説明

節水器具

【課題】吐水量の調節を容易に行う。
【解決手段】給水口3より給水される水流を絞る第一絞り孔45が複数貫穿された第一絞り部材41と、第一絞り部材41と相対的に回転可能であり、複数の第一絞り孔45の開口量を調節する流量調節部材51と、流量調節部材51で水量が調節された流水を吐出する複数の吐水孔62が貫穿されたノズル部材61とを備える。第一絞り部材41には、更に、第二絞り孔34を有する第二絞り部材31が取り付けられる。水流は、第二絞り孔34で一次的に絞られ、更に、第一絞り孔45で絞られてから、吐水孔62より吐水される。水量は、第二絞り孔45の開口量を流量調節部材51で調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇口等の給水口に取り付けられ、吐水量を自在に調節することが出来る節水器具に関する。
【背景技術】
【0002】
本件特許出願人は、先に、下記特許文献1記載の節水器具を提案している。この節水器具では、ケーシング内に、減圧コマと節水コマとを順に配設し、減圧コマで蛇口からの流水の圧力を減圧し、減圧コマと節水コマとの間の空間部で水を滞留させてから節水コマの吐水孔より水を吐出するようにしている。減圧コマは、蛇口からの流水を絞る絞り部材としても機能するものであり、吐水孔へ供給する水量を決定するものとなる。
【0003】
また、特許文献1の節水器具では、水圧を調節することで節水を行うようにし、水圧が低減されることで、吐水孔から吐出される流水が飛散し、周囲が汚損することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/044703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蛇口での水圧は、その建物の給水設備、階数等によってバラツキがあり、一定ではない。また、厨房設備の蛇口であるのか、洗面所の蛇口であるのか、等の用途によっても、求められる水量や水圧は異なる。更に、蛇口からの水量や水圧の好みは、使用者によっても異なる。
【0006】
上述した特許文献1に記載の一形態の節水器具では、このような要求に応えるため、様々な種類の減圧コマを予め用意しておき、予め用意した減圧コマの中から所望の減圧コマを選択する必要がある。従って、施工場所に応じて減圧コマを選択する作業は、熟練を要する作業となり、減圧コマの交換作業は、節水器具の分解組立を改めて行う必要があり、面倒な作業となる。一般に、節水器具の取付作業は、施設稼働中となるため、なるべく短期間に行う必要がある。
【0007】
吐水孔より吐出される流水が飛散することを防止するには、水圧の他、吐出方向の制御も水圧や水量との関係が重要である。例えば、洗面化粧台の洗面器に対して吐水されるとき、水圧が高く水量が多過ぎると、水滴が洗面器の外にまで飛散してしまうおそれがある。特に、洗面器の手前側位置に向かって吐水されたときには、水滴が洗面器の外にまで飛散し易い。
【0008】
以上の問題に鑑み、本発明は、吐水量の調節を外部からの操作によって簡便に行うことが出来る節水器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る節水器具は、給水口より給水される水流を絞る第一絞り孔が貫穿された第一絞り部材と、上記第一絞り部材と相対的に回転可能であり、上記第一絞り孔の開口量を調節する流量調節部材と、上記流量調節部材で水量が調節された流水を吐出する複数の吐水孔が貫穿されたノズル部材とを備える。
【0010】
ここで、上記流量調節部材は、上記第一絞り孔と対向する領域に、上記第一絞り孔からの水流を衝合させて減圧させる減圧空間部を設けるようにしても良い。また、上記流量調節部材には、上記減圧空間部の周囲に環状溝を設け、上記環状溝には、その外周壁に、上記吐水孔に連通する放射溝を設けるようにしても良い。更に、上記流量調節部材は、位置決め突片が形成される。例えば、上記位置決め突片は、例えば上記放射溝の間に設けられる。上記第一絞り部材は、上記位置決め突片と対向する領域に環状の係合凹部が設けられる。上記流量調節部材は、上記ノズル部材との間の弾性体によって、上記位置決め突片が上記係合凹部と係合する方向に弾性付勢される。これにより、上記流量調節部材を回転したときに、クリック感を発生させることが出来る。
【0011】
上記節水器具は、更に、上記第一絞り部材に取り付けられる第二絞り部材を備え、上記第二絞り部材は、給水口より給水される水流を絞る第二絞り孔を有し、上記第二絞り孔で一次的に絞られた水流が上記第一絞り部材の第一絞り孔に供給されるようにしても良い。ここで、上記第二絞り部材には、上記第一絞り孔と対向する領域に、上記第二絞り孔と上記第一絞り孔とを連通する連通空間部を設け、上記第一絞り孔を、上記連通空間部に臨ませる構成にすることも出来る。更に、上記第二絞り部材には、上記流量調節部材によって常に閉塞されない連通路を設けても良い。更に、上記第二絞り部材には、上記第一絞り部材に貫穿された貫通孔に嵌合する軸部を設け、上記連通路を上記軸部に設けることも出来る。更に、上記第一絞り部材には、上記貫通孔の周囲に一つ以上の上記第一絞り孔を設けても良い。第一絞り孔は、例えば第一絞り部材の厚さ方向に貫通した貫通孔である。
【0012】
また、上記ノズル部材は、上記複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成されており、上記第一絞り部材は、上記複数の吐水孔の内の何れかの吐水孔を選択的に閉塞する閉塞突起を有し、上記ノズル部材が、上記第一絞り部材と相対的に回転可能とする。これにより、上記ノズル部材は、回転することによって、すべての吐水孔を開放する準節水位置と上記吐水孔の何れかを上記閉塞突起で閉塞する節水位置とに切り替えることが出来る。
【0013】
なお、上記ケーシング内に配設されるパッキンを設け、上記第一絞り部材若しくは上記第一及び第二絞り部材とノズル部材との組立体が、組立体の外表面が球体の最大直径部分を含む略半球面状を成し、ケーシング内のパッキンの上記組立体の略半球面状の外表面と接する面が、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面を成し、上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部が、上記組立体の最大外径より小さい内径部を有するようにする。これにより、上記組立体は、上記吐水面が上記吐水側開口部より外部に臨むように上記パッキンの上記略球面状の座面に対して摺動可能に配設され、水密性を保ちながら、上記吐水面の角度を可変とすることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一部が外部に臨み、第一絞り部材と相対的に回転可能な流量調節部材を、第一絞り部材に対して回転させることによって、第一絞り部材に設けられている第一絞り孔の開口量を外部からの操作によって容易に調節することが出来る。第一絞り孔と対向する領域に、減圧空間部を設けることで、減圧空間部では、第一絞り孔からの水流を衝合させ、ノズル部材に供給される水流を効果的に減圧することが出来、これにより、吐水の衝突部からの飛散を防止出来る。
【0015】
また、回転する流量調節部材に位置決め突片を設け、第一絞り部材に係合凹部を設け、これらを互いに係合させ、更に、弾性体で係合方向に付勢することで、流量調節部材を回転させたときに、良好なクリック感を発生させることが出来る。更に、ノズル部材に複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成され、何れかの吐水孔を閉塞突起で選択的に閉塞することで、吐水量調節を容易に行うことが出来る。更に、少なくとも第一絞り部材と上記ノズル部材との組立体の外表面を略半球面状とし、パッキンの組立体の略半球面状の外表面と接する面を、組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面とすることで、吐水方向を容易に変えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した節水器具の分解斜視図である。
【図2】本発明を適用した節水器具の断面図である。
【図3】第二絞り部材を示す図であり、(A)は上から見た斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
【図4】第二絞り部材の底面図である。
【図5】第一絞り部材を示す図であり、(A)は上から見た斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
【図6】第一及び第二絞り部材並びにノズル部材が組み合わされた組立体の切り欠き断面図であり、流量調節部材の第二減圧溝と第一絞り部材の最も大きい第一絞り孔とが対向して接続されていると共に、ノズル部材の内周吐水孔列が開口した状態を示す。
【図7】第一及び第二絞り部材並びにノズル部材が組み合わされた組立体の切り欠き断面図であり、流量調節部材の第二減圧溝と第一絞り部材の最も大きい第一絞り孔とが対向して接続され、他の第一絞り孔が閉塞されていると共に、ノズル部材の内周吐水孔列が開口した状態を示す。
【図8】流量調節部材を示す図であり、(A)は上から見た斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
【図9】流量調節部材の放射溝間の突片及び位置決め突片と第一絞り部材の係合凹部との関係を示す斜視図である。
【図10】ノズル部材を示す図であり、(A)は上から見た斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
【図11】閉塞突起と係合凹部の関係を示す内周吐水孔列に沿った断面図であり、(A)は閉塞突起が吐水孔を閉塞した状態を示し、(B)は吐水孔を開放した状態を示す。
【図12】第一及び第二絞り部材並びにノズル部材が組み合わされた組立体の切り欠き断面図であり、流量調節部材の第二減圧溝と第一絞り部材の最も大きい第一絞り孔とが接続されず、ノズル部材の内周吐水孔列が開口した状態を示す。
【図13】第一及び第二絞り部材並びにノズル部材が組み合わされた組立体の切り欠き断面図であり、流量調節部材の第二減圧溝と第一絞り部材の他の第一絞り孔とが接続されず、ノズル部材の内周吐水孔列が開口した状態を示す。
【図14】第一及び第二絞り部材並びにノズル部材が組み合わされた組立体の切り欠き断面図であり、流量調節部材の第二減圧溝と第一絞り部材の最も大きい第一絞り孔とが対向して接続されていると共に、ノズル部材の内周吐水孔列の一部が閉塞した状態を示す。
【図15】吐水面が傾いた状態の節水器具の断面図である。
【図16】吐水孔列が一重の節水器具の切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された節水器具について図面を参照して説明する。
【0018】
[1.全体構成]
図1及び図2に示すように、本発明が適用された節水器具1は、水道の蛇口2の給水口3に取り付けられるケーシング11と、ケーシング11内に配設されて蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止する水密用のパッキン21とを備える。そして、パッキン21の内側には、水流を絞る第一絞り部材41と、第一絞り部材41の給水口3側に取り付けられる第二絞り部材31と、吐出する流量を調節する流量調節部材51と、流量調節部材51で水量が調節された流水を吐出するノズル部材61とが配設される。
【0019】
[2.ケーシングの説明]
ケーシング11は、図1及び図2に示すように、筒状に形成され、一端が、蛇口2等の給水口3に取り付けられる取付開口部12となっており、他端が、水を吐出する側として構成される吐水側開口部13となっている。取付開口部12の内周面には、ねじ溝12aが形成されており、蛇口2のねじ部に締め付けることによって、ケーシング11が蛇口2等に取り付けられる。なお、ねじ溝12aの形成位置は、取付開口部12の内周面に限らず、例えば外周面であっても良い。また、給水口3に対してケーシング11を取り付ける手段は、継ぎ手を介しても良く、或いは、取付用治具を使用するなどしても良く、ねじ溝に限定されるものでもない。
【0020】
このケーシング11内の空間部には、上述した第一絞り部材41と第二絞り部材31と流量調節部材51とノズル部材61とが内蔵される。吐水側開口部13の近傍には、段部14が形成され、パッキン21の吐水側開口部13側に位置するパッキン21先端部が係合する。ケーシング11は、吐水側開口部13側に位置するパッキン21の先端部が段部14に係合することによって、パッキン21がケーシング11内に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0021】
吐水側開口部13は、後述する主として第一絞り部材41とノズル部材61との組立体71を支持する球面支持部13aを有し、更に、先端側に向かって拡径する吐水口13bが形成されている。球面支持部13aは、後述するパッキン21の内面の湾曲面と同じ曲率の曲面となっており、組立体71をノズル部材61の吐水面近傍で支持し、組立体71が吐水側開口部13より脱落しないようにする。すなわち、図2に示すように、この球面支持部13aの直径D3は、組立体71の最大直径D1より小さい直径となっており、内側が凹面の球面状座面となる。また、吐水口13bは、外方に向かって拡径した形状に形成されることで、吐水面61aを傾斜させた際にもノズル部材61の吐水面より吐水される流水が吐水側開口部13の周縁に触れないようにしている。
【0022】
[3.パッキンの説明]
パッキン21は、例えばゴム製であり、図1及び図2に示すように、円筒部22と拡径部23とが中心軸線を一致させて一体に形成されている。拡径部23の湾曲面は、第一絞り部材41の外周面の曲率及びノズル部材61の外周面の曲率に対応した球面状座面となっている。拡径部23の先端部は、ケーシング11に挿入された際、ケーシング11の吐水側開口部13の近傍に形成された段部14に係合する。また、円筒部22の先端部の外周面には、係合段部24が形成されている。この係合段部24は、例えば蛇口2の先端が係合される。かくして、パッキン21は、吐水側開口部13側に位置する先端部が段部14に係合し、係合段部24に蛇口2が係合圧接されることで、蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止する。
【0023】
なお、パッキン21の円筒部22と拡径部23とで構成される外側のコーナ部は、摺動する第一絞り部材41の突出部42が係合し、可動範囲を規制する規制部25となる。以下、水流の上流側から配設される第二絞り部材41、第一絞り部材31、流量調節部材51、ノズル部材61の順で説明する。
【0024】
[4.第二絞り部材の説明]
最も給水口3側に配される第二絞り部材31は、給水口3より給水される水流を最初に絞る部材となり、第一絞り部材41に取り付けられるキャップ状の部材である。この第二絞り部材31は、図3に示すように、頭部32と、頭部32の裏面中央部に立設された軸部33とを有する。頭部32は、形状は特に限定されるものではないが、ここでは円板状に形成されており、厚さ方向に貫通した第二絞り孔34,34が貫穿されている。なお、第二絞り孔34の数や大きさは、特に限定されるものではないが、ここでは、対称の位置に、同じ大きさで二つ設けられている。頭部32の裏面には、中央部に軸部33が立設されている。また、頭部32の裏面には、図3(B)及び図4に示すように、第一絞り部材41と水流を繋ぐ有底の連通溝35,35が設けられている。連通溝35,35は、第二絞り孔34,34の数に対応し、ここでは二つ設けられている。各連通溝35は、第二絞り孔34,34と連通している。各連通溝35は、頭部32の裏面において略半周に亘って湾曲して設けられている。そして、各連通溝35は、軸部33の中心部で連通路36,36側と連通している。なお、第二絞り孔34,34は、各連通溝35と連通すれば、頭部32の表面の何れの位置に設けても良く、また、頭部32の側面部に、連通溝35,35と連通するように溝状、スリット状或いは貫通孔で設けても良い。第二絞り孔34,34を頭部32の側面部に設けたときには、給水口3からの水流が直接的に各連通溝35に供給されることがなくなり、水流を減圧することが出来る。なお、連通溝35,35は、頭部32の裏面にあれば上述の例に限定されるものではない。また、第二絞り部材31は、必須不可欠ではなく、これを用いない場合、絞り度合いは、第一絞り部材41によって規定されることになり、比較的緩い状態を作り出すことが出来る。逆に、第二絞り部材41を用いた場合には、簡単に絞り度合いをきつく規定することが出来る。
【0025】
軸部33は、高さ方向に、連通路36,36が形成されている。連通路36,36は、軸部33の内部に設けた貫通孔でも良いが、ここでは、外周部を切り欠いて凹状に設けられている。連通路36,36は、頭部32,32の連通溝35,35の内周端で連通している。連通溝35,35は、第一絞り部材41に取り付けられたとき、第一絞り部材41の突出部42の上面との間に、連通空間部を構成し、第一絞り部材41の複数の第一絞り孔45とを連通させる。
【0026】
なお、この連通路36,36の数や大きさも、連通溝35と接続されていれば、その数は特に限定されるものではない。
【0027】
また、頭部32の裏面には、連通溝35,35が設けられていない領域に、例えば対称の位置に、位置決め突起37,37が設けられている。位置決め突起37,37は、第一絞り部材41に取り付けられた際に、第一絞り部材41の位置決め凹部44,44と係合して、第二絞り部材31が軸部33を中心に回転しないように位置決めする。
【0028】
[5.第一絞り部材の説明]
以上のような第二絞り部材31と共に水流を絞る第一絞り部材41は、図5に示すように、椀状を成し、外周部の湾曲面の頂部に、突出部42が形成されている。突出部42の頂面は、第二絞り部材31の頭部32の裏面とほぼ同じ大きさに形成され、その中央部には、第二絞り部材31の軸部33が嵌合される第一絞り部材41の厚さ方向に貫通した貫通孔43が形成されている。第二絞り部材31は、軸部33が貫通孔43に嵌合されることによって、突出部42の頂面にキャップのように取り付けられ、この頂面と第二絞り部材31の頭部32の裏面の連通溝35,35とで密閉された連通空間部を構成する。
【0029】
また、突出部42の頂面には、第二絞り部材31の頭部32の裏面の位置決め突起37,37と係合する位置決め凹部44,44が形成されている。第二絞り部材31は、位置決め突起37,37と位置決め凹部44,44が係合することによって、軸部33を中心に回転しないように位置決めされ、確実に連通空間部を構成出来るようにしている。
【0030】
突出部42の頂面には、図4及び図5(A)に示すように、第二絞り部材31の頭部32の裏面の連通溝35,35と対向する位置に、第一絞り部材41の厚さ方向に貫通した第一絞り孔45,45が複数形成されている。各連通溝35,35に対応した第一絞り孔45,45は、直径の異なる孔45a,45b,45c,45dで構成されている。直径の異なる孔45a,45b,45c,45dは、図6及び図7に示すように、各連通溝35,35において、位置決め凹部44,44側から順に直径が小さくなり、最も位置決め凹部44,44側の孔45aは、最も大きく、第二絞り部材31の第二絞り孔34の位置と略対応する位置にあり、第二絞り孔34とほぼ同じ直径となっている。なお、以下、直径の異なる孔45a,45b,45c,45dをまとめて、第一絞り孔45とも言う。直径の異なる孔45a,45b,45c,45dは、各連通溝35,35内において、必ずしも等間隔で形成されている分けではない。孔45a,45b,45c,45dの間隔や直径の大きさは、適宜設定することができる。
【0031】
第二絞り部材31が第一絞り部材41の突出部42に位置決めして取り付けられた状態において、第二絞り孔34,34からの水流は、連通溝35,35と突出部42の頂面で構成された連通空間部において一度衝合して合流し、順次、複数の第一絞り孔45,45に供給される。また、第二絞り孔34,34からの水流は、連通空間部において一度衝合して合流した後、突出部42の貫通孔43に嵌合された第一絞り部材41の軸部33の連通路36,36に供給される。
【0032】
以上のような突出部42は、パッキン21の円筒部22と拡径部23とで構成される外側のコーナ部の規制部25と係合することで、吐出方向を調整する際の第一絞り部材41とノズル部材61の組立体の可動範囲を規制する。
【0033】
また、図5(B)に示すように、外側の湾曲面の反対側の底面には、中央部に、吐出する流量を調節する流量調節部材51が取り付けられる取付凹部46が設けられている。取付凹部46の周囲には、複数の閉塞突起47が複数形成されている。複数の閉塞突起47は、後述のノズル部材61からの水の吐出量を制御するための閉塞手段とされる。閉塞突起47は、取付凹部46を中心にして、環状に等間隔に形成されている。閉塞突起47は、次に説明するノズル部材61の吐水孔62を選択的に閉塞する。
【0034】
更に、底面には、第一絞り部材41の底面にノズル部材61を取り付けるための嵌合凹部48が形成されている。嵌合凹部48は、環状に形成されており、ノズル部材61側の嵌合凸部65が嵌合され、第一絞り部材41の底面に対してノズル部材61が位置決めして取り付けられる。なお、嵌合凹部48は、連続した環状ではなく、複数の断続的な凹部を環状に設けて形成して構成しても良い。この場合、ノズル部材61にも、この凹部に対応する凸部を設ける。この場合、第一絞り部材41とノズル部材61とが回転方向にずれることも無くなり一層正確な位置決めを行うことが出来る。
【0035】
流量調節部材51が取り付けられる取付凹部46には、その底面の中央部に、図5(B)、図6及び図7に示すように、第二絞り部材31の軸部33が嵌合された貫通孔43より軸部33の連通路36,36が臨まされている。更に、取付凹部46の底面には、中央部において臨まされた連通路36,36の周囲に、第一絞り孔45,45の直径の異なる孔45a,45b,45c,45dが臨まされている。更に、第一絞り孔45,45の外側には、図5(B)及び図9に示すように、流量調節部材51の放射溝56の間の位置決め突片55aと係合する係合凹部49が環状に形成されている。係合凹部49は、位置決め突片55aが円滑に乗り越えることが出来るように、傾斜面を有する山型の凹部となるように形成されている。環状に形成された係合凹部49は、例えば、第一絞り孔45a,45b,45c,45dの位置に基づいて設定されており、必ずしも等間隔で形成されている分けではない。また、係合凹部49と係合凹部49との間は、平坦部49aが形成され、流量調節部材51の放射溝56の間の突片55が当接する部分となる。なお、放射溝56は、等間隔が好ましいが、必ずしも等間隔である必要は無い。
【0036】
[6.流量調節部材の説明]
以上のような取付凹部46に取り付けられてノズル部材61より吐出する流量を調節する流量調節部材51は、図8に示すように、第一絞り部材41の底面の取付凹部46に回転自在に取り付けられる本体部52を有する。本体部52の取付凹部46の底面と対向する面には、直径方向に、有底の第一減圧溝53aと第二減圧溝53b,53bとが連続して形成されている。第二減圧溝53b,53bは、第一減圧溝53aの両側に、第一減圧溝53aと連続して形成されている。第一減圧溝53aは、第一絞り部材41の取付凹部46の底面に臨んだ連通路36,36に対応した位置に形成され、二つの第二減圧溝53b,53bは、第一絞り孔45,45を開閉出来る位置に形成されている。減圧溝53a,53b,53bのそれぞれは、略円形溝を構成している。そして、常時、水流が供給される連通路36,36に対応した中央の第一減圧溝53aは、最も大きく形成され、第一絞り孔45a,45b,45c,45dの何れかを開口する第二減圧溝53b,53bは、第一減圧溝53aより小さく形成されている。ここでは、第二減圧溝53b,53bの大きさは、最も大きい第一絞り孔45a,45aとほぼ同じ大きさに形成されている。減圧溝53a,53b,53bは、流量調節部材51が取付凹部46に取り付けられたとき、取付凹部46の底面とで略密閉した減圧空間部を構成する。この減圧空間部では、連通路36,36からの水流と二つの第一絞り孔45,45からの水流とを衝合させて減圧させる。
【0037】
なお、第二減圧溝53b,53bは、ここでは、選択的に一つの第一絞り孔45,45を開口し、残りを閉塞部58で閉塞する場合を説明したが、一度に二つ以上の第一絞り孔45,45を開口する大きさであっても良い。また、閉塞部58は、第一絞り孔45a,45b,45c,45dを開口/閉塞の二段階で切り替えるようにしているが、流量調節部材51を回転することで、第一絞り孔45,45の一つの孔を段階的に又は漸次閉塞し開口するようにして、よりきめ細かに開口量を調整するようにしても良い。
【0038】
また、本体部52の取付凹部46の底面と対向する面には、外周部のやや内側に環状溝54が形成されている。環状溝54は、第二減圧溝53b,53bと連通しており、第二減圧溝53b,53bからの水流が本体部52の周囲に回るようにしている。環状溝54の外周壁54aには、環状溝54の外側に水流を放出するための放射状の放射溝56が複数形成されている。ここでの放射溝56は、外周壁54に等間隔に設けられている。隣接する放射溝56,56の間に構成される突片55は、図5(B)、図8及び図9に示すように、略矩形を成し、その幅が第一絞り部材41の取付凹部46の底面にある係合凹部49の開口端の幅にほぼ同じであり、係合凹部49と係合せず放射溝56を閉塞しない構成となっている。また、上述のように、係合凹部49は、等間隔で設けられておらず、平坦部49aの長さも位置によって異なる。このため、複数の突片55の中の何れかは、その頂面が係合凹部49,49間の平坦部49aに当接し、放射溝56を閉塞しない構成となっている。
【0039】
第二減圧溝53b,53bに近接する位置の突片55は、位置決め突片55aとなる。位置決め突片55a,55aは、突片55と同じ矩形壁の頂面に係合凹部49の山型に対応した山型突部を形成した形状を成し、係合凹部49と係合する。突片55が何れかの係合凹部49と係合しているとき、第一絞り孔45a,45b,45c,45dの何れかは、第二減圧溝53b,53bと対向し、第二減圧溝53b,53bと対向した第一絞り孔45,45から下流側に給水出来るようになっている。山型の位置決め突片55aは、係合凹部49が傾斜面を有する山型の凹部となっているので、円滑に平坦部49aを乗り越えることが出来る。流量調節部材51の本体部52は、取付凹部46より一回り小さく形成されており、放射溝56から外側に放出された水流は、取付凹部46と本体部52の側面との間の隙間である流路を通って整流され、ほぼ周回り方向に均等に下流のノズル部材61の方向に供給されることになる。
【0040】
なお、係合凹部49や突片55の形状は、これに限定されるものではない。例えば、突片55の先端を円弧状突部又は山状突部とし、また、係合凹部49の形状を矩形状凹部や円弧状凹部や山状凹部としても良い。
【0041】
本体部52のノズル部材61側の面には、突部57が突設されている。突部57の頂面は、ノズル部材61より外部に臨む部分となり、流量調節部材51を回転するための操作部57aが形成されている。例えば、操作部57aは、マイナスやプラスのドライバで流量調節部材51を回転出来るように、マイナスやプラスの溝57bで構成されている。なお、操作部57aとしては、この他に、指で摘んで操作出来るようなタブ等であっても良い。
【0042】
この流量調節部材51は、ノズル部材61の操作部57aを構成する突部57を支持する支持凹部66によって支持され、更に、支持凹部66に配設された水密用のパッキン等の弾性体59によって弾性支持される。したがって、本体部52の取付凹部46の底面と対向する面の位置決め突片55aは、弾性体59によって、取付凹部46の底面に環状に形成された係合凹部49に係合するように押圧される。これにより、位置決め突片55aが隣接する係合凹部49に移動する際にクリック感を発生させることが出来、ユーザにどの程度流量調節部材51を回転させたかを認識させることが出来る。
【0043】
流量調節部材51は、操作部57aで回転操作されると、本体部52が取付凹部46内を回転する。この際、第一減圧溝53aは、図6−図8に示すように、本体部52の略回転中心にあり、第一減圧溝53aと対向するように、第二絞り部材31の軸部33の連通路36,36がある。したがって、連通路36,36からは、第一減圧溝53aに、本体部52の回転に関係なく常時水流が供給される。これに対して、第一絞り部材41の第一絞り孔45,45の直径の異なる孔45a,45b,45c,45dの何れかは、選択的に第二減圧溝53b,53bと対向し、閉塞部58によって閉塞されていない開口された第一絞り孔45,45からは、直径に応じた水量が第二減圧溝53b,53bに供給される。ユーザは、流量調節部材51を回転することで、開口される第一絞り孔45,45を選択することが出来、これにより、所望する流量にすることが出来る。例えば、図6では、最も大きい第一絞り孔45a,45aが第二減圧溝53b,53bと対向し開口され、図7では、最も大きい第一絞り孔45a,45aが閉塞部58で閉塞されている。
【0044】
[7.ノズル部材の説明]
ノズル部材61は、図10に示すように、略円柱状を成し、外周面が第一絞り部材41の湾曲面と同じ曲率で湾曲するように形成されている。このノズル部材61には、厚さ方向に貫通した多数の吐水孔62が形成されている。吐水孔62は、例えば直径が1mm弱の大きさとなっている。そして、ノズル部材61の底面が吐水面61aとなっており、平坦に形成されている。具体的に、ノズル部材61には、複数の吐水孔62で構成される環状の外周吐水孔列62aと内周吐水孔列62bとが同心円状に形成されている。外周吐水孔列62aは、図10(B)に示すように、常時吐水される部分となり、見かけ上の水量を多く見せるため、内周吐水孔列62bより孔の数が多くなっている。内周吐水孔列62bは、第一絞り部材41の閉塞突起47によって選択的に閉塞される。また、図10(A)に示すように、内周吐水孔列62bにおいて、吐水孔62の間には、閉塞突起47が係合される凹部63が設けられている。閉塞突起47が凹部63に係合しているときには、内周吐水孔列62bの吐水孔62から吐水される。
【0045】
なお、内周吐水孔列62bを構成する吐水孔62の孔径と外周吐水孔列62aを構成する吐水孔62の孔径は、同じであっても良く、また、内周吐水孔列62bを構成する吐水孔62の方が大きくても良く、更に、内周吐水孔列62bを構成する吐水孔62の方が小さくても良い。
【0046】
また、吐水面61aは、平坦面の他、中心が最も窪んだ断面がサイクロイド曲線を描くような曲面といった凹部で形成しても良い。吐水面61aをサイクロイド曲線を描くような曲面で形成したときには、吐水孔62より吐水される流水がやや広がり、ケーシング11の吐水側開口部13より吐水される流水全体を太く見せることが出来る。
【0047】
内周吐水孔列62bでは、図11(A)に示すように、閉塞突起47が吐水孔62と係合しているときには、吐水孔62は閉塞され、内周吐水孔列62bからは吐水されない状態となる(節水位置)。一方、図11(B)に示すように、閉塞突起47が吐水孔62,62の間の凹部63と係合し吐水孔62と係合していないときには、吐水孔62は開口され、内周吐水孔列62bからも吐水される状態となる(準節水位置)。
【0048】
なお、閉塞突起47の数や間隔は、内周吐水孔列62bから吐出する吐水量の切換を何段階行うかによって決められるもので、本発明では特に限定されるものではない。また、同心円状に設けられる環状の吐水孔列は、二重に限定されるものではなく、一重でも三重以上であっても良い。吐水孔列が一重の場合は、選択的に幾つかの吐水孔が閉塞突起に閉塞される構成となる。また、吐水孔列を三重以上設けた場合には、すべて又は幾つかの吐水孔列の吐水孔が、閉塞突起によって選択的に閉塞されるようにすれば良い。吐水孔62の間に設けられる凹部63の数も、複数であっても良い。
【0049】
ノズル部材61の外周吐水孔列62aの外周側には、図10に示すように、第一絞り部材41の底面に設けられた嵌合凹部48に嵌合する嵌合凸部65が形成されている。内周吐水孔列62bからの吐水を切り替えるとき、ノズル部材61を回転することになるが、嵌合凸部65は、嵌合凹部48と嵌合することで、回転ガイドとなる。なお、この嵌合凸部65は、複数の断続的な凸部を構成するようにしても良い。また、嵌合凸部65を、第一絞り部材41側に設けて、嵌合凹部48をノズル部材61側に設けるようにしても良い。
【0050】
ノズル部材61の中央部には、流量調節部材51を突部57側から支持する支持凹部66が設けられている。支持凹部66は、更に中央部に、突部57の操作部57aを、吐水面61aの略中央より外部に臨ませる操作開口部67が設けられている。操作開口部67から外部に臨まされた操作部57aは、溝57bに例えば、マイナスやプラスのドライバを係合して流量調節部材51を回転出来る。
【0051】
この支持凹部66には、図2、図6及び図7に示すように、例えばリング状のゴムパッキンである弾性体59が突部57の外周と支持凹部66の側壁との間に配設される。この弾性体59は、突部57と操作開口部67との間の水密を確保する。また、この弾性体59は、上述のように、流量調節部材51を第一絞り部材41の取付凹部46の底面の方向に付勢し、位置決め突片55aを、取付凹部46の底面に形成された係合凹部49に係合させ、流量調節部材51を回転する際にクリック感が発生するようにしている。
【0052】
[8.節水器具の組立]
以上のように構成された節水器具1は、次のように組み立てられる。先ず、図1及び図2に示すように、第一絞り部材41の突出部42には、第二絞り部材31の軸部33を第一絞り部材41の貫通孔43に嵌合させ、更に、突出部42の位置決め凹部44,44に位置決め突起37,37を係合させて取り付けられる。ここで、第二絞り部材31は、必ずしも必要なものではなく、第一絞り部材41のみでは絞りきれない場合に併用することが出来る。また、第一絞り部材41の取付凹部46には、流量調節部材51が第一減圧溝53aと第二減圧溝53b,53bが取付凹部46の底面と対向するように取り付けられる。この際、第二減圧溝53b,53bは、第一絞り孔45a,45b,45c,45dの何れか一つと対向され、対向された第一絞り孔45,45と連通される。後に再調整可能であるが、例えば、第二減圧溝53b,53bが最も大きい絞り孔45aと対向したときには、水流が第二絞り部材31の軸部33の連通路36,36と第一絞り孔45a,45aから供給されることになり、流量が最大となる。また、最も小さい第一絞り孔45dと対向したときには、水流が第二絞り部材31の軸部33の連通路36,36と第一絞り孔45dから供給されることになり、流量が最小となる。この後、流量調節部材51が組み合わされた第一絞り部材41には、ノズル部材61が組み合わされる。具体的に、ノズル部材61の嵌合凸部65が第一絞り部材41の嵌合凹部48に嵌合され、更に、支持凹部66に弾性体59が配設された後に、流量調節部材51の突部57が支持凹部66に挿入され操作開口部67より外部に臨まされる。
【0053】
かくして、主として、内部に流量調節部材51を配して第一絞り部材41とノズル部材61とが組み合わされ、組立体71とされ、この組立体71は、パッキン21に組み合わされる。具体的に、パッキン21の円筒部22に、第二絞り部材31が取り付けられた第一絞り部材41の突出部42を臨ませるようにして、パッキン21の拡径部23内に組み合わされる。この後、組立体71が組み合わされたパッキン21は、ケーシング11内に配設される。具体的に、パッキン21は、吐水側開口部13側に位置する先端部が段部14に係合される。この後、ケーシング11は、取付開口部12の内周面にあるねじ溝12aを蛇口2のねじ部に締め付けることによって、ケーシング11が蛇口2等に取り付けられる。パッキン21は、係合段部24に蛇口2が係合圧接されることで、蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止することが出来る。
【0054】
ところで、この組立体71は、上半球に下半球の一部を足した完全なる半球体よりやや大きいものとなる。すなわち、この組立体71は、図2に示すように、この組立体71を含む球体の最大直径D1を含む半球体となり、吐水面61aの直径D2が最大直径D1よりやや小さくなる形状となっている。そして、組立体71は、第一絞り部材41の外面とノズル部材61の外面とで連続的な略半球面状の外表面を構成する。
【0055】
また、パッキン21の拡径部23を構成する球面とケーシング11の吐水側開口部13近傍の球面支持部13aとは、組立体71の外表面がなす略半球面に対応した連続的な球面を成し、組立体71の転動に伴う摺動を許容する球面座面となっている。なお、少なくともパッキン21の拡径部23が球面座面となっていれば、組立体71は転動可能であるから、ケーシング11の球面支持部13aは必ずしも球面座面となっていなくても良い。更に、球面支持部13aの直径D3は、組立体71の最大直径D1より小さくなっており、組立体71がケーシング11より脱落しないようになっている。
【0056】
以上のような、組立体71は、例えば、吐水面61aを指等で偏圧的に押圧することによって、第一絞り部材41の突出部42がパッキン21の規制部25に突き当たるまでの範囲内で、自在に傾けることが出来る。また、吐水中にあっては、パッキン21の内側の空間において発生する内圧によって、第一絞り部材41やノズル部材61がパッキン21に圧接されることになる。したがって、吐水面61aの調節した傾きが使用中にずれてしまうことは無くなる。
【0057】
[9.節水器具の動作]
以上のような節水器具1は、蛇口2の給水口3から水が供給されると、水流は、第二絞り部材31の第二絞り孔34で一次的に水量が絞られ、頭部32の裏面にある連通溝35で構成される連通空間部に供給される。連通空間部の水流は、第一絞り部材41に取り付けられた第二絞り部材31の連通路36,36から流量調節部材51の第一減圧溝53aに供給されると共に、第一絞り部材41の第一絞り孔45,45を通って流量調節部材51の第二減圧溝53b、53bに供給される。互いに連通した第一減圧溝53aと第二減圧溝53b、53bとで構成された減圧空間部では、水流の方向が曲げられ、更に、水流が互いに衝合することで減圧される。減圧された水流は、流量調節部材51の環状溝54を通って更に、放射溝56から取付凹部46と本体部52の側面との間の隙間である流路を通ってノズル部材61の方向に整流された状態で均等に供給され、更に、ノズル部材61の吐水孔62から吐水される。吐水孔62からの水流は、減圧空間部で減圧されることで、蛇口2での給水時の圧力変動に影響されることなく、水圧が一定となる。
【0058】
[9−1.流量調節部材による流量調節]
流量は、流量調節部材51を回転することによって調節することが出来る。具体的に、ノズル部材61の吐水面61aの操作開口部67の外部に臨まされた操作部57aの溝57bにマイナスやプラスのドライバを係合して流量調節部材51を回転する。これにより、流量調節部材51の第二減圧溝53b,53bと対向して開口される第一絞り孔45a,45b,45c,45dの何れか一つが選択される(図9参照)。ユーザは、所望の第二絞り孔45,45を選択することによって、所望の流量とすることが出来る。この際、ノズル部材61の支持凹部66にある弾性体59は、流量調節部材51を、第一絞り部材41の取付凹部46の底面の方向(図中上方)に付勢し、位置決め突片55aを、取付凹部46の底面に形成された係合凹部49に係合させ、流量調節部材51を回転する際にクリック感が発生するようにしている。これにより、ユーザは、どの程度流量調節部材51を回転したかを感覚的に把握することが出来る。
【0059】
・最大流量時
図2及び図6に示すように、第二減圧溝53b,53bが最も大きい第一絞り孔45a,45aと対向したときには、水流が第二絞り部材31の軸部33の連通路36,36と第一絞り孔45aから減圧溝53a,53b,53bで構成される連通空間部に供給されることになり、流量が最大となる。このとき、他の第一絞り孔45b,45c,45dは、流量調節部材51の閉塞部58によって閉塞され、第一絞り孔45b,45c,45dから水流は下流側に供給されない。
【0060】
・その他の流量
図7及び図12では、最も大きい第一絞り孔45a,45aが流量調節部材51の閉塞部58で閉塞され、水流が下流側に供給されない。代わりに、他の第一絞り孔45b,45c,45dの何れか一つが第二減圧溝53b,53bと対向して開口しており、ここより水流が第二減圧溝53b,53bに供給される。
【0061】
[9−2.ノズル部材による流量調節]
節水器具1では、ノズル部材61を第一絞り部材41に対して回転させることで、節水の程度を調節することが出来る。具体的に、この節水器具1において、外周吐水孔列62aからは、常時吐水され、吐水される水流が常に太く見えるようにしている。これに対して、内周吐水孔列62bでは、第一絞り部材41の閉塞突起47によって、ノズル部材61の吐水孔62が選択的に閉塞される。具体的に、図11(A)、図12及び図14に示すように、閉塞突起47が内周吐水孔列62bの吐水孔62と係合しているときには、吐水孔62は閉塞され、内周吐水孔列62bからは吐水されない状態となる(節水位置)。一方、図11(B)及び図13に示すように、閉塞突起47が内周吐水孔列62bの吐水孔62,62の間の凹部63に係合しているときには、吐水孔62は開放され、内周吐水孔列62bからも吐水される状態となる(準節水位置)。すなわち、ノズル部材61が準節水位置にあるとき、吐水面61aからの流線は、二重となり、節水位置にあるとき、流線は一重となる。
【0062】
節水器具1では、常に、ノズル部材61が節水位置にあるとき、外周吐水孔列62aから吐水され、その内側で内周吐水孔列62bから吐水されないようになっている。したがって、節水器具1では、内周吐水孔列62bから吐水されず吐水量が減ったことを見た目で分からないようにしながら節水を行うことが出来る。
【0063】
このノズル部材61の回転操作の方法は特に限定されるものではなく、節水器具1が分解された状態において、第一絞り部材41に対してノズル部材61を回転させても良い他、分解するまでもなく、組立後の状態において、指や治具を使って、ケーシング11の吐水側開口部13より臨むノズル部材61を回転させても良い。更に、ノズル部材61に、ケーシング11より外部に臨む操作突起を設けて、この操作突起を用いてノズル部材61を回転させても良い。また、ケーシング11に開口部を設けて、何れの凹部に閉塞突起47が係合されているのかを目視出来るようにし、設定状態を目視で確認出来るようにしても良い。
【0064】
[9−3.吐水方向の調節]
図13、図14等は、吐水面61aの傾きを0°として、吐水方向を鉛直にした状態を示している。これに対して、図15は、吐水面61aを一方に傾けた状態を示している。この状態では、組立体71を構成する第一絞り部材41の突出部42がパッキン21の規制部25に突き当たり、これ以上吐水面61aが傾かないようにすることが出来る。すなわち、組立体71は、突出部42がパッキン21の規制部25に突き当たるまでの範囲で、吐水面61aを何れの方向にも傾けることが出来る。
【0065】
[10.節水器具の効果]
以上のような節水器具1によれば、ケーシング11内に、第一絞り部材41とノズル部材61が設けられることで、吐水量を絞り節水することが出来る。具体的に、第一及び第二絞り部材31,32によって絞られ、更に流量調節部材51によって流量が調節された水流が、更にノズル部材61によって適度な吐水量と水勢に調節されて吐水孔列62a,63bから吐水されるので、使用感の良好な節水を行うことが出来る。更に、流量調節部材51を回転することによって、外部からの簡単な操作で吐水孔列62a,63bに供給される吐水量を調節することも出来、これにより、水圧や吐水量の微調整を行うことが可能となる。
【0066】
加えて、第一絞り部材41とノズル部材61との組立体71は、パッキン21内に摺動可能に取り付けられ、吐水面61aの角度を可変とする。したがって、外部からの簡単な操作で水の吐出方向を容易に調節することが出来る。これによって、節水を行いながら、水圧を上げたときにも、吐出方向を調節することで、水滴が洗面器の外にまで飛散して、洗面器の周囲が汚損することを防止出来る。すなわち、節水器具1では、吐水や水滴が洗面器の外にまで飛散しない範囲で、使い勝手が良いように、吐水量や吐出方向を容易に微調節することが出来る。
【0067】
[11.節水器具の変形例]
なお、以上、本発明が適用された節水器具1について説明したが、節水器具1は、本発明の一例であり、節水器具1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形しても良い。例えば、図16に示すように、ノズル部材61の吐水孔62は一重であっても良い。例えば、図1−図15の節水器具1が常口の蛇口2に節水器具1に対応しているとき、図16の節水器具101は、細口の蛇口2に対応する。細口用の節水器具101は、蛇口2に合わせて細口となり小径となることから、図16の節水器具101では、ノズル部材61の吐水孔62の列が一重となっている。勿論、常口用の節水器具1において、ノズル部材61の吐水孔62の列を一重にしても良い。
【0068】
また、節水器具1,101では、第二絞り部材31を設けることなく、第一絞り部材41の第一絞り孔45に直接的に水流が供給されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0069】
1,101 節水器具、2 蛇口、3 給水口、11 ケーシング、12 取付開口部、13 吐水側開口部、13a 球面支持部、13b 吐水口、21 パッキン、22 円筒部、23 拡径部、25 規制部、31 第二絞り部材、32 頭部、33 軸部、34 第二絞り孔、35 連通溝、36 連通路、37 位置決め突起、41 第一絞り部材、42 突出部、43 貫通孔、44 位置決め凹部、45(45a−45d) 第一絞り孔、46 取付凹部、47 閉塞突起、48 嵌合凹部、49 係合凹部、51 流量調節部材、52 本体部、53a 第一減圧溝、53b 第二減圧溝、54 環状溝、54a 外周壁、55 突片、55a 位置決め突片、56 放射溝、57 突部、57a 操作部、57b 溝、58 閉塞部、59 弾性体、61 ノズル部材、61a 61a 吐水面、62 吐水孔、62a 外周吐水孔列、62b 内周吐水孔列、63 凹部、65 嵌合凸部、66 支持凹部、67 操作開口部、71 組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水口より給水される水流を絞る第一絞り孔が貫穿された第一絞り部材と、
上記第一絞り部材と相対的に回転可能であり、上記第一絞り孔の開口量を調節する流量調節部材と、
上記流量調節部材で水量が調節された流水を吐出する複数の吐水孔が貫穿されたノズル部材とを備える節水器具。
【請求項2】
上記流量調節部材は、上記第一絞り孔と対向する領域に、上記第一絞り孔からの水流を衝合させて減圧させる減圧空間部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の節水器具。
【請求項3】
上記流量調節部材には、上記減圧空間部の周囲に環状溝が設けられ、
上記環状溝は、その外周壁に、上記吐水孔に連通する放射溝が設けられていることを特徴とする請求項2記載の節水器具。
【請求項4】
上記流量調節部材は、位置決め突片が形成され、
上記第一絞り部材は、上記位置決め突片と対向する領域に係合凹部が形成され、
上記流量調節部材は、上記ノズル部材との間の弾性体によって、上記位置決め突片が上記係合凹部と係合する方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項1乃至3の内何れか1項記載の節水器具。
【請求項5】
当該節水器具は、更に、上記第一絞り部材の上記給水口側に取り付けられる第二絞り部材を備え、
上記第二絞り部材は、給水口より給水される水流を絞る第二絞り孔を有し、
上記第二絞り孔で一次的に絞られた水流が上記第一絞り部材の第一絞り孔に供給されることを特徴とする請求項1乃至4の内何れか1項記載の節水器具。
【請求項6】
上記第二絞り部材には、上記第一絞り孔と対向する領域に、上記第二絞り孔と上記第一絞り孔とを連通する連通空間部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の節水器具。
【請求項7】
上記第二絞り部材は、更に、上記流量調節部材によって常に閉塞されない連通路が設けられていることを特徴とする請求項5又は6記載の節水器具。
【請求項8】
上記第二絞り部材は、上記第一絞り部材に貫穿された貫通孔に嵌合する軸部を有し、
上記連通路は、上記軸部に設けられていることを特徴とする請求項7記載の節水器具。
【請求項9】
上記第一絞り部材は、上記第一絞り孔に貫通孔を含み、上記貫通孔の周囲に一つ以上の上記第一絞り孔が貫穿されていることを特徴とする請求項8記載の節水器具。
【請求項10】
上記ノズル部材は、上記複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成されており、
上記第一絞り部材は、上記複数の吐水孔の内の何れかの吐水孔を選択的に閉塞する閉塞突起を有し、
上記ノズル部材は、上記第一絞り部材と相対的に回転可能であり、
上記ノズル部材は、回転することによって、すべての吐水孔を開放する準節水位置と上記吐水孔の何れかを上記閉塞突起で閉塞する節水位置とに切り替わることを特徴とする請求項1乃至9の内何れか1項記載の節水器具。
【請求項11】
更に、ケーシング内にパッキンを設け、
少なくとも上記第一絞り部材と上記ノズル部材との組立体の外表面が、球体の最大直径部分を含む略半球面状をなし、
上記ケーシング内のパッキンの上記組立体の略半球面状の外表面と接する面が、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなし、
上記ケーシングの上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部が、上記組立体の最大外径より小さい内径部を有し、
上記組立体は、上記吐水面が上記吐水側開口部より外部に臨むように上記パッキンの上記略球面状の座面に対して摺動可能に配設され、上記吐水面の角度を可変とすることを特徴とする請求項1乃至10の内何れか1項記載の節水器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−7184(P2013−7184A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139577(P2011−139577)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(395017405)
【Fターム(参考)】