説明

箱形ノイズフィルタ

【目的】 組立作業が簡単であり、自動装置を適用することが容易で、作業効率がよく、安価で優れた特性と高い信頼性を持つ箱形ノイズフィルタを提供すること。
【構成】 本発明の箱形ノイズフィルタにおいては、チョークコイルは、平角電線の幅方向を湾曲状に曲げて、平角電線を筒形に同じ巻回方向に巻き回した2個の分割巻線81,82を8の字状につなぐめがね形巻線8の2個以上とUU形コア9、又はUI形コアを組み合わせた構造とし、更に絶縁基台3の上にチョークコイル1と外部接続端子7との接続導体10を固定する構造とする箱形ノイズフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は大電流用の箱形ノイズフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】大電流用の従来のノイズフィルタは、トロイダルコアに手作業で太い電線を巻き回した2個又は3個の巻線を有するチョークコイルを、絶縁ブッシュを用いて外部接続端子を設けた箱形金属容器に収納して、絶縁被覆電線と圧着端子でコイルと外部接続端子を接続し、金属容器に埋込樹脂をコイルの下部が埋まる深さに注入し固化した構造であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の箱形ノイズフィルタにおいては埋込樹脂の取り扱いが厄介であり、注入と固化に要する時間が長いという欠点があり、又太い電線を手作業で巻き回したチョークコイルは所要工数が多く、仕上がり寸法、形状の変動が大きく、製造原価が高く、電気特性の信頼性が乏しい欠点があった。又、従来の箱形ノイズフィルタは絶縁被覆電線を空中配線する作業が難しく、組立時間が長い欠点もあった。
【0004】従来の上述した欠点をなくすため、本発明の箱形ノイズフィルタにおいては、チョークコイルが平角電線の幅方向を湾曲状に曲げて、筒形に同じ巻回方向に巻き回した2個の分割巻線を8の字状につなぐめがね形巻線の2個以上とUU形又はUI形コアを組み合わせた構造とし、このチョークコイルを絶縁基台を介して箱形金属容器の内底に固定する構造とし、更に絶縁基台上にコイルと外部接続端子との接続導体を固定する構造とすることによって、組立作業が容易であり、自動装置を適用することが容易で、作業効率がよく、安価で優れた特性と高い信頼性を持つ箱形ノイズフィルタを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、幅方向を湾曲状に曲げて平角電線を筒形に巻き回した同じ巻回方向の2個の分割巻線を8の字状につなぐめがね形巻線の2個以上と分割型閉磁路コアを組み合わせたチョークコイルを、外部接続端子を備えた箱形容器に収納して容器の内底に絶縁基台を介して固定してなる箱形ノイズフィルタである。
【0006】本発明は、上述した箱形ノイズフィルタにおいて、チョークコイルがコア押え金具によりコアを閉磁路に保持されると共に、基台に固定されている箱形ノイズフィルタである。
【0007】本発明は、上述した箱形ノイズフィルタにおいて、チョークコイルと外部接続端子を接続する導体が基台上に固定されている箱形ノイズフィルタである。
【0008】
【作用】絶縁基台は箱形金属容器の内底に固定されて、チョークコイル及び接続導体を容器の内面から絶縁して保持する。コア押え金具は絶縁基台に固定されてコアを閉磁路に保つと共に、チョークコイルを基台上に保持する。基台に固定した接続導体は、コイル及び外部接続端子と定位置で接続を行う。
【0009】
【実施例】図1に本発明の一実施例を蓋体を省略した分解斜視図で示す。
【0010】図1において、チョークコイル1(以下コイルと記す)は三相コモンモードチョークコイルであり、箱形金属容器2の内底に配置する絶縁基台3(以下基台と記す)に、コイル1に添えて示したコ字形のコア押え金具4の2個を用いて固定される。
【0011】箱形金属容器2は矩形開口の短辺両側壁に方形切欠き5を設けて、切欠き5に図では3個の外部接続端子7を一体に貫設した絶縁端子板6を嵌着するものである。
【0012】コイル1を分解して絶縁基台3と共に図3に示す。コイル1は、めがね形巻線8とUU形コア9を組み合わせたものであり、めがね形巻線8の第一の分割巻線81と第二の分割巻線82とはつながっている。
【0013】めがね形巻線8は、図3に外観を示したように、断面矩形の平角電線を縦巻きにして、換言すると、電線の幅方向を湾曲状に曲げて平角電線を円筒形に巻き回して第一の分割巻線81(図3で右側、巻回方向は右巻で左に巻き進む)を形成し、第一の分割巻線の巻き終わりが第二の分割巻線の巻き初めになって8の字状につなぎ、第一の分割巻線81と同じ巻回方向の第二の分割巻線82(図3で左側、右巻きで右に進む)を形成した形状のものである。分割巻線81,82の巻回数は同じでなくとも支障はない。めがね形巻線8は自動装置で作ることができ、縦に、即ち幅方向に単層に巻き回すことにより、同じ巻線容積の太丸線の重ね巻きに比べると、占積率が70%台から90%台に高まり、浮遊容量が減少し、浮遊容量のばらつきが小さく、コイルの周波数特性が良く、めがね形に分割することにより、コアとの磁気結合度が良い等の特長を持っている。
【0014】UU形コア9は両方の磁脚91の断面が六角形であり、基部92の中央部が円周面である。磁脚の断面形状は、円形、八角形等であってもよい。
【0015】絶縁基台3は箱形金属容器2の内底よりも小さい。かつ矩形開口の長辺両側壁にほぼ当接する大きさの方形厚板であり、上面に箱形金属容器2の内壁当接側面31の中央部にわたる方形段部32の凹部2個を設け、中央部に内壁当接側面31と平行に細長凹部33の4個と、細長凹部33を繋ぐ形の円弧凹部34の6個とを設け、UU形コア9の磁脚を絶縁円筒12に装着し、仕切板11に固定された複数のめがね形巻線8の分割巻線81,82からなるチョークコイル1をセットするために、仕切板11は細長凹部33に嵌合され、円弧凹部34にはめがね形巻線8の底部が据え付けられる。更に箱形金属容器2の切欠き5と対向する両辺縁に沿って、6個のU溝を有する接続導体10を一部を外方に突出させて固着してある。
【0016】箱形ノイズフィルタの組立は、最初にチョークコイル1を箱形金属容器2の外で組み立てる。めがね形巻線8の分割巻線81,82の中央孔に対応する2個の透孔のある絶縁仕切板11の4個の間に、3個のめがね形巻線8を順に挟んで同心に並べて中央孔と透孔との連通孔に絶縁円筒12を挿通し、絶縁円筒12の両側からUU形コア9の磁脚91を挿入して仮組立を行う。この仮組立上がりを基台3に載せて仕切板11を細長凹部33に嵌合し、めがね形巻線8の底部を円弧凹部34に入れてから2個のコア押え金具4を方形段部32にそれぞれ嵌め込み、コア押え金具4の上方自由端をUU形コア9の基部92の外面に当接してコア押え金具4を方形段部32中央側の壁面にねじ止めする。このコア押え金具4の固定によりチョークコイル1が絶縁基台3に固定され、同時にUU形コア9が閉磁路になる。めがね形巻線8の両端は接続導体10の絶縁基台3上の立上がり片と対向するので、ねじ止めしてから半田付けにより簡単に接続できる。
【0017】絶縁端子板6を外した箱形金属容器2にチョークコイル1と一体にした絶縁基台3を嵌め入れて、内底に位置決めしてねじ止めする。めがね形巻線8と接続導体10は箱形金属容器2の内底から離間しているので、箱形金属容器2の内壁を絶縁紙で覆う必要はない。
【0018】箱形金属容器2の切欠き5に絶縁端子板6を嵌着する。外部接続端子7の内方へのねじ棒が接続導体10の立上がり凹部を通るので、外部接続端子7と接続導体10とを容易に接続できる。図示しない金属蓋体を箱形金属容器2に組み付けて箱形ノイズフィルタができあがる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、自動装置で作る平角電線の縦に巻き回しためがね形巻線を用い、埋込樹脂を省いて絶縁基台を介してチョークコイルを箱形金属容器に固定する構造であるから、幅方向に単層に巻き回すことにより、同じ巻線容積の太丸線の重ね巻きに比べると、占積率が70%台から90%台に高まり、浮遊容量が減少し、そのばらつきが小さくなり、コイルの周波数特性が良く、コアとの磁気結合度が良い。更に、組立作業が簡単であり、自動装置を適用することが容易であり、効率よく製造でき、安価で優れた特性と高い信頼性を持つ大電流用の箱形ノイズフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を蓋体を省いて示す分解斜視図。
【図2】図1におけるチョークコイルを分解して絶縁基台と共に示す斜視図。
【図3】本発明に用いられるめがね形巻線の外観斜視図。
【符号の説明】
1 チョークコイル
2 箱形金属容器
3 絶縁基台
4 コア押え金具
5 切欠き
6 絶縁端子板
7 外部接続端子
8 めがね形巻線
9 UU形コア
10 接続導体
11 仕切板
12 絶縁円筒
31 内壁当接側面
32 方形段部
33 細長凹部
34 円弧凹部
81,82 分割巻線
91 磁脚
92 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 幅方向を湾曲状に曲げて、平角電線を筒形に巻き回した同じ巻回方向の2個の分割巻線を8の字状につなぐめがね形巻線の2個以上と分割型閉磁路コアを組み合わせたチョークコイルを、外部接続端子を備えた箱形容器に収納して容器の内底に絶縁基台を介して固定することを特徴とする箱形ノイズフィルタ。
【請求項2】 請求項1記載の箱形ノイズフィルタにおいて、チョークコイルがコア押え金具によりコアを閉磁路に保持されると共に、基台に固定されていることを特徴とする箱形ノイズフィルタ。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の箱形ノイズフィルタにおいて、チョークコイルと外部接続端子を接続する導体が基台上に固定されていることを特徴とする箱形ノイズフィルタ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平7−45457
【公開日】平成7年(1995)2月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−204633
【出願日】平成5年(1993)7月26日
【出願人】(000134257)株式会社トーキン (1,832)