説明

管内走行装置

【課題】管内面を検査するための検査装置を搭載して管内を走行する管内走行装置ついて、部品点数を少なくして製造コストを低下させる。
【解決手段】管内走行装置1は、駆動シャフト14、15と駆動シャフトによって回転せしめられる駆動輪3とをそれぞれ有する同一構成の二つの駆動輪機構と、駆動輪を駆動するための駆動機11と、駆動機からの動力を駆動輪機構の各駆動シャフトに伝達する伝達機構13とを具備する。各駆動シャフトは対応する駆動輪の回転軸線に対して垂直に配置され、二つの駆動輪機構は二つの駆動シャフトが当該管内走行装置の長手方向において互いに対して反対向きに延びるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内面を検査するための検査装置を搭載して管内を走行する管内走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管等の管内面の疵や溶接欠陥等の検査・手入れ作業を行うのに、検出装置や手入れ装置等を搭載して管内を走行する管内走行装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特に、特許文献1に記載の管内走行装置は、管内面を走行移動する台車と、台車の走行車輪のトレッド幅中央部に昇降自在に配置された押付けパッドと、押付けパッドを昇降移動させると共にその伸長時に押付けパッドを管内面上部に付勢するアクチュエータとを備えている。これにより、検査・手入れ作業を行う際にアクチュエータを伸長させることで、作業反力を車幅方向の両車輪と押付けパッドとの3点で管内面に突っ張って保持することができるようになり、内径の異なる管について安定な作業姿勢を維持することができ、よって作業品質を向上させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−258708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の管内走行装置は、管内面を走行移動する台車とは別体の外部駆動手段を有している。この外部駆動手段は、モータ等の駆動装置と、この駆動装置により回転するホイールギアと、このホイールギアに噛合してその長手方向に進退自在な可撓性のチェーンとを備え、このチェーンの先端部が台車に連結されている。管内面において台車を走行させるときには、駆動装置でホイールギアを回転させ、これによりホイールギアに噛合したチェーンをその長手方向に進退させ、これによりチェーンに連結された台車を管内で走行移動させるようにしている。
【0006】
ところが、このような構成の管内走行装置では、駆動装置によって台車に加えて台車と駆動装置との間のチェーンをも駆動することが必要になるため、大型の駆動装置が必要になる。また、鋼管の全長に亘って検査等を行う場合、駆動装置から台車までの距離が長くなってしまうことがあり、台車の走行が不安定になってしまう。
【0007】
斯かる問題を解決する方法としては、台車に駆動装置を直接搭載することが考えられる。具体的には、台車の進行方向と垂直に延びる駆動シャフトの両側に車輪を取付け、台車に搭載された駆動装置によりこの駆動シャフトを回転させることで車輪、ひいては台車を駆動させることが考えられる。
【0008】
ここで、台車の直進安定性を高めるためには、車輪を上側内向きに傾斜させること(すなわち、台車の前方から見て両輪をハの字状に傾斜させること)が必要とされる。しかしながら、上述したように台車に駆動装置を搭載した場合、そのままでは車輪を傾斜させることができない。また、車輪を傾斜させるためには、駆動シャフトにユニバーサルジョイント等の構成要素を追加することが必要になり、結果的に部品点数の増加を招き、よって製造コストの増大を招いてしまう。
【0009】
そこで、上記問題に鑑みて、本発明の目的は、管内面を検査するための検査装置を搭載して管内を走行する管内走行装置ついて、部品点数を少なくして製造コストを低下させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、管内面を検査するための検査装置を搭載して管内を走行する管内走行装置に関して、部品点数や製造コストを考慮して、様々な構成の管内走行装置について検討を行った。
【0011】
その結果、駆動シャフトとこの駆動シャフトによって回転せしめられる駆動輪とを具備する同一構成の二つの駆動輪機構を設けると共に、これら二つの駆動輪機構を二つの駆動シャフトが管内走行装置の長手方向(走行方向)において互いに対して反対向きに延びるように配置することで、同一構成の駆動輪機構を両駆動輪に対して用いることができるようになり、その結果、部品点数を減少させることができることを見出した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1) 管内面を検査するための検査装置を搭載して管内を走行する管内走行装置において、
駆動シャフトと該駆動シャフトによって回転せしめられる駆動輪とをそれぞれ有する同一構成の二つの駆動輪機構と、駆動輪を駆動するための駆動機と、該駆動機からの動力を前記駆動輪機構の各駆動シャフトに伝達する伝達機構とを具備し、
各駆動シャフトは対応する駆動輪の回転軸線に対して垂直に配置され、前記二つの駆動輪機構は二つの駆動シャフトが当該管内走行装置の長手方向において互いに対して反対向きに延びるように配置される、管内走行装置。
(2)前記検出装置を搭載すると共に前記駆動輪機構と前記伝達機構とが配置される車台を更に具備し、前記駆動機も該車台に配置されることを特徴とする、(1)に記載の管内走行装置。
(3)前記駆動輪機構は、前記駆動輪の内面に形成されたハイポイドギアと、該ハイポイドギアに噛合すると共に前記駆動シャフトの先端に形成されたハイポイドピニオンとを具備する、(1)又は(2)に記載の管内走行装置。
(4)前記各駆動輪は、鉛直方向上方に向かって当該管内走行装置の内側に傾斜するように配置される、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の管内走行装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、管内走行装置の部品点数を減少させることができ、その結果、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る管内走行装置を概略的に示す図である。
【図2】管内走行装置の駆動機構を概略的に示す平面図である。
【図3】管内走行装置の駆動機構を概略的に示す側面図である。
【図4】図2の線IV−IVから見た、駆動機構を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0016】
図1は、本発明に係る管内走行装置を概略的に示す図である。特に、図1(a)は、管X内を走行している管内走行装置1の平面図であり、図1(b)は、管X内を走行している管内走行装置1の正面図である。管内走行装置1の走行方向は矢印Yで示した方向となっている。
【0017】
図1からわかるように、管内走行装置1は、車台2、二つの駆動輪3、二つの従動輪4、駆動機構5、検査装置6を具備する。車台2には駆動輪3及び従動輪4が取り付けられ、車台2はこれら駆動輪3及び従動輪4により支持される。駆動輪3は管内走行装置1の進行方向前側に配置される。各駆動輪3は、鉛直方向上方に向かって管内走行装置の内側に傾斜するように配置される。すなわち、各駆動輪3は、二つの駆動輪3がハの字状になるように、換言するとネガティブキャンバとなるように配置される。
【0018】
駆動機構5は駆動輪3を駆動するための機構であり、車台2上に配置される。駆動機構5の詳細については後述する。検査装置6は管内面を検査するためのものであり、検査装置6としては例えば検査用カメラ等が用いられる。なお、本実施形態では、車台2上に駆動機構5及び検査装置6のみが搭載されているが、例えば管内面に対して作業を行う手入れ装置(例えば、マニピュレータに装備された手入れ用グラインダや溶接機)等、他の装置を搭載してもよい。
【0019】
また、本実施形態では、管内走行装置1の後部にはコード7が取り付けられている。このコードは、駆動機構5のモータ等に電力を供給したり、検査装置6によって得られたデータを外部に送出したり、駆動機構5や検査装置6を制御したりするのに用いられる。しかしながら、管内走行装置1には必ずしもコード7が取り付けられている必要はなく、代わりに駆動機構5のモータ用にバッテリを車台2上に搭載したり、検査装置6によって得られたデータを保存するためのストレージ等を車台2上に搭載したりしてもよい。
【0020】
次に、図2、図3及び図4を参照して、管内走行装置1の駆動機構について説明する。図2は管内走行装置2の駆動機構を概略的に示す平面図であり、図3は駆動機構の側面図であり、図4は図2の線IV−IVから見た、駆動機構を概略的に示す図である。なお、図4中の破線は、図2の線IV−IVの向きに見たときに後ろ側に位置する構成要素を表している。図2〜図4からわかるように、二つの駆動輪3を駆動するための駆動機構は、モータ11、減速機構12、センターシャフト13、第一駆動シャフト14、第二駆動シャフト15を具備する。
【0021】
モータ11の出力シャフトの先端には減速機構12の一方の減速歯車12aが取り付けられる。減速機構12の他方の減速歯車12bは、減速歯車12aと噛合すると共に、センターシャフト13の端部に取り付けられる。このため、モータ11の出力シャフトが回転せしめられると、この出力シャフトに対して減速された速度でセンターシャフト13が回転せしめられる。
【0022】
センターシャフト13は二つのベルトプーリ21、22を有する。これらベルトプーリ21、22のうち第一ベルトプーリ21はベルト23によって、第一駆動シャフト14に取り付けられたベルトプーリ24に連結せしめられる。一方、第二ベルトプーリ22はベルト25によって、第二駆動シャフト15に取り付けられたベルトプーリ26に連結せしめられる。このため、センターシャフト13が回転せしめられると、これに伴って第一駆動シャフト14及び第二駆動シャフト15も回転せしめられる。
【0023】
また、第一駆動シャフト14及び第二駆動シャフト15はセンターシャフト13と平行に延びると共に、第一駆動シャフト14と第二駆動シャフト15とは互いに逆向きに延びる。したがって、例えば第一駆動シャフト14がベルトプーリ24から管内走行装置1の進行方向に延びる場合には、第二駆動シャフト15はベルトプーリ26から管内走行装置1の進行方向とは逆向きに延びる。
【0024】
第一駆動シャフト14の先端にはハイポイドピニオンが形成されており、一方、駆動輪3の内面にはハイポイドギアが形成されている。特に、本実施形態では、これら駆動輪3のうち一方の駆動輪3a(第一駆動輪)の内面に形成されたハイポイドギアは、第一駆動シャフト14のハイポイドピニオン14aと噛合する。同様に、他方の駆動輪3b(第二駆動輪)の内面に形成されたハイポイドギアは、第二駆動シャフト15のハイポイドピニオン15aと噛合する。したがって、第一駆動シャフト14が回転せしめられると、駆動輪3aが軸線A(図4参照)回りで回転し、第二駆動シャフト15が回転せしめられると、駆動輪3bが軸線B(図4参照)回りで回転せしめられる。
【0025】
本実施形態では、第一駆動シャフト14及び第一駆動輪3aはそれぞれ第二駆動シャフト15及び第二駆動輪3bと同一部品として形成される。特に、駆動シャフトと駆動輪とをまとめて駆動輪機構と表現すると、第一駆動輪機構(第一駆動シャフト14及び第一駆動輪3a)は第二駆動輪機構(第二駆動シャフト14及び第二駆動輪3b)と同一部品として形成される。このため、第一駆動シャフト14と第二駆動シャフト15とを別部品として別形状で形成する必要はなく、また第一駆動輪3aと第二駆動輪3bとを別部品として別形状で形成する必要はない。このため、製造すべき部品点数を削減することができる。
【0026】
また、本実施形態では、センターシャフト13に設けられた二つのベルトプーリ21、22は互いに同一形状で形成される。したがって、センターシャフト13の回転によって第一駆動シャフト14及び第二駆動シャフト15は同一回転速度で回転する。さらに、上述したように第一駆動輪機構及び第二駆動輪機構が同一部品であることから、第一駆動輪3a及び第二駆動輪3bも同一回転速度で回転し、これによって管内走行装置1の直進安定性を高めることができる。
【0027】
また、本実施形態では、第一駆動輪3a及び第二駆動輪3bは鉛直方向上方に向かって管内走行装置1の内側に傾斜するように配置されている。これにより、検査対象の管の壁面に対する駆動輪の接触角度を垂直に近づけることができるようになり、駆動輪3と管の壁面との間の摩擦力を高めることができ、すべりを低減することができるようになる。このことによっても管内走行装置1の直進安定性を高めることができる。なお、上記実施形態では駆動輪の傾斜角度は固定されているが、駆動輪の傾斜角度を変更することができるようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、駆動輪自体にハイポイドギアが形成されている。一般に、駆動輪の軸線と垂直に延びる駆動シャフトから駆動輪へ動力を伝達する場合には、駆動輪とは別に何らかの伝達機構(ハイポイドギア等)が必要になる。これに対して、本実施形態では駆動輪自体にハイポイドギアが形成されているため、駆動輪とは別に伝達機構を設ける必要がなく、斯かる点でも部品点数の削減を行うことができると共に、上記伝達機構が不要になることで管内走行装置1全体をコンパクトにすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、駆動輪3はその直径ができるだけ大きくなるように形成される。このように駆動輪3の直径を大きくすると、左右の駆動輪3の周速差が小さくなり、結果的に管内走行装置1の直進安定性を高めることができる。例えば、内径400mmの鋼管用の管内走行装置では、直径200mmの駆動輪が用いられる。
【0030】
なお、上記実施形態では、駆動シャフトの回転を駆動輪に伝達する際に、ハイポイドを用いている。しかしながら、回転軸線がほぼ垂直な二軸の回転伝達を行うことができる減速機であれば、ハイポイド以外の別の減速機を用いてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 管内走行装置
2 車台
3 駆動輪
4 従動輪
5 駆動機構
6 検査装置
11 モータ
12 減速機構
13 センターシャフト
14 第一駆動シャフト
15 第二駆動シャフト
21、22、24、26 ベルトプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内面を検査するための検査装置を搭載して管内を走行する管内走行装置において、
駆動シャフトと該駆動シャフトによって回転せしめられる駆動輪とをそれぞれ有する同一構成の二つの駆動輪機構と、駆動輪を駆動するための駆動機と、該駆動機からの動力を前記駆動輪機構の各駆動シャフトに伝達する伝達機構とを具備し、
各駆動シャフトは対応する駆動輪の回転軸線に対して垂直に配置され、前記二つの駆動輪機構は二つの駆動シャフトが当該管内走行装置の長手方向において互いに対して反対向きに延びるように配置される、管内走行装置。
【請求項2】
前記検出装置を搭載すると共に前記駆動輪機構と前記伝達機構とが配置される車台を更に具備し、前記駆動機も該車台に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項3】
前記駆動輪機構は、前記駆動輪の内面に形成されたハイポイドギアと、該ハイポイドギアに噛合すると共に前記駆動シャフトの先端に形成されたハイポイドピニオンとを具備する、請求項1又は2に記載の管内走行装置。
【請求項4】
前記各駆動輪は、鉛直方向上方に向かって当該管内走行装置の内側に傾斜するように配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管内走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52741(P2013−52741A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191873(P2011−191873)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)