説明

管体切断方法及び管体切断装置

【課題】静止した金属製薄肉管体の端部を、切断面に切り屑の残留や半径方向の変形を生じさせることなく、切断することができるようにする。
【解決手段】円筒形管体100の外周面101に当接する内周面11と円軸方向Xに直交する刃面12とを有する外刃1、及び円筒形管体100の内周面102に対向する円形の外周面21と軸方向Xに直交する刃面22とを有する内刃1を、刃面12及び刃面22が切断面CPで互いに対向するように配置する。内刃2を、自転可能に支持するとともに、中心23から所定長さ1だけ偏心した軸24周りに最大径D2が円筒形管100体の外径D1より大きい円軌道25上を移動させつつ、外周面22が円筒形管体100の内周面102に当接しない位置から円軌道25が全周にわたって円筒形管体100の外側に露出する位置まで半径方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、それぞれの刃面が切断位置を挟んで配置された外刃及び内刃によって円筒形管体を軸方向に直交する方向に切断する管体切断方法、及びこの管体切断方法を用いて円筒形管体を切断する管体切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形管体製品には、内燃機関の排気マニホールドのように、管体の軸方向における中間部分に曲げ加工、拡管加工、縮管加工等の変形加工を施した薄肉金属製の管体がある。このような管体は、中間部分の変形加工時に端部に、チャック機構等によって端部を挟持され、端部に損傷を生じる。このため、管体は、中間部分の変形加工後に、損傷した端部を切断して除去する必要がある。
【0003】
円筒形管体の端部を切断する際には、円筒形管体を回転させ、切削用のバイトを円筒形管体の半径方向に沿って移動させる方法が考えられる。ところが、円筒形管体が軸方向における中間部分で曲げ加工よって傾斜している場合には、円筒形管体を回転させることが困難になる。
【0004】
そこで、従来の管体切断装置として、支持体に複数の円盤状の切断刃を管体の半径方向に移動自在にして支持し、この支持体を円筒形管体の軸廻りに回転させつつ複数の切断刃を互いに近接させて静止した円筒形管体を切断するものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−130646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の管体切断装置を薄肉の円筒形管体の切断に用いると、切断面に切り屑の残留や半径方向の変形を生じ易く、切り屑を取り除く作業や拡管作業等の後加工が必要になる問題がある。
【0007】
この発明の目的は、静止した円筒形管体の端部を、切断面に切り屑の残留や半径方向の変形を生じさせることなく、切断することができる管体切断方法及び管体切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の管端切断装置は、外刃、内刃、第1の支持体、第2の支持体、スライダ、フレーム、駆動機構を備えている。外刃は、円筒形管体の外周面に全周にわたって当接する内周面、及び円筒形管体の軸方向に直交する第1の刃面を備えている。内刃は、円筒形管体の内周面に全周にわたって対向する円形の外周面、及び軸方向に直交する第2の刃面を備えている。第1の支持体は、外刃を、第1の刃面が軸方向における所定の切断面に位置するように支持する。第2の支持体は、円柱形状を呈し、内刃を、第2の刃面が第1の刃面に切断面で軸方向に対向する状態で、且つ第2の支持体の中心から偏心した軸廻りに回転自在に支持する。スライダは、第2の支持体を回転自在に支持する。フレームは、スライダを、内刃の外周面が外刃の内周面の内側に位置する初期位置と第2の支持体の回転軸が外刃の内周面の中心に一致する切断位置との間で、軸方向に直交する方向に沿って往復移動自在に支持する。
【0009】
駆動機構は、第1〜第4の工程を順に実行する。第1の工程では、スライダが初期位置にある状態で第2の支持体の回転を開始させる。第2の工程では、第2の支持体が回転している状態でスライダを切断位置まで移動させる。第3の工程では、スライダが切断位置にある状態で且つ内刃の外周面が外刃の内周面の外側に位置している状態で第2の支持体を少なくとも1回転させる。第4の工程では、第2の支持体の回転を停止させてスライダを初期位置まで移動させる。
【0010】
この構成では、外刃の第1の刃面と内刃の第2の刃面とが、円筒形管体の軸方向における所定の切断面で互いに対向するように配置される。駆動機構の第1の工程では、内刃の外周面が外刃の内周面の内側に位置する状態で、第2の支持体の回転が開始される。内刃は、第2の支持体に偏心した位置に支持されており、第2の支持体の回転にともなって外周面を徐々に外刃の内周面に接近させていく。
【0011】
駆動機構の第2の工程では、第2の支持体の回転が継続された状態で、スライダが初期位置から切断位置に向かって移動する。スライダが切断位置に達した時に、第2の支持体の回転軸が外刃の内周面の中心に一致する。内刃は、第2の支持体による円軌道上の移動とともに、スライダの切断位置への移動によっても、外周面を外刃の内周面の位置に接近させる。外周面が外刃の内周面に全周にわたって当接するように円筒形管体を配置すると、内刃は、円筒形管体を内周面から外周面に向かって切り込む。
【0012】
駆動機構の第3の工程では、この状態で、第2の支持体が1回転以上回転する。内刃はその半径に第2の支持体に対する偏心量を加えた長さの半径を最大半径とする円軌道であって外刃の内周面と同心上の円軌道に沿って移動する。内刃の半径、初期位置で内刃が外周面を外刃の内周面の位置から最も離間した距離、及び切断すべき円筒形管体の厚さを考慮して、内刃の円軌道の最大径が円筒形管体の外側に露出するように第2の支持体における内刃の偏心量を決定することで、円筒形管体が外刃の第1の刃面と外刃の第2の刃面との間で切断される。
【0013】
この構成において、駆動機構は、単一の駆動源の回転を、第2の支持体に伝達する回転伝達部材、及びスライダの往復直線動作に変換してスライダに伝達するスライダ用変換伝達部材を含むものとすることが好ましい。
【0014】
第2の支持体の回転及びスライダの往復移動を単一の駆動源によって動作させることができる。
【0015】
また、第1の支持部材は、軸方向に直交する方向に2分割に形成された第1及び第2の外刃を軸方向に直交する方向に沿って互いに離間及び接合する位置に往復移動自在に支持するものとし、駆動機構は、駆動源の回転を第1及び第2の外刃の往復直線動作に変換して第1及び第2の外刃に伝達する外刃用変換伝達部材をさらに含むものとすることが好ましい。
【0016】
第1及び第2の外刃の内周面を円筒形管体の外周面に容易に当接させることができるとともに、第1及び第2の外刃の離間、接合を第2の支持体の回転及びスライダの往復移動を単一の駆動源によって動作させることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、静止した金属製薄肉管体の端部を、切断面に切り屑の残留や半径方向の変形を生じさせることなく、切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)〜(C)は、この発明の実施形態に係る管体溶接方法における外刃及び内刃の配置状態を説明する側面断面図、内刃が初期位置にある時の正面断面図、及び内刃が切断位置にある時の正面断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、この発明の実施形態に係る管体切断装置の側面図及び正面図である。
【図3】(A)〜(C)は、同管体切断装置の第1の支持体の近接時の平面図、近接時の正面図及び離間時の正面図である。
【図4】(A)及び(B)は、同管体切断装置の第2の支持体の側面断面図及び正面図である。
【図5】(A)〜(C)は、同管体切断装置のスライダの初期位置の平面図、初期位置の正面図及び切断位置の正面図である。
【図6】(A)〜(H)は、同管体切断装置による管端切断時の駆動機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明の実施形態の管体切断方法及び管体切断装置を、図面を参照して説明する。この発明の管体切断方法は、図1(A)に示すように、外刃1及び内刃2を用いて外径D1の円筒形管体100をその軸方向Xにおける所定の切断面CPで切断する。
【0020】
外刃1は、円筒形管体100の外周面101に全周にわたって当接する内周面11、及び軸方向Xに直交する第1の刃面12を備えている。内刃2は、円筒形管体100の内周面102に全周にわたって対向する円形の外周面21、及び軸方向Xに直交する第2の刃面22を備えている。内刃2は、中心23廻りに自転可能に支持されている。
【0021】
図1(B)に示すように、円筒形管体100の切断開始前には、内刃2をその外周面21が外刃1の内周面11の内側に位置させておく。円筒形管体100を外刃1と内刃2との間に挿入できるようにするためである。内刃2をその中心23から距離L1だけ偏位した偏心位置24廻りに回転させると、内刃2は直径D2を最大径とする円軌道25に沿って公転する。距離L1は、内刃2の半径R、及び初期状態における外刃1の内周面11と内刃2の外周面21との最大距離L3に基づいて、直径D2が外刃1の内径(円筒形管体100の外径)D1よりも大きくなるように設定されている。
【0022】
内刃2を、図1(B)に示す状態で円軌道25に沿って矢印M方向に公転させつつ、図1(C)に示す状態まで、円軌道25の偏心位置24を軸方向Xに直交する矢印方向Y1に向かって外刃1の中心13まで距離L2だけ移動させる。この移動中に、内刃2は、外周面21の一部を円筒形管体100の外側に露出させ、刃面22と外刃1の刃面12との間での円筒形管体100の切断を開始する。
【0023】
図1(C)に示す状態では、内刃2は、刃面22と円筒形管体100及び刃面12との間の接触抵抗によって矢印N方向に自転しつつ、外刃1の中心13を中心とする円軌道25に沿って公転する。内刃2を円軌道25に沿って矢印M方向に1周以上公転させることで、刃面12と刃面22との間で円筒形管体100が全周にわたって切断することができる。
【0024】
この管体切断方法では、円筒形管体100の内部に配置した内刃2が、自転しつつ徐々に円筒形管体100の外側に露出し、外刃1の第1の刃面12と内刃2の第2の刃面22との間で円筒形管体100を全周に渡って切断する。このため、円筒形管体100の切断後の端面が円滑になり、拡管やバリ取り等の後処理を行う必要がない。
【0025】
図2(A)及び(B)に示すように、この発明の実施形態に係る管体切断装置10は、上述の管体切断方法を用いて薄肉円筒形管体100の管端を切断するものである。このため、管体切断装置10は、上述の外刃1及び内刃2に加えて、第1の支持体3、第2の支持体4、スライダ5、フレーム6、駆動機構7を備えている。
【0026】
外刃1は、第1の支持体3は、外刃1を、第1の刃面12が軸方向Xにおける所定の切断面CPに位置するように支持する。第2の支持体4は、円柱形状を呈し、外刃1の背面側で、内刃2を、第2の刃面22が第1の刃面12に切断面CPで軸方向Xに対向する状態で、且つ第2の支持体4の中心から偏心した軸廻りに回転自在に支持する。
【0027】
スライダ5は、第2の支持体4を回転自在に支持する。フレーム6は、スライダ5を、内刃2の外周面21が外刃1の内周面11の内側に位置する初期位置と第2の支持体4の回転軸が外刃1の内周面11の中心に一致する切断位置との間で、軸方向Xに直交する方向Yに沿って往復移動自在に支持する。
【0028】
駆動機構7は、モータ71、クランプ用カム72、切断用カム73、駆動ギア74を備えている。モータ71は、この発明の駆動源であり、第2の支持体4の背面側でフレーム6に固定されている。モータ71の回転軸711には、クランプ用カム72、切断用カム73及び駆動ギア74が、前面側から背面側に向かってこの順に、同軸上に固定されている。
【0029】
図3(A)〜(C)に示すように、第1の支持体3は、第1移動部材31、第2移動部材32、第1アーム33、第2アーム34、カムフォロワ35,36、スプリング37を備えている。
【0030】
外刃1は、軸方向Xに直交する方向Yに沿って第1外刃1A及び第2外刃1Bの2分割に構成されている。第1移動部材31及び第2移動部材32は、それぞれ第1外刃1A及び第2外刃1Bを個別に保持している。
【0031】
第1アーム33及び第2アーム34は、それぞれの上端部にカムフォロワ35,36を軸支しており、それぞれの下端部を第1移動部材31及び第2移動部材32に個別に固定されている。カムフォロワ35,36は、外周面をクランプ用カム72のカム面に当接させている。
【0032】
スプリング37は、第1移動部材31及び第2移動部材32の間で、第1外刃1A及び第2外刃1Bを上下に挟む2箇所のそれぞれに2本ずつ配置されており、第1移動部材31及び第2移動部材32を互いに離間する方向に付勢している。
【0033】
第1移動部材31及び第2移動部材32は、それぞれの上下2箇所に貫通孔311,321が形成されている。貫通孔311,321には、フレーム6に方向Yに沿って水平に固定された上下2本のガイド軸61が貫通している。第1移動部材31及び第2移動部材32は、ガイド軸61によって方向Yに往復移動自在にしてフレーム6に支持されている。
【0034】
クランプ用カム72は、この発明の外刃用変換伝達部材であり、互いに回転対称形状のカム面72A,72Bを備えている。カム面72A,72Bは、何れも円周の一部に直線部分を備えており、両者の直線部分は互いに180度の回転対称位置に配置されている。したがって、クランプ用カム72の回転により、カムフォロワ35,36は、カム面72A,72Bの円弧部分及び直線部分に同時に当接する。
【0035】
図3(A)及び(B)に示すように、カムフォロワ35,36が、カム面72A,72Bの円弧部分に当接しているクランプ状態では、第1移動部材31及び第2移動部材32は、スプリング37の弾性力に抗して互いに最も近接した位置にある。この時、第1外刃1A及び第2外刃1Bは互いに当接し、両者の間に円筒形管体100の外径と同一の内径の内周面が形成される。
【0036】
図3(C)に示すように、カムフォロワ35,36が、カム面72A,72Bの直線部分に当接している初期状態では、第1移動部材31及び第2移動部材32は、スプリング37の弾性力によって互いに最も離間した位置にある。この時、第1外刃1A及び第2外刃1Bは互いに離間し、両者の間に円筒形管体100を容易に挿入することができる。
【0037】
図4(A)及び(B)に示すように、第2の支持体4は、内挿体41、中間体42、外装体43から構成されている。内挿体41は、前面側にフランジ部411を有する円柱形状を呈し、前面側に内刃2を固定した保持部材46が収納される凹部412が前面側に形成され、背面と凹部412との間に貫通孔413が形成されている。貫通孔413には、固定ボルト45が背面側から挿入される。固定ボルト45は、保持部材46に螺合して保持部材46を内挿体41に固定する。
【0038】
中間体42は、背面側にフランジ部421を有する円筒形状を呈し、内挿体41に外嵌する。中間体42は、前面側端部及び背面側端部にベアリング422,423を備えている。中間体42は、内挿体41の背面側に形成されたネジ部414に螺合するロックナット424により、内挿体41に固定される。
【0039】
外装体43は、前面側にフランジ部431を有する円筒形状を呈し、内部に内挿体41及び中間体42をベアリング422,423を介して回転自在に収納する。外装体43の内周部は外周部に対して長さL1だけ偏心した位置に形成されている。したがって、内刃2は、第2の支持体4に、長さL1だけ偏心した位置で、内挿体41及び中間体42と一体的に回転自在に支持される。
【0040】
外装体43の背面側端部には、ロックナット432を介して従動ギア44が固定されている。従動ギア44は、この発明の回転伝達部材である駆動ギア74に噛合しており、モータ7の回転軸71の回転が駆動ギア74を介して伝達される。外装体43の回転角度は、図示しないエンコーダによって検出される。このエンコーダの検出角度に基づいてモータ71の回転が制御される。
【0041】
図5(A)〜(C)に示すように、スライダ5は、本体51、アーム52,53を備えている。本体51は、第2の支持体4を回転自在に支持する。本体51には、貫通孔511が上下2箇所に形成されている。貫通孔511には、フレーム6に支持された2本のガイド軸62がそれぞれ貫通する。本体51は、フレーム6に方向Yに沿って往復移動自在に支持されている。
【0042】
アーム52,53は、下端部を本体51に固定されており、上端にカムフォロワ54,55を軸支している。カムフォロワ54,55は、外周面を切断用カム73のカム面73A,73Bに当接させている。
【0043】
この発明のスライダ用変換伝達部材である切断用カム73のカム面73A,73Bは、カムフォロワ54,55を互いの間隔を変化させることなく、方向Yに沿って往復移動させるように、小円弧部と大円弧部とを直線で接続した形状にされている。カム面73Aは、90度の角度範囲が小円弧部で形成されており、略230度の角度範囲が大円弧部で形成されている。カム面73Bは、90度の角度範囲が大円弧部で形成されており、略230度の角度範囲が小円弧部で形成されている。切断用カム73が回転すると、本体51が第2の支持体4とともに方向Yに沿って往復移動する。
【0044】
図5(A)及び(B)に示すように、カムフォロワ54がカム面73Bの大円弧部に当接し、カムフォロワ55がカム面73Aの小円弧部に当接している状態では、スライダ5は初期位置に位置している。
【0045】
図5(C)に示すように、カムフォロワ54がカム面73Bの小円弧部に当接し、カムフォロワ55がカム面73Aの大円弧部に当接している状態では、スライダ5は切断位置に位置している。
【0046】
これによって、フレーム6におけるスライダ5の往復移動範囲は、内刃2の外周面21が外刃1の内周面11の内側に位置する初期位置と第2の支持体4の回転軸が外刃1の内周面11の中心に一致する切断位置との間に設定されている。
【0047】
図2に示したように、第1の支持体3において第1移動部材31及び第2移動部材32を方向Yに沿って往復移動させるクランプ用カム72、スライダ5を方向Yに沿って往復移動させる切断用カム73、第2の支持体4の従動ギア44に回転を伝達する駆動ギア74は、何れもモータ7の回転軸71に固定されている。
【0048】
したがって、外刃1による円筒形管体100のクランプ動作、内刃2の方向Yに沿う往復移動、内刃2を偏心支持する第2の支持体4の回転が、単一のモータ71の回転によって行われる。モータ71の回転により、クランプ用カム72及び切断用カム73は、図3(B)及び(C)並びに図5(B)及び(C)に示す矢印N方向に回転する。
【0049】
クランプ用カム72、切断用カム73及び第2の支持体4の回転位置は、スライダ5が初期位置にある時に、第1の支持体3の支持部材31と支持部材32とが最も離間し、内刃2が図6(A)に示す位置にあるように設定されている。したがって、切断用カム73が図5(B)に示す回転位置にある時に、クランプ用カム72は図3(C)に示す回転位置にある。図6(A)に示す内刃2の位置は、第2の支持体4の回転による円軌道上で、内刃2の外周面21が外刃1の内周面11から最も離間した位置(図6(B)に示す位置)よりも所定回転角度だけ上流側の位置である。
【0050】
管体切断装置10によって薄肉円筒形管体100の管端を切断する場合には、図6(A)に示すようにスライダ5が初期位置にある状態で、円筒形管体100の管端を管体切断装置10の前面側から挿入する。円筒形管体100の挿入位置を規定するガイドを、第1の支持体3の前面側に配置してもよい。
【0051】
駆動機構7は、この発明の第1の工程で、図6(A)に示す状態からモータ71の回転を開始する。第2の支持体4が回転を開始し、内刃2が矢印M方向の公転を開始するとともに、クランプ用カム72の回転によって第1の支持体31及び第2の支持体32が互いに近接する方向への移動を開始する。内刃2が、図6(B)に示す位置に達した時に、図3(B)に示すように第1の支持体31及び第2の支持体32が最も近接し、第1外刃1A及び第2外刃1Bが円筒形管体100をクランプし、外刃1の内周面11が円筒形管体100の外周面に全周にわたって当接する。
【0052】
駆動機構7は、この発明の第2の工程で、外刃1による円筒形管体100のクランプが完了した後に、切断用カム73の回転によってスライダ5が初期位置から切断位置に向かって矢印Y1方向に移動を開始する。内刃2の外周面21は、第2の支持体4の回転によって円筒形管体100の内周面102に近接するだけでなく、スライダ5が矢印Y1方向に移動することによっても円筒形管体100の内周面102に近接していく。内刃2は、外周面21が円筒形管体100の内周面102に当接した時から矢印N方向に回転しつつ、図6(C)に示すように円筒形管体100の外側に露出させ、刃面22と外刃1の刃面12との間で円筒形管体100の切断を開始する。
【0053】
駆動機構7は、この発明の第3の工程で、第2の支持体4を、内刃2の一部が円筒形管体100の外側に露出した位置から、少なくとも1回転させることで、図6(D)〜(F)に示すように、内刃2は矢印N方向に自転しつつ矢印M方向に公転し、刃面12と刃面22との間で円筒形管体100が全周にわたって切断される。
【0054】
クランプ用カム72、切断用カム73及び第2の支持体4の回転位置は、第2の支持体4が図6(G)及び(H)に示す状態を経て図6(A)に示す状態まで2回転した時に、スライダ5が切断位置から初期位置への矢印Y2方向の復動を完了し、支持部材31と支持部材32とが最も離間する位置への移動を完了するように設定されている。駆動機構7は、この発明の第4の工程で、第2の支持体4が2回転した時にモータ71の回転を停止する。
【0055】
管体切断装置10では、円筒形管体100の管端を挿入してモータ71の回転を開始する操作のみにより、円筒形管体100の管端を切断することができる。しかも、外刃1による円筒形管体100のクランプ及びクランプ解除、内刃2の公転、及び内刃2の往復移動を、単一のモータ71の回転によって行うことができる。
【0056】
管体切断装置10は、円筒形管体100において軸方向の残すべき部分の外側を外刃1によってクランプするとともに軸方向の除去すべき部分に内側から内刃2を当接させ、軸方向に直交する外刃1の刃面12と内刃2の刃面22との間で円筒形管体100を切断する。このため、比較的小径の薄肉円筒形管体の管端を、静止させた状態で、切断面の変形やバリの残留を生じることなく円滑に切断することができる。
【0057】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、円筒形管体100から切断された管端部分を背面側から前面側に向けて押し出すイジェクタをスライダ51の前面に配置し、このイジェクタを動作させるソレノイド等をモータ71の回転停止後に動作させるようにしてもよい。切断された管端部分は、イジェクタによって第1外刃1Aと第2外刃1Bとの間に落下する。
【0059】
また、モータ71の回転を第2の支持体4に伝達する部材として、駆動ギア74及び従動ギア44に代えてタイミングベルトやチェーンを用いることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1−外刃
2−内刃
3−第1の支持体
4−第2の支持体
5−スライダ
6−フレーム
7−駆動機構
10−管体切断装置
100−円筒形管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形管体の外周面に全周にわたって当接する内周面と前記円筒形管体の軸方向に直交する第1の刃面とを有する外刃、及び前記円筒形管体の内周面に全周にわたって対向する円形の外周面と前記軸方向に直交する第2の刃面とを有する内刃を、前記第1の刃面及び前記第2の刃面が前記軸方向における所定の切断面で互いに対向するように配置し、
前記内刃を、自転可能に支持するとともに、その中心から所定長さだけ偏心した軸周りに最大径が前記円筒形管体の外径より大きい円軌道上を移動させつつ、その外周面が前記円筒形管体の内周面に当接しない位置から前記円軌道が全周にわたって前記円筒形管体の外側に露出する位置まで半径方向に移動させる管体切断方法。
【請求項2】
円筒形管体の外周面に全周にわたって当接する内周面、及び前記円筒形管体の軸方向に直交する第1の刃面を備えた外刃と、
前記円筒形管体の内周面に全周にわたって対向する円形の外周面、及び前記軸方向に直交する第2の刃面を備えた内刃と、
前記外刃を、前記第1の刃面が前記軸方向における所定の切断面に位置するように支持する第1の支持体と、
円柱形状を呈する第2の支持体であって、前記内刃を、前記第2の刃面が前記第1の刃面に前記切断面で前記軸方向に対向する状態で、かつ前記第2の支持体の中心から偏心した軸廻りに回転自在に支持する第2の支持体と、
前記第2の支持体を回転自在に支持するスライダと、
前記スライダを、前記内刃の外周面が前記外刃の内周面の内側に位置する初期位置と前記第2の支持体の回転軸が前記外刃の内周面の中心に一致する切断位置との間で、前記軸方向に直交する方向に沿って往復移動自在に支持するフレームと、
前記スライダが前記初期位置にある状態で前記第2の支持体の回転を開始させ、前記第2の支持体が回転している状態で前記スライダを前記切断位置まで移動させ、前記スライダが前記切断位置にある状態で且つ前記内刃の外周面が前記外刃の内周面の外側に位置している状態で前記第2の支持体を少なくとも1回転させた後、前記スライダを前記初期位置まで移動させる駆動機構と、を備えた管体切断装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、単一の駆動源と、前記駆動源の回転を前記第2の支持体に伝達する回転伝達部材と、前記駆動源の回転を前記スライダの往復直線動作に変換して前記スライダに伝達するスライダ用変換伝達部材と、を含む請求項1又は2に記載の管体切断装置。
【請求項4】
前記外刃は、前記軸方向に直交する方向に2分割に形成された第1及び第2の外刃からなり、
前記第1の支持部材は、前記第1及び第2の外刃を前記軸方向に直交する方向に沿って互いに離間及び接合する位置に往復移動自在に支持し、
前記駆動機構は、前記駆動源の回転を前記第1及び第2の外刃の往復直線動作に変換して前記第1及び第2の外刃に伝達する外刃用変換伝達部材をさらに含む請求項3に記載の管体切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171044(P2012−171044A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35361(P2011−35361)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(391040135)株式会社富士機械工作所 (12)