説明

管理機の走行輪回転規制部材

【課題】簡単で速やかに装着可能としつつ、管理機が使用されていないときに該管理機が意に反して勝手に移動するのを確実に規制できる走行輪回転規制部材を提供する。
【解決手段】車輪50の接地領域の進行方向一方側に隣接する第1周方向領域と少なくとも部分的に係合可能な規制面101cを有する第1規制部101と、前記車輪50の接地領域の進行方向他方側に隣接する第2周方向領域と少なくとも部分的に係合可能な規制面102cを有する第2規制部102と、前記各規制面101c,102cが前記接地領域を挟んで前記車輪50の進行方向に離間された状態で前記第1及び第2規制部101,102の車輪幅方向一方側同士を連結する支持部103と、前記一対の操作アーム31,32のテーパ領域が係入可能な一対の係入溝103c,103dとを備える走行輪回転規制部材100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業や除草作業等を行う管理機に適用される走行輪回転規制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耕耘作業や除草作業を行う歩行型管理機が広く知られている(例えば下記特許文献1参照)。歩行型管理機は、土壌を掘り起こす耕耘ユニットと、該耕耘ユニットに伝達する動力を生成するエンジンと、走行用の車輪と、操舵用のハンドルとを有しており、前記エンジンの動力により前記耕耘ユニットを回転させつつ、作業者がハンドルで当該管理機を操舵することで、所望の土壌領域を耕耘したり除草したりすることができるように構成されている。
【0003】
ところで、従来の歩行型管理機の中には、車輪の回転をロックするなどして管理機の意に反した移動を規制する機構が備えられておらず、常時、車輪が回転可能となっているものがある。この種の歩行型管理機においては、特に地面(耕耘対象の土壌)が傾斜していると、使用されていない間(放置されている間)に管理機が意に反して勝手に移動する事態が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−213701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、車両一般の分野においては、走行輪の回転(転動)を規制する車輪止め装置が広く知られている。しかしながら、従来の一般的な車輪止め装置は、比較的構造が複雑且つ大型なもので携帯が困難であったり、規制状態に設置するために複数の作業ステップを要したり、或いは、その作業が比較的難解であったり面倒なものであったりした。
【0006】
ここで、管理機においては、作業者が当該管理機を用いた耕耘作業とその中断とを繰り返すことが多いため、管理機の車輪の回転(転動)をその場で簡単且つ速やかに規制できるものが求められるが、従来の車輪止め装置は、前述のような点から管理機の車輪止めとして相応しいものとはいえなかった。また、そのような車輪止め装置の提案もなされていなかった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、簡単で速やかに装着可能としつつ、管理機が使用されていないときに該管理機が意に反して勝手に移動するのを確実に規制することのできる走行輪回転規制部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、機体フレームと、前記機体フレームに支持されたエンジンと、前記エンジンからの回転動力によって作動的に駆動される状態で前記機体フレームに支持された耕耘ユニットと、前記耕耘ユニットの車輌幅方向両側に配設された左右一対の走行輪と、前記機体フレームに直接又は間接的に連結された左右一対のハンドルパイプを含むハンドル部とを備え、耕耘作業姿勢を基準にして前記一対のハンドルパイプが前方から後方へ行くに従って上方に位置し且つ互いに対する左右離間幅が大きくなる前低後高状のテーパ領域を有している管理機に適用される走行輪回転規制部材であって、前記走行輪の接地領域の進行方向一方側に隣接する第1周方向領域と少なくとも部分的に係合可能な第1係合面を有する第1部位と、前記走行輪の接地領域の進行方向他方側に隣接する第2周方向領域と少なくとも部分的に係合可能な第2係合面を有する第2部位と、前記第1及び第2係合面が前記接地領域を挟んで前記走行輪の進行方向に離間された状態で前記第1及び第2部位の走行輪幅方向一方側同士を連結する連結部位と、前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域が係入可能な一対の係入溝とを有していることを特徴とするものである。
【0009】
この発明によれば、前記第1部位の第1係合面と、前記走行輪の設置領域の進行方向一方側に隣接する第1周方向領域とが少なくとも部分的に係合することにより、前記進行方向一方側への意に反する管理機の移動が規制され、また、前記第2部位の第2係合面と、前記走行輪の設置領域の進行方向他方側に隣接する第2周方向領域とが少なくとも部分的に係合することにより、前記進行方向他方側への意に反する管理機の移動が規制される。すなわち、管理機を動かないように固定又は規制することができる。
【0010】
また、前記走行輪回転規制部材は、前記第1及び第2部位の走行輪幅方向他方側の開放部分を介して前記走行輪の回転を規制する使用位置に設置されるようにしたので、前記走行輪回転規制部材の前記使用位置への設置を容易に行うことができる。
【0011】
また、前記走行輪回転規制部材の不使用時には、前記走行輪回転規制部材に形成された前記係入溝に前記一対のハンドルパイプを係入させることで、前記走行輪回転規制部材を前記一対のハンドルパイプを利用して前記走行輪回転規制部材が収納可能となる。これにより、追加部材を備えることなく、走行輪回転規制部材を確実に保管し、また、作業者は当該管理機を用いた耕耘作業に前記走行輪回転規制部材を携帯することができる。
【0012】
仮に前記走行輪回転規制部材を携帯することができない構成の場合には、前記走行輪回転規制部材をどこに置いたのかを忘れて探したり、或いは前記走行輪回転規制部材を紛失したりするという事態が生じ得るとともに、例えば管理機の使用を中断しようとする際に、前記管理機の現在位置と前記走行輪回転規制部材の保管場所や放置場所とが異なるときには、作業者はその保管場所や放置場所まで前記走行輪回転規制部材を取りに行く作業が要することとなる。
【0013】
これに対し、本発明では、前記走行輪回転規制部材を携帯することができるため、このような不具合を解消することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の走行輪回転規制部材において、前記一対の係入溝は、前記連結部位が前記一対のハンドルパイプより上方に位置し且つ前記第1及び第2係合面が前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域を挟むように当該走行輪回転規制部材が位置された状態において、前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域が係入されるように前記連結部位の内側面に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、前記係入溝に前記一対のハンドルパイプを係入させると、前記連結部位が前記一対のハンドルパイプより上方に位置し且つ前記第1及び第2係合面が前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域を挟むように走行輪回転規制部材が位置するため、走行輪規制部材の不使用時の姿勢を安定化させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の走行輪回転規制部材において、前記第1部位及び前記第1部位の走行輪幅方向一方側から前記走行輪の進行方向に延びる第1延在部位を含む第1形成体と、前記第2部位及び前記第2部位の走行輪幅方向一方側から前記走行輪の進行方向に延びる第2延在部位を含み、前記第1形成体とは別体とされた第2形成体とを有し、前記第1及び第2延在部位は前記走行輪の進行方向に関し位置調整可能に連結されており、連結された状態において前記連結部位を形成することを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、前記第1延在部位と前記第2延在部位とを前記走行輪の進行方向において位置調整可能に連結する構成としたので、前記第1部位の前記第1係合面と前記第2部位の前記第2係合面とを前記走行輪の進行方向において位置調整する、すなわち、前記第1部位の前記第1係合面と前記第2部位の前記第2係合面との離間距離を調整することが可能となる。
【0018】
これにより、走行輪回転規制部材を種々の外径の走行輪に対応することが可能となり(走行輪回転規制部材を種々の外径の走行輪を持つ複数種類の管理機に利用することが可能となり)、汎用性の高い走行輪回転規制部材を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用されていないときの管理機が動かないように固定又は保持しておくことができるとともに、管理機を利用するとき(前記規制部材を利用しないとき)に、前記規制部材をハンドルパイプに装着することで、作業者は当該管理機を用いた耕耘作業に前記走行輪回転規制部材を携帯することができ、前記走行輪回転規制部材をどこに置いたのかを忘れて探したり、前記走行輪回転規制部材を紛失したりするという事態が生じたり、或いは、例えば管理機の使用を中断する際に、前記管理機の現在位置と前記走行輪回転規制部材の保管場所や放置場所とが異なるときに、その保管場所や放置場所まで前記走行輪回転規制部材を取りに行く作業が作業者に課されたりするのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る走行輪回転規制部材の第1の実施形態が適用される管理機の側面図である。
【図2】図1に示す管理機の平面図である。
【図3】ハンドルの構成を示す斜視図である。
【図4】走行輪回転規制部材の全体斜視図である。
【図5】走行輪回転規制部材の側面図である。
【図6】走行輪回転規制部材をハンドルに装着した状態を示す図である。
【図7】走行輪回転規制部材の変形形態を示す平面図である。
【図8】図7の矢印Aの方向から見た図である。
【図9】図8に示す状態から嵌合バーを嵌合穴に嵌合させて蝶ボルトとナットとで締め付けた状態を示す図である。
【図10】図9の矢印Bの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明に係る走行輪回転規制部材の実施形態を説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。図1は、本発明に係る走行輪回転規制部材が適用される管理機の第1の実施形態を示す側面図、図2は、図1に示す管理機の平面図である。
【0022】
図1、図2に示すように、管理機1は、機体フレーム10に搭載されたエンジン(原動機)11と、後述する動力伝達部40を介して前記エンジン11の出力軸11aに連結された入力軸12aを有する電磁クラッチ12と、前記電磁クラッチ12の出力側に連結された入力側を有するミッションケース13とを有する。
【0023】
また、管理機1は、スプロケットチェーンを介して前記ミッションケース13の出力側に連結された車軸21と、前記車軸21の両端に取り付けられた左右一対の車輪50(図1にのみ一方の車輪50だけを図示)と、前記左右の車輪50間の車軸21上に取り付けられた耕耘動作を行う耕耘ユニット(図示せず)と、エンジン11に供給する燃料を貯留するための燃料タンク15と、管理機1の使用時に前記耕耘ユニットの駆動力による該管理機1の走行に対して適度な抵抗を与えて走行速度の上昇を抑制するための抵抗棒16と、当該管理機1の手動操舵を行うためのハンドル30とを有する。
【0024】
前記エンジン11の出力軸11aと前記電磁クラッチ12の入力軸12aとの間に介設された前記動力伝達部40には、エンジン11の出力軸11aに取り付けられた主動プーリ41と、前記電磁クラッチ12の入力軸12aに取り付けられた従動プーリ42と、前記主動プーリ41と前記従動プーリ42とに掛け渡された無端ベルト43とが備えられている。
【0025】
前記無端ベルト43には、テンションプーリ44が所定の態様で押し当てられている。これにより、無端ベルト43に適当な張力が付与される。このように無端ベルト43に張力を付与することで、エンジン11の出力軸11aの回転が前記主動プーリ41から無端ベルト43を介して電磁クラッチ12の従動プーリ42に伝達される。
【0026】
電磁クラッチ12は、従動プーリ42が取り付けられた入力軸側の回転部12bと、車軸21に連結された出力軸側の回転部12cを備えており、前記回転部12b,12cは係合離脱可能に構成されている。電磁クラッチ12は、前記回転部12b,12cが係合された状態になると、従動プーリ42の回転が車軸21に伝達される動力伝達モードとなる一方、前記回転部12b,12cが相互に離脱された状態になると、従動プーリ42の回転が車軸21に伝達されない動力遮断モードとなる。
【0027】
電磁クラッチ12が設置されている機体フレーム10の後端側の上部には、管理機1の手動操舵に用いられるハンドル30の基端部が取り付けられている。図3は、本実施形態に係る管理機1のハンドル30の構成を示す斜視図である。
【0028】
図3に示されるように、ハンドル30は、例えば中空のパイプ材からなる棒状の操作アーム31,32を備えて構成されている。前記操作アーム31,32の後端部(前記基端部と反対側の端部)には、作業者が把持するための把持部31a、32aが互いに略平行な状態で設けられている。
【0029】
前記把持部31aは、前記電磁クラッチ12の接断動作を指示する入力を行うための押しボタン部33aを有する。押しボタン部33aが押し込まれると、電磁クラッチ12の前記回転部12b,12cが相互に係合される前記動力伝達モードとなり、押しボタン部33aの押し込みが解除されると、電磁クラッチ12の前記回転部12b,12cが相互に離脱される前記動力遮断モードとなる。
【0030】
前記操作アーム31と操作アーム32とは、エンジン側から後方に向かって左右両側方に拡がる(平面視で離間距離が漸次大きくなる)ように延びるテーパ領域を有し、且つ、耕耘作業姿勢にしたときに前低後高に傾斜する状態で機体フレーム10に取り付けられている。
【0031】
以上のような構成を有する管理機1の動作について説明する。
【0032】
管理機1は、使用されていない状態(放置されている状態)では、車輪50と抵抗棒16とによって所定の静止姿勢に保持されている。この状態において、作業者が、管理機1に対してエンジン11の始動操作を行うと、該エンジン11が始動して前記エンジン11の出力軸11aに取り付けられた主動プーリ41が回転し、その回転が無端ベルト43を介して従動プーリ42に伝達する結果、電磁クラッチ12の入力軸側の回転部12bが回転する。
【0033】
そして、作業者は、エンジン11が作動している状態で前記操作アーム31,32の把持部31a,32aを把持して前記操作アーム31,32の後端部を持ち上げて管理機1を耕耘作業姿勢とし、前記操作アーム31の把持部31aに設けられている押しボタン部33aを所定量押し込むと、管理機1は、電磁クラッチ12の前記回転部12b,12cが相互に係合する動力伝達モードとなり、従動プーリ42の回転が電磁クラッチ12を介して車軸21に伝達されて耕耘ユニットは回転を開始する。
【0034】
その後、管理機1の走行中に、作業者が前記押しボタン部33aの押し込みを解除すると、管理機1は、電磁クラッチ12の前記回転部12b,12cが相互に離脱する動力遮断モードとなり、エンジン11の出力軸11aから車軸21への動力伝達が遮断されて耕耘ユニットは回転を停止する。
【0035】
以上のような構成を有する管理機1に対し、本実施形態では、該管理機1が使用されていない状態(放置されている状態)での管理機1の意に反する移動を規制するための走行輪回転規制部材100を備えている。図4は、前記走行輪回転規制部材100の全体斜視図、図5は、前記走行輪回転規制部材100の側面図である。
【0036】
図4,図5に示すように、走行輪回転規制部材100は、第1及び第2規制部101,102と、比較的長尺の略直方形状を有する支持部103とを有して構成されており、第1規制部101は、前記支持部103の一方側面103aにおける一方端部に、また、第2規制部102は、前記支持部103の前記一方側面103aにおける他方端部にそれぞれ連続する態様をなす。すなわち、前記支持部103は、前記第1規制部101と第2規制部102との車輪50幅方向一方側同士を連結する。第1規制部101は、第1部位の一例であり、第2規制部102は、第2部位の一例であり、支持部103は、連結部位の一例である。
【0037】
前記第1及び第2規制部101,102は、互いに同様の構成を有しており、それぞれ、比較的面積の小さい上面101a,102aと、比較的面積の大きい底面101b,102bと、規制面101c,102cとを有する。規制面101cは、第1係合面の一例であり、規制面102cは、第2係合面の一例である。
【0038】
前記規制面101cと規制面102cとは、一定の間隔を介して互いに向かい合わせに形成されている。したがって、走行輪回転規制部材100が前記底面101b、102bを地面や床面(以下、地面等という)に向けて走行輪回転規制部材100を地面等に載置したとき(このときの走行輪回転規制部材100の姿勢を載置姿勢という)、前記規制面101cと前記規制面102cとの間の間隙から前記地面等が露出し、走行輪回転規制部材100が前記載置姿勢で車輪50に嵌め込まれたときには、車輪50の下部外周部分がこの露出した地面等に接地する。前記規制面101cと規制面102cとの間の前記一定の間隔は接地領域に相当する。
【0039】
前記規制面101c,102cは、前記上面101a,102aの内側に位置する辺と前記底面101b,102bの内側に位置する辺との間を湾曲する面とされ、また、前記第1及び第2規制部101,102の前記上面101a,102aは、前記支持部103の上面103bと同一の高さ位置に形成されている。
【0040】
そして、前記規制面101cと規制面102cとは、車輪50の径に合わせた湾曲面とされており、前記規制面101cは、車輪50のうち前記接地領域と進行方向前側で隣接する領域(第1周方向領域)と少なくとも部分的に係合可能とされ、また、前記規制面102cは、車輪50のうち前記接地領域と進行方向後側で隣接する領域(第2周方向領域)と少なくとも部分的に係合可能とされている。
【0041】
したがって、管理機1が意に反して移動しようとしたときに、車輪50が、前記係合により前記規制面101c及び前記規制面102cのうち少なくとも一方で受け止められ、車輪50の回転(転動)が規制されることとなる。
【0042】
そして、前記のように、前記規制面101cと前記規制面102cとの間に前記一定の間隙を設けることで、走行輪回転規制部材100と車輪50とを互いに嵌め込ませる場合に、車輪50を上方に浮かせることなく、走行輪回転規制部材100を車輪50の下部に向けて側方から載置姿勢でスライドさせるだけで済み、走行輪回転規制部材100を簡単且つ速やかに車輪50に装着することができる。なお、図4,図5では、前記規制面101c,102cとして前記湾曲面を示しているが、これに限定されず、例えば斜面としてもよい。
【0043】
前記支持部103の前記一方側面103a(前記第1、第2規制部101,102が設けられている側の側面;連結部位の内側面に相当)の適所には、係入溝103c,103dが形成されている。係入溝103c,103dは、側面視で前記第1、第2規制部101,102より内側の位置において、前記ハンドル30の前記テーパ領域における所定部位(例えば図3の矢印Aで示す部位)を装着対象の部位として、この部位における前記操作アーム31,32同士の離間距離や傾斜態様に対応する形態で形成されている。
【0044】
これにより、作業者は、当該管理機1を使用しているときに、走行輪回転規制部材100を管理機1に担持させて該走行輪回転規制部材100を携帯することができる。なお、前記係入溝103c,103dは、前記ハンドル30の前記テーパ領域における前記所定部位における前記操作アーム31,32同士の離間距離や傾斜態様に対応させて形成されているから、前記操作アーム31,32と前記走行輪回転規制部材100の係入溝103c,103dとは前記所定部位においてのみ嵌合関係をなし、その他の部分では嵌合しない。したがって、この嵌合構造によって前記走行輪回転規制部材100が前記ハンドル30の前記所定部位に取り付けられると、走行輪回転規制部材100は、その所定部位から前記操作アーム31,32上を移動することはない。
【0045】
走行輪回転規制部材100は、当該管理機1を使用しないとき、作業者により車輪50の側方から前記載置姿勢で該車輪50に嵌め込まれる。これにより、管理機1の意に反する移動が前記規制面101c,102cによって規制される状態となる。
【0046】
一方、当該管理機1を使用するとき、前記走行輪回転規制部材100は、作業者により車輪50の側方から取り外される。これにより、管理機1が移動可能な状態となる。さらに、取り外された前記走行輪回転規制部材100は、作業者により、前記走行輪回転規制部材100の係入溝103c,103dと前記ハンドル30のテーパ領域における前記所定部位とを互いに嵌合させることで、図6に示すように走行輪回転規制部材100がその所定部位に取り付けられる。
【0047】
また、前記走行輪回転規制部材100の構成によれば、走行輪回転規制部材100が前記ハンドル30のテーパ領域に取り付けられた状態では、支持部103が前記ハンドル30より上方に位置し、且つ、前記規制面101cと前記規制面102cとが前記ハンドル30の前記テーパ領域を挟むように前記走行輪回転規制部材100が配置されるようにしたので、走行輪回転規制部材100を安定した姿勢で管理機1のハンドル30に装着することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、車輪50の下部を受け止める規制面101c,102cを備えた走行輪回転規制部材100を構成したので、該走行輪回転規制部材100によって、管理機1を倉庫等に保管する場合や、例えば耕耘作業以外の他の作業を行うために管理機1の利用を一時的に中断する場合に、管理機1の意に反する移動を確実に規制することができるとともに、走行輪回転規制部材100を簡単且つ速やかに車輪50に装着することができる。
【0049】
また、前記走行輪回転規制部材100を前記ハンドル30(前記操作アーム31,32)の前記テーパ領域における前記所定部位に着脱可能に構成したので、作業者は、当該管理機1を用いた耕耘作業に前記走行輪回転規制部材100を携帯することができる。
【0050】
走行輪回転規制部材100が前記ハンドル30に着脱可能でない構造である場合には、作業者は、自身の衣服に形成されているポケットに走行輪回転規制部材100を収納して携帯するか、もしくは、管理機1の利用を一時的に中断する際に、現在の位置から走行輪回転規制部材100を置いている場所まで走行輪回転規制部材100を取りに行く必要がある。前者の場合、走行輪回転規制部材100がポケットから落下して紛失する可能性があり、後者の場合、作業者に手間暇を課すこととなる。
【0051】
これに対し、本実施形態では、前記走行輪回転規制部材100を前記ハンドル30(前記操作アーム31,32)に着脱可能に構成したので、走行輪回転規制部材100が紛失する可能性を解消又は低減することができる。また、作業者が現在の位置から走行輪回転規制部材100を置いている場所まで前記走行輪回転規制部材100を取りに行く手間や時間を省くことができ、速やかに管理機1の移動を規制した状態にすることができるとともに、前記走行輪回転規制部材100を取りに行っている間に、何らかの要因で管理機1が意に反して勝手に移動する可能性を解消又は低減することができる。
【0052】
本件は、前記第1の実施形態の他、次のような変形形態も採用可能である。
【0053】
(1)前記第1の実施形態に係る走行輪回転規制部材100は、前記第1規制部101と前記第2規制部102との離間距離(前記規制面101cと前記規制面102cとの離間距離)が固定されているものであるが、例えば次のような構造を採用することで、前記第1規制部101と前記第2規制部102との離間距離を可変とする走行輪回転規制部材を構成することができる。
【0054】
図7は、第2の実施形態に係る走行輪回転規制部材の変形形態を示す平面図、図8は、図7の矢印Aの方向から見た図である。図7,図8に示すように、本実施形態に係る走行輪回転規制部材200は、前記第1の実施形態のように一体物ではなく、複数の部材(ここでは2つの部材)により構成されている。
【0055】
すなわち、走行輪回転規制部材200は、第1の構成部材2001及び第2の構成部材2002とを備えて構成されている。第1の構成部材2001は、第1形成体の一例であり、第2の構成部材2002は、第2形成体の一例である。
【0056】
第1の構成部材2001は、前記第1規制部101と同様の構成及び機能を有する前記第1規制部201と、この第1規制部201の車輪50幅方向一方側から前記車輪50の進行方向に延びる第1延在部201fとを有してなり、また、第2の構成部材2002は、前記第2規制部102と同様の構成及び機能を有する前記第2規制部202と、この第2規制部202の車輪50幅方向一方側から前記車輪50の進行方向に延びる第2延在部202fとを有してなる。第1延在部は、第1延在部位の一例であり、第2延在部は、第2延在部位の一例である。
【0057】
すなわち、前記第1及び第2の構成部材2001,2002は、仮に、前記第1の実施形態における走行輪回転規制部材100を、前記第1規制部101と前記第2規制部102との配列方向の中央部分(図5の一点鎖線Sで示す部分)で切断した場合に、その切断によってそれぞれ生成される部材に類似した構成をもつ。
【0058】
ただし、本実施形態では、前記第1規制部201と前記第2規制部202との離間距離を可変とするために、前記第1の構成部材2001と前記第2の構成部材2002との間には、次のような嵌合構造と位置決め構造とが構成されている。
【0059】
まず、前記第1及び第2延在部位201f,202fにおける前記第1及び第2規制部201,202と反対側の端面201a,202aは、前記第1及び第2の構成部材2001,2002が後述の嵌合構造によって連結されるときに互いに対向する。以下、この端面201a,202aを対向面という。
【0060】
前記第1の構成部材2001の対向面201aには、該対向面201aから垂直に延びるスティック状の嵌合バー201bが形成されている。一方、前記第2の構成部材2002の対向面202aには、該対向面202aから垂直に延びる嵌合穴202bが形成されている。嵌合穴202bは、前記嵌合バー201bと略同形状とされており、該嵌合穴202bと前記嵌合バー201bとにより前記嵌合構造が形成されている。
【0061】
さらに、前記嵌合バー201bには、第1規制部201が形成されている側の面からその反対側の面にかけて貫通する長尺状のボルト貫通孔201dが形成されている。一方、前記第2の構成部材2002のうち前記嵌合穴202bを挟む両側の部位には、該嵌合穴202bに連続する長尺状のボルト貫通孔202d,202eが形成されている。前記嵌合バー201bに形成されたボルト貫通孔201dと、前記第2の構成部材2002に形成されたボルト貫通孔202d,202eとは、前記嵌合バー201bと前記嵌合穴202bとを嵌合させたときに同じ方向に延びる長尺状の貫通孔とされている。
【0062】
前記第1の構成部材2001に形成された嵌合バー201bと、前記第2の構成部材2002に形成された嵌合穴202bとを嵌合させると、前記嵌合バー201bに形成されたボルト貫通孔201dと、前記第2の構成部材2002に形成された長尺状のボルト貫通孔202d,202eとが少なくとも部分的に重畳(隣接)する。
【0063】
そして、このボルト貫通孔201dとボルト貫通孔202d,202eとが重畳(隣接)する部分に、例えば蝶ボルト300を貫通させて該蝶ボルト300の先端からナット301を螺合させて該ナット301を締め付けることで、第2の構成部材2002が前記第1の構成部材2001の嵌合バー201bを挟み込み、第1の構成部材2001が第2の構成部材2002に対して固定された状態(第1の構成部材2001と第2の構成部材2002との相対移動が規制された状態)で、第1の構成部材2001と第2の構成部材2002とが互いに連結される。
【0064】
また、前記第1の構成部材2001の前記嵌合バー201bに形成されたボルト貫通孔201dと、前記第2の構成部材2002に形成されたボルト貫通孔202d,202eとは、前記嵌合バー201bと前記嵌合穴202bとを嵌合させたときに同じ方向に延びる長尺状の貫通孔とされているので、ナット301を締め付ける前の状態では、前記各ボルト貫通孔201d,202d,202eに蝶ボルト300を貫通している状態でも、前記嵌合バー201bを前記嵌合穴202b内で移動させることが可能である。
【0065】
これにより、第1の構成部材2001を第2の構成部材2002に対して相対移動させて、第1の構成部材2001と第2の構成部材2002との相対的な位置関係を変化させることができる。その結果、前記第1規制面201cと前記第2規制面202cとの離間距離を可変とする構成を実現することができる。位置決め構造は、嵌合バー201b,嵌合穴202b,第2の構成部材2002の前記嵌合バー201bが嵌合する部分、ボルト貫通孔201d,202d,202e,蝶ボルト300,ナット301により構成されている。
【0066】
このように前記第1規制面201cと前記第2規制面202cとの離間距離を可変とすることで、車輪50の外周形状(サイズ,径)に合わせて前記第1規制面201cと前記第2規制面202cとの離間距離を設定することができる。
【0067】
これにより、第1の実施形態に係る走行輪回転規制部材100は、該走行輪回転規制部材100が装着される管理機1の車輪のサイズ(径)に固有のものであるので、走行輪回転規制部材100を、装着対象の車輪50のサイズに応じて製造する必要が生じるが、本実施形態に係る走行輪回転規制部材200は、車輪50のサイズに応じて前記第1規制面201cと前記第2規制面202cとの離間距離を変更することができるため、装着可能な車輪50のサイズが1つに限定されることがなく、車輪50のサイズが異なる複数種類の管理機1に装着可能となる。これにより、前記第1の実施形態に係る走行輪回転規制部材100よりも汎用性の高い走行輪回転規制部材200を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 管理機
10 機体フレーム
11 エンジン
12 電磁クラッチ
13 ミッションケース
16 抵抗棒
21 車軸
30 ハンドル
31,32 操作アーム
50 車輪
100,200 走行輪回転規制部材
101,102,201,202 第1及び第2規制部
103 支持部
103a 一方側面
101a,102a 上面
101b,102b 底面
101c,102c,201c,202c 規制面
103b 上面
103c,103d 係入溝
2001,2002,第1,第2の構成部材
201a,202a 対向面
201b 嵌合バー
202b 嵌合穴
201d,202d,202e ボルト貫通孔
201f,202f 第1,第2延在部位
300 蝶ボルト
301 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームと、前記機体フレームに支持されたエンジンと、前記エンジンからの回転動力によって作動的に駆動される状態で前記機体フレームに支持された耕耘ユニットと、前記耕耘ユニットの車輌幅方向両側に配設された左右一対の走行輪と、前記機体フレームに直接又は間接的に連結された左右一対のハンドルパイプを含むハンドル部とを備え、耕耘作業姿勢を基準にして前記一対のハンドルパイプが前方から後方へ行くに従って上方に位置し且つ互いに対する左右離間幅が大きくなる前低後高状のテーパ領域を有している管理機に適用される走行輪回転規制部材であって、
前記走行輪の接地領域の進行方向一方側に隣接する第1周方向領域と少なくとも部分的に係合可能な第1係合面を有する第1部位と、
前記走行輪の接地領域の進行方向他方側に隣接する第2周方向領域と少なくとも部分的に係合可能な第2係合面を有する第2部位と、
前記第1及び第2係合面が前記接地領域を挟んで前記走行輪の進行方向に離間された状態で前記第1及び第2部位の走行輪幅方向一方側同士を連結する連結部位と、
前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域が係入可能な一対の係入溝と
を有していることを特徴とする走行輪回転規制部材。
【請求項2】
前記一対の係入溝は、前記連結部位が前記一対のハンドルパイプより上方に位置し且つ前記第1及び第2係合面が前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域を挟むように当該走行輪規制部材が位置された状態において、前記一対のハンドルパイプの前記テーパ領域が係入されるように前記連結部位の内側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の走行輪回転規制部材。
【請求項3】
前記第1部位及び前記第1部位の走行輪幅方向一方側から前記走行輪の進行方向に延びる第1延在部位を含む第1形成体と、前記第2部位及び前記第2部位の走行輪幅方向一方側から前記走行輪の進行方向に延びる第2延在部位を含み、前記第1形成体とは別体とされた第2形成体とを有し、
前記第1及び第2延在部位は前記走行輪の進行方向に関し位置調整可能に連結されており、連結された状態において前記連結部位を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の走行輪回転規制部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−235734(P2011−235734A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108163(P2010−108163)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)