説明

管継手

【課題】
【解決手段】曲折部を有する管継手本体部11の両端縁部に、断面円形の管を接続可能な管接続部12,13が設けられたL字状エルボ型の管継手1であって、前記管継手本体11の両管接続部12,13側の端縁部において、前記両管接続部12,13の管軸を共に含む平面と交わる相対する内面部分間の距離Dが該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離Dよりも小さく、かつ、その距離の差D−Dが前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道管等、内部に正の圧力がかかる配管を急角度にて曲折するような配管に好適に用いられるエルボ型またはチーズ型の管継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成樹脂製の管と管継手を接続する方法としては、TS接続、溶接接続、融着接続、メカニカル接続等の各種の接続方法があり、その用途と目的に応じて適宜選択して用いられている。
こうした接続方法を問わず、管継手の外面形状は、水力学的圧力に起因する応力等を負担する強度上の必要と、施工スペースと材料の節約という、相反する要求を満たすように適宜決められている。
【0003】
それに対して、管継手の内面形状は、水力学的応力に対する強度上の必要と、内部を流れる流体の通り易さの確保という、相反する要求を満たすように適宜定められている。しかし、実際上は、管の内径と略等しい寸法を管継手内径の最低寸法とすることが多く、JIS規格等の規格も概略そうしたものとなっている(非特許文献1,2参照。)。
【0004】
従って、実際の管継手製品においては、管継手本体の管接続部に近接する部分の内面形状も、この最低寸法に近い円であるのが普通である。これは、形状を構成するのに、円という形が最も基本的な幾何学形状であることに加え、水力学的圧力によって管継手材料に発生する応力の最大値を最も軽減できるものと考え、内径をできるだけ小さくし、そのことによって、肉厚を可能な限り大きく確保しようとする自然な思想に基づくものと考えられる。
【0005】
次に、上記の内容を従来のエルボ型の管継手を例として、図18〜24を参照して説明する。
図18及び19に示すように、このエルボ型の管継手100は、中央部の曲折部を有する管継手本体部101の両端部に管接続部102,103が設けられている。
管継手本体部101の両管接続部102,103側の両端縁(図18の断面b,b)における内面形状は、図19及び20に示すような真円となっている。
従って、両管接続部102,103の管軸を含む平面と交わる相対する内面部分間の距離d1 と該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離d2 とは等しくなっている。また、両端縁において、曲折部の内側となる内面の曲率半径r1 と曲折部の外側となる内面の曲率半径r2 とは等しくなっている。
【0006】
それに伴って、この管継手100は、その管継手本体101の曲折部の中央部(図18の45°断面a)における内面形状は、図21に示すような形、つまり上部が縦長の楕円形をなしていて頂部のs部分が尖り、下部の両側部に出っ張りを有するいわゆるおむすび形の歪みのある形になっている。
【0007】
それは、その上半分の領域は、両管接続部102,103側の端縁b,bから管継手本体101の曲折部の中央部aに延びる円柱体を斜め45°に切断したときの端面の形状として現れる、縦軸のみを√2倍に伸ばした縦長の楕円形の上部と同じ形状となり、その下半分の領域は、曲りに合わせたカーブを持つように素直なトーラス面をなすようになるからである。
【0008】
つまり、この管継手100を製造するには、図22に示すような一対のダイス201、201からなる内型200が使用される。図23に示すように、このダイス201の曲折部形成部211の外形は、先端部側の上半分が円柱体で下半分が曲りに合わせた筒体となっているものを斜め45°に切断した状態となされるのが普通であるので、成形される管継手100の管継手本体101の曲折部の内面形状は上記のものに決まってしまうこととなるのである。
【0009】
その結果、この管継手100を用いて管を接続した配管において、管継手100の内部に正の静水圧が繰り返しかかった場合に、図24に示すように、管継手100の内周、特に管接続部102,103の両軸に直交する方向に引っ張る力が働き、内面に発生したクラックが外面にまで貫通するように成長して、図中にcとして示すような傷が入ってしまうという不都合な事態となる。
これは、特に肉の薄い製品については、内圧に伴って壁が引っ張られる、いわゆる膜応力と共に、形状の僅かな出入りに密接に関連するところの管壁を曲げる力が働き、これが材料の局所における大きな応力に結びついていると考えられる。
【0010】
更に、上記の内容を従来のチーズ型の管継手を例として、図25〜30を参照して説明する。
図25及び26に示すように、このチーズ型の管継手300は、断面T字型をなす管継手本体部301の主管軸方向の両端縁に、主管接続部302,303が設けられており、主管軸と直交する枝管軸方向の端縁に枝管接続部304が設けられている。
この管継手300では、管継手本体部301の主管接続部302,303側の端縁(図25R>5の断面d,d)における内面形状は、図27に示すような直径d3 の真円となっており、枝管接続部304側の端縁(図25の断面e)における内面形状も真円となっている。
【0011】
それに伴って、この管継手300は、その管継手本体301の主管接続部302,303と枝管接続部304の境界部(図25の45°断面f,f)における内面形状は、縦長の楕円形の上半分をなしていて頂部のt部分が尖った形になっている。
【0012】
これは、その上半分の領域は、両主管接続部302,303側の端縁(図25の断面d,d)から管継手本体101の曲折部の中央部に延びる円柱体の上部を斜め45°に切断したときの端面の形状として現れる、縦軸のみを√2倍に伸ばした縦長の楕円形の上部と同じ形状となるからである。
【0013】
つまり、この管継手300を製造するには、図29に示すような主管成形用ダイス401、401と枝管成形用ダイス402からなる内型400が使用される。
このうち、主管成形用ダイス401の曲折部形成部411の外形は、先端部側の上半分が円柱体で下半分が曲りに合わせた筒体となっているものの上半分を斜め45°に切断し、下半分を垂直に切断したものを用いるのが普通であり、枝管成形用ダイス402の外形は、その先端面が、主管成形用ダイス401、401の先端面に対応するものを用いるのが普通であるので、成形される管継手300の主管接続部302,303と枝管接続部304の境界部の内面形状は上記のものに決まってしまうこととなるのである。
【0014】
その結果、この管継手300を用いて管を接続した配管において、管継手300の内部に正の静水圧が繰り返しかかった場合に、図30に示すように、管継手300の内周、特に主管接続部302,303の主軸と枝管接続部304の枝管軸に直交する方向に引っ張る力が働き、内面に発生したクラックが外面にまで貫通するように成長して、図中にgと示すような傷が入ってしまうという不都合な事態となる。
これは、特に肉の薄い製品については、内圧に伴って壁が引っ張られる、いわゆる膜応力と共に、形状の僅かな出入りに密接に関連するところの管壁を曲げる力が働き、これが材料の局所における大きな応力に結びついていると考えられる。
【0015】
【非特許文献1】
JIS K 6742
【非特許文献2】
JIS K 6743
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の問題点に鑑み、水力学的圧力に起因する管継手に作用する応力への対策として、肉厚をひたすら厚くするのではなく、場所によってはむしろ肉厚を薄くし、従って材料を節約しつつも、その場所に肉を盛った場合と比べても、強度において優れた管継手製品を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、製品の内面及び外面を形成する技術手段として、主として、射出成形や圧縮成形等の一般に再使用される型を用いて成形することを前提とする。
一般に再使用される型は、管継手のような形状に対しては、外面を形成するキャビティと呼ばれる部分と、内面を形成するコアと呼ばれる部分とから構成されるが、中でもコアについては、設計上の要求難度が高い。それは製品一個の成形に供せられた後、製品を壊すことなく、狭い内面から無事に引き抜ける形状又は機構を持つ必要があるからである。
【0018】
本発明は、成形方法に固有の制約の下に、水道管等、内部に正の圧力がかかる配管を急角度にて曲折するように配管する際に、内外圧差、特にその使用中の圧力変動に伴って継手材料に発生する応力の最大値を低減し、こうした応力に伴って長期的に進行する破壊を低減すべく、力学的耐性を向上させたエルボ型またはチーズ型の管継手を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に記載の発明は、曲折部を有する管継手本体部の両端縁部に、断面円形の管を接続可能な管接続部が設けられたL字状エルボ型の管継手であって、前記管継手本体の両管接続部側の端縁部において、前記両管接続部の管軸を共に含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D1 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 よりも小さく、かつ、その距離の差D2 −D1 が前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている管継手である。
【0020】
その距離の差D2 −D1 が接続すべき管の厚さの半分未満であると、有効な改善効果を得ることができず、接続すべき管の厚さの2倍を超えると、管継手に管を接続するメカニズムに支障をきたすか、または内部に通す流体の通行を阻害するかのいずれかの問題が予想される。
【0021】
本願の請求項2に記載の発明は、前記管継手本体の両管接続部側の端縁部において、曲折部の内側となる内面の曲率半径R1 が曲折部の外側となる内面の曲率半径R2 よりも大きく、その曲率半径の差R1 −R2 が前記接続すべき管の厚さの4倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている請求項1に記載の管継手である。
【0022】
その曲率半径の差R1 −R2 の下限は特にないが、有効な改善効果を得るためには、接続すべき管の肉厚の半分以上が好ましい。曲率半径の差R1 −R2 が接続すべき管の厚さの4倍を超えると、管継手に管を接続するメカニズムに支障をきたすか、または内部に通す流体の通行を阻害するかのいずれかの問題が予想される。
【0023】
本願の請求項3に記載の発明は、断面T字型をなす管継手本体部の各端縁部に、断面円形の管を接続可能な管接続部が設けられたチーズ型の管継手であって、前記管継手本体の各管接続部側の端縁部において、前記各管接続部の管軸を全て含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D3 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D4 よりも小さく、かつ、その距離の差D4 −D3 が前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている管継手である。
【0024】
その距離の差D4 −D2 が接続すべき管の厚さの半分未満であると、有効な改善効果を得ることができず、接続すべき管の厚さの2倍を超えると、管継手に管を接続するメカニズムに支障をきたすか、または内部に通す流体の通行を阻害するかのいずれかの問題が予想される。
【0025】
本願の請求項4に記載の発明は、前記チーズ型の管継手が、前記管継手本体の主管軸方向の両端縁部に主管接続部が設けられ、主管軸と直交する枝管軸方向の端縁部に枝管接続部が設けられたものからなり、両主管接続部側の端縁部において、前記枝管接続部側の内面の曲率半径R3 が枝管接続部から遠くなる側となる内面の曲率半径R4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 が前記主管接続部に接続すべき管の厚さの8倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている請求項3に記載の管継手である。
【0026】
その曲率半径の差R3 −R4 の下限は特にないが、有効な改善効果を得るためには、接続すべき管の肉厚の半分以上が好ましい。曲率半径の差R3 −R4 が主管接続部に接続すべき管の厚さの8倍を超えると、管継手に管を接続するメカニズムに支障をきたすか、または内部に通す流体の通行を阻害するかのいずれかの問題が予想される。
【0027】
【作用】
本発明の管継手は、L字状エルボ型の管継手の管継手本体の両管接続部側の端縁部において、前記両管接続部の管軸を共に含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D1 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 よりも小さく、かつ、その距離の差D2 −D1 が前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされているにより、管継手本体のもっとも歪んだ状態になり易い中央部の断面内面形状を、真円に近ずけることができるので、水力的応力が低減し、しかも、管継手部に管を接続するメカニズムに支承をきたすこともない。
【0028】
更に、前記管継手本体の両管接続部側の端縁部において、曲折部の内側となる内面の曲率半径R1 が曲折部の外側となる内面の曲率半径R2 よりも大きく、その曲率半径の差R1 −R2 が前記接続すべき管の厚さの4倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることにより、管継手本体のもっとも歪んだ状態に易い中央部の断面内面形状を、その頂部付近の出っ張りが緩和された真円に近づけることができるので、一層、水力的応力が低減し、しかも管継手部に管を接続するメカニズムに支承をきたすこともない。
【0029】
また、本発明の管継手は、チーズ型の管継手本体の各管接続部側の端縁部において、前記両管接続部の管軸を共に含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D1 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 よりも小さく、かつ、その距離の差D2 −D1 が前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることにより、管継手本体のもっとも歪んだ状態になり易い中央部の断面内面形状を、真円に近ずけることができるので、水力的応力が低減し、しかも管継手部に管を接続するメカニズムに支承をきたすこともない。
【0030】
更に、前記チーズ型の管継手が、前記管継手本体の主管軸方向の両端縁部に主管接続部が設けられ、主管軸と直交する枝管軸方向の端縁部に枝管接続部が設けられたものからなり、両主管接続部側の端縁部において、前記枝管接続部側の内面の曲率半径R3 が枝管接続部から遠くなる側となる内面の曲率半径R4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 が前記主管接続部に接続すべき管の厚さの8倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることにより、管継手本体のもっとも歪んだ状態に易い中央部の断面内面形状を、その頂部付近の出っ張りが緩和された真円に近づけることができるので、一層、水力的応力が低減し、しかも管継手部に管を接続するメカニズムに支承をきたすこともない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜6は本発明の一例の管継手の説明図である。
図1及び2に示すように、1は合成樹脂製のL字状エルボ型の管継手であって、曲折部111を有する管継手本体部11の両端部に、TS接続式の受口からなる管接続部12,13が設けられている。そして、管接続部12,13内に接着剤を介して断面円形の合成樹脂製の管を圧入することにより、内圧または外圧が作用する状態にて管を接続して配管を行うことができるようになっている。
【0032】
この管継手1は、管継手本体11の両管接続部12,13側の端縁部(図1の断面B,B)において、両管接続部12,13の管軸を共に含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D1 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 よりも小さく、かつ、その距離の差D2 −D1 が接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている(図3参照)。
【0033】
また、管継手本体11の両管接続部12,13側の端縁部において、曲折部111の最も内側となるP点の内面の曲率半径R1 が曲折部111の最も外側となるQ点の内面の曲率半径R2 よりも大きく、その曲率半径の差R1 −R2 が接続すべき管の厚さの4倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている(図3参照)。
【0034】
そして、管継手本体11の曲折部111の中央部(図1の45°断面A)における内面形状は、図4に示すような、頂部のS点付近の出っ張りが緩和された真円に近い内面形状となっている。これにより、水力的応力が低減すると考えられる。
【0035】
この管継手1を製造するには、図5に示すような一対のダイス21、21からなる内型2が使用される。このダイス21の曲折部形成部211の基端縁部(図6の断面B′)の外形が図3に示す形状と同じとされ、その先端縁部(図6のA′)の外形が図4に示す形状と同じとされている。
この一対のダイス21、21同士を、図5に示すようにその曲折部形成部211,211の先端面同士を突き合わせるようにして内型を形成し、図示しない外型との間で樹脂を成形することにより、上記の管継手1を製造することができる。
【0036】
図7〜13は本発明の別の例の管継手の説明図である。
図7及び8に示すように、3は合成樹脂製のチーズ型の管継手であって、断面T字型をなす管継手本体部31の主管軸方向の両端縁部に、TS接続式の受口からなる主管接続部32,33が設けられており、主管軸と直交する枝管軸方向の端縁部に枝管接続部34が設けられている。主管接続部32,33及び枝管接続部34には接着剤を介して断面円形の合成樹脂製の管を圧入することにより、内圧または外圧が作用する状態にて管を接続して配管することができるようになっている。
【0037】
この管継手3は、管継手本体31の両主管接続部32,33側の端縁部(図7の断面D,D)において、両主管接続部32,33の主管軸及び枝接続部の枝管軸を全て含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D3 が該平面と最も遠くなる相対する内面部分間の距離D4 よりも小さく、かつ、その距離の差D4 −D3 が接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている(図9参照)。
また、管継手本体31の枝管接続部34側の端縁部(図7の断面E)においても、上記と同様の関係を満たすような内面形状とされている。
【0038】
また、管継手本体31の両主管接続部32,33側の端縁部において、枝管接続部34側の内面の曲率半径R3 が枝管接続部34から遠くなる側となる内面の曲率半径R4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 が両主管接続部32,33に接続すべき管の厚さの8倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている(図9参照)。
【0039】
また、管継手本体31の両主管接続部32,33側の端縁部において、最も枝管接続部34側となるP′,P′点の内面の曲率半径R3 が枝管接続部34から最も遠い側となるQ′,Q′点の内面の曲率半径R4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 が、主管接続部32,33に接続すべき管の厚さの8倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされている(図9参照)。
【0040】
そして、管継手本体31の最も枝管接続部34側となるP′,P′点からその中心部のH点間を結ぶ面(図7の断面G,G)における内面形状は、図11に示すような頂部のS′点付近の出っ張りが緩和された真円の上半分に近い内面形状となっている。また、管継手本体31の中心部のH点とその底部中央部のI点を結ぶ面(図7の断面J)も真円の下半分に近い内面形状となっている。これにより、水力的応力が低減すると考えられる。
【0041】
尚、管継手本体31の両主管接続部32,33の基端部(図7の断面F,F)における内面形状は、両主管接続部32,33の主管軸及び枝接続部の枝管軸を含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D5 が該平面と最も遠くなる相対する内面部分間の距離D6 よりも小さくなり、枝管接続部34側の内面の曲率半径R5 が枝管接続部34から遠くなる側となる内面の曲率半径R6 よりも大きくなるような楕円形となっている(図10参照)。
管継手本体31の両主管接続部32,33の先端部の内面形状は、真円となっている(図示せず)。
【0042】
この管継手3を製造するには、図13に示すような一対の主ダイス41、41と枝ダイス42とからなる内型4が使用される。この主ダイス41,41として、の管本体部形成部411,411の基端縁部(図13の断面D′,D′)の外形が図9に示す形状と同じとされ、その先端縁部の上部傾斜面(図13のG′面)の外形が図11に示す形状と同じとされており、垂直面(図13のJ′面)の外形が図12に示す形状と同じとされているものを用い、枝ダイス42として、管本体部形成部421の先端部に、主ダイス41,41の先端縁部の上部傾斜面に対応する傾斜面が設けられたものを用いて、その管本体部形成部411,411,421の先端面同士を突き合わせるようにして内型を形成し、図示しない外型との間で樹脂を成形することにより、上記の管継手3を製造することができる。
【0043】
図14〜17は本発明の別の例の管継手の説明図である。
図14〜17に示すように、5は合成樹脂製のチーズ型の管継手であって、図示するような形状と寸法関係となっていること以外は、図7〜13を参照して説明したものと同じである(対応する図番と寸法符号を付してその詳細な説明は省略する)。
【0044】
以下、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
図1〜4に示す管継手1であって、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる管接続部12,13を管継手本体部11の両端縁部に備えた、90°エルボ型の塩化ビニル樹脂管継手(外径70mm)を試作した。
【0045】
この管継手1においては、管接続部12,13の管軸を含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D1 は52mm、該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 は54mmであった。従って、D1 の方がD2 よりも小さく、その距離の差D2 −D1 は2mmであって、接続すべき管の厚さ4.5mmの半分以上2倍以下(2.25〜9mm)となっている。
【0046】
また、この管継手1の管継手本体11の管接続部12側の端縁部における、曲折部111の最も内側となるP点の内面の曲率半径R1 は29.16mm、曲折部111の最も外側となるQ点の内面の曲率半径R2 は27mmであって、R1 の方がR2 よりも大きく、その曲率半径の差R1 −R2 は2.16mmであって、接続すべき管の厚さ4.5mmの4倍(18mm)以下となっている。
【0047】
呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)を長さ240mmに切断して、これを管継手1の両接続部12,13に接着剤を介して接着して配管し、この配管について、23℃の水を用いて、脈動試験を行った。
この試験では、2.5秒周期、50%デューティーで、0と2MPaの2つの水圧値を往復する脈動水圧を管と接合した管継手の内面に与え、破壊するまでの回数を測定した。
その結果、n=3にて行ったが、何れのサンプルについても、20万回でも破壊しなかった。
【0048】
(比較例1)
図18〜21に示す管継手100であって、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる管接続部102,103を管継手本体部101の両端縁部に備えた、90°エルボ型の塩化ビニル樹脂管継手(外径70mm)を試作した。
【0049】
この管継手101においては、管接続部102,1033の管軸を含む平面と交わる相対する内面部分間の距離d1 は52mm、該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 も52mmであり、曲折部の最も内側となるp点の内面の曲率半径r1 は26mm、曲折部111の最も外側となるq点の内面の曲率半径r2 も26mmであった。
【0050】
この管継手100を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
その結果、n=3における破壊までの回数は、48735回、34826回、59037回で、その平均は47533であり、破壊部位は何れも、図24にcとして示す部分であった。
【0051】
(実施例2)
図7〜12に示す管継手3であって、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる主管接続部32,33を管継手本体部31の両端縁部に備え、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる枝管接続部34を備えたチーズ型の塩化ビニル樹脂管継手(外径70mm)を試作した。
【0052】
この管継手3は、管継手本体31の両主管接続部32,33側の端縁部(図7の断面D,D)において、両主管接続部32,33の主管軸及び枝接続部の枝管軸を含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D3 が52mmであり、該平面と最も遠くなる相対する内面部分間の距離D4 が57mmであって、D3 の方がD4 よりも小さくなっており、その距離の差D4 −D3 は5mmであって、接続すべき管の厚さ4.5mmの半分以上2倍以下(2.25〜9mm)の範囲となっていた。
【0053】
また、この管継手3は、管継手本体31の両主管接続部32,33側の端縁部において、枝管接続部34側の内面の曲率半径R3 が38.68mm、枝管接続部34から遠くなる側となる内面の曲率半径R4 が26.20mmであって、R3 の方がR4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 は2.48mmであって、両主管接続部32,33に接続すべき管の厚さ(4.5mm)の8倍(36mm)以下の範囲となっていた。
【0054】
この管継手3を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
その結果、n=3にて行ったが、何れのサンプルについても、20万回でも破壊しなかった。
【0055】
(実施例3)
図14〜17に示す管継手5であって、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる主管接続部52,53を管継手本体部51の両端縁部に備え、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる枝管接続部54を備えたチーズ型の塩化ビニル樹脂管継手(外径71mm)を試作した。
【0056】
この管継手5は、管継手本体51の両主管接続部52,53側の端縁部(図14の断面D,D)において、両主管接続部52,53の主管軸及び枝接続部の枝管軸を含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D7 が52mmであり、該平面と最も遠くなる相対する内面部分間の距離D8 が57mmであって、D7 の方がD8 よりも小さく、かつ、その距離の差D4 −D3 は5mm)であって、接続すべき管の厚さ(4.5mm)の半分以上2倍以下(2.25〜9mm)の範囲となる関係を満たすような内面形状となっていた。
【0057】
また、この管継手5の管継手本体51の両主管接続部52,53側の端縁部において、枝管接続部54側の内面の曲率半径R3 が46.13mm、枝管接続部54から遠くなる側となる内面の曲率半径R4 が25.75であって、R3 の方がR4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 は20.38mmであって、両主管接続部52,53に接続すべき管の厚さ(4.5mm)の8倍以下(36mm)の範囲となる関係を満たすような内面形状となっていた。
【0058】
この管継手5を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
その結果、n=3にて行ったが、何れのサンプルについても、20万回でも破壊しなかった。
【0059】
(比較例2)
図25〜28に示す管継手5であって、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる主管接続部302,303を管継手本体部301の両端縁部に備え、呼び径50の塩化ビニル樹脂管(内径51mm、外径60mm)に対応するTS接合式受口からなる枝管接続部304を備えたチーズ型の塩化ビニル樹脂管継手(外径71mm)を試作した。
この管継手300を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
その結果、n=3における破壊までの回数は、13875回、24367回、19208回で、その平均は19150であり、破壊部位は何れも、図30にgとして示す部分であった。
【0060】
【発明の効果】
本発明の管継手は、成形方法に固有の制約の下に、水道管等、内部に正の圧力がかかる配管を急角度にてL字状やT字状に曲折するように配管する際に、内外圧差、特にその使用中の圧力変動に伴って継手材料に発生する応力の最大値を低減し、こうした応力に伴って長期的に進行する破壊を低減するように、力学的耐性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管継手の一例のL字状エルボ型の管継手を示す断面図である。
【図2】図1に示す管継手の右側面図である。
【図3】図1の断面Bにおける内面形状である。
【図4】図1の断面Aにおける内面形状である。
【図5】図1及び2に示す管継手の製造に用いられる内型を示す正面図である。
【図6】図5に示す内型の一方のダイスを示す正面図である。
【図7】本発明の管継手の一例のチーズ型の管継手を示す断面図である。
【図8】図7に示す管継手の右側面図である。
【図9】図7の断面Dにおける内面形状である。
【図10】図7の断面Eにおける内面形状である。
【図11】図7の断面Gにおける内面形状である。
【図12】図7の断面Jにおける内面形状である。
【図13】図7及び8に示す管継手の製造に用いられる内型を示す正面図である。
【図14】本発明の管継手の別の例のチーズ型の管継手を示す断面図である。
【図15】部14のK−K線に沿う断面図である。
【図16】図14の断面Dにおける内面形状である。
【図17】図14の断面Eにおける内面形状である。
【図18】従来のエルボ型の管継手の一例の断面図である。
【図19】図18の右側面図である。
【図20】図18の断面bにおける内面形状である。
【図21】図18の断面aにおける内面形状である。
【図22】図18及び19に示す管継手の製造に用いられる内型を示す正面図である。
【図23】図22に示す内型の一方のダイスを示す正面図である。
【図24】図18及び19に示す管継手の破壊状態を示す斜視図である。
【図25】従来のチーズ型の管継手の一例の断面図である。
【図26】図25の右側面図である。
【図27】図25の断面dにおける内面形状である。
【図28】図25の断面fにおける内面形状である。
【図29】図25及び26に示す管継手を製造するのに用いられる内型を示す正面図である。
【図30】図25及び26に示す管継手の破壊状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,3,5 管継手
2,4 内型
11,31,51 管継手本体
12,13 管接続部
32,33 主管接続部
34 枝管接続部
111 曲折部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲折部を有する管継手本体部の両端縁部に、断面円形の管を接続可能な管接続部が設けられたL字状エルボ型の管継手であって、前記管継手本体の両管接続部側の端縁部において、前記両管接続部の管軸を共に含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D1 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D2 よりも小さく、かつ、その距離の差D2 −D1 が前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記管継手本体の両管接続部側の端縁部において、曲折部の内側となる内面の曲率半径R1 が曲折部の外側となる内面の曲率半径R2 よりも大きく、その曲率半径の差R1 −R2 が前記接続すべき管の厚さの4倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
断面T字型をなす管継手本体部の各端縁部に、断面円形の管を接続可能な管接続部が設けられたチーズ型の管継手であって、前記管継手本体の各管接続部側の端縁部において、前記各管接続部の管軸を全て含む平面と交わる相対する内面部分間の距離D3 が該平面から最も遠くなる相対する内面部分間の距離D4 よりも小さく、かつ、その距離の差D4 −D3 が前記接続すべき管の厚さの半分以上2倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることを特徴とする管継手。
【請求項4】
前記チーズ型の管継手が、前記管継手本体の主管軸方向の両端縁部に主管接続部が設けられ、主管軸と直交する枝管軸方向の端縁部に枝管接続部が設けられたものからなり、両主管接続部側の端縁部において、前記枝管接続部側の内面の曲率半径R3 が枝管接続部から遠くなる側となる内面の曲率半径R4 よりも大きく、その曲率半径の差R3 −R4 が前記主管接続部に接続すべき管の厚さの8倍以下の範囲となる関係を満たすような内面形状とされていることを特徴とする請求項3に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2004−270884(P2004−270884A)
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−65456(P2003−65456)
【出願日】平成15年3月11日(2003.3.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】