厚さは、所望の意匠により適宜決定すればよい。
また、金属薄膜層の形成方法も、真空蒸着法、スパッタリング蒸着法、CVD蒸着法等、従来公知の方法が使用できる。
【0036】
上記着色層は、本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び該転写フイルムを転写して得られる成形品に、所望の着色を付与するものである。
着色層は、樹脂と染料や顔料等の着色剤とからなるものであり、使用する樹脂や着色剤は一般的な加飾用転写フイルムに使用される従来公知の樹脂や着色剤が使用できる。
着色層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0037】
上記印刷層は、本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び該転写フイルムを転写して得られる成形品に、所望の柄を付与するものである。
印刷層は、樹脂と着色剤とからなる一般的な印刷インキを、グラビアコート法、スクリーン印刷法等の方法を使用して形成される。
印刷層は、所望の柄により、複数層形成してもよい。
【0038】
装飾層は、上記金属薄膜層、着色層、印刷層等を適宜組み合わせて、所望の意匠となるようにすればよい。
例えば、剥離層側から着色層、及び金属薄膜層を順次形成した装飾層とすれば、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを転写して得られる成形品の表面に、金属光沢が着色された意匠(例えば、黄色に着色された着色層の色と、アルミニウム薄膜層のシルバー色の金属光沢が相俟って、ゴールド色を呈する意匠)を付与することができる。
また、剥離層側から印刷層を柄状に形成し、その上に金属薄膜層を形成した装飾層とすれば、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを転写して得られる成形品の表面に、柄状の印刷が施された金属光沢を呈する意匠を付与することができる。
このように、装飾層は金属薄膜層、着色層、印刷層等を適宜組み合わせることにより、バリエーションに富んだ意匠を付与することができる。
【0039】
尚、装飾層が部分的に形成されている場合や、装飾層中の着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層が部分的に形成されている場合には、前記した易接着樹脂層と離型層が重なって形成されている場合に生じるのと同様の段差が発生する。
しかし、上記装飾層が原因で発生する段差は、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを長尺ロール巻きした場合でも、易接着樹脂層と離型層が重なって形成されている場合に生じる段差と異なり、同じ位置に段差部分が重なることはないため、該段差部分が原因で巻き型となったり、ブロッキングを生じたりすることはない。
【0040】
本発明の箔こぼれ防止転写フイルムに形成する接着層は樹脂からなり、被転写物と転写層とを接着するもので、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムの全面に形成される。
接着層に使用する樹脂の種類は、被転写物の材質に合わせて適宜決定すればよく、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂が使用できる。
【0041】
接着層の厚さは、接着層の樹脂の種類や被転写物の材質等により適宜決定すればよいが、大よそ0.5〜5μmである。
また、接着層の形成方法はグラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
厚さ50μm、幅670mm、長さ2000mの広幅、長尺ロール巻きのポリエチレンテレフタレートフイルムの片面に、グラビアコート法によりポリエステル系樹脂、イソシアネート、黄色染料とからなる厚さ0.2μmの易接着樹脂層を幅20mmの線状に3本、及びグラビアコート法によりメラミン系樹脂よりなる厚さ1μmの離型層を幅280mmの線状に2本、お互いが重ならないように、交互に(幅方向に端から、黄色に着色された易接着樹脂層、離型層、黄色に着色された易接着樹脂層、離型層、黄色に着色された易接着樹脂層となるよう)形成した。
このときの易接着樹脂層と離型層との隙間は、0.3mmとした。
次に、易接着樹脂層、及び離型層上に、リバースコート法によりアクリル系樹脂よりなる厚さ5μmの剥離層を全面に形成するとともに、リバースコート法によりアクリル系樹脂よりなる厚さ1.5μmプライマー層を全面に形成した。
さらに、プライマー層上に、装飾層として、グラビアコート法によりアクリル系樹脂とイソシアネートからなる厚さ1μmの保護層を全面に形成し、保護層上にグラビアコート法により白色印刷インキを使用した柄状で白色の印刷層を、離型層が形成されている部分にのみ形成した。
さらに装飾層上に、グラビアコート法によりアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層をそれぞれ全面に形成し、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを製造した。
【0043】
[実施例2]
実施例1の白色の印刷層に替えて、真空蒸着法により厚さ50nmのアルミニウム薄膜層を全面に形成したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の箔こぼれ防止転写フイルムを製造した。
【比較例】
【0044】
実施例1のポリエチレンテレフタレートフイルム、易接着樹脂層、及び離型層に替えて、厚さ0.2μmのポリエステル系樹脂をインラインによる易接着処理(プラスチックフイルムの製膜と同時に樹脂をコーティングすることによるプラスチックフイルム表面の易接着処理)した厚さ50μm、幅670mm、長さ2000mの広幅、長尺ロール巻きのポリエチレンテレフタレートフイルムの易接着処理面上に、グラビアコート法によりメラミン系樹脂と黄色染料よりなる厚さ1μmの黄色に着色された離型層を幅280mmの線状に2本、離型層と離型層の間隔を20mmとなるように形成した以外は、実施例1と同様にして、転写フイルムを形成した。
【0045】
実施例1、2の本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び比較例の転写フイルムについて、以下の試験を行い性能を比較した。
【0046】
1.箔こぼれ評価試験
(評価資料)
上記の広幅、長尺ロール巻きの実施例1、2の本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び比較例の転写フイルムを各1ロール準備して評価資料とした。
(評価方法)
スリット機に、スリット部(実施例1の本発明の箔こぼれ防止転写フイルムについてはポリエチレンテレフタレートフイルム上に易接着樹脂層、剥離層、プライマー層、及び接着層が形成されている部分、実施例2の本発明の箔こぼれ防止転写フイルムについてはポリエチレンテレフタレートフイルム上に易接着樹脂層、剥離層、プライマー層、装飾層、及び接着層が形成されている部分、比較例の転写フイルムについてはポリエチレンテレフタレートフイルムの易接着処理上に剥離層、プライマー層、及び接着層が形成されている部分)をスリットできるよう、位置調整した丸刃(円形状のスリット刃)を3箇所にセットし、スリット部の接着層面側からスリットした。
スリットした部分を目視にて評価して、転写層がポリエチレンテレフタレートフイルムや易接着樹脂層から剥離していないものを○、部分的に剥離していたものを×とした。
(評価結果)
表1
【0047】
2.易接着樹脂層(易接着処理)のムラ評価試験
(評価資料)
上記「箔こぼれ評価試験」でスリットした後の長尺ロール巻きの実施例1、2の本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び比較例の転写フイルムを各1ロール準備して評価資料とした。
(評価方法)
実施例1、2の本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び比較例の転写フイルムをそれぞれ目視にて評価した結果、塗りムラに起因するムラが発生していなかったものを○、ムラが発生していたものを×とした。
(評価結果)
表1
【0048】
3.染料の移行性評価試験
(評価資料)
上記「箔こぼれ評価試験」でスリットした後の長尺ロール巻きの実施例1、2の本発明の箔こぼれ防止転写フイルム、及び比較例の転写フイルムを各1ロール準備し、被転写物である透明アクリル板にそれぞれ熱転写して、各々成形品を作成して評価資料とした。
(評価方法)
上記各々の成形品の転写層表面をそれぞれ目視にて評価して、転写層の表面が全く黄色味を帯びておらず染料が転移していないものを○、転写層表面が黄色味を帯びており染料が転移していたものを×とした。
(評価結果)
表1
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】広幅、長尺ロール巻きの本発明の箔こぼれ防止転写フイルムA、及び該転写フイルムの一部を巻きだした斜視図であり、転写層形成部Tが2本、線状のスリット部Sが3本、ともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されている。
【図2】装飾層が全面に形成された本発明に係る箔こぼれ防止転写フイルムの一例を示す一部拡大断面図であり、プラスチックフイルム1の片面に、剥離層4、装飾層5、及び接着層6が順次全面に形成されており、プラスチックフイルム1と剥離層4間に、離型層2、及び易接着樹脂層3がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されているもので、図2[a]は離型層と易接着樹脂層間の隙間がない例を示した図であり、図2[b]は離型層と易接着樹脂層間に隙間xがある例を示した図である。 尚、図2[a]は転写層形成部Tとスリット部Sとが隣接して形成されており、図2[b]は転写層形成部Tとスリット部Sが隙間xをはさんで形成されている。
【図3】装飾層が部分的に形成された本発明に係る箔こぼれ防止転写フイルムの一例を示す一部拡大断面図であり、プラスチックフイルム1の片面に、剥離層4が全面に、装飾層5が転写層形成部にのみ、接着層6が全面に順次形成されており、プラスチックフイルム1と剥離層4間に、離型層2、及び易接着樹脂層3がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されているもので、離型層と易接着樹脂層間に隙間xがある例を示した図である。 尚、転写層形成部Tとスリット部Sが隙間xをはさんで形成されている。
【符号の説明】
【0051】
1 プラスチックフイルム
2 離型層
3 易接着樹脂層
4 剥離層
5 装飾層
6 接着層
10 転写層
A 本発明の箔こぼれ防止転写フイルム
S スリット部
T 転写層形成部
x 離型層と易接着樹脂層の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフイルムの片面に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、プラスチックフイルムと剥離層間に、プラスチックフイルムと密着しかつ剥離層と剥離する離型層、及びプラスチックフイルムと剥離層の両方に密着する易接着樹脂層がともに線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されていることを特徴とする箔こぼれ防止転写フイルム。
【請求項2】
易接着樹脂層が、着色剤により着色されている請求項1記載の箔こぼれ防止転写フイルム。
【請求項3】
装飾層が、着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層を含むものである請求項1、又は2記載の箔こぼれ防止転写フイルム。
【請求項4】
着色層、印刷層、金属薄膜層の少なくとも1層が部分的に形成されている請求項3記載の箔こぼれ防止転写フイルム。
【請求項5】
装飾層が、部分的に形成されている請求項3記載の箔こぼれ防止転写フイルム。
【請求項6】
線状に、かつお互いが重ならないように交互に形成されている離型層、及び易接着樹脂層の線と線の隙間が、0〜5mmである請求項1〜5記載の箔こぼれ防止転写フイルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−36480(P2010−36480A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202749(P2008−202749)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000156042)株式会社麗光 (33)
【Fターム(参考)】