説明

管継手の保持構造

【課題】管継手を所定位置に設置する保持具に対して該管継手を回転させた際に、キャップの緩みを防止できるようにする。
【解決手段】配管を接続可能に構成された筒状の継手基体18と、該継手基体18にねじ嵌合し配管を該継手基体18に固定するキャップ22とを有する管継手10と、キャップ22の外周を挟持可能に構成され、管継手10を所定位置に設置する保持具12と、該保持具12とキャップ22との間に配置され、該キャップ22に対して相対回転可能に構成されたスペーサ14と、を備える。保持具12に対して管継手10を回転させた際に、該保持具12によりキャップ22の回転が抑制されることはなく、該キャップ22と継手基体18との間に相対回転が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管用保持具として、剛性を有する保持部材の内側に弾性を有する緩衝層を設け、この緩衝層の内側に、摩擦係数が小さくかつ絶縁性を有するとともに配管の外周面に当接する接触層を設けたものが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、配管用支持具として、下受具と上受具の内面に管の外面と接する帯状の管受部を突設し、その帯状の管受部の表面に摩擦抵抗の小さい滑り層を形成し、上受具と下受具とにより管を抱持してこれをボルト及びナットで緊締した際に、上受具の管受部の内面と管の外面との間に1mm以上の隙間ができる寸法にしたものが開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、パイプ継手を連結した配管用ヘッダーの固定装置であって、固定部とパイプ継手のキャップを挟む挟持部を備えた固定具が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−158669号公報
【特許文献2】実用新案登録第3152607号公報
【特許文献3】特開2005−233327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献3に記載の従来例のように、ねじ式のキャップを固定具により直接挟む構造では、該固定部によりキャップの回転が抑制されるため、管継手を該固定具に対して回転させた際に、該管継手の継手基体とキャップとの間に相対回転が生じる場合があると考えられる。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、管継手を所定位置に設置する保持具に対して該管継手を回転させた際に、キャップの緩みを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、配管を接続可能に構成された筒状の継手基体と、該継手基体にねじ嵌合し前記配管を該継手基体に固定するキャップとを有する管継手と、前記キャップの外周を挟持可能に構成され、前記管継手を所定位置に設置する保持具と、該保持具と前記キャップとの間に配置され、該キャップに対して相対回転可能に構成されたスペーサと、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の管継手の保持構造では、管継手のキャップと、保持具との間にスペーサが配置されているので、キャップが保持具に直接挟持されることはなく、保持具に直接挟持されるのはスペーサである。また、スペーサは、キャップに対して相対回転可能に構成されているので、管継手を所定位置に設置する保持具に対して該管継手を回転させた際に、該保持具によりキャップの回転が抑制されることはなく、該キャップと継手基体との間に相対回転が生じない。これにより、キャップの緩みを防止することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の管継手の保持構造において、前記スペーサの軸心と前記キャップの軸心を一致させた状態において、該前記スペーサと前記キャップの間には隙間が設定されている。
【0011】
請求項2に記載の管継手の保持構造では、スペーサとキャップの間に隙間が設定されているので、キャップはスペーサに対して自在に相対回転することができる。従って、キャップの緩みを防止しつつ、管継手を設置する際の角度設定を容易に行うことができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載の管継手の保持構造において、前記隙間が1mm以下である。
【0013】
ここで、隙間を1mm以下としたのは、これを上回ると、設置状態の管継手と保持具との間のがたつきが大きくなるからである。
【0014】
請求項3に記載の管継手の保持構造では、スペーサとキャップの隙間の大きさを適切に設定しているので、設置状態の管継手と保持具との間のがたつきを抑制しつつ、キャップの緩みを防止することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の管継手の保持構造において、前記スペーサの外径は、前記保持具の内径に対応している。
【0016】
請求項4に記載の管継手の保持構造では、スペーサの外径が、保持具の内径に対応しているので、スペーサを保持具によって安定的に挟持することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の管継手の保持構造において、前記スペーサの軸方向端部の少なくとも一方の内径は、前記キャップの外径よりも小さく設定されている。
【0018】
請求項5に記載の管継手の保持構造では、スペーサの軸方向端部の少なくとも一方の内径が、キャップの外径よりも小さく設定されているので、キャップの外周からのスペーサの離脱を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の管継手の保持構造によれば、管継手を所定位置に設置する保持具に対して該管継手を回転させた際に、キャップの緩みを防止できる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項2に記載の管継手の保持構造によれば、キャップの緩みを防止しつつ、管継手を設置する際の角度設定を容易に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項3に記載の管継手の保持構造によれば、設置状態の管継手と保持具との間のがたつきを抑制しつつ、キャップの緩みを防止することができる、という優れた効果が得られる。
【0022】
請求項4に記載の管継手の保持構造によれば、スペーサを保持具によって安定的に挟持することができる、という優れた効果が得られる。
【0023】
請求項5に記載の管継手の保持構造によれば、キャップの外周からのスペーサの離脱を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】管継手の保持構造を示す斜視図である。
【図2】管継手の保持構造を示す部分断面図である。
【図3】管継手の保持構造を示す分解斜視図である。
【図4】(A)軸方向の一端に小径部が形成されたスペーサを示す斜視図である。(B)小径部を有しない円筒状のスペーサを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1から図3において、本実施形態に係る管継手の保持構造Sは、管継手10と、保持具12と、スペーサ14とを有している。
【0026】
管継手10は、配管16を接続可能に構成された筒状の継手基体18と、該継手基体18にねじ嵌合し配管16を該継手基体18に固定するキャップ22とを有している。ここで、配管16には、他の管継手10も含まれる。
【0027】
継手基体18は、例えば樹脂製とされ、両端が開口する幹部18Aと、該基部18Aの中央部から分岐する枝部18Bとを有する例えばT字形に形成されている。図3に示されるように、基部18Aの一端側は雌側差込み部24となっており、キャップ22が設けられている。一方、基部18Aの他端側は、雌側差込み部24に接続可能な雄側差込み部26となっている。
【0028】
図示は省略するが、キャップ22の内側には、該キャップ22を締め込んだ際に径方向内側に張り出し、雌側差込み部24に差し込まれた雄側差込み部26や配管16を拘束する爪部や、水密性や気密性を確保するためのOリング等が配設されている。
【0029】
管継手10は、雄側差込み部26を他の管継手10の雌側差込み部24に接続することで、継手基体18における基部18Aの軸方向に次々と連結できるようになっている。図1に示される例では、複数の管継手10を、継手基体18の基部18Aの軸方向に直列に連結することによって、配管ヘッダー20が構成されている。
【0030】
枝部18Bの先端側は、例えばワンタッチ式の雌側差込み部28となっており、配管16を所定位置まで差し込むだけで接続が完了するようになっている。なお、配管16を、基部18Aの雌側差込み部24に接続することも可能である。
【0031】
保持具12は、キャップ22の外周を挟持可能に構成され、管継手10を所定位置に設置する部材である。この所定位置とは、壁部やブラケット等である。図1,図3に示されるように、保持具12は、例えば一般に市販されている配管バンドであり、夫々略半円筒状に形成された一対の挟持部30を、蝶番32において開閉可能に連結して構成されている。
【0032】
挟持部30の周方向における蝶番32と反対側に位置する端部には、該挟持部30の略径方向外側に張り出したフランジ34が夫々形成されている。このフランジ34の貫通孔38にねじ36を通して、図示しないナット等に締め付けることにより、一対の挟持部30の間隔を狭められるようになっている。また図示は省略するが、保持具12は、ねじ36や、図示しない他の固定部材を、壁部等の所定位置に締め付けることにより、該所定位置に固定可能に構成されている。
【0033】
スペーサ14は、保持具12とキャップ22との間に配置され、該キャップ22に対して相対回転可能に構成された、例えば略円筒状の硬質の樹脂部材である。このスペーサ14は、キャップ22よりも軸方向に長く形成されている。スペーサ14の軸方向端部の少なくとも一方の内径D1は、キャップ22の外径D2よりも小さく設定されている。図2,図3に示される例では、スペーサ14の軸方向端部の両方の内径D1が、キャップ22の外径D2よりも夫々小さく設定されている。換言すれば、スペーサ14の軸方向両端部に、小径部14Aが形成されている。この小径部14Aは、例えばスペーサ14の軸方向端部を絞り込んだ形状となっている。このスペーサ14をキャップ22の外周に配置できるようにするために、該スペーサ14は、例えば半円筒状に二分割されている。
【0034】
小径部14Aについては、図4(A)に示されるように、スペーサ14の軸方向端部の一方のみに形成してもよい。また図4(B)に示されるように、スペーサ14を円筒状のものとして、小径部14Aを形成しない構造としてもよい。これらの場合には、スペーサ14を二分割しなくても、キャップ22の外周に配置可能である。またこれらの場合には、スペーサ14の軸方向長さは、キャップ22より短くてもよい。
【0035】
図2に示されるように、スペーサ14の軸心とキャップ22の軸心を一致させた状態において、該スペーサ14とキャップ22の間には、例えば1mm以下の隙間dが設定されている。この隙間dは、スペーサ14の内周面の大部分(小径部14Aを除く部分)及びキャップ22の外周面の大部分(角部のR形状や面取り形状を除く部分)をなす円筒面同士の間の半径分の隙間であり、直径分では2mm以下となる。ここで、隙間dを1mm以下としたのは、これを上回ると、設置状態の管継手10と保持具12との間のがたつきが大きくなるからである。
【0036】
なお、管継手10は、他の保持具等(図示せず)により保持されていない限り、重力によりその位置が下がり、キャップ22の下部外周面が、スペーサ14の下部内周面に当接した状態となる。この当接部分では、隙間dが部分的に0となるが、他の部分では隙間dが確保されているので、スペーサ14がキャップ22に対して相対回転可能であることに変わりはない。
【0037】
一方、スペーサ14の外径は、保持具12の内径に対応している。換言すれば、スペーサ14の外周円筒面の曲率半径と、保持具12における挟持部30の曲率内径とが略等しく、スペーサ14の外周円筒面が、保持具12における挟持部30の内周円筒面に沿っている。
【0038】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1から図3において、保持具12を用いて管継手10(配管ヘッダー20)を所定位置に設置する際には、枝部18Bの雌側差込み部28の向きを整える等の目的で、該管継手10を保持具12に対して矢印A方向やB方向に回転させることがある。
【0039】
本実施形態に係る管継手の保持構造Sでは、管継手10のキャップ22と、保持具12との間にスペーサ14が配置されているので、キャップ22が保持具12に直接挟持されることはなく、保持具12に直接挟持されるのはスペーサ14である。スペーサ14の外径は、保持具12の内径に対応しており、具体的には、スペーサ14の外周円筒面の曲率半径と、保持具12における挟持部30の曲率内径とが略等しく、スペーサ14の外周円筒面が、保持具12における挟持部30の内周円筒面に沿っているので、スペーサ14を保持具12によって安定的に挟持することができる。またスペーサ14の外径を保持具12の内径に対応させることにより、保持具12として、広く一般に市販されている安価な配管バンドを用いることができる。
【0040】
このように、本実施形態では、スペーサ14が、キャップ22に対して相対回転可能に構成されているので、管継手10の回転時に、保持具12によりキャップ22の回転が抑制されることはなく、該キャップ22と継手基体18との間に相対回転が生じない。換言すれば、継手基体18に対するキャップ22のねじ嵌合力よりも弱い力で、管継手10を保持具12に対して回転させることができる。これにより、継手基体18にねじ嵌合しているキャップ22の緩みを防止することができる。
【0041】
特に、図2に示されるように、スペーサ14とキャップ22の間に適切な隙間dが設定されているので、キャップ22はスペーサ14に対して自在に相対回転することができる。従って、管継手10を設置する際の角度設定を容易に行うことができ、更に設置状態の管継手10と保持具12との間のがたつきを抑制しつつ、キャップ22の緩みを防止することができる。
【0042】
また、スペーサ14の軸方向端部の少なくとも一方の内径D1が、キャップ22の外径D2よりも小さく設定されているので、キャップ22の外周からのスペーサ14の離脱を抑制することができる。
【0043】
(他の実施形態)
保持具12は上記構造のものに限られず、他の各種配管バンドを用いることができる。
【0044】
キャップ22とスペーサ14とが、継手基体18の基部18Aの軸回りに相対回転可能であれば、スペーサ14の外周面は円筒面でなくてもよい。同様に、保持具12における挟持部30の形状は、半円筒状でなくてもよい。例えば挟持部30の形状を、夫々V字形とし、該挟持部30がスペーサ14の外周面に2点ずつ、計4点で当接するようにしてもよい。
【0045】
スペーサ14とキャップ22との間の隙間dが1mm以下であるものとしたが、これに限られず、1mmを超えてもよい。
【0046】
スペーサ14の外径が、保持具12の内径に対応しているものとしたが、保持具12によりスペーサ14を保持できる状態であれば、これらの寸法が対応関係になくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 管継手
12 保持具
14 スペーサ
16 配管
18 継手基体
22 キャップ
d 隙間
D1 スペーサの軸方向端部の内径
D2 キャップの外径
S 管継手の保持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を接続可能に構成された筒状の継手基体と、該継手基体にねじ嵌合し前記配管を該継手基体に固定するキャップとを有する管継手と、
前記キャップの外周を挟持可能に構成され、前記管継手を所定位置に設置する保持具と、
該保持具と前記キャップとの間に配置され、該キャップに対して相対回転可能に構成されたスペーサと、
を備えた管継手の保持構造。
【請求項2】
前記スペーサの軸心と前記キャップの軸心を一致させた状態において、該スペーサと前記キャップの間には隙間が設定されている請求項1に記載の管継手の保持構造。
【請求項3】
前記隙間が1mm以下である請求項2に記載の管継手の保持構造。
【請求項4】
前記スペーサの外径は、前記保持具の内径に対応している請求項2又は請求項3に記載の管継手の保持構造。
【請求項5】
前記スペーサの軸方向端部の少なくとも一方の内径は、前記キャップの外径よりも小さく設定されている請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の管継手の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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