説明

簡易通信システム

【目的】トンネルなどの工事現場においては、先ず掘削機などの動力源用および作業現場照明用のための電力線を敷設してから工事を開始することから、この動力・照明用の電力線を通信ケーブルとしても利用し、もって別途の通信専用のケーブルの敷設を必要としない坑内用の簡易通信システムを提供する。
【構成】電力線1にクランプ3などの電流取り出し装置および特定の通信周波数のみを抽出するフィルター7を介して通信機5を相互に接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、簡易通信システムに関し、特にトンネルなどの工事現場における簡易通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】通信方式としては、有線方式および無線方式等があるが、トンネル等の隔絶された空間領域内における通信方式として無線を用いると、電波がトンネルの壁面によって反射され、受信場所まで電波が届かなかったり、あるいは電波が相互に干渉するなどして、現実的に通信が不可能である。このため、トンネル等における通信方式としては、従来から有線方式の通信が主に行なわれてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、有線方式の通信においては、別途、通信ケーブルの敷設が必要となるという課題を有しているし、また、使用場所が限定さてしまうという課題を有している。
【0004】本発明は、トンネルなどの工事現場においては、先ず掘削機などの動力源用および作業現場照明用のための電力線を敷設してから工事を開始することから、この動力・照明用の電力線を通信ケーブルとしても利用し、もって別途の通信専用のケーブルの敷設を必要としない簡易通信システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、電力線に電流取り出し装置および特定の通信周波数のみを抽出するフィルターを介して送受話器を接続することを特徴とする。
【0006】具体的には、動力・照明用の電力線に電流取り出し装置および電源周波数(50または60Hz)を除去する周波数除去フィルターを介して通信周波数のみを抽出して送受話器を接続することを特徴とする。
【0007】また、本考案は上記電力線への接続がクランプを介して行なわれることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】上記構成の本発明によれば、動力・照明用の電力線を通信線として利用して、電源周波数のみを除去して通信周波数のみを抽出するので、通信専用のケーブルを敷設する必要がなくなる。
【0009】また、電力線への接続をクランプを介して行なうようにすれば、任意の場所に送受話器を接続できる。
【0010】
【実施例】次に、本考案の実施例について添付の図面を参照して説明する。添付の図面は本発明の一実施例を示すもので、トンネルTなどの坑内工事においては、電力を動力源とする各種の機器を搬入するとともに、かつ、照明機器も装備するものである。したがって、これらの機器を作動させるためには、まず、動力・照明用の電力線1を変電設備DよりトンネルTの坑内に敷設しておく。
【0011】本発明においては、この電力線1の任意の場所に、クランプ3を介してインターホン(電話機)やファクシミリ等の通信機器5を接続し、これらの通信機器相互間の通信を可能とする。このようにクランプ3を用いて電流を取り出すこととすれば、通信機器5の設置場所の自由度が極めて高く、工事の進行によって通信機器5の設置場所を自由にすることが可能となる。
【0012】ところで、この種の電力線には50または60Hzの電源周波数の商用電流が流れている。また、通信は非常に高い周波数を用いて行なわれる。したがって、クランプ3と通信機器5との間には、フィルター7を設け、このフィルター7でもって電源周波数たる50または60Hzの周波数を除去し、通信帯域の周波数のみを通すように構成する。
【0013】ここで用いられる通信機器5として例えば搬送式インターホンを例にとって説明すると、搬送式インターホンの場合には、通常のインターホンと異なり、音声信号を直接送りだすことができないため、一旦、所定の周波数に変調した後、電力線1に重畳して搬送波を送りだすものとなる。ところで、ここで使用される搬送周波数は電波法によって10kHz〜450kHzに限られているため、混信ならびに雑音を避けるため、例えば3チャンネルの内、混信、雑音を受けにくいチャンネルを選ぶものとなる。どちらも同じチャンネルを選ぶことで相互呼出通話をすることができる。ここで、搬送波の変調方式として、振幅変調(AM)方式と周波数変調(FM)方式などがあり、変調された搬送波を相手側が復調して音声信号を再生させるものである。
【0014】なお、上記実施例においてはクランプ3を介して電流を取り出すこととしたが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、電力線にコンセントを設けて接続する方式としてもよい。この場合においては、通信機機器5の設置場所にはある程度の制限を課すことになるが、このコンセントの設置作業は簡易であるので、さほどの設置場所の制限になることもない。
【0015】
【発明の効果】上記したように、本発明によれば、坑内に敷設されている電力線を用いて通信機器を相互に接続して送受話を可能とするので、別途通信用のケーブルを敷設する必要がなく、通信設備費を安価にすることができる。しかも、本発明によれば、通信機器の移設が容易であり、工事の進行に伴う通信機器の移設を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す簡易通信システムの正面図である。
【符号の説明】
1 電力線
3 クランプ
5 通信機器
7 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電力線に電流取り出し装置および特定の通信周波数のみを抽出するフィルターを介して通信機を相互に接続することを特徴とする簡易通信システム。
【請求項2】 上記通信機器が搬送式インターホンであることを特徴とする簡易通信システム。

【図1】
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【公開番号】特開平7−58675
【公開日】平成7年(1995)3月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−226425
【出願日】平成5年(1993)8月19日
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)