説明

管路位置計測装置

【課題】本発明は、プローブには演算機能を設けないことにより、小型化し、孔への挿入の容易化及び演算形式の自由度を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明による管路位置計測装置は、プローブ(2)と演算部(10)とは、ケーブル(4)によって互いに独立した状態で接続され、プローブ(2)は角速度データ(7a)及び加速度データ(7b)をA/D変換したのみのデジタルデータとしてケーブル(4)を経て演算部(10)に入力させる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路位置計測装置に関し、特に、プローブには少なくとも角速度計及び加速度計を設け、データの処理を行う演算部はプローブ内には設けず、外部に独立させることにより、プローブを小型化し、低消費電力化することを可能とし、小径の孔及び曲折の多い孔の経路の計測を容易に行うことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の管路位置計測装置としては、最近社内開発し、公開公報として公開されていないため、特許文献等は開示していないが、掘削した孔の中に挿入するプローブ内には、少なくとも角速度計、加速度計及び演算部が設けられ、このプローブ内で姿勢角と方位角の演算を行い、ケーブル測長器にてケーブル速度を計測し、これらを組合わせて演算することにより、孔の経路を計測していた。
【0003】
すなわち、プローブで計測した前述の姿勢角(ピッチ角:θ)及び方位角(ψ)とケーブル速度(単位時間当りの移動距離:V)データより、次式により孔位置を算出して図4に計測座標として示すことができる。
水平距離(X)=∫{Cos(ψ)×V}dt
水平距離(Y)=∫{Sin(ψ)×V}dt
垂直距離(Z)=∫{Cos(θ)×V}dt
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の管路位置計測装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、プローブの中に、角速度計及び加速度計の他に、内蔵した演算部を用いて高精度の姿勢角及び方位角を演算し、この演算結果を外部へ送信するため、センサに対する補正や座標変換演算のために高性能の演算装置(CPU)を設ける必要があり、このような高性能の演算装置は、回路のスペースを多く必要とし、消費電力も大きいため大容量の電源を必要としていたために、小型、低消費電力化には好適ではなかった。
【0005】
また、プローブで姿勢角及び方位角を演算して演算結果を通信するため、データに疑問を生じた場合等において、大型のプローブを、再度、孔に挿入して操作をし直す必要があり、その作業には多くの労力とコストを必要とした。
また、孔の経路の計測データをn回取ってデータの平均値を求めようとする手法を採用する場合、大型のプローブを孔の中でn回往復しなければならず、前述と同様にその作業はプローブが大型であるが故に極めて困難なものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による管路位置計測装置は、孔の中に挿入するプローブに設けられた少なくとも角速度計及び加速度計により角速度データ及び加速度データを得ると共に、前記プローブに接続されたケーブルのケーブル速度をケーブル測長器で計測し、前記角速度データ、加速度データ及びケーブル速度を用いて前記孔の経路を演算部にて計測するようにした管路位置計測装置において、前記プローブと演算部とは、前記ケーブルによって互いに独立した状態で接続され、前記プローブは、前記角速度データ及び加速度データをA/D変換したのみのデジタルデータとして前記ケーブルを経て前記演算部に供給する構成であり、また、前記プローブは、少なくとも前記角速度計及び加速度計と、前記角速度計及び加速度計に接続されたA/D変換器と、前記A/D変換器に接続されたプローブ側通信回路と、からなる構成であり、また、前記演算部は、少なくとも前記角速度データ及び加速度データが入力される演算部側通信回路と、前記演算部側通信回路及び入力回路に接続され前記各データ及びケーブル速度により前記プローブの姿勢角・方位角及び位置を演算する演算/表示回路と、からなる構成であり、また、前記演算/表示回路に接続された表示器により、前記演算の結果をグラフ化して表示する構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による管路位置計測装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、プローブには、角速度計及び加速度計からの各データをA/D変換するのみで姿勢角及び方位角に変換するための演算部を内蔵していないため、小型化、コストダウン及び低消費電力化が可能となる。
また、プローブからのプローブデータとして、記録された角速度データ及び加速度データを用いることができるため、これらの各データの時間軸を逆転させて演算することにより、復路で取得したデータの時間軸を逆転させて演算することにより往路と同じ計測結果が得られ、n回の計測データを取得してその平均値を求める場合にはn/2回の計測で済むことになる。
また、プローブからの前記各データの演算条件を変えることにより、再計測を行うことなく、姿勢角・方位角・位置算出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、プローブには少なくとも角速度計及び加速度計を設け、データの処理を行う演算部はプローブ内には設けず、外部に独立させることにより、プローブを小型化し、低消費電力化することを可能とし、小型の孔及び曲折の多い孔の経路の計測を容易に行なうようにした管路位置計測装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0009】
以下、図面と共に本発明による管路位置計測装置の好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは、掘削等による孔であり、この孔1内にはプローブ2が移動自在に挿入されている。
前記プローブ2は、ケーブル巻取器3に巻取られるように構成されたケーブル4が接続されており、このケーブル4はケーブル中継器5及びケーブル測長器6を介して移動自在に構成されている。
【0010】
前記プローブ2は、前記ケーブル4を介してプローブ2からのデジタル化されたプローブデータ7を出力すると共に、ケーブル測長器6からケーブル速度8を出力するように構成され、前記プローブデータ7及びケーブル速度8は演算部10に入力されるように構成されている。
【0011】
前記プローブ2は、図2で示されるように構成され、少なくとも直交3軸の角速度計11及び直交3軸の加速度計12と、前記角速度計11および加速度計12に接続されたA/D変換器13と、前記A/D変換器13に接続されたプローブ側通信回路14と、電源15と、から構成されている。
【0012】
前記プローブ2には、前記ケーブル4を介して前記演算部10が接続され、このプローブ2と演算部10とはこのケーブル4により互いに独立した状態で接続されている。
【0013】
前記演算部10は、前記ケーブル速度8が入力される入力回路16と、前記プローブデータ7が入力される演算部側通信回路17と、電源18と、前記入力回路16、演算部側通信回路17及び電源18が接続された演算/表示回路19と、前記演算/表示回路19に接続された表示器に20及び記憶回路21と、から構成され、前記演算/表示回路19からは、前記プローブデータ7(角速度データ7a、加速度データ7b及びセンサ温度信号7cからなる)を用いて、周知の演算式により、姿勢角(ピッチ角)θと方位角ψを演算し、これらと前記ケーブル速度8(移動距離V)を用いて周知の演算式によって位置演算した後のプローブ2の位置による孔1の孔経路計測情報19Aを出力するように構成されている。
【0014】
次に、図3に示される運用フローは、図2におけるプローブ2と演算部10の動作を示している。
すなわち、図3において、まず、第1ステップ60の計測モードにおいて、図1に示す孔1内で前記プローブ2を往復させ、往路及び復路のプローブ2からのプローブデータ7及びケーブル速度8を演算部10の演算/表示回路に入力して記憶回路21を記録する。
【0015】
次に、第2ステップ61の演算モードでは、前述のプローブデータ7及びケーブル速度8を用いて、孔1の位置を示す孔経路計測情報2を前述の周知の演算式で演算し、第3ステップ62の表示モードにおいて、前述の演算結果の孔経路計測情報19aをグラフ化(図4のように)し、記憶回路21に記録することができる。
【0016】
尚、前記プローブ2の角速度計11及び加速度計12等のセンサとしての補正は、固有の補正として、周知のバイアス、スケールファクタ及びクロスカップリングの補正を行っている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による管路位置計測装置を示す構成図である。
【図2】図1のプローブと演算部を示す詳細構成図である。
【図3】図2のシステムの運用を示すフロー図である。
【図4】従来の孔計測方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 孔
2 プローブ
3 ケーブル巻取器
4 ケーブル
5 ケーブル中継器
6 ケーブル測長器
7 プローブデータ
7a 角速度データ
7b 加速度データ
7c センサ温度信号
8 ケーブル速度
10 演算部
11 角速度計
12 加速度計
13 A/D変換器
14 プローブ側通信回路
15 電源
16 入力回路
17 演算部側通信回路
18 電源
19 演算/表示回路
19A 孔経路計測情報
20 表示器
21 記憶回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔(1)の中に挿入するプローブ(2)に設けられた少なくとも角速度計(11)及び加速度計(12)により角速度データ(7a)及び加速度データ(7b)を得ると共に、前記プローブ(2)に接続されたケーブル(4)のケーブル速度(8)をケーブル測長器(6)で計測し、前記角速度データ(7a)、加速度データ(7b)及びケーブル速度(8)を用いて前記孔(1)の経路を演算部(10)にて計測するようにした管路位置計測装置において、
前記プローブ(2)と演算部(10)とは、前記ケーブル(4)によって互いに独立した状態で接続され、前記プローブ(2)は、前記角速度データ(7a)及び加速度データ(7b)をA/D変換したのみのデジタルデータとして前記ケーブル(4)を経て前記演算部(10)に供給する構成としたことを特徴とする管路位置計測装置。
【請求項2】
前記プローブ(2)は、少なくとも前記角速度計(11)及び加速度計(12)と、前記角速度計(11)及び加速度計(12)に接続されたA/D変換器(13)と、前記A/D変換器(13)に接続されたプローブ側通信回路(14)と、からなることを特徴とする請求項1記載の管路位置計測装置。
【請求項3】
前記演算部(10)は、少なくとも前記角速度データ(7a)及び加速度データ(7b)が入力される演算部側通信回路(17)と、前記演算部側通信回路(17)及び入力回路(16)に接続され前記各データ(7a,7b)及びケーブル速度(8)により前記プローブ(2)の姿勢角・方位角及び位置を演算する演算/表示回路(19)と、からなることを特徴とする請求項1又は2記載の管路位置計測装置。
【請求項4】
前記演算/表示回路(19)に接続された表示器(20)により、前記演算の結果をグラフ化して表示することを特徴とする請求項3記載の管路位置計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−170322(P2008−170322A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4565(P2007−4565)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)