説明

管接合方法

【課題】蒸気発生器を構成する複数の伝熱管が狭い間隔で設けられている場合に、簡略且つ短時間の作業によって伝熱管とスタブとを接合させる手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る管接合方法は、管板に形成された複数の孔部の一方側に突出してそれぞれ設けられた管状のスタブ13に対して、該スタブ13及び孔部に挿通された伝熱管14を一体に接合させる管接合方法であって、互いに略面一に配置されたスタブ13の端面13a及び伝熱管14の端面14aの境界領域に対して、周方向に沿って摩擦撹拌接合を施すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管板の孔部の一方側に突出して設けられた管状のスタブに対して、スタブ及び孔部に挿通された伝熱管を一体に接合させる管接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電等で用いられる蒸気発生器では、被加熱流体を貯留する空間を形成する管板に、スタブと呼ばれる管状の部材が突出して複数設けられ、各スタブ及び管板を挿通して被加熱流体が流通する伝熱管がそれぞれ設けられる。そして、加熱流体としての液体ナトリウムと被加熱流体としての水との接触を防止すべく、スタブとこれに挿通される伝熱管とを隙間無く接合することが要求される。このスタブと伝熱管とを接合する管接合方法としては、スタブ及び伝熱管の端部にキャップと呼ばれる管状の部材を突き合わせ溶接する方法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。そして、この突き合わせ溶接は、TIG溶接等により行われるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の管接合方法によれば、作業性が非常に悪く、多大な手間と時間を要するという問題がある。より詳細に説明すると、近年の蒸気発生器は、加熱流体と被加熱流体との熱交換を促進させるために伝熱管の本数が増加し、これにより隣接する伝熱管同士の間隔が狭くなる傾向にある。従って、スタブ及び伝熱管の端部にキャップを突き合わせ溶接する場合、隣接する伝熱管の間の狭い隙間に溶接トーチを差し入れて溶接作業を行うためには、薄く低出力の溶接トーチを使用する必要がある。このため、溶接ビードを積層する回数が多くなることにより、工数が増加して作業が煩雑化するという問題につながる。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、蒸気発生器を構成する複数の伝熱管が狭い間隔で設けられている場合に、簡略且つ短時間の作業によって伝熱管とスタブとを接合させる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る管接合方法は、管板に形成された複数の孔部の一方側に突出してそれぞれ設けられた管状のスタブに対して、該スタブ及び前記孔部に挿通された伝熱管を一体に接合させる管接合方法であって、互いに略面一に配置された前記スタブの端面及び前記伝熱管の端面の境界領域に対して、周方向に沿って摩擦撹拌接合を施すことを特徴とする。
【0007】
このような方法によれば、スタブ及び伝熱管に対してその端面側からアクセスするので、伝熱管同士の隙間幅に影響を受けることなく、スタブと伝熱管との接合作業を容易に行うことができる。
また、摩擦撹拌接合はスタブ及び伝熱管の端面を平滑にする前処理だけで済むため、高精度の開先加工等の前処理が必要な突き合わせ溶接と比較すると、接合作業全体を簡略化することができる。
更に、摩擦撹拌接合は接合温度が低く、接合部が溶融しないため、スタブや伝熱管に溶接割れが生じにくい。従って、接合作業前にスタブや伝熱管を予熱する作業や、接合作業後に残留応力を緩和するためにスタブや伝熱管を熱処理する作業を省略することができる。
また、摩擦撹拌接合は作業時に生じるバリが摩擦圧接等に比べて少ないため、グラインダー等を用いた簡略な作業だけでスタブや伝熱管からバリを除去することができる。
【0008】
また、本発明に係る管接合方法は、前記伝熱管は、複数の管体が同軸に配置された多重管であって、径方向に隣り合う前記管体同士を、周方向に沿って摩擦撹拌接合により接合させることを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、伝熱管を構成する複数の管体の隙間を封止することができるとともに、この隙間に付着した酸化膜を分断及び分散させることができる。
【0010】
また、本発明に係る管接合方法は、前記スタブの端面と前記伝熱管の端面とを摩擦撹拌接合することにより、前記管体同士の摩擦撹拌接合も同時に施されることを特徴とする。
【0011】
このような方法によれば、周方向に沿った1回の摩擦撹拌接合によって、スタブと伝熱管とを接合する作業と、伝熱管を構成する複数の管体の隙間を封止する作業の両方を同時に行うことができるので、作業全体の簡略化が可能となる。
【0012】
また、本発明に係る管接合方法は、前記スタブの端面と前記伝熱管の端面とを摩擦撹拌接合した後に、前記管体同士の摩擦撹拌接合を施すことを特徴とする。
【0013】
このような方法によれば、管体同士の摩擦撹拌接合を行う前にスタブと伝熱管との間の隙間を封止するため、管体同士の摩擦撹拌接合に使用する工具の全体を、スタブの端面と伝熱管の端面とで確実に受けることができる。これにより、工具の押圧によってスタブや伝熱管が局所変形して、接合不良となることを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る管接合方法によれば、蒸気発生器を構成する複数の伝熱管が狭い間隔で設けられている場合でも、簡略且つ短時間の作業によって伝熱管とスタブとを接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る管接合方法の施工対象である蒸気発生器を模式的に示した概略断面図である。
【図2】FSW装置の構成を示す模式図である。
【図3】第1実施形態に係る管接合方法の説明図であって、スタブ及び伝熱管の断面を示している。
【図4】第2実施形態に係る管接合方法の説明図であって、スタブ及び伝熱管の断面を示している。
【図5】摩擦撹拌接合の説明図であって、スタブ及び伝熱管をその端面側から見た状態を示している。
【図6】摩擦撹拌接合を行う際のピンの移動軌跡を示す説明図であって、(a)は第1実施形態を(b)は第2実施形態を、それぞれ示している。
【図7】第3実施形態に係る管接合方法の説明図であって、スタブ及び伝熱管の断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る管接合方法の施工対象である蒸気発生器について説明する。図1は、蒸気発生器10を模式的に示した概略断面図である。
【0017】
蒸気発生器10は、図1に示すように、断面略半円形の第1管板11と、断面略半円形の第2管板12と、第1管板11及び第2管板12の内側面に突出して設けられた複数のスタブ13と、第1管板11から第2管板12へ延びる複数の伝熱管14と、第1管板11と第2管板12とを接続して設けられた一対の胴板15と、第1管板11に接合された断面略半円形の第1水室胴50と、第2管板12に接合された断面略半円形の第2水室胴51と、を備えるものである。
【0018】
第1管板11は、水(被加熱流体)を貯留するための第1水室16を第1水室胴50と共に形成するものである。この第1管板11には、図1に示すように、第2管板12と向かい合う側の面を貫通して複数の孔部17が設けられている。
【0019】
第1水室胴50は、第1管板11と共に第1水室16を形成するものである。この第1水室胴50には、図1に示すように、第1水室16から外部へ蒸気を排出するための蒸気排出管18が挿通して設けられている。
【0020】
第2管板12は、水を貯留するための第2水室19を第2水室胴51と共に形成するものである。この第2管板12には、図1に示すように、第1管板11と向かい合う側の面を貫通して複数の孔部20が設けられている。
【0021】
第2水室胴51は、第2管板12と共に第2水室19を形成するものである。この第1水室胴51には、図1に示すように、第2水室19から外部へ蒸気を排出するための蒸気排出管21が挿通して設けられている。
【0022】
複数のスタブ13は、伝熱管14の端部を支持及び固定するためのものである。これらスタブ13は、管状の部材であって、その内径が第1管板11及び第2管板12の孔部17,20の内径と略等しく形成されている。このように構成される複数のスタブ13は、図1に示すように、第1管板11の孔部17及び第2管板12の孔部20に連通するようにして、第1管板11及び第2管板12の内側面に、第1管板11及び第2管板12からそれぞれ削りだされている。
【0023】
複数の伝熱管14は、第2水室19から第1水室16へ水を流通させる管状の部材である。この伝熱管14は、図3に示すように、同軸に配置された内管141と外管142とが冷間引抜成形等によって互いに密着された2重管である。そして、この伝熱管14は、内管141の外径と外管142の内径とが略等しく形成されるとともに、外管142の外径が、スタブ13の内径及び孔部17,20の内径より若干小さく形成されている。そして、このように構成される伝熱管14は、図1に示すように、第1管板11の孔部17及びスタブ13に挿通されることにより、その長手方向一端部が第1水室16の内部に開口している。同様に伝熱管14は、第2配管の孔部20及びスタブ13に挿通されることにより、その長手方向他端部が第2水室19の内部に開口している。そして、図3に示すように、伝熱管14とスタブ13との間には若干の隙間22が形成され、この隙間22の位置において後述する摩擦撹拌接合により、伝熱管14とスタブ13とが互いに接合されている。
【0024】
一対の胴板15は、液体ナトリウム(加熱流体)を貯留するためのナトリウム室23を形成するものである。これら胴板15は、複数の伝熱管14より外側の位置にそれぞれ設けられ、その長手方向一端部が第1管板11に固定されるとともに、その長手方向他端部が第2管板12に固定されている。そして、一方の胴板15における第1管板11に近接した位置には、外部からナトリウム室23へ液体ナトリウムを導入するためのナトリウム導入管24が設けられている。一方、他方の胴板15における第2管板12に近接した位置には、ナトリウム室23から外部へ液体ナトリウムを排出するためのナトリウム排出管25が設けられている。
【0025】
このように構成される蒸気発生器10によれば、ナトリウム導入管24からナトリウム室23へ導入された高温の液体ナトリウムと、水導入管21から第2水室19へ導入されて伝熱管14を流通する低温の水との間で熱交換が行われる。これにより、伝熱管14を流通する水が加熱されて水蒸気となり、第2水室19から蒸気排出管18を経て外部へ排出される。
【0026】
尚、本発明に係る被加熱流体としては、本実施形態の水に代えて、蒸気や流体状態の化学物質等を用いることもできる。また、本発明に係る加熱流体としては、本実施形態の液体ナトリウムに代えて、熱水や火炎や高温気体や高温蒸気等であってもよい。
【0027】
また、伝熱管14は本実施形態の2重管に限られず、1重管や、3重管以上の多重管であってもよい。
【0028】
更に、本実施形態では管接合方法を使用する対象として、原子力発電で使用される蒸気発生器10を例に説明したが、その他に、加熱器、過熱器、温水器、冷却器、復水器等のシェル・アンド・チューブ型の熱交換器にも本管接合方法を使用することができる。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る管接合方法において摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding)に使用するFSW装置について説明する。尚、本発明において摩擦撹拌接合とは、円筒状の工具を回転させながらその先端の突起を接合部に貫入させ、その摩擦熱によって接合部周辺を軟化させるとともに、工具の回転力によって接合部周辺を塑性流動させて練り混ぜることで複数の部材を一体化する接合法を意味する。
【0030】
図2は、FSW装置30の構成を示す模式図である。FSW装置30は、走行手段31を有する基部32と、この基部32の上面に設けられた台部33と、この台部33から側方へ突出して設けられたツール支持部34と、このツール支持部34の先端に支持されたツール部35と、を備えるものである。
【0031】
基部32は、走行手段31を介して水平方向(図2の紙面に直交する方向)へ移動可能となっている。また台部33は、基部32に対して伝熱管14に近接し又は離間する方向(紙面に向かって左右方向)へ相対移動可能となっている。また、ツール支持部34は、台部33に対して上下方向に相対移動可能であるとともに、水平方向にも相対移動可能となっている。また、ツール部35は、ツール支持部34に対して伝熱管14の軸線回りに相対回転可能となっている。そして、図に詳細は示さないが、これら各部を駆動するモータの回転が制御部によって制御されている。これにより、ツール部35を回転させながら、基部32と台部33とツール支持部34とを適宜駆動し、ツール部35の先端に突出して設けられたピン351を伝熱管14またはスタブ13の端面に押圧することにより、摩擦撹拌接合の施工が可能となっている。
【0032】
次に、第1実施形態に係る管接合方法の作業手順、及びその作用効果について説明する。図3は、第1実施形態に係る管接合方法の説明図であって、スタブ13及び伝熱管14の断面を示している。尚、図3では、スタブ13及び伝熱管14のうち、中心線Cを挟んで一方側のみを図示し、他方側については図示を省略している。
【0033】
まず作業者は、スタブ13の端面及び伝熱管14の端面に対して前処理を施す。すなわち作業者は、不図示のグラインダーを用いた研磨作業により、スタブ13の端面13a及び伝熱管14の端面14aをそれぞれ平坦に加工する。これは、FSW装置30を構成するツール部35のピン351を、スタブ13の端面13aや伝熱管14の端面14aに押し付けやすくするためである。
【0034】
次に作業者は、スタブ13の端面13a及び伝熱管14の端面14aに対して摩擦撹拌接合を施す。すなわち作業者は、まずFSW装置30のツール部35を回転駆動させる。そして作業者は、基部32、台部33、ツール支持部34、及びツール部35の動作を適宜制御することにより、図3に示すように、ツール部35のピン351を、スタブ13と伝熱管14との間に形成された隙間22より若干伝熱管14側に位置させた状態で周方向に移動させる。これにより、スタブ13と伝熱管14とが摩擦撹拌接合されるとともに、伝熱管14を構成する外管142と内管141とが摩擦撹拌接合される。
【0035】
ここで、図5は、摩擦撹拌接合の説明図であって、スタブ13及び伝熱管14をその端面13a,14a側から見た状態を示している。摩擦撹拌接合作業者は、まずスタブ13の上にタブ板40を固定する。このタブ板40は、工具を引き抜いた穴が残って外観が損なわれる接合終了部をスタブ13及び伝熱管14の外部へ逃がすためのものである。ここで、本実施形態では、図5に示すように、タブ板40において摩擦撹拌接合を終了する位置をE点と定義する。また、接合箇所に応じて位置が変化するため図5には示さないが、摩擦撹拌接合を開始する位置をS点と定義する。尚、このS点をE点と一致させる、すなわちタブ板40において摩擦撹拌接合を開始してもよい。
【0036】
また、図5に示すように、E点の下方であってスタブ13と伝熱管14との間に形成された隙間22の位置をA点と定義する。そして、A点より更に下方であって伝熱管14を構成する外管142上の位置をC点と定義する。また、C点より更に下方であって伝熱管14を構成する外管142と内管141との境界をB点と定義する。
【0037】
ここで、図6(a)は、第1実施形態の管接合方法におけるピン351の移動軌跡K1を示す説明図である。尚、この図において、例えば「C1点」とは、ピン351がC点を通過するのが1回目であることを、「C2点」とは、ピン351がC点を通過するのが2回目であることをそれぞれ意味している。第1実施形態では、作業者はC1点すなわち外管142上の位置(図5参照)にて摩擦撹拌接合を開始し、そこからピン351を周方向に沿って時計回りに移動させる。そして作業者は、周方向に沿ってピン351を一周させることによってC2点に戻ってくると、そこから上方へピン351を移動させる。そして作業者は、ピン351がタブ板40上のE点に達すると、摩擦撹拌接合を終了する。
【0038】
最後に作業者は、図に詳細は示さないが、タブ板40をスタブ13から切り離した後、スタブ13の端面13a及び伝熱管14の端面14aに生じたバリをグラインダー等で除去する。
【0039】
このように、第1実施形態の管接合方法によれば、スタブ13及び伝熱管14に対してその端面13a,14a側からアクセスするので、伝熱管14同士の隙間幅に影響を受けることなく、スタブ13と伝熱管14との接合作業を容易に行うことができる。
また、摩擦撹拌接合はスタブ13及び伝熱管14の端面13a,14aを平滑にする前処理だけで済むため、高精度の開先加工等の前処理が必要な突き合わせ溶接と比較すると、接合作業全体を簡略化することができる。
更に、摩擦撹拌接合は接合温度が低いため、スタブ13や伝熱管14に急冷による割れが生じにくい。従って、接合作業前にスタブ13や伝熱管14を予熱する作業や、接合作業後に残留応力を緩和するためにスタブ13や伝熱管14を熱処理する作業を省略することができる。
また、摩擦撹拌接合は作業時に生じるバリが摩擦圧接等に比べて少ないため、グラインダー等を用いた簡略な作業だけでスタブ13や伝熱管14からバリを除去することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る管接合方法について説明する。第2実施形態に係る管接合方法の施工対象である蒸気発生器10の構成、及び摩擦撹拌接合に使用するFSW装置30の構成は、第1実施形態に係る管接合方法と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、第2実施形態に係る管接合方法の作業手順、及びその作用効果について説明する。図4は、第2実施形態に係る管接合方法の説明図であって、スタブ13及び伝熱管14の断面を示している。第2実施形態に係る管接合方法は、第1実施形態に係る管接合方法と比較すると、摩擦撹拌接合の工程だけが異なっている。
【0042】
第2実施形態における摩擦撹拌接合の工程は、スタブ13の端面13aと伝熱管14の端面14aとを摩擦撹拌接合した後に、伝熱管14を構成する外管142と内管141とを摩擦撹拌接合する点を特徴としている。この点、スタブ13の端面13aと伝熱管14の端面14aとの摩擦撹拌接合と、伝熱管14を構成する外管142と内管141の摩擦撹拌接合とを、1回の動作で同時に行う第1実施形態とは異なっている。
【0043】
この場合作業者は、図4に示すように、まずFSW装置30を構成するツール部35のピン351を、スタブ13と伝熱管14との間に形成された隙間22の位置に位置させた状態で、周方向に移動させる。これにより、スタブ13と伝熱管14とが摩擦撹拌接合される。
次に作業者は、図4に示すように、ツール部35のピン351を、伝熱管14を構成する外管142と内管141の境界に位置させた状態で、周方向に移動させる。これにより、外管142と内管141とが摩擦撹拌接合される。
【0044】
ここで、図6(b)は、第2実施形態の管接合方法におけるピン351の移動軌跡K2を示す説明図である。第2実施形態では、作業者はA1点すなわちスタブ13と伝熱管14の隙間22の位置(図5参照)にて摩擦撹拌接合を開始し、そこからピン351を周方向に沿って時計回りに移動させる。その後、作業者は、周方向に沿ってピン351を一周させることによってA2点に戻ってくると、そこから下方へピン351を移動させる。
【0045】
そして作業者は、B1点、すなわち伝熱管14を構成する外管142と内管141の境界(図5参照)にピン351が到達すると、そこから再びピン351を周方向に沿って時計回りに移動させる。その後、作業者は、周方向に沿ってピン351を一周させることによってB2点に戻ってくると、そこから上方へピン351を移動させる。そして作業者は、ピン351がタブ板40上のE点に達すると、摩擦撹拌接合を終了する。
【0046】
このような第2実施形態の管接合方法によれば、伝熱管14を構成する外管142と内管141との摩擦撹拌接合を行う前にスタブ13と伝熱管14との間の隙間22を封止するため、外管142と内管141の摩擦撹拌作接合に使用する工具の全体を、スタブ13の端面13aと伝熱管14の端面14aとで確実に受けることができる。これにより、工具の押圧によってスタブ13や伝熱管14が局所変形して、接合不良となることを未然に防止することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る管接合方法について説明する。第3実施形態に係る管接合方法の施工対象である蒸気発生器10の構成、及び摩擦撹拌接合に使用するFSW装置30の構成は、第1実施形態に係る管接合方法と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
次に、第3実施形態に係る管接合方法の作業手順、及びその作用効果について説明する。図7は、第3実施形態に係る管接合方法の説明図であって、スタブ13及び伝熱管14の断面を示している。
【0049】
まず作業者は、伝熱管14の端面14aに対して前処理を施す。すなわち作業者は、不図示のグラインダーを用いた研磨作業により、伝熱管14の端面14aをそれぞれ平坦に加工する。この前処理を行う目的は前述と同様である。
【0050】
次に作業者は、伝熱管14の端面14aに対して摩擦撹拌接合を施す。すなわち作業者は、まずFSW装置30のツール部35を回転駆動させる。そして作業者は、基部32、台部33、ツール支持部34、及びツール部35の動作を適宜制御することにより、図7(a)に示すように、ツール部35のピン351を、伝熱管14を構成する外管142と内管141との境界に位置させた状態で周方向に移動させる。これにより、外管142と内管141とが摩擦撹拌接合される。
【0051】
ここで、2重管である伝熱管14は、その外管142と内管141との間に微小な隙間22が存在し、当該隙間22に酸化膜(不図示)が付着している場合がある。しかし、このように酸化膜が付着している場合でも、前述のように外管142と内管141とを摩擦撹拌接合すると、ピン351の撹拌作用によって酸化膜が分断及び分散されるとともに、外管142と内管141との間の微小な隙間22が封止される。
【0052】
次に作業者は、スタブ13及び伝熱管14の先端部に開先加工を施す。すなわち作業者は、図7(b)に示すように、スタブ13及び伝熱管14の端部を斜めに切り落とすことにより、溶接用の開先部41を形成する。
【0053】
最後に作業者は、スタブ13及び伝熱管14の先端部にキャップを突き合わせ溶接する。すなわち作業者は、図7(c)に示すように、事前に開先部42が形成された管状のキャップ43を、スタブ13及び伝熱管14の先端部に突き合わせ、不図示の溶接トーチを用いて開先部41,42を溶接する。これにより、開先部41,42を埋めるようにして溶接部44が形成され、スタブ13及び伝熱管14の先端部がキャップ43に接続されるとともに、スタブ13と伝熱管14との間に形成された隙間22が溶接部44によって封止される。
【0054】
ここで、図7に詳細は示さないが、前述のように外管142と内管141との間に微小な隙間22が存在し、当該隙間22に酸化膜が付着していると、突き合わせ溶接時に酸化膜が気化することによって溶接部44にブローホールと呼ばれる球状の空洞が発生し、溶接部44の品質が低下するという問題がある。しかし、摩擦撹拌接合によって酸化膜が分断及び分散されるので、突き合わせ溶接時にブローホールの発生が抑制され、高品質の溶接部44を形成することができる。
【0055】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 蒸気発生器
11 第1管板
12 第2管板
13 スタブ
14 伝熱管
15 胴板
16 第1水室
17 孔部(第1管板)
18 蒸気排出管
19 第2水室
20 孔部(第2管板)
21 水導入管
22 隙間
23 ナトリウム室
24 ナトリウム導入管
25 ナトリウム排出管
30 FSW装置
31 走行手段
32 基部
33 台部
34 ツール支持部
35 ツール部
40 タブ板
41 開先部
42 開先部
43 キャップ
44 溶接部
50 第1水室胴
51 第2水室胴
141 内管
142 外管
351 ピン
13a 端面(スタブ)
14a 端面(伝熱管)
C 中心線
K1 移動軌跡
K2 移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板に形成された複数の孔部の一方側に突出してそれぞれ設けられた管状のスタブに対して、該スタブ及び前記孔部に挿通された伝熱管を一体に接合させる管接合方法であって、
互いに略面一に配置された前記スタブの端面及び前記伝熱管の端面の境界領域に対して、周方向に沿って摩擦撹拌接合を施すことを特徴とする管接合方法。
【請求項2】
前記伝熱管は、複数の管体が同軸に配置された多重管であって、
径方向に隣り合う前記管体同士を、周方向に沿って摩擦撹拌接合により接合させることを特徴とする請求項1に記載の管接合方法。
【請求項3】
前記スタブの端面と前記伝熱管の端面とを摩擦撹拌接合することにより、前記管体同士の摩擦撹拌接合も同時に施されることを特徴とする請求項2に記載の管接合方法。
【請求項4】
前記スタブの端面と前記伝熱管の端面とを摩擦撹拌接合した後に、前記管体同士の摩擦撹拌接合を施すことを特徴とする請求項2に記載の管接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187623(P2012−187623A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55226(P2011−55226)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】