簡易式土留柵
【課題】
土捨場からの土砂流出及び濁水流出を防止することができるとともに安価で且つ短期で施工可能な簡易式土留柵の提供。
【解決手段】
土捨場Aに投入された土砂及び濁水が土捨場Aの外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵1であって、土捨場Aの外周部に沿って水底地盤Bに立設される支持用構造体2と、表面を土捨場側に向けて支持用構造体2に支持される土留用板材3と、土留用板材3の表面側に配置される濁水拡散防止シート15とを備え、土留用板材3の下側部を水底地盤B内に埋め込むとともに、濁水拡散防止シート15を水面の上下側に亘って展開させる。
土捨場からの土砂流出及び濁水流出を防止することができるとともに安価で且つ短期で施工可能な簡易式土留柵の提供。
【解決手段】
土捨場Aに投入された土砂及び濁水が土捨場Aの外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵1であって、土捨場Aの外周部に沿って水底地盤Bに立設される支持用構造体2と、表面を土捨場側に向けて支持用構造体2に支持される土留用板材3と、土留用板材3の表面側に配置される濁水拡散防止シート15とを備え、土留用板材3の下側部を水底地盤B内に埋め込むとともに、濁水拡散防止シート15を水面の上下側に亘って展開させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土砂等の土砂処分場に設定された土捨場外に土砂及び濁水が流出するのを防止することができる簡易式土留柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ浚渫等により浚渫された土砂は、周囲の水とともに排砂管を通して土砂処分場にポンプ排送され、土砂処分場内に設けられた土捨場に吐出される。
【0003】
この吐出された浚渫土砂101は、水とともに流されながら吐出方向の手前側から沈降して土捨場Aの水底Bに堆積してゆき、設計上では図18中に示す如く表面が緩やかな勾配をなし、投入された土砂101は勾配の裾野部までで留まるようになっている。
【0004】
従って、このような土捨て場Aでは、土捨場として設定された区域(以下、土捨場区域という。)が今後拡張される計画がある等の事情がある場合に、現存の土捨場区域の外周部に仕切り用の堤を設けず、前記勾配裾野部の外側部に汚濁防止膜102,102(例えば、特許文献1を参照)を二重に張り巡らせて濁水の拡散のみを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−309564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した如き従来の技術では、排砂管より吐出された実際の土砂が図に示した設計上の勾配を形成せず、一部の土砂が浮泥土として沖側へ流されて土捨場区域より外側に流出するおそれがあり、一方、汚濁防止膜には土砂を遮蔽する機能はなく、土捨場区域の外側に土砂が流出するのを防止することができないという問題があった。また、汚濁防止膜に土砂が堆積してその重みにより汚濁防止膜が水面より下側に沈み込んでしまい、濁水の拡散を防止する機能が損なわれてしまうおそれがあった。
【0007】
一方、このような汚濁防止膜は、水中に浮遊した状態で設置されるので、台風や時化の際に波浪や水流の影響を受けて所定の設置位置から流されてしまうおそれがあった。
【0008】
また、このような汚濁防止膜は、高価であるため、長期間に渡って使用する場合、その賃料や管理費又は設置費用等が嵩み、特に二重構造で使用する場合にはその費用が倍となるので経済的に問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、土捨場の外に土砂及び濁水が流出するのを防止することができるとともに安価で且つ短期に施工可能な簡易式土留柵の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、土捨場に投入された土砂及び濁水が前記土捨場の外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵であって、前記土捨場の外周部に沿って水底地盤に立設される支持用構造体と、表面を前記土捨場側に向けて前記支持用構造体に支持される土留用板材と、該土留用板材の表面側に配置される濁水拡散防止シートとを備え、前記土留用板材の下側部を水底地盤内に埋め込むとともに、前記濁水拡散防止シートを水面の上下側に亘って展開させたことにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記支持用構造体は、水底地盤に間隔を置いて立設される複数の縦杭と、水平方向に向けた複数の横つなぎ材とを有し、前記複数の縦杭及び横つなぎ材を格子状に組み立てて構造体本体とするとともに、該構造体本体の上端部に一端を連結し、他端を前記水底地盤に斜め方向に向けて埋設させた斜杭を備え、前記縦杭、横つなぎ材及び斜杭は、棒状部材をもって構成され、該棒状部材間が連結部材により連結されるようにしたことにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の何れかの構成に加え、前記濁水拡散防止シートは、樹脂製繊維からなる不織布に樹脂製繊維からなる縦糸材及び横糸材を編み込んでなるシートであることにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の何れかの構成に加え、前記濁水拡散防止シートは、上縁を前記斜杭に支持させるとともに、下縁を前記土留用板材に支持させて前記土留用板材の表面より斜め前方に向けて張設させたことにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項2,3又は4の何れかの構成に加え、前記構造体本体の表面側に土留用板材を固定して土留柵用ユニットとなし、互いに隣り合う前記土留柵用ユニット側縁部間を連結して前記土捨場の外周に沿って立設させることにより形成されるようにしてなることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る簡易式土留柵は、上述したように、土捨場に投入された土砂及び濁水が前記土捨場の外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵であって、前記土捨場の外周部に沿って水底地盤に立設される支持用構造体と、表面を前記土捨場側に向けて前記支持用構造体に支持される土留用板材と、該土留用板材の表面側に配置される濁水拡散防止シートとを備え、前記土留用板材の下側部を水底地盤内に埋め込むとともに、前記濁水拡散防止シートを水面の上下側に亘って展開させたことにより、簡易な構造で土捨場区域より外側に土砂や濁水が流出するのを防止することができ、また、高価な汚濁防止膜等を使用せずともよいのでコストの低減を図ることができる。
【0016】
また本発明において、前記支持用構造体は、水底地盤に間隔を置いて立設される複数の縦杭と、水平方向に向けた複数の横つなぎ材とを有し、前記複数の縦杭及び横つなぎ材を格子状に組み立てて構造体本体とするとともに、該構造体本体の上端部に一端を連結し、他端を前記水底地盤に斜め方向に向けて埋設させた斜杭を備え、前記縦杭、横つなぎ材及び斜杭は、同様の棒状部材をもって構成され、該棒状部材間が連結部材により連結されるようにしたことにより、構造が簡素化され、人力によっても容易に組立て及び解体をすることができる。
【0017】
更に本発明において、前記濁水拡散防止シートは、樹脂製繊維からなる不織布に樹脂製繊維からなる縦糸材及び横糸材を編み込んでなるシートであることにより、濁水に対するフィルター的機能を発揮するとともに、高い耐候性、引張強度及び伸び率が得られ、波浪による圧力や漂流物の接触等に対して破損し難くなる。
【0018】
更にまた本発明において、前記濁水拡散防止シートは、上縁を前記斜杭に支持させるとともに、下縁を前記土留用板材に支持させて前記土留用板材の表面より斜め前方に向けて張設させたことにより、波浪による圧力や漂流物の接触等が生じても、濁水拡散防止シートが土留用板材に直接接触することがなく、接触による破損を防止できる。
【0019】
また、本発明において、前記構造体本体の表面側に土留用板材を固定して土留柵用ユニットとなし、互いに隣り合う前記土留柵用ユニット側縁部間を連結して前記土捨場の外周に沿って立設させることにより形成されるようにしたことにより、現場での工期を短縮することができ、作業効率の向上及び工費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る簡易式土留柵の使用状態の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1中の簡易式土留柵の一例を示す部分破断正面図である。
【図3】同上の縦断面図である。
【図4】同上の平面図である。
【図5】土留用板材の取付け状態を示す平面図である。
【図6】同上の正面図である。
【図7】同上の縦断面図である。
【図8】図2中の濁水拡散防止シートを示す正面図である。
【図9】(a)は同上の濁水拡散防止シートの上縁部を示す断面図、(b)は同濁水拡散防止シートの取り付け状態を示す断面図である。
【図10】本発明に係る簡易式土留柵を使用した際の土砂の堆積状況の一例を示す断面図である。
【図11】本発明に係る簡易式土留柵の設置方法の縦杭設置工程の概略を示す正面図である。
【図12】同上の横つなぎ材設置工程の概略を示す正面図である。
【図13】図12中の横つなぎ材取付用治具の使用状態を示す側面図である。
【図14】本発明に係る簡易式土留柵の設置方法の土留用板材設置工程の概略を示す正面図である。
【図15】同上の筋交い設置工程の概略を示す正面図である。
【図16】同上の斜杭設置工程の概略を示す縦断面図である。
【図17】同上の濁水拡散防止シート設置工程の概略を示す部分拡大側面図である。
【図18】(a)は土留柵用ユニット間の連結手段の一例を示す平面図、(b)は同他の一例を示す平面図である。
【図19】従来の土捨場区域における土砂の堆積状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る簡易式土留柵1の実施の態様を図1〜図10に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aは土砂処分場に設けられた土捨場、符合Bは軟弱粘性土からなる水底地盤である。
【0022】
この土捨場Aは、例えば、潮受堤防内側の土砂処分場に設けられ、遠浅な地形で潮位変動の影響も少ないものとなっている。
【0023】
また、この土捨場Aには、排砂管Cを通して浚渫土砂等の土砂が水と共にポンプ排送され、排砂管Cの吐出口より当該土砂が沖側に向けて水と共に吐出されるようになっている。
【0024】
簡易式土留柵1は、上述の如き土捨場Aとして設定された区域(以下、土捨場区域という。)の外周部に設けられ、土捨場A内に投入された土砂及び濁水が土捨場区域の外側に流出することを防止するようになっている。
【0025】
この簡易式土留柵1では、土捨場区域の外周に沿って水底地盤Bに立設された支持用構造体2に土留用板材3を支持させて土砂の土留めをなしている。
【0026】
支持用構造体2は、縦杭4及び横つなぎ材5をもって水底地盤B上に露出した部分が格子状に形成された構造体本体6と、構造体本体6を支持するための斜杭7とを備えている。
【0027】
また、構造体本体6の裏側には、同様の棒状部材からなる筋交い8が斜め方向に向けて掛け渡され、構造体本体6が補強されている。
【0028】
この縦杭4、横つなぎ材5、斜杭7及び筋交い8は、それぞれ長さの異なる同様の棒状部材により構成され、支持用構造体2は、棒状部材間を図示しないクランプ等の連結部材で連結することにより組立てることができるようになっている。
【0029】
尚、この棒状部材は、一般構造用鋼管等の軽量で且つ汎用性の高い部材を以て構成されており、また、溶融亜鉛メッキ等により防食加工を施されている。
【0030】
各縦杭4は、土捨場区域の外周に沿って間隔をおいて設置され、長さ方向を上下(垂直)方向に向けて下側部分を深く水底地盤Bに埋設させることにより、上部が水底地盤Bより上向きに突出した状態に立設されている。
【0031】
各横つなぎ材5は、各縦杭4,4...の表側、即ち土捨場側に上下に間隔をおいて平行に配置され、各縦杭4,4...に連結部材を介して固定されて縦杭4,4...とともに格子状を成している。
【0032】
各斜杭7は、各縦杭4,4...の両側にそれぞれ前後方向に向けて配置され、各斜杭7の上端部が連結部材を介して縦杭4の上端に固定され、他端側がその長さ方向を斜めに向けて水底地盤B内に埋設されている。
【0033】
各斜杭7,7...の水底地盤B内に埋設された部分には、斜杭7と交差する配置に根がらみ9が固定されており、斜杭7の位置が水底地盤B内に安定した状態で維持されるようになっている。
【0034】
土留用板材3は、断面が波形状に形成された波板をもって構成され、表面を土捨場A側に向けるとともに波形状断面を上下方向に向け、下側部を水底地盤Bに埋設させている。このように下側部を地盤内に埋設させたことにより、波浪による洗掘の影響を防止し、土砂が好適に土留めされるようにしている。
【0035】
また、この土留用板材3は、下側部を所定の深さまで埋設させた際に上縁が水面下に位置するように形成され、土留用板材3により水底に堆積する土砂を土捨場区域外に流出させないようにする一方、土捨場区域の内外側の水の流れを阻害しないようになっている。
【0036】
この土留用板材3は、図5〜図7に示すように、横つなぎ材5と棒状部材からなる押さえ部材10との間に挟持されるとともに、J形に形成されたボルト等の固定具11により横つなぎ材5に固定させたことにより支持用構造体2に支持されている。
【0037】
横つなぎ材5及び押さえ部材10には、それぞれフック状部材12が係合され、土留用板材3を貫通させて両フック状部材12間にボルト13を通しナット14を締めつけることにより横つなぎ材5と押さえ部材10とが互いに近づく方向に移動し、両部材5,10間に配置された土留用板材3を挟持するようになっている。
【0038】
また、この土留用板材3の表面側には、濁水拡散防止シート15が水面の上下側に亘って展開され、濁水が土捨場区域外に流出するのを防止している。
【0039】
濁水拡散防止シート15は、ポリエステル糸等の樹脂製繊維からなる不織布に、高強力ポリエステル糸等の樹脂製の経糸及び横糸を編込んで補強したシートをもって構成され、高い耐候性、引張強度及び伸び率を有し、且つ濁水に対してフィルター的機能を発揮するようになっている。
【0040】
この濁水拡散防止シート15は、図8に示すように、外縁部を布状材で覆うことにより補強されてほつれ難くなっている。また、濁水拡散防止シート15の上縁部は、図9(a)に示すように、細長帯状の金属製プレート16,16に挟まれて補強がなされ、そこに図9(b)に示すように、水平方向に間隔を置いて複数のシャックル等の取付金具17が固定されている。
【0041】
この取付金具17は、鉄筋19等に係合されるC字状の引掛け部17aと、C字状の開口縁に支持された互いに対向する一対の挟持片17b、17bとを備えており、シート15の上縁部及び金属製プレート16,16を両挟持片17b、17b間に挟み込み、シート15、金属製プレート16,16及び挟持片17b,17bに形成された貫通孔にピン17cを貫通させることによりシート上縁部に固定させている。
【0042】
一方、この濁水拡散防止シート15の下縁部には、横方向に間隔を置いて固定用紐18の一端が縫い付けられている。
【0043】
このような濁水拡散防止シート15は、各取付金具17,17...を各斜杭7と交差する方向に架け渡された鉄筋19に連結させるとともに、固定用紐18の他端を押さえ部材10に結び付けることにより、水面の上下側に亘って展開され、且つ土留用板材3の表面部より斜め前方に傾けて張設されている。
【0044】
従って、この濁水拡散防止シート15は、波浪や潮位変動により圧力が作用したり漂流物が接触したりしても土留用板材3に対して直接接しないようになっており、シート15と土留用板材3とが接触することにより生じる破損を防止できるようになっている。
【0045】
このように土捨場区域の外周部に簡易式土留柵1を設置したことにより、図10に示すように、土捨場Aに投入された浮泥状の土砂Dが土留柵1に遮られて土捨場A内に堆積し、土捨場区域外への流出が防止される。また、濁水については濁水拡散防止シート15がフィルター的機能を発揮して濁水が土捨て場区域外に流出するのを防止している。
【0046】
一方、この簡易式土留柵1は、各土留用板材3,3...を軽量な棒状部材を組み合わせて形成された支持用構造体2に支持させたことにより、安価且つ短期で設置することができる一方、高い強度を有している。
次に、上述した簡易式土留柵1の設置方法について図11〜図17に示す実施例について説明する。
【0047】
まず、図11に示すように、縦杭4を水底地盤Bに対しその長さ方向を上下方向に向けて配置し、木槌等によりその上端を打撃する若しくは圧力をかけて圧入することにより所定の深さまで打込み、上端側を水底面より突出させた状態に立設させる。この作業を土捨場区域の外周に沿って所定の間隔を置いて行う。
【0048】
次に、間隔を置いて立設された縦杭4に上下方向に間隔を置いて横つなぎ材5を固定する。
【0049】
尚、各横つなぎ材5は、一本ずつ順に固定してもよいが、水中での作業を考慮して図13に示す如き横つなぎ材取付用治具20を使用して行ってもよい。
【0050】
この横つなぎ材取付用治具20は、棒状の鋼材をもって一体に形成され、棒状の本体部20a上端に横つなぎ材5に引掛けられる円弧状のフック部20bを備えるとともに、本体部20aよりフック部20bと同じ方向を向けて突出させた支持棒部20c、20c...とを備え、各支持棒部20cは、横つなぎ材5の設置間隔に合わせて間隔を置いて配置されている。
【0051】
この横つなぎ材取付用治具20を用いて横つなぎ材5を設置するには、一番上の横つなぎ材5を水平レベルを調整しながら連結部材により縦杭4に固定した後、その横つなぎ材5にフック部20bを引掛けて複数の横つなぎ材取付用治具20,20...を横つなぎ材5の長さ方向に間隔を置いて垂下させ、そして、潜水士が水中に潜り、横つなぎ材5を各治具の支持棒部20c上にセットする。
【0052】
このようにすることより上から2番目以降の各横つなぎ材5,5...は、水中での緻密な位置合わせ作業を行わずとも、水平且つ互いに平行に配置され、その状態で各横つなぎ材5,5...を縦杭4に固定することにより、縦杭4,4...に対し各横つなぎ材5,5...を上下方向に所定の間隔をおいて平行に固定することができる。
【0053】
以上の作業により水底上に露出した部分が格子状の骨組体本体6が形成される。
【0054】
次に、各土留用板材3を互いに隣り合う側縁を突き合わせた状態で下向きに所定の位置まで、即ち下側部が水底地盤B内に埋め込まれるとともに上縁が水面下に位置するように挿し込む。
【0055】
その位置でJ形に形成されたボルト等の固定具11により土留用板材3を横つなぎ材5に固定するとともに、押さえ部材10を土留用板材3の表面部にあてがい、フック状部材12,12を通してボルト13を土留用板材3に貫通させ且つナット14を締め込むことにより横つなぎ材5と押さえ部材10との間に土留用板材3を挟持する。
【0056】
そして、図15に示すように、筋交い8を構造体本体6の裏側に斜め方向に向けて掛け渡すとともに、その縦杭4と交差する部分を連結部材により縦杭4に固定して構造体本体6を補強する。
【0057】
次に、図16に示すように、斜杭7を水底地盤Bに対し斜め方向に向けて配置し、その状態でその上端を木槌等によりその上端を打撃する若しくは圧力をかけて圧入することにより地盤B内の所定の位置まで打ち込み、その位置で上端部を縦杭4の上端部に連結部材により固定する。
【0058】
各斜杭7の打設工程が終了したら、土捨場A側に向けた各斜杭7に斜杭7と交差する方向に鉄筋19を固定する。尚、この鉄筋19は、土留用板材3表面より水平方向土捨場A側に一定の距離を隔てた位置に固定する。
【0059】
そして、図17に示すように、濁水拡散防止シート15上縁部を固定用金具17により鉄筋19に連結させるとともに、潜水士が水中に潜り、固定紐18の一端を押さえ部材10に結び付けて濁水拡散防止シート15を土留用板材3の表面側に設置する。
【0060】
このようにすることにより濁水拡散防止シート15は、水面の上下側に亘って展開され、且つ土留用板材3の表面部より斜め前方に傾けて張設され、これにより設置作業が完了する。
【0061】
一方、このような簡易式土留柵は、上述した組立て作業を逆に行うことで容易に解体することも可能である。
【0062】
尚、上述の実施例では、設置現場において全ての組立て作業を行う例について説明したが、工場において構造体本体6の表面部に土留用板材3を固定して土留柵用ユニットを予め組み立てておき、設置現場においては複数の土留柵用ユニットを互いに隣り合う側縁部間を連結した状態に土捨場の外周に沿って立設させることにより土留柵を形成するようにしてもよい。
【0063】
各土留柵用ユニット30,30間の連結は、図18(a)に示すように、一方の土留め柵用ユニット30を構成する横つなぎ材5に棒状の管連結部材31の一方の端部31aを嵌め込んで他方の端部31bを突出させておき、その連結部材31の端部31bに他方の土留め柵ユニット30を構成する横つなぎ材5を嵌め込むことにより連結してもよく、また、図18(b)に示すように、連結する土留柵用ユニット30を構成する横つなぎ材5,5間に棒状部材32を架け渡し、各横つなぎ材5,5の端部にそれぞれ棒状部材32の端部をクランプ等の連結部材33により連結するようにしてもよい。
【0064】
また、上述の実施例では、土留用板材をその上縁が水面下に位置するように設置し、水位変動に対応させるようにした例について説明したが、土留用板材に表裏方向に貫通させた複数の通水孔を設けることにより水位変動に対応させるようにしてもよい。尚、その場合は、濁水拡散防止シートを通水孔に被さる配置に設置する。
【符号の説明】
【0065】
A 土捨場
B 水底地盤
C 排砂管
D 土砂
1 簡易式土留柵
2 支持用構造体
3 土留用板材
4 縦杭
5 横つなぎ材
6 構造体本体
7 斜杭
8 筋交い
9 根がらみ
10 押さえ部材
11 固定具
12 フック状部材
13 ボルト
14 ナット
15 濁水拡散防止シート
16 金属性プレート
17 取付金具
18 固定用紐
19 鉄筋
20 取付用治具
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土砂等の土砂処分場に設定された土捨場外に土砂及び濁水が流出するのを防止することができる簡易式土留柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ浚渫等により浚渫された土砂は、周囲の水とともに排砂管を通して土砂処分場にポンプ排送され、土砂処分場内に設けられた土捨場に吐出される。
【0003】
この吐出された浚渫土砂101は、水とともに流されながら吐出方向の手前側から沈降して土捨場Aの水底Bに堆積してゆき、設計上では図18中に示す如く表面が緩やかな勾配をなし、投入された土砂101は勾配の裾野部までで留まるようになっている。
【0004】
従って、このような土捨て場Aでは、土捨場として設定された区域(以下、土捨場区域という。)が今後拡張される計画がある等の事情がある場合に、現存の土捨場区域の外周部に仕切り用の堤を設けず、前記勾配裾野部の外側部に汚濁防止膜102,102(例えば、特許文献1を参照)を二重に張り巡らせて濁水の拡散のみを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−309564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した如き従来の技術では、排砂管より吐出された実際の土砂が図に示した設計上の勾配を形成せず、一部の土砂が浮泥土として沖側へ流されて土捨場区域より外側に流出するおそれがあり、一方、汚濁防止膜には土砂を遮蔽する機能はなく、土捨場区域の外側に土砂が流出するのを防止することができないという問題があった。また、汚濁防止膜に土砂が堆積してその重みにより汚濁防止膜が水面より下側に沈み込んでしまい、濁水の拡散を防止する機能が損なわれてしまうおそれがあった。
【0007】
一方、このような汚濁防止膜は、水中に浮遊した状態で設置されるので、台風や時化の際に波浪や水流の影響を受けて所定の設置位置から流されてしまうおそれがあった。
【0008】
また、このような汚濁防止膜は、高価であるため、長期間に渡って使用する場合、その賃料や管理費又は設置費用等が嵩み、特に二重構造で使用する場合にはその費用が倍となるので経済的に問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、土捨場の外に土砂及び濁水が流出するのを防止することができるとともに安価で且つ短期に施工可能な簡易式土留柵の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、土捨場に投入された土砂及び濁水が前記土捨場の外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵であって、前記土捨場の外周部に沿って水底地盤に立設される支持用構造体と、表面を前記土捨場側に向けて前記支持用構造体に支持される土留用板材と、該土留用板材の表面側に配置される濁水拡散防止シートとを備え、前記土留用板材の下側部を水底地盤内に埋め込むとともに、前記濁水拡散防止シートを水面の上下側に亘って展開させたことにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記支持用構造体は、水底地盤に間隔を置いて立設される複数の縦杭と、水平方向に向けた複数の横つなぎ材とを有し、前記複数の縦杭及び横つなぎ材を格子状に組み立てて構造体本体とするとともに、該構造体本体の上端部に一端を連結し、他端を前記水底地盤に斜め方向に向けて埋設させた斜杭を備え、前記縦杭、横つなぎ材及び斜杭は、棒状部材をもって構成され、該棒状部材間が連結部材により連結されるようにしたことにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の何れかの構成に加え、前記濁水拡散防止シートは、樹脂製繊維からなる不織布に樹脂製繊維からなる縦糸材及び横糸材を編み込んでなるシートであることにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の何れかの構成に加え、前記濁水拡散防止シートは、上縁を前記斜杭に支持させるとともに、下縁を前記土留用板材に支持させて前記土留用板材の表面より斜め前方に向けて張設させたことにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項2,3又は4の何れかの構成に加え、前記構造体本体の表面側に土留用板材を固定して土留柵用ユニットとなし、互いに隣り合う前記土留柵用ユニット側縁部間を連結して前記土捨場の外周に沿って立設させることにより形成されるようにしてなることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る簡易式土留柵は、上述したように、土捨場に投入された土砂及び濁水が前記土捨場の外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵であって、前記土捨場の外周部に沿って水底地盤に立設される支持用構造体と、表面を前記土捨場側に向けて前記支持用構造体に支持される土留用板材と、該土留用板材の表面側に配置される濁水拡散防止シートとを備え、前記土留用板材の下側部を水底地盤内に埋め込むとともに、前記濁水拡散防止シートを水面の上下側に亘って展開させたことにより、簡易な構造で土捨場区域より外側に土砂や濁水が流出するのを防止することができ、また、高価な汚濁防止膜等を使用せずともよいのでコストの低減を図ることができる。
【0016】
また本発明において、前記支持用構造体は、水底地盤に間隔を置いて立設される複数の縦杭と、水平方向に向けた複数の横つなぎ材とを有し、前記複数の縦杭及び横つなぎ材を格子状に組み立てて構造体本体とするとともに、該構造体本体の上端部に一端を連結し、他端を前記水底地盤に斜め方向に向けて埋設させた斜杭を備え、前記縦杭、横つなぎ材及び斜杭は、同様の棒状部材をもって構成され、該棒状部材間が連結部材により連結されるようにしたことにより、構造が簡素化され、人力によっても容易に組立て及び解体をすることができる。
【0017】
更に本発明において、前記濁水拡散防止シートは、樹脂製繊維からなる不織布に樹脂製繊維からなる縦糸材及び横糸材を編み込んでなるシートであることにより、濁水に対するフィルター的機能を発揮するとともに、高い耐候性、引張強度及び伸び率が得られ、波浪による圧力や漂流物の接触等に対して破損し難くなる。
【0018】
更にまた本発明において、前記濁水拡散防止シートは、上縁を前記斜杭に支持させるとともに、下縁を前記土留用板材に支持させて前記土留用板材の表面より斜め前方に向けて張設させたことにより、波浪による圧力や漂流物の接触等が生じても、濁水拡散防止シートが土留用板材に直接接触することがなく、接触による破損を防止できる。
【0019】
また、本発明において、前記構造体本体の表面側に土留用板材を固定して土留柵用ユニットとなし、互いに隣り合う前記土留柵用ユニット側縁部間を連結して前記土捨場の外周に沿って立設させることにより形成されるようにしたことにより、現場での工期を短縮することができ、作業効率の向上及び工費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る簡易式土留柵の使用状態の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1中の簡易式土留柵の一例を示す部分破断正面図である。
【図3】同上の縦断面図である。
【図4】同上の平面図である。
【図5】土留用板材の取付け状態を示す平面図である。
【図6】同上の正面図である。
【図7】同上の縦断面図である。
【図8】図2中の濁水拡散防止シートを示す正面図である。
【図9】(a)は同上の濁水拡散防止シートの上縁部を示す断面図、(b)は同濁水拡散防止シートの取り付け状態を示す断面図である。
【図10】本発明に係る簡易式土留柵を使用した際の土砂の堆積状況の一例を示す断面図である。
【図11】本発明に係る簡易式土留柵の設置方法の縦杭設置工程の概略を示す正面図である。
【図12】同上の横つなぎ材設置工程の概略を示す正面図である。
【図13】図12中の横つなぎ材取付用治具の使用状態を示す側面図である。
【図14】本発明に係る簡易式土留柵の設置方法の土留用板材設置工程の概略を示す正面図である。
【図15】同上の筋交い設置工程の概略を示す正面図である。
【図16】同上の斜杭設置工程の概略を示す縦断面図である。
【図17】同上の濁水拡散防止シート設置工程の概略を示す部分拡大側面図である。
【図18】(a)は土留柵用ユニット間の連結手段の一例を示す平面図、(b)は同他の一例を示す平面図である。
【図19】従来の土捨場区域における土砂の堆積状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る簡易式土留柵1の実施の態様を図1〜図10に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aは土砂処分場に設けられた土捨場、符合Bは軟弱粘性土からなる水底地盤である。
【0022】
この土捨場Aは、例えば、潮受堤防内側の土砂処分場に設けられ、遠浅な地形で潮位変動の影響も少ないものとなっている。
【0023】
また、この土捨場Aには、排砂管Cを通して浚渫土砂等の土砂が水と共にポンプ排送され、排砂管Cの吐出口より当該土砂が沖側に向けて水と共に吐出されるようになっている。
【0024】
簡易式土留柵1は、上述の如き土捨場Aとして設定された区域(以下、土捨場区域という。)の外周部に設けられ、土捨場A内に投入された土砂及び濁水が土捨場区域の外側に流出することを防止するようになっている。
【0025】
この簡易式土留柵1では、土捨場区域の外周に沿って水底地盤Bに立設された支持用構造体2に土留用板材3を支持させて土砂の土留めをなしている。
【0026】
支持用構造体2は、縦杭4及び横つなぎ材5をもって水底地盤B上に露出した部分が格子状に形成された構造体本体6と、構造体本体6を支持するための斜杭7とを備えている。
【0027】
また、構造体本体6の裏側には、同様の棒状部材からなる筋交い8が斜め方向に向けて掛け渡され、構造体本体6が補強されている。
【0028】
この縦杭4、横つなぎ材5、斜杭7及び筋交い8は、それぞれ長さの異なる同様の棒状部材により構成され、支持用構造体2は、棒状部材間を図示しないクランプ等の連結部材で連結することにより組立てることができるようになっている。
【0029】
尚、この棒状部材は、一般構造用鋼管等の軽量で且つ汎用性の高い部材を以て構成されており、また、溶融亜鉛メッキ等により防食加工を施されている。
【0030】
各縦杭4は、土捨場区域の外周に沿って間隔をおいて設置され、長さ方向を上下(垂直)方向に向けて下側部分を深く水底地盤Bに埋設させることにより、上部が水底地盤Bより上向きに突出した状態に立設されている。
【0031】
各横つなぎ材5は、各縦杭4,4...の表側、即ち土捨場側に上下に間隔をおいて平行に配置され、各縦杭4,4...に連結部材を介して固定されて縦杭4,4...とともに格子状を成している。
【0032】
各斜杭7は、各縦杭4,4...の両側にそれぞれ前後方向に向けて配置され、各斜杭7の上端部が連結部材を介して縦杭4の上端に固定され、他端側がその長さ方向を斜めに向けて水底地盤B内に埋設されている。
【0033】
各斜杭7,7...の水底地盤B内に埋設された部分には、斜杭7と交差する配置に根がらみ9が固定されており、斜杭7の位置が水底地盤B内に安定した状態で維持されるようになっている。
【0034】
土留用板材3は、断面が波形状に形成された波板をもって構成され、表面を土捨場A側に向けるとともに波形状断面を上下方向に向け、下側部を水底地盤Bに埋設させている。このように下側部を地盤内に埋設させたことにより、波浪による洗掘の影響を防止し、土砂が好適に土留めされるようにしている。
【0035】
また、この土留用板材3は、下側部を所定の深さまで埋設させた際に上縁が水面下に位置するように形成され、土留用板材3により水底に堆積する土砂を土捨場区域外に流出させないようにする一方、土捨場区域の内外側の水の流れを阻害しないようになっている。
【0036】
この土留用板材3は、図5〜図7に示すように、横つなぎ材5と棒状部材からなる押さえ部材10との間に挟持されるとともに、J形に形成されたボルト等の固定具11により横つなぎ材5に固定させたことにより支持用構造体2に支持されている。
【0037】
横つなぎ材5及び押さえ部材10には、それぞれフック状部材12が係合され、土留用板材3を貫通させて両フック状部材12間にボルト13を通しナット14を締めつけることにより横つなぎ材5と押さえ部材10とが互いに近づく方向に移動し、両部材5,10間に配置された土留用板材3を挟持するようになっている。
【0038】
また、この土留用板材3の表面側には、濁水拡散防止シート15が水面の上下側に亘って展開され、濁水が土捨場区域外に流出するのを防止している。
【0039】
濁水拡散防止シート15は、ポリエステル糸等の樹脂製繊維からなる不織布に、高強力ポリエステル糸等の樹脂製の経糸及び横糸を編込んで補強したシートをもって構成され、高い耐候性、引張強度及び伸び率を有し、且つ濁水に対してフィルター的機能を発揮するようになっている。
【0040】
この濁水拡散防止シート15は、図8に示すように、外縁部を布状材で覆うことにより補強されてほつれ難くなっている。また、濁水拡散防止シート15の上縁部は、図9(a)に示すように、細長帯状の金属製プレート16,16に挟まれて補強がなされ、そこに図9(b)に示すように、水平方向に間隔を置いて複数のシャックル等の取付金具17が固定されている。
【0041】
この取付金具17は、鉄筋19等に係合されるC字状の引掛け部17aと、C字状の開口縁に支持された互いに対向する一対の挟持片17b、17bとを備えており、シート15の上縁部及び金属製プレート16,16を両挟持片17b、17b間に挟み込み、シート15、金属製プレート16,16及び挟持片17b,17bに形成された貫通孔にピン17cを貫通させることによりシート上縁部に固定させている。
【0042】
一方、この濁水拡散防止シート15の下縁部には、横方向に間隔を置いて固定用紐18の一端が縫い付けられている。
【0043】
このような濁水拡散防止シート15は、各取付金具17,17...を各斜杭7と交差する方向に架け渡された鉄筋19に連結させるとともに、固定用紐18の他端を押さえ部材10に結び付けることにより、水面の上下側に亘って展開され、且つ土留用板材3の表面部より斜め前方に傾けて張設されている。
【0044】
従って、この濁水拡散防止シート15は、波浪や潮位変動により圧力が作用したり漂流物が接触したりしても土留用板材3に対して直接接しないようになっており、シート15と土留用板材3とが接触することにより生じる破損を防止できるようになっている。
【0045】
このように土捨場区域の外周部に簡易式土留柵1を設置したことにより、図10に示すように、土捨場Aに投入された浮泥状の土砂Dが土留柵1に遮られて土捨場A内に堆積し、土捨場区域外への流出が防止される。また、濁水については濁水拡散防止シート15がフィルター的機能を発揮して濁水が土捨て場区域外に流出するのを防止している。
【0046】
一方、この簡易式土留柵1は、各土留用板材3,3...を軽量な棒状部材を組み合わせて形成された支持用構造体2に支持させたことにより、安価且つ短期で設置することができる一方、高い強度を有している。
次に、上述した簡易式土留柵1の設置方法について図11〜図17に示す実施例について説明する。
【0047】
まず、図11に示すように、縦杭4を水底地盤Bに対しその長さ方向を上下方向に向けて配置し、木槌等によりその上端を打撃する若しくは圧力をかけて圧入することにより所定の深さまで打込み、上端側を水底面より突出させた状態に立設させる。この作業を土捨場区域の外周に沿って所定の間隔を置いて行う。
【0048】
次に、間隔を置いて立設された縦杭4に上下方向に間隔を置いて横つなぎ材5を固定する。
【0049】
尚、各横つなぎ材5は、一本ずつ順に固定してもよいが、水中での作業を考慮して図13に示す如き横つなぎ材取付用治具20を使用して行ってもよい。
【0050】
この横つなぎ材取付用治具20は、棒状の鋼材をもって一体に形成され、棒状の本体部20a上端に横つなぎ材5に引掛けられる円弧状のフック部20bを備えるとともに、本体部20aよりフック部20bと同じ方向を向けて突出させた支持棒部20c、20c...とを備え、各支持棒部20cは、横つなぎ材5の設置間隔に合わせて間隔を置いて配置されている。
【0051】
この横つなぎ材取付用治具20を用いて横つなぎ材5を設置するには、一番上の横つなぎ材5を水平レベルを調整しながら連結部材により縦杭4に固定した後、その横つなぎ材5にフック部20bを引掛けて複数の横つなぎ材取付用治具20,20...を横つなぎ材5の長さ方向に間隔を置いて垂下させ、そして、潜水士が水中に潜り、横つなぎ材5を各治具の支持棒部20c上にセットする。
【0052】
このようにすることより上から2番目以降の各横つなぎ材5,5...は、水中での緻密な位置合わせ作業を行わずとも、水平且つ互いに平行に配置され、その状態で各横つなぎ材5,5...を縦杭4に固定することにより、縦杭4,4...に対し各横つなぎ材5,5...を上下方向に所定の間隔をおいて平行に固定することができる。
【0053】
以上の作業により水底上に露出した部分が格子状の骨組体本体6が形成される。
【0054】
次に、各土留用板材3を互いに隣り合う側縁を突き合わせた状態で下向きに所定の位置まで、即ち下側部が水底地盤B内に埋め込まれるとともに上縁が水面下に位置するように挿し込む。
【0055】
その位置でJ形に形成されたボルト等の固定具11により土留用板材3を横つなぎ材5に固定するとともに、押さえ部材10を土留用板材3の表面部にあてがい、フック状部材12,12を通してボルト13を土留用板材3に貫通させ且つナット14を締め込むことにより横つなぎ材5と押さえ部材10との間に土留用板材3を挟持する。
【0056】
そして、図15に示すように、筋交い8を構造体本体6の裏側に斜め方向に向けて掛け渡すとともに、その縦杭4と交差する部分を連結部材により縦杭4に固定して構造体本体6を補強する。
【0057】
次に、図16に示すように、斜杭7を水底地盤Bに対し斜め方向に向けて配置し、その状態でその上端を木槌等によりその上端を打撃する若しくは圧力をかけて圧入することにより地盤B内の所定の位置まで打ち込み、その位置で上端部を縦杭4の上端部に連結部材により固定する。
【0058】
各斜杭7の打設工程が終了したら、土捨場A側に向けた各斜杭7に斜杭7と交差する方向に鉄筋19を固定する。尚、この鉄筋19は、土留用板材3表面より水平方向土捨場A側に一定の距離を隔てた位置に固定する。
【0059】
そして、図17に示すように、濁水拡散防止シート15上縁部を固定用金具17により鉄筋19に連結させるとともに、潜水士が水中に潜り、固定紐18の一端を押さえ部材10に結び付けて濁水拡散防止シート15を土留用板材3の表面側に設置する。
【0060】
このようにすることにより濁水拡散防止シート15は、水面の上下側に亘って展開され、且つ土留用板材3の表面部より斜め前方に傾けて張設され、これにより設置作業が完了する。
【0061】
一方、このような簡易式土留柵は、上述した組立て作業を逆に行うことで容易に解体することも可能である。
【0062】
尚、上述の実施例では、設置現場において全ての組立て作業を行う例について説明したが、工場において構造体本体6の表面部に土留用板材3を固定して土留柵用ユニットを予め組み立てておき、設置現場においては複数の土留柵用ユニットを互いに隣り合う側縁部間を連結した状態に土捨場の外周に沿って立設させることにより土留柵を形成するようにしてもよい。
【0063】
各土留柵用ユニット30,30間の連結は、図18(a)に示すように、一方の土留め柵用ユニット30を構成する横つなぎ材5に棒状の管連結部材31の一方の端部31aを嵌め込んで他方の端部31bを突出させておき、その連結部材31の端部31bに他方の土留め柵ユニット30を構成する横つなぎ材5を嵌め込むことにより連結してもよく、また、図18(b)に示すように、連結する土留柵用ユニット30を構成する横つなぎ材5,5間に棒状部材32を架け渡し、各横つなぎ材5,5の端部にそれぞれ棒状部材32の端部をクランプ等の連結部材33により連結するようにしてもよい。
【0064】
また、上述の実施例では、土留用板材をその上縁が水面下に位置するように設置し、水位変動に対応させるようにした例について説明したが、土留用板材に表裏方向に貫通させた複数の通水孔を設けることにより水位変動に対応させるようにしてもよい。尚、その場合は、濁水拡散防止シートを通水孔に被さる配置に設置する。
【符号の説明】
【0065】
A 土捨場
B 水底地盤
C 排砂管
D 土砂
1 簡易式土留柵
2 支持用構造体
3 土留用板材
4 縦杭
5 横つなぎ材
6 構造体本体
7 斜杭
8 筋交い
9 根がらみ
10 押さえ部材
11 固定具
12 フック状部材
13 ボルト
14 ナット
15 濁水拡散防止シート
16 金属性プレート
17 取付金具
18 固定用紐
19 鉄筋
20 取付用治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土捨場に投入された土砂及び濁水が前記土捨場の外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵であって、
前記土捨場の外周部に沿って水底地盤に立設される支持用構造体と、表面を前記土捨場側に向けて前記支持用構造体に支持される土留用板材と、該土留用板材の表面側に配置される濁水拡散防止シートとを備え、
前記土留用板材の下側部を水底地盤内に埋め込むとともに、前記濁水拡散防止シートを水面の上下側に亘って展開させたことを特徴としてなる簡易式土留柵。
【請求項2】
前記支持用構造体は、水底地盤に間隔を置いて立設される複数の縦杭と、水平方向に向けた複数の横つなぎ材とを有し、前記複数の縦杭及び横つなぎ材を格子状に組み立てて構造体本体とするとともに、該構造体本体の上端部に一端を連結し、他端を前記水底地盤に斜め方向に向けて埋設させた斜杭を備え、
前記縦杭、横つなぎ材及び斜杭は、同様の棒状部材をもって構成され、該棒状部材間が連結部材により連結されるようにしてなる請求項1に記載の簡易式土留柵。
【請求項3】
前記濁水拡散防止シートは、樹脂製繊維からなる不織布に樹脂製繊維からなる縦糸材及び横糸材を編み込んでなるシートである請求項1又は2に記載の簡易式土留柵。
【請求項4】
前記濁水拡散防止シートは、上縁を前記斜杭に支持させるとともに、下縁を前記土留用板材に支持させて前記土留用板材の表面側から斜め前方に向けて張設させた請求項2又は3に記載の簡易式土留柵。
【請求項5】
前記構造体本体の表面側に土留用板材を固定して土留柵用ユニットとなし、互いに隣り合う前記土留柵用ユニット側縁部間を連結して前記土捨場の外周に沿って立設させることにより形成されるようにしてなる請求項2,3又は4に記載の簡易式土留柵。
【請求項1】
土捨場に投入された土砂及び濁水が前記土捨場の外側に流出するのを防止するために水底に設置する簡易式土留柵であって、
前記土捨場の外周部に沿って水底地盤に立設される支持用構造体と、表面を前記土捨場側に向けて前記支持用構造体に支持される土留用板材と、該土留用板材の表面側に配置される濁水拡散防止シートとを備え、
前記土留用板材の下側部を水底地盤内に埋め込むとともに、前記濁水拡散防止シートを水面の上下側に亘って展開させたことを特徴としてなる簡易式土留柵。
【請求項2】
前記支持用構造体は、水底地盤に間隔を置いて立設される複数の縦杭と、水平方向に向けた複数の横つなぎ材とを有し、前記複数の縦杭及び横つなぎ材を格子状に組み立てて構造体本体とするとともに、該構造体本体の上端部に一端を連結し、他端を前記水底地盤に斜め方向に向けて埋設させた斜杭を備え、
前記縦杭、横つなぎ材及び斜杭は、同様の棒状部材をもって構成され、該棒状部材間が連結部材により連結されるようにしてなる請求項1に記載の簡易式土留柵。
【請求項3】
前記濁水拡散防止シートは、樹脂製繊維からなる不織布に樹脂製繊維からなる縦糸材及び横糸材を編み込んでなるシートである請求項1又は2に記載の簡易式土留柵。
【請求項4】
前記濁水拡散防止シートは、上縁を前記斜杭に支持させるとともに、下縁を前記土留用板材に支持させて前記土留用板材の表面側から斜め前方に向けて張設させた請求項2又は3に記載の簡易式土留柵。
【請求項5】
前記構造体本体の表面側に土留用板材を固定して土留柵用ユニットとなし、互いに隣り合う前記土留柵用ユニット側縁部間を連結して前記土捨場の外周に沿って立設させることにより形成されるようにしてなる請求項2,3又は4に記載の簡易式土留柵。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−180670(P2012−180670A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43778(P2011−43778)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
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