説明

米菓の製造方法

【課題】独特の表面の固さと中の柔らかい食感があり且つ植物性たんぱく質とアミノ酸の独特の香ばしい風味を感じる米菓の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】米もしくは米粉に加水し、この加水した米もしくは米粉を混合、蒸練して餅生地をつくり、これを成型し、乾燥を行い、生地を焼成もしくは油で揚げた後、味付けをする米菓の製造方法において、前記加水に使用する水分として豆乳もしくは豆乳と水の混合液を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おかき等に代表されるもち米を原料とした米菓の製造方法に関し、特に豆乳を主原料とした米菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おかき等に代表される米菓は、米粉と水を混合し、蒸練して生地を作り、これを成型、乾燥、焙焼し、最後にその米菓の表面に、醤油や食塩等から構成される調味液を施すことにより製造される。
【0003】
ところで、従来から消費者の間で流通している米菓は、表面も内側も固い食感であるか、又は表面も内側もやわらかい食感であった。このため、固い食感が苦手な消費者に敬遠され、またやわらかい食感では消費者に物足なさを与えがちであった。
また、米菓の味は、最終段階で施される醤油や塩等の調味液により支配され、米の風味がかかる調味液により消されてしまい、単純な味しか作り出すことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、独特の表皮の固さと中の柔らかい食感があり、且つ植物性たんぱく質とアミノ酸の独特の香ばしい風味を消費者に感じさせることが可能な米菓の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る米菓の製造方法は、上述した課題を解決するために、もち米、又はもち米から製粉したもち米粉に対して加水し、この加水したもち米又はもち米粉を混合し、さらに蒸練して餅生地をつくり、この餅生地を成型、乾燥させ、この乾燥させた餅生地を焼成もしくは油で揚げた後、味付けをする米菓の製造方法において、上記もち米又はもち米粉に対して加水する際には、豆乳と水の割合が80:20乃至100:0である混合液を加水する。
【0006】
本発明に係る米菓の製造方法は、もち米、又はもち米から製粉したもち米粉に対して加水し、この加水したもち米又はもち米粉を混合し、さらに蒸練して餅生地をつくり、この餅生地を成型、乾燥させ、この乾燥させた餅生地を焼成もしくは油で揚げた後、味付けをする米菓の製造方法において、上記蒸練中もしくは上記蒸練後に豆乳もしくは豆乳を主原料とする粉末を添加する。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0008】
(食感)表面が固く且つ内側が極めて柔らかい2重食感の米菓が得られる。これにより、独特の表皮の固さと中の柔らかい食感があり且つ植物性たんぱく質とアミノ酸の独特の香ばしい風味を感じる米菓を実現するものである。
【0009】
(風味)大豆に含まれる植物性タンパク質とアミノ酸類による独特の、こくの有る香ばしい風味が得られる。
【0010】
(外観)焼いた場合、独特のひび割れを持つ特徴的な表面模様形態が得られる。また、揚げた場合、通常形状を維持しにくく、安定した形状の米菓がつくれないが、生地の表面の豆乳が殻のように固まり、安定した形状に仕上がる。
【0011】
(栄養)豆乳によりイソフラボンの含有(2mg/1枚)が高いという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態として、おかき等に代表される米菓の製造方法について説明する。
【0013】
先ず、ステップS11において、もち米、又はもち米から製粉したもち米粉に対して混合液を加水する。この混合液の成分は、豆乳と水の割合が80:20乃至100:0である。ちなみに、豆乳が100%であり、水の割合が0%の場合においてもあえて混合液と定義する。このステップS11において、もち米又はもち米粉と、混合液との重量割合は、2:1乃至1.7:1とする。
【0014】
次にステップS12へ移行し、混合液が加えられたもち米又はもち米粉を蒸練する。この蒸練においては、混合液を捨てることなく、110℃、10分間程度蒸しながら練り上げ、餅生地を形成する。
【0015】
次にステップS13へ移行し、餅生地を冷却しながら練り出し、形態形成に適した容器に入れ、48時間〜72時間に亘り冷却する。その後、この冷却した餅生地を所定の形態へと切断する。ちなみに、この餅生地を冷却する際には、冷蔵庫内において3℃前後の温度で冷却することとし、また餅生地を切断する際には、切断機により好みの形状へ切り出すこととする。この菓子形態形成工程を終了させた後、ステップS14へと移行する。
【0016】
ステップS14では、形態が形作られた餅生地を2時間程度乾燥させ、その後12〜24時間程度ねかせる。このステップS14における乾燥工程時においては、内部の温度を43℃程度に設定した乾燥機内に餅生地を載置させる。このとき乾燥機内の風量を適度に調整するようにしてもよい。これら温度や風量は、季節や生地の状態に応じてその都度調整するようにしてもよい。また、このステップS14におけるねかせ工程時においては、内部の温度を22℃程度に設定された空調庫内に餅生地を載置させる。
【0017】
ちなみに、このステップS14において、上述した乾燥工程とねかせ工程とを2回以上に亘り繰り返して実行するようにしてもよい。仮にこの乾燥工程とねかせ工程を2回にわたり繰り返す場合には、1回目の乾燥工程終了時に、餅生地の水分が35〜37%程度となるように調整し、2回目の乾燥工程終了時において、餅生地の水分が23〜25%程度となるように調整するようにしてもよい。
【0018】
ちなみに、本発明を適用した米菓は、焼成前の餅生地が豆乳成分を含むため、ステップS14におけるねかせの工程において、通常の餅生地に比べて劣化しやすく、またカビが発生しやすくなる。このため、特に2回目の乾燥後において、生地の含水率が25%以下である状態でねかせ、保存することが望ましい、また、餅生地に豆乳の大豆成分が含まれ、通常の生地に比べもろく焼きあがるため、含水率が23%を下回ると、安定した形状に焼成できず、乾燥後の含水率は23%以上であることが望ましい。
【0019】
次にステップS15へと移行し、餅生地を焼成する。このステップS15においては、焼成を運行焼き窯で餅生地を焼き上げることにより、素焼きを生成する。ちなみに、焼成終了時において、素焼きの水分率は、3%以下となるようにする。
【0020】
なお、このステップS15において、餅生地を焼成する代わりに、これを油で揚げるようにしてもよい。
【0021】
次にステップS16へ移行し、焼成終了後の素焼きに対して、熱いうちに、例えば食塩、醤油、砂糖等で味付けされた調味液をかける。その後、検査、包装、箱詰め等の工程を経て出荷されることになる。
【0022】
このような工程を経て製造される米菓は、おかき等として消費者により賞味されることになる。この米菓は、ステップS11において豆乳を含む混合液が加水されている。このため、表面が固く且つ内側が極めて柔らかいいわゆる二重食感の米菓が得られる。これにより、独特の表皮の固さと中の柔らかい食感があり且つ植物性たんぱく質とアミノ酸の独特の香ばしい風味を感じる米菓を消費者に対して提供することが可能となる。
【0023】
また、この米菓は、豆乳を含む混合液で加水されているため、大豆に含まれる植物性タンパク質とアミノ酸類による独特の、こくの有る香ばしい風味が得られる。
【0024】
また、この米菓は、ステップS11において豆乳を含む混合液が加水されているため、ステップS15における焼成を経ることにより、独自のひび割れを持つ特徴的な表面模様形態を得ることができる。また、このステップS15において、焼成の代替として、餅生地を油で揚げる場合に、ステップS13において切り出した形状を維持し、安定した形状の米菓が作り出すことが可能となる。これは、豆乳が餅生地のつなぎの役割を果たすためである。
【0025】
さらに、この米菓は、豆乳が混入していることにより、イソフラボンの含有量を高くすることができ、栄養面においても利点がある。
【0026】
これらの効果を確認するために、以下に説明する調査を行った。上述した製造方法に基づいて作られた本発明を適用した米菓のサンプルAと、豆乳と水の割合が0:100の水でもち米粉を加水し、以後、ステップS12〜ステップS16と同様の過程を経て製造した、比較例としての米菓のサンプルBを、20代から60代の30名のパネラーが試食し、味覚、視覚、食感の違いに関して評価した。
【0027】
その結果、30名中28名が本発明に係る米菓のサンプルAの方が、比較例としてのサンプルBと比較して、あと味に旨味を感じる、生地に奥深い味わいを感じるなど、味覚面において優位であると評価した。
【0028】
また、視覚に関して30名中30名が、本発明に係る米菓のサンプルAは、比較例としてのサンプルBと比較して、表面の光沢、質感がまったく異なると評価した。
【0029】
さらに、食感に関して、30名中30名が、サンプルAの方が、サンプルBと比較して、歯ざわりがしっかりしている、表面がかりっとしている、生地の中はふっくらしていると評価し、さらにサンプルBを食べたときの餅のような残留感がサンプルAには無く、食べ心地が良い、口どけが良いなどの評価を得た。
【0030】
なお、本発明を適用した米菓の製造方法は、上述したプロセスに限定されるものではない。例えば、ステップS11において、もち米、又はもち米から製粉したもち米粉に対して上述した混合液ではなく、水を加水し、ステップS12において蒸練時に豆乳若しくは豆乳を主原料とする粉末を餅生地に加えるようにしてもよい。即ち、このプロセスでは、ステップS11において加えるべき豆乳を、ステップS12における蒸練時に加えるものである。このプロセスによっても、上述と同様の食感や外観を得ることが可能となる。
【0031】
また、本発明を適用した米菓の製造方法では、低温抽出法によって抽出された豆乳を混合させた上記混合液をステップS11において加水するようにしてもよい。これにより豆の臭さを抑えることが可能となる。
【0032】
また、本発明を適用した米菓の製造方法では、ステップS11において、固形分が11〜14%である豆乳を混合させた混合液を加水するようにしてもよい。
【0033】
豆乳が含まれた本発明に係る米菓の特徴としては、もち米のみで形成される生地に比べ、生地中につなぎとして豆乳成分を含むため、もち米特有の粘りが抑制され、口どけの良い食感を消費者に与えることができる。加えるべき豆乳の最適なバランスとしては、もち米に対して豆乳成分つまり大豆成分(豆乳中の大豆固形分×混合液中の豆乳割合)が約6.5%である。このため、使用する豆乳の固形分が12%程度であり、加水に使用する混合液中の豆乳と水の割合が100:0である場合には、もち米に対する豆乳の割合が約55%であることが望ましいといえる(∵0.12×0.55≒0.065)。
【0034】
もち米に加水する混合液の豆乳の割合が低い場合や、豆乳の大豆固形分が低い場合は、もち米に対する大豆成分量が不足して、豆乳おかき本来の口どけの良い食感が得られない。仮に大豆固形分の高い豆乳を使用し、もち米に加水する混合液の豆乳の割合を低くした場合、もち米に対する大豆成分量は十分であっても、高い大豆固形分の豆乳を精製する際に生じる豆臭が風味上好ましくなく、大豆固形分が14%を越えると、豆乳の粘度が著しく高くなり、工業的に取扱いが難しく、ふさわしくない。また、12%の豆乳であっても、調整して固形分を高めた調整豆乳の場合、実質の大豆固形分は同じであっても成分調整の際、水分と一緒に大豆本来の旨味が損なわれるため、固形分11%以上14%の成分無調整の豆乳を用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は米菓を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した米菓の製造方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
もち米、又はもち米から製粉したもち米粉に対して加水し、この加水したもち米又はもち米粉を混合し、さらに蒸練して餅生地をつくり、この餅生地を成型、乾燥させ、この乾燥させた餅生地を焼成もしくは油で揚げた後、味付けをする米菓の製造方法において、
上記もち米又はもち米粉に対して加水する際には、豆乳と水の割合が80:20乃至100:0である混合液を加水すること
を特徴とする米菓の製造方法。
【請求項2】
上記加水を行う際において、上記もち米又はもち米粉と上記混合液との重量割合は、2:1乃至1.7:1であること
を特徴とする請求項1記載の米菓の製造方法。
【請求項3】
上記乾燥後において、焼成を行う場合の餅生地の含水率は23%乃至25%であり、上記乾燥後、油で揚げる場合の餅生地の含水率は、20%乃至22%であること
を特徴とする請求項1又は2記載の米菓の製造方法。
【請求項4】
固形分が11〜14%である豆乳を混合させた上記混合液を加水すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の米菓の製造方法。
【請求項5】
低温抽出法によって抽出された豆乳を混合させた上記混合液を加水すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の米菓の製造方法。
【請求項6】
もち米、又はもち米から製粉したもち米粉に対して加水し、この加水したもち米又はもち米粉を混合し、さらに蒸練して餅生地をつくり、この餅生地を成型、乾燥させ、この乾燥させた餅生地を焼成もしくは油で揚げた後、味付けをする米菓の製造方法において、
上記蒸練中もしくは上記蒸練後に豆乳もしくは豆乳を主原料とする粉末を添加すること
を特徴とする米菓の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−345734(P2006−345734A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173778(P2005−173778)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(398053170)株式会社グレープストーン (5)
【出願人】(000142562)株式会社栗山米菓 (3)
【Fターム(参考)】