説明

管継手

【課題】パイプインパイプ工法に特に好適に用いられる管のための管継手であり、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入された管継手において、受口挿口間での推力の伝達を確実に行えるようにする。
【解決手段】受口12の外側における挿口14の外周に推力伝達リング25が装着される。推力伝達リング25が受口12に当たることによって、受口12と挿口14との間で推進力が伝達されて、管路の敷設が行われる。推力伝達リング25は、受口12の内周と挿口14の外周との隙間32に挿入される挿入部28を有する。推力伝達リング25は、受口12の開口端の内周縁部に当たるとともに、受口12から遠ざかるにつれて次第に拡径するように形成された、テーパ状の端面を有することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手に関し、特にパイプインパイプ工法で敷設する管路に適した管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の管路の内部に新管を挿入し、その管路の内部を推進させて敷設する、パイプインパイプ工法が知られている。パイプインパイプ工法では、新管として、既設管よりも1口径小さいものが用いられる。新管は、その管継手において所要の耐震機能を有したものであることが好ましい。すなわち伸縮機能と離脱防止機能とを備えたものであることが好ましい。
【0003】
パイプインパイプ工法に用いられる管のための管継手として、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口と挿口とが、受口の内周溝と挿口の外周溝とに装着された耐震用のロックリングで連結された構成のものがある。このような管継手を有する新管では、既設管への挿入推進力は、ロックリングを介して挿口から受口へ伝達される(特許文献1)。
【0004】
しかし、このような管継手では、パイプインパイプ工法による管路の敷設が完了した時点において、挿口が受口の最奥部まで入り込んでしまっており、それ以上入り込むことができない。すなわち管継手の縮みしろを確保することができず、所要の耐震機能を付与することができない。
【0005】
特許文献2の図4には、受口の外側における挿口の外面にリブ付きのフランジを溶接し、このフランジによって挿口から受口へ推進力を伝達するようにしたものが記載されている。
【0006】
しかし、フランジとリブとを挿口に溶接しなければならず、このため溶接すべき範囲が広く、したがって管の生産性が低い。
特許文献2の図2には、受口の外側における挿口の外周に溶接ビードを形成し、この溶接ビードと受口の端面との間に、横断面矩形の推力伝達リングを介在させたものが記載されている。
【0007】
このような構成であると、フランジおよびリブを溶接する場合に比べて溶接すべき範囲が狭く溶接工程の生産性が向上する利点がある。しかし、推力伝達リングを介在させるために、あまり大きな推進力を作用させることができない。大きな推進力を作用させると、推力伝達リングに浮き上がりやねじれが生じていわゆる裏返り状態となることがある。このため、推力伝達リングの推進力伝達性能によって、パイプインパイプ工法における推進距離つまり新管の敷設長さが、短く限定されることがある。また、既設の管路が屈曲している場合などにおいては、推力伝達リングの周方向に沿った一点に応力が集中することがあり、このため推進力を正しく伝達できなかったり、また上記と同様に推力伝達リングがいわゆる裏返り状態となったりすることがある。
【特許文献1】特開2003−113971号公報(図7)
【特許文献2】特開2002−327594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パイプインパイプ工法に特に好適に用いられる管のための管継手であり、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入された管継手において、挿口受口間の推力伝達部材に浮き上がりやねじれなどにもとづく裏返しが生じないようにするとともに、推進完了後における継手の伸縮しろを確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明の、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入された管継手は、受口の外側における挿口の外周に推力伝達リングが装着されて、この推力伝達リングが受口に当たることにより受口と挿口との間で推進力が伝達されて管路の敷設が行われるように構成され、前記推力伝達リングが、受口の内周と挿口の外周との隙間に挿入される挿入部を有するようにしたものである。
【0010】
本発明によれば、推力伝達リングは、受口の開口端の内周縁部に当たるとともに、受口から遠ざかるにつれて次第に拡径するように形成された、テーパ状の端面を有することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、推力伝達リングが、受口の内周と挿口の外周との隙間に挿入される挿入部を有するため、大きな推進力が作用した場合であっても、推力伝達リングが径方向の外向きに浮き上がってしまうことがなく、それに基づく裏返りの発生などを防止することができる。また、従来のように受口挿口間に装着されるロックリングを推力伝達部材として用いるものではないため、ロックリングと、このロックリングが装着される挿口外周溝とを、受口挿口間の伸縮機能を発揮させるための所定の位置関係に保つことができ、このため、受口挿口間に大きな力が作用したときには推力伝達リングなどが破壊されるようにしておくことで、推進完了後における継手の伸縮しろを確保することができる。
【0012】
また本発明によれば、推力伝達リングが、受口の開口端の内周縁部に当たるとともに、受口から遠ざかるにつれて次第に拡径するように形成された、テーパ状の端面を有するようにすることで、受口と挿口との間での推進力の伝達が行われる際には、テーパ状の端面の作用による推力伝達リングの浮き上がり防止効果を発揮させることもでき、したがって、よりいっそう確実に受口と挿口との間での推進力の伝達を行うことができて、大きな推進力を作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3は、本発明の実施の形態の管継手を示す。図1に示すように、互いに接合される一方のダクタイル鋳鉄管11の端部には受口12が形成され、他方のダクタイル鋳鉄管13の端部には、受口12の内部に挿入される挿口14が形成されている。受口12の内周には、開口側から順に、ロックリング収容溝15と、シール材収容溝16とが形成されている。挿口14の外周には、ロックリング収容溝15よりも幅広の外周溝17が形成されている。
【0014】
受口12のロックリング収容溝15には、周方向1つ割り構造の環状の金属製のロックリング18が収容されている。このロックリング18は、外周側部分が収容溝15に収容された状態で内周側部分が挿口14の外周溝17にはまり込んで抱き付くように構成されている。19は、外周溝17における受口開口側の側面、20は、外周溝17における受口奥側の側面である。
【0015】
ロックリング収容溝15よりも開口側における受口12の内周には、開口端に向けて次第に拡径するテーパ面21が形成されている。22は受口の端面、23は、受口12の開口端の内周縁部である。
【0016】
受口12のシール材収容溝16には、環状のゴム製のシール材24が収容されている。このシール材24が収容溝16の内周底面と挿口14の外周面との間で圧縮されることで、受口挿口間に所要のシールが施される。
【0017】
図1および図2に示すように、受口12の外側における挿口14の部分には、推力伝達リング25が外ばめされている。この推力伝達リング25は、図3に示すように周方向1つ割りの構成とされている。26は、その周方向の分割部である。推力伝達リング25は、図3に示される自然な状態においては、その内径が挿口14の外径よりも小径になるように形成されている。したがって、推力伝達リング25は、図1および図2に示すように挿口14に外ばめされた場合には、この挿口14によって弾性的に拡径されており、その反力としての縮径力によって挿口14の外周に抱き付くように構成されている。
【0018】
推力伝達リング25は、横断面矩形状の本体部27と、この本体部27よりも薄肉の挿入部28とが一体に形成された構成である。本体部27と挿入部28とは、共通の内周面34を有する。本体部27は、受口12から遠い側において管径方向に形成された第1の端面29と、受口12に近い側において形成された第2の端面30とを有している。第2の端面30は、管径方向に形成されたものでもよいが、図2に詳細に示すように、受口12から遠ざかるにつれて次第に拡径するテーパ状に形成されていることが好適である。その理由は後述する。
【0019】
推力伝達リング25の本体部27の第2の端面30が受口12の端面22または内周縁部23に接触または近接した状態において、その挿入部28は、受口12のテーパ面21と挿口14の外周面31との隙間32に入り込んでいる。
【0020】
挿口14における推力伝達リング25よりも受口12から遠い位置の外周には、推力伝達リング25の装着部としての溶接ビード33が全周にわたって形成されている。この溶接ビード33は、次のような位置に形成されている。すなわち、挿口14を受口12に挿入して、外周溝17における受口開口側の側面19と受口奥側の側面20との中間の位置の部分がロックリング18に対応して位置したときに、推力伝達リング25の本体部27がこの溶接ビート33と受口12の端面22または内周縁部23との間に位置してこの溶接ビード33に接触または接近し、かつ推力伝達リング25の挿入部28が隙間32に入り込むことができる位置に、形成されている。また溶接ビード33は、管路敷設時の挿口14からの推力をこの溶接ビート33および推力伝達リング25を介して受口12に伝達可能な程度の横断面を呈し、かつ管路敷設完了後の地震発生時に挿口14が受口12に入り込む方向の大きな力が作用したときに受口12および推力伝達リング25からの反力によって破壊される程度の横断面を呈するように形成されている。
【0021】
このような構成において、受口12と挿口とを互いに接合する際には、あらかじめ受口12の内部にシール材24とロックリング18とを収容し、公知の拡径具によってロックリング18を拡径させておく。そして、その状態の受口12の内部に、溶接ビード33が形成され推力伝達リング25が外ばめされた状態の挿口14を挿入する。この挿入によって挿口14の外周溝17が受口12のロックリング収容溝15に向かい合う位置まで到達したなら、ロックリング18の拡径状態を解除する。すると、ロックリング18は、元の状態に縮径して、その外周側部分が受口12の収容溝15にある程度入り込んだ状態で、その内周側部分が挿口14の外周溝17にはまり込む。この状態で、ロックリング18は、図1に示すように、挿口14の外周溝17の受口開口側の側面19から管軸方向に距離おくとともに、同外周溝17の受口奥側の側面20からも管軸方向に距離おいて位置している。
【0022】
また、このとき、推力伝達リング25の本体部27が受口12の端面22または内周縁部23に接触または近接するとともに、推力伝達リング25の挿入部28が隙間32に入り込む。かつ、挿口14の外周に形成された溶接ビード33が推力伝達リング25の第1の端面29接触または近接する。
【0023】
この状態で受口12と挿口14との接合が完了するので、たとえばパイプインパイプ工法で管路を敷設する場合には、図1に示す状態から挿口14に受口12を押す方向の推進力を作用させる。すると、溶接ビード33が推力伝達リング25の第1の端面29に接触し、かつ推力伝達リング25の第2の端面30が受口12を押すことになって、挿口14から受口12へ推進力が伝達される。
【0024】
このとき、推力伝達リング25の挿入部28が、全周にわたって、受口12のテーパ面21と挿口14の外周面31の隙間32に入り込んでいるため、大きな推進力が作用した場合であっても、伝達リング25が挿口14の外周面31から浮き上がることが防止される。これによって、伝達リング25に裏返りが発生することなどを防止できる。
【0025】
以上によって、管継手が図1に示される構成を保ったままの状態で、管路が敷設される。
【0026】
推力伝達リング25の本体部27の第2の端面30が管径方向に形成されている場合は、この第2の端面30が受口12の端面22に接触することで、伝達リング25から受口12への推力の伝達が行われる。
【0027】
推力伝達リング25の本体部27の第2の端面30が、図2に詳細に示すようにテーパ状に形成されている場合は、この第2の端面30が受口12の内周縁部23に接触した状態で、伝達リング25から受口12への推力の伝達が行われる。すると、内周縁部23からの反力がテーパ状の第2の端面30に作用することによって、推力伝達リング25には挿口14に締まり付く方向に力が作用する。これによって、同様に推力伝達リング25が挿口14の外周面31から浮き上がることを防止でき、挿口14から受口12への推進力の伝達を、いっそう確実に行うことができる。第2の端面30のテーパの角度は、この第2の端面から内周縁部23への推進力の伝達を確実に行わせたうえで、挿口14への推力伝達リング25の締まり付きを良好に行わせるように、適宜に設定することが必要である。
【0028】
推進の完了により管路が敷設された後の地震発生時において、受口12から挿口14が抜け出す方向に力が作用した場合には、挿口14の外周溝17の受口奥側の側面20がロックリング18に当たるまでの範囲で、受口12からの挿口14の抜け出しが許容される。反対に地震により受口12に挿口14が入り込む方向に力が作用した場合において、その力があまり大きくないときには、その力は挿口14から溶接ビード33および推力伝達リング25を介して受口12に伝達される。すなわち、その力は管路によって受け止められる。これに対し、入り込み方向により大きな力が作用した場合には、その力によって溶接ビード33が破壊される。これによって、挿口14が受口12の内部に入り込むことが許容される。すなわち、挿口14の外周溝17の受口開口側の側面19がロックリング18に当たるまでの範囲で、受口12への挿口14の入り込みが許容される。以上によって、耐震機能を有する継手が構成されることになる。
【0029】
図4および図5は、本発明の他の実施の形態の管継手を示す。ここでは、図示のように、受口12の外側に位置する挿口14の部分の外周には、推力伝達リング25の装着部としての横断面矩形状の他の外周溝35が形成されている。
【0030】
推力伝達リング25の本体部27には、横断面矩形状の内周突部36が一体に形成されている。この内周突部36は、管軸方向の実質的な隙間を生じない状態で、外周溝35にはまり込んでいる。
【0031】
このような構成によれば、図1および図2に示した溶接ビード33に代えて、外周溝35に内周突部36がはまり込んでいることによって、挿口14からリング25への推力の伝達が行われる。
【0032】
図4および図5に示すものにおいて、その他の構成は図1〜図3に示すものと同様であり、推力伝達リング25のための浮き上がり防止機能も、図1〜図3に示すものと同じ構成によって達成される。推力伝達リング25の浮き上がりが防止されることで、内周突部36が確実に外周溝35にはまり込み、これによって挿口14から推力伝達リングへの推進力の伝達が支障なく行われる。
【0033】
推進の完了により管路が敷設された後の地震発生時において、受口12から挿口14が抜け出す方向に力が作用した場合の挙動と、地震により受口12に挿口14が入り込む方向に力が作用した場合において、その力があまり大きくないときの挙動とは、図1および図2に示したものの場合と同様である。より大きな入り込み力が作用した場合には、その力によって外周溝35の側壁部が破壊されるか、または推力伝達リング25の内周突部青がせん断破壊され、それによって、挿口14が受口12の内部に入り込むことが許容される。以上によって、耐震機能を有する継手が構成される。
【0034】
図6に示すように、内周突部36を、その管軸方向寸法ができるだけ小さくなるように形成しておくことで、せん断破壊を起こしやすいように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態の管継手の要部の断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す図である。
【図3】図1における推力伝達リングの全体図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の管継手の要部の断面図である。
【図5】図4の要部を拡大して示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の管継手の変形例の要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
12 受口
14 挿口
15 ロックリング収容溝
17 外周溝
18 ロックリング
25 推力伝達リング
27 本体部
28 挿入部
29 第1の端面
30 第2の端面
32 隙間
33 溶接ビード
35 他の外周溝
36 内周突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入された管継手であり、受口の外側における挿口の外周に推力伝達リングが装着されて、この推力伝達リングが受口に当たることにより受口と挿口との間で推進力が伝達されて管路の敷設が行われるように構成され、前記推力伝達リングが、受口の内周と挿口の外周との隙間に挿入される挿入部を有することを特徴とする管継手。
【請求項2】
推進力伝達リングは、受口の開口端の内周縁部に当たるとともに、受口から遠ざかるにつれて次第に拡径するように形成された、テーパ状の端面を有することを特徴とする請求項1記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−47271(P2009−47271A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215347(P2007−215347)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)