説明

管腔の洗浄方法

医療器具の管腔壁の内面から汚物を除去する方法および装置が開示される。キャリアガスは室温で昇華可能な粒子を載せて管腔内に、および管腔を通して粒子を運ぶ。粒子は管腔壁の内面に付着した汚物に衝突するので、また粒子は昇華するので、汚物は管腔壁の内面から除去されて管腔の出口から運び出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具の管腔、特に内視鏡の管腔を洗浄する方法に関する。ここに開示する方法は、室温で昇華可能な粒子流を管腔内に注入して管腔を通し、管腔から汚物を除去する方法である。
【背景技術】
【0002】
再使用可能な内視鏡は通常は医療および家畜治療の分野で使用される。このような内視鏡、特にその管腔は使用後は次の使用に備えて洗浄され次に汚染除去される。内視鏡の管腔を洗浄する挑戦が行われている。
【0003】
内視鏡管腔の内壁に存在する生物汚染物の有効な不活性化は、管腔壁を洗浄して管腔壁付いた汚物を除去した後に初めて実施できる。管腔内壁から汚物を除去する1つの方法としては、管腔内壁に付着した汚物を除去するのにブラシで擦り落す方法がある。この方法は作業がきつくコストがかかる。したがって、内視鏡管腔などの医療器具の管腔内壁を洗浄することを自動化することが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡の管腔壁内面を汚染除去する前に洗浄することの重要性を考慮して、内視鏡管腔の内壁を洗浄する有効で安価で直接の方法に対するニーズが生まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、ここでは約0℃から約50℃の範囲で定義される室温において昇華可能な物質の粒子が管腔の一端に注入されて管腔を通して運ばれる。粒子はガスキャリア流で運ばれる。粒子および粒子の昇華から形成されたガスは管腔壁から汚物を除去する。このプロセスは管腔から汚物が除去されるまで続けられ、その後、そこに存在するすべての生物汚染物が不活性化され、次の使用のために医療器具の準備が整う。
【0006】
本発明では医療器具の管腔壁を洗浄する方法が開示される。この方法には、室温で昇華可能な物質の粒子を載せるキャリアガスの方向流を作り出し、キャリアガスおよび粒子を医療器具の管腔の第1の端部に導き、少なくとも汚物の一部を管腔壁から除去する工程が含まれる。
【0007】
さらに、本発明は医療器具の管腔壁の内面から汚物を除去できる装置を開示する。この装置は室温で昇華可能な粒子源を備える。さらにこの装置は管腔内におよび管腔を通して粒子を載せて運ぶキャリアガスを備える。また、キャリアガスの速度は昇華する前に粒子の一部を医療器具の管腔端に運ぶのに十分な速度である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の利点は内視鏡のような医療器具の管腔壁の内面から汚物を除去する自動化システムを提供することにある。
本発明の別の利点は医療器具の管腔壁を洗浄する方法であって、使用する洗浄粒子が室温で昇華する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の別の利点は洗浄媒体がガスに変わり、そのため洗浄媒体を集めて処理する必要性を排除するように医療器具の管腔壁を洗浄する方法を提供することにある。
本発明のさらに別の利点は洗浄後も管腔壁を乾燥状態に保つ管腔壁の洗浄方法を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
概括的に言えば、内視鏡の管腔などの医療器具の管腔の内面を洗浄する方法および装置を開示する。このような管腔内面の洗浄はガス状キャリア流中の固体粒子を管腔に通して行われ、粒子が管腔内にあるとき、または管腔内面に接触しているとき、この粒子は室温で昇華することが可能である。本発明の好ましい実施の形態では、固体の二酸化炭素がキャリアガスによって管腔内に運ばれる。取り除かれた汚物はキャリアガスによって管腔の出口から運び出される。したがって、この方法では、洗浄粒子は洗浄プロセスの最中に簡単に消滅し、集めて処理する必要のある汚物のみが排出される。
【0011】
次に図面を参照するが、図面は発明の好ましい実施の形態のみ示すためであって、これに限定するものではない。図1は本発明の好ましい実施の形態による洗浄システム10を示す。洗浄システム10には粒子発生装置12と、粒子計量装置14(例えば、計量弁)と、モータ18駆動の送風機16とが含まれる。粒子発生装置12は筒20を介して粒子計量装置14に連結される。粒子計量装置14は導管または筒20を介して導管またはホース22に連結される。ホース22は送風機16の出口から医療器具40の管腔26の入口24に及ぶ。
【0012】
図2は管腔26の線2−2に沿って切断した断面図であり、管腔26の内面34に付着した汚物30を示す。また図2には管腔26内を流れる洗浄粒子28が示される。キャリアガスおよび洗浄粒子の流れ方向は図2に示す矢印方法である。
【0013】
図3は管腔26の線2−2に沿って切断した断面図であり、本発明により管腔26の内面34から除去された汚物30が示される。
次に洗浄システム10の操作であるが、図1を参照すると、粒子発生装置12は室温で昇華可能な粒子を発生する。昇華は、固体物質が液体に変化することなく、直接蒸気に変化するプロセスである。このような粒子の一例は固体の二酸化炭素粒子または「ドライアイス」粒子である。本発明は洗浄粒子28として固体の二酸化炭素粒子の使用に限定はしないが、固体の二酸化炭素粒子は安価であり、かつ固体の二酸化炭素粒子を商業的に作るのは簡単であることから、発明はこれを使用することで記載される。
【0014】
粒子発生装置12で洗浄粒子28、例えば固体の二酸化炭素粒子を発生させた後、洗浄粒子28は筒20を介して計量装置14に運ばれる。計量装置14は所定量の洗浄粒子28を計量して筒20を介してホース22内に運ぶ。計量装置14は管腔26内に管腔26を通して運ばれる洗浄粒子28の個数濃度を変化させる。ホース22内に導入される洗浄粒子の個数濃度を変化させる要因には、管腔26の内面34に付着した汚物30の量、管腔26の内面34に付着した汚物の種類、内面34に汚物30を結合させる粘着力、管腔26長さ、または搬送キャリアガスの速度が含まれる。
【0015】
図1に示す例では、キャリアガスは空気であり、空気流はモータ18駆動の送風機16で発生する。洗浄粒子28がホース22に導入されると、洗浄粒子28はホース22を通って医療器具40の管腔26の入口24に運ばれる。それから、洗浄粒子28はキャリアガスによって管腔26内に運ばれ、1つの実施の形態では管腔26を通して運ばれる。
【0016】
次に図2を参照すると、洗浄粒子28は管腔26の内面34に汚物30がある管腔に6内に導入される。洗浄粒子28は管腔26を通して搬送されるので、図3に示すように、洗浄粒子28および/またはそれから生成されたガスによって管腔26の内面34から汚物30が除去される。
【0017】
洗浄粒子28を運ぶキャリアガスはどのようなガスであってもよく、例えば不活性化するガスまたは蒸気が選択的に含まれる。このような不活性化するガスの例としては、オゾン、塩素あるいは臭素を含有するガス、または気化した過酸化水素などのガス含まれる。この点で、管腔26の内面34を洗浄でき、同時にそこに住む生物汚染物の内面34を不活性化できる。このように、洗浄および不活性化工程は1つの操作に減少する。
【0018】
限定する意図はないが、汚物30は1つまたは組み合わせた次のメカニスムで内面34から除去されると考えられる。一例としては、洗浄粒子28の運動エネルギーが汚物30に直接運ばれ、管腔26の内面34から汚物30を除去すると考えられる。一度、取り除かれると、キャリアガスは医療器具40の管腔26を通って、取り除かれた汚物32を押し流し管腔26の出口36から排出する(図1および3を参照)。別の例としては、洗浄粒子28が管腔26の内面34に接触すると、洗浄粒子28が暖まる結果として二酸化炭素ガスの生成速度が加速化されると考えられる。二酸化炭素ガスの急速な生成によって汚物30が管腔26の内面34から吹き取られる。第1の例にあるように、取り除かれた汚物32は次に医療器具40の管腔26を通して運ばれ、管腔26の出口36から排出される。
【0019】
洗浄粒子28の運動エネルギーは可変であり、300m/sを多少超える速度以下の速度が汚物30の内面34の洗浄に使用される。1つの実施の形態では、キャリアガスの速度は約305m/sである。別の実施の形態では、キャリアガスの速度は約0.01m/sから約305m/sの範囲にわたる。別の実施の形態では、約0.1m/sから約275m/sの範囲にわたる。キャリアガスの速度が300m/sのような高速が使用される場合、送風機16でこのような高速を十分に与えることはできない。この場合、キャリアガスをこのように高速にするために他の手段が必要になる。
【0020】
直径寸法が約5ミクロンから約0.5cmの範囲にわたる固体二酸化炭素のような洗浄粒子28が、医療器具40の管腔26の内面34から汚物30を除くため洗浄するのに使用される。別の実施の形態では、直径寸法が約10ミクロンから約0.1cmの範囲の洗浄粒子28が使用される。さらに別の実施の形態では、直径が約10ミクロンの洗浄粒子28が使用される。さらに別の実施の形態では、直径が約20ミクロンの洗浄粒子が使用される。
【0021】
管腔26の内面34を洗浄するのに室温で昇華する洗浄粒子28を使用する利点は、洗浄粒子28が使用中または使用後に消滅することにある。かくして、集めて処理する必要のある残りの物質は除去された汚物32のみとなる。さらに、室温で昇華する物質を使用して実現される別の利点は、管腔26の内面34が洗浄中も洗浄後も乾燥状態に保たれることにある。管腔26内に最初存在した水蒸気はすべて乾燥キャリアガスによって管腔26から押し出される。このことで、洗浄操作のあとで内面34が再度生物汚染される機会が最小限になる。
【0022】
商用の固体の二酸化炭素洗浄剤は市販されている。例えば、TETRA UNIVERSAL(カリホルニアのアラハイム)は固体二酸化炭素洗浄剤(商標SnowBoxのドライアイス洗浄剤)を製造する。この洗浄剤はチャンバ内で乾燥窒素雰囲気を維持できるので、凝縮に関する問題点が最小限になる。また、この洗浄剤は十分に小さい(直径で5ミクロン)固体二酸化炭素粒子を生成することができるので、管腔26の内面34の洗浄に使用される。またこの洗浄剤はキャリアガスを約305m/sの速度にまで発達させることができる。
【0023】
1つの実施の形態では、空気または乾燥空気がキャリアガスとして使用される。別の実施の形態では、窒素ガスまたは乾燥窒素ガスがキャリアガスとして使用される。ヘリウムガスまたは乾燥ヘリウムガスの使用も考えられる。
【0024】
管腔の全長を1つの工程で洗浄できない場合がある。この場合は、内視鏡の管腔に通じるアクセス可能なそれぞれの入口にドライアイス粒子を導入する。このように、この方法では管腔のそれぞれの部分が別々に洗浄される。
【0025】
医療器具(例えば、内視鏡)の外面に、室温で昇華可能な物質の粒子(例えば、ドライアイス粒子)を噴出させて洗浄し、汚物を除去することもできる。この点で、キャリアガスおよび粒子は、少なくとも医療器具の外面に付着した汚物の一部が除去されるまで、医療器具の外面に向けられる。
【0026】
本明細書を見て理解するに際し、他の修正や変更があり得る。このような修正や変更は、請求された本発明の請求の範囲またはそれと同等な範囲内にある限り本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の実施の形態は種々の部品とその配置、および種々の工程とその配置についてなされる。図面は好ましい実施の形態を図示する目的のためだけであり、発明を限定するようには構成されない。
【図1】本発明により、医療器具の管腔および管腔の内面から汚物を除去する装置の概略図である。
【図2】管腔の線2−2に沿って切断した断面図であって、管腔の内面に付着した汚物を示す。
【図3】管腔の線2−2に沿って切断した断面図であって、本発明の方法により管腔の内面に付着した汚物の除去を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具の管腔壁の内面から汚物を除去する方法であって、
室温で昇華可能な物質の粒子を載せるキャリアガスの方向流を作り出し、
前記キャリアガスおよび粒子を医療器具の管腔の第1の端部に導き、
管腔の内面に付着した汚物の一部が内面から除去されるまで、この方向流を維持する
工程が含まれる方法。
【請求項2】
昇華可能な物質は二酸化炭素粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二酸化炭素粒子の粒子サイズは約5ミクロンから約0.5cmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
キャリアガスの速度は約305m/s以下である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
キャリアガスは空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
キャリアガスは窒素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
キャリアガスには、さらに不活性化蒸気またはガスが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性化ガスはオゾン、臭素あるいは塩素を含有するガス、または気化した過酸化水素である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
医療器具は内視鏡である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
医療器具の管腔壁の内面から汚物を除去可能な装置であって、
室温で昇華可能な粒子の源と、
管腔内へ、および管腔を通して粒子を載せて運ぶキャリアガスと
を備えた装置。
【請求項11】
キャリアガスは、粒子の一部を昇華前に医療器具の管腔の出口端まで運ぶのに十分な速度を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は前記キャリアガスの流れを生じさせる送風機を備えた、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、粒子を受け取る第1の端部と管腔の入口に連結された第2の端部とを有する導管をさらに備えた、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
医療器具の外面から汚物を除去する方法であって、
室温で昇華可能な物質の粒子を載せるキャリアガスの方向流を作り出し、
前記キャリアガスおよび粒子を医療器具の外面に導き、
管腔の外面に付着した汚物の一部が外面から除去されるまで、この方向流を維持する
工程が含まれる方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−546451(P2008−546451A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517114(P2008−517114)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023369
【国際公開番号】WO2007/008337
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(505214191)ステリス インク (25)
【Fターム(参考)】