説明

管内面溶接補修装置

【課題】開口から内方へ深く入った位置での管内面の溶接補修を容易に行うことができる管内面溶接補修装置を提供する。
【解決手段】管体P内の長手方向へ進退可能に挿入された支持部材1と、当該支持部材1の先端部に支持されて管体Pの内周面に向けられた溶接トーチ2と、支持部材1の先端部に支持されて溶接トーチ2による補修部を含む所定領域を撮影し撮影画像を出力する撮影装置5と、支持部材1の先端部に設けられて、当該支持部材1の進入方向前方の管体P内を撮影し撮影画像を出力する撮影装置6とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管内面溶接補修装置に関し、特に、クロムやニッケル合金を管内面に肉盛溶接することによって当該管内面に浸炭やコーキングを抑制する機能層を形成した鋼管(以下機能鋼管という)の、上記機能層(肉盛層)に生じたピット状欠陥等を溶接補修するのに有用な管内面溶接補修装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機能鋼管ではその肉盛層においてピット状欠陥を生じることがあり、TIG溶接等によってその補修を行っている。この場合、開口から500mm程度までの管端部の補修は可能であるが、これより内部の補修は、外部からでは人間の手が届かず、また欠陥の位置を特定することが困難であるために、補修ができないという問題があった。
【0003】
なお、特許文献1には、管内へ挿入したアームの先端に溶接トーチを設けるとともに、ミラーを設けて、ミラーによって溶接部の様子を管外のCCDカメラへ反射送出するようにした金属管内面肉盛装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ミラーを設ける上記従来の装置では、管内のミラーと管外のCCDカメラの相対位置を正確に調整する必要があり、管内面の溶接補修を手軽に行う用途には使用が困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、開口から内方へ深く入った位置での管内面の溶接補修を容易に行うことができる管内面溶接補修装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、管体(P)内の長手方向へ進退可能に挿入された支持部材(1)と、当該支持部材(1)の先端部に支持されて管体(P)の内周面に向けられた溶接トーチ(2)と、支持部材(1)の先端部に支持されて溶接トーチ(2)による補修部を含む所定領域を撮影し撮影画像を出力する撮影手段(5)とを備える。
【0008】
本第1発明によれば、支持部材に設けられた撮像手段によって補修部の様子を確実に確認できるから、管体の内方へ支持部材を深く進入させた位置で溶接トーチに通電して必要な溶接補修を容易に行うことができる。
【0009】
本第2発明では、支持部材(1)の先端部に、当該支持部材(1)の進入方向前方の管体(P)内を撮影し撮影画像を出力する他の撮影手段(6)を設ける。
【0010】
本第2発明によれば、支持部材を管体内へ進入させる過程で補修を要する管体内周面の欠陥を容易に認識することができる。
【0011】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の管内面溶接補修装置によれば、開口から内方へ深く入った位置での管内面の溶接補修を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】管内面溶接補修装置の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は管内面溶接補修装置(以下、単に溶接補修装置という)の一例を示す断面図で、補修対象である管体P内へ右方から溶接補修装置Dを挿入した状態を示す。溶接補修装置Dは管体P内へ挿入される筒状の支持部材1を備えており、図1は支持部材1の先端部の縦断面図である。
【0015】
支持部材1は管体Pよりも小径の円筒体で、その先端部は長手方向の一部で下側周壁が切り欠かれて下方へ開放する開放部11となっている。支持部材1全体は、その下側周面の複数位置(図1には一箇所のみ示す)に設けたベアリング12が管体Pの下側内周面上を転動して、円滑に管体Pの長手方向へ移動するようになっている。支持部材1の移動駆動は管体P外に設けた電動シリンダ等によって行なわれる。
【0016】
支持部材1の開放部11に臨んで溶接トーチ2が位置している。溶接トーチ2はそのヘッド部21が管体Pの下側内周面に向いて傾斜姿勢でアーム部22によって保持されており、アーム部22は支持部材1の筒内をその基端方向へ延びている。本実施形態ではアーム部22は長手方向の一箇所で両側に設けたベアリング31(一方のみ示す)の軸体311によって傾動可能に支持されている。なお、ヘッド部21にはアーム部22に連結されたホース23内を経てフィラーワイヤおよび不活性ガスが送給可能となっており、TIG溶接を行うことができる。
【0017】
アーム部22の上半には傾動部材4が被着されている。傾動部材4は前端が上記軸体311に回動可能に連結されるとともに、後端にはこれを下方へ付勢するコイルバネ41が支持部材1との間に架設されている。傾動部材4には後方へ向けて下り傾斜する傾斜面42が形成されており、この傾斜面42と支持部材1内に設置されたガイド部材13の水平面との間にベアリング32が位置している。ベアリング32には操作棒321の一端が連結されており、支持部材1の基端まで延びる操作棒321の他端を前後に操作してベアリング32を前後動させるとこれに応じて傾動部材4が傾動し、傾動部材4と一体に溶接トーチ2のアーム部22が傾動させられてヘッド部21が管体Pの下側内周面に対し離間ないし近接方向へ調整移動させられる。
【0018】
なお、上記ベアリング31にも操作棒(図示略)の一端が連結されており、支持部材の基端まで延びる操作棒の他端を前後に操作してベアリング31を前後動させると、これに応じてアーム部22およびこれと一体のヘッド部21が支持部材1の長手方向で調整移動させられる。
【0019】
支持部材1の開放部11よりもさらに先端寄りには前後位置に一対の撮影装置5,6が設けられている。前後の撮影装置5,6はCCDカメラ51,61を備えており、後側撮影装置5のCCDカメラ51は後方に向けて設けられて、溶接トーチ2のヘッド部21とこれが対向する管体Pの下側内周面を含む所定領域の撮影画像が得られるようになっている。一方、前側撮影装置6のCCDカメラ61は前方に向けて設けられて、支持部材1の先端開口14より管体P内前方の撮影画像が得られるようになっている。
【0020】
各CCDカメラ51,61の周囲にはLED発光素子52,62が配設されてそれぞれの撮影領域が照明されている。また、CCDカメラ51の直前には溶接光の画像への影響を抑えるために紫外線フィルタ53が設けられている。各CCDカメラ51,61で得られた撮影画像は支持部材1の基端方向へ延びる信号線54,63によって管体P外へ出力される。
【0021】
上記構造の溶接補修装置Dにおいて、管体Pが機能鋼管等である場合の肉盛層の欠陥を補修する場合には、最初にCCDカメラ61からの撮影画像を確認しつつ支持部材1を管体P内へ進入させる。CCDカメラ61の撮影画像で肉盛層にピット状欠陥等が発見された場合には、CCDカメラ51の撮影画像を確認して溶接トーチ2のヘッド部21が肉盛層の欠陥部付近へ至るように支持部材1を進退調整する。ヘッド部21の姿勢と位置の微調整は操作棒321あるいは他の操作棒を操作してベアリング32あるいはベアリング31を前後方向へ移動させることによって行う。
【0022】
肉盛層の欠陥部の補修は、ヘッド部21に通電して欠陥部を溶融させ、あるいはフィラーワイヤを供給して欠陥部を溶融充填することによって行う。この場合、CCDカメラ51,61の撮影画像に対し二値化等の適当な画像処理を行うことで欠陥の認識が容易になる。そして、このような欠陥の認識と電動シリンダの駆動制御を連動させれば溶接補修の自動化が可能である。なお、撮影装置6を設けた方が欠陥の発見は容易になるが、特に必須のものではない。また、本発明は機能鋼管以外の管体内周面の欠陥補修に広く適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0023】
1…支持部材、2…溶接トーチ、5…撮影装置(撮影手段)、6…撮影装置(他の撮影手段)、D…溶接補修装置、P…管体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体内の長手方向へ進退可能に挿入された支持部材と、当該支持部材の先端部に支持されて前記管体の内周面に向けられた溶接トーチと、前記支持部材の先端部に支持されて溶接トーチによる補修部を含む所定領域を撮影し撮影画像を出力する撮影手段とを備える管内面溶接補修装置。
【請求項2】
前記支持部材の先端部に、当該支持部材の進入方向前方の管体内を撮影し撮影画像を出力する他の撮影手段を設けた請求項1に記載の管内面溶接補修装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−34999(P2013−34999A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170792(P2011−170792)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)