説明

米飯改質剤及び米飯食品の製造方法

【課題】米飯食品の製造直後の品質(食味と物性)を向上し、かつ炊飯器内での長期間の保温による食感変化を抑制する機能を有する米飯改質剤、及び、品質の向上された米飯食品の製造方法を提供する。
【解決手段】α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを用いる米飯改質用の酵素製剤及び米飯食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α化した澱粉を常温や低温で放置すると、水分を分離し硬くなる。この現象を老化とい
い、澱粉の老化現象については数多く研究されている。一般に老化の防止のためには温度を80℃以上に保っておくか、急速に乾燥させて水分を15%以下にする、pH13以上のアルカリ性に保つことが必要である。また、老化を防止する方法として澱粉含有食品に糖類(ブドウ糖、果糖、液糖等)や大豆タンパク、小麦グルテン、脂肪酸エステル、多糖類(山芋、こんにゃく等)を添加する方法が一般に知られており、特許文献1には増粘剤、界面活性剤等を添加する方法が記載されている。しかし、これらの方法では食味が大きく変化し、また効果も不安定で十分な解決法とはなっていない。
【0003】
また、老化防止の手段として酵素を添加する方法も知られている。例えば、特許文献2には、精白米にアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素と、食塩及びサイクロデキストリンを混合して炊飯する米飯の改良方法が記載されている。特許文献3には、炊飯後の米飯に糖化型アミラーゼ(β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ)の水溶液を噴霧添加する米飯の老化防止方法が記載されている。しかしながら、米に各種の酵素剤を添加して米飯の品質改良を試みているが、いずれも目ざましい効果は得られていないのが現状である。
【0004】
特許文献4によれば澱粉含有食品の物性改良剤として、α−グルコシダーゼであるトランスグルコシダーゼを炊飯時に米に添加することによって、やわらかく、粘りがあり、かつ経時劣化しにくい炊飯米を得ることができる。一定の効果が見られるものの、米粒同士のほぐれ性の悪化や、炊飯後の米飯の軟化に課題があった。また、特許文献5によれば澱粉含有食品の物性改良剤としてトランスグルコシダーゼとトランスグルタミナーゼを用いることで炊飯直後の食感を向上させ、かつ澱粉の劣化を防止することができる。しかしながら、5時間ほどの長期間、米飯を炊飯器内で保温した場合、水分蒸発により米飯表面の粘りが消失し食味、食感、色調が著しく低下してしまうという課題を解決するには至っていない。
【0005】
特許文献6には、米飯本来のつや、粘りを維持向上させ、食味、食感、風味を改善する方法として、澱粉を含む原料を粒状に加工して得られた米飯改質剤を用いる方法が開示されており、モチ種澱粉、馬鈴薯澱粉等のアミロース含量20%以下の澱粉は食味、風味を向上させる機能を有することが開示されているが、米飯を炊飯器内で長期間保温した場合、水分蒸発により米飯表面の澱粉が硬くなることで、米飯内部との食感差の増大や色調の黄化を促進し、食味、食感、色調が著しく低下してしまうという課題を解決するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-2664号公報
【特許文献2】特開昭58-86050号公報
【特許文献3】特開昭60-199355号公報
【特許文献4】WO2005/096839
【特許文献5】特開2009-22267 号公報
【特許文献6】特開2008-92945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、米飯食品の製造直後の品質(食味と物性)を向上し、かつ炊飯器内での長期間の保温による米飯食品の食味、食感、色調の変化を抑制する機能を有する米飯改質剤を提供すること、品質の向上された米飯食品の製造方法を提供する目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを用いることにより上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
(1)α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを含有する米飯改質剤。
(2)α−グルコシダーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを含有する米飯改質剤であって、α−グルコシダーゼの含有量が、該改質剤中の澱粉1gあたり、100〜50000Uである米飯改質剤。
(3)β−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを含有する米飯改質剤であって、β−アミラーゼの含有量が、該改質剤中の澱粉1gあたり、0.5〜400Uである米飯改質剤。
(4)α−グルコシダーゼを原料生米1gあたり2〜1200U、アミロペクチン含量が75%以上の澱粉を原料生米に対し0.1〜6重量%添加することを特徴とする米飯食品の製造方法。
(5)β−アミラーゼを原料生米1gあたり0.015〜10U、アミロペクチン含量が75%以上の澱粉を原料生米に対し0.1〜6重量%添加することを特徴とする米飯食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、白飯や炊き込みご飯等の米飯食品の製造直後の品質(食味と物性)を向
上することができ、炊飯器内での長期間の保温や、レンジ加熱による米飯食品食味、食感、
色調の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による米飯改質剤には、α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを用いる。アミロペクチン含量が75%以上の澱粉の例としては、タピオカ、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、米、モチ米を由来とする生澱粉およびα化澱粉、加工澱粉が挙げられる。澱粉に老化耐性を付与するには、使用する澱粉はアミロペクチン含量が75%以上のものが好ましく、特にアミロペクチン含量が100%のワキシーコーンスターチ、モチ米澱粉等のモチ種澱粉を使用することが好ましい。また、本発明の澱粉は液体状(α化溶液も含む)、ペースト状、粉末状のいずれの形態でも構わない。
【0011】
本発明に用いられるα-グルコシダーゼは、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移能を有するものが好ましく、そのようなα−グルコシダーゼをトランスグルコシダーゼと呼ぶ。すなわち、トランスグルコシダーゼは糖転移能を有するα-グルコシダーゼである。α-グルコシダーゼとは非還元末端α-1,4-グルコシド結合を加水分解し、α-グルコースを生成する酵素である。尚、グルコアミラーゼはα-グルコシダーゼと類似の反応を起こすが生成するグルコースはα-グルコースではなく、β-グルコースである。さらに、本発明に用いる酵素は単に分解活性を有するのみではなく、水酸基を持つ適当な受容体がある場合、グルコースをα-1,4結合よりα-1,6結合へと転移させ、分岐糖を生成する糖転移活性を有するものであることが特に重要である。従来の物性改良剤に含まれる酵素は澱粉分解酵素であり、糖転移酵素ではない。尚、トランスグルコシダーゼL「アマノ」という商品名で天野エンザイム(株)より市販されている酵素が、α−グルコシダーゼの一例である。
【0012】
本発明の米飯改質剤においてα−グルコシダーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉の配合量は、改質剤中のアミロペクチン含量が75%以上の澱粉1gに対しα−グルコシダーゼが100〜50000U、好ましくは300〜30000U、より好ましくは2500〜6400Uの範囲が適正である。尚、酵素活性については1mM α-メチル-D-グルコシド1mlに0.02M酢酸バッファー(pH5.0)1mlを加え、酵素溶液0.5ml添加して、40℃、60分間を作用させた時に、反応液2.5ml中に1μgのブドウ糖を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0013】
本発明に用いるβ-アミラーゼは、市販のβ-アミラーゼ製剤をはじめとするいかなるβ-アミラーゼでよく、これには例えば大豆、小麦、大麦等植物起源のものの他、各種微生物起源のものが包含されるが、植物起源のものが好ましい。「ビオザイムML」という商品名で天野エンザイム(株)より販売されている酵素が一例である。β-アミラーゼの作用により、澱粉の非還元性末端からマルトース単位でα-1,4グリコシド結合を分解することで米飯の保温耐性を付与する。また、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素をとβ−アミラーゼを併用することで、澱粉に酵素(糖転移活性を有する酵素)が作用するよりもアミラーゼで分解された鎖長の短い糖の方が酵素(糖転移活性を有する酵素)と反応しやすくなるために、大きな効果が得られると考えられる。
【0014】
本発明の米飯改質剤においてβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉の配合量は、改質剤中のアミロペクチン含量が75%以上の澱粉1gに対しβ−アミラーゼが0.5〜400U、好ましくは0.7〜360Uの範囲が適正である。尚、β-アミラーゼの酵素活性については37℃に保持された1重量%澱粉溶液10mlに酵素溶液1mlを加え、デンプン消化力試験用フェーリング試液のアルカリ性酒石酸液2mlを加える。次にデンプン消化力試験用フェーリング試液の銅液2mlを添加して、100℃、15分間を作用させ、25℃以下に冷却する。30%ヨウ化カリウム試液2mlおよび希硫酸2mlを加え、遊離したヨウ素を0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウムで滴定する。本操作にて1分間に1mgのブドウ糖を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0015】
本発明の米飯改質剤において、α−グルコシダーゼ、β−アミラーゼ、アミロペクチン
含量が75%以上の澱粉の他に、デキストリン等の賦形剤、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等を配合してもよい。また、本発明の改質剤は液体状、ペースト状、粉末状、顆粒状、米粒状のいずれの形態でも構わない。
【0016】
本発明の米飯食品の製造方法において、原料生米1gあたり、α−グルコシダーゼを2
〜1200U、好ましくは7〜675U、より好ましくは48〜144U添加作用させる。
あるいは、原料生米1gあたり、β−アミラーゼを0.015〜10U、好ましくは0.016〜8U添加作用させる。また、アミロペクチン含量が75%以上の澱粉を原料生米に対し、0.1〜6重量%、好ましくは0.25〜4重量%、より好ましくは1.5〜3重量%添加する。
【0017】
α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを添加する方法としては、前述の米飯改質剤の形態で添加してもよいし、それぞれ別々に添加してもよい。米に酵素及び澱粉を添加する時期は、炊飯までのどの段階で作用させてもかまわない。すなわち吸水のため米を浸漬させる浸漬液に添加してもよいし、浸漬後、炊飯前に添加してもよい。
【0018】
酵素の反応時間は、酵素が澱粉に作用することが可能な時間であれば特に構わなく、非常に短い時間でも逆に長時間作用させても構わないが、現実的な作用時間としては1分〜24時間が好ましい。また、反応温度に関しても酵素が活性を保つ範囲であればどの温度であっても構わないが、現実的な温度としては0〜80℃で作用させることが好ましい。すなわち、通常の炊飯工程を経ることで十分な反応時間が得られる。
【0019】
本発明の米飯食品として、炊飯米(白飯)、酢飯(寿司飯)、赤飯、ピラフ、炊き込みご飯、粥、リゾット、おにぎり、寿司、弁当、米麺が挙げられる。また、これらの冷凍品も含まれる。
【0020】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、これらの実施例により何ら限定されない。
【実施例1】
【0021】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gを加え、室温で1時間浸漬した。そこにα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移能を有するα-グルコシダーゼである「トランスグルコシダーゼL」(天野エンザイム社製)(以下TGLと略すことがある)とコーンスターチ「コーンスターチY」(J-オイルミルズ社製、アミロペクチン含量75%)を添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。TGLおよびコーンスターチの量は表1の通りである。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表1に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0022】
【表1】

【0023】
コーンスターチのみの添加では、粘り、弾力が低下し、TGLのみの添加では、粘りが付与されるものの5時間保温後は、粘り、弾力ともに大きくが低下した。一方、コーンスターチとTGLを併用することで、粘り、弾力の付与された好ましい食感となり、また、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。炊飯直後及び保温後の弾力においては、TGL、澱粉それぞれを単独で添加した場合は対照よりも評点が悪化するにも関わらず、TGL、澱粉を併用した場合は評点が対照よりも高いことより、TGL、澱粉の併用効果は、相加的ではなく相乗的な効果である。同様に、保温後の粘りにおいても、TGL、澱粉の併用効果が相乗的な効果であることが示された。
【実施例2】
【0024】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gを加え、室温で1時間浸漬した。そこに
TGLと馬鈴薯澱粉(松谷化学工業社製、アミロペクチン含量80%)、うるち米澱粉「ファインスノウ」(上越スターチ社製、アミロペクチン含量80%)をそれぞれ添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。TGLおよび澱粉の種類、添加量は表2の通りである。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表2に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0025】
【表2】

【0026】
澱粉のみの添加では、粘り、弾力が低下した。一方、澱粉とTGLを併用することで、粘り、弾力の付与された好ましい食感となり、また、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。
【実施例3】
【0027】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gもしくは、生米「日本晴無洗米」384
に市水576gを加え、室温で1時間浸漬した。そこにTGLとアミロペクチン含量の異な
るハイアミロースコーンスターチ「日食アルスターH」(日本食品化工社製、アミロペクチ
ン含量30%)、コーンスターチ「コーンスターチY」(J-オイルミルズ社製、アミロペクチン含量75%)ワキシーコーンスターチ「ワキシーコーンスターチY」(J-オイルミルズ社製、アミロペクチン含量100%)をそれぞれ添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。TGLおよび澱粉の種類、添加量は表3の通りである。また、各コーンスターチのアミロペクチン含量は、アミロース/アミロペクチン測定キッド(日本バイコン社製)を用いて定量化した。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表3に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、5時間保温後において食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0028】
【表3】

【0029】
アミロペクチン含量75%以上のコーンスターチを添加することで、粘り、弾力が増加し、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。また、特にアミロペクチン含量100%のワキシーコーンスターチでは、食感のバランスが非常に好ましいことを確認した。一方、ハイアミロースコーンスターチでは、スターチにより米の表面を硬化してしまい、TGLを添加しても大きく食感が低下した。
【実施例4】
【0030】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gを加え、室温で1時間浸漬した。そこに
TGLと実施例3で用いたワキシーコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。TGLおよびワキシーコーンスターチの添加量は表4の通りである炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表4に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0031】
【表4】

【0032】
TGLの添加量が澱粉1gに対して300〜30000Uの範囲にて粘り、弾力が付与され、また、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。さらに、澱粉1gに対して2500〜6400Uの範囲にて、5時間保温後も食感のバランスが非常に好ましいことを確認した。
【実施例5】
【0033】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gを加え、室温で1時間浸漬した。そこに
TGLとワキシコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。TGLおよびワキシーコーンスターチ添加量は表5の通りである。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表5に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0034】
【表5】

【0035】
米飯食品への米飯改質剤の添加量は、澱粉量が原料生米に対し、0.25%から4%の範囲にて粘り、弾力が付与され、また、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。さらに、澱粉量が原料生米に対し、1.5%から3%の範囲にて、5時間保温後も食感のバランスが非常に好ましいことを確認した。
【実施例6】
【0036】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gもしくは、生米「日本晴無洗米」384
gに市水576gを加え、室温で1時間浸漬した。そこにTGLと実施例3で用いたワキシーコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。TGLおよびワキシーコーンスターチの添加量は表6の通りである。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価および食味評価、色調評価を行った結果を表6に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。食味評価は炊飯食味計「STA-1B」((株)サタケ)にて測定した。また、色調評価は色差計「CM-3500D」(コニカミノルタ)にて測定した。
【0037】
TGL、澱粉それぞれ単体での使用においては好ましい弾力が得られないが、保温中の食感、色調の変化も大きいが、TGLと澱粉を併用することで、炊飯直後の食味を改善し、かつ保温中の食感や色調の変化を抑制できることを確認した。
【0038】
【表6】

【実施例7】
【0039】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gもしくは、生米「日本晴無洗米」384
gに市水576gを加え、室温で1時間浸漬した。そこに各種調味料とTGL、実施例3で用いたワキシーコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。各種調味料、TGLおよびワキシーコーンスターチの添加量は表7の通りである。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価および食味評価、色調評価を行った結果を表7に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0040】
TGL、澱粉それぞれ単体での使用においては好ましい弾力が得られず、保温中の食感の変化も大きいが、TGL、澱粉を併用することにより、炊き込みご飯の炊飯直後の食味を改善し、かつ保温中の食感の変化を抑制できることを確認した。
【0041】
【表7】

【実施例8】
【0042】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gもしくは、生米「日本晴無洗米」384
gに市水576gを加え、室温で1時間浸漬した。そこにTGLと実施例3で用いたワキシーコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯し、炊飯米を真空冷却機「食品用急速冷却機CMJ-40」(三浦プロテック社製)にて25℃以下に冷却した。得られた炊飯米(白飯)について、冷却直後、及び、5℃にて24時間保存した後、レンジアップをして官能評価を行った結果を表8に示す。官能評価は、弾力、粘り、弾力、総合評価(好ましさ)に関して、TGL、ワキシーコーンスターチいずれも添加されずに調製された対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、酵素による改質効果が大きく、粒感、硬さ、粘り、ほぐれ性等白飯の食感のバランスが良好で、かつ経時劣化が抑制されているものを◎、改質効果があり、白飯の食感のバランスがやや良好なものを○、改質効果はあるも大きくなく、白飯の食感のバランスにやや問題のあるものを△、改質効果が不十分で、白飯の食感のバランスに問題のあるもの、あるいは経時劣化抑制効果のないものを×とした。
【0043】
TGL、澱粉それぞれ単体での使用においては好ましい弾力が得られないが、TGL、澱粉を併用することにより、弾力、粘り、弾力の付与された好ましい食感となり、良好な白飯が得られることが明らかになった。
【0044】
【表8】

【実施例9】
【0045】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gを加え、室温で1時間浸漬した。そこに
β-アミラーゼである「β-アミラーゼF「アマノ」」(天野エンザイム社製)(以下BAFと略すことがある)と実施例3で用いたワキシーコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。BAFおよびワキシーコーンスターチの添加量は表9の通りである炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表9に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、TGLと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0046】
BAFの添加量が澱粉1gに対して0.71〜356Uの範囲にて粘り、弾力が付与され、また、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。さらに、澱粉1gに対して7.1〜178Uの範囲にて、5時間保温後も食感のバランスが非常に好ましいことを確認した。
【0047】
【表9】

【実施例10】
【0048】
生米「日本晴無洗米」400gに市水560gを加え、室温で1時間浸漬した。そこに
BAFと実施例3で用いたワキシーコーンスターチを添加し溶解させ、炊飯器「IHジャー炊飯器NJ-HS06-S」(三菱電機社製)にて炊飯した。BAFおよびワキシーコーンスターチ添加量は表10の通りである。炊飯直後および炊飯器内にて5時間保温後に官能評価を行った結果を表10に示す。官能評価は、粘り、粒感、弾力、総合評価に関して、BAFと澱粉のいずれも添加されずに調製された炊飯直後の対照区分を0点として、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。総合評価は、食感のバランスが非常に好ましく、米飯の食味に大きく寄与する粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを◎、食感のバランスがやや劣るものの、粘りや弾力が対象区よりも高い点数となるものを○、粘りや弾力のいずれかが対象区よりも高い点数となるものを△、改質効果が不十分で、粘りや弾力が対象区よりも低い点数となるものを×とした。
【0049】
米飯食品への米飯改質剤の添加量は、澱粉量が原料生米に対し、0.07%から0.21%の範囲にて粘り、弾力が付与され、また、5時間保温後も対象区よりも好ましい食感を維持した。さらに、澱粉量が原料生米に対し、2.25%から3%の範囲にて、5時間保温後も食感のバランスが非常に好ましいことを確認した。
【0050】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によると、米飯食品の品質を向上できるため、食品分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−グルコシダーゼ及び/又はβ−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを含有する米飯改質剤。
【請求項2】
α−グルコシダーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを含有する米飯改質剤であって、α−グルコシダーゼの含有量が、該改質剤中の澱粉1gあたり、100〜50000Uである米飯改質剤。
【請求項3】
β−アミラーゼとアミロペクチン含量が75%以上の澱粉とを含有する米飯改質剤であって、β−アミラーゼの含有量が、該改質剤中の澱粉1gあたり、0.5〜400Uである米飯改質剤。
【請求項4】
α−グルコシダーゼを原料生米1gあたり2〜1200U、アミロペクチン含量が75%以上の澱粉を原料生米に対し0.1〜6重量%添加することを特徴とする米飯食品の製造方法。
【請求項5】
β−アミラーゼを原料生米1gあたり0.015〜10U、アミロペクチン含量が75%以上の澱粉を原料生米に対し0.1〜6重量%添加することを特徴とする米飯食品の製造方法。

【公開番号】特開2011−193876(P2011−193876A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31936(P2011−31936)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】